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数学ソフトウェアを使ってみよう

2011年 v1.11

大阪教育大学 数理科学講座 菅原邦雄[email protected]

1 コンピュータと数学

近年、多くの数学関係ソフトウェアーが開発され利用できるようになってきた。特に、画像表示に優れたソフトは、抽象的な数学理論の結果を直感的に表示してくれるので、教育において活用が期待できる。証明をコンピュータに完全に任せることはできないが、複雑な計算もコンピュータにさせることができるので、数学の研究においても実験的手法をとりれることが可能になってきた。

1.1 数学関係のソフトウェアー

市販ソフトウェアー

本学では以下のソフトがインストールされているのでいつでも利用することが出来る。市販のソフトウェアーはサポート体制が確立しているが、その多くは高価で個人で気軽に購入出来るものではない。特に、児童・生徒が自宅で自由に使うわけにはいかない。

(1) 数式処理ソフトウェアー:Mathematica, Maple

 人間が紙と鉛筆でするように数式を処理してくれる。結果を図示することも出来る。

(2) 数値解析ソフトウェアー:MATLAB

 科学技術計算などに利用されている。

(3) 対話型幾何ソフトウェーア:CabriGeometry II Plus

 定規とコンパスを使う代わりに、マウス操作でコンピュータの画面上に点、直線、円をはじめとる図形を描く。中点、二等分線、垂線、平行線などを描くだけではなく、対称移動、回転移動、拡大・縮小、距離の計測、計算などの機能をもっている。また、垂直・対称・二等分などの関係を保ったまま作図した図形を動かすことができるので、図形の性質をよく理解できる。

フリー・ソフトウェアー

以下のものは、市販のソフトに劣らない性能を持っているが必ずしも広く知られているとは言えない。

1

(1) 数式処理ソフトウェアー Maxima  http://maxima.sourceforge.net/

 横田 博史 著「はじめてのMaxima」工学社 2006年 ISBN: 9784777512010

(2) 数値解析ソフトウェアー  Scilab(日本語 Home Page)∗  http://scilab.na-inet.jp/

 GNU Octave  http://www.gnu.org/software/octave/

  FreeMat  http://freemat.sourceforge.net/

(3) 対話式幾何ソフトウェアー KSEG  http://www.mit.edu/~ibaran/kseg.html

 KidsCindy∗  http://www11.atwiki.jp/kidscindy/

 GeoGebra  http://www.geogebra.org/cms/

(4) 関数のグラフ表示と解析のソフトウェアー GRAPES  http://www.osaka-kyoiku.ac.jp/~tomodak/grapes/

(5) 数式の入った文章の作成に適した組版システム TeX∗  http://oku.edu.mie-u.ac.jp/~okumura/texwiki/

∗の付いたものは日本で開発されたものや日本語の解説書が充実しているものである。

2 汎用計算機代数システム:Maxima

2.1 Maxima の入手とインストール

CD-Rのmaximaフォルダーにはmaxima-5.23.2.exeが収録されている。最新版は公式ホームページ (http://maxima.sourceforge.net/) からダウンロードできる。その中の「5.23.2-Windows」等が windows 用へのリンクである。なお、数字はプログラムの更新に伴って随時変わる。この講習で使用するのは、version 5.23.2 である。maxima-5.23.2.exe(コンピュータによっては末尾の「.exe」は表示されないこともある)をダブルクリックするとインストールが開始される。

2.2 Maxima(Windows版):基本操作

Maximaのフロントエンドには、wxMaxima, xmaxima, コマンドライン版 maxima などがあり、入力方法と画面表示がそれぞれ異なる。

(1) wxMaximaの起動:「スターとメニュー」から次の順に選択する。  「すべてのプログラム」⇒「maxima-5.23.2」⇒「 wxMaxima」

2

(2) 計算式の入力 (wxMaximaの versionによって異なる。)

wxMaxima(version 0.8.7の場合)

 式を入力して(最後に ;(セミコロン)を入力後)�� ��Shift キーを押しながら�� ��Enter キーを押すと計算が実行される。

�� ��Enter キーを押すだけでは改行されるが計算は実行されない。複数行にわたって計算式を入力したいときは、

�� ��Enter キーだけを押して改行すればよい。すべての入力が終わった後、(最後に ; を入力後)�� ��Shift キーを押しながら

�� ��Enter キーを押すと計算が実行される。

例  1/2+1/3;�� ��Shift

�� ��Enter

 文末にセミコロンではなくドルマーク $ をつけると(計算はされるが)実行結果の出力が省略される。

(3) 計算結果の出力

  (%i1) が入力 (input)の内容, (%o1) が対応した出力結果 (output)を表している。入力と出力には、計算の進行に伴って自動的に通し番号が付けられる。

例 1/2+1/3;�� ��Shift

�� ��Enter

(%i1) 1/2+1/3;

(%o1)5

6 計算結果は %o1 などのように書けばその後の計算で参照することができる。直前の計算結果は % で参照できる。

2.3 メニューの概要

ファイル メニュー:ファイルの保存・読み込み等。パッケージ読込み:変数の定義や計算手順を(テキスト)ファイルにしておくと、ファイルから読み込んで処理してくれるが、その経過・結果は出力しない。関数 load を呼び出して処理している。

3

バッチファイル:変数の定義や計算手順を(テキスト)ファイルにしておくと、ファイルから読み込んで計算・出力してくれる。関数 batch を呼び出して処理している。例:diff_exam.macという名前のファイルに

f(x) := x^2;

diff(f(x), x);

g(y) := sin(y);

g(f(x));

diff( g(f(x)) , x);

と書いておき、パッケージ読込み・バッチファイルで処理してみると違いがわかる。エクスポート:処理内容ががHTML形式で出力される。出力された式は画像になっている。編集 メニュー:画面内のコピー・切り取・貼り付け・拡大・縮小等。各種設定。設定でメニュー等の表示言語が変更できる。入力には日本語は使えない。セル メニュー:「テキストセル」「セクションセル」「改ページを挿入」などを使うと計算だけではなく、計算結果を利用した文書作成に使用することができる。ただし、日本語は使用できない。

Maxima メニュー:内部処理とユーザー定義関数、出力の形式等。方程式 メニュー:各種方程式を解くための画面が表示されるので、必要なデータを入力すればよい。代数 メニュー:行列やリストの入力、行列式や逆行列等を求める。

文字のみの行列生成: のように入力すると、成分に yi,j (i =

1, 2, j = 1, 2, 3)を持つ行列Pが定義される。変数名を空欄にしたままだと文字に入力した文字が行列の名前になる。関数から行列生成:「関数 f(i,j)= j− i, 行数:3, 列数:3, 変数名 A」を入力すると (i,j)

成分が j − iの値を持つ行列Aが定義される手入力による行列生成:行数、列数、を指定すると各成分を入力する欄が現れる。変数名はその行列の名前になる。タイプで対角行列や対称行列が指定できる。微積分 メニュー:微分、積分、極限、テイラー展開、数列の総和、ラプラス変換、多項式の最大公約数・最小公倍数・除算・部分分数展開等。式の変形 メニュー:式の整理、展開、因数分解、対数関数・三角関数の変形等。プロット メニュー:2次元、3次元のグラフ表示を行う数値処理 メニュー:自動的に数値で出力:numerの設定を(trueまたは false)を切り替える。trueの場合、数値を近似値に変換してしまう。通常は false になっている。小数点で出力:出力例 0.36602540378444

