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第七組 張敬佳 俞阿邯 楊子瑜 張筱凡 陳怡均 邱柔瑾 陳冠婷 蕭蔓卉

刺青

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Page 1: 刺青

第七組

張敬佳

俞阿邯

楊子瑜

張筱凡

陳怡均

邱柔瑾

陳冠婷

蕭蔓卉

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「どうも見覚えのない顔だと思ったが、それじゃ

お前はこの頃此方へ来なすったのか」

こういって清吉は、しげしげと娘の姿を見守った

。年頃は漸う十六か七と思われたが、その娘の顔

は、不思議にも長い月日を色里に暮らして、幾十

人の男の魂を弄んだ年増のように物凄く整ってい

た。見覚え みおぼえ 0【名】 好像見過。

しげしげ 13【副】 凝視貌。見守る みまもる 403【他五】 注視。

年頃 としごろ 0【名‧副】 大致年齡。

漸う ようよう 0【副】 漸漸、接近。

月日 つきひ 2【名】 歲月。

魂 たましい 1【名】 靈魂、精神。

弄ぶ もてあそぶ 450【他五】 玩弄。

年増 としま 0【名】 半老徐娘。

物凄い ものすごい 4【形】 …不得了…般的驚人。

整う ととのう 3【自五】 整齊、協調。

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「所以嘛,總覺得還沒見過面;那麼,妳是最近才

來到這地方的囉?」這樣說著,清吉一而再地注視

著這姑娘的風姿身段。看年齡約莫接近於十六七,

但這姑娘的容貌,卻出人意表地,帶有相當老成的

神態--好像她廁身北里,已有不少的時日;而且

不可思議地,她又如一個半老徐娘,歷盡滄桑,作

弄過無數男人的靈魂哩。

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それは国中の罪と財との流れ込む都の中で、

何十年の昔から生き代り死に代わったみめ

麗しい多くの男女の、夢の数々から生れ出

ずべき器量であった。

国中 くにじゅう 0【名】 全國、全體國民。

みめ 12【名】 容貌。

麗し

うるわしい 4【形】 美麗的。

数々 かずかず 1【名‧副】 許多。

器量 きりょう 1【名】 (女性的)容貌。

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在這成為全國罪惡與財帛匯

聚之區的京城裡,她的風姿,

實足以迷倒酒色徵逐的芸芸

眾生。

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「お前は去年の六月ごろ、平清から駕籠で帰った

ことがあろうがな」

こう訊ねながら、清吉は娘を縁へかけさせて、備

後表の台に乗った巧緻な素足を仔細に眺めた。

「ええ、あの自分なら、まだお父さんが生きてい

たから、平清へもたびたびまいりましたのさ」

と、娘は奇妙な質問に笑って答えた。

駕籠 かご 0【名】 轎子。

巧緻 こうち 1【名‧形動】 精緻。

素足 すあし 1【名】 赤腳。

仔細 しさい 01【名】 詳情。

眺める ながめる 3【他下一】 凝視。

たびたび 0【副】 屢次。

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「去年的六月前後,不知道妳是否曾經從平

清料理屋乘轎子回家去過?」清吉這樣問她,

一面讓她坐在走廊的邊緣,一面仔細地眺望

著她那踩在草墊蓆面的一雙巧緻的裸足。

「唔,那個時候父親還活著,時常去平清與

友人聚餐。」姑娘笑笑,回答了這奇妙的問

話。

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「丁度これで足かけ五年、己はお前を待っていた。

顔を見るのは始めてだが、お前の足にはおぼえがあ

る。――お前に見せてやりたいものがあるから、上

がってゆっくり遊んでいくがいい」

と、清吉は暇を告げて帰ろうとする娘の手を取って

、大川の水に臨む二階座敷へ案内した後、巻物を二

本とり出して、先ずその一つを娘の前に繰り展げた

。丁度 ちょうど 30【副】 正好、恰如。

足かけ あしかけ 0【名】 大約。

己 おれ 0【名】 本人、你這傢伙。

告げる つげる 30【他下一】 告知。

座敷 ざしき 3【名】 日本式餐廳、宴會。

巻物 まきもの 0【名】 (書畫)捲軸。

繰り展げる くりひろげ

560【他下一】 展開、進行。

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「我在等妳,前後足有五個年頭了。雖然

是初次見面,但對妳的一雙裸足,記憶

猶新呢。 ──來,我有一些東西要給妳看,

上來坐坐,不忙啊。」

清吉抓住即將告辭回去姑娘的手,將她帶

到臨近大川之水二樓的小房間內,取出了

兩捲畫軸,清吉先將其中一捲,攤開於姑

娘眼前。

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それは古の暴君紂王の寵妃、末喜を描いた絵であった。瑠璃珊瑚を鏤め

