機器を配線から解放する安全な光無線給電システム
科学技術創成研究院
未来産業技術研究所
准教授 宮本智之
2017年10月17日(火) 14:30~ 14:55,JST東京本部別館ホール
東京工業大学
『通信』は無線化が進展 2
情報
すでに『有線』の通信は民生機器から消えている
※無線通信搭載を確認した民生機器
固定移動
情報以外
通信の『無線化』の理由
◆優位性• 移動中にも利用可
• 配線・接続の手間が不要
• 見栄えが良い
• システムの柔軟性
• 災害時の復旧容易
◆課題• 通信速度・安定性に劣る
• 回線の妨害・窃取
重大な課題もあるが,その優位性から,社会の『無線化』の要求は急速に拡大!!
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給電:残された有線
•給電の配線は残された有線• 常時あるいは充電時の配線必要
• ハーベスティングは極低電力のみ
•給電配線の存在と接続の手間は,利用形態・設置形態・機器形態などを制限
⇒ 通信に加え給電も無線化で,無線化社会の拡がりによる大きな変革を期待!!
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※通信・給電とも,『幹線』は有線,『ラストnマイル』を無線化
従来の無線給電とその課題
結合型(非放射型)
• 電磁誘導方式
• 磁界共鳴方式(MIT発明)
放射型(非結合型)
• マイクロ波伝送方式
• 環境電波方式
• 超音波方式
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• 給電距離が数mm~1m程度• サイズ・重量が大きい• 電磁波の人体・機器影響
実用段階だが適用機器や利用形態に制限
三菱重工webより JAXA webより
光無線給電とその特徴 6
光源(レーザ等)
太陽電池
太陽光発電は光無線給電だが...
• 太陽光があるときだけ
• 低エネルギー密度(1kW/m2)• 10cmx10cm:2W, 1mx1m:200W
⇒ 適用機器を拡げて無線化社会を加速!
光無線給電
• 長距離給電(光ビーム)
• 小型・軽量(光源,太陽電池)
• 大電力(高出力レーザ)
• 機器干渉無,など
光ビーム
電磁誘導
光無線給電の適用範囲 7
1cm
10cm
1m
10m
100m
1km
0.1W 1W 10W 100W 1kW 10kW
ビーム電波
拡散電波
伝送距離
伝送電力
※サイズ,重量,効率,人体・機器影響などを考慮
光無線給電
なぜ今,光無線給電か
レーザや太陽電池は以前からあるのに,
光無線給電は新たに出てきた方式なのか?
• 給電どころか通信の無線応用も狭かった• 従来無線給電が展開されると想像していた• システム構築に課題があった
低すぎる給電効率,高出力光源が利用しにくい
• レーザは安全規制が厳しい
• 通信に続く給電無線化による社会進展の期待• 無線化社会実現には多様な方式が必須• デバイス性能の向上• センサ技術・IoT社会の進展を活用
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以前
現在
光無線給電プロトタイプ 9
Solar Cell1
0-60
cm
VCSEL
Lens
プロトタイプによる光無線給電の
特徴と課題の抽出
• 直流駆動/直流取出しのため容易な構成(従来方式は多段の
AC-DC,DC-DC変換必要)
• メートルクラスの無線給電も容易
プロトタイプの特性評価
•無線給電距離:10-120cm(測定系制限)
• 給電特性の距離依存性少
•給電電力:6W
• (光出力18W時)
•太陽電池効率:33%
• 単色光で高効率化(太陽光下18%のセル)
• 均一照射が高効率に必要
• 照射強度も効率に影響
• システム効率:12.1%
• (使用レーザの効率37%)
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光無線給電の効率 11
LD LD効率太陽電池
太陽電池効率
給電効率
現状
一般LD 35% 一般Si-SC 30% 10%
最高性能LD
72%最高性能SC (GaAs)
66% 48%
将来期待値
GaAs 85% Si 50% 43%
GaN 85% GaN 85% 72%
• 光源,太陽電池とも効率向上必要• 短波長帯の太陽電池開発重要• 非可視・可視など応用に適する波長も重要
光無線給電の問題点
•光無線給電の検討例
• 1対1の給電システムが基本
• 宇宙太陽光発電の将来構想
• ごく少数の製品レベル機器の事例
• 1対1の給電システムの課題
• 機器台数分の光源必要
• 機器電力量が大きいと給電量不足に
• 機器設置場所によって給電不可に
• 強い光ビームは危険性増
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Wi-Charge webより
