世界の幼児教育の今を知る
~私たちが見た教育先進国7カ国の幼児教育レポート~
清宮香里・金木祥子
自己紹介
• 若手・グローバル人材育成を中心とした企業の人材育成を行うアルー(株)にて6年間、企業研修の企画・運営を実施
• 2014年7月~プライベートの時間を活用して、子ども教育関連のイベントに参加
• 2015年、半年間休職をして日本と教育先進国計7カ国の幼児教育現場を視察
• “大人も子どもも育つ場所”をテーマとした保育所を設立準備中
かねぼー せいみー
本日の流れ
• はじめに~なぜ、私たちが旅立ったのか~
• 世界6カ国+日本国内の事例の共有
• まとめ~世界の視察から見えたこと~
• ディスカッション~こどもとの日々の関り方を考える~
背景①:社会で活躍できる人材が変化してきている
正解を見つけやすい世界時代背景 正解がない世界
これまでの社会 いまの社会
求められる
人材
言われたことを確実に
遂行する
自ら考え行動する
機械の台頭
一方で、社会に輩出される人材は旧来の特徴のまま・・・
2015年新人の傾向
• 失敗や目立つことを恐れる
• 指示がないと動けない
人事側の評価
• 目立つ人材がいない
• 自ら考えて行動できない
⇒優秀な大学を出ているが、
使えない
背景②:社会で活躍できる力を育むためには幼児期の
経験や環境が重要である
エリクソンの
発達課題
ペリー幼稚園
での実験
社会で最も求められる
自主性・自律性は
乳幼児期に育まれる
幼児期の環境が
学習や就業形態などに
長期的な影響を及ぼす
(参考①)エリクソンの発達課題
出典:エリクソン発達課題
(参考②)ペリー幼稚園での実験
~1962年から1967年にミシガン州で実施~
対象
• 低所得のアフリカ系58世帯の子供を対象に実施
• 子どもの年齢は3~4歳
実施内容
• 修士+児童心理のプロが教育に関わる
• 子ども6名に対して先生1名体制
• 子どもの自発性を大切にする活動を中心
としたプログラム
• 1日2.5時間の読み書きレッスン
• 1週間に1.5時間の家庭訪問を行い親のサ
ポートを実施
結果
ペリー幼稚園のプログラムを受けた子どもは、
同じ貧困層家庭のペリー幼稚園プログラムを受けなかった
子どもと比較をして、以下の点において優位性が見られた
6歳 IQ
19歳 高卒率
27歳 持ち家の有無
40歳 所得額
40歳 逮捕率
※IQについては8歳時点で差が見えなくなった
(参考②)認知能力と非認知能力
非認知能力認知能力
IQ(知能指数)で測定される能力 自信・やり抜く力
意欲・忍耐力・社会性
理解度・状況把握
回復力と対処能力
創造性・好奇心・性格特性
<
就学後の教育の効率性を決めるのは、就学前の教育にあり、
就学前の教育において非認知能力を伸ばすことが重要である
ペリー幼稚園の結果は、「IQスコアの向上」に長期的な向上をもたらしたわけではなく、
それ以外の非認知能力(自制心や粘り強さ、気概などの特性)を伸ばすことに効果があった
※特にやり抜く力は成功
のカギと言われている
参考:ノーベル経済学賞受賞 ジェームス・ヘックマン 子ども
教育<人生の成功にはIQより非認知能力>
※非認知能力は、(経済力など)資源の制約、情報量と社会的な期待、両
親の情報と期待、本人の選好の4つの要因から影響を受ける
本日お話する国々
視察先の幼児教育の全体像
種類 森のようちえん モンテッソーリ シュタイナー イエナプラン その他
特徴
・デンマーク発祥
・自然の中で教育
・見守る保育
・イタリア発祥
・個人ワーク中心
・異年齢クラス
・ドイツ発祥
・想像力を育む
・家庭的な雰囲気
・ドイツ発祥
・個性を活かす
・リビングルーム
・異年齢クラス
・公立の園等
カナダ ● ●
ニュージー
ランド
●
フィンランド ● ● ● ●
デンマーク ● ●
オランダ ●
ドイツ ● ●
日本 ● ●
3つのパートに分けてお話しします
1.多民族国家
2.高福祉国家
3.経済国家
1.多民族国家 カナダ・ニュージーランド
カナダ
ニュージー
ランド
世界で人気の「住みやすい国」
カナダ基礎情報
• 教育の目的
• 自己肯定感、自尊感情の確立
• 教育システム
• 義務教育は6歳ないしは7歳から15歳も
しくは16歳
• 公立学校は基本的に日本の高校まで
授業料無料
• 州によって、教育制度が異なる
• ユニークな点
• 異年齢保育
• 多種多様な人種
• 親が子育てに自信をもてるようサポート
• 人口:約34,500,000人(日本の1/4)
• 面積:9,985,000km2(日本の約27倍)
• 歴史
• フランス領時代(1545年~1846年)
• 自治領時代(1848年~1921年)
• 主権国家となる 1926年~
• 文化
• フレンドリー、異文化に関して寛容
• 高い人権意識がある
• 公用語は英語とフランス語
(参考)モンテッソーリ教育
【子どもは自分の力で発達し、学んでいく】
イタリアでマリア・モンテッソーリ(女医)が提唱した
おとなは、子どもの姿を理解して見守る
環境を用意するのがおとなの仕事
すべての子どもに敏感期があり、集中現象が現れる
0~24歳までの成長を4段階に分けて考える
幼児期:0~6歳 五感を通しての体験をたくさんすることが大事
児童期:6歳~12歳
思春期:12~18歳
青年期:18歳~24歳
①日常生活の練習: Practical Life②感覚教育: Sensorial③言語教育: Language④算数教育: Mathematics⑤文化教育
①マットを敷く
②教具を選んで持ってくる
③ワークをする
④教具を戻す
⑤マットをしまう
印象に残ったカナダの教育
• こどもたちが自分の意思で選ぶ、ワーク
• こどもたちが園に馴染めるように、“Oh my sweet!!” “Oh dear!!”
