杏林大学割り箸事件 経緯とその背景 

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杏林大学割り箸事件 経緯とその背景 . 杏林大学割り箸事件被告人支援の会会長 脳神経外科専門医 「いのげ」医師. 医療崩壊の原因因子. 刑事  業務上過失致死 ・傷害    医師法 21 条(事故死亡例届出義務) 民事訴訟   (損害賠償請求・期待権) 労働条件問題   (長時間労働・業務の増加・待遇改善). 刑事裁判用語. 検察 VS 被告人 当事者主義+職権主義 精密司法 証拠能力と証明力 証人と鑑定人 冒頭陳述⇒本人尋問⇒  証人尋問(主尋問+反対尋問)  ⇒論告求刑⇒最終弁論⇒判決 検察側に立証責任 (公判前整理制度). 過失犯. - PowerPoint PPT Presentation

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杏林大学割り箸事件杏林大学割り箸事件経緯とその背景 経緯とその背景 

杏林大学割り箸事件被告人支援の会会長杏林大学割り箸事件被告人支援の会会長脳神経外科専門医脳神経外科専門医

「いのげ」医師「いのげ」医師

医療崩壊の原因因子医療崩壊の原因因子 刑事 刑事       業務上過失致死業務上過失致死・傷害・傷害   医師法   医師法 2121 条(事故死亡例届出義務)条(事故死亡例届出義務)

民事訴訟民事訴訟  (損害賠償請求・期待権)  (損害賠償請求・期待権)

労働条件問題労働条件問題  (長時間労働・業務の増加・待遇改善)  (長時間労働・業務の増加・待遇改善)

刑事裁判用語刑事裁判用語 検察検察 VSVS 被告人被告人 当事者主義+職権主義当事者主義+職権主義 精密司法精密司法 証拠能力と証明力証拠能力と証明力 証人と鑑定人証人と鑑定人 冒頭陳述⇒本人尋問⇒冒頭陳述⇒本人尋問⇒ 証人尋問(主尋問+反対尋問) 証人尋問(主尋問+反対尋問) ⇒論告求刑⇒最終弁論⇒判決 ⇒論告求刑⇒最終弁論⇒判決 検察側に立証責任検察側に立証責任 (公判前整理制度)(公判前整理制度)

過失犯過失犯 過失傷害罪(過失傷害罪( 209209 条)・過失致死罪(条)・過失致死罪( 210210 条) 業条) 業

務上過失傷害罪・務上過失傷害罪・業務上過失致死罪業務上過失致死罪(( 211211 条)条) 失火罪(失火罪( 116116 条)条) 過失激発物破裂罪(過失激発物破裂罪( 117117 条条 22 項)項) 業務上失火等罪(業務上失火等罪( 117117 条の条の 22 )) 過失建造物等浸害罪(過失建造物等浸害罪( 122122 条)条) 過失往来危険罪・業務上過失往来危険罪(過失往来危険罪・業務上過失往来危険罪( 129129 条)条) (過失傷害罪は親告罪 他に道路交通法規定に多 (過失傷害罪は親告罪 他に道路交通法規定に多

数)数)

過失犯処罰の責任主義過失犯処罰の責任主義・刑法・刑法 3838 条第1項  条第1項  故意に基づかない行為は処罰しない故意に基づかない行為は処罰しない⇒⇒ 例外的処罰類型例外的処罰類型・法益保護目的 無過失行為は処罰対象外・法益保護目的 無過失行為は処罰対象外・故意犯⇒直接的規範・故意犯⇒直接的規範 自己の違法を認識する機会あり 自己の違法を認識する機会あり 過失犯⇒間接的規範 過失犯⇒間接的規範 注意すれば犯罪事実の認識が可能 注意すれば犯罪事実の認識が可能

過失の構成要件(=必要条件)過失の構成要件(=必要条件) 予見可能性( 診断)≒予見可能性( 診断)≒ 旧過失論 (因果関係のみ重視)故意犯同様 旧過失論 (因果関係のみ重視)故意犯同様  新過失論 (リスクを認容:客観的注意義務)新過失論 (リスクを認容:客観的注意義務) 新々過失論(危惧説) 新々過失論(危惧説)  修正旧過失論(実行行為性で範囲を限定)修正旧過失論(実行行為性で範囲を限定) 結果回避可能性( 救命可能性)≒結果回避可能性( 救命可能性)≒ =因果関係証明 =因果関係証明 十中八九判決 十中八九判決

新過失論と修正旧過失論新過失論と修正旧過失論 新過失論  新過失論 違法性=社会的相当性を逸脱した法益侵害違法性=社会的相当性を逸脱した法益侵害実行行為=客観的注意義務違反実行行為=客観的注意義務違反注意義務=回避と予見  回避に動機付ける予見注意義務=回避と予見  回避に動機付ける予見ふぐの肝の毒⇒肝の毒を認識⇒結果回避措置が可能ふぐの肝の毒⇒肝の毒を認識⇒結果回避措置が可能 修正旧過失論 修正旧過失論違法性=法益侵害違法性=法益侵害 (( ないしその危険性)ないしその危険性)実行行為=法益侵害の実行行為実行行為=法益侵害の実行行為注意義務=予見のみ   責任批難を基礎付ける予見注意義務=予見のみ   責任批難を基礎付ける予見ふぐの肝の毒⇒障害結果の可能性⇒認識不可能ふぐの肝の毒⇒障害結果の可能性⇒認識不可能

