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序論 http://www.sissa.it/cm/thesis/2002/cococcioni.pdf 和訳:@dc1394 A LDA+U study of selected iron compounds 第一章

A lda+u study of selected iron compounds 第一章

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Page 1: A lda+u study of selected iron compounds 第一章

序論

http://www.sissa.it/cm/thesis/2002/cococcioni.pdf

和訳:@dc1394

A LDA+U study of selected iron

compounds 第一章

Page 2: A lda+u study of selected iron compounds 第一章

序論

Page 3: A lda+u study of selected iron compounds 第一章

DFTとL(S)DA・GGA

DFTは、その理論基礎が確立した1960年代半ば以来、材料物性の予測に貢献してきた。

DFTは原則として正確であるが、実際の計算では、いくつかの近似が用いられている。

このうち最も簡単な近似であり、局所的な電子系の状態を一様な密度の電子ガスで表すことができるという仮定に基づいた近似は、局所(スピン)密度近似(Local (Spin) Density Approximation, L(S)DA)と呼ばれる。

また、L(S)DAの拡張であり、有効電子相互作用をモデリングする過程で、実際の電子系の不均一性を取り入れた近似は一般化勾配近似(Generalized Gradient Approximation, GGA)と呼ばれる。

Page 4: A lda+u study of selected iron compounds 第一章

L(S)DA・GGAとその限界

L(S)DAは金属、共有結合半導体、イオン性固体、

あるいは複雑な二種以上の金属から成る遷移金属化合物などについて、電子的あるいは磁気的な基底状態の物性を説明できた。

また、GGAはL(S)DAの中のいくつかの未解決問題を解決した。

しかし、L(S)DAやGGAといった標準のDFTアプロー

チで正確に物性を記述できない系のグループがあり、それは「強相関電子系」と呼ばれる。

Page 5: A lda+u study of selected iron compounds 第一章

LDA+U

普通のLDAかGGAがこのグループの材料について説明できない理由は、電子が強く局在する場合には正確でなくなるような汎関数を用いているからである(これは主に均質の電子ガスとして実際の相互作用電子系を扱っているため)。

