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マーケティング科学 11: 社会/ビッグデータ 722日(水) 19:3021:00 藤村慎也 2015/7/26 1

マーケティング科学第11回 (スライドシェア用)

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マーケティング科学第11回: 社会/ビッグデータ

7月22日(水) 19:30~21:00

藤村慎也

2015/7/26 1

今日の目次

Webマーケティング

社会貢献とコミュニティ・マーケティング

CSRマーケティングとCSV

ビッグデータ

2015/7/26 2

19:30~19:45

19:45~19:55

19:55~20:10

20:10~21:00

ウォルマートの失敗

2015/7/26 3出所:「ツイッターノミクス」タラ・ハント

• PR会社のエデルマンが、顧客を装ってブログを書いていたことがばれる

•ウォルマートとエデルマンが、PR分野の著名ブロガーから名指しで糾弾される

•クチコミ・マーケティングの国際組織であるWOMMAでは、架空の人物をねつ造したのは倫理規定違反であるとして、エデルマンを除名処分にするかどうか審議するに至ったが、エデルマンが公式に謝罪し免れる

•懲りないウォルマートは、今度は若者向けのサイト”The Hub”を立ち上げる

•しかし悪評ぷんぷんで、わずか10週間で閉鎖された

• Facebookグループで新学期キャンペーンを行う

•投稿はわずか200件のみ

•「いかに巨大ウォルマートが地域コミュニティを破壊しているか」とか「いかに組合の結成を阻止しているか」といったことばかり話題にされる

ただ1人のお客様を想定する(ウォルマートの例)

2015/7/26 4出所:「ツイッターノミクス」タラ・ハント

• 小さな子供がいる• 生活に余裕がない• 安い品物を短時間で効率的に買いたい• 値段と品ぞろえにうるさく、他店の値段にも詳しい

ジェーンさん

• 商品の選択や仕入れ• 店舗の棚の配置• 案内板の設置• まとめ買いすると割引率が大きくなるサービス

など、すべてジェーンに合わせるマーケティング部門はいつもジェーンを気にしている

ただ1人のお客様を想定する(アマゾンの例)

2015/7/26 5出所:「ツイッターノミクス」タラ・ハント

• ベストセラーでは満足できません• 広く、深く読書したいです

コアカスタマー=本好き

• 時間をかけて顧客のニーズを見極め、強いつながりを作ってきた

• カスタマー・レビューなど購買判断に役立つ仕組みを整えた

• そしてクチコミで顧客が増え、「本ならアマゾンで買う」というお客が増えたところで、「こちらもいかがですか」と音楽CDや映画を試験販売した

• 最初に強力なコア・カスタマーをがっちり掴み、そこから拡げていった

ただ1人のお客様を想定する(あるソーシャルブックマークサイトの例)

2015/7/26 6出所:「ツイッターノミクス」タラ・ハント

マーケティング・コンサル

•スポーツ好きでSUVを運転している白人男性

•ショッピングが大好きな白人のキャリアウーマン

• MySpaceで長時間を費やすスケボー少年

•子どもたちが巣立ち、インターネットで暇つぶしするようになった熟年の白人

等身大アプローチ

•まずコミュニティを観察し、頻繁に活動しているメンバー4人を探しだす(=コア・カスタマーのハンティング)

