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京大・東大・帝京大 SPH同窓会交流サロン 2012年 6月 30日 東京大学医学部教育研究棟にて

Kyoto University, University of Tokyo and Teikyo University SPH alumni joint

exchange on June 30, 2012 at University of Tokyo

はじめに みなさん、こんにちは。同窓会ニュースレター、第 4 号を発行できました。今回は木原正博専攻長のメッセージもいただき、SPH の近況についてお届けします。

お知らせ ・SPH のホームページアドレスが http://sph.med.kyoto-u.ac.jp/に変更されました。 ・オープンキャンパス東京懇話会 2013 が 6 月 29 日に開催されます。会員の皆様のお近くに、SPH に関心のある方がいましたら、ご紹介ください。 http://sph.med.kyoto-u.ac.jp/oc.html ・6 月 15 日 京大・東大・帝京大 SPH 同窓会合同 第 3 回 SPH サロンがあります。

News Letter

from SPH No. 4

京都大学 SPH同窓会ニュースレター

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早いもので、京都大学大学院社会健康医学系専攻が、米国の先進校をモデルに、我国最初の公衆衛生大学院( School of Public Health [SPH])として創設されて 14 年目に入りました。この間、社会健康医学系専攻は、着実な発展を続け、名実ともに我国を代表する SPH に成長してきました。 その発展は、4 つの側面に見ることができます。第一は、「ニューパブリックヘルス New Pubic Health」を組織理念として打ち出したことです。社会健康医学系専攻は、いわゆる公衆衛生・衛生学と、臨床疫学、医療経済学、医療倫理、ゲノム情報学、健康情報学など幅広い領域をカバーすると同時に、方法論的にも、量的方法から質的方法、医科学から社会科学に拡張するなど、クラシックな「公衆衛生」には納まらないスコープを有しています。この内容を包含し、かつ現代・近未来に深刻化する保健医療問題に対処する新たなパブリックヘルスの枠組みとして提唱されているのが、「ニューパブリックヘルス」であり、社会健康医学系専攻は、この新たな枠組みに見事に適合します。理念の明確化は、社会健康医学系専攻の意味づけを明確にするとともに、今後の発展の重要な基礎となります。 第二は、教育・研究面での進展です。創設以来出版された英文論文は 1350 編以上、獲得した競争的研究資金は 135 億円を超え、国際的存在感も増し、国際共同研究も目覚しく拡大しつつあります。教育内容も、分野の多様性を反映して、授業科目数は、他の SPHの 2倍を超え、また、他研究科の授業も取り込んで、豊かな教育環境を創出しています。また、課題研究を唯一義務化して、高い教育水準を維持してきたことも、誇るべき実績と言えるでしょう。そして、本専攻のスタッフによって、多くの関連書籍や教科書が出版されており、我国におけるパブリックヘルス教育の発展と普及にも大きく貢献してきました。 第三は、学内的プレゼンスが大きく高まったことです。ここ数年で、「医学研究科の社会健康医学系専攻」から「京都大学の社会健康医学系専攻」へと存在感を高めてきました。それは、「グローバル生存学大学院連携プログラム」、「人間の安全保障連携教育プログラム」、「政策のための科学ユニット」などを通して、

ほとんどの他研究科と多くの研究所・センターと連携して、京都大学の大学院改革の中心的役割を果たしているからです。現在、大学院には学際性の実質化を強く求められていますが、本来学際性の高い当専攻は、その牽引役を果たしているのです。 第四は、国際的プレゼンスの高まりです。現在、専攻内には 2 つの国際センター(フランス国立医学研究機構[INSERM]研究ユニットU.852、国連合同エイズ計画共同センター)が設置され、既に国際的に高い評価を獲得していますが、2011 年には、アジア太平洋公衆衛生学術コンソーシアム(APACPH)に日本のSPHとして最初の正式メンバーとなって、アジアにおける知名度は一気に高まり、アジアの様々な大学から表敬訪問を受けるようになりました。また、World Health Summitを主宰する M8 Alliance に日本で唯一の中核メンバーとして参加しており、社会健康医学系専攻の知名度は確実に高まっています。今後は、国際交流協定の締結などを通して、多くの大学と、学生交流、研究交流、ダブルディグリーの推進など、多角的な国際交流が発展していくことになると思われます。 もちろん、まだ進歩するべき余地が多く残っていることも事実ですが、本専攻はこのように、幸い比較的順調な発展を遂げてきました。そして、その原動力の 1 つに、本専攻における教官と学生の創造的な相互作用があったことは疑う余地のないことと思われます。同窓生の皆さんには、ぜひこうした社会健康医学系専攻の歴史と実績に誇りを持っていただくとともに、専攻の今後の一層の発展のために、ぜひ暖かいご支援をお願いできれば幸いです。 最後に、私はこの 5 月一杯で、3 年間の専攻長としての任期を終えます。この間の活動を支えていただいたSPHの教官の皆さんと、学生・同窓生の皆さんに心から御礼を申し上げたいと思います。ありがとうございました。 平成 25 年 5 月 7 日 社会健康医学系専攻専攻長 木原正博