強相関電子系について説明できるアプローチの1

つは、さまざまな異なった汎関数が導入、開発されたLDA+U法である。

LDA+U法は、計算から有効電子間相互作用を「強制的に」導くために提案された方法であり、電子間相互作用のパラメータは実験値を再現するように、半経験的に定める。

Page 6: A lda+u study of selected iron compounds 第一章

この論文の目的

この論文では、LDA+U法の重要な研究を行う。

Anisimov他の定式化から始めて、彼らの仕事のさらなる改良と、より簡単な近似を開発する。

目標は、より「自然な」拡張でLDA(GGA)の記述を修正し、また完成することである。

V. I. Anisimov, J. Zaanen, O. K. Andersen, Phys. Rev. B 44, 943 (1991).

V. I. Anisimov, I. V. Solovyev, M. A. Korotin, M. T. Czyzyk, G. A. Sawatzky, Phys. Rev. B 48, 16929 (1993).

I. V. Solovyev, P. H. Dederichs, V. I. Anisimov, Phys. Rev. B 50, 16861 (1994).

Page 7: A lda+u study of selected iron compounds 第一章

この論文の構成

この論文は以下の構成になっている。

第1章は標準のDFTの理論と近似について概観する。

第2章で、GGAによるいくつかの鉄化合物の電子的、磁気的、そして構造的な物性の計算結果を示す。

第3章で、擬ポテンシャルー平面波フレームワークへのLDA+U法の導入について議論する。

第4章では、第2章でGGAを用いて計算した系に対して、改めてLDA+U法を用いて扱う。

Page 8: A lda+u study of selected iron compounds 第一章

Born-Oppenheimer近似

Page 9: A lda+u study of selected iron compounds 第一章

Born-Oppenheimer近似

実際の系の電子と核の計算において、一般に第一原理計算では、電子と核の二つの粒子の質量の大きな差から、Born-Oppenheimer近似が用いられる。

固体において電子は核よりはるかに軽いので、核の運動の各位置における基底状態において、電子が完全に緩和するように、電子配置を考えることができる。

これは電子の自由度を研究している間、核を静止していると考えることができることを意味する。

Page 10: A lda+u study of selected iron compounds 第一章

Born-Oppenheimer近似

従って、系の波動関数は近似的に、核と、核位置上のパラメータのみに依存する電子に対する関数の積として以下の式で得られる。

ここで、R={ RI }はすべての核座標のセットであり、r={ ri }はすべての電子座標のセットである。

また、多粒子波動関数ψR(r)は電子スピンの自由度にも依存する。

Page 11: A lda+u study of selected iron compounds 第一章

Born-Oppenheimerエネルギー面

この近似においては、核の波動関数Φ(R)は以下のSchrödinger方程式の解である。

ここで、MIはI番目の核の質量であり、E(R)はBorn-Oppenheimerエネルギー面と呼ばれる。

これは核が位置Rに固定されているときの、電子系の基底状態エネルギーに対応している。

より一般的に、電子的な励起状態におけるポテンシャルエネルギー面も定義でき、電子ーフォノン相互作用を考えるときに重要である。

Page 12: A lda+u study of selected iron compounds 第一章

電子に対するシュレーディンガー方程式

以下の、電子に対するSchrödinger方程式を解きながら、ポテンシャルエネルギー面を計算できる。

ここで、ZIがI番目の核の電荷、eとmはそれぞれ素電荷と電子の質量であり、αは電子状態に対する添え字である。

この方程式は、電子と核の運動が分離できると仮定し、電子波動関数ψR(r)上の核の動きに対する運動演算子から来る非断熱項を無視したときの、電子(と核)の問題を説明する。

Page 13: A lda+u study of selected iron compounds 第一章

多体問題の難しさとDFT

この近似は、(有効)電子質量と核の質量の比me/M

のオーダーの項が無視できる、ほとんどの実際の物質について成り立つ。

しかし、電子問題は量子多体問題であり、系の全波動関数はすべての電子座標に依存し、さらに、互いの相互作用のため、単独粒子問題に分離することはできない。

このため、この方程式はまだはるかに複雑であり、実際に計算機で解くことはできない。

この困難のため、さらなる開発が、実際の物質の第一原理計算を実行するのに必要であり、密度汎関数理論(Density Functional Theory (DFT))がこのフレームワークを提供する。

Page 14: A lda+u study of selected iron compounds 第一章

密度汎関数理論

Page 15: A lda+u study of selected iron compounds 第一章

密度汎関数理論とは

密度汎関数理論とは、系のすべての電子の座標に依存する複雑な波動関数の代わりに、1つの空

間変数にしか依存しない基底状態の電子電荷密度で、系の基底状態の物性について説明が可能であるとする理論である。

これは、密度汎関数理論で最も重要な概念である。

Page 16: A lda+u study of selected iron compounds 第一章

Hohenberg-Kohnの定理

もし相互作用のある電子ガスを考えるならば、粒子に作用する外部ポテンシャルが、系の基底状態とそれに対応する電荷密度を決定する。

したがって、この状態のすべての物理量は外部ポテンシャルの汎関数である。

粒子に作用する外部ポテンシャルと系の基底状態密度は1対1対応である(Hohenberg-Kohnの定理)。

従って、もし粒子に作用する外部ポテンシャルが求まれば、系の基底状態密度が一意的に定まる。

また逆に、系の基底状態密度が求められれば、粒子に作用する外部ポテンシャルが一意的に定まる。

P. Hohenberg and W. Kohn, Phys. Rev. 136, B864 (1964).

Page 17: A lda+u study of selected iron compounds 第一章

変分原理のもとでの最小化

以下の全エネルギー汎関数(1.4)式に対して電子密度に関する変分原理が成り立つように、基底状態の電子密度の一意的でユニバーサルな汎関数F[n(r)]が存在している。

ここで、 F[n(r)]は電子の運動エネルギーと粒子同士のCoulomb相互作用を含んでおり、Vext(r)は粒子に働く外部ポテンシャルである。

粒子の総数Nが一定という条件(1.5)式の下で(1.4)式を最小化すると直接、基底状態のエネルギーと電荷密度が得られる。

従って、この変分原理は非常に重要である。

Page 18: A lda+u study of selected iron compounds 第一章

Kohn-Shamの補助系

残念ながら、ユニバーサルな汎関数F[n(r)]は実際には知られていない。

KohnとShamは、密度汎関数理論を実際的な理論にするべく、元の「相互作用がある」問題を、仮想的な「相互作用していない」問題に置き換えた(Kohn-Shamの補助系)。

こうすれば、「相互作用している」系の汎関数F[n(r)]は、「相互作用していない」が「相互作用している」系と同じ密度を持つ電子気体の運動エネルギーと、粒子間相互作用に伴う追加項の合計として表される((1.6)式)。

