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電子・陽電子リニアコライダーで探る素粒子の世界
岡田安弘(KEK、総合研究大学院大学)2005年6月15日、筑波大学
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素粒子物理のめざすもの
• 物質は何からできているか。(基本構成要素)
• どのような力が働いているか。(基本相互作用)
• 宇宙はどのように始まってどのように進化してきたか。
sec10K101TeVGeV10cm10
1216
316
−
−
=↔=↔
==↔=
tTEd
ビッグバン宇宙
「距離」 「エネルギー」 「温度」 「時間」 の関係
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現在の素粒子像 = 標準模型1970年代初頭の大変革
btscdu
quark
νττνµµνee
lepton
物質の基本粒子: クォークとレプトン
力: ゲージ相互作用
弱い相互作用電磁相互作用強い相互作用
SU(2) XU(1) ゲージ理論 (光子、W粒子、Z粒子)
SU(3)ゲージ理論 (グルーオン)
ゲージ粒子力はゲージ粒子によって運ばれる。
まったく違ったように見える三つの相互作用は同じゲージ理論の枠組みで理解できる。
クォーク・レプトン
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標準模型の実験的検証quark lepton ヒッグス機構ゲージ原理
(質量生成機構)
photone,µ,νu,d,s
標準模型の提案charm
(SPEAR,AGS) τ (SPEAR)
1980 bottom(FNAL)
gluon (PETRA)
top (TEVATRON)
gluon-coupling(TRISTAN)
W, Z bosons( )
gauge-interaction(SLC, LEP)
実験的には未検証
1970
SpSp
CPの破れ関する小林 益川 機構
(KEKB, PEP-II)
1990
2000
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標準模型を超える物理のヒントTimeEnergy Temp.
SUSY GUT
Superstring
See-saw neutrino
Electroweak phase transition
Inflation
100 GeV
Stro
ng in
t.
EM in
t.
Gra
vity
Planck energy
Wea
kin
t.電弱対称性の破れを引き起こす力は
三つの力の統一は統一されるか
ニュートリノの質量の起源は
宇宙の暗黒物質の正体は
宇宙はなぜ物質でできていて反物質は消えたか
新しい相互作用や時空の概念の変革の可能性
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ILC (International Linear Collider)•最高エネルギー電子陽電子コライダー第一期 500GeV まで => 第二期で1TeV ぐらいに増強
•高ルミノしティー 10^34/cm^2/s 以上(~10^5 個の軽い ヒッグス粒子生成)
•実験開始時期 2010年代中ごろ(LHC 実験と重なる)
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電子陽電子コライダーとハドロン加速器
MachineHadroncollideree −+
J/ψ (charm), τ, gluon粒子の発見 J/ψ (charm), b, W, Z, t
Gauge principle (LEP/SLC)CP violation (B factory)
相互作用の詳細な研究
LHC (2007- )ILC将来の加速器
素粒子物理を進めるために両方の特徴を生かすことが必要
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ILCの物理
電弱対称性の破れの物理(ヒッグス物理)New Physics の直接・間接探索トップクォーク、ゲージボソンの物理
目的とする物理の対象は LHCと同じ。謎を解くにはLHCとILC の両方が必要。
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ILC物理の3つの重要な例
素粒子の質量はどのように生じているか
(ヒッグス粒子の物理)
三つのゲージ力は大統一されるか
(超対称大統一理論)
暗黒物質の正体は何か
(超対称暗黒物質)
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(1) ヒッグス粒子の物理なぜ弱い相互作用は弱いのか?
物質から放出された W粒子は真空に詰まっているヒッグス場との相互作用によって質量を持つため短距離力になる。
Fermi定数と真空期待値の関係
W 粒子 : ヒッグス場の真空期待値
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W、Z粒子だけでなく、クォークやレプトンもヒッグス場との相互作用によって質量を持つ。
ヒッグス場の量子としてヒッグス粒子が存在する。
(最も簡単な場合は中性粒子ひとつ)
ヒッグスの物理の目標
(1) ヒッグス粒子の(候補)の発見(2) ヒッグス粒子と W、Z 粒子、クォーク、レプトンとの結合定数の測定 (素粒子の質量生成機構)
(3) ヒックス機構の背後にあるダイナミックスを解明する。(超対称性? 複合粒子? )
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ヒッグス粒子の質量
素粒子は質量は大きいほど、ヒッグス場との結合力は大きい。
ヒッグス粒子の質量もヒッグス場自身の自己相互作用が大きいほど大きくなる。
ヒッグスの質量は標準模型を超える物理への手がかり。
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標準模型がそのままプランクスケールまで変更をうけないと。
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超対称模型などでは…
MSSM = Minimal Supersymmetric Standard Model
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ヒッグス粒子の質量に関する実験的制限
LEP実験による直接探索 電弱相互作用の精密測定による間接的制限
陽電子
電子
Z粒子
Z粒子
ヒッグス粒子
LEP EW Working Group
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LHC実験におけるヒッグス粒子探索
LHC 実験: CERNで2007年に実験開始される最高エネルギー実験。 重心系のエネルギーが14TeV(14000GeV)の陽子・陽子衝突加速器。
ヒッグス粒子の発見が主要な目的のひとつ。
ヒッグス粒子探索はヒッグス粒子の質量領域によって異なる。
生成過程: gluon fusion, WW fusion崩壊過程: できるだけ重い粒子に崩壊
グルーオン
グルーオン
ヒッグス粒子ヒッグス粒子