浮動小数点で出力:出力例  3.660254037844387b-1(= 3.660254037844387× 10−1)

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ヘルプ メニュー ヘルプ:英語で書かれている。 コマンドの使用例:調べたいコマンドを入力する。例えば、radcan を入力して

�� ��OK

を押すと下のように使用例が表示される。例 (%i43) example(radcan);

(%i44) (log(x+x^2)-log(x))^a/log(1+x)^(a/2)

(%o44)(log(x2 + x)− log(x))a

log(x+ 1)a/2

(%i45) radcan(%)

(%o45) log(x+ 1)a/2

· · · · · ·この例で radcan(%)の% は直前の出力結果 (%o44)を表している。

2.4 Maxima:入力の書式

(1) 演算の記号と順序: 加 +,減 -,乗 *,除 / の優先順位は数学と同じである。優先して計算したい箇所は括弧 ( ) で囲む。乗法を Mathematica のように空白で代用することはできないので、必ずアスタリスク「*」を記入する。

例  (x+1)*(x+2), 2*x^2+3*x*y(^ はベキ乗を表す)

(2) 代入: 変数に式や値を代入するときは等号「=」ではなくコロン「:」を使う。

例  y:(x+1)*(x+2)

(3) 関数の定義: 関数を定義するにはコロン・イコール「:=」を使う。

例  f(x):=3*x+1

(4) 基本的な定数と関数

円周率 π %pi

自然対数の底 e %e

無限大 ∞ inf

虚数単位 i %i

ベキ乗 x4 x^4または x**4

階乗 n! n!

複素数の実部 realpart( )

複素数の虚部 imagpart( )

平方根 sqrt( )

絶対値 abs( )

指数関数 exp( )

自然対数 log( )

三角関数 sin( ), cos( ), tan( )

逆三角関数 asin( ), acos( ), atan( )

双曲線関数 sinh( ), cosh( ), tanh( )

例 (%i1) sqrt(5); (%i4) exp(log(2));

(%o1)√5 (%o4) 2

(%i2) sin(%pi/3); (%i5) (sqrt(7))^2;

(%o2)

√3

2(%o5) 7

(%i3) log(%e);

(%o3) 1

5

(5) その他の関数など

書 式 説 明ev(n*(n+1)/2,n=10) n=10のときの n*(n+1)/2の値を求める

float(%pi) (%piの値を)16桁表示fpprec:25; bfloat(exp(10)); exp(10)の値を浮動小数点表示で 25桁分表示

出力の末尾の b4 は×104を表しているsum(i^2,i,3,9 )

∑9i=3 i

2(= 280)

nusum(i^2, i, 1, n)∑n

i=1 i2 (= n(n+ 1)(2n+ 1)/6)

limit( (1+n)/n, n, inf ) limn→∞(1 + n)/n (= 1)

例 (%i1) ev(n*(n+1)/2,n=10); (%i5) sum(i^2,i,3,9 );

(%o1) 55 (%o5) 280

(%i2) float(exp(10)); (%i6) nusum(i^2, i, 1, n);

(%o2) 22026.46579480672 (%o6)n(n+1)(2 n+1)

6

(%i3) fpprec:25;bfloat(exp(10)); (%i7) limit((1+n)/n, n, inf);

(%o3) 25 (%o7) 1

(%o4) 2.20264657948067165169579b4

(6) 式の計算(展開・因数分解・簡略化)

書 式 説 明expand( (x+2)^3 ) 展開factor( x^3-1 ) 因数分解

ratsimp( 1/(x-1)+1/(x+1) ) 有理式 (rational function)の簡略化trigsimp(sin(x)^2+cos(x)^2) 三角関数 (trigonometric function)や

指数関数を含む式の簡略化radcan( ) 対数、指数、冪根などが入った式の簡略化

trigreduce( ) 三角関数の積を減らして簡略化trigexpand(sin(x+y)) 加法定理や倍角の公式を使って展開

例 (%i1) (1+sqrt(7))^2; (%i6) 1/(x-1)+1/(x+1);

(%o1) (√7 + 1)2 (%o6) 1

x−1+ 1

x+1

(%i2) expand((1+sqrt(7))^2); (%i5) ratsimp(1/(x-1)+1/(x+1));

(%o2) 2√7 + 8 (%o5) 2x

x2−1

(%i3) expand((x+2)^2); (%i6) (sin(x))^2+(cos(x))^2;

(%o3) x2 + 4 x+ 4 (%o6) sin(x)2 + cos(x)2

(%i4) factor(70612139395722186); (%i7) trigsimp((sin(x))^2+(cos(x))^2);

(%o4) 2 32 435 26684839 (%o7) 1

(%i5) factor(x^3-1); (%i8) trigexpand(sin(x+y));

(%o5) (x− 1)(x2 + x+ 1) (%o8) cos(x)sin(y)+sin(x)cos(y)

(7) 代数方程式の解を求める

6

代数方程式 solve( 方程式,変数 )

連立方程式 solve([方程式 1,方程式 2,...],[変数 1,変数 2,...])

例 (%i1) solve(x^2-5*x+6=0,x);

(%o1) [x=3,x=2]

(%i2) solve([3*x-4*y=10,3*x+2*y=4],[x,y]);

(%o2) [[x=2,y=-1]]

(8) 微分とテイラー展開

  書 式 説 明微分 diff( 2*x^2+3*x*y, x ); xに関して微分

2 階微分 diff( 2*x^2+3*x*y, x, 2 ); xに関して2回微分テイラー展開 taylor( sin(x), x, 0, 5 ) xに関して x = 0 の

まわりで 5次まで展開

例1 (%i1) f:2*x^2+3*x*y; (%i3) diff(%,y);

(%o1) 2x2 + 3xy (%o3) 3

(%i2) diff(f,x); (%i4) diff(sin(cos(x)),x);

(%o2) 3y + 4x (%o4) -sin(x)cos(cos(x))

例2 (%i1) g(x,y):=2*x^2+3*x*y;

(%o1) g(x, y) := 2x2 + 3xy

(%i2) diff(g(x,y+x),x);

(%o2) 3(y + x) + 7x

(9) 積分

不定積分 integrate( 3*x^2+6*x*y, x ); xに関して不定積分定積分 integrate( 3*x^2+6*x*y, x, 0, 2 ); xに関して 0から 2

まで積分数値積分 romberg( 2*cos(x^2+3*x), x, 1, %pi); xに関して 1から π

まで数値積分

例 (%i1) integrate(sin(2*x),x); 不定積分

(%o1) −cos(2 x)

2(%i2) integrate(sin(x),x,0,%pi); 定積分(%o2) 2

(%i3) romberg(sin(x),x,0,%pi); 数値積分(%o3) 2.000000016288042 数値積分なので誤差が出る

(10) 1階または2階の常微分方程式の解を求める

常微分方程式 ode2(方程式, 未知関数, 独立変数)