京都大学大学院医学研究科社会健康医学系専攻 同窓会ニュースレター No.4 (2013/5/20)専攻長挨拶 Dean’s Message

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医療統計学分野 医療統計学分野では、2013 年 4 月現在、博士後期課程 2 名、専門職学位課程 3 名の学生が在籍し、佐藤俊哉教授・寒水孝司准教授の熱い指導の下、日々研究・勉学に勤しんでおります。2013 年 3 月には、2 名が専門職学位課程を修了し、大学院で得た知識と経験を生かして、それぞれの分野で活躍しています。研究以外にも不定期に頃合いを見計らっては学生同士の秘密の飲み会を開催し、美味しいお酒に囲まれながら医療統計の明日を語りあっております。 昨年の8月には、神戸で IBC (International

Biometric Conference) が開催され、博士後期課程の小谷さんと早川さんが研究成果を発表しました。教室全体としてブースを出展し、教室員全員でこのために用意した「宇宙怪人しまりす法被」を着用し、会場を盛り上げました。予想どおり、海外の参加者から注目を浴び、入手に関する問い合わせが殺到しました。 数式をできるだけ使わないわかりやすい医療統計学の講義については、いまも多くの学生を統計アレルギーから解放し、受講者は年々増加しています。今年度は、とうとう約100 人収容できるセミナー室が満杯になりました。 月に一回、関西の統計家達が集う KBS

(Kyoto Biostatistics Seminar) は記念すべき第 100 回を迎えました。参加者の増加もさることながら、議論はますます白熱しています。さらに盛り上がるセミナーになるよう学生一同日々気を引き締めて研究に励んでいます。修了生の皆様もぜひ京都にお越しの際は研究室に気軽にお立ち寄り頂き、御指導御鞭

撻いただけると望外の喜びでございます。 (文責:専門職学位課程 2 年 大宮將義、辻本直人)

医療疫学分野 医療疫学分野の 2011 年度から直近の動向につきまして以下の通りご報告致します。 まず、教員の異動に関しましては、2012年 4月に林野泰明准教授が天理よろづ相談所病院副部長に就任されました。また、角館直樹講師がスタンフォード大学客員准教授となり米国に留学されました(本年度 4 月からは九州歯科大学准教授に就任されました)。そして、2012 年 10 月に福原俊一教授が福島県立医科大学副学長に就任されました(京大教授と兼任)。本年度 4 月からは山本洋介講師が本学医学部付属病院臨床研究総合センター講師に就任されました。 大学院生に関しましては、2011 年度は桂守弘さん(現、沖縄北部病院)が、2012 年度は

教室近況 Department Activities

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藤田直尚さん(現、京大博士課程)がそれぞれ MCR優秀賞を受賞しました。学位(博士)については、2011 年度は小野玲さん(神戸大准教授)、2012 年度は佐藤恵子さん(グラクソスミス・クライン)、中村文明さん(博士課程 4 回生)が授与されました。2013 年 3 月博士課程修了の中村文明さんは東京大学医学研究科公衆衛生学助教に、同、福森則男さんは佐賀大学医学部地域医療学助教に就任されました。また、福間真悟さんが博士課程から本学医学部付属病院臨床研究総合センター助教に就任されました。 在学中の大学院生では、平田匠さん(博士後期課程 2 年)が、本年 5 月より先端医療振興財団医師研究員に就任することが決まりました。 そして 2013 年 4 月、新しい大学院生を迎えました。本年度は博士課程 3 名、専門職学位課程 5 名です(うち MCR受講生 7 名)。 医療疫学分野では福島県立医科大学との共同研究(震災以前より継続しているコホート研究(LOHAS))や臨床研究者育成等の教育協力を通じ、震災復興を支援していく所存です。今後も診療を変え、政策にインパクトを与える研究を発信し、また、医療現場や政策の問題の解決に貢献できる人材を輩出して行きたいと考えております。

薬剤疫学分野 薬剤疫学は 2006 年の二代目川上教授が着任して以降、これまでに 12名の専門職学位、7 名の博士課程修了者(博士号未取得含む)を輩出しました。人事では、2008 年から 4年半にわたり准教授を務めた樋之津史郎先生は、今春から岡山大学教授としてご栄転され、益々のご発展が期待されるところです。また、同じく 4 年半助教を務めた漆原尚巳先生は、