•次にその4人のプロフィールに用意されたリンクをたどって、それぞれのブログやウェブサイトをチェックし、RSSフィード・リーダーに登録

• 4人の詳しいプロフィールが判明。例えば、うち2人はグラフィックデザイナーでマック・ファンと判明

直接の意見交換

• このようなバックグランドがわかった時点で、外部コンサルタントがコメントをつけたり、チャットに参加したりして4人と知り合いになり、趣味・嗜好を把握

•外部コンサルタントが、その4人を経営陣に紹介、コア・カスタマーと直接の意見交換ができるようにした

• 「コア・カスタマーはSUVを運転する白人男性云々」といったもっともらしい書類は一切作らない

• なぜなら、見つけたのは「人物像」ではなくて、「実在の人物」だから、あとは直接意見交換できるように紹介することが大事だと考えたから

ウェブ上で顧客を増やす8つの秘訣

2015/7/26 7出所:「ツイッターノミクス」タラ・ハント

1. 製品やサービスは、できるだけ幅広い層(初心者)を対象に設計する。

2. コメントには必ず返事をする。否定的な返事でもよい。

3. 批判を個人攻撃と受け止めない。相手は、わざわざ時間を割いて改善すべき点を指摘してくれたのである。

4. 有益な指摘やアイディアには公に感謝する。本人にとってはうれしく、他のメンバーにとっては励みになる。

5. 新機能や変更は必ず事前に知らせ、フィードバックを求める。

6. フィードバックを生かしてこまめに改善する。それによって、つねに顧客の声を聞く姿勢が伝わる。

7. フィードバックを待つのではなく、こちらから探しに行く。コメントやメールが来なくても、顧客は100%満足しているわけではない。

8. どんなに愛されている会社や製品でも、あら探しをする人は必ずいると覚悟する。

各種メディア活用のヒント①

2015/7/26 8出所:「ツイッターノミクス」タラ・ハント

メディア 活用のヒント

ブログ • 使い勝手の良いブログ・プラットフォームを選ぶ(WordPress等)• RSSフィードを活用する• ブログを検索する(自社製品がどこで話題になっているか調べる)• ブログのガイドラインを決める(社員全員が守れるように)• ブログを読む(他のブログを紹介する)• まめにコメントを書く

ポッドキャスト/動画

• 業界で評判の人、名人と呼ばれるような人とのインタビュー• 顧客とのインタビューやエピソード• 製品に関連するお役たち情報• 専門的なアドバイス(コンサルティング会社ならプレゼン手法等)• 会社案内。オフィスや工場のバーチャルツアー• 地域支援活動

Twitter • 自社の会社や製品、サービスについて、率直な意見を言う• イベントを話題にする(ライバル社の物でも良い)• コンテスト形式のプレゼント・キャンペーンを実施する• ダイレクト・メッセージを上手に利用する(社長からメッセージを送ってみる)• ブログの更新を知らせる• リアルの世界で聞いたおもしろ小ネタやギャグを紹介する• 名言を引用する• 自社で配信している動画やポッドキャストへのリンクを張る• 上手に問題提起して大勢の知恵を借りる