   積分定数は %c, %k1, %k2などであらわされる。

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例 1.  ode2(’diff(y, x)=2*y, y, x)

初期条件の与え方

1階常微分方程式 ic1(微分方程式(の解), xval, yval)

2階常微分方程式 ic2(微分方程式(の解), xval, yval, dval)

xval は独立変数の初期値, yval は従属変数の初期値, dval は従属変数の1階微分の初期値である。

例 2.  ic1(ode2(’diff(y, x)=2*y, y, x), x=0, y=y0)

注意:diffの左のアポストロフィがないと yが xの関数であることを認識してくれない。

例 3.  ic2(ode2(’diff(y,x,2)=y,y,x),x=0,y=y0,’diff(y,x)=d0)

例 4.  ode2(’diff(y, x)=2*y, y, x)で解を求めた後、初期条件を   ic1(%, x=0, y=y0) で与えることもできる。

(11) 線形常微分方程式

微分方程式 desolve(方程式, 未知関数)

例 1.  x′′(t) = 2x(t)     desolve(’diff(x(t), t, 2)=2*x(t), x(t))

例 2.  x′(t) = y, y′(t) = −x(t)

   desolve([’diff(x(t), t)=y(t),’diff(y(t), t)=-x(t)],[x(t),y(t)])

初期条件の与え方

atvalue(y(x), xval, yval)) atvalue(’diff(y(x),x), xval, dval))

xval は独立変数の初期値, yval は従属変数の初期値, dval は従属変数の1階微分の初期値である。

例 3.  y′′(x) = −y(x) を y(0) = 1, y′(0) = 0 という初期条件で解く。   atvalue(y(x), x=0, 1);

atvalue(’diff(y(x),x), x=0, 0);

desolve(’diff(y(x),x,2)=-y(x),y(x));

(12) ベクトルと行列

  入力の書式ベクトル (x1, y1, z1) [x1, y1, z1]

内積 [x1, y1, z1].[x2, y2, z2]

行列

x1 y1 z1

x2 y2 z2

x3, y3 z3

matrix([x1, y1, z1],[x2, y2, z2],[x3, y3, z3])

行列Aの行列式 transpose(A)

行列Aの逆行列 A^^-1

行列Aと行列Bの積 A.B

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○ ベクトル [x1, y1, z1] の第 1成分 x1 は [x1, y1, z1][1]で取り出せる。

○ 内積と行列の積はピリオド . を使う。     sqrt(trigsimp([a*cos(t),a*sin(t)].[a*cos(t),a*sin(t)]))

○ ベクトル [x1, y1, z1], [x1, y1, z1]のベクトル積    transpose(adjoint(matrix([x1, y1, z1],[x2, y2, z2],[1,1,1])))[3];

○ Aに行列を代入するには     A : matrix([x1, y1, z1],[x2, y2, z2],[x3, y3, z3])

と書けばよい。このとき、A の第 (1,2)成分は A[1,2]で取り出せる。

○ 列ベクトル x =

x1x2

は  x:matrix([x1],[x2]) で入力できる。

注意 (Mathematica との相違点) コマンドは小文字で始まり、括弧は [ ] の代わりに ( ) を使う。定数も小文字で始まり % を前につける。

例 定数の正負等の指定 positive, negative or zero?

空間曲線 γ(t) = (a cos(u0) cos(t), a cos(u0) sin(t), a sin(u0))の接ベクトル γ′(t) = (−a cos(u0) sin(t), a cos(u0) cos(t), 0)を計算して

孤長パラメータ s =∫ t

0|γ′(t)|dtを求める。

(%i1) gamma:[a*cos(u0)*cos(t),a*cos(u0)*sin(t),a*sin(u0)];

(%o1) [a cos(t)cos(u0),a sin(t)cos(u0),a sin(u0)]

(%i2) dgamma:diff(gamma,t);

(%o2) [-a sin(t)cos(u0),a cos(t)cos(u0),0]

(%i3) s:integrate(sqrt(dgamma.dgamma),t,0,t);

Is a positive or negative?

positive(を入力して�� ��Shift

�� ��Enter )Is cos(u0) positive, negative?

positive(を入力して�� ��Shift

�� ��Enter )Is t positive or negative or zero?

positive(を入力して�� ��Shift

�� ��Enter )(%o3) -a t cos(u0)

2.5 Maxima:グラフ表示

Maxima では 2次元グラフや 3次元グラフを表示できる。実際には,外部プログラム gnuplot を利用して表示している。出力された 3次元グラフはマウスでドラッグして視点を変えることができる。表示されている画像は gnuplot graph ウィンドウ 上部の青色のバーでマウスの右ボタンを押(して離)すとメニューが出るので、マウスを optionまで下ろすと、コピー、印刷などの操作が選べる。

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グラフの種類 書式 説明2次元グラフ plot2d(f(x),[x,a,b]) f(x)のグラフを a ≤ x ≤ b

の範囲で描く3次元グラフ plot3d(f(x,y),[x,a,b],[y,c,d]) f(x, y)のグラフを a ≤ x ≤ b,

c ≤ y ≤ dの範囲で描く

例 (1) plot2d(2*x^2,[x,-5,5]);

(2) plot2d([0.5*x^2, x^2, 2*x^2, 3*x^2,4*x^2],[x,-5,5],[y,0,10]);

  [ ] の中に並列すると複数のグラフを重ね合わせることができる。(3) plot3d(sin(x+sin(y)),[x,-3,3],[y,-3,3]);

 表示されたグラフをマウスの左ボタンでドラッグすると視点が変化する

例 2.1 助変数表示された平面曲線  plot2d([parametric,2*cos(t),sin(t),[t,0,2*%pi]]);

  plot2d( [parametric, cos(t), sin(t), [t, 0, 2*%pi], [nticks, 50]] )

曲線 γ(t) = (cos(t), sin(t))の 0 ≤ t ≤ 2πの範囲を分点数が 50となる折れ線で描く

例 2.2 助変数表示された曲面  plot3d ([cos(x)*(3 + y*cos(x/2)), sin(x)*(3 + y*cos(x/2)),

    y*sin(x/2)], [x, -%pi, %pi], [y, -1, 1], [grid, 50, 15]);

[grid, x方向の解像度, y方向の解像度]の数値を変えると曲面表示の粗密が変わる。

例 2.3 助変数表示された空間曲線は古い version(5.17.0等)では  plot3d([cos(t), sin(t),2*t],[t,-%pi,%pi],[s,-1,1],[grid,50,50]);

のようにダミーのパラメータ [s,-1,1]を記述すればよかったが、今の版では変数が不足しているとエラーが出る。 plot3d([cos(t), sin(t),2*t+s],[t,-%pi,%pi],[s,-0.01,0.01],[grid,50,50]);

(幅の狭い帯)のように記述する必要がある。

注意 1 gnuplot graph ウィンドウを閉じないと次の計算ができない。注意2 plot2d, plot3dの代わりに wxplot2d, wxplot3dを使うと入力ウィンドウ内に表示される。その表示サイズは wxplotsizeの値を変更することで変えられる。wxplotsizeの値を横 400×縦 500にするには、wxplot2d, wxplot3d の前に wxplotsize:[400,500];

