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webを利⽤した 通学路の交通安全 ⼟⽊計画学研究発表会 平成27年6⽉6⽇ 国⼟交通省 国⼟技術政策総合研究所(国総研) 稲野 1

web を利用した通学路の交通安全

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webを利⽤した通学路の交通安全

⼟⽊計画学研究発表会 平成27年6⽉6⽇国⼟交通省 国⼟技術政策総合研究所(国総研)

稲野 茂1

注意事項

①市町村の通学路の交通安全対策を効率化する実務⼿法の提案

②個⼈主観を含む研究段階のもの③国⼟交通省として決まったものではない

2

通学路の交通安全3つの課題

①対策が必要な課題箇所の抽出– どこで、どんな対策をすべきか?– 予算が少ない中、どう調査するのか?

② 住⺠との合意形成– 対策提案に反対されるケースもある

③ ⾏政側の⼈員・予算不⾜

3

① 課題箇所抽出と対策⽴案が容易② 合意形成がスムーズ③ 少ない⼈員・予算で調査可

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効率的・効果的に交通安全対策

webを⽤いて住⺠意⾒を調査

1.事例箇所の概要2.Web調査の概要3.対策の概要4.考察

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つくば市内要(かなめ)⼩学校の通学路

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⼩学校周辺の通学路の実態

⻄側を通⾏

東側を通⾏

⻄側を通⾏

北側を通⾏

N

8

9

急ブレーキデータの活⽤埼⽟県の事例

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急ブレーキ多発地点(⻘マーク)幹線道路に5箇所のみ⼩学校周辺道路にはゼロ

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本⽥技研⼯業㈱ SAFETY MAP

幹線道路と⽣活道路交通安全対策について

幹線道路交通量 多い

事故データ等のサンプル数が多い

既存データに基づく対策が有効

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⽣活道路交通量 少ない

現状、事故データ等のサンプル数が少ない

既存データに基づく対策が困難

交通量が少ない⽣活道路課題箇所の抽出⽅法

事故データや急ブレーキデータサンプル数が少ない。

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住⺠意⾒を調査例えば、アンケート調査、ワークショップ

アンケート調査の課題

調査票の設計、配布・回収、集計・分析労⼒・コストがかかる

電⼦メールでもたいして変わらない

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ワークショップの課題近年、参加者が集まりにくい集まるのは⾼齢者が中⼼⾏政の負担⼤住⺠の負担⼤

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住⺠意⾒をwebで調査

HondaのSAFETY MAPWebサイトを活⽤して住⺠⽬線による

交通安全の課題箇所を調査

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SAFETY MAPとは、「急ブレーキ多発地点」や「事故の多いエリア」そして、「みんなが追加した地点」などを、確認することができる地図サービスです。(HONDA SAFETY MAP のwebページより引⽤)

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SAFETY MAP• 本⽥技研⼯業㈱によるwebサイト• 交通安全の課題箇所と内容を、誰でも投稿・閲覧(共有)

• 利⽤は、無料• 事故多発エリア(警察等の情報)と急ブレーキ多発地点(インターナビ情報)を地図上に提⽰

• ストリートビューとの連動

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1.事例箇所の概要2.Web調査の概要3.対策の概要4.考察

