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神戸大学国際コミュニケーションセンター 大和 知史 [email protected] 24回広島大学外国語教育研究センターシンポジウム 【英語の音声指導その理論と教室内での実践方法ワークショップ3 1 2015 3 6 日(金) : 広島大学総合科学部 J 1 J102 号教室 プロソディの捉え方とその指導 1

プロソディの捉え方とその指導_06.03.2015

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神戸大学国際コミュニケーションセンター

大和 知史

[email protected]

第24回広島大学外国語教育研究センターシンポジウム

【英語の音声指導−その理論と教室内での実践方法−】

ワークショップ3

1

2015年3月6日(金) 於: 広島大学総合科学部J棟1階J102号教室

プロソディの捉え方とその指導

1

1.はじめに

2.英語発音・プロソディ指導の概観

3.英語プロソディの指導 どう捉える

4.英語プロソディの指導 こんな風に

5.まとめ

本WSの構成

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• 本WSは,JSPS科研費26381197の助成を受けたものです。

acknowledgment

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• お手元のハンドアウト(A4判・5枚・両面印刷)をご確認下さい。

• スライドはpdfにして後ほどSlideshareにアップロードしますのでそちらからご覧下さい。(こちらには文献一覧をつけておきます)

URL: http://www.slideshare.net/otamayuzak

確認

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• 主張したいこと…

• プロソディの指導は,個別要素を関連付けて捉えた上で行おう。

• “Prosody pyramid” あるいは「3つのポイント」を押さえておこう。

• Discourse intonationという視点も持っておいてもいいかもしれません。

本WSの目的

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1.はじめに

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• その上で実践してみてほしいこと…

• プロソディの指導を発音指導・音声指導として積極的に取り入れよう。

• 普段の音読やリピーティング・シャドーイングの際に取り入れよう。

• 教材分析の際に,プロソディの観点から見ておこう。

本WSの目的

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1.はじめに

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•発音指導の流れ

• SLAでは何が?

•現状認識としては?

•学習者の課題は?

•では,どうしよう?

2. 英語発音・プロソディの指導の概観

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• 発音指導の大まかな流れを

• ~ 80s: segmental中心

• ~ 90s: bottom-up→top-down

• 00s-: seg/supra balanced

• World Englishes Jenkins (2000): Lingua Franca Core

- prosodyでは nucleus placement, chunkingぐらい

• 最近のgoal: intelligibility, comprehensibility

発音指導の流れ

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2.英語発音・プロソディの指導の概観

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• 発音指導のアプローチ(Grant, et al., 2014)発音指導の流れ

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2.英語発音・プロソディの指導の概観

Traditional Approaches Current Approaches

learner goals Perfect, naive-like pronunciation Comfortable intelligibility

Speech features All segmentals (consonant and vowel sounds)

Selected segmental and suprasegmentals (stress, rhythm, and intonation) based on need and context

Practice formats Decontextualized drills controlled aural-oral drills as well as semi-communicative practice formats

Language background of teachers Native-speaking teachers Native-speaking and proficient non-native

speaking teachers

Speaking models Native-speaker modelsVariety of models and standards depending on the listener, context, and purpose

Curriculum choices Stand-alone courses isolated from the rest of the curriculum

Stand-alone courses or integrated into other content or skill areas, often listening an speaking

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• 最近のレヴュー論文やメタ分析から(Lee, et al. , 2014; Saito, 2012;

Thomson & Derwing, 2014)

- まずレヴューやメタ分析ができるだけ研究が増えたということ

- 対象とする音声要素: segmental > suprasegmental

- intelligibility principleに則ったものが多い

- 指導方法としては,PPP(e.g. Celce-Murcia, et al., 2010)に則ったものが多いが,指導内容が見えにくく,どういう指導が成果を上げているのか分かりにくい。

- 指導効果の測定には課題が残る

SLAでは何が?

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2.英語発音・プロソディの指導の概観

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• 学習者・教員・指導者の認識

- 重要性は認識(柴田 ほか, 2008),でも何をどうするの?

