Cognitive Radio Network)について - 九州工業大学 塚...

Preview:

Citation preview

1

Network Design Research Center

ネットワークアーキテクチャ特論:コグニティブ無線ネットワーク

(Cognitive Radio Network)について

塚本 和也

尾家 祐二

大学院ネットワークアーキテクチャ特論2014年10月30日(木) 10:30~12:00

Network Design Research Center

目次

背景:周波数割り当てとその利用状況

ホワイトスペースに関する各国の 新動向

コグニティブ無線

コグニティブ無線からコグニティブ無線ネットワークへ

上位レイヤにおける課題

ネットワークレイヤ

トランスポートレイヤ

車車間通信への適用

実証実験の概要

まとめと参考文献

2

前回

今回

2

Network Design Research Center

コグニティブ無線とは(1)

ソフトウェア無線(Software Radio: SR) 電子回路(ハードウェア)に変更を加えることなく、制御ソフトウェアを変

更することによって、無線通信方式を切り替えることが可能な無線通信、又はその技術。 (ウィキペディアより引用)

コグニティブ無線 ソフトウェア無線の拡張

定義:「通信環境とのインタラクションを通じて、通信に必要なパラメータを動的に変更する能力」を指す (FCC05)

[5] Facilitating opportunities for flexible, efficient, and reliable spectrum use employing cognitive radio technologies. FCC Report and Order, FCC-05-57A1. 1. March 11, 2005

解釈の違いによって様々な呼び名が存在 ダイナミックスペクトラムアクセス(Dynamic spectrum

access:DSA)と同義 3

Network Design Research Center

コグニティブ無線とは(2)

「通信環境とのインタラクション」とは 周辺の電波環境や利用者のニーズに関する認知(=cognition)

周辺の電波環境 「周波数,伝送方式,プロトコル」「ハード/ソフトウェア」、「伝搬環境,ネットワーク」

利用者のニーズ 「ユーザの嗜好」、「使用するアプリケーション」

「通信に必要なパラメータを動的に変更する能力」とは、 認知した情報に基づいて自動的に 適な通信を行う

-> これらに必要なタスクを総称し、コグニティブサイクルと呼ぶ

4

3

Network Design Research Center

時間的・地理的に使用されていない周波数帯を活用

必要な時に必要な分(帯域)だけを臨機応変に再利用

固定的な無線周波数割当よりも実効的利用効率が向上

任意の用途や無線通信方式に対応できる技術

本技術の効果的活用シーン

常時接続の必要性がない場合

必要とする通信帯域が状況・時間・空間によって大きく変化する場合

多種多様な多くのトラヒックが混在する場合

緊急時等における重要な通信を優先して確保する場合

コグニティブ無線技術による周波数の有効利用

無線周波数資源を動的に再利用 ⇒より多くの無線利用者に周波数提供

出典I. F. Akyildiz, W. Y. Lee, M. C. Vuran, and S. Mohanty. Nextgeneration/dynamic spectrum access/cognitive radio wireless networks:a survey.Elsevier Computer Networks, 50(5):2127-2750, Aug. 2006.

5

Network Design Research Center

コグニティブ無線技術に特有の技術課題

6

多種多様な無線周波数を切り替えて共用する

一次・二次利用等のための精密な優先度・競合制御が必要

従来の無線通信システムとは異なり、通信の途中で「電波の到達範囲」及び「伝送レート」が変化する

電波の到達範囲は、送信電力及び符号化方式が同じであれば、低い周波数では広くなり、高い周波数では狭くなる

ネットワークトポロジの頻繁な変化に対応するための経路制御が必要

低い周波数への切り替えの場合、類似周波数特性の帯域幅が狭くなるため、広い帯域幅を確保、活用しづらくなり、伝送レートが変化する

通信品質の変化に対応するための送信量制御が必要

移動端末との通信 (走行車両との通信)では、さらに問題が複雑化

4

Network Design Research Center

コグニティブ無線技術によるシステム構成イメージ

利用可能な周波数f

周波数情報管理サーバ

上位レイヤ

下位レイヤ

衛星との連携

上位レイヤと下位レイヤの連携(ミドルウェア)

競合制御経路制御

レギュレーションサーバ

データベースサーバとの連携

セキュリティ管理

動的周波数変更技術

電力制御技術

センシング技術

ITSインテリジェントホームネットワーク

7

Network Design Research Center

8

コグニティブ無線アーキテクチャ

コグニティブ無線のアーキテクチャはプライマリネットワークとセカンダリネットワークの二つで構成される

コグニティブ無線ネットワークはライセンスを持つユーザとライセンスを持たないユーザが混在する環境で運用される

プライマリネットワークの例. (インフラモード)