医療水準:最高裁判例医療水準:最高裁判例医師の注意義務の基準医師の注意義務の基準一般的には診療当時の一般的には診療当時の

臨床医学の実践における医療水準臨床医学の実践における医療水準

医療水準は注意義務の基準(規範)医療水準は注意義務の基準(規範)平均的医師が現に行っている医療慣行とは平均的医師が現に行っている医療慣行とは

必ずしも一致するものではない必ずしも一致するものではない、医師が医療慣行に従った医療行為を行ったからといって、医療水準に従った注意義務を尽くしたと直ちにいうことはできない。、医師が医療慣行に従った医療行為を行ったからといって、医療水準に従った注意義務を尽くしたと直ちにいうことはできない。

事件番号:平成事件番号:平成 4(4(オオ )251 )251  裁判年月日:平成 裁判年月日:平成 88年年0101月月2323日  最高裁判所第三小法廷  判例集巻・号・頁:第日  最高裁判所第三小法廷  判例集巻・号・頁:第 5050巻巻11号号11頁頁

割り箸事件の特徴割り箸事件の特徴 小児小児後頭蓋窩穿通性脳損傷後頭蓋窩穿通性脳損傷専門外の病態を含む 前例の無い前例の無いきわめて稀な受傷機序きわめて稀な受傷機序疾患特異性の低い症状乏しい問診 重大な結果一部ミスリードを含む乏しい情報アンダートリアージ時間外診療 経験浅い医師経験浅い医師 判断判断における過失の有無における過失の有無

判決による事件の経緯判決による事件の経緯 AAちゃん 4才 発育発達正常ちゃん 4才 発育発達正常 19991999年(平成年(平成 1111年)年) 77月月 1111日(土)夕 日(土)夕  母 母 次兄と共に次兄と共に自宅近くの区立障害児施設 自宅近くの区立障害児施設  の夏祭りに参加 の夏祭りに参加 ボランティアの出店から割り箸付綿飴をもらボランティアの出店から割り箸付綿飴をもらうう

母親はチケットを貰うために子供から離れる母親はチケットを貰うために子供から離れる 午後午後 66 時時 1010分ころ直後に前方へ転倒・受傷分ころ直後に前方へ転倒・受傷

直後の目撃者直後の目撃者

受付嬢:離れた位置から眼鏡を外していたの受付嬢:離れた位置から眼鏡を外していたのでで     細かいところは見えないが      細かいところは見えないが      数歩 歩いて前方へ転倒するのを     数歩 歩いて前方へ転倒するのを見た見た職員の母:転倒した次の瞬間から目撃職員の母:転倒した次の瞬間から目撃       左手で何かを抜く様な仕草を       左手で何かを抜く様な仕草をしたした       救急隊員に同様の情報を話し       救急隊員に同様の情報を話したのはたのは       別人       別人             施設職員に事件後に緘口令 施設職員に事件後に緘口令

現場施設勤務看護婦現場施設勤務看護婦 祭りなので浴衣を着用していた祭りなので浴衣を着用していた 受傷2~受傷2~ 55分後に駆けつける分後に駆けつける 意識状態半昏睡 舌根沈下を認める意識状態半昏睡 舌根沈下を認める 下顎挙上で泣き出す下顎挙上で泣き出す 看護室へ搬送看護室へ搬送 ぐったりしていたぐったりしていた 経緯を救急隊員へ引継⇒隊員聞いていない経緯を救急隊員へ引継⇒隊員聞いていない

救急隊長救急隊長 救急救命士資格所持救急救命士資格所持 収容時点では声かけにて自然に開眼収容時点では声かけにて自然に開眼 咽頭部刺創あり耳鼻科受診の必要があると判断咽頭部刺創あり耳鼻科受診の必要があると判断 救急車中激しい嘔吐一回 ぐったり 声掛けに返救急車中激しい嘔吐一回 ぐったり 声掛けに返

事なし事なし 報告書記載:バイタル正常 意識清明 神経症状報告書記載:バイタル正常 意識清明 神経症状

なしなし嘔吐あり 「割り箸がのどに刺さって抜いた」嘔吐あり 「割り箸がのどに刺さって抜いた」 重症と認識していたと証言(ぐったり)重症と認識していたと証言(ぐったり) 数ヶ所の総合病院耳鼻科に電話連絡数ヶ所の総合病院耳鼻科に電話連絡 杏林大学病院が受入れ杏林大学病院が受入れ

管理当直医管理当直医 皮膚科講師  電話連絡のみ担当皮膚科講師  電話連絡のみ担当 2424 時間拘束 救急連絡を各科に割振り時間拘束 救急連絡を各科に割振り 電話連絡で「箸でのどを突いた」電話連絡で「箸でのどを突いた」 ⇒⇒ 頚部外表面外傷と解釈頚部外表面外傷と解釈 連絡内容から軽症と判断連絡内容から軽症と判断 ⇒⇒ 形成外科一次二次相当と判断・連絡形成外科一次二次相当と判断・連絡

NN 医師(当時医師(当時 3131歳)歳) 事件当時卒後事件当時卒後 33年目 研修明け年目 研修明け 22ヶ月目ヶ月目 杏林大卒 杏林大卒  杏林大病院 独協大越谷病院で研修杏林大病院 独協大越谷病院で研修 事件当日一人当直 事前連絡なし事件当日一人当直 事前連絡なし 父 元裁判官弁護士 父 元裁判官弁護士  叔母 弁護士  叔母 弁護士  兄 民法学者 兄 民法学者

救急部夜勤看護婦救急部夜勤看護婦 終始ぐったりしていたが重症という感じではなかっ終始ぐったりしていたが重症という感じではなかっ

たた 救急外来で患児を処置台に寝かせることなかった救急外来で患児を処置台に寝かせることなかった 来院時かろうじて開口来院時かろうじて開口 医師・患児・母親と供に耳鼻科外来へ移動医師・患児・母親と供に耳鼻科外来へ移動 診察室へ移動中嘔吐一回診察室へ移動中嘔吐一回 看護婦がその場を離れている間に帰宅指示⇒帰宅看護婦がその場を離れている間に帰宅指示⇒帰宅 翌日急変後に自主的に記録を作成 JCS-1翌日急変後に自主的に記録を作成 JCS-1