2012 年秋から医の倫理委員会事務局の講師にご昇任、配置換となりました。2013 年 4月からは、田中司朗講師(生物統計学・疫学)、堀部智久講師(生化学)、河野雅之助教(薬理学)、村田京子助教(政策科学)、浜田将太(薬剤疫学)、西山知佳助教(看護学・予防医療学)、瓜生原葉子助教(経営学・薬学)という体制で 8人の教員が自身の研究と研究指導、教育に当たります。今春から 7人の新しい大学院生を迎え、更なる発展が期待できそうです。研究分野では、医薬品適正使用のための薬剤疫学や診断疫学、臨床疫学、費用対効果研究を各種データベースや疾患レジストリを用いた研究、あるいは介入研究として展開しており、2006 年から現在までに 58本の英文原著論文を発表(受理含む)しています。一方、2012 年から本学学際融合教育研究推進センターに設置された政策のための科学ユニットは、大阪大学との合同の取組として科学技術イノベーション政策のための科学の教育や研究を推進すべく文部科学省から採択されました。ここでは川上教授を拠点長として全学の多様な部局が参加し、大学院生向けのプログラムを今春から開始するところですが、薬剤疫学教室の研究アクティビティとの相乗効果も期待されるところです。2012 年度に助教としてその準備に大きな貢献を果たされた徳増裕宣先生(MCR 卒業生)は、今春からは社会人大学院生としてご自身の研究を進められます。最後に、今年から、樋之津先生を会長、小林泰俊先生(MCR 卒業生)を事務局長、浜田先生(MPHおよび博士後期課程卒業生)を学内幹事として、薬剤疫学教室の同窓会組織を設置することになりました。教室の元在籍者の方々には是非ご参加ご協力をお願いします。

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医療倫理学・遺伝医療学分野 医療倫理学・遺伝医療学分野では、遺伝カウンセラー・コーディネータユニットの設立当初からこれまでずっとご尽力下さいました沼部博直先生が、この春お茶の水女子大学に異動されました。そして後任の准教授に和田敬仁先生が着任され、また遺伝カウンセリングの実習先である京大病院遺伝子診療部の教員に三宅秀彦先生をお迎えすることとなりました。また関連部所である医の倫理委員会には専任教員として漆原尚巳先生(元臨床研究コーディネータコース教員)と岩江荘介先生が着任されました。 平成 25 年度には、博士後期課程に 1 名が進学、専門職学位課程に 3名が入学し、現在、医療倫理学分野博士課程 1 名、遺伝医療学分野博士後期課程 4 名、専門職学位課程 6 名が在籍しています。 昨年度の教室の主な活動としましては、希少難病患者の診断・診療(遺伝カウンセリング)体制構築に向けた研究事業への協力、社会啓発のための市民フォーラムの運営、また患者家族会活動のボランティアに参加するなど、学外での活動も積極的に行ってきました。また学内では、京大病院耳鼻咽喉科と乳腺外科、医学研究科ファルマコゲノミクスプロジェクトとの共同研究にも参画しており、いずれも今年度も進行中です。教室では、これらの活動を通して得た知見や課題を研究テーマに取り上げ、患者家族への支援や社会貢献、臨床や研究分野に貢献できるよう取り組んでいます。院生たちは、実習や学会、課題研究にと相変わらず多忙な毎日ですが、教室イベント(歓送迎会、同窓会、教授宅での BBQ&X’mas パーティー、忘年会 etc)も盛りだくさんで、忙しい中にも教員や院生一同仲良く充実した日々を送っています。京大 SPH

同窓会のみなさまも、お近くにお立ち寄りの際にはぜひ教室をのぞいてみて下さい。これからもどうぞよろしくお願い申しあげます。

健康情報学分野 健康情報学分野では、中山健夫教授、高橋由光先生、宮崎貴久子先生のご指導のもと、2013 年 3 月現在、博士後期課程 12 名、専門職学位課程 14 名(うち、MCR 2 名)、研究員、研修員、研究生等の計約 40 名が日々研究に勤しんでいます。 健康・医療問題の解決を支援する情報のあり方を研究、推進する目的で、医療提供者や、教育、マスメディア、社会学など様々なバックグラウンドを持つ学生が集まっています。各自の研究テーマは、教室ミーティングやランチョンミーティングなどで討議されますが、異なるバックグラウンドの学生が集まっているからこそ、着眼点も多面的かつ刺激的です。研究に用いる手法も様々で、2012 年には森寛子さんが質的手法を用いた看取りに関する研究で、永井周子さんがランダム化比較試験によるカンガルーケアの効果に関する研究で、博士学位を授与されました。また、卒業生も、医療機関や教育機関、NPO など様々なところで活躍しています。年 1 回開催されるホームカミングデーである同門会は在校生や卒業生の貴重な情報交換の場となっており、2012年の同門会では 36 人が参加して楽しい時間を過ごしました。