携帯ネットワーク TV放送網

プライマリネットワークの構成要素

アドホックモードのセカンダリネットワーク

セカンダリネットワークの構成要素

スペクトラムライセンスを持ったユーザ

ライセンスを持たないユーザ

5

Network Design Research Center

プライマリネットワーク/プライマリユーザ

プライマリネットワーク(別名:ライセンスネットワーク)

ある特定の周波数帯に対してアクセス権限を持つ既存のネットワークインフラストラクチャ携帯電話ネットワーク

TV放送網

プライマリユーザ(別名:ライセンスユーザ)

上記の周波数帯に対してライセンスを持つユーザ

9

特徴:プライマリユーザはセカンダリユーザとの混在時においても、いかなる機能の変更/追加の必要がない

Network Design Research Center

セカンダリユーザ

セカンダリユーザ (別名:ダイナミックスペクトラムアクセス, 非ライセンスアクセス)通信に用いる周波数帯を制御するためのライセンスを保持しないユーザ

スペクトラムアクセスはopportunisticマナーでのみ許される

→ プライマリユーザが利用していない時のみ利用可能

10

特徴:ライセンスが割当られた周波数帯に対するopportunisticaccessの実現には追加機能が求められる

6

Network Design Research Center

世界におけるコグニティブ無線PJ

欧米を中心とする世界各国の研究はプライマリ・セカンダリユーザによる周波数共有技術(第3フェーズ)を対象

法規制や周波数割り当ても、第3フェーズの方向で調整中(後述)

日本だけ取り残される恐れ-> 第3フェーズの研究開発が必要

11

周波数

A B C D E ・・・・・ X Y Z

プライマリ セカンダリ

以降、第3フェーズを対象に説明する

Network Design Research Center

コグニティブサイクル

セカンダリユーザによるopportunistic accessの実現に必要な追加機能に関するタスクを総称し、コグニティブサイクルと呼ぶ

12* Wimob2008のTutorial資料から抜粋

•基本的な流れ1. 周辺環境の認識

スペクトラムセンシング

2. チャネルの判断と変更 スペクトラム決定

3. 通信開始 スペクトラム共有 スペクトラムモビリティ

各機能の概要は?

7

Network Design Research Center

スペクトラムセンシング

コグニティブ無線は利用可能なスペクトラムを監視し、その情報を取得した上でスペクトラムホールを検知=>スペクトラムセンシング

スペクトラムホールとは、、

13* Wimob2008のTutorial資料から抜粋

時間的・空間的に利用可能なスペクトラム

Network Design Research Center

スペクトラムセンシング(2)

スペクトラムセンシングの実現に際して プライマリ/セカンダリユーザ間にインタラクションはない

セカンダリユーザは局所的な受信信号からプライマリユーザの活動(通信)状況を推測

このエリアの研究は活発に行われている 既存研究は以下の様に分類される

14

Spectrum Sensing

TransmitterDetection

ReceiverDetection

InterferenceTemperature

Detection

Matched Filter Detection

EnergyDetection

CyclostationaryFeature Detection

8

Network Design Research Center

周辺環境認識に関する 新動向

現在策定が進んでいる規格では、周波数の利用状況を管理するデータベースを利用するものが多い(センシングではなく)

二つの方式の違いと特徴

センシング

長所:各端末で利用状況を把握できる

短所:端末の位置での情報しか把握できない、計算負荷が大きい

データベース

長所:計算負荷が小さい、遠くの位置の利用状況を把握可能

短所:正確な状況の把握が難しい、動的な変化への対応が困難

TV周波数帯に限定して考えると、、 プライマリユーザの位置は固定(放送局)