た金冠の重さに得堪えぬなよやかな体を、ぐったり勾欄に靠れて、羅綾

の裳裾を階の中段にひるがえし、右手に大杯を傾けながら、今しも庭前

に刑せられんとする犠牲の男を眺めている妃の風情と云い、鉄の鎖で四

肢を銅柱へ縛いつけられ、最後の運命を待ち構えつつ、妃の前に頭をう

なだれ、眼を閉じた男の顔色と云い、物凄いまでに巧に描かれていた。

古 いにしえ 0【名】 古代、很久以前。瑠璃 るり 1【名】 (佛教)藍色寶石。玻璃(的

舊稱)。鏤める ちりばめる 4【他下一】 鑲嵌。堪える たえる 2【自下一】 忍受、值得。

なよやか 2【形動】 纖弱、柔弱。ぐったり 3【副‧自サ】 渾身無力、精疲力盡。ひるがえす 3【他五】 使飄動。傾く かたむく 3【自五】 傾向於。今しも 1【副】 現在正好、正當。妃 きさき 230【名】 皇后、皇妃。風情 ふぜい 1【名‧接尾】 樣子。縛 ばく 1【名】 綁、綑。待ち構える まちかまえる 5【他下一】 (準備好而)等待、期待。

うなだれ 504【自下一】 (因失望、悲傷、害羞等)垂頭。低頭。

巧 こう 1【名】 巧妙。精巧。

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那是描繪著古暴君紂王寵妃妲己的畫軸:把

不堪負荷的那鑲嵌著瑠璃珊瑚的金冠的身軀,

嬌柔無力地依憑於勾欄邊,綾羅的裳裾散在

玉墀上,右手傾傾斜斜地舉著大酒杯,一邊

眺望著庭前犧牲的頃刻即將行刑的男子。那

妃子的風情,以及用鐵鎖將四肢綑在銅柱上,

只待最後命運的來臨,緊閉兩眼垂頭在妃子

之前的,那男子的臉色,無不巧妙地描繪得

臻 於淒厲可怖的情景。

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娘は暫くこの奇怪な絵の面を見入っていたが、知らず識らずその瞳は輝

きその唇は顫えた。怪しくもその顔はだんだんと妃の顔に似通って来た。

娘は其処に隠れたる真の「己」を見出した。

「この絵にはお前の心が映っているぞ」

こう云って、清吉は快げに笑いながら、娘の顔をのぞき込んだ。

「どうしてこんな恐ろしいものを、私にお見せなさるのです」

と、娘は青褪めた額を擡げて云った。

「この絵の女はお前なのだ。この女の血がお前の体に交じっている筈だ

と、彼はさらに他の一本の画幅を展げた。

見入る みいる 2【自他五】 注視、看得出神。

顫える ふるえる 40【自下一】 打顫。

怪しい あやしい 30【形】 奇怪、可疑。

快い こころよい 4【形】 高興的。愉快的。

のぞき 0【名】 窺視。

青褪める あおざめる 4【自下一】 (因疾病或恐懼等)臉色發

青。蒼白。

擡げる もたげる 34【他下一】 抬起。抬頭。

交じる まじる 2【自五】 混。雜。夾雜。

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姑娘一時觀看著這奇怪的畫面,但在不知不覺

之間,她的瞳孔發出了光輝,櫻唇顫動;更怪

誕地她的容貌竟漸漸跟那妃子的容貌相似了起

來-姑娘已於其中隱約看到了真正的「自己」!

「這幅畫反映著妳的心啊!」

這麼說,清吉愉悅地笑著,並斜瞄一下姑娘臉

上的表情。

「為什麼要我看這麼可怕的東西?」

姑娘抬起了蒼白的額頭。

「畫裡的女人就是妳啊!這女人的血,應已交

融在妳的身體裡了。」

他又展開了另外一幅畫。

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それは「肥料」と云う画題であった。画面の中央に、若い女が桜の幹

へ身を倚せて、足下に累々と斃れている多くの男たちの屍骸を見つめ

ている。女の身辺を舞いつつ凱歌をうたう小鳥の群、女の瞳に溢れた

る抑え難き誇りと歓びの色。それは戦の跡の景色か、花園の春の景色

か。それを見せられた娘は、われとわが心の底に潜んでいた何物かを、

探りあてたる心地であった。

画題 がだい 0【名】 畫畫的題材。幹 みき 1【名】 樹幹。倚せる よせる 30【自下一】 靠近。足下 あしもと 3【名】 腳下。身邊。

累々 るいるい 0【形動】 累累。層層疊疊。

斃れる たおれる 3【自下一】 倒。崩潰。死去。屍骸 しがい 0【名】 屍體。死屍。見つめる みつめる 40【他下一】 注視。凝視。溢れる あふれる 3【自下一】 滿出。溢出。抑え難い おさえがたい 3【他下一】 難以控制。