Page 19: A lda+u study of selected iron compounds 第一章

有効Kohn-Shamポテンシャル

相互作用している電子系について、全エネルギー汎関数を書くと、

となる。ここで、有効Kohn-Shamポテンシャルを以下で定義する。

Page 20: A lda+u study of selected iron compounds 第一章

有効Hamiltonianと電荷密度

結果として、系に対して有効Hamiltonianを定義できる。

これは相互作用していない電子ガスに対するものであるが、電子ガスはもとの系のすべての粒子間相互作用が含まれている有効ポテンシャルVKSを感じている。

その結果、(架空の)一粒子波動関数を使用することで電子系の問題に対処でき、電荷密度は、

となる。

Page 21: A lda+u study of selected iron compounds 第一章

相互作用していない補助系に対する運動エネルギー

ここで、iは一粒子状態に対する添字であり、fiはFermi分布である。

また、相互作用していない補助系に対する運動エネルギーも、以下の(1.12)式で簡単に計算できる。

Page 22: A lda+u study of selected iron compounds 第一章

Kohn-Sham方程式

Ψi*に関して、電子数一定という制限の下での相

互作用していないエネルギー汎関数の最小化から、以下のSchrödinger方程式様の(1.13)式(Kohn-

Sham方程式と呼ばれる)を得ることができる。

ここで、(架空の)波動関数は以下の(1.14)式のように正規直交関係を満たす。

Page 23: A lda+u study of selected iron compounds 第一章

Kohn-Sham方程式の物理的意味

Kohn-Sham方程式で現れる(架空の)波動関数は、直接には、どんな物理的な意味も持っていない。

それらの波動関数は、一体問題の密度行列の固有状態であるが、それらは相互作用していない補助系の電子軌道であるので、実際の系の電子に対する波動関数であると考えることはできない。

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Kohn-Sham方程式の解法

Kohn-Sham方程式の波動関数は問題の解として得られるが、波動関数は有効ポテンシャルVKSの計算に必要な電荷密度を構築する際にも必要なので、Kohn-Sham方程式は強く非線形になっている。

従って、この方程式を解くためには、有効ポテンシャル(あるいは電荷密度)の初期の推測から始めて、波動関数(電荷密度)と有効ポテンシャルの両方の量を自己無撞着に発展させていく反復法を採用しなければならないことを意味する。

Page 25: A lda+u study of selected iron compounds 第一章

基底状態のエネルギー

Kohn-Sham方程式を解くと、相互作用していない系に対する基底状態のエネルギーが以下(1.15)式によって得られる。

ここで、Enucは核-核間のCoulomb相互作用エネルギー項である。

右辺第二項のHartree項と右辺第三項の交換相関項は、自己と相互作用し、同じ項の二重カウントと数え間違いを起こす。

自己相互作用は本来、Hartree項と交換相関項で互いに相殺するはずであるが、近似汎関数を使っているため、完全に相殺しない(自己相互作用問題)。

Page 26: A lda+u study of selected iron compounds 第一章

LDAとGGA

交換相関汎関数に対する近似

Page 27: A lda+u study of selected iron compounds 第一章

LDAについて

交換相関エネルギーは非常に複雑な項であり、まだ完全には明らかにされていない。

ここからは、DFTを第一原理計算の実用的なツールにするために、Excに対していくつかの仮定を行う。

そして、この仮定はいくつかの近似を導入する。

実際の系に対する交換相関が、同じ密度を持っている均質で一様な電子ガスのように、「局所的に」振る舞うと仮定すると、最も簡単な近似を得ることができ、これを局所密度近似(LDA)と呼ぶ。

Page 28: A lda+u study of selected iron compounds 第一章

LDAについて

その結果、交換相関エネルギーは系の局所密度だけに依存し、以下(1.18)式のように書ける。

ここで、εxchomは、上記の均一系の交換相関エネル

ギー密度である。

この(1.18)式から、以下の(1.19)式のように交換相関ポテンシャルが容易に得られる。

ここで、Fxc= εxchom(n)nである。

Page 29: A lda+u study of selected iron compounds 第一章

LDAについて

この近似は、電子電荷密度が滑らかであると予想される系(自由電子的である簡単な金属、真性半導体など)に対する近似であったが、共有結合性の物質やいくつかの遷移金属のような非均一系に対してもよい結果を与えた。

