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総論

条約前文、第1条、2条、24条 女性差別の定義、締約国の差別撤廃義務、条約上の権利の完全な実現〈盛り込むべき事項〉○�ジェンダー・ギャップ指数で毎年後退している現状と立ち遅れの要因、国の女性政策の問題点と課題を、実態に即して深く分析し、抜本的で効果的な打開の方向と計画を明記すること。○�女性差別撤廃条約が法的拘束力を持つと認識していることを公に示し、国内法に差別の定義を明記し、民法改正をはじめ国内法が条約に合致したものになるよう必要な法整備を行うこと。○�選択議定書を批准する意思を明らかにすること。

 日本は、世界経済フォーラム発表のジェンダー・ギャップ指数で135カ国中101位(2012年)で、先進国で最下位、国際的にも最低の水準である。とくに政治や経済分野の女性の地位の遅れが著しい。第3次男女共同参画基本計画は、女性差別撤廃条約の履行の遅れを認め、期限を切った数値目標をもりこんだが、閣議決定(2010年)から2年半経ても、遅々として進んでいない。 新日本婦人の会は、この先進国にない特別のたちおくれの原因が、女性差別撤廃条約締約国として当然の責務履行への政治的意思の欠如、

新自由主義的な「構造改革」と一体の女性政策、古い家制度と侵略戦争を美化する「靖国派」勢力の存在と妨害にあると繰り返し指摘してきた。これらの点をふまえ克服の方向を明確にしてこそ前進への道はひらかれると考える。〈関連データ・根拠など〉ジェンダー・ギャップ指数2012、第6次日本報告審議「総括所見」勧告20、22〈問題を解決する方法・提案〉○�女性差別撤廃条約締約国としての政治的意思を明確にすること。○�新自由主義的な「構造改革」からの転換をはかること。○�「靖国派」勢力の妨害や特異な考えの持ち込みや、公人による女性の人権蹂躙を、国が日本国憲法と女性差別撤廃条約の立場で毅然と批判し、対処すること。

〈NGOの活動状況〉 新日本婦人の会は、女性差別撤廃条約及び女性差別撤廃員会からの勧告について、会の機関紙誌で特集をしたり資料集を作成・普及するなど学習を進めながら、民法改正や選択議定書の早期批准、日本軍「慰安婦」問題の解決をもとめる請願署名にとりくみ、毎年国会に提出している。民法改正署名2011年5444人256団体、2012年1万6017人408団体、2013年1万9432人967団体、選択議定書署名2011年7907人311団体、2012年2万115人421団体、2013年1万2000人分、日本軍「慰安婦」問題署名2011年2815人17団体、2012年2万6376人414団体、2013年3万9177人1036団体分を国会に提出。県や市町村レベルでも、ジェンダー講座など学習活動や自

女性差別撤廃条約実施状況第7・8回報告書に盛り込むべき事項─新日本婦人の会の意見─

2013 年7月20日

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治体への要請・懇談を行なっている。 また、国連経済社会理事会の特別協議資格を持つNGOとして、国連女性の地位委員会に毎年声明や代表を送るとともに、女性差別撤廃委員会による日本報告審議のたびに、NGOとしてのレポートを送付、日本女性差別撤廃条約NGOネットワーク(JNNC)の一員として審議の傍聴や委員へのはたらきかけも行なっている。

雇用と貧困、TPP

条約第11条、13条、14条 雇用における差別の撤廃、経済的・社会的活動における差別の撤廃、農村女性に対する差別の撤廃〈盛り込むべき事項〉〇�非正規雇用とワーキングプアの拡大、女性の低賃金など、雇用における女性差別撤廃に困難をもたらしている主な理由とその解決の具体的方策について明記すること。〇�正規雇用があたりまえの雇用ルールと、認可保育所の増設や育児・介護休暇制度の拡充など男女ともに、安定した雇用を保障され、仕事と家庭責任を両立させながら働き続けられる条件整備を具体的にもりこむこと。〇�日本の農業や雇用をこわす環太平洋連携協定(TPP)参加をやめ、食料主権と経済主権をまもりぬくこと。〇�条約や国際機関からの勧告などを真摯に受けとめ、その実行計画の具体化を明記すること。

