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●●第27回創立50周年記念日本証券アナリスト大会●●

A S I F会長挨拶

アジア証券・投資アナリスト連合会(ASIF)会 長 萩 原 清 人

 ご紹介いただきました萩原です。私は、日本証券アナリスト協会の専務理事でありますが、今

回は、共催者のかたわれであるASIF(Asian Securities and Investments Federation―アジア証券・

投資アナリスト連合会)の会長としてご挨拶申し上げます。

 本日は、多数の皆様にご参加いただきましてありがとうございます。また、日本証券アナリス

ト協会の創立50周年と合わせて、ASIFの2012年大会を開催できることを大変うれしく、また光

栄に思います。私からはASIFの沿革と最近の状況について、お話し申し上げ挨拶に代えさせて

いただきます。

 ところで、当初のご案内では、私とASIF副会長である中国の代表の2人で挨拶を分担するこ

ととしておりましたが、ご承知のような、日本と中国の間でややこしい問題が発生し、安全上の

懸念を理由ににわかに中国からは欠席ということになりました。もちろん、ご本人には、全く関

係のないところで決定されたのではないかと推察されますが、従来からASIFでは、政治問題を

持ちこまないという方針を明確に打ち出しているだけに、今回の事態は誠に心外です。

 さて、それはさておきASIFは、33年前の1979年、ASAC(Asian Securities Analysts Council―ア

ジア証券アナリスト協議会)として設立され、当時の参加協会は、オーストラリア、香港、日本、

韓国に加え、台湾(チャイニーズ・タイペイ)がオブザーバーとして参加しておりました。その後、

1995年にASAF(Asian Securities Analysts Federation―アジア証券アナリスト協会連合会)として、

2012年アジア証券・投資アナリスト連合会(ASIF)東京大会第27回創立50周年記念日本証券アナリスト大会

54� 証券アナリストジャーナル 2012.11

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オーストラリア法人となり、さらに2008年に、名称を現在の、ASIF(Asian Securities and

Investments Federation―アジア証券・投資アナリスト連合会)に変更し、この間、2002年に事務

局を東京の当協会内に移転しております。

 現在のメンバーは、オーストラリア、中国、チャイニーズ・タイペイ、香港、インド、日本、

韓国、マレーシア、ニュージーランド、タイ、計10協会です。ピーク時には14協会でした。し

かし、かつてのアジア通貨危機、リーマンショック等、さまざまな事情により、離脱する協会が

発生し、現在の状況になっております。前回の2004年の東京での大会、この時も日本証券アナ

リスト大会と共催でありましたが、その際の盛大さと比べると正直なところやや寂しい感じもし

ます。

 とはいえ、その傘下には、約55,000名の個人会員を抱えており、引き続き各協会は、厳しい状

況の中ではありますが、アジア、オセアニアにおける資本市場の発展、あるいは、証券アナリス

トの育成に尽力しているところであります。こうした過程を通して痛感しているのは、アジアの

時代と言われながら、こと証券アナリストについては、各国・地域による差が極めて大きいこと

であります。と同時に、証券アナリストを育成する教育プログラムを確立している協会は、各面

で強固であることであります。

 こうした認識の下に、ASIFは、証券アナリスト育成ないしそのための教育プログラムの整備・

充実に力を注いできております。その役割の中心にあるのが、常設の教育委員会(Education

Committee)であり、アナリスト教育のサポート、中でも国際公認投資アナリスト(CIIA)資格

の推進に重点的に取り組んでいます。現在、ASIFの10協会のうち、中国、チャイニーズ・タイ

ペイ、香港、インド、日本、韓国の6カ国が、CIIA試験を実施しており、着実にアジア地域の

CIIA資格保有者が増加しております。

 このCIIA試験を運営する主体が、ACIIA、国際公認投資アナリスト協会であります。ACIIAは、

2000年に設立され、日本は、当初から枢要メンバーとして参画しており、現在の参加協会は、

35カ国・地域の個別メンバー、そしてASIFと欧州の証券アナリスト協会の連合会であるEFFAS

の計37団体に上り、そのカバーする地域は、アジア、欧州、中・南米から、アフリカに及んでい

ます。

©日本証券アナリスト協会 2012� 55

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 最近では、CFAの地盤である英国からCISI(Chartered Institute for Securities and Investment)が

新たに参加しましたし、アジアからは、ベトナムの証券監督当局State Securities Commission(SSC)

傘下の教育機関Securities Research and Training Center(SRTC)も新たに加わっています。

 また、ASIFの教育委員会では、メンバー協会の教育活動をサポートするための多様な施策を

実施しております。比較的体制が充実しているメンバー協会からの講師派遣、各メンバー協会

のテキストや、過去の試験問題等を提供し合う、Exchange Programがそれで、講師派遣について

は、コストの一部をASIFが補助する仕組みも設けております。

 ASIFでは、このほか、アドボカシー委員会(Advocacy Committee)、コミュニケーション委員

会(Communications Committee)が常時活動しております。近年の動きをご紹介しますと、アド

ボカシー委員会は、これまで、コーポレート・ディスクロージャーと、証券アナリストのリサー

チにおける利益相反問題につき、2つのポジションペーパーを発表しているほか、先般の世界的

な金融危機後の金融規制の強化、コーポレート・ガバナンスとクレジットレーティング・エージ

ェンシーに関する規制についての情報も収集し、ホームページに掲載しております。

 また、コミュニケーション委員会では、四半期ごとにニューズレターを発行し、さらに協会の

概況を整理したイヤーブック、証券分析関連の優れた論文を掲載したE-ジャーナルの発行等、幅

広い活動を積極的に実施してきております。皆様には、ぜひ一度ASIFのホームページをご覧い

ただければと思います。

 さて、2008年のリーマンショックに続き、最近の欧州のソブリン問題が世界的に影を落とし

ているのは、ご承知の通りであり、ASIFのメンバー協会も軒並み、厳しい環境に置かれており

ます。そうした中で、東京において、このような素晴らしい大会を、日本証券アナリスト協会の

50周年記念大会と共同で開催することができたのは幸せなことであり、今後ASIFを一層活性化

させていきたい、アジア、オセアニアにおける証券アナリストの育成、レベルアップに貢献しな

ければならないと気持ちを新たにしているところであります。

 さて、先ほど、稲野会長も触れておられましたが、日本証券アナリスト協会では、2つの基金

を創設しました。このうち「アジア証券アナリスト教育支援基金」は、アジアにおける証券アナ

リスト教育に貢献することを目的とするものであり、ASIFの会長としては大変ありがたく期待も

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しております。これまで、日本証券アナリスト協会には、長年にわたりアジア諸国の証券アナリ

スト教育整備の面で、物心両面にわたり支援をいただいておりますが、まだまだ立遅れているの

は事実です。引き続きご支援、ご協力をお願い申し上げる次第です。

 今大会においては、ご案内の通り午前、午後とも多彩なセッションが用意されていますし、夕

方からは懇親パーティーも予定されています。

 アジア・オセアニア各国から参加されている方々も、大いに楽しみながらアジアあるいは日本

の現状と未来について、知見や示唆を得られるであろうと期待しております。

 最後に、ASIFのメンバー協会を代表して、この大会を準備していただいた日本証券アナリス

ト協会と関係者の皆様に感謝しつつ、この大会の成功を祈念して、私の挨拶といたします。

 ありがとうございました。

©日本証券アナリスト協会 2012� 57


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