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08 臨床教育の方法論

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Page 1: 08 臨床教育の方法論

臨床教育の方法論

大西弘高医学教育国際研究センター

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臨床教育の悩み        

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概要1. 組織 (チーム )構築2. スケジュール管理3. 教育と業務のバランス

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1. 組織 (チーム )構築

医学生

研修医

指導医

指導医 (管理医 ),研修医 (初期・後期 ),医学生のバランス

病床数,研修医 -患者比,チーム内患者数 各チームの受け持ち患者数は適度に

患者に圧迫感を与えない

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組織の風土,文化~教育組織構築と臨床教育~

研修医(卒後2~3年目)

指導医

研修医学生

管理医

指導医

屋根瓦式研修組織従来型研修組織

指導医と研修医,管理者と指導医の立場の近さ 討論がしやすく,ベッドサイドで違和感のない人数

1年目研修医,学生

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なぜ屋根瓦? University of Geneva, Switzerland

医学生

チーフレジデント

指導医

レジデント

15% 14%33%

23%

34%37%

15% 29%

Acad Med 1998;73(Suppl.10):S54-S56

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チームの具体例 ある内科専門科は 50床が定床で, 3チームに分かれ,卒後 10年程度の指導医が 3名 ,後期研修医が 3名,初期研修医が 2名で構成された

1チームあたり指導医 1名,後期研修医 1名,初期研修医は 0~ 1名

主治医は指導医ないしは後期研修医 後期研修医のみのチームは指導医がやや若めで,患者数は 13~ 14名程度.他のチームは 17~ 18名程度

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米国での医学生を含めたチームアプローチ

管理回診 医学生や初期研修医は個人回診で集めた情報について症例プレゼンテーション

後期研修医は初期研修医や医学生にフィードバック

チームで全患者を回り,問診や診察の方法を学習

教育回診 研修医は,管理回診において教育に適した症例を選択

指導医は,特に初期研修医,医学生に対して質問を投げかけながら指導

医学生( 3~4年生) :1 収集した患者情報のプレゼンテーション及び記録

2 独立した診療に向けた学習3 患者ケア実施において初期研修医を補助

初期研修医 :1. 業務オーダーによる患者ケア管理2. 後期研修医の監督下で患者ケア内容を決断3. 収集した患者情報のプレゼンテーション及び記録

後期研修医 :1. 大抵の患者ケア内容を決断2. 初期研修医や医学生のチームの管理3. 初期研修医・医学生への指導

指導医 :1. 他部門との調整2. 研修医や学生の指導3. 患者ケアに対する責任

各自の役割

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医学生( 3~4年生) :1 収集した患者情報のプレゼンテーション及び記録

2 独立した診療に向けた学習3 患者ケア実施において初期研修医を補助

初期研修医 :1.業務オーダーによる患者ケア管理2.後期研修医の監督下で患者ケア内容を決断3.収集した患者情報のプレゼンテーション及び記録

後期研修医 :1.大抵の患者ケア内容を決断2.初期研修医や医学生のチームの管理

3.初期研修医・医学生への指導

指導医 :1.他部門との調整2.研修医や学生の指導3.患者ケアに対する責任

各自の役割

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職務記述書 (Job Description) 職務内容を記述した雇用管理文書 業務の困難度と量,賃金を関連づける 例 ) 後期研修医 :

大抵の臨床的な意思決定を行う 医学生や初期研修医を管理 現場において医学生や初期研修医を指導

目的 職務記述書の共有により協力関係を作る 職務に対する当事者意識を醸成する

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多職種協働と職務範囲 採血 維持輸液 化学療法の点滴 ・・・

医師以外の職種に任せられる職務は任せた方が賃金が安いのならそうした方がよい?

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回診

管理回診 医学生や初期研修医は個人回診で集めた情報について症例プレゼンテーション

後期研修医は初期研修医や医学生にフィードバック

チームで全患者を回り,問診や診察の方法を学習

教育回診 研修医は,管理回診において教育に適した症例を選択

指導医は,特に初期研修医,医学生に対して質問を投げかけながら指導

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2. スケジュール管理米国での各科回診開始時刻内科・小児科 産婦人科 外科

個人回診7:00~8:00 病歴と診察 症例提示の準備

管理回診8:00~9:30

個人回診6:00~7:00 傷とドレーンの 確認

管理回診7:00~8:00

個人回診5:30~6:30 傷,ドレーン, 腸蠕動 ( 排ガス ) の確認

管理回診6:30~8:00(セイントとフランシスの病棟実習・研修ガイ

ド, 2009)