誇る ほこる 2【自五】 自豪。誇耀。潜む ひそむ 2【自五】 隱藏。潛藏。探りあてる さぐりあてる 5【他下一】 探查到。

心地 ここち 0【名】 心情。感覺。

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那是以「獵食」為題的一幅畫:在畫的中央,

一個年輕的女子倚靠在櫻樹的樹幹,腳下可看

到許多男人的屍骸。女子身邊有一群高唱凱歌

飛舞著的小鳥;女子的眼珠子裡,洋溢著難以

壓抑的歡欣炫耀之色。那是戰跡的景象?抑或

園庭之春的景色?觀覽了這些,在姑娘的心境

裡,彷彿已探察到潛伏於我心深處的某種東西。

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「これはお前の未来を絵に現したのだ。ここに斃れている人達は、皆こ

れからお前の為めに命を捨てるのだ」

こう云って、清吉は娘の顔と寸分違わぬ画面の女を指さした。

「後生だから、早くその絵をしまって下さい」

と、娘は誘惑を避けるが如く、画面に背いて畳の上へ突俯したが、やが

て再び唇をわななかした。

「親方、白状します。私はお前さんのお察し通り、その絵の女のような

性分を持っていますのさ。――だからもう堪忍して、それを引っ込めてお

くんなさい」寸分 すんぶん 0【副】 絲毫。分毫。

後生 ごしょう 1【名】 (佛教)來生。來世。

避ける さける 2【自他下一】躲避。避免。

如く ごとく 0【助動】 如同。有如。

背く そむく 2【自五】 背向。背對。

突俯す つっぷす 340【自五】 突然趴下

再び ふたたび 0【副】 又。再一次。

わななく 3【自五】 戰慄。發抖。

白状 はくじょう 1【名‧他サ】 坦白。交代。招認。

察し さっし 0【名】 察覺。料想。同情。

性分 しょうぶん 01【名】 脾氣。氣質。

引っ込める ひっこめる 4【他下一】 縮回。撤回。抽回。

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「這是預言了妳的將來的一幅畫。死在這裡的,

全是從今而後,為妳捨命的傢伙啊!」

這樣說著,清吉並指點了姑娘的容貌與畫中出

現的女人分毫無差。

「求您行行好,趕快把那畫軸收起來!」

姑娘好像是在躲避著一種誘惑似地,背向了畫

軸,突然俯伏於榻榻米上,不一會,嘴唇又戰

慄了起來。

「師傅!我招認了:誠如您所明察,我確實抱

持有跟那畫裡的女人相同的稟性。……所以,

求您寬恕,把它撤走吧!」

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文 学ぼう

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• 生き代り死に代わった【慣用句】

→何度も生まれかわって。死ん

では、また生き返って。

• 輪迴好幾世代

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かわ

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•~げ(そうだ)【接続】

• 形容詞い+げ/だ+げ(「げ」はな形容詞。)