 自公政権によってすすめられた新自由主義の「構造改革」路線のもと、労働法制の改悪で非正規雇用が急増し、とりわけ女性の非正規は57.5%となり、所得も低下している。さらに年金・医療・介護など社会保障の切り捨てや税制改悪などで、所得再分配機能が壊され、貧困・格差が拡大し、差別撤廃への経済的土台を崩してきた。安倍内閣が「成長戦略」の中核に「女

性の活用」を位置付け、派遣労働と解雇の自由化、「限定正社員」の導入など、雇用・労働分野の一層の規制緩和をねらっているが、これでは日本を「世界で一番企業が活動しやすい国」にするだけで、いっそう格差を拡大して、女性の経済的自立をいっそう困難にし、差別撤廃に逆行することになる。 さらに、日本の関税を撤廃させ、米国企業がもうけられる環境づくりをすすめるTPPへの参加は、日本の農林漁業と食の安全、雇用や医療をこわし、くらし・経済に大打撃となる。 国連女性差別撤廃委員会や国際労働機関(ILO)は日本に対し、非正規雇用の7割を女性が占めている現状、男女の賃金格差、女性のM字型雇用などの改善を再三求めている。これらの勧告を実行するため、大企業のもうけを最優先とする政治をやめ、働くルールを確立することが求められる。〈関連データ・根拠など〉 ジェンダー・ギャップ指数2012、就業構造基本調査2012、賃金構造基本統計調査2012〈NGOの活動状況〉 新日本婦人の会は、65歳以上のくらし実態調査(9233人)で年金だけで暮らせない女性が8割、はたらく女性のくらし実態調査(4490人)で、正規でも年収200万円以下が14%、20人に一人が仕事をかけもちするなど、女性の貧困化の実態を告発した。会の機関紙誌で「税と社会保障の一体改革」、労働法制改悪を許さない世論をひろげ、署名にもとりくんでいる。

民法改正

条約第16条 婚姻・家族関係における差別の撤廃〈盛り込むべき事項〉○�民法及び戸籍法の「差別的な規定」(「総括所見」)の改正をおこなうという日本政府の政治的意思を明確に表明すること。○�「女子差別撤廃委員会の最終見解(CEDAW/

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C/CO/ 6)に対する日本政府コメントに係る追加的情報提供」(2012年11月)において、日本政府は「(民法及び戸籍法の改正については)なお国民的な議論を深める必要がある」としているのは問題であり、撤回すること。

 「総括所見」は、繰り返しの勧告にもかかわらず、「差別的法規定の撤廃がすすんでいないこと」について強い懸念を表明し、フォローアップ項目とした。鹿嶋敬男女共同参画会議監視専門調査会会長が閣僚に対し「民法改正に関して必要なのは政治的な決断であり、政治のリーダーシップを発揮して取り組むべき」と要請したとされるが、男女共同参画担当大臣と担当部局はその実行を促すべきである。 また、「総括所見」は、すすんでいないことの弁明のために世論調査を用いていることを厳しく批判し、「締約国の義務は、世論調査の結果のみに依存するのではな(い)」と繰り返し指摘している。にもかかわらず追加情報提供で同様の報告を続けているのは、非常識であり、やめるべきである。〈関連データ・根拠など〉女性差別撤廃委員会の総括所見(CEDAW/C/CO/ 6)〈問題を解決する方法・提案〉○�政府が、法制審議会と法務省で準備ずみの民法改正案を国会に提出する。○�世論の形成を待つのでなく、男女共同参画担当大臣と担当部局が民法改正への世論喚起を積極的にすすめる先頭にたつ。

〈NGOの活動状況〉 新日本婦人の会は、2010年2月にまとめた「選択的夫婦別姓制度についての緊急アンケート」(31都道府県115人)調査とそれにもとづく法務大臣、男女共同参画担当大臣への直接の要請、首相官邸前でのリレートーク行動に続き、この間、衆参議長あての請願署名にとりくんできた。

