20161209 ゼミ プレゼン_ver2

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大阪市立大学商学部高橋ゼミ

学歴と収益率

発表内容

はじめに分析方法計算方法結果考察課題

はじめに

この発表では、大学及び学部別の私的収益率を求め、大学間や高卒平均生涯収入などの様々な要素と比較して検討していく。

先行研究では、卒業生をすべて正社員として私的収益率を計算した。一方、本発表では、卒業生の非正規雇用率、留年率、退学率を考慮して計算。

はじめに

私的収益率とは、教育を受けるために個人が要する費用の現在価値とその結果得られる収益の現在価値を等しくする割引率の値であり、割引率が大きいほどその投資が有益であると判断できる。

本研究の目的

①大学間や学部間の私的収益率を、留年、退学などを考慮して計算する

②その大学・学部の私的収益率を偏差値と比較

③高卒と大卒の差から、進路選択の是非を問う

調査対象とする大学・学部の選択基準

4年制大学

卒業者の就職先企業の詳細が判明または推測できること

分析の手順1:卒業生の就職先を、産業別、規模別に調査対象年度:平成27年度卒業生

卒業生の進路に関する分類カテゴリー:『賃金構造基本統計調査』に従う。

<産業種> 

鉱業・採石業・砂利採取業、建設業、製造業、電気・ガス・熱供給・水道業、情報通信業、通信業・郵便業、卸売業・小売業、金融業・保険業、不動産業・物品賃貸業、学術研究・専門 技術サービス業、宿泊業・飲食サービス業、生活関連サービス業・娯楽業、教育・学習支援業、医療・福祉、複合サービス業、サービス業(他に分類されないもの)、公務員

<企業規模>

従業員1000人以上、100~999人、10~99人

順に大企業、中企業、小企業とする。

分析の手順2:就職後の所得増加額と、授業料などの支出から、私的収益率を算出① その大学・学部の卒業生について、就職企業の産業種・規模

  ごとに、 22 歳から 60 歳までの各年における期待所得を計算する

② 全卒業生の所得の平均値を算出する。

③ 卒業後の所得の、高卒所得のとの差額を算出する。

④ 大学の入学金・授業料と、大学に行かなければ 4年間に得られたはずの高卒所得を計算

⑤  ③と④を等しくする収益率を算出し、大学間で比較する。

データ資料: (a)就職状況 各大学のホームページ

   (b)・賃金状況(公務員を除く) 厚生労働省『賃金構造基本統計調査  2015』        「年齢階級別きまって支給する現金給付額、所定内給与

        及び年間賞与その他別給与額」

    ・賃金状況(公務員)

        国家公務員 内閣官房内閣人事局 『国家公務員の給与

平成 28年度版』

         地方公務員 人事院 『公務員給与等実態調査』 

 

    (c)進路状況  『大学の実力  2017』 中央公論新社

鉱業,採石 建設業 製造業大 中 小 大 中 小 大 中 小 大 中 小 大 中 小 大 中 小 大 中 小 大 中 小

慶應 商 4 0 0 8 2 0 78 7 1 7 0 0 25 5 0 8 4 0 3 2 0 183 5 0法

経済政策 1 0 0 3 0 0 24 2 0 0 0 0 5 3 5 1 0 3 4 0 41 0 0情報 0 0 0 1 0 0 16 5 0 0 0 0 25 2 0 1 0 0 9 1 0 28 0 0

上智 法 0 0 0 2 0 0 16 1 0 1 0 0 17 4 0 3 1 0 8 1 0 42 0 0経済 1 0 0 1 0 0 57 1 0 3 0 0 33 11 0 9 0 0 17 3 0 93 1 0

中央 商経済法

神戸 法経済 0 0 0 3 4 0 52 4 3 2 0 0 9 10 3 6 2 2 10 4 0 65 0 0経営 0 0 0 2 0 0 65 6 2 4 1 0 16 14 3 3 3 0 18 4 1 55 0 1

小樽商科 商東京経済 経済 0 0 0 2 10 4 10 23 7 0 0 1 4 25 10 7 9 2 25 63 15 24 33 9

経営 0 0 0 5 8 6 16 26 4 3 5 1 9 31 14 8 4 1 35 62 21 24 26 6高千穂 商 0 0 0 0 4 1 2 6 0 0 0 0 3 8 3 4 1 0 13 26 2 4 6 0