母親証言母親証言 終始開眼体動なく「昏睡状態のような感終始開眼体動なく「昏睡状態のような感じ」じ」

開口できないので後から手を添えて開けた開口できないので後から手を添えて開けた 「こんなにぐったりしてるのに大丈夫なん「こんなにぐったりしてるのに大丈夫なん

ですか?」⇒「呼吸もしてるし、大丈夫」ですか?」⇒「呼吸もしてるし、大丈夫」

午後午後 66 時時 4040分一次二次救急室到分一次二次救急室到着着

形成外科担当表示⇒耳鼻科受診希望形成外科担当表示⇒耳鼻科受診希望 ⇒⇒NN 医師コール 医師コール  66 時時 5050分引継ぎ分引継ぎ 隊長が刺創部をライトで示す 自発的開口隊長が刺創部をライトで示す 自発的開口   NN 医師から隊長への自発的質問なし医師から隊長への自発的質問なし 隣接する大学病院耳鼻科外来へ移動隣接する大学病院耳鼻科外来へ移動 「どうしました?」「どうしました?」 「転んで箸でのどを突きました」「転んで箸でのどを突きました」 (「割り箸はありますか?」⇒未だ発見され(「割り箸はありますか?」⇒未だ発見されず)ず)

診療録内容(医師記載分診療録内容(医師記載分 1 of 1 of 22 ))

Chief complaintChief complaint : : 口の中をハシでつついた口の中をハシでつついたHistoryHistory    of Present Illnessof Present Illness

         7/10 PM 6:157/10 PM 6:15 頃 おハシをくわえてこ頃 おハシをくわえてころび軟口蓋にささったろび軟口蓋にささった

    救急車内で嘔吐1回    救急車内で嘔吐1回

Past History: Asthma(-)Past History: Asthma(-)Family: History :Family: History :  出血性素因については不明 出血性素因については不明Status Presens:Status Presens: PM6:50 N PM6:50 N 医師・救急車にて来院医師・救急車にて来院開口命令に対し開口開口命令に対し開口 OKOK意識レベル Ⅰ意識レベル Ⅰ -2 -2 と思われる。と思われる。髄膜刺激症状なし髄膜刺激症状なし         (手描き図)      裂傷 出血(-)         (手描き図)      裂傷 出血(-)   0.7cX0.5cm0.7cX0.5cm    ケナログ   ケナログ BepBep ハシはすでにぬけていたため深さについてはハシはすでにぬけていたため深さについては不明不明BW)16KBW)16K ggRpRp )メイアクト()メイアクト( DS)160mgDS)160mg )3)3 XX  2 2 TDTD  ポンタール(  ポンタール( Sy)Sy) 9ml9ml7/12(7/12( 月)再⇒月)再⇒ NN 医師   逢合するかどうか決める医師   逢合するかどうか決める  意識レベルの低下 出血の増強した時には再度来院を指意識レベルの低下 出血の増強した時には再度来院を指示示  髄膜炎の可能性も有るので抗生物質を投与  髄膜炎の可能性も有るので抗生物質を投与

帰宅帰宅

「こんなにぐったりしているのに大丈夫です「こんなにぐったりしているのに大丈夫ですか?」か?」

「呼吸もしているし、大丈夫」「呼吸もしているし、大丈夫」⇒⇒ 自宅へ連絡:午後自宅へ連絡:午後 77 時ちょうど時ちょうど父が車で迎え、母はけやき園に寄って自転車を父が車で迎え、母はけやき園に寄って自転車を

回収回収抗生剤内服させるも嘔吐した その後嘔吐なし抗生剤内服させるも嘔吐した その後嘔吐なし母親は隣の部屋にて徹夜で試験の採点母親は隣の部屋にて徹夜で試験の採点

翌朝急変、死亡翌朝急変、死亡 翌翌 77 月月 1111 日(日)朝6時 呼びかけに頷く日(日)朝6時 呼びかけに頷く 77 時時 3030 分 兄が急変に気付く 分 兄が急変に気付く  CPACPA 7時7時 4444 分救急車着⇒杏林大病院へ搬送分救急車着⇒杏林大病院へ搬送 ⇒⇒ 蘇生処置 救急科蘇生処置 救急科 TT 医師対応医師対応 耳鼻科カルテ取り寄せ 耳鼻科カルテ取り寄せ  NN 医師も駆け付け医師も駆け付け

るる ⇒⇒AM9AM9 時2分死亡確認 院内ルーチンで時2分死亡確認 院内ルーチンで LPLP ⇒⇒ 血性髄液⇒家族の同意を得て血性髄液⇒家族の同意を得て CTCT && XpXp

死亡後の病院対応死亡後の病院対応 10時半耳鼻科教授救急科講師説明 10時半耳鼻科教授救急科講師説明  NN 医師同席医師同席 出血原因は不明  鑑別診断として出血原因は不明  鑑別診断として AVMAVM 前日診察に過誤は無いと説明 ⇒メモ前日診察に過誤は無いと説明 ⇒メモ なぜ入院させてくれなかったんですか?⇒反駁なしなぜ入院させてくれなかったんですか?⇒反駁なし 警察へ届出⇒検死⇒司法解剖警察へ届出⇒検死⇒司法解剖 警察は警察は ChildChild    AbuseAbuse の可能性も取調べの可能性も取調べ カルテ等も同日午前中に押収カルテ等も同日午前中に押収 翌12日司法解剖  割り箸遺残を発見翌12日司法解剖  割り箸遺残を発見 ⇒⇒父親に説明 母親には伏せる旨希望父親に説明 母親には伏せる旨希望