JAXA webより
提案する光無線給電の概要
•提案システムの基本構成
• 光源と受光器が1~複数個
• 複数光源から複数受光器へ
連続・時分割・空間分割給電
•提案システムにより実現する機能・特徴
• 機器追加時の光源追加不要
• 機器電力量が大きくても複数光源から給電
• 給電経路が使えなくても他の経路で給電
• 複数経路で光密度を低下して危険性抑制
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• 受電ユニットは給電ユニットの光で動作・充電
• 家庭内のほか工場や屋外空間も想定
光無線給電システムのイメージ 14
給電ユニット
受電ユニット
通信
通信
光ビーム
光ビーム
受電ユニット
給電カバー範囲
システム構成の想定
• 受電ユニットの,要求電力・最大電力・受電中電力・給電効率,位置・姿勢,給電経路情報などにより給電状態を制御
• 制御は中央制御や分散制御など
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太陽電池
給電ユニット
受電ユニット 制御装置
中央制御装置
制御装置
光源,走査機構ビーム形状制御
通信
遮蔽物
多様な給電モード1
• マルチ給電: 複数給電ユニットから1つの受電ユニットに給電.大電力利用機器への給電など.
• 時分割給電: 複数受電ユニットに1つの給電ユニットから給電.少ない給電ユニット数で多数機器に給電など.
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受電ユニット 受電ユニット
マルチ給電 時分割給電
給電ユニット 給電ユニット
多様な給電モード2
• 多対多給電: 複数給電ユニットから複数受電ユニットに給電.光強度密度抑制など.
• 経路中継: 光源の総数を抑制しながら,パッシブなミラーなどにより多様な経路を提供.
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受電ユニット
多対多給電
受電ユニット
経路中継ユニット
遮蔽物
給電ユニット 給電ユニット
想定される用途 18
•対象機器:電力を利用する機器全般• 微小電力機器から大電力機器まで• 固定機器,半固定機器,移動機器まで• 時々動作から常時動作まで
•閉空間への適用• 家庭やオフィスの居室• 実験室• 工場内
• その他の適用先• 室外• 屋外
想定される用途のイメージ1
見栄え良く,どこにも設置でき,気楽に移動など部屋のデザイン・使い方,模様替えなどの生活シーン変化!
小電力でも24h動作は配線必須
限定機器(<数W)は無線給電実用
バッテリーで実効無線化.充電配線要
現状⇒
情報
情報以外
固定移動
多くの機器は電力的に有線必須
想定される用途のイメージ2
EV:→無線充電
走行中無線充電
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• 乗り物に気楽に充電• 移動時給電で距離拡大,重量抑制• 24時間常時稼働(介護ロボットなど)
ロボット(産業用介護用など)
空飛ぶ自動車
ドローン
パーソナルモビリティ
Urban Aeronautics webより
実用化に向けた課題
•光源・太陽電池など基本デバイス• デバイス効率向上などを研究中
•提案システムには多様な技術基盤が必要• 小型光ビーム走査法が必要• ビーム形状制御法が必要• 位置・方向・傾き検出法が必要• 光源側と機器側の通信• ビームや散乱光からの安全確保
• より高難易度システムへの挑戦が必要• 微小電力 ⇒ 大電力• 固定 ⇒ 移動• 無人空間 ⇒ 人のいる空間
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企業への期待
• システム化に向けて,以下の技術をもつ/
取り組みたい企業と共同研究希望• デバイスモジュール化
• 光学設計(含ビーム走査)
• 位置・姿勢のセンシング
• 給電状態制御(含通信)
• 無線給電(受電側)応用機器開発
• 安全確保のセンシング・制御
•応用機器,室内環境整備・インフラ整備など
の展開を考えている企業に取組が有効.
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本技術に関する知的財産権
•発明の名称 :光給電システム
•出願番号 :特願2017-154386
•出願人 :東京工業大学
•発明者 :宮本智之
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お問い合わせ先
東京工業大学 研究・産学連携本部
産学連携コーディネーター 浅澤 博
TEL 03-5734-7693
FAX 03-5734-7694
e-mail [email protected]
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