を入力すればよい。注意 3 wxmaxima のメニューのプロットから 2次元プロットや 3次元プロットを選択して出てくる窓の中の「表示方法」で 「ドキュメント内で表示 (inline)」 を選べば、wxplot2d, wxplot3dが実行され入力画面内にグラフ表示される。例 (1) wxplot3d([u*sin(t),u*cos(t),t/3],[t,0,10],[u,-1,1]);

(2) wxplot2d(2*x^2,[x,-5,5]);

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3 対話式幾何学ソフトウェア:KSEG

3.1 KSEG の入手とインストール、ヘルプファイルなど

入手とインストール: http://www.mit.edu/~ibaran/kseg.html から kseg-0.401.zip

をダウンロードする。ダウンロードした kseg-0.401(.zip)をダブルクリックすると、kseg-0.401フォルダーが見えるので、それをハードディスクの適当な場所(通常はCドライブの Program Filesフォルダー)にコピーする。または、CD-Rの KSEG フォルダーの中の kseg-0.401フォルダーをハードディスクにコピーする。

使用法:コピーした kseg-0.401フォルダーの中のKSEG(.exe)をダブルクリックする。英語表示から日本語表示への変更:KSegを起動して、fileメニューからChoose Lan-

guage を選択し kseg-0.401フォルダーの中の kseg_ja.qm を開く。ヘルプ:日本語表示ではヘルプは文字化けしてしまう。kseg-0.401フォルダーの中の

kseg_help_ja(.html) を直接ダブルクリックすれば、インターネットエクスプローラーなどのブラウザが開いて読める。

3.2 KSegでできること

(1) 作図: 交点、線分、中点、半直線、直線、平行線、垂線、円、円弧、  角の 2等分線、軌跡、多角形・扇形・弧形・円などの塗りつぶし(2) 計測: 距離、長さ、半径、角度、比率、傾き、面積、(3) 計測した数値の間の計算:(4) 図形の変形:平行移動、線対称移動、拡大・縮小、回転(5) 画面の移動・拡大・縮小(6) 依存関係の変更

注:作図された幾何学的対象物(オブジェクト)にはラベル(点はA,B,C,. . .、円はC1,C2,. . .、線分は S1,S2,. . . )が自動的に付与されている。点や円を選択した状態で編集メニューの「ラベルを表示(変更)」を使えば表示(変更)できる。ラベルに日本語は使えない。

3.3 操作の基本

作図操作は、作図のためのデータ(図形等)を選択したあと作図するという手順になっている。また、点や円を選択すると、そのデータから何が作図できるかメニューバーに図示される。そのボタンを

�� ��左クリック しても作図できる。

○ (作図画面での)マウスの操作

右ボタンをクリック 点の作図�� ��右クリック  点を作図する位地でマウスの右ボタンをクリック左ボタンをクリック (1) 幾何学的対象の選択�� ��左クリック  その対象物の位置でマウスの左ボタンをクリック

(選択されたものは赤色に、可能な操作がハイライト)

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○ 幾何的対象を選択した後、それらに関して作図、計測、変形等の操作を作図画面の上にあるメニューから行なう。一部の操作は専用のボタンメニューが用意されている。

○ 複数のものの選択方法

(1) Sift キーを押しながら順次�� ��左クリック する。

(2) マウスの左ボタン押したままドラッグして破線の長方形を描きマウス左ボタンを離すと、長方形の中に含まれていたものがすべて選択される。

選択した順序に意味がある 例:3点BACをこの順に選択して角を指定すると角BACが選択される。

○ 選択の解除:何もないところで�� ��左クリック する。

○ 操作や作図の取り消し:�� ��Ctrl キーを押した状態で

�� ��Z キーを押す。

3.4 メニューの概要

ファイル通常のファイルの他に、作図構成手順(コンストラクション)の作成・コピー、画像としての出力、ヘルプ言語の選択などができる。コンストラクションについては「2.7 構築と再帰」を参照。画像として出力したものは、図の周りに空白が有って再利用しにくい。Windows

のアクセサリーのペイント等で読み込んでトリミングするとよい。

編集作図のやり直し、図形・ラベルの表示・非表示、図形の線・色・フォントの変更作図に使用した補助線などを隠す(削除と混同しないこと)ことができる。幾何学的対象(点、線分、円など)を選択した状態で「編集 ⇒ ラベルを表示」を選択するとこの対象物のラベルが表示される。この状態で「編集 ⇒ ラベルを変更」を選択すると、編集画面が開くのでカーソルを編集したい文字に持っていけば変更できる。図に注釈を入れたければ、点を作図してそのラベルを注釈の文章に変更・表示する。ラベルに日本語は使えない。

View (作図画面の移動・拡大・縮小)Pan(画面全体の移動):左マウスボタンを 押してドラッグすると作図画面全体が移動

Zoom(画面の拡大・縮小):マウスカーソルが虫眼鏡 に変化する (スケッチ領域の上にある時)。左マウスボタンを押しながら上に マウスを上に引っ張れば拡大、下に引っ張れば縮小になる。拡大・縮小はマウス ボタンが押された点を中心として行われる。マウスボタンを離せば通常の描画に戻る。

Zoom to Fit:図の拡大・縮小を行なって、視野に嵌る様にする。Original Zoom:拡大率を 100%(原寸) に戻す。

新規:作図

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作図のための幾何学的対象物の選択と可能な作図2点 ⇒ 線分、半直線、直線、円 1点(中心)と線分(半径) ⇒ 円

2つの直線・円、円と直線など ⇒ 交点  線分 ⇒ 中点3点 ⇒ (3本の)線分・半直線・直線、円弧、角の二等分線、多角形軌跡として得られた曲線との交点は取れません。

計測

計測 幾何学的対象物の選択と可能な計測    2点 ⇒ 距離 3点 ⇒ 角度 線分 ⇒ 長さ、傾き 円 ⇒ 半径、円周

計測した数値の間の計算:(計測の)計算計算式を選び、入力したい位置にカーソルを移動して、計測値や計算値の数値を

�� ��左クリック する。数値・加 (+)・減 (-)・乗 (*)・除 (/)や式もキーボードから入力することができる。入力後OKボタンを押すと計算結果が作図画面に表示される。

変形データの指定1点 ⇒ 中心

2点 ⇒ ベクトル3点 ⇒ (回転の)角度

線分、(半)直線 ⇒ ミラー (対称軸)

2線分 ⇒ 割合(拡大・縮小の倍率)計測値または計算結果 ⇒ 回転の角度、割合

 

データの解除 選択を解除

変形に必要なデータ(黄色で表示される)

平行移動 ベクトル対称移動 ミラー (対称軸)

回転 中心と (回転の)角度拡大・縮小 中心と割合

変形の方法:必要なデータが指定された状態で図形を選択して、変形から変換 (平行移動)・鏡映 (対称変換)・倍率 (拡大・縮小)・回転を選択する。

3.5 作図例

例 3.1 正三角形(点・線分・円・交点、ラベルの表示・変更、オブジェクトを隠す・表示、計測(角度))