しかし、LDAは通常、実験値と比較して、構造や振動に関する値でよい一致を示すが、一方で、結合エネルギーを過大評価し、短い結合長を示す。

LDAの、これらと他の欠点を克服するために、元の近似のいくつかが拡大され、新しい近似が生まれた。

このうち、一般化勾配近似(GGA)は、最も良好なものの1つである。

Page 30: A lda+u study of selected iron compounds 第一章

GGAについて

GGAの交換相関エネルギーは、密度と、密度の

局所的な空間的変化の汎関数になっていて、以下(1.20)式のように書ける。

GGA汎関数の定式化によって、交換相関エネルギー密度の式は異なる。

また、(1.20)式から、LDAと同じように交換相関ポ

テンシャルが容易に得られる(式は少々複雑になるので紹介しない)。

Page 31: A lda+u study of selected iron compounds 第一章

GGAについて

GGAは一般に、いくつかのLDAの欠陥を改良し、物質の構造特性をより良く記述する。

特に、系の結合エネルギーに関して、かなり結果を改良する。

また、GGAは非均一系に対してより良く記述していると予想される。実際、遷移金属のように、LDAが完全に失敗するいくつかの場合においても、正しい結果を与える。

1つの例は鉄の固体であり、実験によると、基底状態はbccの強磁性(FM)である。

計算結果は、LDAが基底状態をfccの常磁性と予測するのに対し、GGAは基底状態をbccの強磁性と正しく予測する。

Page 32: A lda+u study of selected iron compounds 第一章

LDAやGGAの限界

LDAやGGAは、系の非局在化した電子が重要であるとき、うまくいくと予想される。

しかし、多体効果がより重要であると予想される、局在化電子が重要な物質に対処するとき、十分正確ではない。

ここで、LDAやGGAの交換相関エネルギーに、平均場理論のような形式の近似を導入する。

Page 33: A lda+u study of selected iron compounds 第一章

磁気系の取り扱い

局所スピン密度近似

Page 34: A lda+u study of selected iron compounds 第一章

Kohn-Sham方程式による磁気系の取り扱い

もし、交換相関エネルギー汎関数が、二つのスピン占有数に別々に明確に依存していると考えるなら、磁気系の取り扱いははるかに簡単になる。

この場合、2つのスピン分極に対して別々にKohn-

Sham方程式を書くことができる((1.22)式)。

Page 35: A lda+u study of selected iron compounds 第一章

Kohn-Sham方程式による磁気系の取り扱い

そして、LDAの場合と同様に、

が得られる。

2つのスピンは、Hartreeポテンシャルと交換相関ポテンシャルを通じてお互いに関係していて、スピンの片方の有効場は、もう片方のスピン電子密度にも依存する。

Page 36: A lda+u study of selected iron compounds 第一章

局所スピン密度近似(LSDA)