• 感情を表す形容詞と一緒に使う。自分に

は使わない。

• 神態,樣子,情形,感覺

• 「大野さんは寂しげにベンチに座ってい

る。」

• 「彼女は得意げな顔で嵐のニューシング

ルCDを見せた。」

058第1行

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• たる【文語の断定の助動詞「たり」の連体

形】

1、資格を表す。…であるところの。

「学生たるもの、勉強すべきである」

2、取り上げた事柄を、強調して、説明する意を表す。

「その表情たるまさしく鬼そのものであった」

◆文章語的表現に用いられる。

表示断定或肯定的判断。相當於「…である」。

前面接名詞。

058第8、9行

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• さ【終助】

• 1、自分の判断や主張を確認しながら念

を押す意を表す。

「ぼくにだってできるさ。」

• 2、傍観的な、多少投げやりな調子で、

あっさりと言い放す気持ちを表す。

「そう心配することはないさ。」

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• さ【終助】

• 3、疑問語とともに用いて、質問・反駁・難詰の意を表す。

「行くって、どこへ行くのさ。」

• 4、(多く「とさ」「ってさ」の形で)他人の話を説明したり、紹介したりする気持ちを表す。

「彼も行くんですってさ。」

★近世初期、男性、ことに武士に多く用いられたが、後期には広く用いられるようにななった。現在では男女ともに打ち解けた会話で多用する。

058第18行

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「そんな卑怯なことを云わずと、もっとよくこの

絵を見るがいい。それを恐ろしがるのも、まあ今

のうちだろうよ」

こう云った清吉の顔には、いつもの意地の悪い笑

いが漂っていた。

しかし娘の頭は容易に上らなかった。襦袢の袖に

顔を覆うていつまでも突俯したまま、

「親方、どうか私を帰しておくれ。お前さんの側

に居るのは恐ろしいから」

と、幾度か繰り返した。卑怯 ひきょう 2【名、形動】懦弱、膽怯

漂う ただよう 2【自五】 露出、充滿、洋溢

襦袢 じゅばん 0【名】 汗衫

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「別說洩氣話!該更加仔細看看這幅畫;再可

怕,也不過是短暫的時間啊!」

這麼說著,清吉的臉孔上,漂浮著他常有的狡

猾笑態。

然而,姑娘很難抬起她的頭,把臉兒掩蔽在貼

身襯衣的袖子後,一直俯伏不動:

「師傅,求您讓我回去!在您身邊好可怕……」

她連續說了好幾遍。

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「まあ待ちなさい。己がお前を立派な器量の女

にしてやるから」

と云いながら、清吉は何気なく娘の側に近寄っ

た。彼の懐には嘗て和蘭医から貰った麻酔剤の

壜が忍ばせてあった。

何気ない なにげない 4 【形】 不形於色、假裝沒事;無意的、無心的

近寄る ちかよる 30【自五】 靠近、接近

懐 ふところ 0 【名】 胸懷、腰包

嘗て かつて 1 【副 】 曾經、以前

壜 びん 1 【名】 瓶子

忍ばせる しのばせる 40 【下他一】 偷偷地行事

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「不忙,等一等。我將使妳成為一個具

有卓越器量的女人啊!」

清吉一邊這樣說著,一邊若無其事地走

到姑娘近旁。他懷中隱藏著從荷蘭醫生

那兒得到的一瓶麻醉劑……。八曰:這…是甚

麼詭異A片的劇情,倒貼我都不買。

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日はうららかに川面を射て、八畳の座敷は燃える

ように照った。水面から反射する光線が、無心に

眠る娘の顔や、障子の紙に金色の波紋を描いてふ

るえていた。部屋のしきりを閉て切って刺青の道

具を手にした清吉は、暫くは唯恍惚としてすわっ

ているばかりであった。麗らか うららか 2【形動】 晴朗、明媚;滿面春風

無心 むしん 0【名、他サ、形動】

無心、沒有心思。天真、熱中

障子 しょうじ 0【名】 拉門

波紋 はもん 0【名】 漣漪、細浪;影響

仕切り しきり 0【名】 隔開、區分;清算、結帳

閉て切る たてきる 03【他五】 (把門窗)關緊;一件事幹到底

恍惚 うっとり 3【副、自サ】 發呆、陶醉

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晴朗的陽光射到了河面,也熊熊地照耀到

八疊大的客廳。從水面反射起來的光線,

在姑娘天真臉龐上、在糊紙的拉窗上,描

繪著金色的波紋,不斷搖晃著。緊閉了隔

間,手執刺青道具的清吉,凝神危坐。

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彼は今始めて女の妙相をしみじみ味わう事ができた。

その動かぬ顔に相対して、十年百年この一室に静坐

するとも、なお飽くことを知るまいと思われた。古

のメムフィスの民が、荘厳なる埃及の天地を、ピラ

ミッドとスフィンクスとで飾ったように、清吉は清

浄な人間の皮膚を、自分の恋で彩ろうとするのであ

った。しみじみ 3【副】 仔細、認真;痛切、深切

味わう あじわう 30【他五】 品味;鑑賞;體驗、經驗

飽く あく 1【自五】 (方) 滿足 (文)

