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持続可能な開発目標実現のための ガバナンス研究 公益財団法人地球環境研究機関(IGES森秀行 環境研究総合推進費S-11Beyond MDGs Japan合同公開シンポジウム 「持続可能な開発目標(SDGs)とポスト2015年開発アジェンダ -国際論議の現状と実施へ向けた課題-」 2015116日(金)

持続可能な開発目標実現のための ガバナンス研究

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持続可能な開発目標実現のためのガバナンス研究

公益財団法人地球環境研究機関(IGES)森秀行

環境研究総合推進費S-11・Beyond MDGs Japan合同公開シンポジウム

「持続可能な開発目標(SDGs)とポスト2015年開発アジェンダ-国際論議の現状と実施へ向けた課題-」

2015年1月16日(金)

*( ) means a number of MOI elements mentioned in the various proposals

ガバナンス/実施手段(MOI)

Finance(25)

Trade and FDI (7)

International tax and financial

architecture and flows

(4)

General Resources and

Financing(4)

Climate finance

(2)

Domestic resource

mobilization(2)

Remittances(1)

ODA(6)

Technology(10)

Technology transfer and

sharing (8)

Science and Technology/

R&D(3)

Institutions(49)

Focus on decision making

(2)

Targets and timeframes

(1)

Implementation strategies/plans

(1)

Stakeholder involvement and

(global) partnerships

(8)

Access to information and justice

(3)

Education/Training

awareness(5)

Capabilities(2)

Capacity building for developing countries

(4)

Coordination, integration and

coherence (9)

International institutions

(4)

National Institutions

(4)

Legal instruments and rule of

law(2)

Monitoring and

evaluation(3)

Data quality, innovation

and availability

(3)

Environmental Impact

Assessment(1)

Intellectual Property

Rights(1)

サブテーマ1

サブテーマ2

サブテーマ3

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「持続可能な開発目標実施のためのマルチ・レベル・ガバナンスのあり方の検討」

Local level(Implementation)

Ultimate goalHuman Well Being

Resource BaseGlobal Public Goods

Agenda-setting

ImplementationProgress review

Monitoring & Evaluation

Agenda-setting

ImplementationProgress review

Monitoring & Evaluation

Agenda-setting

ImplementationProgress review

Monitoring & Evaluation

Global/regional Level (Goal/target setting, M&E)

National level(Translation/National goal/target setting)

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研究手法レベル 研究手法

1. 国際レベル• MDGsの進捗度・環境パファオーマンス指

標(EPI)に対するガバナンスの効果を分析

140以上の途上国を対象とし、回帰分析を実施

2. 地域レベル• MDGsの地域(もしくは準地域)レベルのガ

バナンス・実施に関する分析

MDGsに対するASEAN(主に制度面)の対応に関するレビュー

3. 国家レベル

• 持続可能な開発に関する国家戦略(NSDS)におけるガバナンスの役割を分析

アジア5カ国(インドネシア、韓国、ブー

タン、フィリピン、タイ)における優良事例の同定・比較

4. ローカル・レベル

• 主要国・主要セクターにボトムアップ・ガバナンスの効果に関する分析

インドネシアにおけるエネルギー分野でのボトムアップ・ガバナンスに関する優良事例の同定・比較

上記の分析結果を踏まえ、最終的に統合分析を行う(2015年度)

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主な研究結果①:国際レベル<ガバナンスとMDGs達成度>

Estimate Std. Error Pr(>|t|)(Intercept) 2.14481 0.97470 0.02954 *Voice -0.51998 0.28041 0.06595 .Stability 0.19472 0.26136 0.45761 Effectiveness 1.15278 0.68916 0.09678 .Regulatory -0.03561 0.45638 0.93793Law 1.20513 0.58361 0.04091 *Corruption -1.46227 0.54791 0.00858**