(1) KSegを起動すると (各種メニューや作図ボタンが上部にある)白いスケッチウインドウが現われる

(2) スケッチウインドウの中で�� ��右クリック

すると点Aが描かれる。☆ 点Aを

�� ��左クリック して選択し、マウスの左ボタンで”Edit/Show label

(編集/ラベルを表示)”を選ぶとラベルが表示される。ラベルは作成順に名前が付く。

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☆ マウスの左ボタンで”Edit/Change Label(編集/ラベルを変更)”を選ぶと、ラベル編集用の窓が開くので、変更することもできる。

☆ マウスの左ボタンで”Edit/Hide Label(編集/ラベルを隠す)”を選ぶと、ラベルが見えなくなる。

(3) スケッチウインドウのAの右側の少し離れた位置で�� ��右クリック すると点 Bが出

来る。☆ 作図を間違えたときはマウスの左ボタンで”Edit/Undo(編集/元に戻す)”を選ぶと、直前の描画が取り消される。

�� ��Ctrl キーを押しながら�� ��Z キーを押してもよい。

(4)�� ��Shift を押したまま点Aと点Bを

�� ��左クリック すると、この 2点が選択された状態(赤色)になる。

(5) マウスの左ボタンで”New/Segment(新規/線分)”を選ぶと線分ABが描かれる。このとき、この線分が選択された状態(赤色)で、点A,Bは非選択となっている。

(6) 何もない位置で�� ��左クリック する(何も選択されていない状態になる)。次に、点

Aを�� ��左クリック してこの点を選択する。さらに、

�� ��Shift を押した状態で点 Bを�� ��左クリック してこれも選択する。(7) マウスの左ボタンで”New/Circle By Center And Point(新規/中心と点による円)”

を選ぶと、点Aを中心として点Bを通る円が描かれる。(先に選択したものが中心になる)。

(8) 何もない位置で�� ��左クリック する(何も選択されていない状態になる)。次に、点

Bを�� ��左クリック してこの点を選択する。さらに、

�� ��Shift を押した状態で点A(または線分AB)を

�� ��左クリック してこれも選択する。(9) マウスの左ボタンで”New/Circle By Center And Point(新規/中心と点による円)”

(または”New/Circle By Center And Radius(新規/中心と半径による円)”)を選ぶと、点Bを中心として点Aを通る円が描かれる。

(10)�� ��Shift を押しながら、最初に生成した円を

�� ��左クリック する。そうすれば、両方の円(だけ)が選択された状態(赤色)になる。

(11) マウスの左ボタンで”New/Intersection Points(新規/交点)”を選ぶと二つの円の 2

交点が描かれる。☆ 交点が画面からはみ出しているときは、マウスの左ボタンで”View/Zoom To Fit”

を選ぶと全体が縮小され画面に収まるようになる。(12) 何もない位置で

�� ��左クリック する。�� ��Shift を押しながら、2円を

�� ��左クリック して選択された状態(赤色)にする。

(13) マウスの左ボタンで”Edit/Hide Object(編集/オブジェクトを隠す)”を選ぶと 2円が見えなくなる。

☆ 間違って”Edit/Delete Onject(編集/オブジェクトを削除)”を選ばないこと。これを選ぶと、削除されたものを利用して作図されたものも削除されてしまう。

☆ マウスの左ボタンで”Edit/Unhide All(編集/すべて表示)”を選ぶとすべてのオブジェクトが表示される。

(14) 点Aと上の交点(Cとしよう)を選択した状態(赤色)にしてマウスの左ボタンで”New/Segment”(新規/線分)を選ぶと線分ACが描かれる。

(15) 点Bと交点Cを選択した状態(赤色)にしてマウスの左ボタンで”New/Segment(新規/線分)”を選ぶと線分BCが描かれ、正三角形ABCが出来上がる。

☆ 左マウスボタンを押しながら三角形の 1つの頂点を引き回してみよう。どの頂点を持って引き回すかによって、KSegで何が出来るか様子がわかる。

14

(16) 3点C,B,Aを(この順に�� ��左クリック して)選択した状態(赤色)にしてマウスの

左ボタンで”Measure/Angle(計測/角度)”を選ぶと ̸ CBAの大きさ(60度)が表示される。線分CBを正の向きに何度回転すれば線分ABに重なるか表示されている。3点をA,B,Cの順に

�� ��左クリック して選択すると 300度が表示される。

例 3.2 三角形の重心(中点)

(1) 3点A,B,Cを作図し、線分AB, BC,

CA を描く。

(2) 線分BCを選択し、(新規/中点)を選択し、その中点Dを描く。

(3) 線分CAを選択し、その中点 Eを描く。

(4) 線分ABを選択し、その中点 Fを描く。

(5) 2点A,Dを選択し線分ADを描く。

(6) 2点B,Eを選択し線分BEを描く。

(7) 2点C,Fを選択し線分CFを描く。

(8) 3線分AD, BE, CF は 1点 (重心という)で交わっていることを確認する。

例 3.3 三角形の垂心(垂線)

(1) 3点A,B,Cを作図し、線分AB, BC, CA を描く。

(2) 点Aと辺BCを選択し、(新規/垂線)を選択(垂線ボタンでもよい)すると、点Aから辺BCに垂線が引かれる。

(3) 同様に点Bから辺CAに引く。

(4) 同様に点Cから辺ABに引く。

(5) 3本の垂線が 1点(垂心)で交わっていることを確認する。

例 3.4 三角形の外心(中点・垂線)

(1) 3点A,B,Cを作図し、線分AB, BC, CA を描く。

(2) 線分 BCを選択し、(新規/中点)を選び(中点ボタンでもよい)その中点 Dを描く。線分CAを選択しその中点 Eを描く。線分ABを選択しその中点 Fを描く

(3) 線分BCとその中点Dを選択し、(新規/垂線)を選択し(垂線ボタンでもよい)D

を通るBCの垂線を描く。

(4) 線分CAとその中点 Eを選択し、Eを通るCAの垂線を描く。

(5) 線分ABとその中点 Fを選択し、Fを通るABの垂線を描く。

(6) 3本の垂線は 1点 (外心)で交わっていることを確認する。

(7) 2本の垂線を選択し、(新規/交点)を選択し交点を描く。

(8) (7)の交点を中心とし、点Aを通る円を描くと、この円はB,Cも通る。この円を外接円、Gを外心という。

例 3.5 三角形の内心(角の二等分)

(1) 3点A,B,Cを作図し、線分AB, BC, CA を描く。

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(2) 3点A,B,Cを(この順に)選択し、(新規/角の 2等分線)を選択(角の 2等分線ボタンでもよい)すると、 ̸ ABCの 2等分線が引かれる。

(3) 3点B,C,Aを(この順に)選択し ̸ BCAの 2等分線を引く。

(4) 3点C,A,Bを(この順に)選択し ̸ CABの 2等分線を引く。

(5) 3本の 2等分線が 1点(内心)で交わっていることを確認する。

問 内心を中心として三角形ABCの 3辺に接する円(内接円という)が描けます。どのように描けばよいでしょうか?