ピラミッド 金字塔

スフィンクス 人面獅身像

清浄 せいじょう 0【名、形動】 清淨、純潔

彩る いろどる 3【他五】 塗上顏色;化妝;點綴

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此刻,他才仔細地觀賞到睡美人的妙姿。

面對那安詳的芳容,心想即使是十年或

者百年靜坐在這斗室中,將亦不知厭倦

為何物。恰似古默穆菲斯人,用金字塔

和斯芬克斯(人面獅身像)來粧飾莊嚴

的埃及天地一般,清吉也想用自己的戀

慕情熱來塗抹那潔淨人兒的肌膚。

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やがて彼は左手の小指と無名指と拇指の間に

挿んだ絵筆の穂を、娘の背にねかせ、その上

から右手で針を刺して行った。若い刺青師の

霊は墨汁の中に溶けて、皮膚に滲んだ。焼酎

に交ぜて刺り込む琉球朱の一滴々々は、彼の

命のしたたりであった。彼は其処に我が魂の

色を見た。挿む はさむ 2【他五】 夾、隔、插

穂 ほ 1【名】 (物的)尖端;穗

溶ける とける 2【自下一】 融化

滲む にじむ 2【自五】 (油、墨、顏色等)滲;(汗、淚、

血等)漸漸地滲出

滴る したたる 3【自五】 滴

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過了一會,他把夾在左手小指、無名指與

姆指間的畫筆的筆鋒,塗抹著姑娘的背部,

而且再於其上,用右手刺戮著針兒。年輕

刺青師的心靈溶化於墨汁,隨即滲透在皮

膚之中。摻混了燒酒而刺下去的,每一點

滴的琉球朱,也就是他生命的一點一滴;

在這點滴之中,他看到了己身靈魂的色澤。

Page 38: 刺青

いつしか午も過ぎて、のどかな春の日は漸く暮れかかっ

たが、清吉の手は少しも休まず、女の眠りも破れなかっ

た。娘の帰りの遅きを案じて迎いに出た箱屋までが、

「あの娘ならもう疾うに帰って行きましたよ」

と云われて追い返された。月が対岸の土州屋敷の上にか

かって、夢のような光が沿岸一帯の家々の座敷に流れ込

む頃には、刺青はまだ半分も出来上がらず、清吉は一心

に蝋燭の心を掻き立てていた。

長閑 のどか 1【形動】 悠閒、寧靜、恬靜、晴朗

漸く ようやく 0【副】 漸漸;好不容易、勉勉強強

案じる あんじる 03【他上一】 擔心、掛念、想

箱屋 はこや 20【名】 幫藝妓管理三弦的人;做(賣)箱的(盒)的人;小跟班

疾う とう 1 【副】 早就、老早

追い返す おいかえす 3【他五】 謝絕、擊退

掻き立てる かきたてる 04【他下一】 挑亮、煽動、挑起、激發

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不覺已過了中午時分,和暖的春日,漸次顯

現了遲暮之色;然而清吉的手未曾稍作停歇,

而女子的睡夢亦未為之驚醒。擔心姑娘的遲

遲未歸,前來迎接的跟班,已被以「那姑娘

早就回去了啊」數語,打發妥當。當月亮懸

掛在對岸土州的屋角,夢一般的光芒,流注

而入沿岸家家戶戶的廳舍時,刺青工作,尚

未完成一半--清吉還不時在撥亮蠟燭的芯。

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一点の色を注ぎ込むのも、彼に取っては容易

な業ではなかった。さす針、ぬく針の度毎に

深い吐息をついて、自分の心が刺されるよう

に感じた。針の痕は次第々々に巨大な女郎蜘

蛛の形象を具え始めて、再び夜がしらしらと

白み初めた時分には、この不思議な魔性の動

物は、八本の肢を伸ばしつつ、背一面に蟠っ

た。注ぎ込む つぎこむ 3【他五】 注入、灌入;灌輸

度毎 たびごと 1【副】 每次

吐息 といき 0【名】 (由於 灰心、失望或放心) 大喘氣、嘆氣

具える そなえる 3【他下一】 準備、具備

白白 しらしら 13【副】 (東方)發白、微明

蟠る わだかまる 40【自五】 捲、蟠居

Page 41: 刺青

一滴顏料的注入,在他來說,並非是輕而

易舉的手藝;每刺一針或拔一針,都使他

深深喘了口氣,渾若刺到了自己的心。針

刺的痕跡,漸漸地已具備一隻巨大女郎蜘

蛛(像黑寡婦一樣的蜘蛛精)的形象,到

夜幕再度泛起魚肚白的時分,這帶有不可

思議的邪惡生物,已伸展了八隻腳,蟠繞

在背部的全面。

Page 42: 刺青

春の夜は、上がり下りの河船の櫓声に明け放れて、朝風を孕んで下る白帆の頂から薄らぎ初める霞の中に、中州、箱崎、霊岸島の家々の甍がきらめく頃、清吉は 漸く絵筆を擱いて、娘の背に刺り込まれた蜘蛛のかたちを眺めていた。その刺青こそは彼が生命のすべてであった。その仕事をなし終えた後の彼の心は空虚であった。二つの人影はそのまま稍暫く動かなかった。そうして、低く、かすれた声が部屋の四壁にふるえて聞こえた。明け放れる あけはなれる 5【自下一】 天亮

孕む はらむ 0【自他五】 布などが風を受けて一方の側へふくれる

甍 いらか 0【名】 屋棟、屋脊的瓦 (文)

