相対性理論
特殊相対性理論アインシュタイン(A.Einstein, 1905)高エネルギー物理を扱うための基本理論
一般相対性理論アインシュタイン(A.Einstein, 1916)
重力の理論
クイズりらてぃびてぃ
第1問
ボールの速さ
宇宙で野球?
ボールの代わりに光をあてる
ロケットのキャッチャー
光の速さ
クイズりらてぃびてぃ 第1問
動いているロケットに入ってくる光の速度を測定すると、止まって測定したときに比べて
①速くなる ②同じになる ③遅くなる
正解②同じになる
光はボールや波と違って、止まって観測しても、動きながら観測しても、その速さはかわらない。
光のもつ波としての性質屈折する 例 レンズ、プリズム
干渉する 例 ヤングの実験
2つの光線をぶつけてもすりぬける、回折する
波とは・・・「媒体」の変化がつぎつぎに伝わっていく現象
例えば 音の媒体 = 空気 地震の媒体 = 地表面光が波なら、光の「媒体」は何か?
光の「エーテル」媒体説「エーテル元素」アリストテレス (BC4世紀)
デカルト、ホイヘンス、フック、ニュートン(17世紀) オイラー (18世紀) . . .
ヤング(T.Young) 1802 エーテル媒体説
フレネル(A.J.Fresnel)1802 静止エーテル説
マックスウェル(J.C.Maxwell)やローレンツ(H.A.Lorentz)もエーテル説の立場をとっていた
地球が「エーテル」にみちた宇宙を運動するとすると?
マイケルソン-モーレーの実験
「エーテル」の風ってある?
装置を90°回して干渉縞の変化があるか?
マイケルソン-モーレー(1887)干渉縞に変化は見られない。
したがってエーテルは存在しない。
光速は、止まって測定しても、動きながら測定しても
常に一定である
特殊相対性理論の基本原理
クイズりらてぃびてぃ
第2問
ロケット内で両端から光を同時に発射
ロケットの外から見ると?
もし同時に発射された光が後ろからと前からとで同じ速さなら中心からずれて出会うように見えるはず
もし同時に発射された光が後ろからと前からとで同じ速さなら中心からずれて出会うように見えるはず
しかしロケットの外から見た人も、そこにいれば中心で出会うのを観測する
①もし外から見ても「同時に発射されてかつ中心で出会った」とすると
後ろから来る光の方が速くなければならない
①もし外から見ても「同時に発射されてかつ中心で出会った」とすると
後ろから来る光の方が速くなければならない
②もし「後ろから来る光と前から来る光とが同じ速さで中心で出会った」とすると遅れて前から発射されなければならない
②もし「後ろから来る光と前から来る光とが同じ速さで中心で出会った」とすると遅れて前から発射されなければならない
クイズりらてぃびてぃ 第2問中の人が「同時に発射して中心で出会った」と観測した光を、外の人も中心で出会ったと観測したとすると
クイズりらてぃびてぃ 第2問中の人が「同時に発射して中心で出会った」と観測した光を、外の人も中心で出会ったと観測したとすると
②①
①後からと前からとで光の速さが違うように見える②光は同時には発射されないように見える
正解
②光は同時には発射されないように見える
止まっている人から見て「同時」におこることは、動いている人から見ると「同時」ではない
2つのことが「同時」かどうかは、見ている人によって変わる相対的(relative)なものである
(特殊)相対性理論(special) relativity
運動を座標であらわす
ロケットの運動
ロケットに固定した座標(x’,t’)
ロケットに固定した座標(x’,t’)
ロケットの左端から光が発射された点のx座標と時刻tを (x1, t1)
とすると t =
x + l
v, t =
x
c
の連立方程式を解いてx1 = ! c l
c ! v, t1 = ! l
c ! v.
同様に、ロケットの右端から光が発射された点のx座標と時刻 t を (x2, t2) として
t =x ! l
v, t = !x
c
よりx2 =
c l
c + v, t2 = ! l
c + v.
