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図1:感性イノベーションが実現する社会

図2:感性COI拠点・夏の研究会(生理学研究所にて)

 文部科学省 「革新的イノベーション創出プログラム(COI)」に、広島大学がマツダと連携して応募した「精神的価値が成長する感性イノベーション拠点(以下、感性COI拠点)」結果、応募総数190、採択件数12という狭き門を突破して採択されました。本プログラムは、10年後の社会像を見据えて、企業だけでは実現できないハイリスクではあるが実用化の期待が大きい異分野融合・連携型の革新的なイノベーションの実現を目指す拠点に、最長9年間、大型研究費を支援するものです。今年4月、旧第3中央診療棟1階に感性イノベーション拠点施設が竣工し、3T MRIが導入され、海外から招へいした優秀な特任助教数名らとともに研究が本格的に始動しました。 「モノ」の豊かな現代社会において、うつ病や自殺者の急増など社会問題化しており、産業革命以後の物質的なイノベーションは限界に来ています。そこで感性COI拠点では、農沢隆秀マツダ技術研究所長をプロジェクトリーダー、私が研究リーダーとして、従来の「モノの豊かさ」から、精神的価値が成長する「こころの豊かさ」へのパラダイムシフトをコンセプトに、モノとこころが調和する「こころ豊かな社会」を実現する感性イノベーションの創出を提案しました。 感性イノベーションの鍵となるのが、人と人、人とモノを感性で繋ぐBrain Emotion Interface(BEI)の開発であり、最新の脳科学を応用したBEIの開発に取り組んでいます。BEI技術により、これまで困難であった感性の可視化(見える化)を可能にし、個人の感性に対応した製品、サービスの開発を通して、衣食住、車、教育、医療など多様な分野において社会の大きな変革が起こることを期待しています(図1)。 広島大学を中核機関とする感性COI拠点では、マツダをはじめ、シャープ、中国電力、三菱レイヨン、アンデルセンなど多くの企業が参画し、また、広島県主催のひろしま感性イノベーション推進協議会などとも連携して、産官学一体となってBEIの開発、BEIを活用した製品開発に取り組んでいます。 また、感性COI拠点は、サテライト拠点として、知覚研究で実績のある生理学研究所とNTTデータ経営研究所を中心としたグループ、光技術を得意とする静岡大学、浜松ホトニクスを中心としたグループが加わり、総勢20を超える大学、研究機関、企業が参画するユニークな拠点です。9月には岡崎にて夏の研究会と称して、これら参画機関に属する100名を超える若手研究者、開発者が一同に集まり、ワークショップ「BEIが実現すると社会はどう変わるか」などで熱心な議論が繰り広げられ(図2)、最長9年間のプロジェクトですが、良い形でスタートダッシュを切ることができました。今後、広島大学を中心として全参画機関一丸となって、BEIの開発と社会実装を目指す所存です。

Activities

山脇 成人 医歯薬保健学研究院 応用生命科学部門 医学分野 精神神経医科学 教授革新的イノベーション創出プログラム「精神的価値が成長する感性イノベーション拠点」

活動

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