情報漏洩!情報漏洩! 割り箸遺残をテレビ報道割り箸遺残をテレビ報道 ⇒⇒ 母親が知り激怒「病院による証拠隠滅」母親が知り激怒「病院による証拠隠滅」 ⇒⇒ 患者団体と連携患者団体と連携 ⇒⇒ 病院との折衝不調病院との折衝不調 ⇒⇒ 民事訴訟 病院と民事訴訟 病院と NN 医師に各々約医師に各々約 4422

0000万万  母親が手記を出版 母親が手記を出版

裁判の経緯裁判の経緯 19991999 年年 77 月月 1111 日 事件発生日 事件発生 20002000 年年 77 月上旬 書類送検月上旬 書類送検 この間 民事訴訟 約 この間 民事訴訟 約 84008400 万賠償請求万賠償請求 20022002 年年 77 月上旬 起訴月上旬 起訴   22 ちゃんねるで活発な議論⇒支援の会結成ちゃんねるで活発な議論⇒支援の会結成 20022002 年年 1111 月月 2828 日初公判日初公判 公判公判 4444 回 関係者証人回 関係者証人 1010人 医師証人人 医師証人 1414人人

20062006 年年 33 月月 2828 日 一審無罪判決日 一審無罪判決

支援の会方針支援の会方針 精神的援助 医学的検討を行う精神的援助 医学的検討を行う 支援活動は刑事に限定支援活動は刑事に限定 患者・家族を批難しない患者・家族を批難しない 原則匿名原則匿名 毎月一回ネット会議 支援の会HP⇒毎月一回ネット会議 支援の会HP⇒ IRCIRC 2ちゃんねる医労連2ちゃんねる医労連

判決の概略判決の概略 事実関係の評価 予見可能性(診断)につい事実関係の評価 予見可能性(診断)については検察側の主張を全面的に認めるては検察側の主張を全面的に認める

救命可能性については弁護側の主張を認める救命可能性については弁護側の主張を認める (根拠は司法解剖鑑定書) (根拠は司法解剖鑑定書) 「過失」が有ったと認定「過失」が有ったと認定 「急変後にカルテを書き加えた」と認定「急変後にカルテを書き加えた」と認定 検察側の主張なし 実行段階の検証なし 検察側の主張なし 実行段階の検証なし「改ざん」という言葉は判決文にはない「改ざん」という言葉は判決文にはない

過失の構成要件過失の構成要件

予見可能性( 診断)≒予見可能性( 診断)≒ ⇒頭部 ⇒頭部 CTCT 撮影又は脳神経外科紹介すべき撮影又は脳神経外科紹介すべき

結果回避可能性( 救命可能性)≒結果回避可能性( 救命可能性)≒

証人耳鼻科医証人耳鼻科医 OO 医師    元東邦大耳鼻科助教授・開医師    元東邦大耳鼻科助教授・開

業医業医 I I 医師医師   新潟大学耳鼻科教授   新潟大学耳鼻科教授

HH 医師   杏林大耳鼻科教授医師   杏林大耳鼻科教授 KK 医師   千葉県立こども病院耳鼻科部医師   千葉県立こども病院耳鼻科部

長長

来院時症状来院時症状ぐったり 発語なし 嘔気持続 自力歩行なしぐったり 発語なし 嘔気持続 自力歩行なし救急隊:0  看護師:1  救急隊:0  看護師:1   NN 医師:Ⅰ-2医師:Ⅰ-2母 「昏睡状態のような感じ」母 「昏睡状態のような感じ」看護婦エプロンの紐握る 吐物に血混ざり看護婦エプロンの紐握る 吐物に血混ざり開口指示に従う(母が後から支えた?) 開口指示に従う(母が後から支えた?) 瞳孔異常なし 下部脳神経症状なし瞳孔異常なし 下部脳神経症状なし転倒・咽頭部刺創 「刺さったが抜いた」転倒・咽頭部刺創 「刺さったが抜いた」

検査方法検査方法 問診 問診  VITAL SIGNVITAL SIGN 神経学的所見神経学的所見 局所診察局所診察 経鼻ファイバースコープ経鼻ファイバースコープ 頭部単純写真頭部単純写真 頭部CT頭部CT 頭部頭部 MRIMRI  ⇒拡散強調画像の普及は翌年 ⇒拡散強調画像の普及は翌年

裁判所の判断裁判所の判断具体的な刺入+可能性程度も含め 除外診断具体的な刺入+可能性程度も含め 除外診断救急隊意識状態報告があっても医師も意識状態評価救急隊意識状態報告があっても医師も意識状態評価裂傷と救急記録に記載⇒深さを疑っていない裂傷と救急記録に記載⇒深さを疑っていない顕著な所見なし⇒血管損傷が無いこととは限らない顕著な所見なし⇒血管損傷が無いこととは限らない

⇒⇒ 注意義務違反・過失あり注意義務違反・過失あり

過失の構成要件過失の構成要件

予見可能性( 診断)≒予見可能性( 診断)≒

結果回避可能性( 救命可能性)≒結果回避可能性( 救命可能性)≒

死因死因

  検察側 検察側  後頭蓋窩急性硬膜下出血による脳ヘルニア 後頭蓋窩急性硬膜下出血による脳ヘルニア ⇒開頭血腫除去にて90%以上救命可能 ⇒開頭血腫除去にて90%以上救命可能

弁護側弁護側 左 左 SS 状静脈洞血栓⇒静脈還流障害⇒脳浮腫状静脈洞血栓⇒静脈還流障害⇒脳浮腫 ⇒外科的再建はほぼ不可能 ⇒外科的再建はほぼ不可能

死亡後死亡後 CTCT 所見所見 1 厚さ約1 厚さ約 1cm1cm の後頭蓋窩急性硬膜下血腫の後頭蓋窩急性硬膜下血腫

   血腫による数ミリの脳幹圧排(左⇒右) 血腫による数ミリの脳幹圧排(左⇒右) 2 微量の気脳症2 微量の気脳症 3 頚静脈孔からの方向に一致して直線状3 頚静脈孔からの方向に一致して直線状