経営 0 0 0 2 2 1 2 2 1 0 0 0 2 12 1 2 1 1 12 29 4 3 5 1東京外大 言語 0 0 0 0 0 0 20 4 1 0 0 0 7 6 1 3 2 1 6 4 0 13 3 0

国際 0 0 0 1 0 0 17 4 0 1 0 0 10 6 0 2 3 0 5 5 0 14 2 0

電気・ガス・ 情報通信業 運輸業,郵 卸売業,小 金融業,保

5 0 0 9 1 0 63 21 0 7 0 0 33 7 0 15 6 0 54 2 0 156 2 01 0 0 8 1 0 77 6 0 2 0 0 39 6 0 18 1 0 28 4 0 256 4 0

0 0 0 16 8 1 73 33 7 3 2 0 61 49 14 28 15 3 66 54 20 212 34 110 0 0 21 10 2 99 27 9 1 2 0 55 47 26 19 10 3 41 55 6 147 34 120 1 0 19 4 0 88 23 6 9 1 0 39 22 24 20 8 2 47 27 4 184 43 130 0 0 1 1 1 16 2 1 1 0 0 4 4 0 6 0 0 4 0 0 18 2 0

0 0 0 11 3 2 22 14 1 7 2 0 18 21 7 6 6 0 22 34 5 108 24 2

調査大学(学部)の産業別・規模別の就職者数 (人)

公務員大 中 小 大 中 小 大 中 小 大 中 小 大 中 小 大 中 小 大 中 小 大 中 小 国

家地方

慶應

商 7 4 0 18 4 0 0 0 0 7 0 0 2 0 0 0 0 0 10 0 1 21 11 1 7 5法 0 0 0 6 11

経済 0 0 0 9 2政策 0 1 0 10 5 0 0 0 0 6 0 0 0 0 0 0 0 0 4 0 0 8 3 0 1 0情報 3 0 0 7 1 0 0 0 0 2 1 0 0 0 0 0 0 0 2 2 0 9 4 0 1 1

上智 法 5 0 0 7 2 0 0 0 0 2 0 0 0 0 0 1 0 0 0 0 0 2 1 0 9 11経済 13 1 0 15 4 1 1 0 0 1 0 0 2 0 0 1 0 0 0 0 0 6 2 0 6 7

中央商 2 2 6 15 49

経済 3 0 6 20 77法 4 6 4 50 182

神戸法 1 2 0 24 20

経済 3 3 0 6 2 1 0 0 0 3 0 1 0 1 0 1 1 3 0 1 0 1 4 1 15 23経営 1 2 9 2 3 1 0 0 5 3 1 0 1 0 1 0 0 0 0 0 10 3

不動産業, 学術研究, 宿泊業,飲 生活関連サ 教育・学習支 医療,福祉 複合サービ サービス業

7 7 0 10 7 0 0 0 0 12 0 0 0 0 0 6 0 0 11 6 012 4 0 30 4 0 0 0 0 8 3 0 0 1 0 14 1 0 18 11 0

16 14 17 24 15 12 3 5 0 3 9 5 2 2 0 23 12 18 0 0 1713 17 12 8 14 8 1 2 3 5 2 4 1 1 3 15 15 15 0 0 1516 17 9 13 22 14 3 3 0 2 3 1 3 3 4 25 19 7 0 0 80 0 0 1 1 1 1 0 0 1 1 0 1 1 0 0 0 0 0 1 1

11 9 3 0 7 7 2 2 0 0 4 0 0 0 0 12 10 0 8 10 4

00

0 8 8小樽商科 商 0 0 0 26 30

東京経済 経済 4 14 3 2 1 5 5 4 3 1 4 1 1 2 1 3 3 4 0 5 1 8 3 1 3 10経営 4 21 7 2 9 6 6 6 1 1 5 12 1 2 2 2 4 2 1 4 1 3 1 1 3 2

高千穂 商 2 2 2 0 0 1 0 0 0 0 5 0 0 0 0 2 9 2 1 2 0 1 16 2 0 1経営 1 6 2 0 0 0 0 0 2 1 0 0 0 0 3 4 1 0 0 1 7 5 2 0 1