煌めく きらめく 3【自五】 閃耀、輝耀

空虚 うつろ 0【名、形動】 空洞、空虛

掠れる かすれる 3【自下一】 嘶啞聲;掠過;模糊不清

Page 43: 刺青

春之夜,在上下河船的搖櫓聲中露出熹微的光線;

從初現於孕育著晨風順流而下的白帆頂端的霞光

中,箱崎、中洲、靈岸島家家戶戶屋瓦閃爍發光

的時刻,清吉終於擱置了畫筆,兩眼盯住刺在姑

娘背部的蜘蛛。只有這一回的刺青,纔能算是他

生命的全部。但於完成了這一個工作之後,他的

一顆心卻感到一片空虛。

兩個人影,在好一段時間裡,毫無動靜。接著,

低微的,嘶啞的聲音,震動於屋子的四壁

Page 44: 刺青

文 学ぼう

Page 45: 刺青

~がいい

表示希望壞事發生的心情。用於指責、咒

罵或詛咒等。是一種較陳舊的說法。

EX:悪いことばかり覚えて、お前なん

か、そのうち警察に捕まるがいいよ。

淨學壞,你呀,早晚叫警察抓了去。

058第01行

Page 46: 刺青

V1+ぬ

文言中表否定的助動詞。常見於慣用句。

EX:知らぬが仏(ほとけ)

不知道就不會心煩

とも 接活用詞,文言的「ても」

V-ようとす

打算要…

EX:お風呂に入ろうとしたところに、

電話がかかってきた。

正要洗澡的時候,電話響了。

058第13行

Page 47: 刺青

P.05第04行

いつし

1.不知不覺地(=いつのまにか的文言用法)

