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Large Tape User Group (LTUG)Japan 映画におけるデジタル保存の課題について 『映画におけるデジタル保存・活用に関する調査研究事業』 東京国立近代美術館フィルムセンター デジタル映画保存・活用調査研究事業班 1/21 2016年11月9日(水) 東京国立近代美術館フィルムセンター デジタル映画保存・活用調査研究事業班(BDCプロジェクト) 岡本 直佐

LTUG Japan 2016 講演資料(公開版)

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映画におけるデジタル保存の課題について

『映画におけるデジタル保存・活用に関する調査研究事業』 東京国立近代美術館フィルムセンター デジタル映画保存・活用調査研究事業班 1/21

2016年11月9日(水) 東京国立近代美術館フィルムセンター

デジタル映画保存・活用調査研究事業班(BDCプロジェクト) 岡本 直佐

『映画におけるデジタル保存・活用に関する調査研究事業』 東京国立近代美術館フィルムセンター デジタル映画保存・活用調査研究事業班

本日の内容

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1. フィルムセンターのご紹介(『BDCプロジェクト』について)

2. 近年の、映画にまつわる状況

3. 映画におけるDigital Preservationの基本的な課題

4. 諸外国のアーカイブ組織に目を向けると

5. BDCプロジェクトの調査研究のご紹介

昭和27(1952)年に設置された国立近代美術館のフィルムライブラリー事業として始まり、昭和45(1970)年には機能を拡充する形でフィルムセンターとして開館しました。日本で唯一の国立映画機関として、国内外の映画フィルム及び映画関係資料の収集・保存・復元とこれらについての 調査・研究に携わるとともに、様々な刊行物を発行しています。

『映画におけるデジタル保存・活用に関する調査研究事業』 東京国立近代美術館フィルムセンター デジタル映画保存・活用調査研究事業班

フィルムセンター紹介

東京国立近代美術館フィルムセンターは…

フィルムセンタ― 京橋

上映 大ホール、小ホール

展示室

「フィルム保存棚」

図書室

京橋 相模原

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映画保存棟Ⅱ 映画保存棟Ⅰ

映画保存棟Ⅲ

BDC調査研究事業について (1/2)

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平成26年に文化庁の補助金事業である

「美術館・歴史博物館重点分野推進支援事業」 に採択され、

映画におけるデジタル保存・活用や、諸外国調査、人材育成 などについて調査研究を行っています。 事業名 『映画におけるデジタル保存・活用に関する調査研究』 実施期間 H26年7月1日~H29年3月31日 研究員 6名

別名 「BDCプロジェクト」

近年の、映画にまつわる状況

『映画におけるデジタル保存・活用に関する調査研究事業』 東京国立近代美術館フィルムセンター デジタル映画保存・活用調査研究事業班 5/21

『映画におけるデジタル保存・活用に関する調査研究事業』 東京国立近代美術館フィルムセンター デジタル映画保存・活用調査研究事業班 6/21

映画興行収入、全国スクリーン数 一般社団法人日本映画製作者連盟 http://www.eiren.org/toukei/index.html 日本のスクリーン数 「デジタルコンテンツ白書2014」/一般財団法人 デジタルコンテンツ協会 編 p222

劇映画の市場動向、デジタル化

- 2015年の劇映画興行収入は2,171億円(前年比104.9%)となり、2011年からおよそ継続した伸長傾向にある

- デジタル映画の普及により、フィルムを上映 する(できる)設備が少なくなってきている →2015年における映画館の

デジタル化対応は「97.4%」(3,351/3,437スクリーン)

近年の、映画にまつわる状況

2,060 2,207 1,811 1,951 1,942 2,070 2,171

0

500

1,000

1,500

2,000

2,500

2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015

劇映画興行収入(億円)

映画におけるDigital Preservationの基本的な課題

『映画におけるデジタル保存・活用に関する調査研究事業』 東京国立近代美術館フィルムセンター デジタル映画保存・活用調査研究事業班 7/21

視聴覚資料保存機関からの観点

メリットは認識するが、課題は山積

『The Digital Dilemma』では

THE DIGITAL DILEMMA;The Academy of Motion Picture Arts and Sciences, 2007 THE DIGITAL DILEMMA2;The Academy of Motion Picture Arts and Sciences, 2012

『ザ・デジタル・ジレンマ』 (邦訳版);慶応大学デジタルメディア・コンテンツ統合研究センター http://www.dmc.keio.ac.jp/digitalarchives/ro3mup000000151z.html

ハリウッドのデジタル映画保存の状況と合わせ、映画以外のジャンル(医療、軍事、地球科学)について調査(2007)