に連続した小脳半球内のに連続した小脳半球内の air densityair density 4 軽度の脳室拡大(水頭症)4 軽度の脳室拡大(水頭症) 5 四丘体槽の狭小化5 四丘体槽の狭小化

司法解剖:死亡翌日施行司法解剖:死亡翌日施行 割り箸遺残割り箸遺残 7.6cm7.6cm 頸静脈孔から後頭蓋窩内出血 頸静脈孔から後頭蓋窩内出血  24ml24ml 高度の脳浮腫 脳重量高度の脳浮腫 脳重量 15101510gg 脳ヘルニアなし脳ヘルニアなし 救命可能性は約50%救命可能性は約50% 診察は不適切診察は不適切

頸静脈孔の解剖と割り箸の経頸静脈孔の解剖と割り箸の経路路

  注:この骨格標本は成人です

参考文献:臨床のための脳局所解剖学(中外医薬社)

顕微鏡下手術のための脳神経外科解剖(微小能神経解剖セミナー)

頸静脈孔↓

後頭蓋窩を上方より見た図おにぎり型に陥凹している部分が小脳の位置する後頭蓋窩

上方から見た後頭蓋窩上方から見た後頭蓋窩

頚静脈孔レベルのMRI頸静脈は頸静脈孔内を内後上から外前下へ走行する

↑延髄

頸静脈孔⇒

←小脳半球

右 左

後頭蓋窩↓

割り箸穿通外傷の再割り箸穿通外傷の再現現

赤矢印が想定される割り箸の方向

延髄の位置より外側であり,損傷は小脳半球に限定される。

後頭蓋窩を上方より見た図割り箸はこの方向で刺入した

と思われる

頸静脈孔⇒

↑延髄

下方から見た頭蓋底下方から見た頭蓋底

直下方から頭蓋底を見る解剖学の教科書でみかけるのは主にこの図である。頸静脈孔の内腔は見えない

やや前下方から見ると走行に沿うので後頭蓋窩内が見える

↑左頸静脈孔 ↑

左頸静脈孔

割り箸穿通外傷の再現割り箸穿通外傷の再現

↑頸静脈孔

↑頸静脈孔

口腔から頸静脈孔を経て小脳半球に達する割り箸の方向はこの図の方向にほぼ限定される。

割り箸穿通外傷の再現割り箸穿通外傷の再現

↑頸静脈孔

↑頸静脈孔

弁護側証人口腔外科医によると硬口蓋に当たって折れ、口蓋に平行に刺入

午後午後 66 時時 4040分一次二次救急室到着分一次二次救急室到着

咽頭咽頭

小脳半球小脳半球

前方からの図前方からの図

大脳の静脈還流は主として大脳の静脈還流は主として上司状静脈洞を後方に上司状静脈洞を後方に交会部に至り両側の交会部に至り両側の横静脈洞に二分して横静脈洞に二分してS状静脈洞を経てS状静脈洞を経て頸静脈孔を通り頸静脈孔を通り頸静脈へ還流する頸静脈へ還流する

両側の急速な頸静脈閉塞は両側の急速な頸静脈閉塞は致死的な脳浮腫をきたす致死的な脳浮腫をきたす緩徐な場合は側副血行路緩徐な場合は側副血行路の拡大が生じて致死的にはの拡大が生じて致死的には至らない至らない

司法解剖鑑定書司法解剖鑑定書血栓形成の範囲血栓形成の範囲

 穿通性脳損傷 穿通性脳損傷8~15才又は4才以下に多い8~15才又は4才以下に多い ((文献によって異なる)文献によって異なる)止血 創処置 感染の防止が治療の原則止血 創処置 感染の防止が治療の原則MRIが有用MRIが有用脳損傷は限局されている脳損傷は限局されている死因としては大きな脳内血腫 異物抜去時の大出血死因としては大きな脳内血腫 異物抜去時の大出血偽性脳動脈瘤の破裂 脳幹部穿通など多様偽性脳動脈瘤の破裂 脳幹部穿通など多様生命予後は比較的良好であり感染による死亡例は少ない生命予後は比較的良好であり感染による死亡例は少ない

小児頭部外傷(医学書院) 小児頭部外傷(医学書院) p95p9554例中43%に感染症の合併54例中43%に感染症の合併54%が予後良好であった54%が予後良好であった(( Domingo Z :Low velocity penetrating craniocerebral injury Domingo Z :Low velocity penetrating craniocerebral injury

in childhoodin childhood    , Pediatr Neurosurg 21;45, Pediatr Neurosurg 21;45~~ 49,1994)49,1994)

判決の概略判決の概略 事実関係の評価 予見可能性(診断)につい事実関係の評価 予見可能性(診断)については検察側の主張を全面的に認めるては検察側の主張を全面的に認める

救命可能性については弁護側の主張を認める救命可能性については弁護側の主張を認める (根拠は司法解剖鑑定書) (根拠は司法解剖鑑定書) 「過失」が有ったと認定「過失」が有ったと認定 「急変後にカルテを書き加えた」と認定「急変後にカルテを書き加えた」と認定 検察側の主張なし 実行段階の検証なし 検察側の主張なし 実行段階の検証なし「改ざん」という言葉は判決文にはない「改ざん」という言葉は判決文にはない

カルテ改ざん認定の根拠カルテ改ざん認定の根拠 咽頭刺傷から髄膜炎になる例は稀咽頭刺傷から髄膜炎になる例は稀 髄膜炎なら治療として内服薬は不適切 髄膜炎なら治療として内服薬は不適切 小児の意識レベルの正しい測定は困難なJ小児の意識レベルの正しい測定は困難なJCSを見当職障害があったような記載をしCSを見当職障害があったような記載をしたことが疑問たことが疑問