LDAとLSDAの有効ポテンシャルの式を比較すると、Coulombポテンシャル部分は全く変わらない。

アップおよびダウンスピンの差は磁化の起源であるが、これは、同じスピンと異なったスピンの間の相互作用の違いを説明する交換相関ポテンシャルによって取り入れられる。

通常、このスピン依存の定式化(最も簡単な形は局所スピン密度近似(LSDA)と呼ばれる)は、交換と相関の汎関数に別々の式を用いる。

Page 37: A lda+u study of selected iron compounds 第一章

LSDAの交換エネルギー汎関数

LSDAにおいて、交換汎関数はスピンにおける対

角成分であり、スピン非分極の式を拡張して得られる((1.26)式)。

ここで、FxLDAはスピン分極していない場合に用い

たのと同じ汎関数である。

Page 38: A lda+u study of selected iron compounds 第一章

LSDAの相関エネルギー汎関数

相関汎関数は、均質の電子ガスに対して、異なったスピン分極の結果を補間して得られ、両方の合計の電荷密度n(r)と磁化m(r)に依存する。

磁化m(r)は、

と書ける。ここで、磁気分極を以下(1.28)式で定義すると、

となる。ここで、 である。

Page 39: A lda+u study of selected iron compounds 第一章

LSDAの相関エネルギー汎関数

結果として、相関エネルギー汎関数は、

となる。ここで、f(ξ)はf(0) = 0, f(1) = 1となるなめらかな補間関数、εc

PおよびεcUはそれぞれ、分極お

よび非分極の系に対する相関エネルギー密度である。

Page 40: A lda+u study of selected iron compounds 第一章

Kohn-Shamポテンシャルへの寄与

これまでの交換相関汎関数のKohn-Shamポテンシャルへの寄与は、有効磁場に相当する。

スピン分極電荷密度に関して、交換相関汎関数の一次微分を計算することにより、それぞれが二つのスピン分極に対して等しい第一項と第二項を得る。

第一項と第二項は同じ絶対値を持つが、それが適用されるスピンにより、符号が変化する。

この第二項は、系の磁気特性からスピンの不釣り合いを起こすように、2つの有効場の違いを導入する。

Page 41: A lda+u study of selected iron compounds 第一章

GGAへのスピン分極の拡張

また、GGAに対しても、スピン分極している場合には同様な拡張が可能である。

しかし通常、相関汎関数は磁気分極の勾配を含んでおらず、汎関数は最終的に以下(1.30)式と(1.31)式となる。

ここで、FxとFcはLDAの場合に定義された量と同様の量であるが、勾配にも依存している。

Page 42: A lda+u study of selected iron compounds 第一章

周期系とBlochの定理

Page 43: A lda+u study of selected iron compounds 第一章

周期系

第一原理計算における(固体の)物質の記述は平衡位置でそれらを構成する原子が静止しているという仮定に基づいている。

これらは無限に周期的に繰り返された構造を形成する。

Vを電子に関する外部ポテンシャルとすると、

となる。ここで、Rは実空間格子ベクトルであり、3

つの基本ベクトルの整数一次結合に対応している(これは3つの独立している方向への格子の周期性を決定する)。

Page 44: A lda+u study of selected iron compounds 第一章

Blochの定理

また、全体の電子Hamiltonianと周期系を説明するすべての物理量が、並進不変性を有する。

このことから、一粒子電子波動関数で電子状態を表せるとするBloch定理が使用でき、

となる。ここで、kが電子の結晶運動量(これは実際に波動関数の並進不変性を説明する)であり、vが同じk-ベクトルに対応する状態を分類する添字(バンドインデックス)であり、ukv(r)が結晶の同じ周期性に対する関数であり、以下(1.34)式の関係を満たす。

Page 45: A lda+u study of selected iron compounds 第一章

周期系のHamiltonian

系の並進対称性のため、異なったk点を独立に扱うことができる。

事実、Hamiltonianは、格子点を通じて並進を生成する演算子と交換する。

このHamiltonianは、(1.33)式で与えられた形の波動関数に対応する演算子(kで分類される)の固

有ベクトルの基底セットにおけるブロック対角成分である。

この論文では、同じkブロックに属するHamiltonian

の固有値にバンドの添字vをつける。

Page 46: A lda+u study of selected iron compounds 第一章

逆格子ベクトル

kベクトルは、周期構造を持っている逆格子空間のいわゆる第一Brillouinゾーンの中で定義され、逆格子空間の基本格子ベクトルbiは、実空間の基本格子ベクトルuiと以下(1.35)式のように関連している。

和は電子状態(とそれによって決まる物理量)を支配していて、例えば、Ebandとn(r)は、Brillouinゾーン上の積分に対応する。

Page 47: A lda+u study of selected iron compounds 第一章

IBZ

結晶の対称性を利用して、Brillouinゾーンのより小さい領域(IBZ)に積分を閉じ込めることができる。

IBZにおいて、小さいセットのk-ベクトルを用いて逆格子空間積分を実行することを許容する、スペシャルポイント積分テクニックの使用で、この結果をさらに改良できる。

MonkhorstとPackのテクニックによって、このポイントを選ぶことができ、それらのポイントの数を増加させたときの物性の収束特性によって(近似的にではあるが)精度をチェックできる。

A. Baldereschi, Phys. Rev. B 7, 5212 (1973); D. J. Chadi, M. L. Cohen, Phys. Rev. B 8, 5747 (1973); H. J. Monkhorst, J. D. Pack, Phys. Rev. B 13, 5188 (1976); 16,1748 (1977).

Page 48: A lda+u study of selected iron compounds 第一章

逆格子空間の積分

例えば、電荷密度のための逆格子空間の積分は、ベクトルの離散的集合の和として表される。

ここで、ωkはスペシャルポイントのテクニックにおけるk-点の重みである。

また、電荷密度は、対称化の手順に従うと、

となる。ここで、NSは結晶の空間群における対称操作Sの数であり、fは対称操作の並進部分ベクトルである。

Page 49: A lda+u study of selected iron compounds 第一章

「スペシャルポイント」のテクニックの問題点

スペシャルポイントのテクニックは、半導体か絶縁体の記述で非常に効率的であるが、直接、金属に適用すると、あまりよくない結果をもたらす。

これは、いくつかの電子状態が交差する、Fermi準

位の周りの領域が、正確に抽出される必要があって、より多くのベクトルが一般に必要であるからである。

Page 50: A lda+u study of selected iron compounds 第一章

k-点格子の問題と解決策

もし使われたk-点格子が十分でなければ、Fermiエネルギーにおける小さいシフトさえ、逆空間和( (1.36)