となる。ゆえに、t" =一定 の直線の傾きは傾き =
t2 ! t1x2 ! x1
=! l
c+v !! lc!v
c lc+v !! c l
c!v
=v
c2である。
テキスト
ロケットに乗っている人が観測した座標と時刻 (x!, t!)と、ロケットの外からみた座標と時刻 (x, t) との関係を求めよう。まず x! = 0 が t = x
v に対応するから、
x! = a(v)(x " vt)
でなければならない。どちらの系でも直線運動は直線運動に見えるから、a(v)はx, tによらないvの関数。一方、t! =一定は傾き v
c2の直線だったから、原点を一致させるようにとると
t! = b(v)(t " v
c2x)
ここでb(v)もx, tによらないvの関数である。どちらの系でも光速は同じであるから x! = ct! と x = ctは一致しなければならない。これよりa(v) = b(v)がわかるから、
!
"""""#
x!
ct!
$
%%%%%&= a(v)
!
"""""#
1 "vc
"vc 1
$
%%%%%&
!
"""""#
x
ct
$
%%%%%&
!
"""""#
x!
ct!
$
%%%%%&= a(v)
!
"""""#
1 "vc
"vc 1
$
%%%%%&
!
"""""#
x
ct
$
%%%%%&(1)
これを逆に解いて!
"""""#
x
ct
$
%%%%%&=
a(v)
1 " v2
c2
!
"""""#
1 vc
vc 1
$
%%%%%&
!
"""""#
x!
ct!
$
%%%%%&(2)
ところで、(x!, t!) と (x, t) とをとりかえて考えれば、その関係式は (1)でvを"vに置き換えたものになっているはずである。正の向きに走るのと負の向きに走るのとでaに違いはないはずだから
a(v) = a("v)
これより
a(v) =1
'
1 " v2
c2
.
!
"""""#
x!
ct!
$
%%%%%&=
1'
1 " v2
c2
!
"""""#
1 "vc
"vc 1
$
%%%%%&
!
"""""#
x
ct
$
%%%%%& ローレンツ変換
ローレンツ変換
!
"
"
"
"
"
"
#
"
"
"
"
"
"
$
x! =
x ! vt%
1 !
v2
c2
t! =
t !v
c2 x
%
1 !
v2
c2
ローレンツ変換とガリレイ変換!
"
"
"
"
"
"
#
"
"
"
"
"
"
$
x! =
x ! vt%
1 !
v2
c2
t! =
t !v
c2 x
%
1 !
v2
c2
ローレンツ変換
!
"
#
x!
= x ! vt
t!
= t
ガリレイ変換こっちじゃなかった?
マッハ7の飛行機の速さ = 7 × 340m/s = 2380m/s
光速 = 約 3 ×108m/s
= 約 0.000008
= 約1.00000000003ほとんど 1 と見なせる
ほとんど 0 と見なせる
ローレンツ変換とガリレイ変換!
"
"
"
"
"
"
#
"
"
"
"
"
"
$
x! =
x ! vt%
1 !
v2
c2
t! =
t !v
c2 x
%
1 !
v2
c2
ローレンツ変換
!
"
#
x!
= x ! vt
t!
= t
ガリレイ変換
非相対論的極限日常生活では相対論的な効果は無視できる
時間の遅れ! ! v
c , " ! 1"1#!2
と書くことにすると、変換は
x$ = "( x #! ct) (1)
ct$ = "(#!x + ct ) (2)
のようにすっきりする x$ = 0にいる人が感じる時間間隔 !t$ は(1)よりx = !ctだからそれを (2) に代入して
ct$ = "(#!2 + 1)ct =ct
"
ゆえに
!t$ =!t
"(3)
v < c だから " > 1
% !t$ < !t (4)
相対論的効果を無視できない例
ミューオン(μ粒子, muon)の寿命 = 2.2×10ー6s
光速で走ったとしても 3.0×10
8 m/s × 2.2×10
ー6s = 約 600m
寿命が短すぎて地上にはとどかない?