EX:いつしか夜も更けていた。

不知不覺夜已深了。

2.遲早

EX:いつしか分かるときがくる。

遲早會明白的。

Page 48: 刺青

まで

連…都…、甚至…都…

說話人帶有驚奇語氣,表示「別說一般能考慮到

的範圍,甚至涉及到一般沒想到的範圍。」

EX:一番信頼していた部下までが、彼を裏

切った。甚至連他最信賴的部下都背叛了他。

P.05第05行

Page 49: 刺青

V2+つつ

1.一邊…一邊…「ながら」的文言用

法。

EX:静かな青い海を眺めつつ、良子

は物思いにふけっていた。

良子一邊眺望著寧靜的藍色大海,一

邊沉思。

2.表逆接。

EX:その言い訳はうそと知りつつ、

私は彼にお金を貸した。

雖然我知道他在說謊,但還是把錢借

給了他。

P.05第10行

Page 50: 刺青

こそ

才是、正是。

強調某事物,表示「不是別的,這才是…」

EX:今でこそ、こうやって笑って話せるが、

あの時は本当にどうしようかと思ったよ。

現在我才能笑著跟你說這件事,當時我真是覺

得這下子完蛋了。

P.05第16行

Page 51: 刺青
Page 52: 刺青

「己はお前を本当の美しい女にする為めに、刺青の中へ己

の魂をうち込んだのだ。もう今からは日本国中に、お前に

優る女は居ない。お前はもう今までのような臆病な心は

持っていないのだ。男と云う男は、皆なお前の肥料になる

のだ。・・・・・・・・・」

その言葉が通じたか、かすかに、糸のような呻き声が女の

唇にのぼった。娘は次第々々に知覚を恢復して来た。重く

引き入れては、重く引き出す肩息に、蜘蛛の肢は生けるが

如く蠕動した。打ち込む うちこむ 03【他五】 打進;扔進

優る まさる 02【自五】 優越、凌駕

臆病 おくびょう 3【名/副】 膽小、怯懦

肥料 こやし 3【名】 肥料

微か かすか 1【副】 微弱的;可憐的

知覚 ちかく 0【名/他サ】 知覺

恢復 かいふく 0【名/自他サ】 康復、恢復;挽回

引き入れる ひきいれる 4【他下一】 拉攏進來

肩息 かたいき 03【名】 喘氣;呼吸困難

蠕動 ぜんどう 0【名/他サ】 蠕動

Page 53: 刺青

「我期望妳能成為真正美麗的女人,在這刺青

中,我注入了我的靈魂!從今以後,世上再也

沒有比妳更為優越的女人;妳已一改過去怯懦

的本性,男人社會中的男人,都將成為妳獵食

的對象……」

這話兒似乎已經點通了,微弱的,絲弦一般的

呻吟之聲,湧上了姑娘的嘴唇。她已漸漸恢復

了知覺,氣喘吁吁,彷彿蜘蛛的腳在她的背上

活生生地蠕動著。

Page 54: 刺青

「苦しかろう。体を蜘蛛が抱きしめているのだから」

こう云われて娘は細く無意味な眼を開いた。その瞳は夕月の光を増す

ように、だんだんと輝いて男の顔に照った。

「親方、早く私に背の刺青を見せておくれ、お前さんの命を貰った代

りに、私はさぞ美しくなったろうねえ」

娘の言葉は夢のようであったが、しかしその調子には何処か鋭い力が

こもっていた。

「まあ、これから湯殿へ行って色上げをするのだ。苦しかろうがちッ

と我慢をしな」

と、清吉は耳元へ口を寄せて、労わるように囁いた。

抱き締める だきしめる 4【他下一】 抱住、抱緊

鋭い するどい 3【形】 尖鋭的;激烈的;敏鋭靈活

籠もる こもる 2【自五】 閉門不出(宅);包含、含蓄;

不通風

湯殿 ゆどの 03【名】 浴室、洗澡間

色上げ いろあげ 4【名/他サ】 潤色

労わる いたわる 3【自他五】 照顧、慰勞(他V)

患病、得病(自V)

囁く ささやく 03【自五】 低聲私語

Page 55: 刺青

「好痛苦吧?身體被蜘蛛緊緊抱著呢。」

被他這麼一說,姑娘已稍微睜開了毫無表情的眼

睛,原本黑沉的瞳眸中,好像傍晚的月亮,逐漸

增加了光芒,晶瑩亮澈地照耀在清吉的臉上。

「師傅,快讓我看看背上的刺青,既然承受了您

的生命,那我該已變身成為大美人了吧?」

姑娘的語氣宛如作夢一般,音調中卻蘊藏著莫名

的興奮。

「好了,現在可以到浴室去入浴潤潤色;也許會

覺得很疼,妳得忍一忍啊。」

清吉附耳細語,似在表達憐惜之意。

Page 56: 刺青

「美しくさえなるのなら、どんなにでも辛抱して見せま

しょうよ」

と、娘は身内の痛みを抑えて、強いて微笑んだ。

「ああ、湯が滲みて苦しいこと。・・・・・・・・・親方、後生

だから私を打っ捨って、二階へ行って待っていておくれ、

私はこんな悲惨な態を男に見られるのが口惜しいから」辛抱 しんぼう 1【名/自サ】 忍受、耐心

身内 みうち 0【名】 身體内部;全身

親屬;自家人

強いる しいる 2【他上一】 強迫

抑える おさえる 23【他下一】 按住;抑制;

壓制、鎮壓

親方 おやかた 34【名】 師傅、前輩

悲惨 ひさん 0【名、形】 悲慘

態 ざま 2【名】 樣子

口惜しい くやしい 3【形】 遺憾、氣憤

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「這是為了美麗,無論如何都必須承受的痛

苦…」姑娘忍住身體的刺痛,強顏歡笑著。

「哎喲~熱水燙得我好痛!--師傅!行

行好,撇開我,到樓上等我;我不喜歡被男

人看到這麼悲慘的模樣呢。」

Page 58: 刺青

娘は湯上りの体を拭いもあえず、いたわる清吉

の手をつきのけて、激しい苦痛に流しの板の間

へ身を投げたまま、魘される如くに呻いた。気

狂いじみた髪が悩ましげにその頬へ乱れた。女

の背後には鏡台が立てかけてあった。真っ白な

足の裏が二つ、その面へ映っていた。

拭う ぬぐう 20【他五】 擦消除

労る いたわる 3【他五】 憐憫、愛護、

安慰、慰勞

突き退ける つきのける 4【他下一】 推開

苦痛 くつう 0【名、自サ】 痛苦

魘される うなされる 04【自下一】 作惡夢(魘住)