インディーズ映画と、視聴覚アーカイブ組織の現状について調査(2012)

→デジタルテクノロジーは、映画製作などに対して多大な恩恵を もたらしているものの、デジタルデータへの長期に渡るアクセスは 保証されていない。また、デジタルデータの維持費の捻出や 人材確保といった問題も大きい。

→デジタルでの恒久的な保存技術の問題を広く認知してもらうべく、 問題意識を共有するために、米国「映画芸術科学アカデミー(AMPAS)」が著し、 公開したドキュメント

映画におけるDigital Preservationの基本的な課題 (1/3)

8/21 『映画におけるデジタル保存・活用に関する調査研究事業』 東京国立近代美術館フィルムセンター デジタル映画保存・活用調査研究事業班

『映画におけるデジタル保存・活用に関する調査研究事業』 東京国立近代美術館フィルムセンター デジタル映画保存・活用調査研究事業班

映画におけるDigital Preservationの基本的な課題 (2/3)

“アーカイブは、マスターレベルのコンテンツを、長期にわたって 使用可能なアクセスの機能とともに、保管に適した状況で保存する。 ライブラリは、複写によって作られた所蔵品を要求に応じて貸し出す 一時的な保管場所といえる。 ”

前段として、 映画における「保存」と「活用」の意味合いとは、、、

THE DIGITAL DILEMMA;The Academy of Motion Picture Arts and Sciences, 2007

再度「The Digital Dilemma」を引用し、ここでは

「保存」:アーカイブ 「活用」:ライブラリ として解釈。

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『映画におけるデジタル保存・活用に関する調査研究事業』 東京国立近代美術館フィルムセンター デジタル映画保存・活用調査研究事業班

映画におけるDigital Preservationの基本的な課題 (3/3)

Film Digital

保存 保存

映画フィルムは、上映媒体=保存媒体でもあった。 デジタル映画では、何を・どうやって保存する?

「保存」

具体的には、、 - どのデータを保存? - どのような映像品質で保存? - どういうファイル・フォーマットで保存? - どんなメディアで保存? - どんな仕組み(システム)で保存?

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諸外国のアーカイブ組織に目を向けると

『映画におけるデジタル保存・活用に関する調査研究事業』 東京国立近代美術館フィルムセンター デジタル映画保存・活用調査研究事業班 11/21

『映画におけるデジタル保存・活用に関する調査研究事業』 東京国立近代美術館フィルムセンター デジタル映画保存・活用調査研究事業班

諸外国のアーカイブ組織に目を向けると (1/3)

日本国内ではまだまだ対応が進んでいない状況

Digital Preservationに必要な事項を分類しながら 組織的に対応することが求められている。すでに一般化

ポリシー、戦略

データストレージ

コンテンツ管理 システム

各種標準化 協調・

コミュニティ

人材育成 メタデータ

権利・利用制限 管理

対して、、

ドキュメンテーション管理

受入、アクセス 管理

などなど・・

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『映画におけるデジタル保存・活用に関する調査研究事業』 東京国立近代美術館フィルムセンター デジタル映画保存・活用調査研究事業班

諸外国のアーカイブ組織に目を向けると (2/3)

日本国内ではまだまだ対応が進んでいない状況

Digital Preservationに必要な事項を分類しながら 組織的に対応することが求められている。すでに一般化

ポリシー、戦略

データストレージ

コンテンツ管理 システム

各種標準化 協調・

コミュニティ

人材育成 メタデータ

権利・利用制限 管理

対して、日本では

ドキュメンテーション管理

受入、アクセス 管理

などなど・・

この部分についての 具体的事例を

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『映画におけるデジタル保存・活用に関する調査研究事業』 東京国立近代美術館フィルムセンター デジタル映画保存・活用調査研究事業班

諸外国のアーカイブ組織に目を向けると (3/3)

調査訪問した視聴覚アーカイブ組織では 『磁気テープストレージ』の利用が主流となっている状況

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当日のみ

『映画におけるデジタル保存・活用に関する調査研究事業』 東京国立近代美術館フィルムセンター デジタル映画保存・活用調査研究事業班

OAIS参照モデル(1/2)

海外において長期保存を目的としたシステムは OAIS参照モデルへの準拠が求められることが多い

(ISO14721:2003,2012)

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Preservation Planning

Data

Management

Ingest

Archival

Storage

Access

Administration

AIP AIP DIP

Descriptive

Info

Descriptive

Info CO

NSU

MER

PRO

DU

CER

MANAGEMENT

orders

result

querie

SIP

Content Infomation

(内容情報)