各種メディア活用のヒント②

2015/7/26 9出所:「ツイッターノミクス」タラ・ハント

メディア 活用のヒント

wiki • 文書の共同作成• メンバー同士の情報共有• イベントの企画などプランニング全般• ブレインストーミング

ソーシャル・ブックマーク

• いま顧客の間で何が流行しているのか、どんなことに関心が高まっているのかを把握する

• 「みんなにも教えてあげたい」と思うブックマークを見つけたときにあなた自身のブログで紹介すれば、購読者に付加価値を提供することができる

• あなたの投稿記事や写真などに共有ツールを設定しておけば、ブックマークされる可能性がぐんと高まり、大勢の人をサイトに誘導することができる

• ブックマーク・グループを作って自社に関連するURLを提供すれば、コミュニティ・メンバーのきずなを一層強めることができる

フォーラム、チャット、対話

• ランキング・システムを採用し、最も役に立った質問と回答が上位に配置される仕組みを作る

• 自社サイト内にライブのチャットルームを設け、リアルタイムで問い合わせに対応する

• 企業のトップと話せるようにする

Face-to-face • テーマを決めてのイベントやランチ・ミーティング• 新製品やサービスを紹介する内覧会 など

今日の目次

Webマーケティング

社会貢献とコミュニティ・マーケティング

CSRマーケティングとCSV

ビッグデータ

2015/7/26 10

19:30~19:45

19:45~19:55

19:55~20:10

20:10~21:00

社会貢献そのものを事業目的にする

2015/7/26 11出所:「ツイッターノミクス」タラ・ハント

ウェブ上の起業では、目先の利益を追うとコモディティ化の罠が待つ

そうではなく、社会貢献それ自体を事業の目的にして成功している例がある

クレイグリスト

2015/7/26 12出所:「ツイッターノミクス」タラ・ハント

クラシファイド・アドと呼ばれる求人広告や不動産広告で

いまや世界最大手となった企業

http://tokyo.craigslist.jp/

クレイグリスト

2015/7/26 13出所:「ツイッターノミクス」タラ・ハント

創立者のクレイグ・ニューマークは、自身の経営哲学を次のように語っている。

「この事業はべつに善意で始めたわけではない。クレイグズリストのベースになっているのは、私が冗談でオタク価値と呼んでいるものだ。CEOも

私もエンジニアで、ウチの連中は、まあ、みんな病気のようなものだ。技術屋だから、頑固で融通が利かない。ただ、オタク的な価値観はとてもシンプルでね。みんなの役に立つのはいいことだと思っている。」

「そして私が思うに、最も人の役に立つことの一つは、仕事を見つける手段を提供することだ。仕事が見つかって生活が安定すれば、その人は別のいいことができるようになるのだから。」

コミュニティ・マーケティングへの移行

2015/7/26 14出所:「ツイッターノミクス」タラ・ハント

従来型のマーケティング・アプローチ

• 広告を出したり、PR会社を雇ったり、高い費

用を払って市場調査を依頼したり、ブログで発信したりする

• 生活空間は広告ばかりで、いちいち注意を払っていたらキリがないので、遮断して見ないふりをする

• 誇大広告やウソツキ広告の経験があり、もう信用できない

• 大して変わり映えのしないものがごまんとあるのに、さかんに広告されてもげっそりする

• いまどきの広告よりも、昔ながらのクチコミを信用している

• 今日のクチコミは、オンライン・コミュニティ

コミュニティ・マーケティング

コミュニティ意識の高まり

2015/7/26 15出所:「ツイッターノミクス」タラ・ハント

コミュニティ意識とは、あるコミュニティへの帰属意識や、メンバーを大切に思う気持ち、メンバー同士の相互信頼を意味する

第4段階第3段階第2段階第1段階

コミュニティの仲間になりたいと思う

コミュニティの影響力、コミュニティへの影響力を感じる

コミュニティへの参加によって充足感や達成感を得る

歴史や体験を共有し強いきずなを感じる

外界との境界、安心感、帰属意識、個人的尽力や投資、メンバーに共通する象徴的存在=例えばSNSではメン

バーがプロフィールを公開していることが安心感につながる。エピソードや価値観を共有することも帰属意識を高める

コミュニティから何かを学ぶ、コミュニティの習慣が身に付く

自分の意見を聞いてもらう=これがとりわけ重要

コミュニティへの貢献が何らかの形で報われるとき

例:ティンバックツーのヒーロー・プログラム。その会社のバッグが登場する写真や動画を投稿した人の中から「ヒーロー」を選びディスカウント価格を提供する

1日Twitterがダウンしただけでさびしくなる。2日

目には怒り出す。それでもTwitterから離れない

運営側がほんの少しでもメンバーの気持ちに反することを独断でやるとコミュニティは紛糾する

今日の目次

Webマーケティング

社会貢献とコミュニティ・マーケティング

CSRマーケティングとCSV

ビッグデータ

2015/7/26 16

19:30~19:45

19:45~19:55

19:55~20:10

20:10~21:00

企業の社会的取組み6つのオプション

2015/7/26 17出所:「社会的責任のマーケティング」フィ

リップ・コトラー

オプション 概要 事例

コーズ・プロモーション

社会的道義に対する意識や関心を高めるため、もしくは社会的道義のための資金調達、参加、ボランティア募集を支援するために、資金提供や物資供給を行う

• ボディ・ショップは化粧品の試験開発での動物実験を禁止

コーズ・リレーテッド・マーケティング

売上の数%を特定のコーズに対して寄付することを約

束する。告知された期間、特定製品、定められたチャリティを対象に行われる

• コムキャストは高速インターネット・サービスのインストール料金4.95ドルを、一定期

間ロナルド・マクドナルド・ハウス・チャリティーズへ寄付

ソーシャル・マーケティング

公共、公衆の健康、環境、あるいは社会福祉を改善しようとするキャンペーンの開発や実行を支援する。行動変革にフォーカス

• フィリップ・モリスは、親たちに子どもの喫煙について語り合うことを奨励するキャンペーンを行っている

コーポレート・フィランソロピー

チャリティや社会的道義に対して直接貢献する(ほとんどは現金贈与や寄付、現物支給など)

