2016年10月5日
科学技術・学術審議会 生命倫理・安全部会
第94回特定胚等研究専門委員会
「動物性集合胚」研究の社会的必要性
ー新しい治療法の実現を期待する患者・家族の立場からー
認定NPO法人日本IDDMネットワーク (1型糖尿病患者・家族の支援団体)
理事長 井上 龍夫
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報告内容 ■ 1型糖尿病について ■ 日本IDDMネットワークの活動紹介 ■ 患者団体としての研究支援活動 ・ 活動のゴールは1型糖尿病の「根絶」 ・ 「膵島移植」から「再生医療」へ ■ 再生医療の実現に向けて、「動物性集合胚研究」の 研究加速化のために規制緩和を
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1型糖尿病とは 生命維持の必須ホルモン「インスリン」が絶対的に不足している疾患 ・ 生きるためには生涯インスリン補充が欠かせない ・ 生活習慣(食生活や運動不足)が原因ではない ・ 遺伝性や感染性はない
●1型糖尿病の概要
・ すい臓からインスリンが短期間に分泌されなくなる 原因不明:機序としては大部分が自己免疫の誤作動とされる ・ 糖尿病全体の数%、2型に比べ小児期発症が多い ・ 日本での年間発症率:人口10万人あたり約1~2人の割合 ・ 有病者数は正確にはわからないがおよそ10万人と推定 ※2型糖尿病(主に生活習慣が原因) 糖尿病全体の95%以上、中高年の発症が多く、患者数は可能性を 否定できない人含めて約2000万人と推定される(2013年 厚生労働省) 3
日本
中国 韓国
国別1型糖尿病年間発症率 (14歳以下、人口10万人当たり)
アジア圏は他の地域に比べて少ない
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1型糖尿病と2型糖尿病の発症年令分布
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1型糖尿病の治療 ●「インスリンの補充」が必須(数日の無補充で死亡に至る) 1日3回~4回の注射または小型ポンプ(機械)による持続的なインスリンの補充 標準的インスリン補充タイミング(1日4回) ①朝食前 ②昼食前 ③夕食前 ④寝る前
●インスリン補充の前に血糖値測定 指などから少し血を採って機械で測定
●毎回、血糖値と食事中の炭水化物量に着目して インスリン量の決定(低血糖に注意)
※生活習慣病でないので基本的には食事制限、運動
療法などは不要
※高血糖が長期に続くと合併症のおそれ(失明、人工透析など) ●インスリン補充は対症療法 ⇒「治す」治療法ではない 現在「すい臓移植」以外に根治の治療法は無い
⇒ 生涯、インスリン補充を続けて生きていく
インスリン自己注射の様子
インスリンポンプによる補充 6
1型糖尿病の患者・家族会の全国連携組織としてスタート
●阪神・淡路大震災時の患者・家族同士の助け合いがきっかけ
1995年9月 設立
2000年8月 NPO法人(事務局を佐賀市へ移転)
2012年8月 認定NPO法人
●運営は患者、家族+医療者、防災NPO等多様な人材で
●会員は全国の患者・家族会(27団体)等 約2600名
個人会員 全国各地の患者等413名
賛助会員 企業5社、個人1名
全国組織「日本IDDMネットワーク」の活動 (全国の1型糖尿病患者やその家族を支援する認定NPO)
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<ミッション>
インスリン補充が必須な患者とその家族一人ひとりが
“希望”を持って生きられる社会を実現する。
その最終ゴールは、
1型糖尿病を「治らない」病気から「治る」病気にする。
日本IDDMネットワークの ミッションと活動内容
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活動概要
■ 救う ・患者・家族への情報提供、相談対応 ・発症直後の患者・家族へ“希望のバッグ”配布 ・療養、生活に必要な本等を発行
■ つなぐ ・患者・家族と 企業、医療者、行政、メディア等との連携
■ 解決する ・1型糖尿病を「治る病気」にするための研究支援
希望のバッグ
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Part 3:災害対応編 Part 2: 生活編
情報提供誌「1型糖尿病 お役立ちマニュアル」シリーズ
Part 4: 先進医療編
日本IDDMネットワーク 編集・出版
Part 1: 初級編
Part 5 体験談編 Part 3別冊:東日本大震災体験集
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究極の「救う」 プロジェクト
国内で毎年発症する患者(約1000人)へ 発症初期に必要な情報・ツール類を詰め込んだ
「希望のバッグ」 を贈る(無料)
丸紅基金様の 社会福祉助成事業により開始
【協力企業:パートナー】 ・プラチナパートナー2社 ・ブロンズパートナー5社 ・コーポレートパートナー4社
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医療従事者
研究者
文部科学省 厚生労働省
医療企業
患者・家族 (NPO)
メディア
「繋ぐ」
日常診療
行政(国・地方)
・研究推進・管理 ・教育、学校生活 いじめ、差別ない環境
・医療(推進管理・安全・医療費) ・福祉制度 ・就労支援
・医学医療の 研究開発 ・医薬品
・医療機器 開発・供給
一般企業
学校・職場
日常生活
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解決する
いつかはこの病気を「治る」病気に・・・ 患者団体として研究支援(助成)
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「1型糖尿病の根絶」に向けた
新しい治療研究・基礎研究への
患者・家族主体で支援活動
根絶=根治+治療+予防
「解決」→将来の「根絶」に向けて
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患者・家族として医学・医療の進歩を ただ待つだけでいいのだろうか・・・
私たちがお手本にした
アメリカの1型糖尿病研究基金(JDRF)
1970年に1型糖尿病の親が設立 現在は1年間に100億円以上研究費助成
膵島移植など治療研究開発の大きな原動力!
