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わかりやすい利益相反:臨床研究を成功させるために

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Page 1: わかりやすい利益相反:臨床研究を成功させるために

わかりやすい利益相反( COI)

大阪大学大学院医学系研究科 臨床統計疫学寄付講座原 正彦

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Page 2: わかりやすい利益相反:臨床研究を成功させるために

1. 利益相反 (COI) とは

利益相反 (COI:Conflict Of Interest) とは、相互の利益が相反すること

要約すればA の利益が B の不利益になり、 B の利益が A の不利益になる状態

A の利益B の利益

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2. 利益相反は悪いことか

『利益相反』状態は、立場が違う者同士に関係が生じれば自然に発生するものである。

【例】日常の買い物では?A (顧客)と B (販売者)という関係が生じた場合に、利益相反が発生する。

A の利益:できるだけ安く買いたい

B の利益:できるだけ高く売りたい

これが『利益相反』状態

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3. 利益相反状態とは?『利益相反』状態とは、

単に A と B の利益が競合する状態であることを示す言葉に過ぎない。

つまり

『利益相反』状態自体は、善悪の評価対象にはならない!!

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4. 倫理指針での用語の安易な使用

『利益相反』という単語だけでは意味をなさない。

倫理指針で用いられている「利益相反」という用語には2つの意味がある。

【指針における「利益相反」の用語の意味】

  →①利益相反状態

  →②利益相反行為 ←問題視されている「利益相反」とはこの意味。

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5. 利益相反行為とは『利益相反行為』とは、複数の当事者がいる場合において、一方の利益となり、かつ他方の不利益となる行為のこと。

(※ここは少し複雑で難しいのでそんなもんか程度の理解でOK )

民法第 108 条(自己契約及び双方代理)

同一の法律行為については、相手方の代理人となり、又は当事者双方の代理人となることはできない。ただし、債務の履行及び本人があらかじめ許諾した行為については、この限りでない。

【双方代理】 一方の当事者の代理人が、他方の当事者の代理人を務めること・・・【自己契約】 一方の当事者が、相手方の代理人を務めること・・・  →いずれの場合も、当事者の利益を阻害する行為として禁止されている。

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6. 臨床研究に当てはめると?【双方代理】 【自己契約】

研究者 資金提供者

研究受託業社

依頼

依頼

研究者

資金提供者(A 社 営業)

資金提供者( A 社 統計

家)

支援

CRO などの第三者が、「研究者」と「資金提供者」の双方から依頼を受け

て研究者の業務を支援する場合。

「資金提供者」が「研究者」の

業務を支援する場合。

臨床研究

利益相反状態利益相反状態

臨床研究

労務提供

研究受託業社が双方代理の状態

A 社が自己契約の状態

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7. なぜ臨床研究で利益相反状態が発生するのか?

そもそも「臨床研究」とは、医師が Medical Question を解明するために自ら実施する研究である。

それならば製薬会社は関係ないのでは?

日本の研究者は研究費がないので、製薬会社に資金提供を依頼しなければならない事情がある

『利益相反状態』の発生

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8. 臨床研究における利益相反行為の問題点とは【研究者の利益】

どのような結果(悪い結果)であっても、それを明らかにして、Medical Question を解明したい。

『利益相反状態』の発生

『利益相反行為』が起きた場合

         研究者の利益の阻害  

【スポンサーの利益】自社製品の良い結果を出して欲しい。

スポンサーの利益研究者の利益

その結果

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9. 臨床研究で供与される『利益』とは

臨床研究においては研究資金だけでなく、研究者に対するあらゆる形態の利益が存在する

許容される利益許容される利益提供 研究資金(研究費)

許容される理由産学連携の観点から、医学研究を推進するために必要と思われている(企業からの資金提供がなければ、臨床研究ができない)

許容されない利益

許容されない利益提供 労務提供、情報提供、株の提供、地位の提供、研究生の受け入れ、その他研究費以外の提供

許容されない理由 研究の結果の解釈に影響を与えたという疑義を生じさせるため。

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10. 疑義を生じさせないための注意点

臨床研究においては企業からの研究資金の提供が不可欠である。従って、その資金の流れの透明化を図ることが重要。

だけでなく、・・・疑義を生じさせる不透明な利益の供与を受けないことは更に大事

研究費の供与については「委託契約」として相互に契約を締結【大原則】

研究者の対応

論文・学会発表で当該企業からの研究費の提供を受けたことを明示する。

不適切な労務の提供を受けない

スポンサーの対応

「透明性ガイドライン」に則り、研究費の提供をしたことを開示

不適切な研究への関与を行わない

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11. 起こりやすい利益相反行為無自覚に起こりやすい『利益相反行為』

【スポンサー】・プロトコールの相談、情報の提供、プロトコール等の作成依頼・統計解析の相談、統計解析業務の依頼・結果のレビューの依頼・モニターの派遣の依頼や CRO派遣の依頼

研究者側の人手や経験・ノウハウが不足

安易にスポンサーに頼ってしまう

全て『利益相反行為(研究への不適切な関与』と見なされる

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12.最近のやり方は大丈夫?

これは、形を変えたスポンサーの

「間接的な研究への関与」

に過ぎない。

「スポンサー」が直接研究に関与できないということで、最近では臨床研究の支援を研究受託業社に依頼するケースが普通ですが・・・・・

研究者 資金提供者

研究受託業社

利益相反状態

依頼 契約

支援

研究受託業社のクライアントは、研究者ではなく「スポンサー」

結果的に「不適切な労務提供」による「利益相反行為」に当たる

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13. 正しいあり方は?

研究者が直接研究受託業社に依頼す

るのでクライアントは研究者になる

「研究者」が直接研究受託業社に依頼すればいいだけの話です。

研究者 資金提供者

研究受託業社

利益相反状態

依頼 契約研究受託業社と「スポンサー」間に

直接的な利害関係なし(『利益相反状態』が発生しない)

スポンサーによる不適切な研究への関与がなくなる

無関係

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14. 結論として・資金提供以外の「いかなる利益の提供」も受けない

・研究受託業社( CRO )に研究支援を委託する場合は 研究者から行う

・研究者と CRO の間で業務委託契約を締結する(スポンサーは関与させない)・お金の流れと業務の流れを一致させる。

研究者から行ったと見なされるための注意点

研究者

CRO

業務委託契約

委託経費の支払い

業務の実施