ビタミン(2)
平成24年7月23日 生化学2 (病態生化学分野)教授 山縣 和也
本日の学習の目標
ビタミンの作用、代謝経路について理解する
ビタミン欠乏が引き起こす病態を理解する
分 類
ビタミンA ビタミンD ビタミンE ビタミンK
水溶性ビタミン ビタミンB1 ビタミンB2 ビタミンB6 ビタミンB12 ナイアシン パントテン酸 ビオチン 葉酸
ビタ ミンB群
ビタミンC
脂溶性ビタミン
触媒型補酵素 ビタミンB12
CH3R = メチルコバラミン(触媒型補酵素)
CNR = シアノコバラミン (動物の肝臓からビタミンB12を精製する 時にCN-を加えて安定化させる)
酵素反応:転位反応,転移反応
N N
N N
CH3
Co
R
NH3C
H3C N
OHO
CH2OH
OO-
OOP
CH
CH
NH
CO
CH2
CH2
CH3
CH3
CH3
CH3
CH2
CONH2
CH2
CH2
CONH2
CH2
H3C CO NH2CH2CH2
CONH2
CH2
CONH2
CH2
H3C
H3C
H3C
アデノシルコバラミン(触媒型補酵素)
O
N
N
N
N
NH2
OHHO
CH2
R =
B12欠乏症(巨赤芽球性貧血)
葉酸は盛んに分裂して成長する細胞に必要である(骨髄の造血細胞など)。葉酸はDNAやRNAの合
成に用いられる。B12欠乏から二
次的に葉酸が欠乏し、巨赤芽球性貧血がおきる。
核酸合成
ビタミンB12は胃壁細胞から分泌される内因子(IF)と結合することで吸収される。
悪性貧血: 巨赤芽球性貧血の代表。胃粘膜にたいする自己免疫反応のため、内因子が欠如するため、ビタミンB12が吸収されない。 胃全切除手術後: 内因子が不足する。
完全菜食主義者:動物性食物に含まれる
「亜急性連合性脊髄変性症」
後索
皮質脊髄路
②B12欠乏症
触覚・位置覚を伝える
運動系伝導路
メチル基を受容体に転移する
メチル基の転移反応はミエリン(神経髄鞘)形成に必須であるホスファチジルコリンの生合成に利用される。
B12欠損により 神経障害がおきる
触媒型補酵素 ビタミンB12
転位反応 Rearrangement
メチルマロニルCoA
メチルマロニルCoAムターゼ
アデノシルコバラミン
スクシニルCoA
CH2
S CoA
C COO–
H H C O
CH3
S CoA
C COO– H C O
TCA回路
B12欠損により、メチルマロニルCoAの蓄積がおきる
葉酸 Folic acid プテロイルグルタミン酸 Pteroylglutamate C1単位代謝(転移)反応に関わる基質型補酵素
N
NH
H2N N
NO
CH2NH CONH CHCOO-
CH2
CH2
COO-
プテリジン Pteridine
プテロイン酸 Pteroic acid
プテロイルグルタミン酸 Pteroylglutamate 葉酸 Folikc acid
p-アミノ安息香酸 p-Aminobenzoic acid
葉酸と一炭素置換体
リボース5リン酸
IMP
欠乏により巨赤芽球性貧血
ビタミンA
視覚伝達に重要 欠乏により夜間の視力が低下(夜盲症) 遺伝子発現制御 リンパ球などの細胞分化に関与
肝臓、栄養分を強化したシリアル、卵、乳製品などに多くふくまれる
ビタミンA
H3C CH3
CH3
CH3 CH3
CH2OH
H3C CH3
CH3
CH3 CH3
CO
H
H3C CH3
CH3
CH3 CH3
CO
OH
レチノール Retinol
レチナール Retinal
レチノイン酸 Retinoic acid
脂溶性ビタミン
脂溶性ビタミン ビタミンA
H3C CH3
CH3
CH3 CH3
H3C
CH3CH3 CH3 H3C
H3C CH3
CH3
CH3 CH3
CO
H
H3C
H3C CH3CH3CH3
CH
β-カロテン β-Carotene
β-カロテンジオキシゲナーゼ β-Carotene dioxygenase
O2
レチナール Retinal
レチナール Retinal
O
にんじんなど植物に存在。プロビタミンA
脂溶性ビタミン ビタミンA
H3C CH3
CH3
CH3 CH3
CO
H
H3C CH3
CH3
CH3 CH3
CH2OH
レチナルデヒド レダクターゼ