• 今日は何を学んだの?Or楽しかった?
ゆっくりと時間が流れる
ニュージーランド基礎情報
• 教育の目的• 学ぶ力をつけさせる
• 教育システム• ニュージーランドの義務教育は6歳から16歳まで
• 5歳の誕生日から小学校に入学する• 義務教育は授業料無料
• ユニークな点• テファリキをベースとした幼保一元化• 親子で参加するプレイセンター
• 人口:約424万人(日本の約1/30)• 面積:約27万km2(日本の約4分の3)• 歴史
• マオリの人々が暮らしていた• ヨーロッパからの移民が増える(1769年~)• イギリス領(1840年~1907年)• 独立(1907年~)
• 文化• 自由• ニュージーランド人であることを誇りに思う(キィウィと呼ぶ)
• 人懐っこい・寛容
(参考)テファリキ マオリ語で縦横に編むという意味
■4つの原則
◎エンパワメント
子ども自身が力を付ける
◎ホリスティックデベロップメント
全人的成長
◎ファミリーアンドコミュニティー
家族と地域の中で育つ
◎リレーションシップ
さまざまな関係をつなげる学習
■ 5 つの要素◎子どもの健康と幸福(Well-being)◎子どもの学び(Contribution)◎体験による探求(Exploration)◎子どもの個性と性格(Belongings)◎対話力・発言力(Communication)
【子どもを主体的に育てていこうという考え方】 Learning Storyこどもの発想や遊びを、
行動だけではなく内面の感
情や思考を含めて記録した
もの
親もいつでも閲覧可能
ニュージーランドで印象に残ったこと
•みんなが成功できるおもちゃを置く• “Don’t Care what children doesn‘t listen to you, care children watch what you do ”•先生同士の“振り返り”を大切にしている• Love,Support,Hugだけで十分
2.高福祉国家 フィンランド・デンマーク
フィンランド デンマーク
”競争しない“教育で注目
フィンランド基礎情報
• 教育の目的
• 一人ひとりの可能性を最大限に引き出す
• 教育システム
• 義務療育は7歳~16歳
• 教育は全て無料
• ユニークな点
• ネウボラおばさん制度
• 教員の地位と学力が高い
• 先生を評価しない学校のシステム
• 学習時間が短い
• 人口:530万人 (日本の1/24)
• 面積:33万km2 (日本とほぼ同じ)
• 歴史
• ゲルマン民族の大移動
• スウェーデン時代(1155年~1809年)
• ロシア時代(1809年~1917年)
• 1917年独立
• 文化
• 礼儀正しい、シャイ
• 自分の意見ははっきり言う
• 寛大
印象に残ったフィンランドの教育
• 森のようちえんの3つの効能
• バランスボールに乗りながら授業を受ける子ども
• テクノロジーのない環境を求める親
「世界一幸福な国」デンマーク基礎情報
• 教育の目的
• 人格形成を平等に助長させ、社会の一員と
しての責任と義務の遂行
• 教育システム
• 義務教育6歳~15歳
• 国づくりは人づくり。教育投資トップクラス
• ユニークな点
• 自然教育
• PISAスコアの向上を目的に教育改革中
• 第3の子どもの居場所、ユースセンター
• 人口:560万人(日本の1/24)
• 面積:4万km2(日本の1/8)
• 歴史
• スウェーデンとの戦争でエストニアとノルウ
ェーの一部を失う(15世紀)
• 1849年に立憲民主主義を確立
• 1944年アイスランドが独立し、今の大きさ
• EUに加盟せず、独自の経済を担保
• 文化
• 個人主義
• 狭くても豊かに暮らす知恵=デザインセンス
印象に残ったデンマークの教育
• 心の動き(内面)に目を向ける• どの園にもある瞑想ルーム• 3年生の子がパワーポイントで堂々プレゼン
3.経済国家 オランダ・ドイツ
オランダ ドイツ
「世界で一番子どもが幸せな国」
オランダ基礎情報
• 教育の目的
• 自立して考える「市民」を形成する
• 教育システム
• 教育の自由を保障
• 16歳までの教育無償
• ユニークな点
• 住んでいる地域や所得に関係なく自由
に学校を選べる
• ピラミッドメソッドやイエナプランなど先
進的な教育が普及
→日本の3周先を行く?!