陽子
陽子
W粒子
W粒子
陽子
陽子
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LHC実験(ATLAS)でのヒッグス粒子発見LHC でのヒッグス粒子の発見の例
標準模型のヒッグス粒子 mH= 130 GeV
LHC では標準模型のヒッグス粒子は必ず見つかるはず
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10万個のヒッグス粒子生成
スピン、パリティーの決定
質量の精密測定
分岐比、生成断面積の精密測定
ヒッグス粒子とほかの素粒子の結合常数の決定
素粒子の質量生成機構の解明
LC実験におけるヒッグス粒子シグナル
ヒッグス粒子
Z粒子
LC におけるヒッグスの物理
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質量と結合常数の関係
GLC Project
リニアコライダーでは、ゲージ粒子、クォーク、レプトンとヒッグス粒子の結合定数は数%の精度で決められる。(LHC から一桁以上の進歩)
ヒッグス自己相互作用の測定
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ヒッグス粒子の測定のインパクトの例ヒッグスの分岐比の測定により超対称模型の重いヒッグス粒子の質量をさぐる。
2ヒッグス模型で電弱相転移でのバリオン数生成とヒッグス3点相互作用の関係
S.Kiyoura and Y.Okada, ACFA ReportS.Kanemura,Y.Okada,E.Senaha
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(2)超対称大統一理論三つのゲージ結合定数の統一
SU(3),SU(2),U(1) の三つのゲージ相互作用をSU(5)やSO(10)に高いエネルギースケールで統一する。
90年代のLEP/SLC実験でゲージ結合定数の精密決定
→ 超対称理論のときはうまく
いく
SUSY GUT
SUSY 粒子の無い場合
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超対称模型 (SUSY)超対称粒子通常の粒子
W,Z,γ,H
gluon
lepton
quark
neutralino,
chargino
gluino )~(g
)~(χ
slepton
squark )~(q
)~(l
)(q
)(l
)(g
• 超対称性 ボソンとフェルミオン間の対称性 相対論の拡張
• 通常の粒子に対して超対称パートナー粒子が存在。
• 最も軽いSUSY粒子は安定。宇宙の暗黒物質の有力候補。
超対称大統一理論の検証(1) 超対称粒子(の候補)の発見(2) 超対称性の関係式の実証(3) 大統一理論の予言の検証
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LHC 実験でのSUSYの探索
Missing energy signal によってスクォーク、グルイーノが2-3 TeV までSUSY 粒子の探索領域が広がる。
mSGURA
ATLAS
グルイーノ 2.5TeV
スクォーク 2.5TeV
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LCでのSUSY研究超対称性による関係式 ゲージフェルミオンのGUT関係式
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SUSY の破れの機構を決める
LHC: スクォーク、グルイーノのカスケード崩壊ILC: スレプトン、チャージノ、ニュートラリーノの対生成
SUSY
par
ticle
mas
ses
Energy scale
G.A.Blair, W.Porod,and P.M.Zerwas
総合するとGUTの存在やSUSY の破れの機構を区別できる
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(3)暗黒物質とLC
宇宙のエネルギー組成
暗黒エネルギー 73%
暗黒物質 23%
バリオン 4%
暗黒物質の候補
WINP (weakly interacting massive particle)安定な中性粒子
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WIMP の宇宙初期からの残存量高温で熱平衡にあったWIMPは宇宙が冷えるとともに対消滅。ある温度で対消滅の相互作用が凍結する。対消滅の断面積が大きいほどWIMPの残存量は少ない。WIMPの候補
SUSY 模型のneutralinoKaluza-Klein 模型のKK-photonLittle Higgs 模型のheavy photon
など。
LCの役割
(1)シナリオを区別
(2)WIMPの性質を決めて残存量を計算し宇宙の観測量と比較
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LCにおける暗黒物質の候補の同定
neutralino
sneutrino
KK photon
LHCでMissing energy のシグナルで暗黒物質の候補が見付かったとしてもいろいろな 可能性がある。LCで SUSY か余次元理論か区別をすることができる。
M.Peskin
smuon とKKmuonの区別
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SUSY暗黒物質の決定LC で超対称粒子の質量や結合定数を決めることにより、宇宙の暗黒物質になるか どうかをかる。
ALCPG cosmology subgroup
WMAP
PLANCK
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ILC物理のまとめ
500GeVまでに多くの物理が保証されている。1TeV にエネルギーをあげることは重要。 GLC Project
SUSY scenario case
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リニアコライダーの拓く物理LHC 時代(2007年-)
LHC+LC時代(2015年頃-)
ヒッグス物理 ヒッグス粒子の発見 ヒッグス結合の詳細な決定
(素粒子質量生成機構、ヒッグスポテンシャル)
超対称性 カスケード崩壊に
よる新粒子の生成
超対称性の証明
超対称の破れの機構の解明
暗黒物質の確定
大統一理論の検証
余分な次元ある模型
KKグラビトン、KK粒子の生成
余分な次元の存在の確証
次元の数の決定
余分なゲージ群 余分なゲージ粒子の発見
ゲージ模型の決定
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結論現在の素粒子物理の最大の課題は電弱相互作用の破れの物理を理解すること。そのためにはLHCでヒッグス粒子を発見し 500 GeV LC でその精密測定をすることが必要。力の統一、ニュートリノの質量の起源、暗黒物質の存在などの問題の解決には標準模型を超える物理が必要。LHCで最初の手掛かりが得られたら、それを調べるのはLCの役割。特に、暗黒物質を確定するのにLCは必要。リニアコライダーは今後20年の素粒子物理およびその宇宙との関連の解明の中心的な役割を果たす。