- 自信がない・教材などでも扱いづらい(Chapman, 2007; Dalton &

Seidlhofer, 1994)

- 教科書等では少し触れられているけど…(子音・母音・強勢・リズム・イントネーション)

- プロソディ

‣上級者のもの?

‣言語に共通?

‣習うより慣れよでは?

現状認識としては?

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2.英語発音・プロソディの指導の概観

(Dalton & Seidlehofer, 1994, p. 73)

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• 松坂(1986):「日本人学習者が注意すべき4点」

①強形,弱形を使い分け,文強勢を自然なものにすること。

②文強勢と抑揚とちぐはぐにならないようにすること。

③音調核の位置を間違えないようにすること。

④下降調では,自分の声域のもっとも下まできちんと声を下ろすこと。日本人は,降りきらぬうちに声門閉鎖により発話をとめてしまいがちである。(p.176)

•語強勢,区切り,文強勢,イントネーション核配置に課題(南條, 2010; 斎藤・上田, 2011; 渡辺, 1994; Yamato & Mizuguchi, 2014)

•プロソディと意図(意味)の結びつきの弱さ(大和, 2011)

学習者の課題としては?

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2.英語プロソディの指導の現状と課題

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• intelligibilityやcomprehensibilityへの貢献はプロソディは高い。

• 重要性は認識しているし,指導はした方がよさそう。

• 学習者の課題としては,プロソディと言っても,語強勢,リズム,イントネーションと,多方面に渡っていそう。

• でも,どうしたらいいのか…。

では,どうしよう?

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2.英語プロソディの指導の現状と課題

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•どのように捉える?

•Prosody Pyramid

•Discourse Intonation

3.英語プロソディの指導 どう捉える?

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• 3であげた問題点・課題点を改善するための一方策として…

• プロソディの各要素を,個別ではなく,“interrelated system” として捉える(Gilbert,

2008; 2014; Rogerson-Revell, 2011)

• その捉え方としてProsody pyramid(およびその拡大版),Discourse intonation

どのように捉える?

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3.英語プロソディの指導 どう捉える?

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① thought groupを基礎とする。

② thought groupの中にfocus

wordが一つある。

③ focus wordの中にはstressed

syllableがある。

④ stressed syllableの中にはpeak

vowelがある。

Prosody Pyramid (Gilbert, 2008; 2014)

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3.英語プロソディの指導 どう捉える?

• “Prosody Pyramid”

(Gilbert, 2008, p. 10)

“First of all” で確認しよう

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Prosody Pyramid (Gilbert, 2008; 2014)

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3.英語プロソディの指導 どう捉える?

• thought group (tone unit/intonation phrase/chunking) - thought groupの境界を示すもの

‣pause ‣drop in pitch (change in pitch) ‣ lengthening of the last stressed syllable ‣key change

- 統語構造との一致も

- speech rateによって当然変化する

• tonality (Wells, 2006)

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Prosody Pyramid (Gilbert, 2008; 2014)

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3.英語プロソディの指導 どう捉える?

• tonicity (Wells, 2006): nucleus placement

• thought groupには必ず一つのfocused wordがある。

- 南條(2010)「核配置に関する3つの基本原理」

1.文の意味とは無関係に,最後の内容語に核が置かれる。

2.繰り返された項目には核は置かれない。

3.強調または対比がある場合には,その項目に核が置かれる。

• focused wordの強勢のある音節がpeak (nucleus)

• nucleusでピッチが変動する; tone (Wells, 2006)

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Prosody Pyramid (Gilbert, 2008; 2014)

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3.英語プロソディの指導 どう捉える?

• e.g. How do you spell “easy”?

• e.g. Danny arrived late, so he missed half the movie.