• 4歳から小学校入学
• 人口:1600万人(日本の1/7)
• 面積:4万km2(日本の1/8)
「世界は神が創られたが、
オランダはオランダ人が創った」
• 歴史
• 17世紀にスペインから独立し、商工業で発
展
• 第二次世界大戦でナチスドイツ統制される
→ナチス全体主義への批判
• 文化
• 市民社会
• 自由を尊重する文化
• オープンな人柄
(参考)イエナプラン
【一人一人を尊重しながら自律と共生を学ぶ教育】
• 個性を活かすマルチプルインテリジェンス
• 人間の生活リズムに即したカリキュラム
(Work,Play,Talk,Celebrate)
• 異年齢クラス
• サークル対話
• ワールドオリエンテーション
マルチプルインテリジェンス
(8つの強み)
印象に残ったオランダの教育
• テストの結果より生きるためのスキル重視
• 評価は自己評価
• 善良な市民を育てる教育
• 学校と地域との連動
教育哲学者を輩出する国
ドイツ基礎情報
• 教育の目的• こどもが自らの力で、自然と成長させていくこと
• 教育システム• 6歳から4年間は義務教育で基礎学校にいく• 公立学校の授業料はほぼ無料• 10歳には自分の将来の職業を意識する
• ユニークな点• 待機児童対策として森のようちえんが発展• シュタイナー教育発祥の地
• 人口:約8904万人(日本の74%)• 面積:約36万km2(日本の約94%)• 歴史
• ドイツ帝国成立 1871年• ヒトラー首相に就任 1933年• 西独、東独の成立 1949年• 東西統一 1990年
• 文化• まじめで神経質• 時間に厳しい• ビールが大好き(常温で飲む)• 仕事=苦役である
(参考)シュタイナー教育
【知性だけでない、子どもの心や体、精神性を含めた全人教育】
• 感覚教育、教育は芸術であるという考え方
• 色合いや素材を大切にしている
• 7年周期で、意志・感情・思考の力を得る
ドイツで印象に残ったこと
• イメージの世界を大切にする• 2歳、3歳でもナイフやトンカチを使う• 自然と生まれる助け合い
日本の幼児教育 視察先
北海道トモエ幼稚園
• お母さんが輝く園
• 昔の地域社会をイメ
ージした生活環境
• 窓際のトットちゃんの
トモエ学園
鳥取県森のようちえん
• 信じて見守る保育
• 地域活性
• 森のようちえん
長野県森のようちえん
• 日本で最初の森のよう
ちえん
• 学校法人と連動
• シュタイナーを一部取
り入れ
くにたち はたけんぼ
• 農家×市民×自治体
の運営
• 畑の中で自然体験
• 地域の人、自然、動物
との触れ合い
日本で印象に残ったできごと
• 「やってみないとわからないでしょ!」• 森の中で育つ子どもの変化• 毎年違うプレゼント• それぞれの許容範囲で子どもに関わる
ここからまとめ
欧米と日本の教育の違い
教育の
特徴
文化的
背景
欧米 日本
主体性・創造性>規律性
個人活動>集団活動
スキル重視>知識重視
伸ばす>正す
主体性・創造性<規律性
個人活動<集団活動
スキル重視<知識重視
伸ばす<正す
• 歴史/土地柄:侵略する/される、
陸続き
• 人口:少ない
• 人々の価値観:個人主義
• 社会の価値観:市民社会
• 歴史/土地柄:侵略する/
島国
• 人口:多い
• 人々の価値観:全体主義
• 社会の価値観:企業社会
教育先進国の国々が
幼児教育で重視していること
• Self confidence(自信)
• Self esteem(自己効力感)
• Self responsibility(自己責任感)
• Sociality(社会性)
• Creativity(創造性)
Trust(信頼)/ Respect(尊敬)
大切な3つの要素
環境
人
教育
子どもに関わる大人の在り方
個々に合わせた教育の内容/学び方
子どもの頭と心と体を育む環境づくり
世界の素敵な園の共通点~人~
対人;すべての人に敬意を払っている(信頼と尊敬に基づいた関り)
対自分;精神的に自立している学び続けている
対組織;組織がフラットで、連携が行われ、日常的に振り返りの共有が行われている
世界の素敵な園の共通点~環境~
自然を感じられる空間
パターン化されていないおもちゃ(素材)
いろいろなおとなとの関り
活動場所と内容を選択できる
世界の素敵な園の共通点~教育~
五感を使う
ひとりひとりにあった学習方法とスピード
社会と学習を結び付けている
自主性を重んじる学習方法
大切だなと思ったこと
幅を広げる
長期的に見る
自分の本音に耳を傾ける
渡辺久子「子どもを伸ばすお母さんの不思
議な力」(札幌トモエ研修より)
本音
安心・意欲 不安・緊張
本音に基づく
行動
あるべき
肥大した
あるべき
あるべきに
怯えた行動
抑圧された
本音
私たちのこれまでと今後の活動や子育て・教育に
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