 国会に提出した民法改正を求める署名は、2011年5444人256団体、2012年1万6017人408団体、2013年1万9432人967団体(~6月)と年々とりくみがひろがっている。 夫婦別姓裁判がおこされ、東京地裁の原告棄却判決に対し6月11日、原告が控訴、高裁でのたたかいとなっている。原告の話を聞き支援するとりくみ、また、機関紙誌などで、支援と民法改正を求める世論をひろげている。

政治参加

条約第7条 政治的・公的活動における平等〈盛り込むべき事項〉○�日本女性の政治参加の遅れは先進国に例をみない異常なものであり、さらに後退している事態を直視し、抜本的に引き上げる方向を示すこと。現在の選挙制度改革の協議に女性の視点を取り入れ、2020年までに衆参候補者に占める女性の割合を30%にする目標達成をいかに遂行するのか明らかにすること。○�女性の政治参加を促進するために比例代表制度を中心とした選挙制度に改めること。

 第187回通常国会において、0増5減の衆院小選挙区区割り法が成立したが、すでに6選挙区で2倍以上の1票の格差が生じており、引き続いて協議がおこなわれる。選挙制度改革の論議に女性の視点がまったく欠落していることは重大である。政府の男女共同参画会議基本問題・影響調査専門調査会は「政治分野における女性の参画の拡大は、民主主義の在り方…に密接にかかわる問題であり、選挙制度の在り方の検討において重要な論点として考慮されなければならないことを強調しておきたい」としている(2012年同最終報告)。また「一般に死票が多くなる小選挙区制より中選挙区制・大選挙区制や比例代表制の下での方が多様な民意が反映されやすく、女性議員の割合が高くなる傾向がみられる」と指摘した。

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〈関連データ・根拠など〉 IPU列国議会同盟の女性国会議員比率、政府男女共同参画会議基本問題・影響調査専門調査会最終報告(2012年)〈問題を解決する方法・提案〉○�男女共同参画担当大臣と担当部局が、政府専門調査会の最終報告などをもとに、選挙制度と女性の政治参加促進へ積極的なイニシアチブを発揮すべきである。

〈NGOの活動状況〉 野田民主党政権と安倍自民・公明党政権が、衆院小選挙区「0増5減」「比例定数削減」法案の国会提出の動きをつよめるなか、国際的にも遅れている女性たちの政治参加を引き上げる立場から、女性の共同行動が積極的にとりくまれた。 2012年3月7日には、「私たち女性は衆議院比例定数の削減に反対します」と、16の女性団体(新日本婦人の会、日本婦人有権者同盟、日本婦人団体連合会、日本YWCA、男女平等をすすめる教育全国ネットワーク、日本キリスト教婦人矯風会、ふぇみん婦人民主クラブ、家庭科教育研究者連盟、婦人民主クラブ、自由法曹団女性部、日本母親大会連絡会、農民運動全国連合会女性部、全国商工団体連合会婦人部協議会、全国労働組合総連合女性部、川崎の男女共同社会をすすめる会、常陸24条の会)の緊急共同行動がとりくまれ、各政党の代表と選挙制度各党協議会メンバー、女性議員らに要請。さらに2013年4月18日には、17の女性団体(上記に大学女性協議会などが加わった)が、「衆議院比例定数の削減をやめること」「『1票の格差』を生む小選挙区制を廃止し、比例代表制を中心とする選挙制度への抜本的改革をすること」で一致して行動した。 新婦人も参加する国際婦人年連絡会(37団体)は「政治参画における男女の格差を是正するため、多様な民意が反映される公正な選挙制度をめざし、比例代表制を中心にする選挙制度に改定すること」(2010年 NGO日本女性大会

決議)にもとづき、2012年3月21日、各政党らへの要請をおこなった。

震災復興・原発

条約第3条、7条、13条 女性の完全な発展・向上の確保、政治的・公的活動における平等、経済的・社会的活動における差別の撤廃 〈盛り込むべき項目〉〇�東日本大震災・東京電力福島第一原子力発電所事故による被災者の早急な生活再建と復興、全国的な地震・災害対策をもりこむこと。原発をなくし、再生可能な自然エネルギーの普及を推進すること。〇�防災・復興にかかわる政策や方針の決定の場への女性の参加を引き上げ、ジェンダー視点をとり入れること。