日本でも同様の研究助成の基金を立ち上げ
【動機】
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移植ヒト膵島
本邦初のヒト膵島移植光景
2004年4月7日 京都大学病院
「膵島移植」により根治が見えてきた!
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臓器移植ではない「細胞・組織移植」としての膵島移植
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患者の「膵島移植」についての不安・課題 ■医学的側面
・移植された膵島働き(予後)
・移植手術を受けられる患者への制約条件
・免疫抑制剤の副作用
・ドナーの供給数不足
・生体膵島移植のドナーのリスクなど
■医療費(経済的)側面
・移植手術費用
・月々の免疫抑制剤の医療費
・保険適用の見通し
当初、インスリン離脱への期待感が大きく、その後の挫折感・・・ ⇒患者のメンタルな サポートの必要性認識
メンタル面
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2005年8月に基金設立 【基金の目的】 1型糖尿病の根治・根絶に向けた 研究開発の促進・支援
■助成実績
・2008年度 200万円(2件)
・2010年度 300万円(3件)
・2012年度 200万円(2件)
・2013年度 300万円(3件)
・2014年度 500万円(3件)
・2015年度 1500万円(7件)
バイオ人工膵島 5000万円(2件)
・2016年度 1500万円(5件)
合計 9,500万円(27件) の助成額 (2016年10月現在)
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●膵島移植 2件
●バイオ人工膵島 4件
●遺伝子治療 2件
●再生医療 12件 (うち9件はiPS細胞関連)
●治療の高度化 4件
●予防・ワクチン 3件
これまでは圧倒的に再生医療関連が多く、特にiPS細胞による再生医療への期待が高い。
これまで支援した27件の研究分野
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バイオ人工膵島(異種(ブタ)の膵島の利用)
ブドウ糖代謝
生体
免疫隔離・半透膜
インスリン産生 ブドウ糖センサ
⇩ インスリン分泌
膵島細胞 ブドウ糖 酸素 栄養素
インスリン
免疫細胞 抗体・補体
バイオ人工膵島
・半透膜で膵島細胞を免疫反応から防御 →免疫抑制剤が不要 ・ヒト膵島にかわる各種の膵島細胞が利用可能 →ドナー不足が解消
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国の研究助成の届かない有望分野に患者団体として支援
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・iPS細胞、ES細胞による
膵島再生・自家移植
1型糖尿病「根治へのロードマップ」
・膵島移植の改善(膵島分離、移植細胞の寿命)
・異種移植、免疫寛容⇒バイオ人工膵島
・移植膵島の規格化と量産化 (膵島細胞の株)
・様々な幹細胞の利用
再生医療、免疫制御、膵島移植技術の高度化
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患者・家族のiPS細胞等による「再生医療」への期待
■患者・家族の期待
・「インスリン補充」とそれに伴うリスクからの解放
・発症前の健康な体を、自らの細胞により取り戻したい
・安全性が高く、低コストで誰でも受けられる医療として
■期待する医療技術
・iPS細胞による膵島再生・自家移植の実現
・並行して免疫作用の制御技術の確立(自己免疫抑制)
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異種動物のお腹を借りた移植用臓器の作成に期待
これまでにマウスの体内にラットiPS細胞由来の膵臓ができた
・ブタ体内でのヒトiPS細胞由来の膵臓作成の可能性 ・私たちの研究助成でもこの関連研究2件を支援実施
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■ 危惧 ・2012年から「動物性集合胚の動物胎内への移植」につい て見直し検討が開始されたものの、現在に至るまで規制 緩和についての具体的な指針が示されていない ・東大の中内教授らの独創的な日本発のアイディア(胚盤 胞補完法)について海外の多くの模倣者、競争者が出現
■期待・要望 ・移植用臓器の作成法として有望なこの研究分野の加速化 ・そのために日本で「動物性集合胚の動物胎内への移植」 の実施に向け、現規制の緩和を実現 ・インスリン補充からの解放、そして根治を願う1型糖尿病 患者・家族の期待に応えて、一刻も早い対応を期待する
日本における動物性集合胚研究についての 危惧と期待・要望
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