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週間スケジュールの違い 内科,小児科など

毎日の業務はあまり大きくは変わらない 外科系

手術日はウィークデイ前半に多い 金曜に次週の手術カンファレンスなど

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考慮すべき点 現場業務とその管理のバランス 業務と教育のバランス,配分 他の職種,他科などとの話し合い 長期的な成長戦略 誰かが抜けた場合のバックアップ体制

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長期的成長戦略タイムマネジメント,キャリア開発なども同じ図

重要性

緊急

放置ゾーン

優先ゾーンとりあえず手をつけるゾーン

放置リスクゾーン

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3. 教育と業務のバランス 誰が最も現場教育を担っているのか 教育と管理 (教育管理と診療管理 )の区

別 医学生による診療参加とは

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臨床現場における学習・診療・管理のバランス

医学生 初期研修医・ 後期研修医  指導医18

患者診療のサービス提供

管理業務

臨床教育機能

学習

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FD(faculty development) の主たる対象は? FD :指導医の指導スキルの向上活動 指導医のトップレベルだと,管理業務が多いため,環境改善などが中心に

指導医の若手~中堅が一般的な対象 後期研修医 ( その準備段階としての初期も )が実は FDの対象者として非常に重要

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3種類の回診 個人回診:医学生や研修医が管理回診前に自ら診察し,自分なりの意思決定方針を考える

管理回診:指導・管理担当者がチーム内の全患者の診療状況を把握.指導のポイントを伝えることも

指導回診:指導に適した症例を選び,指導者のトップなどが 30~45分などかけて徹底的に議論して医学生や研修医に考えさせる

回診前後にカンファレンスを組み合わせることも

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回診

管理回診 医学生や初期研修医は個人回診で集めた情報について症例プレゼンテーション

後期研修医は初期研修医や医学生にフィードバック

チームで全患者を回り,問診や診察の方法を学習

教育回診 研修医は,管理回診において教育に適した症例を選択

指導医は,特に初期研修医,医学生に対して質問を投げかけながら指導

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教育活動の分類

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場所 目的

管理回診 病棟 患者の管理

教育回診 病棟 臨床教育

症例カンファレンス 小部屋など 臨床教育

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回診・カンファレンスでの教育内容 臨床推論のプロセス

鑑別診断とその理由を尋ねる 身体診察所見

学生の診察所見が正しいかどうか確認 治療に関する方針決定

治療の決定とその理由を確認

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個人回診 :学生による病歴聴取

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管理回診 :症例提示

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管理回診 :後期研修医からのフィードバック

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教育回診:ベッドサイド教育

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教育回診:廊下でのミニ講義

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回診の一般的ルール 患者さんを不快にさせることの禁止

肌を不必要に露出する 不適切に個人的な質問をする 患者さんの秘密の情報を口にする 患者さんの不健康な行動を責め立てる 多数の学生が何度も不快な診察をする ベッドサイドの学生数が多すぎる 患者さんの疾患について不快な形で口にする

学生を不快にすることの禁止 学生が担当している患者の前で学生を不必要に叱責する,行き過ぎた指導をする・・・

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学生による初診外来実習

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例)医学生による 24 時間救急当直

学生が常に誰か病院にいることで患者ケア,病院管理,地域サービスに対して貢献しているという意識が芽生える

多くの患者は夜間救急から入院 学生は,直接患者を診察し処置を手伝う機会が,より得やすい

臨床推論学習には非常に役立つ場

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最近接発達領域 (ZPD: zone of proximal development)

最近接発達領域 (Z

PD)

チャレンジのレベル

コンピテンスのレベル

後に自分でできるようになる

自分で達成できるしかし退屈に・・・助け

があれば達成

できる

「よりよく知る誰か」の支援で足場かけが生じる

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単独診療行為の独り立ち例)外来診療 指導医の外来を見学 (業務補助 ) 指導医の監督下で診療 指導医に病歴聴取後 (診察後 )に確認 指導医に問題ありそうな事例を相談 独り立ち (場合によってはコンサルテーションや紹介 )

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学生による診療録記載

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クラークシップとは クラーク=事務職員 医学生をクラークのように使う 日常的な病歴&診察の業務とその記録を医学生にさせることで,業務を学ばせる

医学生の診療録記載はその意味で重要性が高い

上手くいっているかどうかを知る質問:医学生がいて診療の補助になりますか

例えば内科なら, 2 カ月いれば医学生でも現場で役立つ存在になれるのでは

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診断推論学習の原則 数多く診る

臨床問題演習もよい.しかし現場に勝るものなし.