 未曾有の被害をもたらした2011年3月11日の東日本大震災と東京電力福島第一原子力発電所の事故は、死者・行方不明者が2万人を超え、いまなお15万人が放射能汚染を逃れて避難生活を送り、復興も収束も目途がたっていない。大企業優先の復興ではなく、生活と地域の再建という急務の課題に直面している。さらに各地で原発直下の活断層の可能性が相次いで明らかになるなか、危険で無責任な原発の再稼働はぜったい許されず、原発ゼロへの決断が求められている。大規模な地震や災害への備えも急がれる。 東日本大震災の被災沿岸市町村(38市町村)の復興計画策定に当たっての委員会等における女性委員の割合は11.2%(2012年)、全国の地方防災会議の女性委員の割合は、都道府県5.1%、政令指定都市10.0%(2012年)、復興庁・復興推進委員会15人中4人(26.7%)と、女性の参画が大幅に遅れている。〈NGOなどの活動状況〉 新日本婦人の会は、被災地支援の継続的なカンパにとりくみ、1億2500万円を被災地に届け

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ている。また被災女性の声を聞き、被災者の生活再建と全国的な地震・災害対策の充実を急ぎすすめ、防災・復興計画に女性の参画をふやすことを国・自治体にくりかえし要請している。

日本軍「慰安婦」問題

条約前文、第5条(a)、6条 女性に対する暴力根絶〈盛り込むべき項目〉〇�日本軍「慰安婦」問題の法的解決を急ぎ、公式謝罪と補償をおこなうこと。〇�日本政府が、日韓請求権協定第3条にもとづき、ただちに韓国政府と協議を開始すること。〇�日本政府は、条約や国際機関からの勧告などを真摯に受けとめ、「慰安婦」問題での公人の暴言を許さず公式に批判すること。

 日本軍「慰安婦」問題は、侵略戦争のなかで女性の人権を極限までじゅうりんした「性奴隷」制度である。日本維新の会の共同代表橋下氏(大阪市長)の「慰安婦制度は必要だった」「(米軍に)風俗業の活用を」などの暴言は、歴史の事実をゆがめると同時に、売買春、性犯罪を礼賛するものであり、国際社会をも驚かせ、国連はじめ各国から大きな批判の声があがっている。安倍首相自身の責任は大きい。「強制性を裏付ける証拠はなかった」「侵略の定義は定まっていない」という自らの発言を撤回せず、橋下暴言問題に対してはいっさい批判もしていない。政府が、女性の人権尊重の促進の先頭にたって橋下氏の暴言に厳正に対処するとともに、「慰安婦」問題を人権侵害の戦争犯罪として、その責任を認め、韓国政府との協議に応じ、一刻も早い解決へと踏み出すことが求められている。〈関連データ・根拠など〉〇�日本共産党の赤嶺政賢衆院議員への答弁書(6月18日)。政府は初めて、河野洋平官房長

官談話(1993年)の発表にあたって政府が収集した資料の中に、日本軍による「慰安婦」の強制連行を示す記録があったことを明らかにした。

〈NGOなどの活動状況〉 新日本婦人の会は、パンフ「日本軍『慰安婦』問題の解決のために」を発行し、「慰安婦」問題の学習、話し合い、解決を求める請願署名をすすめている。国会に提出した署名は、2011年2815人17団体、2012年2万6376人414団体、2013年3万9177人1036団体分と、とりくみをつよめている。 また、地方議会への働きかけをつよめ、議会で国にむけての意見書を採択するよう要請をつよめている。「女たちの戦争と平和資料館」など、各地の平和ミュージアムや史跡の見学や韓国ヘのスタディーツアー、女性団体や平和団体と共同で「つどい」やシンポジウム、映画、ビデオ上映会などを開催し、まわりの人をさそって理解を深め、世論をひろげる活動をすすめている。 第57回国連女性の地位委員会にあわせて開かれたNGO主催のイベントに、日本軍「慰安婦」問題のワークショップを戦時性暴力問題連絡協議会と共催、各国から120人が参加した。