地域ボランティア 従業員、小売パートナーやフランチャイズ・メンバーが自治体や社会的道義を支援するためのボランティアに参加支援するよう奨励する

• シェルの従業員は、海岸の清掃活動を海洋自然保護団体と一緒になって行っている

社会的責任に基づく事業の実践

自由に事業活動を行っている企業が、時には社会福祉に貢献したり、環境保護のために社会的道義を支援することに投資を行ったりする

• スターバックスはコンサベーション・インターナショナルと共同で、現地の環境保護を目的として農業経営者を支援している

デル/マクドナルドの社会的取組み

2015/7/26 18出所:「社会的責任のマーケティング」フィ

リップ・コトラー

オプション デル(例示) マクドナルド(例示)

コーズ・プロモーション

収集した中古パソコンをNPO団体や地方行政機関へ寄付

2000年オーストラリアのシドニーでオリンピック・ユース・キャンププログラムを後援

コーズ・リレーテッド・マーケティング

3つまで中古パソコンのリサイクルを行うと、新製品が10%OFFとなるサービス

世界こどもの日にビッグマックなどの特定商品の販売から1ドル寄付に充てる取組み(2002年11月20日)

ソーシャル・マーケティング

無償で使っていたプリンターをリサイクル目的で回収するサービス

子どもに対する時宜を得た予防注射接種の促進

コーポレート・フィランソロピー

「ダイレクト・ギビング」プログラムを通じた従業員からアース・シェア(多数の環境プロジェクトを支援する組織)に対する寄付

深刻な病気にかかっている子どもをもつ家族が滞在する場所(ロナルド・マクドナルド・ハウス)を提供

地域ボランティア 世界中の従業員による「グローバル・コミュニティ・インボルブメント・ウィーク」(毎年9月開

催)への参加。公園のクリーンアップなどの活動を実施

9.11同時多発テロの被災地で専門家やボランティアに食事を提供

社会的責任に基づく事業の実践

特別な環境ガイドライン、政策、目標によって行う製品デザインのプログラム

再利用紙による商品包装ならびに包装資材の削減

リーマンショック以降、マイケル・ポーター教授は Shared Value の概念を提唱

2015/7/26 19

社会的進歩と経済的進歩のつながりにフォーカスした Shared Valueが次の成長を解き放つ

グーグルやIBM等のエクセレント・カンパニーもこの動きに乗り始めている ... がポテンシャルは未知数

Shared Value を生みだす方法は3つ

①製品・市場の再着想

②生産性の再定義

③ローカル・クラスターの発展

Shared Value の考え方をもって成長機会を探索し、意思決定すること –そうすれば社会の利益ともなる

事例:Pete’s Coffee, Technoserve, ケニアの生産者は Shared Value 創出に成功

2015/7/26 20

Pete’s Coffee

Techno-serve

(not-for-profit)

ケニアのコーヒー生産者

Creating Shared Value (CSV)

高品質コーヒーのバラエティを増やしたい

ケニアの生産者の生産技術を高めたい

コーヒーを売りたい

しかし

現地のベンダーや生産者管理まではできない

そこで

生産者の生産方法や販売を現地管理

Technoserveとともに、Pete’s のアドバイスに

従い生産

今日の目次

Webマーケティング

社会貢献とコミュニティ・マーケティング

CSRマーケティングとCSV

ビッグデータ

2015/7/26 21

19:30~19:45

19:45~19:55

19:55~20:10

20:10~21:00

○データに関する定義「既存の一般的な技術では管理するのが困難な大量のデータ群」

○広義のビッグデータの定義データやその処理・蓄積・分析技術、また人材や組織を含めたもの

ビッグデータとは

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Volume

VelocityVariety

出所:野村総合研究所

出所:野村総合研究所

図1:ビッグデータの性質図2:広義のビッグデータの定義

人材、組織

データ処理・蓄積・分析技術

非構造化データ

構造化データ

ビッグデータの民主化、ハードウェア・ソフトウェア技術の進化、クラウドの普及が、今日のビッグデータの普及を加速させた

なぜ今ビッグデータなのか?