式のような)で、有限数の電子状態を含んだり除いたりするかもしれないので、自己無撞着の間、不安定性の問題があるかもしれない。

これは、対応する量において、かなりの変動を起こす。

体積要素の対称性の破れにBZを分解し、そして、線形補間によって隣接しているk-点の間のエネルギー帯を接続する4面体方法を使用することで、この問題に対する解決策を達成できる。

Page 51: A lda+u study of selected iron compounds 第一章

金属に対する別のアプローチ

この論文では、金属に対して、別のアプローチを採用する。

このアプローチは、Fermi準位の周りで電子状態の

重みを整えて、計算された量に大きな変動を避けるFermi分布の有限smearingを導入している(有限効果温度を考えることに対応している)。

この論文では、MethfesselとPaxtonのsmearingテクニックを使用しており、広がり関数として、Gauss関数と多項式の組み合わせを採用している。

M. Methfessel and A. T. Paxton, Phys. Rev. B 40, 3616 (1989).

Page 52: A lda+u study of selected iron compounds 第一章

smearingテクニック

この近似は、金属に対してかなりうまくいき(ただし、通常半導体より多くのk-点が必要である)、また有限smearingにおける逆格子空間の積分の精度を、IBZ空間内で特別なk-ベクトルの数を増やしたときと、広がり幅σを狭くしたときの、収束特性によってチェックできる。

smearingのテクニックによる主な欠点は、σの選択に基底状態全エネルギーが依存することである。

MethfesselとPaxtonの方法は、正確なたたみ込み関数を選ぶことによって、この依存をかなり減少させる。

Page 53: A lda+u study of selected iron compounds 第一章

平面波擬ポテンシャル法

Page 54: A lda+u study of selected iron compounds 第一章

平面波基底

実際の計算でKS方程式を解くためには、オリジナ

ルの微分積分問題を、より扱いやすい代数的な問題に変える必要がある。

電子波動関数を基底関数で展開して、Hamiltonianにおけるすべての演算子で基底セットによる表現を用いることで、これを達成できる。

この論文で用いるのは、実空間から逆格子空間に移動するのに、高速フーリエ変換(FFT)のような

効率的なアルゴリズムの利点を活用する平面波(PW)基底セットである。

Page 55: A lda+u study of selected iron compounds 第一章

平面波基底での波動関数

その結果、(1.33)式のBloch電子波動関数を以下の(1.38)式で表すことができる。

ここで、Ωはユニットセルの体積、Gは逆格子ベクトルであり、cv(k+G)係数は以下の(1.39)式によって正規化される。

Page 56: A lda+u study of selected iron compounds 第一章

平面波基底によるKS方程式

平面波基底を使用すると、逆格子空間におけるKS方程式は以下(1.40)式のように書ける。

kベクトルに関して、Hamiltonianがブロック対角形

式を有することが、この表現によって明白であり、その結果、それぞれ別々にこれらのブロックの中で対角化が実行できる。

Page 57: A lda+u study of selected iron compounds 第一章

平面波基底によるKS方程式

電荷密度を得るためには、各k-点に関して、系の

すべての電子を収容できる最も低いエネルギーの電子状態の数(これは有限の数である)のみが必要である(系の基底状態の物性を研究しているため) 。

この量は、Kohn-Sham方程式における、反復対角

化ステップのポテンシャルの再生成において、新たな推測量を構成する時に使用されている。

Page 58: A lda+u study of selected iron compounds 第一章

エネルギーカットオフ

平面波基底は無限の数のG-ベクトルを使用したときの極限において正確である。

実際の計算では、有限数の平面波しか使用できないので、通常、平面波は、最大の運動エネルギーEcut(エネルギーカットオフ)の球に含まれたものを選ぶ((1.41)式)。

(1.41)式の条件の下でKS方程式を解いた際の精度は、エネルギーカットオフの値を増加させ、その都度、興味がある物性を調べることによって、チェックする必要がある。

Page 59: A lda+u study of selected iron compounds 第一章

平面波基底の利点

平面波基底を使用する大きな利点は、主に、理論的にはEcutのみが系の記述の精度を制御する唯一のパラメータであるという事実からである。

これは、Ecutが固定されると、最大で よ

り大きい距離を介して行われる系の波動関数の変化が、よく記述できることを意味している。

Page 60: A lda+u study of selected iron compounds 第一章

擬ポテンシャル(PP)