東京外大言語 0 1 1 2 3 1 3 0 0 2 1 0 1 0 0 0 0 0 0 0 0 4 0 6 4国際 0 2 0 2 3 0 0 1 1 1 2 0 0 1 0 0 0 0 0 0 0 1 0 0 6 4

出所:各大学のホームページ

(人)

分析に対する留意点⑴

大学・学部を問わず卒業生が全員男子であると みなして所得を計算する。

就職決定者のうち教職は排除。

公務員に関しては地方公務員と国家公務員に  分ける。

分析に対する留意点⑵

留年は一年間と仮定。

進学者の大学院在学年数は2年間と仮定。

途中退学者、卒業者中の非就職者を非正規雇用 と仮定。

資料⑴で<主な就職先>しか記載されていない大学については以下の手法を取った。

<主な就職先>に記載されている企業に一人ずつ就職したとして割り振る。残りの就職者は中小企業に就職したとして仮定し、同大学の学部別・規模別就職先の割合を参考に割り振り、算出する。

○○大学△△学部卒業生の規模別就職先

大企業 中企業 小企業

○○大学  主な就職先 ------------- -------------   -------------   -------------

計算方法

収益率 計算の流れ4年間の学費や得られなかった

収入といった費用と卒業後の所得の高卒者との差額から、

私的収益率を計算する

 1. 年齢階層別に平均年収を計算 2. 大学進学の費用と、大卒と高卒との収入の  差をそれぞれ現在価値に直し、収益率を算出

年齢階層別の平均年収

就職者数に対する業種・企業規模別の就職人数割合を算出

⇓この割合をもとに、卒業生の年収の加重平均を計算

=就職人数割合によりウェイト付けされた、全業種を通しての平均年収

例えば…

年収 300 万円の人が 3人、 400 万円の人が 5人、500 万円の人が 2人この 10人の平均年収は…

300×+ 500× 390これを、 22 歳から 60 歳まで年齢ごとに計算する

割引現在価値とは

今手元に 100 万円あり、年利 5 %の債券に投資する

現在の 100 万円は 1年後に 105 万円になる、ということは

1年後の 105 万円と現在の 100 万円は同じ価値

⇓1年後の 100 万円を割引現在価値に直すと… 100 万円 × = 95.2 万円1年後の 100 万円と現在の 95.2 万円は同じ価値

つまり割引現在価値 P = (r:利率  cn : n年後の価値)

先行研究の手法

入学者全員が 4年で卒業し、正規雇用者になると仮定

C1~ C4=学費+高卒年収C5~ C42=大卒年収 -高卒年収r=割引率 (私的収益率 )  とするとき、

すなわち =0を計算し、私的収益率 r の値を求める。

しかし、現実には、留年生・進学者・退学者・非正規雇用者が存在する。これらの人々が考慮されていない

そこで我々は先行研究( case1とする)のやり方に加えて

Case2 卒業後、退学後に非正規労働者になる人の所得も考慮    ・留年生は1年を加えた5年で卒業後、正規社員または     非正規社員になると仮定    ・進学者は大学院に 2年行き、その後、正規社員または     非正規社員になると仮定

Case3 Case2の状況から、進学者がいなかったと仮定    進学者の人数は正規社員、非正規社員、留年者の比率に基づいて    いずれかになっていたと仮定する。

具体的な計算方法

X:正規雇用率Y:留年率Z:進学率1-X-Y-Z:非正規雇用率

これらを用いて計算する。

 

・ case2では 6年目に留年生 (Y)を正規社員か非正規社員に 正規社員率:非正規社員率の割合で分ける。   7年目に進学者 (Z)を正規社員か非正規社員を 正規社員率 :非正規社員率の割合で分ける。 

・ case3ではまず、進学者 (Z)をそれぞれ正規社員率、非正規社員率、 留年率で割り振る。 6年目留年生 (Y)を正規社員か非正規社員に正規社員率 :非正規社員率の割合で分ける。

結果

偏差値 case1 case2 case3慶應 商 65 0.0982 0.0822 0.0827

法 70 0.0833 0.0658 0.0680経済 67.5 0.0967 0.0777 0.0681総合政策 70 0.0904 0.0650 0.0668環境情報 70 0.0904 0.0668 0.0693

上智 法 65 0.0896 0.0715 0.0724経済 62.5 0.0950 0.0756 0.0763

中央 商 57.5 0.0814 0.0749 0.0754経済 57.5 0.0797 0.0804 0.0812法 62.5 0.0721 0.0584 0.0614