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調査から対策までの流れ⼩学校を通じて保護者へ

通学路の課題箇所のweb⼊⼒を依頼

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現地踏査・状況確認⼊⼒された情報に基づき対策を⽴案

関係者へ対策案を説明

web(SAFETY MAP)へ⼊⼒を依頼した結果

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依頼から約1ヶ⽉後

29箇所(195件)の情報が⼊⼒

つくば市との調整により対策実施は⼩学校周辺

11箇所(136件)に絞り込む

対策を⾏う11箇所22

11箇所に⼊⼒された意⾒23

道路が狭い・歩道がない

スピー

ドが出ている車が多い

見通しが悪い

歩行者・自転車の飛出しが多い

ハンプ

狭さく

シケイン

路側帯整備

路面表示または看板

その他

① 4 3 3 2 △ ○

② 4 6 7 2 見通しが悪く、左折する車にひかれそうになった 3 ○ ○ 植栽の剪定

③ 2 2 2 0 県道からスピードを出して曲がってくる車が多い 1 ○

④ 1 1 0 0 狭いが交通量が多く車同士すれ違いの際は歩行者が危険 1 ○

⑤ 7 6 7 3 ○ 植栽の剪定

⑥ 0 0 2 0 ○ ○ 植栽の剪定

⑦ 7 7 8 4 変速十字路のためと、カーブミラー等がない 1 ○ ○ 植栽の剪定

⑧ 0 2 1 0 ○

⑨ 6 6 6 3 ○

⑩ 0 0 0 0 私物が道路上に出ていて、すれ違いの際危険である 1 路上占用物の撤去

⑪ 3 4 6 1 以前あった停止線が工事で消えたままになっている 1 ○ 停止線の設置

対策(案)

地点 その他

みんなの意見(人)

※Safety Mapの入力情報は、10月20日時点ものである。

意⾒に対応した対策⽴案の考え⽅

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1. 道路が狭い–路肩のカラー化

2. スピードを出している⾞が多い–ハンプ、スムース横断歩道、狭さく

3. ⾒通しが悪い–⽀障物除去、カーブミラー

4. その他全般–路⾯表⽰や看板による注意喚起

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住⺠へ説明問題なく合意形成

11箇所、136件の意⾒情報現地踏査・状況確認

つくば市と調整の上、対策を⽴案

対策を実施

1.事例箇所の概要2.Web調査の概要3.対策の概要4.考察

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実施した対策スムース横断歩道

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実施した対策ハンプ+狭さく+路肩カラー化

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実施した対策路肩カラー化+路⾯注意喚起

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実施した対策スリムハンプ

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実施した対策交差点狭さく+路肩カラー化

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実施した対策ゾーン30表⽰と様々な注意喚起

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実施した対策路肩のカラー化

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1.事例箇所の概要2.Web調査の概要3.対策の概要4.考察

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事例をざっくりまとめると35

①⼩学⽣の保護者に対して、Web(SAFETY MAP)調査を依頼

②交通安全の課題箇所の情報が得られる③現地踏査・状況確認の上、⼊⼒された情報に基づき交通安全対策を⽴案

④合意形成がスムーズ⑤効率的・低コストに実施できた⑥対策を施⼯

考察1 web調査は成功36

⼩学校の保護者に対して、Web(SAFETY MAP)を⽤いて、通学路の課題箇所の情報⼊⼒を依頼

必要な情報が得られた。調査コストはゼロ対策⽴案が容易

考察2 web調査は好評37

Web(SAFETY MAP)調査に対して保護者のナマの声

好きな時間に⾃宅のPCで他者の意⾒を参考に簡単に意⾒を⼊⼒わざわざ集まる必要がなくて、便利❤

web調査成功の要因推測38

調査対象者の選定• 依頼した⼩学⽣保護者のパソコンスキルが、必要⽔準にあった

• 仮に、⾃治会等を窓⼝に依頼することを想定すると、⾃治会⻑等は⾼齢者が多く、パソコンスキルは低いと想定され、調査を受け⼊れられない可能性も。

Webを使えない⼈対策39

案1昔の⾮効率な⼿法に戻す。全員が使えるものしか認めない。案2近くの⼈が⼿助けする。効率的なweb調査を基本とする。

考察3 合意形成への影響要因40

合意形成がスムーズに進んだ要因

1. ⽩紙状態から保護者の意⾒を調査し、これに基づき進めたこと

2. 個別の対策内容が、⽤地買収を伴わない内容であったこと

3. ハンプに近接した⼈家が無い

仮説 合意形成41

⽩紙状態から住⺠の意⾒を調査しこれに基づき対策を提案

合意形成がスムーズに進む⼀つの事例に過ぎないが、

⼿応えとして、多くの箇所で同じ展開になるかも

ネガティブ意⾒は杞憂42

⽩紙状態から、住⺠意⾒を調査・活⽤することに対するネガティブ意⾒①対応困難な意⾒が出され、その実施を強く求められたらどうするのか

②苦情的内容がほとんどで、対策⽴案に使える情報は得られない

取り越し苦労、杞憂(きゆう)