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要因 以前 現在

ビッグデータの民主化 バイオテクノロジー、宇宙工学等のニッチな領域には以前から存在していた

ソーシャルメディア等、生活に密着した情報が生成させるようになった

ハードウェアの価格性能比の向上、ソフトウェア技術の進化

高価格、高度技術のため、NASA等の研究機関や一握りの大企業のみが利用可能

ディスク価格の下落、「ハドゥープ」の登場により、あらゆる企業が活用可能

クラウドの普及 自前でコンピュータ、サーバ、データ処理技術を取り揃える必要があった

クラウド上のデータ蓄積・処理環境を利用することができ、自前で用意する必要性がなくなった

出所:「ビッグデータの衝撃」より作成

ユーザーエクスペリエンスを大量データから短時間で更新

世界最大級のインターネット・オークション会社○データ量(Volume)ケタ違い⇒1日で50テラバイトのデータ量が蓄積される⇒1日で100ペタバイトのデータ量が処理されている

○トランザクションの発生速度(Velocity)がケタ違い⇒1日に売買されるMP3プレイヤーは3,600台以上、香水は4,800個以上⇒化粧品は2分ごと、ヘアケア商品はほぼ毎秒ごとに売買が成立

何に活用しているのか?○マーケティング○顧客ロイヤリティの向上○ファイナンス○顧客サービス○出品者/購入者双方のエクスペリエンスの向上

e.g.) 頻繁なウェブサイトの更新全ユーザーの行動履歴(アクセスログ)データ2年分をすべて蓄積問題があれば2週間以内にA/Bテストなどを行って検証ウェブサイトのデザインやユーザーインターフェースを最適化

欧米企業1:イーベイ(eBay)

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大量データの分析結果をもとにゲームを運営

ソーシャルゲーム開発大手○ソーシャルゲームフェイスブックに代表されるSNS上でカジュアルに遊べるゲーム

ゲームの大半は無料で提供されており、小道具(バーチャルグッズ)に対して課金し、売上を稼ぐビジネスモデル

○収益向上のためのデータ分析活用

各プレイヤーの友人とのつながりを表すソーシャルグラフの分析に加えて、ゲームのプレイ方法などの行動履歴データを収集し、細かく分析データ量は1日あたり2.5テラバイトにのぼる

日々計測したデータをベースにプレイヤーへ随時フィードバックを行うライブサービスとして、ゲームを開発・運営している⇒数百ものA/Bテストが、ジンガのゲーム内に組み込まれている⇒無作為に2グループに分けたプレイヤーに対して、それぞれ微妙に色の異なるバーチャルグッズを提示し、どちらの色のグッズの売れ行きがよいかを検証

フィッシュビルというゲームでは、いろいろな色の魚が販売されているのに、透明な魚が他の色の魚より6倍も多く売れていることが判明した

欧米企業2:ジンガ(Zynga)

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GPSを活用し、建機を効率的に運用

世界第2位の建設機械メーカー「ビッグデータ」という言葉が生まれるはるか昔から活用している⇒GPSやセンサーデータを利用したビッグデータ活用

「KOMATRAX(コムトラックス)」:建設機械の稼働状況を遠隔監視できるシステム建設機械にGPSや各種センサーなどを取り付けることによって、機械の現在位置、稼働時間、稼働状況、燃料の残量、消耗品の交換時期などのデータを収集

それらのデータを衛星通信や携帯電話などを使って、最終的にインターネット経由で日本のコマツのサーバに送信⇒配車の効率化、盗難の減少、維持コストの削減に成功

日本企業1:コマツ

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図:コマツのKOMTRAXの概要

出所:コマツHP

○建機の正確な稼働時間がわかれば、事前に摩耗の可能性が高い部品を特定し、保守サービスの効率化に役立てることができる

○燃料の使用量がわかれば、燃料を多く使っている顧客とそうでない顧客の違いを分析し、運転の仕方の違いを明らかにすることで、燃料を使いすぎている顧客にアドバイスできる

