New Edition Surfing 英語Ⅱ 元田 尚美 ·...

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授業レポート New Edition Surfing 英語Ⅱ

1.はじめに 高山西高校は,岐阜県飛騨地区唯一の私立高校として,私学の独自性を最大限生かしつつ,英語教育に力を入れた学校として,地域でも一定の評価を得て来ました.平成 16 年から SELHi の指定を受け,「英語ディベートの指導」についての研究を重ねてきました.授業改善,国際教育などの取り組みの他に,本校の英語教育の特徴を挙げるとすれば以下の点です.・ 「実用英語技能検定」取得を卒業条件にしている(就職クラス4級以上,進学クラス3級以上で底上げを図る)

・ 「英語ディベート」の導入(授業内で指導.県大会,全国大会への参加,および大会運営)

・「校内レシテーションコンテスト」実施  ・ 英語部会の充実 ほか 生徒の学習の姿勢は比較的よく,真面目な生徒が多いため授業はたいへんやりやすいと思います.したがって生徒が伸びやすい環境にあり,その成果も出ていると考えます. 各学年,6~7クラスで,その内訳は,「蛍雪(就職希望が多い)」2 クラス,「特進Ⅰ(部活動をせず勉学のみ)」2 クラス,「特進Ⅱ(部活動との両立)」2 ~ 3 クラスです.今回は,蛍雪クラスで使用している New Edition Surfing ENGLISH COURSE Ⅱについて,報告をします. 本校では,Surfing の前身である Apricot を 10年近く使っており,Surfing になってからも現在まで通算 16 年近くこのシリーズを使用しています.長年使用した 3 名の先生方は,その教科書の内容や指導に深い愛着を持って日々取り組んでいます.そこからそれぞれの先生が感じた SurfingⅡの感想をまとめました.

2.先生方の感想元田尚美先生の場合〈私の授業の進め方〉① BEFORE YOU READ (簡単な解説とリスニン

グなど).② パートごとに本文の内容把握. 1) リスニング.本文を 2 回聞かせる(何とな

く聞かせるのではなく,極力意味を捉えるよう目的を持って聞かせる).

 2) 英語で簡単な Gist Questions(英問英答)を1,2 問与える(指名して答えさせる.答えに対して,詳しい解説は加えず,本文を読み進める中で解決させる.質問は独自で作ったものも混ぜている.答えたり,答えようとする姿勢を褒めることがポイント).

 3) NOTICE で文法ポイント確認. 4) 本文のスラッシュリーディング(教師が音読,

生徒はノートに写した英文に教師が指示したスラッシュを入れる→ 10 分程時間をとり,スラッシュごとに各自で内容理解→スラッシュごとに指名し,簡単に確認.細かな訳読はしない).

 5) 最初に行った Gist Questions が難しいときには,ここで確認.

 6) 音読(コーラスリーディングまたは,全員立たせ 2 回読んだら座らせる).

③ ワークブックを使って,内容と文法事項の再確認(ワークブックがよくできているので生徒に好評).

④ パートごとにリスニングディクテーション(CDを聴きながら,1 パート 10 箇所程度の本文空所補充をさせる.特に,新出単語や音のつながりの関係で聞こえにくい音,生徒が綴りにくいと思われる語を抜く.予告し,予習させておく).

⑤ AFTER YOU READ( T or F, サマリー,整序

New Edition Surfing 英語Ⅱいろいろな授業の進め方

岐阜県私立高山西高等学校 元田 尚美井田 知子宮代 和枝宮川 純一

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授業レポート New Edition Surfing 英語Ⅱ

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授業レポート New Edition Surfing 英語Ⅱ

問題など ). * この繰り返しの中で,できるだけ 4 技能の活動

が入るように意識しています.各パートには約2 時間(本文 1 時間,プリント 1 時間)かけます.この積み重ねでだいたい 1 年後にはディクテーションや Gist Questions に対する応答もスムーズにできるようになります.

〈教科書の感想〉 BEFORE YOU READ → パートごとに内容把握→ AFTER YOU READ という構成は英語が苦手な生徒にも非常に取り組みやすく,教える側としても使いやすい流れです.しかし旧版に比べ,やや内容が安易になっているように感じます(たとえば,高校生のテキストなので,最初のアルファベットの確認は必要ないように思います). 旧版より写真が多く,ビジュアル的に良く,生徒も印象深いようで興味を持ちます.また旧版にはなかった「文法のまとめ」は基本事項が端的にまとめてあり,生徒自身が復習しやすいようです.

