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2016.9.30 急性呼吸器感染症に対する抗菌薬治療

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Introduction ・欧米では平均すると一人当たり 6カ月~ 3年に 1回の頻度で経口抗菌薬を処方されている。 ・抗菌薬は副作用の多い薬物であるが、その報告の多くが controlと比較されていない case reportsである。 ・ Acute nonspecific respiratory infection( ARI)で外来受診する成人患者数は UKでは 200万人 /年、 USでは 4600万人 /年以上とされる。 ・溶連菌性咽頭炎などの細菌性の急性局所感染とは異なり、急性鼻咽頭炎や急性気管支炎では抗菌薬の有用性を示した研究は少ない。 ・こうした研究の多くは比較的小規模であり、治癒までの期間や重篤な細菌感染症への進行といった小さいながら明らかに有意な臨床的有用性を示すには検出力不足であったかもしれない。

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・ ARIは頻度の高い病態なので、たとえ抗菌薬の効果が小さくても、公衆衛生上は大きな影響があるかもしれない。・多くのガイドラインで ARIに抗菌薬を処方しないことを勧めているが、 ARIと診断された患者のうち約半数が抗菌薬の処方を受けている。・ RCTの設定は可能であるが稀な outcomeを定量する規模の trialは現実的ではない。➡患者の期待や臨床医の診療パターンといった非医学的要素に基づいた抗菌薬の処方決定された状況で、 risks and benefitsを比較する方法がある。

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・本研究の目的は、 ARIの外来患者において抗菌薬投与の有無によって、重篤な有害事象の出現や、市中肺炎のリスクを推定すること。・似たような状態の患者に限定することで、抗菌薬の有無による差を比較した。○仮説抗菌薬によって重篤な有害事象のリスクは増加するが、市中肺炎による入院のリスクは減少する。

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Methods ・ UKの The Health Improvement Network(THIN)を用いたretrospective cohort study。THIN: primary care electronic medical record databaseのひとつ。・ 1985.1.1~ 2006.12.31に登録されていた 18歳以上の患者。・抗菌薬治療が推奨される細菌性感染が明らかな例は除外。Eg)市中肺炎、慢性気管支炎の急性増悪・結核、真菌、寄生虫感染症は除外。・抗菌薬投与期間にかかわらず、開始から 15日間を primary windowと設定。

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Primary outcome15日以内の重篤な有害事象による入院不整脈、下痢、肝障害、過敏症、光毒性、腎傷害、けいれんSecondary outcome14日以内の有害事象による外来通院Primary pneumonia outcome15日以内の市中肺炎による入院

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・抗菌薬の種類ごとにサブ解析を実施。β-lactam、macrolide、 fluoroquinolone vs. control

・共変数は年齢、性別、受診年、併存症、異なる classの処方の数、初診時以前の THIN受診回数など。これらにより調整解析を実施。

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Analysis ・ Fixed-effects conditional linear regression解析を実施。※simulationでは今回の稀な outcomeでも信頼できる推定が可能だった。 Sensitivity analysis ・有害事象、肺炎ともに期間を 30日間に拡大した検討。   ・肺炎については初診から 1日以内の入院は除外した検討。  ➡初診の診断が間違っている可能性を考慮。 2-15日目の入院。 ・急性気管支炎はほかの ARIと異なっている可能性がある。➡急性気管支炎のみを別に検討。 ・検証のため propencity scoreを用いた解析や crossover-cohort解析などを実施。➡primary analysisと矛盾しないことを確認。

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Results 326施設、平均 4696 名( 24 – 27,190 名)全患者数: 1,646,229 名解析対称: 1,531,019 名気管支炎: 361,553 名

・ ARIの 65%に抗菌薬が処方。・施設によって抗菌薬の処方割合は 3~95%

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・使用頻度の高い抗菌薬アモキシシリン   51.2%ペニシリン   17.0%エリスロマイシン  12.7%

抗菌薬の内訳

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・入院が必要な重篤な副作用  126例・ 15日間では、  抗菌薬処方群: 8.48/ 10万人  非処方群: 7.75/ 10万人

・調整後の risk difference: -1.07/10万人・抗菌薬ごとの比較でも有意差はなし・軽症の有害事象については、調整後 risk difference: 55.58/10万人で抗菌薬処方群で有意に多い( p<0.001 )

