Transcript
Page 1: › about › report › 2018 › ku57pq00002cq9... 開発パートナーシップと SDGsへの取り組み国際的な開発機関とのパートナーシップ SDGs達成のためには、他の開発機関との緊密なパー

 新興国の成長が加速化する一方、グローバル化から取り残される国はいまだ多く、地域内・各国内の格差の拡大が懸念されます。また、開発課題は複雑化・多様化しています。 2015年に国連で採択された持続可能な開発目標(SDGs)を含む「持続可能な開発のための2030アジェンダ」では、ODA以外も含めた資金、技術、能力構築といった実施手段の強化や効果的なパートナーシップの推進を掲げています。開発途上国に向けた資金全体に 占 め る O D A の 割 合 が 減 少 す る な か 、SDGs達成はODAなどの公的資金のみでは困難であり、民間資金の動員をはじめ多様なパートナーシップやアプローチが不可欠です。 JICAは、事業で最大のインパクトを生み出し、SDGs達成に貢献するため、新たなアクターを含む幅広い国内外のパートナーとの連携・共創に取り組んでいます。

● SDGs達成に向けたJICAの取り組み JICAは、SDGs達成に向けた方針※1の下、国内外で取り組みを進めています※2。 国外では、SDGs達成に向けた課題の解決を目指す国際機関「アフリカ地域持続可能な開発目標センター

(SDGC/A)」(2015年設立、本部はルワンダ)と2017年

10月、業務協力協定を締結※3。飢餓・栄養(ゴール2)、健康(ゴール3)、質の高い教育(ゴール4)などに向けた協力の推進、開発の知見の発信をSDGC/Aと進めています。 国内では、2017年11月にSDGs関連シンポジウムを日本経済新聞社と共催するなど、日本経済団体連合会(経団連)、日本証券業協会、メディア、大学など多様なパートナーとの連携により、SDGsへの理解と取り組みの推進を図りました[➡ 下事例を参照ください]。

開発パートナーシップとSDGsへの取り組み幅広いアクターと連携し、SDGs達成に貢献する取り組みを促進

パネルディスカッションの様子

民間と連携したSDGsの取り組みを広く発信

 JICAは2017年11月、「SDGsから考える持続可能な社会」フォーラムを日本経済新聞社と共催しました。 フォーラム冒頭、JICA理事長は

「SDGs達成には国内外パートナーとの連携が必須」、「JICAはSDGsをプラットフォームとし、途上国開発のカタリスト(触媒)、アクターとして取り組む」と表明。「SDGsに挑む企業 新たな時代の開拓者」と題したパネルディスカッションでは、日本企業の経

日経社会イノベーションフォーラム「SDGsから考える持続可能な社会」

営層やJICA役員が、SDGs達成に向けたJICAと企業の連携強化に向けた課題を事例とともに議論し、多様なパートナーシップを通じたアイデアや価値の共創を呼びかけました。 イベントには民間企業を中心として600名以上が参加し、SDGsに向けたパートナーシップ強化の取り組みに熱心に耳を傾けました。

パートナーとの連携

※1 2016年9月にSDGs達成のための取組方針を定めたポジション・ペーパーを策定・公開。https://www.jica.go.jp/aboutoda/sdgs/ku57pq00001qfok2-att/JICA_torikumi.pdf※2 JICAウェブサイト[SDGsの取り組み] https://www.jica.go.jp/aboutoda/sdgs/index.html※3 2018年3月には、JICA理事長がSDGC/A運営委員会理事に就任しています。

SDGsの17ゴール

JICA年次報告書 201862

Page 2: › about › report › 2018 › ku57pq00002cq9... 開発パートナーシップと SDGsへの取り組み国際的な開発機関とのパートナーシップ SDGs達成のためには、他の開発機関との緊密なパー

● 国際的な開発機関とのパートナーシップ SDGs達成のためには、他の開発機関との緊密なパートナーシップにより、ドナーごとに得意な分野・技術を補完し合ったり、単独では対応が難しい課題に対してより効果的・効率的な支援を提供したりすることが求められます。さらに、国際的な開発援助の議論に参画し、JICAの経験・知見を発信することは、世界の開発の取り組みの質的な向上と、日本の経験・アプローチに対する理解につながります。 そこで、いくつかのドナーとは戦略的開発パートナーとして、定期協議を行っています。2017年度は、世界銀行総裁とJICA理事長が参加するハイレベル対話(4回目)を実施し、民間資金動員や民間セクター開発における連携強化や、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ

(UHC)※4達成に向けた取り組みを共に推進することなどについて合意しました。 このほかアジア開発銀行

(ADB)、国連開発計画(UNDP)、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)とも定期的な協議を行いました。 さらに、横浜で開催されたADB年次総会(5月)、東京で開催された国際女性会議WAW!(11月)やUHCフォーラム(12月)[➡ P.10を参照ください]など多くの国際会議・セミナーにおいて、JICA理事長ほかが基調講演やパネルに登壇し、JICAの考えや取り組みなどを積極的に発信しました。

● 新興国とのパートナーシップ、南南・三角協力 上記の伝統的な開発機関に加え、韓国、中国、タイ、インドネシア、ブラジル、トルコなどの新興国が開発協力実施国となるなか、日本の長期にわたる開発協力実施国としての経験を背景に、JICAはこれら新興国との対話を通じて、援助アプローチや開発課題への取り組みの共有を進めています。具体的には、中国輸出入銀行、韓国国際協力団(KOICA)や韓国輸出入銀行対外経済協力基金(EDCF)との定期協議などを実施しています。 また、新興国・開発途上国の開発経験の共有を促進する南南・三角協力については、JICAの長年の経験が国際社会から高く評価されています。2017年度はトルコで開催された「国連南南協力EXPO」で、トルコ政府との三角協力「アフガニスタン女性警察官支援」を題材に、各関係者のオーナーシップや、関係各国間をつなぐ調整役の重要性などを国際社会に発信するなど、さまざまな国際会議でJICAの経験を発信しています。

2017年5月、横浜でのADB年次総会で保健分野におけるADB・JICAの協力覚書を締結。署名式にて、左から北岡伸一JICA理事長、木原稔財務副大臣、中尾武彦ADB総裁

地域別取り組み

課題別取り組み

パートナーとの連携

活動報告

きれいな街の実現を目指し、国内外の知見を結集

 アフリカの都市部では、経済成長と人口増加に伴いごみ問題が深刻化し、人々の健康な暮らしに悪影響を与えています。 JICAはこの現状を踏まえ、アフリカ29カ国・58都市(2018年3月末時点)、環境省、横浜市、国連環境計画などの国際機関、NGOなどが参加する「アフリカのきれいな街プラットフォーム」の設立を主導。2017年4月、モザンビークの首都マプトで設立に至

アフリカ地域 アフリカのきれいな街プラットフォーム

りました。 プラットフォームでは、SDGsのゴール11、12に挙げられている「都市の衛生環境の改善」「廃棄物の適正な管理」などへの貢献を目指し、年次会合や横浜での研修、SNSによる情報交換などの活動を実施します。JICAはこれらの活動の支援を通じて、都市の廃棄物管理に関する日本とアフリカ各国の知見や経験の共有、官民の資金動員を推進しています。

※4 「すべての人が、生涯を通じて健康増進・予防・治療・機能回復に関する基礎的なサービスを、必要なときに負担可能な費用で受けられること」を示す概念。

モザンビーク・マプトでのプラットフォーム設立準備会合にて

JICA年次報告書 2018 63


Recommended