課題 3.6 内心、外心、重心、垂心のうち3心は同一直線上にあります。その直線をオイラー線と言います。オイラー線が通るのはどの心でしょうか、作図して調べましょう。なお、作図の際に利用した補助線等は、”Edit/Hide Object(編集/オブジェクトを隠す)”ですべて見えなくしておいたほうが分りやすい。

例 3.7 三角形の平行移動:

(0) 平行移動される三角形ABCを作図する。

(1) (変形/選択を解除)を選ぶと黄色で表示されたものがなくなる。

(2) 画面上に2点D,Eを描きその両方を選択し(すでにある点を選択してもよい)、(変形/ベクトルを選択)する(メニュー欄の下の黄色のベクトルをクリックしてもよい)と平行移動のベクトルが黄色く表示される(ベクトルの向きは選択の順序による)。

(3) 三角形ABCを選択し、(変形/変換)を選択する(................................................................

.......

.......

.......

.......

.......

.....................................................................................................

......................................

AAを

�� ��左クリック してもよい)と、三角形ABCが黄色く表示されたベクトルの大きさだけ平行移動された図形が描かれる。

(4) 平行移動のボタン................................................................

.......

.......

.......

.......

.......

.....................................................................................................

......................................

AAをマウスの左ボタンで繰り返し押してみよう。

(5) 黄色いベクトルの先端(または根元)をマウスの左ボタンでドラッグすると平行移動の向きと量が変化するのがわかる。

例 3.8 三角形の回転:

(0) 回転される三角形ABCを作図しておく。

(1) (変形/選択を解除)を選ぶと黄色で表示されたものがなくなる。

(2) 画面上に 3点 D,E,Fを描く。�� ��Shift キーを押した状態でこの 3点を順に選択し、

(変形/角度を選択)する(メニュー欄の下の黄色の回転角をクリックしてもよい)と回転移動の角が黄色く表示される(角は点を選択する順序によって異なる)。

(3) 回転の中心にしたい点を作図して選択して(すでにある点を選択してもよい)(変形/中心を選択)する(メニュー欄の下の黄色の点をクリックしてもよい)と回転の中心が黄色く表示される。

(4) 三角形ABCを選択し、(変形/回転)を選択する(...................................................................

.......

.......

.......

.......

.......

.......

..................................................................................................................... ............................................

....................................................

• をクリックしてもよい)と、

回転された図形が描かれる。

(5) (回転される図形を選択した状態で)回転のボタン...................................................................

.......

.......

.......

.......

.......

.......

..................................................................................................................... ............................................

....................................................

• を繰り返し�� ��左クリック し

てみよう。

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(6) 黄色い角度を規定している点のどれかをマウスの左ボタンでドラッグすると回転の量(と向き)が変化するのがわかる。

例 3.9 点対称の対称移動は用意されていないが、180度の回転を次のように定義すればよい。

(1) 線分を描き中点を作図し、すべての選択を解除(2)

�� ��Shift キーを押し状態で、線分上の 3点を端から順に選択し、(変形/角度を選択)すると回転角 (180度)が黄色く表示される。

(3) 回転の中心にしたい位置でマウスの右ボタンをクリックし、(変形/回転の中心)を選択すると、その点が黄色く表示される。

(4) 回転したい図形を選択し、(変形/回転)を選択すると、180度回転された図形が描かれる。

例 3.10 三角形の線対称移動:

(0) 対称移動される三角形ABCを作図する。(1) (変形/選択を解除)を選ぶと黄色で表示されたものがなくなる。(2) 対称移動の軸にしたい線分・半直線・直線を作図・選択し(すでにある線分等を選択してもよい)、(変形/ミラーを選択)する(メニュー欄の下の黄色の線分をクリックしてもよい)と対称軸が黄色く表示される。

(4) 三角形ABCを選択し、(変形/鏡映)を選択すると、対称移動された図形が描かれる。

(5) (対称移動したい図形を選択した状態で)対称移動のボタンをマウスの左ボタンで繰り返し押してみよう。

(6) 対称軸(を規定している点のどれか)をマウスの左ボタンでドラッグすると移動の量(と向き)が変化するのがわかる。

例 3.11 計測と計算:三角形の各頂点と対辺の中点を結ぶ線分を中線という。3本の中線は 1点(重心という)で交わる。重心は中線を 2 : 1 に内分する。(1) 三角形を描く。 (5) 計測値の大きい方を選択 (重心)を作図する。 (6) 「計測」→「計算」(2) 三角形の頂点と重心を選択 (7) カーソルを行末に置き x

yボタンを押す

(3) 「計測」→「距離」 (8) 先ほどの計測値の小さい方を選択(4) 重心と対辺の中点との距離を計測 (9) 計算ウィンドウの「OK」をクリック

例 3.12 計算ウィンドウには+-*/などを使った数式が入力できる。作図画面に表示されている計測結果を選択するとそれが計算ウィンドウのカーソルの位置に挿入される。上の (5)~(9)は次のようにしてもよい。(5) 計測から「計算」を選択すると計算ウィンドウが現れる。(6) 作図画面で計測値の大きい方を選択すると計算ウィンドウにそれが表示される。(7)(カーソルを行末に置き)/を入力する。(8) 作図画面で先ほどの計測値の小さい方を選択すると/の後ろに表示される。(9) 計算ウィンドウの「OK」をクリック

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3.6 拘束と軌跡

拘束と解除図形は作図された順に依存関係が有る。例えば、線分上に点を描くと、その点は線分上のみ動かすことができる。

○ �� ��Ctrl キーを押しながら線分上の点を左ボタンでドラッグして線分からはず

すと「線分上にある」という拘束が解除される。○ 

�� ��Ctrl キーを押しながら点を左ボタンでドラッグして線分上で持ってくると「線分上にある」という拘束ができる。○ 

�� ��Ctrl キーを押しながら点を左ボタンでドラッグして他の点に重ねると2点が一致する(1点になる)。

○ �� ��Ctrl キーを押しながら交点を左ボタンでドラッグして他の位置に移動する

と交点ではなくなる。

図形を子図形や孫図形に依存させることは出来ない。

軌跡と包絡線先に定義されたもの(親)を(それの持っている制約条件の下で)動かしたときに、それに依存したもの(子孫)が動いて出来る図形を描く。

○ 依存関係にある2つの幾何学的対象の選択→軌跡

軌跡として得られた曲線との交点は取れません。軌跡上に点を取ってもその点は軌跡に拘束されていません。

例 3.13 放物線は定直線と定点から等距離にある点の軌跡である。  (1) (2点A,Bを描き)点A,Bを (この順に)選択し、(新規/半直線)を選ぶと、Aを始点としBを通る半直線ABが描かれる。  (2) 半直線AB上に点Cをとり、線分ACを作図する。  (3) 直線DEと(その上にない)定点 Fを作図する。  (4) 点 Fを中心とし半径ACの円を描く。  (5) (点Dを通る)直線DEの垂線と、点Dを中心とする(半径ACの)円を描き、それらの交点で(直線DEに関して)Fと同じ側にあるものをGとする。  (6) 点Gを通り直線DEに平行な直線を描き、(3)の円との交点(の 1つ)をHとする。  (7) 2点C,Hを選択して(新規/軌跡)を選ぶ(8の字の軌跡ボタンでもよい)。  (8) 点 Fをドラッグして位置を変えるとどう変化するでしょうか。注: 線分ACを選択するには、線分ACの位置で何度かマウスの