⇒顧客の保守コストや燃料費の削減につながるだけでなく、コマツ側としても適切に建機を使ってもらうことでその価値を維持できれば、中古車市場でも高値で売ることができ、さらにコマツブランドの維持につながる

コムトラックスのデータ分析でユニークな事例e.g. 1) 中国市場における販売店の債権管理サポート

中国では、個人事業主がローンを組んで建機を購入し、第三者にレンタルして得た収入をローンの返済に充てるケースが多い個人事業主であるため、与信管理、資金回収は難しい⇒コムトラックスにより、建機の稼働状況が把握できるため、仕事の有無がわかる

e.g. 2) 需要動向の予測GPSにより、地域における機械の稼働時間の増減が把握できるため、需要動向を予測し、在庫や生産量を適切にコントロールできる⇒実際、2004年に中国政府が金融引き締めを実施した影響で建機需要が急減し

たが、コマツは独自の稼働実績データから異変を察知し、先手を打って向上のラインを3か月休止し、在庫のダブつきを回避した

日本企業1:コマツ

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ビッグデータ分析技術を全社的に取り入れ、効率的なマーケティングを展開

『SUUMO』、『ゼクシィ』、『じゃらん』、『ホットペッパー』、中古車情報サイト『カーセンサーNet』、割引チケット共同購入サイト『ポンパレ』など、企業と人を結びつける多彩なサイトを運営

⇒これらのサイトの多くでビッグデータ分析技術を用い、レコメンデーションシステムの実装やアソシエーション分析、アトリビューション分析などを実施

e.g. 1) 『ホットペッパー』の「飲食ぐるメール」⇒レコメンドメールの最適化に成功

e.g. 2) 『ホットペッパー』⇒アトリビューション分析により、予算配分(リスティング、バナー、SEOなど)を見直し、マーケティングコスト全体の最適化を図った

e.g. 3) 『カーセンサーNet』ユーザーをあらかじめ性別、年齢などのクラスタに分類、自動車のデータも

軽自動車、オープンカーなどのボディタイプにクラスタリングした上で、アソシエーション分析を行い、レコメンドロジックを適用することも可能

日本企業2:リクルート

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出所:http://it.impressbm.co.jp/e/2012/03/13/4223

図:レコメンドメールの最適化概要

大量データに基づく意思決定が根付いた企業文化

ソーシャルゲーム開発・運営会社

ゲームの中で新しい機能を追加したり、施策を打つ際には、まずKPIを明確化⇒KPI:「ユーザーの集客に貢献するのか」、「活性化に貢献するのか」、「収益化に貢献するのか」といったターゲットとする指標

次に、「その施策を打てば、ユーザーが○%増加する」といった具体的な数値目標を設定⇒その数値の根拠も過去のデータからロジカルに示されなければならない

リリース後、「実際に何%変化したのか」というデータを1日ごと、1時間ごとに集計

集客の場合であれば、「ゲームへの友だち招待」というバイラル(インターネット上の口コミ)効果が重要⇒これを可視化するため、「DAU(デイリー・アクティブ・ユーザー)」や「招待送信UU

(招待した人の数)」「招待数」などのデータに加えて、「招待率」、「1人当たりの招待数」、「拡散率」、「承諾率」などの中間指標もデータとして取得

日本企業3:グリー

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ワン・トゥ・ワン・マーケティングを実店舗で実現

顧客一人一人の購買履歴を詳細に分析し、購買パターンに応じて一人ひとり内容の異なる割引クーポンを携帯に配信⇒この背景には周到な購買履歴データの蓄積が存在2004年以降、300億円を投じて、顧客情報などの蓄積・分析をするシステムを構築

ポイントカードとしてのケータイ・スマホポイントカード:財布に入りきらない等の理由で使ったり使わなかったり携帯電話・スマートフォン:余程のことがない限り、常に携帯

ワン・トゥ・ワン・マーケティングを実施する場合、すべての購買時にポイントカードを使用してもらい、顧客の全購買行動を把握できれば理想

⇒携帯電話やスマートフォンがポイントカードの代わりになれば、「購買履歴データの収集漏れ」の減少につながる

日本企業4:日本マクドナルド

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ビッグデータの活用パターンを、おおまかに4つのパターンに分類