InGDP 0.11391 0.14666 0.43877

<ガバナンスと環境パフォーマンス(EPI)>

Estimate Std. Error Pr(>|t|)(Intercept) -10.52360 5.17192 0.0440 *Voice -0.77325 1.52605 0.6133Stability 1.81593 1.38457 0.1921 Effectiveness 9.09330 3.70172 0.0154 *Regulatory 0.02189 2.41327 0.9928Law 2.75421 3.14376 0.3827Corruption -7.71397 2.96985 0.0105 *

InGDP 5.59924 0.77095 3.79e-11***

• MDGs8の教訓から、ガバナンス目標・実施メカニズムに関する再検討・改善が必要。• ガバナンスはMDGsでも扱われたが、国・地方レベルでのガバナンスにより注目すべきである。• データー分析では、政府の有効性の向上がMDGsとEPIの達成度をより促すことを示唆。政府の

有効性は環境パフォーマンスへの影響がMDGs達成度に比べより強い。5

主な研究結果②:地域レベル• ASEANは、MDGs達成に向けた共同宣言(2007)やロードマップを策定(2009)し、ASEAN事務局を調整

役とし、各国政府にMDG担当窓口や研究チームも設け、各国政策への反映・実施に向けた道筋を構築。

• しかし、実施においては、MDGs担当窓口はASEAN組織内の政治・安全保障コミュニティに配置され、

ロードマップは社会文化コミュニティが作成するなど、分野横断的課題に関する調整不足により実施体制が不透明。政府・非政府主体の活動をモニタリング・評価する制度が不十分であった。

MDGロードマップの作成ASEAN加盟国

のMDGs担当窓口

共同宣言

UNDPやESCAP、ASEAN Regional Centre of Excellence for the MDGs (ARCMDGs)が実施に貢献。ただし、モニタリング・評価はASEAN全体としてではなく、各主体のものに

留まっている。

SDGsは、より広範

な課題を扱うため、各国の実施を促進するにはモニタリング・評価体制の見直しが必要。

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主な研究結果③:国家レベル

Country Leadershipand vision

Institutionalcoordination

StakeholderEngagement

Progressreview

Indonesia XX XXKorea XX XX XBhutan XX XX XPhilippines XX XX XXThailand XXX XXXOverallAssessment

Absence of one or more key elements governance in all countries’ strategies

持続可能な開発に関する国家戦略(NSDS)の策定・実施の進捗に関する優良事例をアジア5カ国(インドネシア、韓国、ブータン、フィリピン、タイ)にて比較調査。

• 政府の有効性を向上し実施を強化するためには、実施サイクルの4つの要素(リー

ダーシップとビジョン、組織間調整の強化、ステークホルダーの参加、進捗レビュー)を強化していくことが必要。

• 国レベルでの実施手段を考慮する際に、ステークホルダーの参加とモニタリング・レビューが特に重要になる

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インドネシアのMDGs事例

• 貧困削減や妊産婦死亡率等未達成の目標もあるも、MDGs実施における成功例。

• トップダウンの施策。2010年に大統領府、計画省にMDGsオフィスを設置し、主流化(予算、計画等)を図る。

• 34全ての州でMDGs行動計画と報告書を作成。

• 官民、NGO、学界等のマルチ・ステークホルダー参画を推進。

• MDGsは包括的ではなかったため、補完する必要があった。MDGsを実施することにより、実施手段等、欠如している部分が明確化された。

• 毎年大統領によりMDGs賞がMDGsの達成において最も躍進した地区に授与される。

MDGsの効果的な実施には、強いトップダウンのリーダーシップが重要。

データの精度にはまだまだ問題があり、達成の度合いも必ずしも正確であるとは言えない。

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実施のために重要な要素(Enabling Factors)• 国際的資金援助• 参加型計画策定と資金• 法と規則• 政府支援• 明確な目標設定• 地域自治• リーダーシップ• 情報共有Source: ‘Towards an Integrated

Framework for SDGs: Ultimate and Enabling Goals for the Case of Energy’, Nilsson, Lucas and Yoshida

主な研究結果④:ローカル・レベル<エネルギーとボトムアップ・ガバナンスの事例研究>

エネルギー効率の改善と再生可能エネルギーの導入に関してオーストリア、デンマーク、フィリピンの成功例、インドネシアの失敗事例から学んだ教訓の分析。

地域レベルではMDGsの影響が少なく、開発アジェンダに関する国レベルから地域レベルへの更なるアウトリーチが不可欠。

どのようなゴール/ターゲット/指標がエネルギー効率と再生可能エネルギー推進のためのSDGs/ポスト2015開発アジェンダにとって有用か?実施手段を統合した目標構造が適応可能か?