幅広く診る 偏った経験は偏った頭(ネットワーク)を形成する

他の人の真似をする必要はなし 十人十色.達人の真似がいいという保証はない

でも達人の考え方は,時に役に立つ しっかり振り返る

上手くいかなかった経験は学びの宝庫

省察的実践

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省察的実践 (Schön) 専門職になるための理論的内容 (例:基礎医学 )は,現場での実践的な問題点 (例:患者の問題 )に対し,多くの場合有用でない

Schönは,医師・教師・弁護士のような専門職は現場での問題解決を行っているが,その問題解決のプロセスの途中に様々な省察をしていること (reflection-in-action) を指摘した 診断仮説を想起し,その診断仮説が正しいかどうか確認するのも省察の一つ

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予期しなかった出来事・驚きが省察を喚起 Reflection in action : 問題解決中に省察 Reflection on action : 問題解決後に省察 例えば,「主訴,病歴から想起すべき重要な鑑別診断が思い付かない!」

驚きや気づき → 省察 → 理論化 → 実践応用 省察は「振り返り」と同義と考えて良い

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振り返り・省察とは? 自らの行為中,行為後に,あるべき姿で行

為がなされていたかどうかを確認する心的作業

問題解決後に省察すること (reflection-on-action)によって問題解決中の省察(reflection-in-action)が高められる

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臨床推論と振り返り 臨床推論の途中

病歴を聴きながら,鑑別診断を想起するが,何か重要な鑑別診断が思い付かないままな気がする

除外したい鑑別診断があるものの,それを効果的に除外するための質問のポイントを忘れてしまった !

臨床推論後 カンファレンスの準備中に,重要な所見を取り忘れていると気づいた !

命に関わる重要な疾患を見逃していると,指導医に指摘された !

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経験を省察するためのサイクル( Kolb, 1984)

概念化

省察

患者との面接を通じた学習での例 経験  : 診断過程を省察しつつ面

接 省察  : 症例提示前準備.鑑別診断 は十分か.症状・所見の情報 に抜けはないか.症例提示 中・後にも振り返り.

概念化 : 今回の診断過程の問題点, 課題を次の教訓に

実験  : 概念化したコツ・新たな考え方 を次の面接に活かす

経験

実験

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仕事

継続的仕事と継続的学習(Watkins & Marsick, 1992)

経験を枠組みの中に位置づける

文脈を解釈する

行為を省察する

意図した結果と意図しなかった結果を評価する

経験への挑戦

次のステップ

を計画する

解決策を生み出す

代替案を検討する

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学習する組織の行為原則(Watkins & Marsick, 1992)

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⑥組織と環境とを結合

⑤集合的ビジョンに向けてエンパワーメント

④学習を取り込み共有するシステムの確立

③共同関係とチーム学習を奨励

②探求と対話を奨励

①継続的学習の機会を創造

継続的学習と

継続的変革

社会

組織

チーム

個人

学習はこの4つのレベルで生じる

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症例提示症例提示の役割1. コミュニケーション・ツール

2. 準備のときに学生はより深く学べる(省察的実践) 指導医

後期研修医

初期研修医

医学生

3. 学生は症例提示の後にフィードバックを受けられる

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外来での臨床推論教育の簡便な手法5つのマイクロスキル (One-minute Preceptor)

1. 研修医自身の考えを尋ねる

2. なぜそう思うかをさらに質問する3. 一般論を簡単に説明する

4. 上手くできている点は褒める5. 間違いを正す

(Neher et al. A five-step "microskills" model of clinical teaching. J Am Board Fam Pract 5:419-424,1992)

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One-minute Preceptor :さらに簡略化した方法

1. 何だと思う (診断,マネジメント )?

2. なぜそう思うの? (根拠を問う )3. 私は~だと思う4. 何か教訓はあった?5. さらに調べてみたいことは?

振り返りの促進

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ディスカッションのテーマ グループの誰かの施設において採り上げたい教育チームを分析し,現状の問題を挙げ,解決策を探って下さい