Kyoto Space Gamma
20cm TPCを用いた電子飛跡検出型コンプトンカメラのホウ素中性子捕捉反応即発ガンマ線イメージング試験
目次
1. 目的
2. 電子飛跡検出型コンプトンカメラ(ETCC)について
3. 京都大学研究用原子炉(KUR)でのホウ素中性子捕捉反応478keV即発ガンマ線のイメージング試験
4. まとめと今後の展望
水本哲矢A , 園田真也A , 古村翔太郎B, 乙武匡邦A, 石本学A , 高田淳史C, 谷森達C
京都Space GammaA, 福島SiCB, 京大理C
2018年12月15日(土) 第15回Micro-Pattern Gas Detector研究会@京都大学
課題と開発の目的
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目的
• ガンマ線カメラETCCの社会利用を目指す
• 高雑音環境下(原子炉の廃炉環境、放射線治療装置組込み環境等)で使用可能であること
• 撮像時間が数分程度であること
• 装置がコンパクトであること
• 福島SiC応用技研株式会社が開発中のBNCT(Boron Neutron Capture Therapy)治療装置において、ホウ素中性子補足反応の478 keV即発ガンマ線をリアルタイムで画像化し、治療の効果を確認できることを目指す。
課題
• 従来のETCC(10cm ETCC)では、強雑音下での弱い線源測定に限界があり、測定に時間がかかった
• 環境ガンマ線測定で画像を得るのに1時間以上@5 mSv/h
• 従来のシステムでは、1 kHz以上の高データ取得レートに対応できていない。
→ TPCサイズを20 cmに大型化して感度向上、更に高速データ取得可能な新しい信号処理回路とデータ取得トリガー生成方式の実現、全体のコンパクト化を目指して開発
BNCT (Boron-neutron capture therapy)
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10B + n → 7Li∗ + 4He + 2.3-MeV7Li∗ → 7Li + g (478-keV)
→ SiC-BNCTでの478keV即発ガンマ線のETCCによる三次元イメージングでBNCT治療の効果の確認を目指し、20 cm TPCを用いたETCC試作機を開発、性能試験を行った。
BNCTについて図出典:京都大学複合原子力科学研究所http://www.rri.kyoto-u.ac.jp/BNCT/
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コリメータ検出器(SPECT)に対するETCCの利点
代表的なバックグラウンド1H + n →2H + γ(2.2 MeV)
によって生成されたガンマ線によるバックグラウンド
・ 大質量のコリメータにおけるガンマ線の相互作用
(散乱、対生成等)
・ 検出器内のコンプトン散乱イベント
→ ETCCではこれらの雑音が大幅に抑えられる。
タイプ D[mm]
T[mm]
L[mm]
開口率(D/(D+T))2
DW(D/L)2
鉛の重さ30x30cm[kg]
99mTc 140keV
1.4 0.15 32 0.82 2.1x10-3 5.9
High E,300keV
3.1 2.0 60 0.37 2.7x10-3 22.6
BNCT487keV
2 12 200 0.02 10-4 204
30 cm
電子飛跡検出型コンプトンカメラ(ETCC)
前段検出器ガス飛跡検出器(TPC)
後段検出器シンチレーションカメラ
(GSOピクセルシンチレータとPMTで構成)
入射g線
反跳電子の飛跡に沿ってガス分子を電離
コンプトン散乱
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ETCC・コンプトン散乱体(前段検出器)
: ガス飛跡検出器(TPC)→反跳電子のエネルギー、飛跡形状を取得
・散乱ガンマ線吸収体(後段検出器): シンチレーションカメラ→散乱γ線のエネルギー、吸収位置を取得
→入射g線の到来方向、エネルギーを再構成するのに必要な情報をすべて取得。1イベント毎に再構成可能。
前段検出器(TPCガス容器)
後段検出器(シンチレーションカメラ)
今回開発した20cmTPCを使用したETCCの側面写真(c) Kyoto Space Gamma 2018
散乱g線
前段検出器(ガス飛跡検出器 m-TPC)
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上: TPC概念図右: µ-PIC写真(10cm x 10cm)
1イベント分のデータの例
・イベント番号・クロックカウンター
anode cathode
ストリップ番号
10 cm
m-PICを4×4に分割したある1領域の133Baエネルギースペクトルの例
Ba-Ka 31keVエネルギー分解能24.6%(FWHM)
EthernetでPCにデータ送信TPC単体で5kHz以上でデータ取得できることを確認
飛跡情報(100 MHz clock vs strip番号)
32 ch-sum波形情報×4(ADC値 vs clock)
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20 cm m-TPC
20cm m-PIC(検出領域は八角形)
GEM(補助のガス増幅器)
・m-PICやその中継基板等の形状を再検討することにより、ガス容器のサイズを10 cm TPCと同程度にコンパクト化することに成功・電圧印加して安定に動作
参考 10cm TPC
ドリフトケージ
20 cm
後段検出器(シンチレーションカメラ)
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GSOピクセルシンチレータアレイ(PSA)
ピクセルサイズ 6 mm × 6 mm (厚さ26 mm)
1アレイ(PSA)あたりのピクセル数8 × 8 = 64 pixels
ETCC 1台あたりのアレイ数(ピクセル数)
3 × 3 arrays (576 pixels)
TPCの後方に設置
64chマルチアノードPMT 浜松ホトニクスH12700A
GSO8×8 pixels
26 mm