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主な研究結果(2015年1月時点)調査方法 主な研究結果

1. 国際レベル • MDGs8の教訓から、ガバナンス目標・実施メカニズムに関する再検討・改善が必要。• ガバナンスはMDGsでも扱われたが、国・地方レベルでのガバナンスにより注目すべ

きである。• データー分析では、政府の有効性の向上がMDGsとEPIの達成度をより促すことを示

唆。アジアでのSDGs実施に向けても政府の有効性の向上は重要。

2. 地域レベル • MDGsの各国政策への反映・実施に向けた道筋を構築した。

• 分野横断的課題に関する組織内の調整不足により実施体制が不透明、また、非政府主体の活動をモニタリング・評価する制度が不十分であることが明らかになった。

• SDGsは、より広範な課題を扱うため、各国の実施を促進するために、モニタリング・評価体制の見直しが必要。

3. 国家レベル • 政府の有効性を向上し実施を強化するためには、実施サイクルの4つの要素(リー

ダーシップとビジョン、組織間調整の強化、ステークホルダーの参加、進捗レビュー)を強化していくことが必要。

• 国レベルでの実施手段を考慮する際に、ステークホルダーの参加とモニタリング・レビューが特に重要になる。

4. ローカル・レベル

• 地域レベルではMDGsの影響が少なく、開発アジェンダに関する国レベルから地域レベルへの更なるアウトリーチが不可欠。

• エネルギー等の分野別目標には実施手段(means of implementation)を統合させることも有効か。

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国連事務総長 統合報告書への既存コメント

• ポスト2015年開発アジェンダに関する既存プロセス及びステークホルダーコンサルテーションの結果を包括的にと

りまとめている(IGES、Felix Dodds)。

• 開発アジェンダの進捗としてMDGsの成功を挙げるとともに、気候変動対策と適応を今後の課題として大きく取り

上げていることを評価する(IGES)。

• 「変革(Transformation)」を強調しているが、それを達成するための具体的な方策については言及していない

(IGES)。

• SDGs17の目標案の維持について歓迎し、6つの本質的要素はそれを補完するものと理解するが、目標案を削減

するための交渉に使われる可能性あり(IGES, Felix Dodds)。

• ガバナンスと制度の改善が実施手段の一つの重要な要素として取り扱われていることを歓迎(IGES)。

• 資金については、資金の専門家委員会の報告書を重視しているが、来年7月アディスアベバ会合での成果への期

待が大きい分、同会合が失敗に終わった時の代償が大きい可能性がある(IGES)。

• 技術ついては、最近検討委員会を立ち上げた技術バンク等しか目玉が見当たらない(Felix Dodds)。

• パートナーシップについても異なる形態のパートナーシップについてあまり明確に記載していない(Felix Dodds)。

• データ、モニタリングの言及とともに、「目的に適合した」国連システム等にも言及していることは評価に値するが、

具体的な記載がないため、SDGs合意後の重要な検討事項になると考えられる(IGES)。

*現在、SDSNやIRF2015(WRI, SEI, ODI, IIED等の国際研究コンソーシアム)、市民社会等が統合報告書へのコメントを準備中

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ご清聴ありがとうございました。

Institute for Global Environmental Strategies (IGES)

2108-11 Kamiyamaguchi, Hayama, Kanagawa,240-0115 Japan

Tel: +81-46-855-3700Fax: +81-46-855-3709

http://www.iges.or.jp/en/index.html

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