�� ��左クリック する。

例 3.14 直線族の包絡線としての放物線の作図  (1) 点Aを始点としBを通る半直線を描き、半直線上に点Cを描く。  (2) この半直線への垂線を点Aで描く。  (3) 垂線上に点Dをとる。  (4) 線分CDを選択して中点 Eを作図する。

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  (5) 線分CDの垂直二等分線(Eを通るCDの垂線)を描く。  (6) (5)の垂直二等分線と点Dを選択して、(新規/軌跡)を選ぶ。

例 3.15 上の例の (6)以降を次のように変更して作図してください。  (6) 半直線への平行線を点Dで描く。  (7) (5)の垂直二等分線と (6)の平行線の交点を求め Fとする。  (8) 点Dと点 Fで軌跡を求めよ。(このとき、CF=FD)

例 3.16 楕円は 2点からの距離の和が一定である点の軌跡である。  (1) 線分AB上に点Cをとる。  (2) 2点A,Cを選択して線分ACを作図する。同様に線分CBを作図する。  (3) 2点D,Eを(DE<ABとなるように)描く。  (4) 半径ACの円を点Dを中心に描き、半径CBの円を点 Eを中心に描く。  (5) 2つの円の交点(の 1つ)を Pとする。  (6) 2点C,Pを選択して、新規から軌跡を選ぶ。  (7) 点Dをドラッグして位置を変えるとどう変化するでしょうか。

例 3.17 直線族の包絡線としての楕円の作図  (1) 2点A、Bを描く。  (2) 点Aを中心とし点Bを通る円を描く。  (3) 円内に(中心とは別の位置に)点Cを描き、円周上に点Dを描く。  (4) 線分CDを選択して中点 Eを作図する。  (5) 線分CDの垂直二等分線(Eを通るCDの垂線)を描く。  (6) (5)の垂直二等分線と点Dを選択して、新規から軌跡を選ぶ。  (7) 点Cを円外にドラッグしてみましょう。どうなるでしょうか。

課題 3.18 双曲線は 2点からの距離の差が一定である点の軌跡として定義されます。どのようにすれば作図できるか考えましょう。

例 3.19 (Deltoid:回転・平行移動・軌跡)  (1) 線分ABを描き、中点をOを中心とし、半径OAの円を描く。  (2) 円上に点Cをとる。  (3) 点C,O,Aをこの順に選択し、(変形/角度を選択)すると回転角 ̸ COAが黄色く表示される。  (4) 点Oを選択し、(変形/中心を選択)する(メニュー欄の下の黄色の点をクリックしてもよい)と回転の中心が黄色く表示される。  (5) 点Bだけを選択し、

.................................................................................................................................................................................................................................. .......

.....................................

....................................................

• を2回クリックして描かれる点をDとする。(̸ DOB =

2 ̸ COA)

  (6) 点O,Cだけをこの順に選択し、(変形/ベクトルを選択)する(メニュー欄の下の黄色いベクトルをクリックしてもよい)と平行移動のベクトルとして黄色く表示される。

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  (7) 点 Cだけを選択し、(変形/変換)を選択する(................................................................

.......

.......

.......

.......

.......

.....................................................................................................

......................................

AAを

�� ��左クリック してもよい)

と、点Cが−→OCだけ平行移動された位置に点(Eとする)が描かれる。

 ☆ 画面からはみ出しているときは、マウスの左ボタンで”View/Zoom”を選び、スケッチウィンドウの中にマウスを移動させると虫めがねに変わるので左ボタンを押しながら上下させると縮小・拡大されるので、見やすいサイズにすればよい。  (8) Eを中心に半径 ECの円を描く。  (9) 直線CDと (8)の円と(Cとは異なる)交点を Fとする。  (10) 直線CDを隠し、点 Fと点Cを選択し軌跡を作図する。

例 3.20 (アステロイド Astroid)半径 4aの円O1に点Aで内接する半径 aの円O2を考える。O2がO1内を滑らずに転がると(き、2円の接点をQとす)る。このとき、O2に固定された点 P

が描く軌跡を作図せよ。ただし、A=Qのとき、P=Aとする。(ヒント:点QをO2を中心に4 ̸ QO1A 回転した点を Pとすればよい。回転を使う。)

例 3.21 線分の直線族の包絡線アステロイド(1) 2点A,Bと線分ABを描く。(2) (A,Bとは別に)垂直に交わる 2直線を描き、x軸・y軸とする。(3) x軸上に点 Pをとり、点 Pを中心とし半径ABの円を描く。(4) (3)の円と y軸の交点(の一つを)Qとする。(5) 2点 P,Qを選択し(8の字の)軌跡ボタンを押す。(6) もう一つの交点に対して同じことをするとアステロイドの全体が現れる。

課題 3.22 下の (1)~(5)の作図をして考えましょう。

(1) 平面上に2点A,Bをとり、中心がAで半径ABの円を描く。

(2) (1)の円周上に点 Pをとり、点Qを PQが直径となるようにとる。

(3) 点 Pでの円の接線に関して点Bを対称移動した点をCとする。(ヒント:円の接線は半径に垂直な直線です。)

◎ 点Pが (1)の円周上を動くとき点Cの軌跡はどのような図形になるでしょうか。

A B

P

Q

C

D

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(4) 点Qでの円の接線に関して点 Bを対称移動した点をDとする。なお、対称軸を取り直す際は、(変形/選択の解除)をする必要があります。

◎ 直線 PCと直線QDはどこでどのように交わるでしょうか。

(5) 点Cで直線PCに引いた垂線と、点Dで直線QDに引いた垂線の交点をRとする。

◎ 点Pが (1)の円周上を動くとき点Rの軌跡はどのような図形になるでしょうか。

3.7 作図手順の構築と再帰

定型的な作図手順は保存して再利用が可能である。また、作図の中で自分自身を呼び出して再帰的に繰り返して利用することもできる。

作図手順の構築 (construction)・保存と利用例

例 3.23 (3点を通る円の作図)(1) ”File/New Construction”(ファイル/新規コンストラクション)で右側に作図手順表示用の窓のついた作図画面を開く。

(2) 3点 A,B,C を描く(作図操作が右側の窓に順次記載される)。(3) A,B,Cを選択して、それらを”Construction/Make Given” (コンストラクション/

既知オブジェクトに変更)で”既知のもの (Given)”にする。(4) 線分ABとBC、それらの中点D,Eを描く。(5) Dを通るABの垂線と Eを通るBCの垂線の交点 F(外心)を描く。(6) 中心点を Fとし点Aを通過する円(外接円)を描く。(7)「外接円と最初の3点A,B,C」以外の全ての対象を選択し、”Edit/Hide Objects”(編集/オブジェクトを隠す)を選び、外接円と最初の3点A,B,C以外を隠す。