神戸 法 62.5 0.0746 0.0517 0.0554経済 60 0.0912 0.0499 0.0599経営 60 0.0908 0.0534 0.0537

小樽商科 商 50 0.0887 0.0750 0.0750東京経済 経済 45 0.0754 0.0440 0.0464

経営 45 0.0732 0.0460 0.0447高千穂 商 35 0.0631 0.0119 0.0120

経営 35 0.0810 0.0341 0.0320東京外大 言語文化 63.4 0.0833 0.0484 0.0497

国際社会 66 0.0890 0.0551 0.0564

20 30 40 50 60 70 800.0000

0.0100

0.0200

0.0300

0.0400

0.0500

0.0600

0.0700

0.0800

0.0900

偏差値

収益率(

%)

高千穂 経済→

東京経済 経済↓東京経済 経営→ 神戸 経済↑

神戸 経営↓

慶應 商→

←高千穂 商

小樽商科 商→

← 神戸 法

↑ 慶應 法

← 慶應 経済

学部ごとの比較

学部ごとに比較すると、法の収益率は商(経営)・経済より低い傾向にある。

20 30 40 50 60 70 800.0000

0.0100

0.0200

0.0300

0.0400

0.0500

0.0600

0.0700

0.0800

0.0900

商経と法

Series1 Linear (Series1) Series3

進路の表(進学率)

慶應義塾 上智 中央

東京経済

高千穂 神戸

小樽商科

経済 商 法 経済 法 経済 商 法 経済 経営 商 経営 経済 経営 法 商

2.2 2.1 10.5 3.1 7.2 3.2 2.3 14.5 1.7 1.7 0.5 0.5 5.4 1.5 19 0.2

学部ごとの比較

法の収益率は他学部より低い傾向 理由:法は公務員の割合と進学率が高い

case1では入学者全員が4年で正規の職に就職すると仮定しているが、 case2では進学者も考慮している。  (2年後に正社員か非正規社員になる。 進学にかかる費用を払う。) → その結果、 case2では、法の収益率が大きく低下

収益率の表(偏差値順)(小樽と神戸)

偏差値 case1 case2 case3

神戸 法 62.5 0.0746 0.0517 0.0554経済 60 0.0912 0.0499 0.0599経営 60 0.0908 0.0534 0.0537

小樽商科 商 50 0.0887 0.075 0.075

進路の表(小樽と神戸)

大学 学部 正規雇用率 進学率 卒業率 留年率 退学率

神戸 経済 51.4 5.4 73.4 25.5 1.1

経営 59.0 1.5 77.4 20.7 1.9

法 53.8 19.0 79.9 19.6 0.5

小樽商科 商 78.7 0.2 84.9 12.9 2.2

小樽商科と神戸の比較

神戸は小樽商科に比べて    ①非正規雇用率が高い  ②進学率が高い  ③留年率が高い

以上の3点より、 case1では神戸の値が小樽商科を上回るが、 case2において神戸の値が下回る。

結論高い収益率が期待できる学部は、商(経

営)・経済

理由: 卒業生が、他の学部に比べて、金融・    証券等、賃金の高い職に就く比率が高い。

特に小樽商科(商)の収益率は慶応(法)を上回る

→ 偏差値が高い大学が、収益率が高いとは必ず  しも言えない。大学より学部の違いのほうが、  収益率に大きな影響を与える可能性が高い。

結論

同じ学部であれば、偏差値が低い大学ほど、  収益率は低い傾向。理由: 偏差値が低い大学ほど、大企業に就く割合や正規雇用率が低い。退学率が高い。

高千穂大学(商)の収益率 0.01194は、 2010年(入学前年)の長期利子率 0.01187(年率 )とほぼ同じ

結論同じ学部であれば、偏差値が低い大学ほど、  収益率は低い傾向にある。理由: 偏差値が低い大学ほど、大企業に就く割合や  正規雇用率が低く、また退学率が高い傾向にある。

高千穂大学(商)の収益率 0.01194 は、 2011年(入学年)の長期利子率( 30年国債の 応募者利回り) 0.02078 (年率 )を下回る。

課題

より多くの大学の調査 (特に大阪市立大学、一橋大学)

理系の調査

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