イオンコアとその電子状態(その周りでは部分的に局在化されている)を記述するためには、多くのGベクトルが必要であるが、平面波基底は、残念なことに空間の各領域で同じものを使用する。

この困難を解決するための一つの可能な方法が擬ポテンシャル(PP)のテクニックである。

イオンコア(内側の電子雲によって修飾された核)はそれらの原子構成で「凍結している」とみなすことができる。

これは、結合と化学反応性に関する限り、系の最も意味がある物性は、価電子だけによってもたらされるという仮定に基づいている。

Page 61: A lda+u study of selected iron compounds 第一章

擬ポテンシャル(PP)

この結果、価電子は不活性なイオンコアによってもたらされた有効な外場で運動する。

そして、計算には陽に殻の状態を含んでないにもかかわらず、擬ポテンシャルは最も外部の(価電子)状態における真の原子ポテンシャルの相互作用を再生させようとする。

Page 62: A lda+u study of selected iron compounds 第一章

擬ポテンシャルの作成法

擬ポテンシャルを作成するために様々な方法が存在しているが、概念は共通している。

孤立した原子に対して、完全なポテンシャル計算をいったん実行すれば、電子状態は「内部状態」と「価電子状態」という2つのカテゴリに分割できる。

そして、内部状態の電子は基底状態の原子の電子状態で「凍った」ままとして残し、外部の価電子についてのみ、擬ポテンシャルが作成される。

Page 63: A lda+u study of selected iron compounds 第一章

ノルム保存条件とトランスフェラビリティー

この擬ポテンシャルは、固定されたコア半径の外側で完全な全電子ポテンシャルと一致するように、また、コア半径の内側では、滑らかかつノードレスであり、コア領域内の全価電子電荷が保存される(ノルム保存条件)ように作成する。

コア半径と擬波動関数の形の両方を考え、擬ポテンシャルを作成する。

このとき、異なった化学的環境下においても良い可搬性(トランスフェラビリティー)を与えるために、できるだけ広いエネルギー領域において、参照した原子配置の本当の価電子状態の散乱特性を再現するようにする。

Page 64: A lda+u study of selected iron compounds 第一章

局所部分と非局所部分

擬波動関数の滑らかさにより、妥当な数の平面波で計算が実行できる。

しかし、いくつかの角運動量の全電子(AE)波動関

数の散乱特性を再現するために、局所部分(コア半径の外側で真の全ポテンシャルと一致する)と非局所部分(コア半径の外側で消える)が必要である。

Page 65: A lda+u study of selected iron compounds 第一章

セミローカル型

非局所な部分の寄与に対して、角座標上で非局所形となるように作られた「セミローカル型」な式が、以下(1.42)式で与えられる。

ここで、Plはl番目の角運動量部分空間への射影演算子である。

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KleinmanとBylanderの分離形

しかし、平面波計算をより効率的にするように、KleinmanとBylander (KB)は(1.42)式のセミローカルな表現を完全に分離できる式を提案した((1.43)

式)。

ここで、波動関数|i>は、参照原子擬波動関数上の元のセミローカルな部分の作用を再現するKB

ポテンシャルの(変更された)原子疑状態である。

L. Kleinman, D. M. Bylander, Phys. Rev. Lett. 48, 1425 (1982).

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Vanderbiltの一般化と改良

コア半径内の擬波動関数の説明に必要な計算負荷を減少させ、また擬ポテンシャルの可搬性を増加させるための方法を発見したVanderbiltは、この方法の完全な一般化と改良を導入した。