裂傷と診断しているのに深さについて記載裂傷と診断しているのに深さについて記載するのは不自然するのは不自然

Past History: Asthma(-)Past History: Asthma(-)Family: History :Family: History :  出血性素因については不明 出血性素因については不明Status Presens:Status Presens: PM6:50 N PM6:50 N 医師 救急車にて来院医師 救急車にて来院開口命令に対し開口開口命令に対し開口 OKOK意識レベル Ⅰ意識レベル Ⅰ -2 -2 と思われる。と思われる。髄膜刺激症状なし髄膜刺激症状なし         (手描き図)      裂傷 出血         (手描き図)      裂傷 出血(-) (-)  0.7cX0.5cm0.7cX0.5cm    ケナログ   ケナログ BepBep ハシはすでにぬけていたため深さについてはハシはすでにぬけていたため深さについては不明不明BW)16KBW)16K ggRpRp )メイアクト()メイアクト( DS)160mgDS)160mg )3)3 XX  2 2 TDTD  ポンタール(  ポンタール( Sy)Sy) 9ml9ml7/12(7/12( 月)再⇒月)再⇒ NN 医師  逢合するかどうか決める医師  逢合するかどうか決める  意識レベルの低下 出血の増強した時には再度来院を指意識レベルの低下 出血の増強した時には再度来院を指示示  髄膜炎の可能性も有るので抗生物質を投与  髄膜炎の可能性も有るので抗生物質を投与

カルテ改ざん認定の根拠カルテ改ざん認定の根拠 咽頭刺傷から髄膜炎になる例は稀咽頭刺傷から髄膜炎になる例は稀 髄膜炎なら治療として内服薬は不適切 髄膜炎なら治療として内服薬は不適切 小児の意識レベルの正しい測定は困難なJ小児の意識レベルの正しい測定は困難なJCSを見当職障害があったような記載をしCSを見当職障害があったような記載をしたことが疑問たことが疑問

裂傷と診断しているのに深さについて記載裂傷と診断しているのに深さについて記載するのは不自然するのは不自然

判決文結語判決文結語  本件で 本件で AA ちゃんが遺(のこ)したものはちゃんが遺(のこ)したものは

「医師には眼前の患者が発するサインを見「医師には眼前の患者が発するサインを見逃さないことをはじめとして、真実の病態逃さないことをはじめとして、真実の病態を発見する上で必要な情報の取得に努め、を発見する上で必要な情報の取得に努め、専門性にとらわれることなく、患者に適切専門性にとらわれることなく、患者に適切な治療を受ける機会を提供することが求めな治療を受ける機会を提供することが求められている」というごく基本的なことだ。られている」というごく基本的なことだ。

医療刑事裁判制度医療刑事裁判制度 結果重視⇒結果重視⇒ Retorospective BiassRetorospective Biass 世論の影響は少ない世論の影響は少ない 政治的配慮?政治的配慮? 証人医師の不足(熱意・客観性・説得力)証人医師の不足(熱意・客観性・説得力) Cross Talk Discussion Cross Talk Discussion が無い非効率が無い非効率 論点が複雑な場合特に長期化論点が複雑な場合特に長期化 問題点の自覚はある問題点の自覚はある 公開性は本当にあるのか?公開性は本当にあるのか?

日本国憲法第日本国憲法第 8282 条条 1項 裁判の対審及び判決は、公開法廷で1項 裁判の対審及び判決は、公開法廷で

これを行ふ。 これを行ふ。 2項 裁判所が、裁判官の全員一致で、公2項 裁判所が、裁判官の全員一致で、公

の秩序又は善良の風俗を害する虞があるとの秩序又は善良の風俗を害する虞があると決した場合には、対審は、公開しないでこ決した場合には、対審は、公開しないでこれを行ふことができる。但し、政治犯罪、れを行ふことができる。但し、政治犯罪、出版に関する犯罪又はこの憲法第三章で保出版に関する犯罪又はこの憲法第三章で保障する国民の権利が問題となつてゐる事件障する国民の権利が問題となつてゐる事件の対審は、常にこれを公開しなければならの対審は、常にこれを公開しなければならない。ない。

検察の立場検察の立場政治家からの影響はほとんど無い政治家からの影響はほとんど無いマスコミ・世論の影響を受けやすいマスコミ・世論の影響を受けやすい医師を敵視している訳ではない医師を敵視している訳ではない正義感・使命感が強い 能力高い正義感・使命感が強い 能力高い秘密主義・情報漏れは非常に少ない秘密主義・情報漏れは非常に少ない無罪判決には厳しい内部処分:負けを恐れる無罪判決には厳しい内部処分:負けを恐れる 自白重視自白重視 取り調べに多少はダーティな手法を使う取り調べに多少はダーティな手法を使う 再発予防に貢献しない再発予防に貢献しない

警察の立場警察の立場 政治家からの影響を受けることもしばしば政治家からの影響を受けることもしばしば マスコミ・世論の影響を受けやすいマスコミ・世論の影響を受けやすい 医師を敵視している訳ではない医師を敵視している訳ではない 届出・告発を受けたら取り調べざるを得ない届出・告発を受けたら取り調べざるを得ない 情報漏れはしばしば有る情報漏れはしばしば有る 判断力は低い 送検して検察任せ判断力は低い 送検して検察任せ 自白重視自白重視 応用・判断は苦手 命令完遂能力は高い応用・判断は苦手 命令完遂能力は高い 検察ほどの主体性は無い検察ほどの主体性は無い

