12
天然原子炉 いんちきおじさん kosuge Static 小菅貴彦(こすげ たかひこ) 日本電子専門学校 情報系主任研究員 原子炉ゾーン No.2 保存部分

5/10 Kira Cafe講演 「天然原子炉」

Embed Size (px)

DESCRIPTION

5/10 セカンドライフ内Kira Cafeで行われた、kosuge Static氏による「天然原子炉」講演のスライド。 1972年アフリカのガボンにあるオクロ地区のウラン鉱床で、約20億年前に数十万年に渡って稼働した天然の原子炉跡が発見されました。今回は、その発見の経緯、天然原子炉存在の証明、規模や稼働期間の推定、他地域での同様の天然原子炉の探索、原子炉で生成された核廃棄物の行く末、そしてこの天然原子炉の今日的意義などを、原子力に関する知識を交えながら解説

Citation preview

Page 1: 5/10 Kira Cafe講演 「天然原子炉」

天然原子炉

いんちきおじさん

kosuge Static小菅貴彦(こすげ たかひこ)

日本電子専門学校 情報系主任研究員

原子炉ゾーン No.2保存部分

Page 2: 5/10 Kira Cafe講演 「天然原子炉」

原子炉関係の歴史のまとめ

核分裂現象の発見1938年, オットー・ハーン フリッツ・シュトラスマン

カイザー・ヴィルヘルム化学研究所(ドイツ)

初めての原子炉完成1942年12月2日 エンリコ・フェルミ

シカゴ大学(アメリカ合衆国)

天然原子炉仮説1954年4月 黒田和夫 (論文は1956年)

地球物理学会(アメリカ合衆国)

天然原子炉の発見1972年9月25日 フランス原子力庁

アフリカのガボンにある、オクロ・ウラニウム鉱床

Page 3: 5/10 Kira Cafe講演 「天然原子炉」

発見の経緯

天然ウラン中の235Uの存在比異常の発見

1972年6月7日~14日

通常は偏差0.001以内、しかし発見されたのは0.0043

はじめは汚染と考えられていた

サンプル中に236Uの存在が明らかになる

236Uは天然ウランには存在せず、原子炉内で燃焼した経験を持つウランのみに含まれる

ウラン精錬工場に保管されていた鉱石のサンプルを調べてみると

Page 4: 5/10 Kira Cafe講演 「天然原子炉」

天然原子炉存在の証明

原子炉での燃焼を経験しないと存在しない核種の発見236Uの存在

142Nd(ネオジム)の存在

同位体存在比中性子捕獲断面積(中性子を取り込む確率の違いから)から、過去に中性子を浴びていれば(連鎖反応を経験していれば)、この値は小さくなる

151Eu/153Eu(ユーロピウム)  天然 0.916 → 試料 0.145

149Sm/147Sm(サマリウム) 天然 0.024 → 試料 0.003

140Ce/142Ce(セリウム) 天然 7.99 → 試料 1.57

これらのことから、天然原子炉の存在が確認された

Page 5: 5/10 Kira Cafe講演 「天然原子炉」

天然原子炉のあった場所

アフリカ大陸ガボン共和国

ほぼ赤道直下

このあたりに鉱床があるらしい

Page 6: 5/10 Kira Cafe講演 「天然原子炉」

天然原子炉の詳細

原子炉ゾーン No1(手前)原子炉ゾーン No2(構造物)

原子炉ゾーン No1のアップ

粗粒玄武岩層(斜め黒)

原子炉ゾーン A

Page 7: 5/10 Kira Cafe講演 「天然原子炉」

天然原子炉の年齢

いくつかの推定方法がある

地質学的推定付近の岩石を計測

カリウム-アルゴン法・・・およそ18億年前

ウランー鉛法・・・およそ17.5億年~20.5億年前

原子核物理学的推定235Uの核分裂数からの推定・・・およそ20億年前

Ru(ルテニウム)からの推定・・・およそ20億年

Nb(ネオジム)からの推定・・・およそ20億年

一部矛盾するデーが出ているが、20億年前が妥当

Page 8: 5/10 Kira Cafe講演 「天然原子炉」

出力と運転期間

総出力の推定(原子炉ゾーンNo.1~No.6)235Uの不足分から計算

16.5GW・year・・・電気出力100万kW級原発5基を全力で1年間運転したのと同じ

福島原発・・・46万kW(1号機)、78万kW(2~5号機)、110万kW(6号機)

運転期間の推定2つの同時進行する核反応間の競合から計算

およそ60万年間

時間あたりの出力およそ、30kWh ・・・ 1世帯分もまかなえない

Page 9: 5/10 Kira Cafe講演 「天然原子炉」

天然原子炉の生成過程

地球はおよそ45億年前に形成された

45億年前の235U存在比・・・23%(今は0.72%・・・半減期703,800,000年で崩壊)

今より存在比はかなり高いが、これでは臨界にならない

青緑藻(光合成する藻)の登場およそ35億年前に登場する

空気中に酸素が大量に放出されたのはおよそ20億年前

雨が酸性になり、ウラン鉱床に降り注ぎウランを溶かして流れる

ウランを含む水が、地中の有機層で還元され、そこで濃縮

25~20億年前の235U存在比・・・5.5~3.7%

原子炉の燃料の235U存在比・・・3%~5%

現在商業的に採掘されているウラン鉱床のほとんどがこれ

風が吹けば桶屋が儲かる式ではあるが、生物が作った

Page 10: 5/10 Kira Cafe講演 「天然原子炉」

天然原子炉は他にもあるか

大陸移動を考えて、南米も重点的に調査

結論から言えば、まだ見つかっていない

Page 11: 5/10 Kira Cafe講演 「天然原子炉」

核分裂生成物はどこに行ったか?

どうも、ほとんど動いてないようである希土類元素は、ほとんど移動していない

希ガス(クリプトン、キセノン)は、ガスなのでかなり散逸

ジルコニウム、ストロンチウム、ルテニウムは、ほとんど移動していない

アルカリ金属・アルカリ土類金属も、ほとんど移動していない

かなり良好に保存されているらしい

現在の原発の放射性廃棄物も埋めちゃえばいいのか?安定した土地ならば安全に保管できる可能性がある

日本はかなり不安定・・・

地震が多いしね

そもそも日本列島ができたのがおよそ5000万年ぐらい前

安定した大陸性の土地(デカン高原とか・・・)なら可?

Page 12: 5/10 Kira Cafe講演 「天然原子炉」

まとめ

およそ20億年前に、天然の原子炉がアフリカに存在した

その存在の可能性を日本人である黒田和夫が指摘していた

発見の発端は核燃料ウランの精製過程

運転期間はおよそ60万年

原発にすると現在の日本の1家庭の電力もまかなえない

光合成する藻の出現が、生成過程に密接に関与している

天然原子炉で生成された核生成物は、良好に保存されていた

現在の原発の放射性廃棄物も安定した土地に埋めれば、長期保存の可能性はある。あくまでも可能性だけど

でも、日本じゃそんな土地、これっぽちもない