憲法、米軍基地撤去、核兵器廃絶

条約前文、第5条(a)、6条〈盛り込むべき事項〉〇�最大の人権侵害である戦争のない世界へ、国連憲章の平和の精神を徹底した日本国憲法第9条を実践する立場にたって平和外交に徹することを明記すること。沖縄県民の総意である、普天間基地撤去と辺野古新基地建設撤回、オスプレイの配備撤回を打ち出すこと。〇�米兵による性暴力の根絶のため、地位協定の改定、米軍基地撤去を明記すること。女性差別撤廃条約と勧告にしたがい、強かん罪の罰則強化や、リプロダクティブ・ヘルス/ライ

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ツの視点での科学的な性教育の実施などを明記すること。〇�唯一の被爆国として、核兵器の非人道性と不使用を宣言した共同声明への署名拒否を撤回し、いま世界で強められている核兵器禁止条約締結をめざす努力の先頭に立つこと。〇�国連安保理決議1325の国内行動計画の策定を急ぎ、NGOとの十分な意見交換を行いその内容を反映させること。

 女性差別撤廃条約が、男女の権利の享有や平等達成のうえで国際平和、核軍縮、独立、主権尊重などを不可欠としていること(前文)をふまえ、唯一の被爆国であり、侵略戦争の反省から戦争放棄の憲法をもつ国にふさわしく、日本政府報告に平和の問題を盛り込むべきである。日本の女性たちは、戦後一貫して憲法9条を守り、核兵器を廃絶することを共通の悲願として運動をすすめてきた。しかし、安倍政権が憲法改悪の動きをつよめ、沖縄では、41の全市町村があげて普天間基地即時閉鎖と県内移設断念を求めているにもかかわらず、オスプレイ配備や新基地建設の動きを強め、米軍による性犯罪や凶悪事件が後を絶たない。世界は軍事同盟解消へとすすみ、アジア23カ国でも米国との軍事同盟は日本と韓国だけとなり、いずれか一方の国の通告で1年後に解消する日米安保条約第10条にもとづいて軍事同盟をなくし、対等な日米友好条約締結へとすすむべきである。 広島・長崎の惨禍を経験した日本にとって、核兵器のすみやかな廃絶は国民の強い願いであり、政府の責務である。核不拡散条約(NPT)再検討会議(2015年)にむけた第2回準備委員会で、日本政府が、74カ国の核兵器不使用の共同声明への署名を拒否したことは世界を驚かせた。「いかなる状況下でも核兵器が二度と使われないことは人類生存の利益」とした同声明の「いかなる状況下でも」の文言削除を働きかけていたことは核兵器使用を認めるもので、看過できない。

〈関連データ・根拠等〉 勧告30、32、34、36、40、米国防総省の「米軍の性暴力に関する年次報告(2011年度)」〈NGOの活動状況〉 新日本婦人の会は、憲法改定の動きが強まるもとで、「あたらしい憲法のはなし」の復刻版や憲法紙芝居を作成し、全国で憲法の条項を学び、9条グッズをつくって社会にアピールするとともに、9条を守る署名行動を行なっている。 沖縄はじめ全国各地で会員たちがオスプレイ配備反対の行動や、沖縄の女性たちに連帯する沖縄ツアーや集会を行なっている。米軍による事件が起きるたびに、会独自に、また他団体と共同でアメリカ大使館への抗議や日本政府に対応を要請している。 会の創立の目的の1番目に核兵器廃絶を掲げる女性団体として、創立以来核兵器廃絶にとりくみ、各地で被爆者の話を聞く会や、原爆展・戦争展、姉妹都市に原爆組み写真を送る運動、毎年の原水爆禁止世界大会への参加、海外の女性団体との交流などを進めている。2010年のNPT再検討会議の際には、日本から約1800人がニューヨークへ行き、アメリカはじめ各国の平和・市民団体とともに核兵器全面禁止をもとめる行動を行なったが、新日本婦人の会の会員250人がこれに参加した。日本の代表団はこのとき約700万の署名を国連に提出、うち150万余を集めた新日本婦人の会の事務局長がリブラン・カバクチュランNPT再検討会議議長に署名を手渡した。会は引き続き、各国政府に対し核兵器禁止条約の交渉開始をもとめる国際署名にとりくんでいる。