動的(時間的)な変化はほぼない

15

トレードオフ

データベースの利用方法の検討が進められている

Network Design Research Center

米国:TVBDのカテゴリ

16

引用元: 「海外におけるTVホワイトスペース利用システムに関する検討状況」 2011.10

http://www.soumu.go.jp/main_content/000135708.pdf

9

Network Design Research Center

米国:TVBDに対する所要条件

17

引用元: 「海外におけるTVホワイトスペース利用システムに関する検討状況」 2011.10

http://www.soumu.go.jp/main_content/000135708.pdf

Network Design Research Center

米国:データベースに対する条件

18

引用元: 「海外におけるTVホワイトスペース利用システムに関する検討状況」 2011.10

http://www.soumu.go.jp/main_content/000135708.pdf

10

Network Design Research Center

米国:データベースを用いたTVホワイトスペースの利用条件

検知できない受信PUのPU通信に配慮した仕組み

データベースによるPU保護同一周波数のSU通信について,放送エリアとSU通信可能エリアとの間に一定離隔距離を設ける

→ SUが受信PUに干渉を与えることを避けるために、強制的に距離を離す(離隔距離)

19

1 km

放送局(送信PU)

受信機(受信PU)放送エリア

SU利用可能エリア

離隔距離

非効率

Network Design Research Center

米国:データベースへのアクセスタイミング

SU車両は,FCC規則に準拠したタイミングで実験用データベースから情報を取得

20

移動端末(ModeⅡ)

位置把握 必須

頻度 60秒毎

精度 ±50m

DBアクセス 必須

頻度起動時/24時間毎/100m移動毎

取得情報その場で利用可能なチャネル番号リスト

①起動時 ②24時間経過時 ③100m移動時

24HDB DB DB DBDB

100m

SU

実験用DB

緯度ID/経度ID

チャネルID/利用状況チャネルID/利用状況チャネルID/利用状況

11

Network Design Research Center

英国: TVBDのカテゴリ

プライマリシステムのための保護方策

地理情報を測定するための機能を備える

データベースの利活用

21

引用元: 「海外におけるTVホワイトスペース利用システムに関する検討状況」 2011.10

http://www.soumu.go.jp/main_content/000135708.pdf

Network Design Research Center

英国: 所要条件

22

引用元: 「海外におけるTVホワイトスペース利用システムに関する検討状況」 2011.10

http://www.soumu.go.jp/main_content/000135708.pdf

12

Network Design Research Center

英国:データベース型通信モデル

1. MasterはOfcomデータベースリストに問い合わせ、地理情報データベースのアドレスを取得(1, 2)

2. Masterは地理情報データベースにアクセスし、ホワイトスペースの情報を取得(3, 4)

3. SlaveはMasterに利用周波数を問い合わせ、利用する周波数情報を取得(5, 6)

4. 地理情報データベースはテレビ放送データベースとPMSEデータベースから周波数利用状況を取得

23

※PMSE : Programme Making and Special Events

• 引用元• 「欧州における周波数有効利用施策に係る動向調査」 2012.2

http://www.nict.go.jp/int_affairs/int/4otfsk000000osbq-att/re120229.pdf

Network Design Research Center

スペクトラム決定

未使用状態のスペクトラム(スペクトラムホール)はライセンスと非ライセンスの両方を含み、広範囲に分散されている

セカンダリネットワークは利用可能なスペクトラムから 適なスペクトラムを決定する能力が必要-> スペクトラム決定

スペクトラム決定は以下の二つのステップが必要 Spectrum Characterization

セカンダリユーザの観測する局所的な情報 (時間的・空間的変化)プリマリユーザの統計的な情報 (活動状況、帯域、周波数など)

Decision: 特性に基づき、 適なスペクトラムを決定 Single Spectrum Decision:一つのスペクトラムを選択

Multi Spectrum Decision:同時に複数のスペクトラムを選択

25

13

Network Design Research Center

スペクトラム決定(2)

26

決定手順

スペクトラム決定には以下の点を考慮すべき ユーザQoS

データレート、許容エラーレート、許容遅延、転送モード、通信帯域

プライマリユーザの活動

通信継続時間

* Wimob2008のTutorial資料から抜粋

Network Design Research Center

スペクトラム共有

複数のセカンダリユーザがスペクトラムアクセスを同時に行う可能性がある

スペクトラムに対する重複アクセスによる衝突を防ぐための調整が必要 -> スペクトラム共有 (MACプロトコルの機能に似ている)セカンダリユーザ間のスペクトラム割当を行う

セカンダリユーザはプライマリユーザへの干渉がない(少ない)スペクトラムにアクセスする必要がある

27

14

Network Design Research Center

スペクトラムモビリティ

セカンダリユーザはスペクトラムにとってあくまで“訪問者(Visitor)” (お客さん)

プライマリユーザがそのスペクトラムを利用し始めるor 通信品質が劣化したら、他の利用可能なスペクトラムを用いて通信を継続する必要がある-> スペクトラムモビリティ