Preservation Descriptive Information

(保存記述情報)

Packaging Infomation(パッケージ情報)

Content Data Object

(データオブジェクト)

Representaion Information

(表現情報)

Reference(ID情報参照)

Provenance(来歴)

Context(他情報との関係)

Fixity(内容の不変性)

Access Rights(アクセス権)

Descriptive Information

(パッケージ記述情報)

■機能エンティティ ・情報パッケージを取り扱う流れ ・エンティティごとに詳細機能 ・組織・人・情報の役割を定義し 長期保存を実現を目指す

■情報パッケージ ・再生性や不変性に関する情報付加 ・保存対象をパッケージ化する ・単独でも意味理解が可能なこと ・物理的、論理的どちらでもOK

『映画におけるデジタル保存・活用に関する調査研究事業』 東京国立近代美術館フィルムセンター デジタル映画保存・活用調査研究事業班

OAIS参照モデル(2/2)

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当日のみ

BDCプロジェクトの調査研究のご紹介 (一側面に注目しての紹介ですが)

『映画におけるデジタル保存・活用に関する調査研究事業』 東京国立近代美術館フィルムセンター デジタル映画保存・活用調査研究事業班 17/21

『映画におけるデジタル保存・活用に関する調査研究事業』 東京国立近代美術館フィルムセンター デジタル映画保存・活用調査研究事業班

BDCプロジェクトの調査研究のご紹介(1/3)

■背景 ・フィルムセンターでは映画フィルムのデジタル化や、デジタル修復等を実施 しており、デジタルコンテンツを生成している。データをLTOテープやHDD等に格納し、棚置きでの管理を行っているというのが現状である。 ・デジタルコンテンツに関わる情報については、既存の『所蔵品管理システム』では十分な情報管理が行えない。

や データ化

■課題 - Bit Preservation:保存メディアやストレージ装置、定期的なデータチェック - マイグレーション(ファイル/媒体フォーマット変換の問題) - 体系的な情報管理(情報の検索・発見性能) - オープンな技術であること(ベンダー依存、技術的依存度など) - アプリケーションの変化:経時的、互換性、陳腐化 - 標準化への準拠 - セキュリティ などなど

参考 The Problems Of Long Term Digital Archive http://www.snia.org/sites/default/files/100-Yr-Archive-Task-Force-Overview_20060927.pdf

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『映画におけるデジタル保存・活用に関する調査研究事業』 東京国立近代美術館フィルムセンター デジタル映画保存・活用調査研究事業班

BDCプロジェクトの調査研究のご紹介(2/3)

ポリシー、戦略

データストレージ

コンテンツ管理 システム

協調・ コミュニティ

人材育成

権利・利用制限 管理

ドキュメンテーション管理

などなど・・

・データモデルの適用 ・メタデータスキーマの検討

メタデータ

各種標準化

受入、アクセス 管理

・OAIS参照モデルの適用

・LTOテープライブラリの試験導入(LTFS)

・Fixityチェック、アンチウィルスチェック、マイグレーションなどのコスト検討

・CMSの試験導入

調査研究における実施事項の一例

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『映画におけるデジタル保存・活用に関する調査研究事業』 東京国立近代美術館フィルムセンター デジタル映画保存・活用調査研究事業班

BDCプロジェクトの調査研究のご紹介(3/3)

“月並みな事項ばかりですが、やはり重要であるということを再認識” - コストの観点が重要に

→運用面から考えるとテープストレージにも課題あり:

シーケンシャルアクセスという特性をカバーできるソリューションを期待

- オープン、ベンダーロックインの観点 →LTO継続性に問題があるやなしや(manufacturerの問題)

- ひとを含む意味の「システム」全体の持続可能性(サステナビリティ)が重要 - 技術は常に変化しており、情報は継続的に追っていく必要がある

- 人を育てる、 - 国立アーカイブとして、多方面・業界間での協調を - 国内では文化資源のデジタル・アーカイブはまだまだすべきことがたくさん

文化資源のデジタル・アーカイブにご関心がありましたら 是非とも情報交換させてください。

よろしくお願いいたします。

まとめ・所感

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『映画におけるデジタル保存・活用に関する調査研究事業』 東京国立近代美術館フィルムセンター デジタル映画保存・活用調査研究事業班

ご意見・ご質問等ありましたら、 [email protected]

BDCプロジェクトは、事業紹介ページやブログを運営しています。 是非ともアクセスください。

http://www.momat.go.jp/fc/research/bdcproject/ http://www.momat.go.jp/nfc_bdc_blog/

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