(8) ”File/Save as”(ファイル/名前をつけて保存)を選び名前をつけて保存する。(9) ”File/New Sketch” (ファイル/新しいスケッチ)で新しいスケッチを生成して、そこに 3点を描き、その 3点を選択状態にして、”Play/Untitled”(再生/クイック再生)

を選択して、先ほど保存したファイル (~.sec)を選択すると、保存した作図手順が3点を初期値として実行される。

注  (9)で選択された 3点は、(3)で既知オブジェクトに設定されたものに、選択された順に対応する。対応するものを間違って選択しても実行されるが、そのときは期待通りの結果にはならない。

再帰を利用した作図例

例 3.24 (放物線)2直線を描き、それぞれに等間隔に点P1, P2, P3, . . ., 点Q1, Q2, Q3, . . .を描く(間隔は直線で異なってよい)。直線 P1, Q1 P2, Q2 P3, Q3 . . .を描く。これらの直線族の包絡線は放物線になっている。(1) ”ファイル”から”新規コンストラクション”を選択して作図画面を開く。(2) 4点A,B,C,Dを作図する。(3) 2点A,Cを選択し平行移動のベクトル

−→ACを指定。

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(4) 点Cを選択し−→ACだけ平行移動 (移動した点を Eとする)。

(5) 変形メニューで選択を解除。(6) 2点B,Dを選択し平行移動のベクトル

−−→BDを指定。

(7) 点Dを選択し−−→BDだけ平行移動 (移動した点を Fとする)。

(8) 変形メニューで選択を解除。(9) 2点 E,Fを通る直線を描く。(10) Shiftキーを押しながら、4点A,B,C,Dをこの順に選択し、コンストラクションで既知オブジェクトに変更。

(11) 何もないところでマウスの左ボタンをクリックし全ての選択を解除。(12) Shiftキーを押しながら、4点C,D,E,Fをこの順に選択し、コンストラクションで再帰を選択

(13) ファイルで名前をつけて保存。(14) ファイルから新規を選ぶ。(15) 新しい作図画面に 2直線 (ℓ, mとする)を描く。(16) 直線 ℓ上に 2点A,Cをほんの少し離して作図。(17) 直線m上に 2点B,Dをほんの少し離して作図。(18) Shiftキーを押しながら、4点A,B,C,Dをこの順に選択し、”再生/クイック再生”

で先ほど保存したファイルを選択すると、何回実行するか聴いてくるので回数を入れる。再帰描画が実行され、多数の直線が描かれる。

例 3.25 (ベジェ曲線)(1) ”File/New Construction”(ファイル/新規コンストラクション)で右側に作図手順表示用の窓のついた作図画面を開く。

(2) 3点 A,B,C を描く。(3) 線分ABとBC、それらの中点D,Eを描く。(4) 線分DEと、その中点 Fを描く。(5) A,B,Cを (この順に)選択して、それらを”Construction/Make Given” (コンストラクション/既知オブジェクトに変更)で”既知のもの (Given)”にする。

(6) A,D,Fを (この順に)選択して、それらを”Construction/Recurse” (コンストラクション/再帰)で”再帰”の起点に設定にする。

(7) F,E,Cを (この順に)選択して、それらを”Construction/Recurse” (コンストラクション/再帰)で”再帰”の起点に設定にする。

(8) 4点 A,B,C,F以外の全ての対象を選択し、”Edit/Hide Objects”(編集/オブジェクトを隠す)を選び、隠す。

(9) ”File/Save as”(ファイル/名前をつけて保存)を選び適当な名前 (~.sec)をつけて保存する。

(10) 新しいスケッチを (”File/New Sketch” (ファイル/新しいスケッチ)で)生成して、そこに 3点を描き、その 3点を選択して”Play”(再生)で先ほど保存したファイルを選択すると、何回実行するか聴いてくるので回数を入れる。(6)(8)で選んだ点が(5)の初期値として再帰的に実行され、ベジェ曲線が描かれる。

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注: (5)(6)(7)で点を選択する順序を違えると期待通りの結果にはなりません。その場合は初めからやり直してください。

4 大阪教育大学の計算機システムの使用法

教員免許更新講習の参加者用の Idとパスワードでログインして利用する。ログイン(1) コンピュータの電源を入れしばらくすると、Ctrl+Alt+Deleteのキーを同時に押すように指示が出るので、指示に従う。

(2) ログイン画面が現れるので、Idとパスワードを入力して Enterキーを押す。(3) 左下のスタートボタンを押して使用するプログラムを選択する。○ Maxima(wxMaxima):  すべてのプログラム ⇒ アプリケーション ⇒ maxima-5.23.2 ⇒ wxMaxima

○ KSeg:  すべてのプログラム ⇒ アプリケーション ⇒ kseg-0.401 ⇒ KSEG(.exe)

  英語表示から日本語表示への変更:   KSegを起動して、fileメニューからChoose Language を選択   (左の枠のCドライブ⇒ apps⇒ kseg-0.401⇒)kseg_ja.qmを開く   KSegを一度終了して、再度KSegを起動シャットダウン(1) 左下のスタートボタンから次のように選択する。  「ログアウト」⇒「シャットダウン」(2) 電源が自動的に切れる。

5 KNOPPIX/Math

KNOPPIX/Mathは数学のためのコンピュータ環境である。ドイツのKlaus Knopper

が開発したKNOPPIXに多数のフリーソフトウェアを組み込んだもので、福岡大学の濱田氏を中心に開発され、順次更新されている。   http://www.knoppix-math.org/wiki/

主な収録ソフトウェアは・組版システム (Kile, pLaTeX2e, AMS-TeX, AMS-LaTeX, Prosper)・汎用数式処理システム (Axiom, Maxima, Risa/Asir(OpenXM)

・可視化ツール (Geomview, Qhull, Surf, Surface Evolver, XaoS, Yorick)・対話型幾何ソフトウェーア (Kseg, Geogebra)

・群論計算機代数システム (GAP)・整数論計算機代数システム (PARI/GP)・可換代数、代数幾何学研究ツール (Singular, Macaulay2)・双曲多様体不変量計算ツール (SnapPea)・統計処理環境 (R, XLISP-STAT)

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・プログラミング言語 (C, C++, Java, Fortran, Ruby, Perl, Python, Scheme, ...)・数値計算システム (ATLAS, BLAS, LAPACK, Octave)Microsoft Office に相当する Open Office も収録されている。

パソコンに KNOPPIX/Math DVD を入れて起動するだけで、組み込まれたフリーソフトウェア使うことができる。インストールや設定作業は特に必要がない。OSにはネットワークサーバ等で多く利用されている Linux(リナックス)が採用されている。初期設定では、すべてがメモリー上で行われハードディスクにはアクセスしないので、KNOPPIX/Math を終了してDVDを取り出せばパソコンは元の状態に戻すことができる。KNOPPIX/Math に含まれているソフトウェアーにはWindows用が用意されているものが多い。

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