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B会場(白鳥)
医
療
11:35~12:00
麻痺患者の歩行姿勢を改善する底屈バンパー付短下肢装具
広島大学
大学院医歯薬学総合研究科 脳神経外科
研究員(非常勤講師) 濱 聖司
● プレゼン技術の概要脳卒中片麻痺患者が歩行する場合,麻痺した足先が歩行中につまづくことを防ぐ為に短下肢装具が広く使用されている。しかし,歩行時の踵が床面に接地する際に加わる大きな衝撃を和らげる足関節の底屈運動は,通常の短下肢装具では犠牲になる。今回,足継手のあるプラスティック短下肢装具の背面に弾力性のクッション素材を配置することで,程よい底屈を促し,患者の歩行をスムーズにする方法を開発した。
● 従来技術・競合技術との比較短下肢装具の底屈を制御する方法は,従来,油圧式調節方法のゲートソリューションというタイプがあった。しかし,価格が高く,汎用するには至っていない。今回の我々の行う底屈バンパーは安価で従来の足継手のあるタイプの短下肢装具にも応用可能であり,多くの脳卒中片麻痺患者さんの歩行能力の向上に寄与できるものと考えられる。
● プレゼン技術の特徴・足継手付短下肢装具の底屈制動部分に弾性体を配置し,足関節の底屈をコントロールする点・弾性体の性状を変えることで,様々な調節が可能となる。・単価が低く抑えられる反面,従来の短下肢装具にも応用可能で,ニーズは大きい可能性が高い。
● 想定される用途・脳卒中などで麻痺を有する患者さんの歩行姿勢を改善させる
麻痺患者の歩行を改善させる改善底屈バンパー付短下肢装具
広島大学 医学部 脳神経外科学 研究員(非常勤講師)(非常勤講師)
信愛会 日比野病院
濱聖司濱聖司
1.歩行理論について
2.底屈制動バンパー付短下肢装具について屈 動 短 肢装具
歩行とコンパス理論
骨盤 膝は固定骨盤・膝は固定
歩行の効率が悪い
骨盤の回旋と傾きがみられる
歩行の効率が良い
骨盤・膝・足関節が連動。
歩行の効率が良い
ヒトは、膝関節・股関節の屈曲ー伸展運動や骨盤の回旋などの
Bogery, R.A., Sisto, S.A., 2005. Gait restoration and gait aids, in: DeLisa, J.A., Gans, B.M., (Eds.), Physical Medicine and Rehabilitation: Principles and practice, forth ed. Lippincott Williams and Wilkins, Philadelphia
動きを行うことによって、歩行時の安定と運動効率を高めている。
床反力ベクトルからみた正常歩行
荷重応答期
立脚中期
立脚終期前半 後半前半 後半
体幹 骨盤を前方に移動床反力ベクトル
体幹・骨盤を前方に移動
股伸展
股屈曲
膝屈曲
足底屈 Perry, 歩行分析, 医歯薬出版, 2007
足が床に接地した時の衝撃吸収 膝の前方に移動したベクトルが膝の伸展を補助
体重の60%が0.02秒
床反力ベクトルからみた脳卒中後の歩行
健常者 脳卒中
股関節伸展
股関節屈曲
膝関節腰が後方
足関節
膝関節過伸展
腰が後方に崩れる
足関節底屈
足関節底屈と膝屈曲が無いPerry, 歩行分析, 医歯薬出版, 2007
足関節底屈と膝屈曲が無い↓
足が接地した時の衝撃吸収が不十分
装具の足関節角度調節(底 背屈)装具の足関節角度調節(底・背屈)
足関節が背屈 足関節が底屈位
膝・腰は前に移動しやすい
膝は過伸展/腰は引けてやすい 腰は引けて
前に進みにくい
膝が折れて不安定
膝は安定しやすい
膝関節の伸展筋力の強さと短下肢装具の選択(足継手の有無)
患側下肢が立脚期に膝折れせずに保持できるかどうかを評価。
体重を患側下肢にかけて
膝折れ無し膝折れ有り
短下肢装具に足継手あり
短下肢装具は足継手無し 足継手あり足継手無し
TIRRTIRRタイプタイプ
タマラック継手&シューホンタイプ