CD のリーディングのパターンが増え,シャドーリーディングができるようになっていて,それもたいへん使いやすく効果的です. 宮代和枝先生の場合〈改訂版と旧版との比較について〉 Apricot から Surfing へと長年使わせていただき,非常に扱いやすく生徒への興味関心にも合致し,たいへんいい教科書だと思っています.私たち英語科の職員の中でも,飽きることなく味わって使える教科書だと話をしています.愛着がありますだけに感じております感想,意見を述べさせていただきます. 現在のところ New Edition Surfing Ⅱは全てを終わっておりませんので,旧版と同じ題材の課(特に Lesson 2, 7, 10, 11)についてです. Lesson 2 と Lesson 7 は,非常に興味深い内容で,生徒も大好きです.が,本文の行数が旧版の約半分になっています.3 パートあったものが New Edition では 2 パートとなって,内容が少なくなり,

簡単すぎる気がします.Lesson 7 も同様です.Surfing Ⅰ,Lesson 7 の Audrey Hepburn の課でも New Edition になって 3 パートあったものが 2パートになっていました.内容的にも Anne Frank と Audrey の共通点が書かれているところが抜けてしまっており,Audrey が UNICEF の仕事をするようになった理由でもある大切な部分が割愛されました.前回の内容を知っているだけに,肝心な部分が欠けている気がします.Surfing Ⅱの方は特に,読み応えと,深みの点で 3 パートは必要な気がします. また 1 文についても,SVO(that 節)が SVO(句)になっていたり,S,O,C に付いていた関係詞部分が省略されていたりと,量的にも質的にも平易になっています.1 文や内容が短くなると,文法事項のみならず当然表現すべき細かな情景や著者の主張が伝わりにくくなっているように感じます.昨今の中学生の語彙数,文法力の低下を考慮してのこととは思いますが,私は中学校での不足分を高校である程度引き上げる必要があると感じてい

ます.折角関心を引くいい内容ばかりですので,もったいないと感じています.今後またお考えいただければと思います.

〈BEFOREYOUREADについて〉 各課の本文の内容についてのみならず幅広く関連事項が載っています.地理的な事,比較すべき内容が具体的に数字で示してあり,生徒への興味付けがスムーズにできます.私たち教師自身が,興奮しながら膨らませていけるという点で,生徒たちにきっといい内容と思っています. 私は特に,Lesson 2 の豆腐,Lesson 3 の野菜の年間消費量,Lesson 11 のジャック・モイヤー博士の情報が本当に好きです.写真もきれいですし生徒の心を捉えます.非常に工夫して作ってあると思います.

〈POINTSとNOTICEについて〉 この二つは,授業を進める上で非常に役立ちます.生徒にとってかなりの安心材料になっている

New Edition Surfing 英語Ⅱ Lesson7 BEFORE YOU READ

本文(パート 1)

AFTER YOU READ

文法のまとめ

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授業レポート New Edition Surfing 英語Ⅱ

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授業レポート New Edition Surfing 英語Ⅱ

ようです.特にパートごとの NOTICE は,例文だけでなく説明が端的についています.それに助けられて文が読めていけます.ただ反面,New Edition になって本文中の文がそのまま使われ部分的に日本語訳が書かれていて,これから内容を探ろうとしている生徒にとっては刺激になりません.できれば本文にない例文を使用していただければと思います.

〈AFTERYOUREADについて〉 3 問目に必ずイラストの問題があり,生徒は楽しみながら問題に取り組んでいます.しかし旧版にあった内容把握問題がなくなっており,私としては本文がつかめたかを確認する意味で,残していただきたかったと思います.課に関連した時事問題的観点に立った出題も高校生には有益かとは思います(各課1問目が内容確認問題になっています:編集部).

〈「文法のまとめ」について〉 「文法のまとめ」は旧版では巻末にあり,やや敬遠していましたが,New Edition ではある程度の課単位のまとめになっています.総復習や総点検するための材料になります. 例文の説明,全体的レイアウト,図式化してある説明がとても具体的で,生徒に分かりやすいと思います(完了の説明は特にいいです).各例文の説明のための矢印や部分訳も効果的です.

〈巻末について〉 Apricot から Surfing になってから,巻末のイディオムリストは重宝しています.反面ワードリスト(2)は,日本語訳も掲載されるようになり,辞書指導の妨げになっている気がします.今後の検討事項にしていただけるとありがたいと思います.

井田知子先生の場合〈テーマの設定について〉 環境問題や,世界の様々な国の文化,生活が題

材として扱われており,生徒に読ませたい内容が多いと思います.旧版もそうでしたが内容がとにかくいい.生活や生き方に関わるもの,情報として話題性のあるものが多く,生徒の興味を引いています.