Page 59: 刺青

浴罷,還不及擦拭身體,她推開了清吉那

憐恤的手,忍住背上傳來劇烈的疼痛,躍

身躺在鋪著榻榻米的和室,驚魘也似地呻

吟著;宛如瘋子一般,頭髮散亂在面頰上。

女郎的背後放置有一個鏡臺,鏡面映現著

一雙雪白的腳底。

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昨日とは打って変った女の態度に、清吉は一と方

ならず驚いたが、云われるままに独り二階に待っ

ていると、凡そ半時ばかり経って、女は洗い髪を

両肩へすべらせ、身じまいを整えて上って来た。

そうして苦痛のかげもとまらぬ晴れやかな眉を張

って、欄干に靠れながらおぼろにかすむ大空を仰

いだ。滑る すべる 2【自五】 滑

身仕舞い みじまい 2【名、自サ】 打扮、裝束

整える ととのえる 43【他下一】 整理

欄干 らんかん 0【名】 欄干、扶手

靠れる もたれる 3【自下一】 憑靠、依靠

朧 おぼろ 0【形】 模糊

霞む かすむ 0【自五】 出彩霞、朦朦朧

仰ぐ あおぐ 2【自、他五】 仰望

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眼看這與昨日判若兩人,絕世傾城的姿色,清吉

雖然大吃一驚,但只好照她的意思,獨個兒待在

二樓的客廳裡,約莫過了半個小時,女郎把梳洗

過的秀髮,披拂於兩邊的肩膀,並略事打扮後上

樓來了。她展開隱約還帶有苦痛痕跡的雙眉,依

憑欄杆,一面仰望著薄霧朦朧的天空。

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「この絵は刺青と一緒にお前にやるから、それを持っても

う帰るがいい」こういって清吉は巻物を女の前にさし置い

た。「親方、私はもう今までのような臆病な心を、さらり

と捨ててしまいました。――お前さんは真先に私の肥料に

なったんだねえ」と、女は剣のような瞳を輝かした。その

耳には凱歌の声がひびいていた。「帰る前にもう一遍、そ

の刺青を見せてくれ」清吉はこう云った。女は黙って頷い

て肌を脱いだ。折から朝日が刺青の面にさして、女の背は

燦爛とした。巻物 まきもの 0【名】 捲軸、布匹

臆病 おくびょう 3【名、形】 膽怯、害怕

さらり さらリ 23【副】 乾脆、果斷

真先 まっさき 34【名】 最先、首先

頷く うなずく 30【自五】 點頭(表贊成、同

意)

燦爛 さんらん 0【形】 燦爛

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「這幅畫還有刺青,一起奉送,拿著,妳可以回去了。」

清吉邊說邊把卷軸放在女郎面前。

「師傅,我已經把以前膽怯的心,毫不留戀地拋棄於九霄

雲外。

--師傅,您應當算是最先成為我獵食對象的男人?」

女郎閃爍著有如利齒的眼珠子,骨碌碌地轉著;耳際響起

了凱歌之聲。

「回去之前,請讓我再看一眼妳背上的刺青……。」

女郎默默地頷首,隨即裸露了她美豔絕倫的肌膚。

在這之間,早晨的陽光恰好照射了整個的刺青圖案,

剎時間,女郎的肩背,燦爛奪目!

Page 64: 刺青

文 学ぼう

Page 65: 刺青

さえ

只要...就

用法上:V2~さえ~ V5ば

EX:

会いさえすればいいさ。

彼女は暇さえあればテレビばかり見てい

る。

Page 66: 刺青

照る VS照れる

照る:照耀、曬/晴天

EX:

降っても照っても行く。

照れる:害羞

EX:

彼女は大介さんを前にして照れる。

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谷崎的官能美與頹廢美代表作。女性崇拜。戀足癖。被虐待

谷崎在追求什麼?

美的意識=自我解放

谷崎潤一郎:「我現在還

是無法認為自己是凡人。

我總覺得自己是天才。我

自覺自己真正的使命是,

讚美人世間的美,歌頌歡

宴之樂,我的天才是發揮

真實之光。」

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作品中的美與惡

すべて美しい者は強

者であり、醜い者は

弱者であった。

悪は即ち善であり、

醜は即ち美であり、

美と醜とは離れにく

い。

娘:美しい者=強者

清吉:醜い者=弱者

女孩的腳母親與女性崇拜

兩幅畫娘は其処に隠れたる真

の「己」を見出した。

刺青的意義。儀式

。清吉は清浄な人間の

皮膚を、自分の恋で彩

ろうとするのであった

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感想與提問

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1.刺青在台灣一直是屬於流氓的標記,但在當時的日本卻是一種藝術、一種流行。這種文化差異挺有趣的。

2.清吉是個虐待狂。3.也許在這部作品中,刺青隱含著「性」的意味。4.刺青,華麗詞藻,專有名詞,引經據典,再再

堆砌出一幅華而不實的洛可可式的風格。5.西方作品『香水』。

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1.刺青師清吉、刺青本身以及被刺青的女子是否帶有什麼象徵意義?A:清吉是解放者,刺青是解放的過程,而被刺青的女子

則是被解放者。

2.刺青前的女子和刺青後的女子有什麼改變?A:前→女子不敢面對自己有邪惡的一面;

後→忠實的接受自己身為人本身即有的邪惡。

3.為什麼要刺蜘蛛,蜘蛛代表什麼?A:代表人內心的邪惡,背上沒有蜘蛛的時候,邪惡隱藏

在女子心中,但當蜘蛛被刺上,女子心中的邪惡就浮上檯面來。

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