NAD(P)H
NAD(P)
レチノール Retinol
H3C CH3
CH3
CH3 CH3
CO
OH
NAD, FAD
レチノイン酸 Retinoic acid
レチナール
ビタミンA
レチナール(all trans)
H3C CH3
CH3
CH3
OH
11
121
2
34 5
67
89
10
13 14H3C
15
レチナール(11-cis)
脂溶性ビタミン
H3C CH3
CH3
CH3 CH3
CO
H11
121
2
34 5
67
89
1013
1415
視色素 Visual pigment
ビタミンA
外節 Outer segment
内節 Inner segment
円盤(ロドプシンを含む) Disc
細胞膜 Plasma membrane
線毛 Cilium
ミトコンドリア Mitochondria ゴルジ体 Golgi complex 小胞体 Endoplasmic reticulum リボソーム Ribosome
核 Nucleus
シナップス小胞 Synaptic vesicle
シナップス終末 Synaptic ending
視細胞 Visual cell(杆体細胞 Rod cell) 脂溶性ビタミン
明るさの認識
H3C CH3
CH3
CH3
N+
H
11
12
H3C
11-cis
H3C CH3
CH3
CH3 CH 3C
H11
121
2
34 5
67
89
1013
1415
H
+N
all trans
hν(光)
ビタミンA 脂溶性ビタミン
ロドプシン Rhodopsin タンパク質部分:オプシン Opsin
H
光刺激が11-cisレチナールを全トラ
ンス型レチナールに変換する。その結果、一連の反応がおこり、視神経に信号が送られる。
光
Rh Rh*
Tα Tβ Tγ
トランスデューシン Transducin
cGMP GMP
ナトリウムチャネル Sodium channel
Na+ 開 閉 過分極 Hyperpolarization
細胞膜
円盤内腔
円盤膜
ビタミンA 脂溶性ビタミン
急性骨髄性白血病(M3) t (15;17)の染色体異常
白血病細胞の細胞質に認められる桿状体
トランス型レチノイン酸(ATRA)による白血病の治療
白血病細胞におけるキメラタンパク質 高濃度のATRAで白血病細胞を分化させる!
正常の分化
NCoRがはずれにくく分化がおこらない
脂溶性ビタミン ビタミンD
ビタミンD3の生理作用
腸管のCa、Pの吸収促進 腎臓に作用して、Ca結合タンパク質の合成促進などを 通じてCa吸収を促進
魚肝油や脂肪の多い魚(さば、さけ、いわしなど)に含まれる
脂溶性ビタミン ビタミンD(D3)・ 活性型ビタミンD3 の生合成
コレステロール Cholesterol
7-デヒドロコレステロール 7-Dehydrocholesterol (コレステロール生合成の最終中間体)
ビタミンD3 コレカルシフェロール Cholecalciferol
H3C
HO
H3C H3C
CH3
CH3
H3C
HO
H3C H3C
CH3
CH3
CH2
HO
H3C H3C
CH3
CH3
肝臓
CH2
HO
H3C H3C
CH3
CH3
OH
O2
25-ヒドロキシビタミンD3 25-Hydroxy vitaminD3
皮膚で変換 紫外線
1,25-ジヒドロキシビタミンD3 1,25-ジヒドロキシコレカルシフェロール 1,25-Dihydroxy vitaminD3
活性型ビタミンD3
腎臓
ビタミンD(D3)・ 活性型ビタミンD3 の生合成(つづき)
CH2
HO
H3C H3C
CH3
CH3
OH
25-ヒドロキシビタミンD3 25-Hydroxy vitaminD3
CH2
HO
H3C H3C
CH3
CH3
OH
OH
O2
脂溶性ビタミン
血中カルシウム濃度を上昇させる
骨を構成する成分
細 胞
骨基質 (matrix)
骨 塩 (bone mineral)
骨
組
織
骨芽細胞 (osteoblast)
破骨細胞 (osteoclast)
骨細胞 (osteocyte)
など
ハイドロキシアパタイト
コラーゲン 非コラーゲン性 蛋白質
多糖類
が主
ビタミンD欠乏
くる病(小児)、骨軟化症