司法の自白重視主義司法の自白重視主義 当事者でなければ知りえないことが多い当事者でなければ知りえないことが多い 自白をすることが本人の更生に必要不可欠自白をすることが本人の更生に必要不可欠 佐々木知子元検事参議院議員佐々木知子元検事参議院議員

いくら裁判で否認しても最後に自白を出せば状況いくら裁判で否認しても最後に自白を出せば状況がきちんと書いてあれば信用できるがきちんと書いてあれば信用できる

日本の裁判の有罪率が高いのは調べのなかで自白日本の裁判の有罪率が高いのは調べのなかで自白があるからだがあるからだ

自白していないというのは情が悪い 堀田力元検自白していないというのは情が悪い 堀田力元検事事

被疑者としての医師の立場被疑者としての医師の立場 心理的環境としては圧倒的に孤立心理的環境としては圧倒的に孤立  弁護士含めて面会に制限  弁護士含めて面会に制限 取調べの重圧には強くない取調べの重圧には強くない 医学的知識は圧倒的に優越医学的知識は圧倒的に優越 弁護士の支援が絶対に必要弁護士の支援が絶対に必要 一般医師の支援は勾留中は限定的一般医師の支援は勾留中は限定的 社会アピール等に留まり本人には届かない 社会アピール等に留まり本人には届かない勾留は最長でも勾留は最長でも 2121日に留まる可能性が大日に留まる可能性が大

マスコミの立場マスコミの立場 空間的守備範囲は広い空間的守備範囲は広い 時間的守備範囲は狭い時間的守備範囲は狭い ⇒⇒ 「半可通」にならざるをえない「半可通」にならざるをえない ⇒⇒ 専門性が高い問題の理解は苦手専門性が高い問題の理解は苦手 活動の最大動機は商業主義活動の最大動機は商業主義 正義感は有る 判断力は低い正義感は有る 判断力は低い

報道に対する裁判外紛争処理機報道に対する裁判外紛争処理機関関

BROBRO :放送と人権等権利に関する委員会機構:放送と人権等権利に関する委員会機構 日本新聞労働組合連合報道被害相談窓口日本新聞労働組合連合報道被害相談窓口 法務省人権擁護局・(地方)法務局人権用語課法務省人権擁護局・(地方)法務局人権用語課 日本弁護士連合人権擁護委員会日本弁護士連合人権擁護委員会 日本雑誌協会雑誌人権ボックス日本雑誌協会雑誌人権ボックス(苦情転送のみ)(苦情転送のみ)

⇒⇒低コスト 正式な対応は不起訴のみ 一定の効果低コスト 正式な対応は不起訴のみ 一定の効果

割り箸事件に関する報道割り箸事件に関する報道 ワイドショー 女性週刊誌 新聞 大々的ワイドショー 女性週刊誌 新聞 大々的 予見可能性に関する検証なし予見可能性に関する検証なし 患者側からの情報中心患者側からの情報中心 (一部でバッシングの自覚あり)(一部でバッシングの自覚あり)

医師でも報道に疑問を抱かなかった人多数医師でも報道に疑問を抱かなかった人多数

医師の自律性が必要医師の自律性が必要

危険な医師を除外する努力危険な医師を除外する努力医道審改革医道審改革

リスクマネジメント・再発予防リスクマネジメント・再発予防事故発生時の患者に対する配慮事故発生時の患者に対する配慮

医師免許更新制度医師免許更新制度↓↓

医療不信解消医療不信解消

再発予防再発予防 情報のフィードバックが絶対に必要情報のフィードバックが絶対に必要 失敗を罰する文化は失敗を助長する失敗を罰する文化は失敗を助長する 実例をパターン解析実例をパターン解析 医療事故防止の技術医療事故防止の技術 Fool Proof Fool Proof な対応の推進な対応の推進

医療崩壊の原因因子医療崩壊の原因因子 刑事 刑事    業務上過失致死・傷害   業務上過失致死・傷害      医師法医師法 2121 条(事故死亡例届出義条(事故死亡例届出義

務)務)

民事訴訟民事訴訟  (損害賠償請求・期待権)  (損害賠償請求・期待権)

労働条件問題労働条件問題  (医師不足:長時間労働・待遇改善)  (医師不足:長時間労働・待遇改善)

医師法医師法 2121 条問題条問題 広尾病院最高裁判例 積極説広尾病院最高裁判例 積極説 異状がある時の積極的届出義務を認定異状がある時の積極的届出義務を認定 法医学会ガイドラインには触れず法医学会ガイドラインには触れず 大野病院事件とは経緯が異なる大野病院事件とは経緯が異なる とにかく届出ておくのが無難とにかく届出ておくのが無難

診療録記載診療録記載 事故後の改ざん・廃棄は危険・不利事故後の改ざん・廃棄は危険・不利

所見記載・説明内容は詳しく所見記載・説明内容は詳しく 評価記載は誤診の証拠となる危険性?評価記載は誤診の証拠となる危険性?

   SOAP SOP⇒SOAP SOP⇒

医療崩壊の原因因子医療崩壊の原因因子 刑事 刑事    業務上過失致死・傷害   業務上過失致死・傷害      医師法医師法 2121 条(事故死亡例届出義務)条(事故死亡例届出義務)

民事訴訟民事訴訟  (損害賠償請求・期待権)  (損害賠償請求・期待権)

労働条件問題労働条件問題  (長時間労働・業務の増加・患者問題)  (長時間労働・業務の増加・患者問題)

医師賠償責任保険の落とし穴医師賠償責任保険の落とし穴 発生主義ではなく,発見主義発生主義ではなく,発見主義 保険会社は患者と保険会社は患者と  直接交渉しない  直接交渉しない 刑事事件は補償対象外刑事事件は補償対象外(賠償金・弁護士費用)(賠償金・弁護士費用)慰謝料の基準なし慰謝料の基準なし  日本の医師賠償責任保険は日本の医師賠償責任保険は  すでに財政的に破綻  すでに財政的に破綻