ビッグデータの活用パターン

31

出所:「ビッグデータの衝撃」より作成、http://www.nri.co.jp/publicity/mediaforum/2012/pdf/forum174_1.pdf

図3:ビッグデータの活用パターン分類

ビッグデータの活用例のまとめ

ビッグデータの活用 その他の例

32

出所:「ビッグデータの衝撃」より作成

パターン 活用例 概要 活用している企業・事例

個別最適・リアルタイム型

行動ターゲティング広告

ウェブの閲覧履歴やECサイト上での購

買履歴などを蓄積し、利用者の興味・嗜好を分析した上で、利用者を小集団(クラスタ)に分類し、クラスタごとにインターネット広告を出し分けるサービス

グーグル、ヤフー

個別最適・リアルタイム型

商品やサービスのレコメンデーション

ユーザーの属性や行動、購買履歴データをもとに、最適な商品を推奨

アマゾン、ネットフリックス、楽天、リクルート、フェイスブック

個別最適・バッチ型

(位置情報を利用した)マーケティング

スマートフォンや携帯電話に搭載されたGPSの位置情報を利用したマーケティング手法

NTTドコモと東京海上日動火災保険、「ドコモ ワンタイム保険」

個別最適・バッチ型

顧客離反分析 過去の顧客データや退会データに基づき、離反(退会)しそうな顧客を予測

携帯電話会社、通販会社、レンタルDVD会社

全体最適・バッチ型

サービスの改善 提供しているソフトウェア機能の使用データを収集し、サービスを改善

セールスフォースCRM、グーグルapps

ビッグデータ企業の3タイプ

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出所:「ビッグデータの正体」より作成

図11:ビッグデータ企業の3タイプ

データ型 スキル型 アイデア型

・データを実際に保有している

・データを入手できる立場にある

・本業はデータ収集ではない場合もある

⇒クレジットカード会社

・専門的なノウハウを持ち、実務として分析などを手掛ける

・データは保有せず、画期的な用途を考案する独創性も欠けていることが多い

⇒コンサルティング会社

・ビッグデータ思考

・データなし、ノウハウなしで成功している

・データから新たな価値を見出すことにかけて、独創的なアイデアを持つ創業者や従業員がいる

⇒ベンチャー企業

ビッグデータのバリューチェーンによって、ビッグデータ企業は、データ型、スキル型、アイデア型の3タイプに大別できる

データを保有し、情報バリューチェーンの一番うまみのあるポジションを確保

大手銀行、クレジットカード会社○キャピタル・ワン、バンク・オブ・アメリカ

多くの銀行や加盟店を抱えるカード会社は、専用ネットワーク上での取引の詳細がデータとして残る⇒消費者行動の推測が可能となる⇒カード会社のビジネスモデルは、単なる決済処理から、データ収集へと変化

○マスターカード210ヵ国15億人分(650億件)の取引データを、マスターカード・アドバイザーズと呼ばれる部門が集めて分析し、ビジネスと消費者のトレンドを予測⇒この予測トレンド情報を外部に販売する

e.g.) 午後4時ごろにクルマにガソリンを入れる人は、その直後に食料品やレストランで35~50ドルを消費する可能性が極めて高いという分析結果が得られたとする

⇒夕方前後にガソリンスタンド利用客のレシート裏に近隣のレストランや食料品店のクーポンを印刷しておくといったアイデアで集客効果を発揮

ビッグデータ企業:データ型

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複雑な分析を実施するノウハウや技術を持つ企業

コンサルティング会社、ITベンダー、調査会社○アクセンチュア

米ミズーリ州セントルイス市との実験プロジェクトでは、アクセンチュアが無線センサーを市営バスに取り付けてエンジンをモニタリングし、故障発生の予測や最適な定期保守時期の判断に貢献⇒結果として、車両保有コストを10%削減することに成功⇒従来、定期部品交換の時期は走行距離32万~40万キロメートルごとだったが、45万キロメートルごとに緩和することができ、バス1台当たり1,000ドル以上のコスト削減に成功