今回の特徴43

⽩紙状態から住⺠の意⾒を調査しこれに基づき対策を提案

事故データや交通挙動データ実質的に使わず対策⽴案研究の過程として、念のため参照したが、

実質的な対策⽴案時には、データは⼀切使っていない。

市町村による⽣活道路の交通安全

計画調査

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多額な予算、⼿間を要する⼿法は実⾏されない。

少ない予算、省⼒化された⼿法でなければ、実⾏されない

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評価1⾮常識、⾮科学的、教科書に書いてない

交通量が少ない⽣活道路の交通安全住⺠意⾒だけに基づき対策⽴案事故データや交通挙動データは、

基本的に調べない、使わない。必要に応じて参照程度

評価2従来常識を超えた新たな効率的⼿法

機能を削って⼤ヒット46

⼩学6年⽣のパソコン授業でSAFETY MAPを活⽤

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仮説 より効果的な交通安全当事者である⼩学⽣の参画

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1. 地域の課題解決には当事者の参画が重要2. 通学路の交通事故の当事者は、⼩学⽣と運転者等

3. ⼩学⽣を当事者として参画させることで、交通安全がより効果的になるかも

4. 例えば–⾼学年には授業でweb調査と情報閲覧–⾼学年から下級⽣へ、登下校時の指導など

情報共有と更新のメリット49

1. 交通安全の課題箇所の情報共有だけで、注意喚起による効果が期待される。

2. ヒヤリ・ハットマップ作成も基本同じ3. Webは常に最新情報が得られるメリットあり

4. ヒヤリ・ハットマップは、作成労⼒が⼤きく、更新されにくいデメリットあり

⾒⽅を変えると今回の事例の位置付けは..

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インターネットPC,スマホなどIT機器普及と活⽤スキルアップ

地域の課題解決に向けてICTを活⽤した住⺠参加

地域(⽣活空間)の課題解決・改善には、住⺠参加が不可⽋この際、ICT活⽤調査は、住⺠と⾏政双⽅にメリットあり

異分野の事例と⽐較51

同じ発想で交通安全を推進

⾷べログ価格コム掲⽰板

⾷べログ52

1. 飲⾷店利⽤者が、料理やサービス等の感想を投稿

2. 他者は、投稿を閲覧・参考に、どの飲⾷店に⾏くか検討する。

3. 飲⾷店側は、投稿を閲覧して、メニューやサービス改善の参考にする。

価格コム掲⽰板53

1. 製品の購⼊者等が、製品に対する感想等を投稿

2. 他者は、投稿を閲覧・参考に、当該製品の購⼊を検討する。

3. 製品の開発担当者は、投稿を閲覧して、次期製品の開発・改良の参考にする。

web を利⽤した交通安全54

1. 地元住⺠が、交通安全上の課題箇所の情報をweb(SAFETY MAP)に投稿

2. 他者は、投稿を閲覧・参考に、道路を利⽤する。皆が危ないと投稿された場所では、特に注意する。

3. ⾏政(道路管理者等)は、投稿を閲覧し、これを参考に交通安全対策を進める。

総括 webの活⽤55

1. 交通量が少ない通学路の交通安全を効率的・効果的に進める可能性がある。

2. 住⺠の意⾒聴取が容易となり、新たな住⺠参画の⼿法として、様々な展開・効果が期待される。

やってみなはれ

やらなわからしまへんで

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サントリー創業者 ⿃井信治郎 の⾔葉

⼩理屈を並べても、物事は運ばない。とにかく実⾏して、そこから学びながら、

次のアクションを考えたらええ。