約10km
高速のミューオンは寿命が長い
ミューオンが光速99.8%の速さだと仮定すると
寿命は 約15.8 倍になる
地上に到達
約10km
時間の遅れ! ! v
c , " ! 1"1#!2
と書くことにすると、変換は
x$ = "( x #! ct) (1)
ct$ = "(#!x + ct ) (2)
のようにすっきりする x$ = 0にいる人が感じる時間間隔 !t$ は(1)よりx = !ctだからそれを (2) に代入して
ct$ = "(#!2 + 1)ct =ct
"
ゆえに
!t$ =!t
"(3)
v < c だから " > 1
% !t$ < !t (4)
双子のパラドックス
双子のパラドックス
双子のパラドックス
双子のパラドックス
双子のパラドックス
加速している系は慣性系と区別できる:一般相対性理論加速系での「みかけの力」は重力場と等価である(等価原理)
重力場 = 曲がった時空
曲がった時空では光は曲がり、時間はゆっくり進む
日食での星の位置のずれ、水星の近日点移動
特殊相対性理論のまとめ慣性系で光速はいつも一定である
物体の速度は光速を超えない
ある系で同時刻でも、別の系ではそうではない。「同時刻」という概念は相対的なもの
運動する物体の系の固有時間は、それが動いているように見えるどんな系の時間よりゆっくり進む
運動している物体の長さは、静止しているときより短く見える
光速が無限大の極限でローレンツ変換はガリレイ変換に帰着する
超
弦
理
論
入
門
超弦理論入門
超弦理論(superstring theory)とは
•「超」対称性(supersymmetry)をもつ「弦」(string)の理論のこと
•素粒子の「究極理論」の候補
•なぜ「超」対称性が必要?
•なぜ「弦」理論なのか?
•「超弦理論」ってどんな理論?重力を量子化したいから
素粒子の「標準模型」に不満な点があるから
まだ何も説明していないがいつかすべてを説明するかもしれなくてそれ自体がきわめて美しい理論
弦の理論 点粒子の理論
弦の各振動モード = 素粒子
「D-ブレイン」
素粒子の標準模型(Standard Model)
• 3つの力(強い相互作用、電磁相互作用、弱い相互作用)の「ゲージ理論」による記述
• 同じ量子数をもつ素粒子(物質場)の族が3回くり返す構造(「世代」)
• ほとんどすべての実験事実を説明
標準模型のなりたち
(KEK HPキッズサイエンティストより)
標準模型のなりたちSU(3) SU(2) U(1)Y
!
uL
dL
" !
uL
dL
" !
uL
dL
"
uR uR uR
dR dR dR!
!eL
eL
"
eR
!eR
A1, . . . , A8
W1, W2, W3
B!
h0
h!
"
名称 素粒子ゲージ量子数
スピン
クォーク3 2 1/6
1/23 1 2/33 1 -1/3
レプトン1 2 -1/2
1/21 1 -11 1 0
ゲージ粒子8 1 0
11 3 01 1 0
ヒッグズ粒子 1 2 -1/2 0
(クォーク・レプトンは第一世代のみ)
標準模型の不満な点• なぜクォーク、レプトンともに(世代ごとに)3種類の異なる量子数をもつものがあるのか
• なぜゲージ群は単純群でないのか
• なぜアノマリーが相殺するのか
SU(3)SU(2)U(1)Y!
uL
dL
" !
uL
dL
" !
uL
dL
"
uR uR uRdR dR dR!
!eL
eL
"
eR!eR
A1, . . . , A8
W1, W2, W3
B!
h0
h!
"
名称 素粒子ゲージ量子数 スピ
ン
クォーク3 2 1/6
1/23 1 2/33 1 -1/3
レプトン1 2 -1/2
1/21 1 -11 1 0
ゲージ粒子8 1 0
11 3 01 1 0
ヒッグズ粒子 1 2 -1/2 0
標準模型の不満な点• 「階層性」の問題ー輻射補正が大きすぎる• 3つの結合定数がくり込み群で統一しない• 「暗黒物質」となりえるものがない
「超対称性」をもつ標準模型の拡張
「超」対称性(supersymmetry)とは
力を媒介(+ヒッグズ) = ボゾン
superpartner
ゲージーノなど
物質 = フェルミオン
superpartner
スクォークなど
超対称標準模型• 輻射補正は弱くなる• 3つの結合定数がぴったり統一する• 「暗黒物質」の候補を含む
超対称性標準模型は、超対称性のない標準模型の不満な点を解消する
なぜ弦理論を考えるのか
重力はきわめて弱い相互作用である
F = Gm1m2
r2
G = 6.673 ! 10!11[Nm2/kg2]
コンプトン散乱
コンプトン散乱
X線は波動であり、粒子である
コンプトン波長
大きな運動量(エネルギー)=短い波長
! =
h
mc
h = 6.626 ! 10!34[Js]
電子も粒子であり、波動である
高エネルギー散乱ほど微細構造がわかる
高エネルギー=短い波長
低エネルギー=長い波長
rS =2Gm
c2
いつ重力は重要になるのか質量mのブラックホールの半径(Schwarzschild radius)
Mp =
!
h̄c
G= 2.2 ! 10!5[g]
= 1.2 ! 1019[GeV]
コンプトン波長 ! =
h
mc
これらが同程度とすると m =
!