固体内で占有された状態に対応するエネルギー領域は、複数の射影でサンプリングされる。

従って、(1.43)式における添字iは、一つの原子の参照状態の上でカウントするのではない。

実際、それぞれの角運動量成分に対して、通常2個のエネルギー値のセットがイオンの正しい散乱性質を再現するのに使用される。

D. Vanderbilt, Phys. Rev. B 41, 7892 (1990).

K. Laasonen, A. Pasquarello, R. Car, C. Lee and D. Vanderbilt, Phys. Rev. B 47,10142 (1993).

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Vanderbiltの一般化と改良

これは、(1.43)式の非局所部分の一般化を必要とし、以下(1.44)式となる。

ここで、|βi>は「選ばれた」エネルギーεiに対応す

る擬波動関数から構築される、コア半径内で局所化した局所擬ポテンシャルである(この擬波動関数と擬ポテンシャルはそのサイト上の選ばれたコア半径の外では消える)。

また、Bijはエルミート演算子であり、 |βi>と同じ量を使用することで構築される。

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ウルトラソフト擬ポテンシャル

これは、擬ポテンシャルの可搬性を向上する。

これだけでも非常に有用な改良であるが、さらに、ウルトラソフト(US)擬ポテンシャルと呼ばれる方法は、計算負荷の重要な減少をもたらす。

これは、ノルム保存条件の緩和と、コア半径内で擬波動関数をできるだけ滑らかにすることからもたらされる。

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一般化オーバーラップ演算子

これは、以下(1.45)式の「一般化オーバーラップ演算子」を導入することで可能となる。

ここでSは、一般化された正規直交条件

を満たす。また、(1.45)式のqi,jは、付加された電荷密度の積分

である。

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一般化オーバーラップ演算子

ここで、(1.48)式の波動関数は、結晶の電子波動

関数を構築するために使用される、原子に対する波動関数であり、それぞれ、全電子および擬波動関数を示している。

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電荷密度式の補強部分を加える

オーバーラップ(演算子)のこの一般化のため、電荷密度にはイオンコア上の補強部分を加えなければならない((1.49)式)。

(1.49)式の添字Iは、付加電荷Qi,jIと関数βが加えら

れた、位置RIの異なったイオンを数える。

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ポテンシャルの式の修正

n(r)のこの修正によって、KS方程式のポテンシャルの式も修正される。

修正されたポテンシャルの式は、

となる。ここで、係数DijIionは、

である。

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最終的なKS方程式

KS方程式(一般化された正規直交条件(1.46)式を満たす)は、原子単位系で最終的に以下(1.52)式となる。

ここで、

である。

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擬ポテンシャルの更新

最終的な式によって明白なように、擬ポテンシャルは、各繰り返しのときに更新する必要がある。これは有効ポテンシャルVeffが電子電荷密度によって作られるからである。

そしてこれは、可搬性をさらに増加させるように、擬ポテンシャルのスクリーニングのプロセスに関与する。

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ウルトラソフト擬ポテンシャルの代償

ウルトラソフト擬ポテンシャルによる利点を得るのに必要な代償は、毎回係数Dij

Iを更新する必要が

あることに加えて、電荷密度の増強の寄与を説明するのに、非常に大きいカットオフエネルギーが必要なことである。

しかしながら、この項はn(r)の計算のみで重要であ

り、より小さい波動関数エネルギーカットオフで次元を固定している対角化問題には、この項は入らない。

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非線形内殻補正

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電子電荷密度の分離

平面波擬ポテンシャル法は、電子電荷密度を、価電子項nv(r)と「凍った」内殻の寄与nc(r)に分離できるという仮定に基づいている。

平面波擬ポテンシャル法において、固体のオリジナルの形式のHartreeポテンシャルと交換相関ポテンシャルは、 nv(r)だけを使用することで計算される。

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Hatree項、交換相関項、その他の項

Hartreeポテンシャルに対しては、電荷密度において線形であり、これは近似ではない。

また、他の項からも、内殻項からくる寄与は容易に分離できる(そして、擬ポテンシャルの局所項においては含まれている)。

問題は密度において線形でない交換相関ポテンシャルに存在している。

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交換相関項の分離

その結果、交換相関エネルギー密度を以下(1.54)

式のように分離すると、

これは、電荷密度への価電子と内殻の寄与が、互いにかなり重なるとき、重大な系統誤差に至る。

この問題によって、系が内殻領域に強く浸透した価電子を有するとき(通常、これは遷移金属のd

バンドや希土類化合物のf状態のように非常に局

所化された外部状態である)、影響を受けるかもしれない。

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交換相関項の分離

厳密な解法は、価電子多様性における、価電子状態との強い重なりがある内殻状態を含むことであろう。

しかし、これは計算資源の観点から非常に高価になり、また波動関数を格納するためのより大きいスペースを必要とする。

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非線形内殻補正(NLCC)

交換相関エネルギーとポテンシャルを計算するとき、非線形内殻補正(NLCC)は、電荷密度に内殻の寄与を含むことの困難を、ある程度解決する。

その結果、交換相関エネルギーは以下(1.55)式のようになる。

ここで、内殻の寄与は「凍った」原子配置において固定されているとする(繰り返しの間はこれを更新しない)。

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磁性結晶と非線形内殻補正

磁性結晶を扱うときは特に、非線形内殻補正を導入する必要性が明白になる。

磁気分極ξは(1.28)式から、(スピン非分極の)内殻の寄与を含まない電荷密度を用いると導かれ、

となる。

しかし、これは誤って、系が有限磁化を獲得する傾向を高めてしまい、ξをかなり過大評価する。