スペクトラムモビリティ管理

チャネル切り替え時の途切れないスペクトラムハンドオフ

セカンダリユーザの通信に対するQoS要求を満足するため、操作の影響を 小限にとどめる

プライマリユーザに対する遅延/干渉制限を満足する

28

Network Design Research Center

スペクトラムモビリティの概念

以下のタスクの組み合わせが必要となる 通信の開始前

プライマリユーザの検知(スペクトラムセンシング)

スペクトラム決定チャネルの切り替え

通信の再開時スペクトラム共有

アクセス制御

29

Time

分類 プロアクティブ型スペクトラムハンドオフ

事前にプライマリユーザの通信を予測してハンドオフ処理を開始

リアクティブ型スペクトラムハンドオフ

プライマリユーザが通信を開始してからハンドオフ処理を開始

* Wimob2008のTutorial資料から抜粋

15

Network Design Research Center

イントラネットワーク-スペクトラム共有

30

中央集権アプローチによるイントラネットワーク-スペクトラム共有

自律分散アプローチによるイントラネットワーク-スペクトラム共有

協調作業を行わない 協調作業を

行う

* Wimob2008のTutorial資料から抜粋

Network Design Research Center

インターネットワーク-スペクトラム共有

中央集権アプローチによるスペクトラム共有 スペクトラムブローカーがセカンダリネットワークの情報を収集し、

その結果を基にスペクトラムを割当

自律分散アプローチによるスペクトラム共有 各セカンダリネットワークの取得情報を交換し合い、スペクトラムを決定

31

* Wimob2008のTutorial資料から抜粋

16

Network Design Research Center

コグニティブ無線からコグニティブ無線ネットワークへ

コグニティブ無線ネットワーク コグニティブ無線はあくまで”端末”が保持する機能

より効率的な周波数資源の利用の実現には、「他端末」及び「ネットワーク上のサーバ」との協調が必要不可欠

→ コグニティブ無線機能を持つ複数のノード同士が接続されることで、コグニティブ無線ネットワーク が形成される様々な機関が同じ概念を違う用語で提案している

Georgia tech: Cognitive Radio Networks Virginia tech: Cognitive NetworkWinlab: CogNetMicrosoft, Simon Haykin等も同様の概念を提案

様々な無線ネットワークへの展開

32

APAP

AP

AP

マルチホップ(メッシュ)無線 モバイルアドホック(MANET) 車両アドホック(VANET)

Network Design Research Center

スペクトラム管理フレームワーク: 通信機能

各タスクの実現にはレイヤ間の連携が必要

フレームワークの策定が必要不可欠(下記はGeorgia techのフレームワーク)

33

このエリアの研究が多い

* Wimob2008のTutorial資料から抜粋

SpectrumDecision

上位レイヤの研究も開始

コグニティブ無線

コグニティブ無線ネットワーク

17

Network Design Research Center

コグニティブ無線ネットワークにおける変化

コグニティブ無線ネットワークでは、 ネットワークを構成する各ノードが「状況変化」に応じて動的に通信

周波数を切り替える

データリンクレイヤ → 「レート/伝送遅延/パケットエラー率」が変化

ネットワークレイヤ → 「トポロジ/経路」が変化

トランスポートレイヤ→ 「エンドノードがネットワーク内に連続送信可能なデータ量」が変化

コグニティブ無線ネットワークでの問題点

1. 安定かつ確実な制御チャネルの確立手法

2. 安定かつ効率的なデータチャネルの選択手法

1. ネットワークレイヤ(ルーティング)における課題

2. トランスポートレイヤ(プロトコル)における課題 34

隣接2ノード間(1ホップ)通信

マルチホップ通信

各レイヤに与える影響は?

Network Design Research Center

ネットワークレイヤにおける課題

コグニティブ無線では隣接2ノード間の1ホップ通信が対象

コグニティブ無線ネットワークではマルチホップ通信を行う

→ 新しいルーティングアルゴリズム(プロトコル)が必要となる

ルーティングプロトコルが考慮すべき問題 利用可能な周波数(チャネル)が動的に変化

通信チャネルの特性の違い

通信チャネルに応じて特性(到達距離、データレート)が異なる

ノードの高いモビリティ

ノードの移動により、利用可能なチャネルが変化

Ch.1Ch.2

プライマリユーザ

これらとの連携を実現するクロスレイヤ制御が必要

センシング技術 との連携が必要

外部データベース(DB) との連携が必要

位置情報管理サーバ(例:GPS) との連携が必要

35

18

Network Design Research Center

安定かつ確実な制御チャネルの確立手法

利用可能な周波数の変化の検知

→ 共通の制御チャネルの確立が必要不可欠

エンドツーエンドの経路の安定性/信頼性の確保

→ 隠れ端末、及び干渉が発生しないチャネルの選択が重要

今後の課題:

効率的な制御メッセージの配送のための制御チャネルの決定手法

ネットワーク

送信ノード 宛先ノード

共通制御チャネルによる広範囲での制御情報の交換

隠れ端末/干渉の回避

トレードオフ 36

Network Design Research Center

コグニティブ無線ネットワークにおけるルーティング

以下の3つの関係性を考慮する必要がある

1. ネットワークトポロジの把握

ネットワークトポロジは通信チャネルの切替によって変化プライマリユーザの通信を検知後のチャネル切替ノードの移動によって通信出来なくなった際のチャネル切替

2. ルーティングパスの選択

送信ノードから宛先ノードまで経由するノードの選択

3. チャネルの選択

隣接ノード間で通信に利用するチャネルの選択

→ 上記の項目は全て相互に関係しており、通信性能に大きく影響

送信ノード宛先ノード

2. ルーティングパスの選択

3. チャネルの選択

1. トポロジの把握

37

19

Network Design Research Center

ネットワークレイヤにおけるクロスレイヤ制御

*複数のインタフェースを保持するノードを優先的に選択

センシングデータリンクレイヤ以下

位置管理サーバ(GPS)

外部DB(レート/遅延等)

インターフェース数

ネットワークレイヤ

トポロジ把握 ルーティングパスの選択

チャネル選択クロスレイヤ

ルーティングパス特性の把握

クロスレイヤ

トランスポートレイヤ

38

Network Design Research Center

トランスポートレイヤの役割

現在、主にトランスポートレイヤとしてはTCP(Transmission Control Protocol)が利用されている

有線ネットワークを想定して提案されたもの

→ ルーティングパス上の通信品質は安定している事が前提

TCPが提供している機能

輻輳(フロー)制御

ネットワーク内部(受信ノード)での混雑を避けるために、連続で送信可能な送信量をネットワークの状態に応じて制御

ネットワーク内部の状態はパケットのRTTから推定(インライン計測)

再送制御

パケットロスが発生した場合、消失パケットを再送することで信頼性を確保

S R

•送信量決定•再送制御

TCPデータ

TCP ACKACKパケットの返信状況から判断 39

20

Network Design Research Center

トランスポートレイヤにおける課題

コグニティブ無線ネットワークでは、各ホップの通信チャネルが時間的、空間的に変化するため、以下の影響が発生

通信チャネルの切替時(プライマリユーザ、ノード移動)

パケットロスが頻発

通信チャネルの切替前後

チャネルアクセス遅延の変化

データレートの変化

→ 周波数、干渉レベル、MACプロトコルに依存

到達距離の変化

→ 周波数、干渉レベル、送信電力に依存

エンドツーエンド間のトランスポートプロトコルへの影響は?

送信ノード 宛先ノードプライマリユーザの通信を検知

ノードの移動による通信切断

40

Network Design Research Center

チャネル切替時の影響 (1)

ネットワーク内部の中継ノードでチャネル切替が発生 TCP送信ノード (トランスポート層) :

チャネル切替を知らずに, パケットを送り続けるチャネル切替中のノードのバッファに蓄積される

チャネル切替中のノード (データリンク層) :受信バッファに格納し続ける

受信バッファのパケットがドロップする

送信バッファにあるパケットを送信し続ける

送信バッファのパケットがドロップする

S 1 2 R

チャネル切替

送信バッファのパケットを送信

チャネル切替を知らずに送信

受信バッファにパケットを受信

41

21

Network Design Research Center

チャネル切替時の影響 (2)

送信ノードのトランスポート層:

ネットワーク内に連続送信が可能なパケット数を送信

⇒ 送信後はACKの受信を待ち続ける

TCP送信ノードにはACKを受信できないため、タイムアウトが発生タイムアウトタイマ(RTO)が経過するまで、新規パケットを送信できない

ため、通信性能が大幅に劣化

通信再開後はスロースタートによって送信量が決定されるため、送信量がきわめて小さくなり、通信性能が大幅に劣化

• マルチホップ通信時において、中継ノードでチャネル切替が頻発する場合、通信性能が大幅に劣化する恐れ

time [s]スロースタート 輻輳回避

ssthresh

指数的に増加

線形的に増加

送信量

TCPにおける送信量決定アルゴリズム

42

Network Design Research Center

切替前後のチャネルアクセス遅延が異なる場合

→ エンドノード間のRTTが変化

1. 切替前の遅延よりも切替後の遅延が大きな場合

RTTが増加した結果、タイムアウトが発生する可能性 タイムアウトタイマ(RTO)は切替前のRTTを基に決定される

通信性能が大幅に劣化

2. 切替前の遅延より切替後の遅延が小さな場合

RTTは減少するが、パケットのリオーダが発生する恐れ

切替前に送出したパケットが到着する前に切替後に送出されたパケットが追い抜く可能性

重複ACKが頻発し、送信量が過剰に制限される

チャネル切替前後の影響 (1)

既存のトランスポートプロトコルでは、チャネル切替前後の遅延変化に対応できない

Tx Rx

Ch A

Ch Bタイムアウト

Tx Rx

Ch A

Ch B追い越し発生

重複ACK

43

22

Network Design Research Center

チャネル切替前後の影響 (2)

切替前後のチャネルの帯域幅(レート)が異なる場合

⇒ 各ホップでチャネル切替に伴うレート変化

1. チャネル切替前のレート(rate) より

チャネル切替後のレート(rate’)が高い

送信量の増加に対応できない

⇒ 高いレートを有効利用できない

2. チャネル切替前のレート(rate)より

チャネル切替後のレート(rate’)が低い

Rate’以上の送信量で通信を継続

⇒ パケットロスが発生し, 通信性能劣化

time

rate

rate’channelchange

time

rate

rate’

channelchange

既存のトランスポートプロトコルでは、チャネル切替前後のレート変化に対応できない 44

Network Design Research Center

各ノードのモビリティが高い上、速度差が存在 利用可能な周波数が更に急激に変化する可能性

ノード間距離の変化によって到達距離範囲外に移動する可能性

高レイヤに対する影響 経路内の全ホップで周波数切替が発生し、レートが更に頻繁に変化

‐> 頻繁なレート変更,及びパケットロス,順序変化に対応する必要

制御チャネル確立に対する影響 頻繁なチャネル/経路切替が発生

‐> 複数ノード間での共通制御チャネルの確立が必要

走行車両相互間でのマルチホップ

車車間通信への適用

45

• A. Mesodiakaki, F. Adelantado, L. Alonso, and C. Verikoukis, ``Energy-Efficient User Association inCognitive Heterogeneous Networks,” IEEE Communications magazine, pp. 22-29, July 2014.

課題論文

23

Network Design Research Center

空き周波数(ホワイトスペース)をクルマ通信に適用

トヨタIT開発センター、電気通信大学との共同研究

内容 将来の様々な車通信用のアプリケーションを想定すると、周波数が圧倒

的に不足する

時間的・空間的に利用されていない周波数を有効に利用

クルマが自律分散的に空き周波数を検出し、適宜切り替え通信を継続

46

Network Design Research Center

「TVホワイトスペース」を活用した車車間コグニティブ通信公開実証実験パート1 (2011年度)

47

24

Network Design Research Center

「TVホワイトスペース」を活用した車車間コグニティブ通信公開実証実験パート2 (2012年度)

48

Network Design Research Center

まとめ

現状の周波数割り当ての問題 -> 非効率な利用 各周波数の利用率は時間的・空間的に15~85%で変動

ホワイトスペースの動的な利用=>コグニティブ無線の概念の提案

新の動向 デジタルTV放送開始に伴い、各国でコグニティブ無線技術が着目され、

研究開発が進められている

コグニティブ無線ネットワークの概念 従来の低位レイヤの研究だけでなく、レイヤ3以上の高位レイヤの研

究開発も必要不可欠ネットワークレイヤ トランスポートレイヤ

本研究室の活動の紹介 コグニティブ無線技術を車両ネットワークに適用

49

次世代のインフラとなる無線ネットワークの基盤技術が海外の研究開発成果により独占されないように、今からの研究開発が必要不可欠

25

Network Design Research Center

ネットワークアーキテクチャ特論:コグニティブ無線ネットワーク

(Cognitive Radio Network)について

塚本 和也

尾家 祐二

大学院ネットワークアーキテクチャ特論2014年10月30日(木) 10:30~12:00

Recommended