!Mp
「プランク質量」
proton size!
1
10000000000000000000!
単位について電子の電気量 = 1.6 ! 10!19[C]
電子を1ボルトで加速したときのエネルギー= 1.6 ! 10!19[J]
! 1[eV](エレクトロンボルト)106[eV] ! 1[MeV]
109[eV] ! 1[GeV]
プランク質量 = 1.2 ! 1019[GeV]cf. LHCでの陽子のエネルギー= 7000[GeV]
重力は通常は無視できる
それでも重力を量子化したい理由
• プランクスケールの数桁程度下での相互作用の大統一
• 宇宙初期における重力の量子効果
講義の予定イントロダクション
1 ゲージ理論とくりこみ ー重力は他の力とどこが違うかー
2 超弦理論のあらまし なぜ10次元か? どんな種類があるか?「M理論」とは何か?. . .
1 ゲージ理論とくりこみー重力は他の力とどこが違うかー
量子力学
• 波動関数の確率解釈—粒子数の保存
• 非相対論的—高速粒子を扱えない
「場の理論」
ー標準模型を記述する枠組みー
• 相対論的に不変な形式• 波動関数 → 演算子 粒子の生成・消滅をも記述
• 「ゲージ不変性」をもつ• 「くりこみ可能」な理論
例 光子の「場」
対生成・対消滅
「仮想」電子・陽電子を放出・吸収する
真空偏極
くりこみ(renormalization)
裸の光子の結合定数も非常に大きいとし非常に大きな真空偏極の効果と相殺したものが観測されると考える
裸の光子の結合定数が有限な値だとして計算すると真空偏極した光子の結合定数が無限大になってしまう
ゲージ理論はくりこみ可能である
• 標準模型は SU(3)xSU(2)xU(1) ゲージ理論である
• 重力は(ヤン-ミルズ型の)ゲージ理論でない
(アインシュタイン)重力はくりこみ可能でない
ゲージ理論とはゲージ・・・一般に測定の基準となるもの
ゲージ場とは、異なる2点において、考えている「場」の向きが平行からどれだけずれているかを
つたえるもの
力を伝搬
ゲージ理論とはゲージ・・・一般に測定の基準となるもの
ゲージ場とは、異なる2点において、考えている「場」の向きが平行からどれだけずれているかを
つたえるもの
力を伝搬
3つの相互作用とゲージ群• 強い相互作用 場の「回転」がSU(3)
• 弱い相互作用 SU(2)
• 電磁相互作用 U(1)
標準模型はSU(3)xSU(2)xU(1)ゲージ理論(ヤン-ミルズ理論)である
くりこみ可能
重力はゲージ(ヤン-ミルズ)理論ではない• 重力:時空のローレンツ枠そのものが場「時空の量子化」
• ゲージ理論→ベクトル束 重力理論→接束
• ゲージ理論の結合定数→無次元 重力理論の結合定数→次元をもつ
重力はゲージ(ヤン-ミルズ)理論ではない
重力はくりこみ可能でない
まとめ• 素粒子の世界は標準模型でよく記述される• 標準模型には問題点もあり、それらのいくつかは超対称性を導入することにより解消される
• 重力も量子化すべき動機があるが、ゲージ理論でなくくりこみ可能でないので、場の理論とは別の定式化が必要
次回予告
超
次回予告
弦
次回予告
理
次回予告
論
次回予告
入
次回予告
門
次回予告
超弦理論入門
次回予告
次回予告
クォークの閉じ込めと「ひも」(string)
定性的にはわかりやすいが実験とあわない→QCD
次回予告
typeIIA typeIIB
typeI
heteroticSO(32)
heteroticE8 ! E8
5つの超弦理論
次回予告
M theory The “Landscape”
To Be Continued