骨ミネラルの主成分であるCaやPの減少のために骨の石灰化が障害される。成長障害・低身長、骨の変形(O脚、X脚、胸郭の変形)がおこる
脂溶性ビタミン ビタミンE
抗酸化作用
CH3
CH3 CH3 CH3CH3CH3
H3C
HOCH3
O
OCH3
HOCH3
CH3
CH3
CH3 CH3 CH3
OCH3
CH3 CH3 CH3CH3CH3
H3C
HO
O
HO
CH3 CH3
CH3
CH3 CH3 CH3
α-トコフェロール α-Tochopherol
β-トコフェロール β-Tochopherol
γ-トコフェロール γ-Tochopherol
δ-トコフェロール δ-Tochopherol
脂溶性ビタミン ビタミンK
K: Koagulation(独語:血液凝固) Coagulation(英語)
CH3
O
O H3C 3
CH3
CH3
O
O H3C n
CH3フィロキノン Phylloquinone ビタミンK1 植物由来
メナキノン(n=6〜9) (n=6:メナキノン-7) Menaquinone ビタミンK2 微生物・動物由来
緑葉野菜
納豆やチーズ
脂溶性ビタミン ビタミンK
ビタミンKの生理作用 1)血液凝固 2)骨形成
血液凝固カスケード
フィブリンが形成されて出血をとめる
組織因子 血管障害部位に発現
凝固因子を活性型に変換する
プロトロンビンがトロンビンに変換される
トロンビンはフィブリンを産生する
ビタミンK依存性凝固因子
脂溶性ビタミン ビタミンK
Glutamate Glu
ビタミンK依存性 カルボキシラーゼ Vitamin K-dependent carboxylase CH3
OH
OHR
CH3
O
OR
O
ビタミンKヒドロキノン Vitamin K hydroquinone
ビタミンK2,3-エポキシド Vitamin K 2,3-epoxide
O2 H2O
…
CH2
–NH–CH–C–
H–C–H –
– –
COO–
O
– –
…
CH2
–NH–CH–C–
H–C–
– –
–
COO–
O
– –
…
ビタミンK依存性 カルボキシラーゼ Vitamin K-dependent carboxylase
γ-Carboxyglutamate Gla
CO2
CH2
–NH–CH–C–
H–C–COO–
– –
–
COO–
O
– –
…
CH3
O
OR
HS SH
S S
ビタミンK Vitamin K
NADPH
NADP+
(生理的還元剤?)
γカルボキシグルタミン酸
VitKはグルタミン酸をGlaに変換する
ワーファリンはビタミンKの再生を阻害することで、血液凝固を阻害する
1. ビタミンB12はノルアドレナリンの合成に必須である 「 」 2. ビタミンCの吸収阻害で貧血がおきる 「 」 3. ホモシステインからメチオニンの合成にはビタミンB12が必要である 「 」 4. 葉酸はDNAの合成に重要である 「 」 5. ビタミンAにはレチノール、レチナール、レチノイン酸がある 「 」 6. Rod cellにおけるレチナールの構造変換が視覚情報に重要である 「 」 7. 25ヒドロキシビタミンD3が活性型ビタミンDである 「 」 8. ビタミンEは腸管からのCa吸収を促進させる 「 」 9. ビタミンKはグルタミンをカルボキシ化してγカルボキシグルタミンにかえる 「 」 10. ワーファリンはビタミンKを活性化させ、血液凝固を促進する 「 」
理解の確認のために
生化学と医学の間に存在する相互依存関係
生化学
医学
生化学・代謝学を理解することで、病気の本質を理解することができる。 その結果、新しい病気の発見や、新たな治療法・予防法の開発につながる。
生化学2試験について
試験範囲は生化学2で行った授業内容。生化学2の実習内容も試験範囲です。 試験問題は論述問題中心の出題です。試験問題は授業で用いたプリントおよび授業で口頭で説明した内容を中心に出題します。プリントの内容を理解し、ハーパーなどの教科書で確認しながら勉強すること。構造式を書きなさいという問題はだしませんが、基本的な構造を理解することは要求します。 本・中間試験、出席、レポートの総合評価で判定します。 再試験(12月17日)は1回のみです。
10月1日(月)の10:00-12:00