有害事象

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抗菌薬治療により市中肺炎による入院はわずかに減少するIncidence rate( 15日間)抗菌薬治療群: 17.96/10万人対照群: 21.93/10万人Crude risk difference: 3.97/10万人Adjusted risk difference: 8.16/10万人 p=0.002NNT=12,225

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初診から 1日以内の入院を除外Risk difference: 4.38/10万人 p=0.068

急性気管支炎( 361,553例)を除外Risk difference: 9.01/10万人 p<0.001

急性気管支炎のみを解析Risk difference: 37.26/10万人 p=0.001 ( NNT=2,684 )

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Discussion ・ ARIに対する抗菌薬処方では重篤な有害事象は増加しなかった。・外来 followが必要な軽症の有害事象は 55.58/10万人増加した。➡医療資源が必要になったり、仕事を休まなければならなくなる。ただし、抗菌薬処方群ではより報告されやすいのかもしれない。・ ARIにに対して抗菌薬治療を行うと市中肺炎の入院は 8.16/10万人減少する。➡NNT = 12,255

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・ Petersen et al.:抗菌薬治療を行うと、肺炎の発症を抑制できる。               BMJ 2007

upper respiratory tract infection➡cest infection: odds ratio 0.64chest infection➡pneumonia: odds ratio 0.22 – 0.35 (年齢による )※ レントゲンが撮れない場合も多いので chest infectionは気管支炎だけでなく肺炎も最初から含んでいる可能性がある。➡今回の結果と直接比較はできない。・データが正確ではない可能性がある。 THINの処方データは正確だが、実際に内服されたかは不明。➡バイアスがかかる可能性がある。・ランダム化されていない。➡THINから得られる characteristicsで調整しても結果は変わらなかった。

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・肺炎で入院した多くの患者は初診から 1日以内に入院していた。➡初診時の ARIの診断が誤っている可能性がある。これらの早期の入院を除外すると抗菌薬の効果がより正確にわかるかもしれない。・成人を対象にした studyなので子供にはそのまま適応できない。・耐性の出現を考慮すると抗菌薬の処方は減らしたいが、医師ー患者の関係もあり、社会的に難しい場面もある。

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Conclusion 急性非複雑性呼吸器感染症( ARI )に対して抗菌薬治療を行っても重篤な有害事象の増加はないが、市中肺炎による入院を減少させる効果も乏しい。

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18歳以上の非複雑性呼吸器感染症(急性咽頭炎、副鼻腔炎、急性気管支炎) 405例を 4 群に割付。 1)増悪する場合患者の自己判断で抗菌薬を内服する2)増悪したら再受診して抗菌薬の処方を受ける3)直ちに抗菌薬を処方する4)抗菌薬を処方しない ※咽頭炎で 5日間、他で 10日間症状が改善しない場合

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症状の持続期間すぐに抗菌薬を内服した群では、症状の持続期間が有意に短縮される。特に全身の倦怠感、疼痛および副鼻腔炎・咽頭炎における頭痛は有意に短縮される。 症状の強さ抗菌薬の投与方法により差はない。抗菌薬の遅延処方戦略では、 1/4~ 1/3の患者が抗菌薬を使用。結論抗菌薬の遅延処方戦略では、症状改善がやや遅いが臨床的にはほぼ同等で抗菌薬の使用量は減少する。

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High-Value Care Advice 1: Clinicians should not perform testing or initiate antibiotic therapy in patients with bronchitis unless pneumonia is suspected.

High-Value Care Advice 2: Clinicians should test patients with symptoms suggestive of group A streptococcal pharyngitis (for example, persistent fevers, anterior cervical adenitis, and tonsillopharyngeal exudates or other appropriate combination of symptoms) by rapid antigen detection test and/or culture for group A Streptococcus. Clinicians should treat patients with antibiotics only if they have confirmed streptococcal pharyngitis.

Ann Intern Med. 2016;164:425-434. doi:10.7326/M15-1840

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High-Value Care Advice 3: Clinicians should reserve antibiotic treatment for acute rhinosinusitis for patients with persistent symptoms for more than 10 days, onset of severe symptoms or signs of high fever (>39 ℃) and purulent nasal discharge or facial pain lasting for at least 3 consecutive days, or onset of worsening symptoms following a typical viral illness that lasted 5 days that was initially improving (double sickening).

High-Value Care Advice 4: Clinicians should not prescribe antibiotics for patients with the common cold.