GSOピクセルシンチレータアレイ(PSA)後段検出器(シンチレーションカメラ)の全体写真(左図:前面(TPC取り付け側)を撮影、右図:側面を撮影)
シンチレーションカメラ全体(9PSAs)の137Csエネルギースペクトル
662 keVピークエネルギー分解能11.1%(FWHM)
シンチレーションカメラで5kHz以上のレートでのデータ取得を確認
開発した20 cm TPCを用いたETCC試作機
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ETCC側面の写真
電源モジュール
ETCC(TPC&シンチレーションカメラ)、トリガー制御回路(TCU)、HV供給モジュール、イーサネットハブなど
PC前段検出器
(TPCガス容器)
後段検出器(シンチレーションカメラ)
開発したETCCシステムの全体写真
30 cm
ETCCのデータ取得システム
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TPC
PSA&
PMT
PC(データ収集、解析用)
市販品
ETCC用の回路
検出器
デジタルIO送受信用フラットケーブル(データ収集トリガー信号制御用)
Ethernetケーブル(コマンド、
データ送受信用)
PMT signal readout circuit
PSA&
PMT
PSA&
PMT イーサネットハブ
前段検出器
後段検出器
トリガー制御回路
(TCU)
→ コンパクトかつ簡潔なデータ収集システム
TPC信号読み出し回路×4
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ETCCの基礎性能試験
従来型コンプトン法と電子飛跡情報を使用したコンプトン法で描いたガンマ線画像の比較(SMILE-IIデータ)
各ETCCの有効面積のガンマ線エネルギー依存性(ETCC視野中心方向)
ETCCから距離約10cmの位置に置いた137Cs点線源(~1MBq)からの662keVガンマ線のbackprojection image
source
position
(0, 0)
ARM: 7.7 degs.
(FWHM)
scatter plot
source
position
(100, 0)
ARM: 8.6 degs.
(FWHM)
scatter plot
source
position
(200, 0)
ARM: 9.9 degs.
(FWHM)
scatter plot
TPCのdeposit energyに対する飛程の分布(dE/dx)
662 keV
energy resolution
10.9 % (FWHM)
source
position
(0, 0)
MIP like
(escape e-
muon etc.)
ETCCエネルギースペクトル(137Cs)
10 cm ETCC試作機TPC Ar base 1.5 atm gas,
GSO 26 mm thick
10 cm ETCC試作機TPC Ar base 1 atm gas,GSO 13 mm thick
10cm ETCC試作機TPC Ar base 1 atm gas,
GSO 26 mm thick
今回のETCC
の見積り
改良型ETCC見積り(シンチレーションカメラをTPC容器内に入れる等の改良版)
→137Cs点線源からの662 keVガンマ線のイメージとスペクトルが取れていることを確認
ホウ素中性子捕捉反応478 keV即発ガンマ線のイメージング試験@京大原子炉研
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測定の概念図
ガンマ線backprojection image
(z = -322mm)
Ge検出器のエネルギースペクトル
478 keV ± 10%z=-322mm
(x,y) = (0,0): ETCCの視野中心
z-axis
y-axis
z-y平面
(20 cm)3
TPC drift region
Scintillation camera
32 cm
478 keV
104 mg/ml Boron溶液100 ml
(f5cm, 高さ数cm)
KURからの熱中性子1 cm x 1 cm
4 x105 /cm2/sec
LiF板
LiF板
Ge検出器
TPC
gas vessel
Ar 1 atm
x-axis
5 cm
10 cm
y-axis
thermal neutron
thermal neutron
ETCCのエネルギースペクトル
y-x平面
ETCC
ホウ素中性子捕捉反応478 keV即発ガンマ線のイメージング試験@京大原子炉研
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ガンマ線backprojection image (z = -322mm)
478 keV ± 10%z=-322mm
x-axis
5 cm
10 cm
y-axis
熱中性子
thermal neutron
y-x平面
x-axis
y-axis
12 cm
thermal neutron
y-x平面
104 mg/ml Boron溶液100 ml
(f5cm, 高さ数cm)
中性子ビーム中心軸
z=-322mm 478 keV ± 10%
熱中性子
ETCCで478 keV即発ガンマ線のエネルギースペクトルにおけるピークとガンマ線イメージでのターゲット位置の違いを確認
まとめ
• 京都Space GammaでETCCの社会応用を目指し開発を行っている。ETCCで478 keV即発ガンマ線イメージングによりSiC-BNCTでの治療効果確認を目指し、20 cm TPCを用いたETCC試作機の開発を行った。
→システムのコンパクト化に成功
• 開発したETCCを用いて137Csの662keVガンマ線で動作試験を行った。
→662 keVのスペクトル、ガンマ線イメージで動作を確認
• 京大複合原子力科学研究所の研究用原子炉(KUR)からの熱中性子を利用してホウ素中性子捕捉反応478 keVガンマ線のイメージング試験を行った。
→478 keVガンマ線のイメージング、スペクトル取得に成功
• 実際の使用状況に近い高線量環境での動物試験等の動作試験、システムのユーザーインターフェース改良・操作の簡易化、解析ツールの改良等を行う
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