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28.4.15 血管内カテーテル関連感染予防のための皮膚抄読における皮膚の拭き取りを含めたポビドンヨードとクロルへキジンアルコールの比較

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P:動脈、血液透析、中心静脈カテーテルを挿入する ICU患者I:挿入前にクロルヘキシジン (2%クロルヘキシジン -70%イソプロピルアルコール )で消毒C:ポビドンヨード (5%ポビドンヨード -69%エタノール )で消毒O:カテーテル関連感染症の発生率

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背景•カテーテル関連血流感染症( CR-BSI)は、医療現場で死亡の高い感染症である•短期間のカテーテル挿入や管理で、皮膚消毒は重要•アルコールは即効性があるが、持続性はない•クロルヘキシジンやポビドンヨードは作用は遅いが、持続性がある

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背景•アメリカやイギリスではクロルヘキシジンとアルコールが 1st lineとされているが、クロルヘキシジンとポビドンヨードの 1対 1の比較試験はほとんどない•フランスのガイドラインではクロルヘキシジンかポビドンヨードのいずれかを推奨している•また、消毒前の皮膚の scrubbingは、皮膚の細菌量と消毒を阻害するタンパク質量を減らす事ができる

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背景•アメリカの疾病管理予防センター( CDC)では、消毒前の皮膚洗浄に付いて勧告をしていない•消毒前の皮膚洗浄についての大規模ランダム化試験はない•短期カテーテル感染予防でクロルヘキシジンはポビドンヨードより優れていると仮定•また、皮膚洗浄でコロニー形成は減らないと仮定

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方法•オープンラベル、多施設、ランダム化、 2×2要因試験•フランスの 5大学病院と 1総合病院の 11の ICU(内科 5、外科

5、内科外科 1)•動脈・透析・中心静脈カテーテルの少なくとも 1つを 48時間以上必要とする 18歳以上の患者• 2%クロルヘキシジン -70%イソプロピルアルコール、または 5%ポビドンヨード -69%エタノールを使用+皮膚の scrubbingの有無

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方法•手順 挿入する医師はmaximal barrier precautionsを用いる• one-step procedure( scrubbingなし) クロルヘキシジンはmoving back and forth、ポビドンヨードはcircular movementsで消毒• two-step procedure ( scrubbingあり) 消毒前に看護師が洗剤に浸した滅菌ガーゼで circular movementsでscrubbingし、滅菌水で洗浄する

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方法•挿入後は半透過性透明ドレッシングで被覆•挿入部位は two-step procedureを行っていないナースによって感染徴候を検査•ドレッシングは、 ICUの標準的慣行に従ってカテーテル挿入から 24時間後と 3~ 7日毎に交換(漏れや汚れがある場合はすぐに)

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方法•患者は ICU退室後 48時間まで観察• ICUからの退室や感染疑いで必要がなくなった場合カテーテル抜去•カテ先端は液体希釈法で培養•退室後もカテが必要な場合、カテーテルハブと末梢静脈から血液サンプルを同時に採取

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方法•カテーテル抜去前に、消毒薬中和剤含有のトリプチケースソイ寒天培地を皮膚に 10 秒間押し付け、コロニー形成を評価•プレートを微生物検査質に送り、 48時間培養し、プレート当たりのコロニー形成単位( CFUs)の数を数えた•発熱( 38.5℃以上)、低体温( 36.5℃以下)、その他悪寒(体の震えを伴う寒気)や突然のショック( BP < 90や、高血圧患者ではベースラインより 40以上の減少)などの症状、またカテ感染が疑われる場合、ルーチンで好気性・嫌気性血培を採取

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方法•カテーテル関連敗血症:発熱(≧ 38.5℃)、低体温(≦ 36.5℃)、カテーテルのコロニー形成、抗生剤変更なしでカテ抜去後 48時間以内の解熱や低体温、カテーテルの挿入部位の排膿、他の感染源なし• CR-BSI:発熱 ( 38.5 )≧ ℃ 、低体温 ( 36.5 )≦ ℃ 、カテーテル抜去前後

48時間以内の 1つ以上の血培陽性、カテーテルのコロニー形成と挿入部位の菌が同じ種類と感受性、血培陽性までの時間が 2時間以上、カテーテル以外に菌血症の原因がない

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方法• primary outcome カテーテル関連感染の発生率• Secondary outcome カテーテルコロニー形成の発生率

• 追加の outcome  CR-BSI、カテ抜去時の挿入部位のコロニー形成、 ICU 滞在中死亡率、 ICU 滞在期間、ドレッシング交換時やカテ抜去時の皮膚の状態

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方法•消毒効果や scrubbingとの相互作用を調べるのに、 2256 人( 4512カテーテル以上)必要と仮定• ITT 解析で分析

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結果• 2012/10~ 2014/2までに 2546 人が適合• 2349 人( 5159カテーテル)が登録• 1181 人( 2547カテーテル)がクロルヘキシジン -アルコール( 594人が scrubbingあり、 587 人はなし)• 1168 人( 2612カテーテル)がポピドンヨード -アルコール( 580人が scrubbingあり、 588 人がなし)

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結果•また、 5159カテーテルのうち 4442( 86%)がカテーテル抜去前に培養に出されている•カテーテル感染状態を分類するために以下の症例も検討  カテーテル先端の培養陽性( n=815)  抜去の 48時間前または後の血培陽性( n=281)  培養されていない( n=717)

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結果• 2つの介入( one-step vs two-stepと消毒薬)の間で、カテーテルコロニー形成( p=0.8887)、カテーテル関連感染( p=0.1740)、 CR-

BSI( p=0.1645)に有意な相互作用はなかった•つまり、 2つの消毒薬は消毒手順( one-step vs two-step)の影響を受けず、 one-stepと two-stepの比較も消毒薬の種類による影響を受けなかった