Surfing English Course Ⅱ Lesson 1 Tuvalu Lesson 2 Tofu Dishes in the U.S. Lesson 3 Giant Cabbages Lesson 4 My Life in Japan Lesson 5 Music Therapy Lesson 6 The Tree Woman in Kenya Lesson 7 Playing the Wadaiko All Over the

World Lesson 8 On the Surfboard Again Lesson 9 Believe It or Not Lesson 10 The Love Letter Lesson 11 Dolphins and Me For Reading Billy Elliot, a Ballet Dancer

 Lesson 7 で取り上げられている和太鼓奏者の林英哲氏は,飛騨高山に時々演奏に来られ,一層身近に感じます.教科書に載っているビッグネームが間近に来るのです.家族や友達の中で,学習した生徒は話題の提供者になっているはずです.外国との交流は英語自体の勉強も大事ですが,自分の文化や身の回りのことについて考えを持っていないとだめで,流ちょうにしゃべれてもそれだけでは意味がありません.自国に対する知識が浅く,それ故にプライドもない場合が多いのではないでしょうか.「語るべきものを持て」というメッセージを感じます. BEFORE YOU READ の右ページは写真が豊富な資料で,話題を提供してくれるので授業が盛り上がります.さらなる話題を日頃仕入れておこうという教師側の動機にも繋がり,勉強になります.他の教科書では教授資料で扱われている内容でしょうが,1ページ分のカラー写真での説明は生徒の心をしっかり捉えます. Lesson 11 のジャック・モイヤー氏の“gift of

life”は私の favorite です.イルカと接するのにルールがあること,人間の都合のいいペットではなく尊重する中で付き合い方が分かるということなど,考えさせられるし感動を与える話です.アニマ ル セ ラ ピ ー と し て も,Lesson 5 の“Music Therapy”で学んだ内容とつながっていて,自然のままで動物と接することが究極の癒しであるという根源的な話を,生徒が学べることは素晴らしいことだと思います.外国人が,日本のよさを認め心酔してくれたということも生徒の心に響いている気がします. その他,地球環境についての課が改訂版では新たに導入されました.Lesson 1 のツバル,Lesson 6 のワンガリ・マータイさんの話は,取り上げる対応が早かったと思います.環境問題は,やはり世界の重要課題で,特に若い生徒たちには知っておいて欲しいことがたくさんあります.その点でLesson 1 と Lesson 6 は,タイムリーで,強く生徒に訴えかけました.ワンガリ・マータイさんの笑顔の写真が何度も出てきますが,教科書が持つ影響力の大きさから考えて,そういうことが非常に重要なことで,英語の教科書だからこそできることかもしれないと思います. 別の教科書ですが Surfing English Reading で扱っているものも充実しています.文章の長い課と短い課があり,題材も豊富です.長短があると,時間数の事情に合わせて,取捨選択でき使いやすく感じます.宿題として家で読ませることも可能です.

〈教授資料について〉

Surfing Ⅱ教授資料 本冊 別冊① 生徒用資料集 別冊② 評価問題例集 別冊③ 授業用補助プリント CD-ROM

 「別冊① 生徒用資料集」がたいへん充実しています(旧版のものより,たいへんよくなってい

ます).毎回コピーして,BEFORE YOU READで合わせて生徒の動機付けに活用しています.データの種類が豊富でうまくまとまっているので,国際的な視点で幅広く理解が深まります. 「別冊③ 授業用補助プリント」も有益で毎回使っています.各1ページ目に,スラッシュリーディングの事例が載っていますが,意味理解で時間を取りすぎると生徒は興味を失ってしまいますので,スラッシュでつかませ,構造理解の補助としています.生徒の様子を見ると,まだこれが必要な段階ですので重宝しています. 「教授資料本冊」内の「文法補充問題」もたいへん充実しています.自習教材としてたいへん助かります.

3.おわりに 3 名の先生の感想から,Surfing への愛着がいかに大きいかを理解いただけたかと思います.16 年以上のお付き合いだけに歴史を感じるコメントだったと思います.日頃の授業展開や,生徒とのやり取りも目に浮かべていただけたのではないでしょうか. 日本中で,従来の講義調から,生徒が英語を使いながら習得するスタイルへの移行が着実に始まっています.教師の指導法の進化が正に今問われています.しかし,そこに必ずあるのは教科書です.生徒は多感な時期にいます.英語の授業で出会った内容や英文が,その後の人生に少なからず影響をもたらすことを考えると,教師と教科書の役割の大きさは昔も今もかわりません.良質の教科書を使い,活き活きとした授業を提供していけるよう今後も英語科一丸となって研さんしていきたいと思います.