化学プラントにおける保温材下腐食発生予測モデルの開発と適用実証に関する研究
(平成29年度、30年度、NEDO委託事業検討結果の紹介)
2019年5月8日旭化成 中原正大
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2019年度 JPECフォーラム
ー禁無断転載・複製 ©旭化成 2019ー
目次
1. 背景2. 検討方法と収集されたデータ数3. 検討結果概要4. CUI予測事業の自走化5. まとめ
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1.背景、化学プラントの保温材下腐食概要
i. 保温材下腐食(Corrosion UnderInsulation, CUI)とは
a. 保温材、保冷材でおおわれた炭素鋼系の機器・配管が対象
b. 高経年化プラントでの共通で保安上最重要な課題
ii. 現状の課題a. CUI発生の高精度で定量的な発生予測方法がない。このため検査によるCUI検出確率が低いb. CUI発生可能性のある対象設備が膨大で、保温材を剥離させないで非破壊的にCUIを適切に評価する手法がなく、保温材を剥離しての検査実施。このため検査費用が膨大
iii. 検討テーマI. 使用条件等から、高精度でCUI発生可能性予測するモデルの開発II. 中性子水分計測定、サーモカメラ等の簡便な検査方法のCUI検査への適用可能性検討
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リスクマトリックスにおける本検討の位置づけ
発生可能性
最大 中 大
最大大
小
中 大
中 中 大
小 中 大
レベル4未満
レベル4 レベル3 レベル2 レベル1
結果影響度
本事業では、検査データ等に基づき「CUI損傷の発生可能性」を定量的に診断する方法の開発と活用を目的とする
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2016年度
•経済産業省製造産業局素材産業課委託事業
•石油化学工業協会内(以下石化協と略す)に、ワーキンググループを組織しデータ収集と解析
2017年度
• NEDO委託事業
•石化協内に静機器部会を組織しデータ収集と解析
2018年度
• CUI発生予測モデル構築、部会内公開、推定精度と適用効果の検証
•自走化検討
2019年~
•自走化予定
•石化協内にワーキンググループを組織予定
経緯と今後
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2.検討方法と収集されたデータ数
I. CUI発生要因明確化と予測モデル開発
• 平成28年度に石化協部会内13社より約13,000件のデータを収集し解析(約50万項目)
• 平成29年度に同9社より約2,400件のデータを収集しモデル精度検証(約10万項目)
II. 非破壊的なCUI検査方法の適用可能性を共同でデータ収集
• 平成28年度に中性子水分計測定は、石化協部会内7社より約4,500件のデータを収集し解析(約20万項目)• 平成29年度にサーモカメラ測定は、同8社より約1,000件のデータを収集し解析(約5万項目)• 平成29年度に付着塩分測定は、同8社より約700件のデータを収集し解析
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3.検討結果概要Ⅰ.CUI発生要因の検討例
設備の種類
図1.CUI発生の設備の種類依存性(図中の値は各条件でのデータ数の確率を示す)
赤線は10-2以上
塔の温度依存性
図2.塔のCUI発生の温度依存性(図中の値は各条件でのデータ数の確率を示す)
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CUI発生予測モデルの開発
i. CUI予測モデルの開発a. 統計モデルや機械学習活用モデル等種々のモデルを開発し検討b. CUI損傷発生可能性をオーダ毎に4ランクに判定c. 予測に用いる項目は、CUI発生要因の検討結果を活用
ii. CUI予測モデルをソフト化してサーバを通して石化協部会各社へ公開a. CUI予測精度の検証b. CUI予測モデル適用効果の検証
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CUI予測モデルの推定精度検証の例
診断結果(ランク)
A B C D
必要肉厚への到達確率(発生確率)
0.001以下
0.01~0.001
0.1~0.01 0.1以上
各ランクデータ数①(検査前情報)
138 62 389 81
必要肉厚以下データ数②
(検査結果含)0 0 20 13
CUI発生確率②/① 0 0 0.051 0.16
表1.CUI予測モデルでの評価結果例(A社、670件の検査実施データ)
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CUI推定精度検証例
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図3.サンプルCUIデータを本CUI予測モデルでランク分けの評価し実余裕肉厚との関係を示す(実余裕肉厚=初期肉厚ー必要肉厚ーCUI深さ)
Ⅱ.非破壊的なCUI検査方法の適用可能性検討
図4.中性子水分測定結果ランクとCUI検出分布の例
乾燥 湿
潤
図5.サーモカメラ結果ランクとCUI検出分布の例
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CUI予測モデル適用効果の検証
過去にCUI検査を実施した複数の事例について、本CUI予測モデルを適用した場合の検査費用への効果を検討した。その結果、以下の各項が明らかになった。
1. CUI発生可能性の従来CUI予測方法に比較して、本CUI予測モデルと適用することにより、検査の信頼性を向上させて検査点数を大きく削減できる可能性のある
2. 数件の検査実施事例について本モデルを適用した場合の費用を検討した結果、検査の信頼性を低下させることなく検査費用を10%強削減できることを検証した
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4.CUI予測事業の自走化ついて
2019年4月よ自走化開始
(石化協にワーキン
ググループを組織)
1.CUI予測モデル高精度化、活用
2.他の協調領域のデータ共有、モデル構築、活用
データ共有によるスマート
保安の実現
1.信頼性向上
2.コスト削減
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5.まとめ
1. 石化協内に部会を組織し、化学会社16社の協力を得てCUI検査データ収集、解析および予測モデル開発を行った。本検討では、約15,000点のCUI検査データと計約6,000点の非破壊検査データを収集し検討を行なった
2. 検討結果概要I. CUI発生要因明確化とCUI発生予測モデル開発
i. CUI発生への設備の種類、部位、温度依存性等、幾つかの新たな特性を定量的に明らかにできたii. CUI予測モデルを開発し、それをソフト化し石化協部会各社にサーバ上で公開したiii. 本CUI予測モデルは従来の予測手法より推定精度検証が高く、保安レベルの向上と費用削減の適用効果
のあることを実証した
II. 非破壊的なCUI検査方法の適用可能性検討i. 中性子水分測定とサーモカメラ測定のCUIスクリーニング検査法としての適用可能性を明らかにした
3. 2019年度よりCUI等協調領域のデータを収集してノウハウを構築・共有することを目的に石化協内にグループを組織し、自走化を開始する予定である
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ご清聴ありがとうございました
謝辞以上の発表に関する技術開発成果は、
国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO*)からの委託事業の結果得られたものです。
*New Energy and Industrial Technology Development Organization
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