タ ラック継手底屈防止装置
1.歩行理論について歩行理論に て
2 底屈制動バンパー付短下肢装具について2.底屈制動バンパ 付短下肢装具について
0 02秒間に身体重量の約60%が脚に荷重された際の衝撃を吸収する機構0.02秒間に身体重量の約60%が脚に荷重された際の衝撃を吸収する機構
大腿四頭筋大腿四頭筋膝屈曲を制御 脚と体幹の関節をいたわる
歩行をスムーズにする
前脛骨筋群
膝関節の屈曲
前脛骨筋群足の落下をブレーキ
足関節の底屈足関節の底屈
K Götz-Neumann, 観察による歩行分析, 医学書院, 2005
足関節の底屈が無いと……衝撃吸収不十分
脚・体幹の関節に衝
膝を前に押し出す力になる
脚 体幹の関節に衝撃が加わる
テコの原理:
す力になる
テコの原理:
下腿背面を前方に押す力になる
ガクッ
体重の落下時わに加わる力
短下肢装具の底屈制動バンパー短下肢装具の底屈制動 ン
研究背景(従来の問題点①)研究背景(従来の問題点①)
脳卒中や各種神経筋疾患の患者脳卒中や各種神経筋疾患 患者
内反・尖足など(3次元的な異常な足関節の動き)
↓
弱い底屈制動では抑えきれない
一方向の制御では装具内で足がズレル
↓↓
3次元的な動きで、患者毎に異なる強い力で底屈を制御
従来の短下肢装具で足関節の背屈可能な装具
タマラック短下肢装具
側面 背面
Stop
底屈は固定
従来の短下肢装具の足関節を調節できる装具
Gate Solution 短下肢装具Gate Solution 短下肢装具
油圧で底屈を調節油 底屈を調節
底屈制動が油圧で調節可能(末梢神経障害、軽度麻痺患者等には良い)↓↓
価格が高価
新たに発明した短下肢装具の底屈制動部材
短下肢装具の背側に弾性素材
側面 背面
弾性体がつぶれて弾性体がつぶれて底屈も可能
短下肢装具の背側部に弾性素材短下肢装具の背側部に弾性素材弾性素材を調節することによって、底屈制動を3次元的に調節できる安い価格で作成可能
新たに発明した短下肢装具の底屈制動部材新たに発明した短下肢装具の底屈制動部材短下肢装具の背側に弾性素材(足部)
側面 背面側面 背面
が弾性体がつぶれて底屈も可能
健常者を対象にした足圧分布計による測定結果
裸裸足(右)
AFO硬いAFO硬い(左)
AFOバンパー(左)
健常者を対象にした足圧分布計による測定結果
裸足(右)
AFO硬い
AFOバンパー
短下肢装具を背面から見た図
硬い下腿
やや硬い
腿部
軟性素材
足部弾性素材の材質を変更することによって、様々な患者に対応可能
実用化に向けた課題と企業への期待①実用化 向けた課題 企業 期待①
弾性素材の耐久性が問題弾性素材の耐久性が問題
(現状では数か月程度の耐久性)
弾性素材の耐久性向上• 弾性素材の耐久性向上
耐久性があ 様 な弾性素材を作成 来 業者• 耐久性がある、様々な弾性素材を作成出来る業者との連携が必要
実用化に向けた課題と企業への期待②実用化 向けた課題 企業 期待②
素材の形状と歩行に及ぼす影響の解析が困難素材の形状と歩行に及ぼす影響の解析が困難
• 底屈制動部分の3次元的な動きは、歩行時足関節の新たな3次元的な動作解析につながる可能性あり
• 患者の麻痺の状態と足関節との関連性の解明
• 患者の病状に合わせた装具の作成が可能となる
• 複雑な足関節の動きを調べる新たな解析方法になる複雑な足関節の動きを調 る新たな解析方法になる
本技術に関する知的財産権本技術に関する知的財産権
• 発明の名称 :低屈制動部材およびこれを用いた短 肢装具た短下肢装具
• 出願番号 :特願2009-273912
• 出願人 :広島大学
• 発明者 :濱 聖司• 発明者 :濱 聖司
お問 合わ 先お問い合わせ先
広島大学広島大学
産学・地域連携センター 広島分室
TEL : 082-257-5427
FAX : 082-257-1567
e-mail : medcent@hiroshima-u ac jpe mail : medcent@hiroshima u.ac.jp