○マイクロソフトリサーチ

再入院や感染症を抑えるため、メドスター・ワシントン医療センター(米ワシントンDC)から委託を受け、匿名化された診療記録数年分を分析診療記録には患者の属性情報、健診結果、診断、治療などが記載されている

⇒分析の結果、患者の訴えの中に、「憂鬱感」など心痛らしい言葉が含まれていた場合、退院から1か月以内に再入院する確率が高かった

⇒(この相関関係だけで因果関係が成立するわけではないが、)退院後に患者の心に配慮した対策をとれば、再入院の可能性の低下と、医療費の抑制に寄与

ビッグデータ企業:スキル型

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個々の購買履歴と大量データを組み合わせて最適なクーポンを発券

レジ・クーポンの開発・運営会社×通常買い物客全員に同じクーポンを手渡す○カタリナマーケティング人によってクーポンの内容(割引券だけでなく、商品情報やレシピ)が異なる

ポイントカードなどによって顧客を識別POSシステムと連動して顧客の過去2年分の購買履歴データを蓄積

顧客がレジで精算する際に、その買い物パターン(購入商品・購入点数・来店頻度・購入額等)を他の数千万人のパターンと比較

もっとも関心を引きそうなクーポンの内容を即座に計算し、その内容を反映したクーポンをレジで打ち出す

購入履歴があると、一定期間の買い物金額に応じて顧客のランク分けが可能e.g. 1) ある週の累計買い物金額が1万円以上の顧客には2日間限定の5%クーポン、2万円以上の顧客には5日間限定の5%クーポン、3万円以上の顧客には5日間限定の8%クーポンを手渡す

欧米企業3:カタリナマーケティング

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e.g. 2) 来店頻度は高いものの、ビールは決して買わない顧客がいるとする

この顧客がそもそもビールを飲まないのか、ビールは飲むものの、他店で購入しているのかわからない

ここで、割引クーポンを発券し、もしこの顧客がクーポンを使えば他店で購入していたことがわかるしたがって、継続的に割引クーポンを発券すれば、他店から売上を奪うことが可能

e.g. 3) 洗剤やシャンプー、化粧品などのように一定周期で購入する商品の場合

顧客の過去の購買履歴から購入周期を把握し、購入時期を見計らって、割引クーポンを発券したり、サンプル提供のクーポンを発券

自社商品を購入している顧客に対しては、割引クーポンを渡すことでリピート購入を促し、他社製品を購入している顧客にはサンプルを提供し、自社商品へのスイッチを促す

○アマゾンのリコメンデーションに近い?⇒NO!⇒アマゾンの場合

商品自体の中身は一切考慮せず、ほかのユーザーとの好みの類似性からお勧め商品が導き出される⇒カタリナマーケティングの場合商品の中身や顧客の嗜好までも考慮して、クーポンを発券している

欧米企業3:カタリナマーケティング

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想像力や独創性を持ったビッグデータ思考の個人や企業

個人、ベンチャー企業○フライトキャスター【米国内のフライトの遅延予測情報を提供】過去10年のフライトを気象データと組み合わせて分析して予測を立てる

(データ元の米国運輸統計局、連邦航空局、国立気象局、また、航空会社も遅延予測をしてこなかった)「一般公開されているデータも処理方法次第で使える情報となるのではないか?」⇒非常に高精度の予測を作り、航空会社関係者も参考にするようになった

○プリズマティック

【テキスト解析、ユーザーの好み、ソーシャルネットワーク関連の人気、ビッグデータ解析などに基づき、ウェブ全体からコンテンツを集めてランク付け】

ティーンエイジャーのブログ投稿も企業のウェブサイトも『ワシントンポスト』の記事も区別はない、ユーザーの条件と関連性が高く人気も高いコンテンツが選ばれる⇒一流ジャーナリストも単なるブロガーと競争する時代となった

このようなビッグデータ思考は、古い業界の固定観念や制度上の制限のもとでは生まれない⇒アマゾンも元ヘッジファンド専門家が、イーベイもソフトウェア開発者が創業

ビッグデータ企業:アイデア型

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