Danny arrived late

late

la

a

so he missed half the movie

movie

mo

o

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• もう少し広げてみると…

• プロソディ指導の3つのポイント

1. 母音のあるところに拍がくる – 語強勢の形を確認

2. 拍が2つ以上になれば、強弱を – 弱は曖昧に早く – 強がおよそ等間隔でリズムを形成

3. 強い拍が複数になれば、その内の一つを目立たせる。 – 一番目立つ語が、focus word

– 原則は、thought group の最後の内容語(核配置に関する原則)

– そこでピッチを大きく変化させる(上昇・下降・下降上昇) – 別のところに来るということは意図がある

Prosody Pyramid (のちょっと拡大)

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3.英語プロソディの指導 どう捉える?

Prosody Pyramidはここ

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Prosody Pyramid (のちょっと拡大)

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3.英語プロソディの指導 どう捉える?

• 先ほどの例を拡大するイメージで

• e.g. Danny arrived late, so he missed half the movie.

Danny arrived late

late

la

a

so he missed half the movie

movie

mo

o

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• こちらの捉え方も参考に(特に教員向き?)

• Brazil et al.(1980), Brazil(1997): Discourse Intonation

- 構造面:

‣ thought group/tone unitを基礎とする点は変わらない。

‣ prominenceがtone unitの中にあり,nucleusのある音節においてピッチが大きく変動する。これも変わらず

Discourse Intonation (Brazil et al., 1980; Brazil, 1997)

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3.英語プロソディの指導 どう捉える?

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• Brazil et al.(1980), Brazil(1997): Discourse Intonation

- 機能面 :

‣談話の機能 : 話者同士のinteractionの中で捉える

‣ tone: - proclaiming tone (fall, rise-fall) 新情報

- referring tone (fall-rise, rise) 旧情報

- e.g. /When I’ve finished these letters, /I’ll make those phone calls./

‣ key & termination: high, mid, low (thought groupの相対的なピッチの高さ)

‣ e.g. My first point/ concerns… ‣ e.g. The teachers/ and I’m quite sure of this/ will not accept it

Discourse Intonation (Brazil et al., 1980; Brazil, 1997)

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3.英語プロソディの指導 どう捉える?

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•活動の段階

•活動例

•教材研究例・実践例

4.英語プロソディの指導 こんな風に

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• Celce-Muricia et al. (2010)の活動の流れ

- CLTのもとでの活動の流れを設定

- いわゆるPPP (presentation, practice, production)

- description and analysis→listening discrimination→controlled practice→guided practice→communicative practice

- listening → imitation→production (Rogerson-Revell, 2011)

- sensitize → explanation → imitation → practice → communicative (Chun, 2002)

• では,ハンドアウトの活動例を見てみましょう。

活動の段階

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4.英語プロソディの指導 こんな風に

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活動の段階

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4.英語プロソディの指導 こんな風に

Stages of PI ハンドアウトの活動のFocus PPP

1. Description and Analysis ex.1 リズムの確認 Presentation

2. Listening Discrimination

ex2. 拍の確認・等時性,ex3. 単音節の拍確認・toneの確認

Practice

3. Controlled Practice

ex2. 拍の確認・等時性,ex.4

thought groupの確認Practice

4. Guided Practice ex.5 Focus wordの確認 Practice

5. Communicative Practice ex.6 Focus wordの確認 Production

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• Exercise 1:

- Listening 1 何も見ずに

- Listening 2 同じく何も見ずに

- Listening 3 まだ何も見ずに

- どのような語に強勢が置かれ,どのような語に強勢が置かれないのかを考える。

教材研究例・実践例

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4.英語プロソディの指導 こんな風に

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• Exercise 6: Sample

• Some students think it’s better to learn from a proFESssor / than from other STUdent /… that it’s more efFIcient. / Well, that might be true for THEM, / but it is not true for ME. / MOST of the time, / I prefer an INformal classroom / to a FORmal classroom.

教材研究例・実践例

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4.英語プロソディの指導 こんな風に

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• Exercise 7: 総合

• 教材研究として,Prosody pyramid・DIを念頭にテキストを分析・検討してみましょう。

- 使用テキスト Frog and Toad “The letter” の一部

- テキストを分析・音声を分析

• どう実践するか?