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結果•カテーテル関連感染の発生率 クロルヘキシジン: 0.28/1000カテーテル日 ポビドンヨード :1.77/1000カテーテル日   (HR: 0.15、 95% CI: 0.05-0.41、 p=0.0002)

•クロルヘキシジン群は CR-BSIやコロニー形成も有意に少なかった  CR-BSI( 0.28 vs 1.32 /1000カテーテル日、 0.21, 0·07–0·59; p=0·003)  コロニー形成 (3.34 vs 18.74 /1000カテーテル日、 0·18, 0·13–0·24; p<0·0001)

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結果•入院時のカテゴリ、 SAPSⅡスコア、カテーテルの種類、挿入部位では影響を受けなかった• CVカテーテルでは、クロルヘキシジンはコロニー形成だけでなくカテーテル関連感染や CR-BSIでも有意に効果があった•クロルヘキシジンの代わりにポビドンヨードを使用しても、患者の

ICU 滞在期間や死亡率に影響はなかった  ICU 滞在期間( 0.3日、 95% CI:0.4-0.7)  ICU死亡率( 0.4%、 95% CI:3.3-4.1) 院内死亡率( 0.3%、 95% CI: - 3.5-4.1)

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結果• one-stepと two-stepでコロニー形成率、カテーテル関連感染、 CR-

BSIの差はなかった コロニー形成率 (11.56 vs 10.75 /1000カテーテル日            HR 1.10, 95% CI 0.89-1.35; p=0.3877) カテーテル関連感染 (1.09 vs 0.99 /1000カテーテル日               HR 1.03, 95% CI 0.57-1.88; p=0.9131)  CR-BSI (0.77vs 0.85 /1000カテーテル日       HR 0.86, 95% CI 0.44-1.67; p=0.6494),

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結果• one-stepと two-stepで ICU 滞在日数や死亡率に大差はなかった  ICU 滞在日数: 0.6日 [95% CI –0.1 to 1.0]  ICU死亡率: 1.4% [–2.3 to 5.1]  院内死亡率: 2.3% [–1.5 to 6.1]

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結果•抜去された 3657カテーテル( 71%)で培養検査が行われ、 1125( 31%)で陰性だった•コロニー形成をした患者 (n=383[94%])の方が、しなかった患者

(n=2123 [65%])よりカテーテル関連感染、 CR-BSIが多かった (p<0·0001)  カテーテル関連感染 (n=35 [95%]; p=0·0006)   CR-BSI (n=26 [93%]; p=0·0023)

•コロニーの数は、クロルヘキシジン群の方が有意に少なかった。   (4 CFU [IQR 0–50] vs 41 CFU [1 to >100], p<0·0001)• one-stepと two-stepでコロニー数に大差はなかった   (14 CFU [0 to >100] vs 12 CFU [0 to >100], p=0.9112).

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結果•クロルヘキシジンやポビドンヨードでの全身の副作用は発生なし•皮膚反応はクロルヘキシジンで多かった( p=0.0110)•重症皮膚反応は、クロルヘキシジンで 27 例( 3%)、ポピドンヨードで 7 例( 1%)だった( p=0.0017)•クロルヘキシジン群で 2 人が使用中止•皮膚反応の発生率は one-stepと two-stepで差はなかった (p=0.9554)

•中止以外で合併症管理に特別な介入はせず•カテーテル抜去後に皮膚病変は解決

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考察• 2%クロルヘキシジンは 5%ポビドンヨードに比べ、カテーテル関連感染の発生率を 6 分の 1、 CR-BSIの発生率を 5 分の 1にする•皮膚の scrubbingはコロニー形成と関連なし•皮膚有害事象は稀だが、クロルヘキシジンの方が多い

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考察•クロルヘキシジンの優位性は、入院形態(内科的 or手術)、重症度、カテの種類、挿入部位で影響はなかった• CVカテではカテ関連感染や CR-BSIではなく、コロニー形成にのみ差があった• 両消毒液は広域スペクトルの抗菌活性があるが、クロルヘキシジンの優位性はおそらく長期抗菌活性と関連し、それはポビドンヨードの血液や皮膚のタンパク質による不活性化による

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考察•どちらの消毒液でも、消毒前の scrubbingでコロニー形成、カテーテル関連感染、 CR-BSIを大幅に減少させることはなかった。• 今回の結果は、カテーテル関連感染の発生率が元々低い ICUで得られたものであるが、重症度スコア・人工呼吸器使用率・死亡率の高い、高リスクの患者集団で発生している•感染の発生率の低さは、maximal barrier precautionsなど予防策が広く使われていることによる

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考察•有害事象はどちらの消毒液でも稀だったが、ポピドンヨードの方が少なかった• 全身反応は起こらなかった

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考察■ 制限• 2つの消毒液は色が異なるため、マスキングは不可能だった (皮膚やカテーテルの培養をした微生物学者は盲検化されていた)•消毒液の種類や濃度の違いでの効果を評価できなかった (製造業者が推奨する方法で使用)• 研究プロトコルに沿っているか定期的に確認されなかった (均質化するための事前のトレーニングセッションがあった)•ハブの汚染除去のために使用した消毒液の潜在的効果は測定出来ず (皮膚と同じ消毒液を使用)•死亡率や滞在期間に有意差はなかったが、おそらく検出力不足だった

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考察• 今回は内科・外科が混在する多施設共同研究だった•患者は研究開始前から、カテーテル関連感染予防のために CDCが推奨する措置を適用されていた•従って、今回の結果は短期 CVまたは動脈カテーテルを必要とする

ICU患者に一般化できる• この結果が長期留置されているカテーテルにも適用できるかは、さらなる研究が必要