医事紛争:民事訴訟医事紛争:民事訴訟 第三者調査機関設置 裁判外解決制度第三者調査機関設置 裁判外解決制度 産科医療に重大な影響⇒無過失保障制度産科医療に重大な影響⇒無過失保障制度 患者が訴訟を起す権利は否定できない患者が訴訟を起す権利は否定できない 事故後の説明 折衝が重要事故後の説明 折衝が重要 過失の自覚が有る場合は率直に謝罪した方過失の自覚が有る場合は率直に謝罪した方

が  結果的に穏便な場合も多いが  結果的に穏便な場合も多い 再発予防策を公表再発予防策を公表

加藤医師陳述加藤医師陳述「「 AA 子さんと遺族に対して申し訳ない 子さんと遺族に対して申し訳ない 哀悼の意を表したい哀悼の意を表したい通常通りの手術を行って 通常通りの手術を行って 結果は申し訳ないとしか言えないが結果は申し訳ないとしか言えないが自分はベストを尽くしやるだけのことをやった自分はベストを尽くしやるだけのことをやった結果は本当に申し訳ないと本当に思っておりま結果は本当に申し訳ないと本当に思っておりま

すす以上です」以上です」

年代別判決年代別判決時期時期 有責有責 無責無責 有罪有罪 無罪無罪 計計

05-4505-45 2626 1717 55 77 5555

46-5546-55 11 55 22 66 1414

56-6556-65 2424 2626 55 2020 7575

66-7566-75 5656 7070 1313 3030 169169

実数実数 106106 118118 2525 6363 313313

%% 47.647.6 52.452.4 28.428.4 71.671.6

医療崩壊の原因因子医療崩壊の原因因子 刑事 刑事    業務上過失致死・傷害   業務上過失致死・傷害   医師法   医師法 2121 条(事故死亡例届出義務)条(事故死亡例届出義務)

民事訴訟民事訴訟  (損害賠償請求・期待権)  (損害賠償請求・期待権)

労働条件問題労働条件問題  (医師不足:長時間労働・待遇改善)  (医師不足:長時間労働・待遇改善)

Fight or Fleight?Fight or Fleight?

勤務医の団結 勤務医の団結    ⇒任意団体    ⇒任意団体    労働組合     批判の矢面となる?   労働組合     批判の矢面となる?

立ち去り型サボタージュ(逃散)立ち去り型サボタージュ(逃散)   ⇒医療荒廃・崩壊    崩壊後再建   ⇒医療荒廃・崩壊    崩壊後再建

は困難は困難

医師法医師法 1919 条条 11 項項 「診療に従事する医師は,診察治療の求め「診療に従事する医師は,診察治療の求め

があった場合には,正当な事由がなければ,があった場合には,正当な事由がなければ,これを拒んではならない」これを拒んではならない」

個人には罰則なし個人には罰則なし 法人には過失・民事有責と見なされる可能法人には過失・民事有責と見なされる可能

性性

診療拒否の正当事由診療拒否の正当事由 1)医療報酬が不払であっても直ちにこれを理由として診療を拒むことはできな1)医療報酬が不払であっても直ちにこれを理由として診療を拒むことはできな

い。い。 2)診療時間を制限している場合であってもこれを理由として急を要する患者の2)診療時間を制限している場合であってもこれを理由として急を要する患者の

診療を拒むことは許されない。診療を拒むことは許されない。 3)特定人たとえば特定の場所に勤務する人々のみの診療に従事する医師であっ3)特定人たとえば特定の場所に勤務する人々のみの診療に従事する医師であっても,緊急の治療を要する患者がある場合においては,その近辺に他の診療に従ても,緊急の治療を要する患者がある場合においては,その近辺に他の診療に従事する医師がいない場合には,やはり診療の求めに応じなければならない。事する医師がいない場合には,やはり診療の求めに応じなければならない。

4)天候の不良等も,事実上往診の不可能な場合を除いて診療の求めに応じなけ4)天候の不良等も,事実上往診の不可能な場合を除いて診療の求めに応じなければならない。ればならない。

5)医師が自己の標榜する診療科名以外の診療科に属する疾病について診療を求5)医師が自己の標榜する診療科名以外の診療科に属する疾病について診療を求められた場合も,医師が自分の専門外の領域であることなどを理由に診療を拒否められた場合も,医師が自分の専門外の領域であることなどを理由に診療を拒否した場合,患者がこれを了承すれば,一応正当の理由と認め得るが,了承しないした場合,患者がこれを了承すれば,一応正当の理由と認め得るが,了承しないで依然診療を求めるときは,応急の措置その他のことをしなければならない。で依然診療を求めるときは,応急の措置その他のことをしなければならない。

 厚生省は「 厚生省は「医師が来院した患者に対し、休日夜間診療所、休日夜間当番医など医師が来院した患者に対し、休日夜間診療所、休日夜間当番医などで診療を受けるよう指示することは、医師法第で診療を受けるよう指示することは、医師法第 1919 条の規定に違反しない条の規定に違反しないものと解ものと解される」と回答している される」と回答している ((昭和昭和 49.4.1649.4.16 医収医収 412)412)。。

病気は可 少々の疲労では不可病気は可 少々の疲労では不可

参考文献参考文献医療崩壊―「立ち去り型サボタージュ」とは何か 小松 秀樹 ( 著 ) ¥ 1,680 (税込)朝日新聞社

  

「改革」のための医療経済学兪 炳匡 ( 著 ) ¥ 1,995 (税込) メディカ出版

「割り箸が脳に刺さったわが子」と「大病院の態度」 杉野 文栄 ( 著 ) 小学館文庫:絶版

 失敗学のすすめ

畑村 洋太郎 ( 著 ) 講談社

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