- 先日参観した授業での実践の例

- 平生の授業にどう埋め込むか(どの要素を,PIのどのstageとして,どうタスクを作る?)

- シャドーイングを行うなら?

教材研究例・実践例

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4.英語プロソディの指導 こんな風に

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5. まとめ

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• 伝えたかったことを再度確認

• プロソディの指導は,個別要素を関連付けて捉え,“Prosody pyramid” あるいは「3つのポイント」を押さえて行ってみて下さい。

• その上で,以下のような実践を…

• プロソディの指導を普段の音読やリピーティング・シャドーイングの際に取り入れてみよう。

• 教材分析の際に,プロソディの観点から,更にはProsody PyramidあるいはDIの観点から分析してみよう。

本日のWSでは…

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5.まとめ

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• 理論的な枠組みについて…

• 指導内容について…

• 何かオリジナリティがあった?

• いえ…これと言って… #つらい

• そうなんです。ただし,しいて言えば,考え方の転換を促すことが,もう一つは取り入れ方を提案したいということが,一応の主眼となっています。

本日のWSでは…

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5.まとめ

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•英語のプロソディって?(さらっと確認)

• 何が言われているか(実践研究編)

• 菅井先生・岡田先生のお話との関連

補足

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•音節 •「母音を中心に前後に子音を伴う単位(牧野,2005: 27)」

•「リズムの1拍やひとつの強勢を受けることのできる、音の最小のまとまり(松坂,1986: 165)」

•プロソディ •語強勢・文強勢

•語単独で発音された時のアクセント型・単語が文中で受ける強いアクセント(竹林・斎藤, 2008)

•リズム •強弱や長短などの規則的な繰り返しのパターン(牧野, 2005)

•イントネーション •発話におけるピッチの変動 •イントネーションの記述・機能 •主に,態度,フォーカス,文法,談話,の機能(Roach, 2000; Cruttenden,

1997; Wells, 2006)

英語のプロソディって?

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補足

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• どのようなことが提案・実践されているか

• 語強勢の指導: ポンポンメソッド(靜, 2014),語のリズムパターン(高山, 2010),輪ゴムを使って(Giblert, 2012)

• リズム: ポンポンメソッド(同上),内容語・機能語の区別,身体を使って(小川, 2007; 2014),チャンツ

• イントネーション: スクリプト分析,音読,シャドーイング,visual feedback

何が言われているか(実践研究編)

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補足

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• シャドーイングという手法

- GilbertやRogerson-Revellなどが提案しているシャドーイングは,コンテンツの分析を行った上でのシャドーイングであり,リピーティングに近いものではないか。心理言語学的シャドーイングと,教育用語としてのシャドーイングとの混同が起こっている?

- 学習者レベルに合わせた音声編集とシャドーイング: リスニングの訓練として(task of listening),というお話でもあります。

• ポーズ挿入箇所とthought group/tone unitの関連

• boundaryをどう認知するかの問題,prosodic cueとの関連から。

菅井先生のお話との関連(というかただのコメント)

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補足

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• 「音声指導としての」シャドーイングという手法

- tracking (Rosse, 1999) や,古くはActon (1984)あたりから学習法としての提唱はあった。

- 聴解メインから発音指導へのシフト

- festivalはありじゃないか? Mondogreenという空耳的な事象はNSにも多く起こっている。

• プロソディ・シャドーイング

- First of all への分析,練習を行った上で行うとよい?ここで,Prosody Pyramidとして。

• 教室活動としての有効性

- 遅過ぎるものは避ける → プロソディの指導においてはできるだけナチュラルであることを進めています

• シャドーイングの位置づけ: 発音指導のひとつの手だて

• シャドーイングから自発的は発話の自然さ向上への道筋(何ができるか?)→意識づけ・理屈

岡田先生のお話との関連(というかただのコメント)

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補足

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