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一方、2006 年の立ち上げから、事務局として運営に携わってきた「ながはま0次予防コホート事業」も、2010 年に第一期(ベースライン)調査を終了し、10,000 名を超える長浜市民の皆さんに参加していただくことができました。2012 年から、第二期調査が始まっています。これまでに参加いただいた皆さんのデータが MPH の課題研究としても利用され始めています。 研究に疲れた時や行き詰った時には、教室の仲間と気軽に語り合うことで、新たな力が湧いてくる。そんな環境も健康情報学教室の特徴です。同窓生の皆さま、お近くにお寄りの際には、ぜひお立ち寄りください。 (文責:博士後期課程 3 年 仙石多美)

医学コミュニケーション学分野 (専任教員は私一人なので)「異動」のお知らせはないのですが、「移動」はあります。現在教室が入っている解剖センターで耐震工事が5月から始まりエレベーターが使えなくなるので、教員室だけ A棟地下B07号室にエレベーター復旧までお引っ越しです。丸5年いた場所にしばしお別れです。 そして「お別れ」といえば、今年の春は、白鳥博之さんが医学コミュニケーションの二人目の卒業生として、無事に修士課程を終えました。ラストスパートは「火事場の馬鹿力」で乗り切りました。おめでとうございます。 私個人の研究としては、科研費を得ること

ができたので以前から興味があった「障がい者の異文化適応」についての研究を今年度からスタートさせます。ニッチなテーマですが、コミュニケーション分野と医学・医療分野を横断するような研究をしたいと思っていたのでとても楽しみです。 教室での活動としては、昨年度から環境衛生学分野、健康情報学分野と共同で、福島県川内村復興事業に参加し、東北地方に数カ月に1回は訪れるようになりました。医学コミュニケーション分野では、「こころのケア」を担当し、非常勤講師の大下大圓さんを中心に、①川内村住民を対象に、音楽を聴きながら瞑想や呼吸法などによるリラクセーションプログラムの開催、②村の復興に向けて努力を続けている村役場の職員向けに「ケアする人のケア」研修会、③住民からの相談をうける立場にある民生委員を対象とする傾聴研修を行なってきました。12年度からの活動から村との関係も構築され、川内村からの協力を得て13年度からはリラクゼーションプログラムの効果を検証するプロジェクトを始めます。また私は川内村広報誌のなかで 「きょうだい通信」を毎月担当して、京都大学と福島川内村をつなぐお手伝いをしているところです。 (http://www.kawauchimura.jp/kouhou/inde

x.html) 近年を振り返ると「自分がやりたい仕事」だけでなく、「期待され、依頼された仕事」を(なるべく)引き受け、(なるべく)丁寧に仕上げていくという、「受身姿勢」をとることで自分でも思ってもみなかった可能性が拓かれることを実感しています。

(文責 岩隈美穂)

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環境衛生学分野 環境衛生学分野は、小泉昭夫教授、原田浩二准教授、人見敏明講師、2013 年 4 月から採用された小林果助教の教員 4 名と研究員、研究補佐員 5 名、大学院生、研究生 7 名の総勢 16 名で構成され、「Plain Living, High

Thinking (W. Wordsworth)」という指導方針のもと日々研究に励んでおります。 当研究室では環境化学研究とフィールド遺伝疫学研究を展開しており、相互に関連しながら進めております。主に以下のような研究を行っています。

1. 家系例を用いた、もやもや病、脳動脈瘤、脊髄小脳変性症の感受性遺伝子の探索と発症メカニズムの解明

2. 環境中、生体試料中の残留性有機汚染物質のモニタリングとシミュレーションモデリング

3. 福島第一原子力発電所事故による被ばく調査

4. Sri Lanka乾燥地帯に多発する慢性腎臓病の原因究明 特にもやもや病の遺伝子探索では、東アジア人に共通する創始者変異を Mysterin 遺伝子(RNF213)に発見しました。現在、iPS細胞を用いた発症メカニズムの解明へ向けた取り組みを行っております。この Mysterin 遺伝子と糖尿病が関係することも示し、新たな展開も生まれております。環境研究では新規汚染物質のモニタリングとデータを再構成するシミュレーションに取り組んでいるほか、2011 年 3 月の東日本大震災にともなう原子力発電所事故による外部・内部被ばく調査を、福島県川内村など浜通りをフィールドにして実施しています。Sri Lanka 研究では、遺伝要因、環境要因双方から取り組んで、それぞれの要因が入り混ざっていることを示したほ

か、医療環境の面で早期スクリーニングの実施を整えるプロジェクトを現地当局とともに進めるステージになりました。 昨年 3 月は第 82 回日本衛生学会学術総会を主催し、無事、盛況裡に閉会しました。教室行事もお花見、夏の納涼、レクリエーションなどお互いの親睦を深めています。 卒業生の皆様も、近くまで来られた際には、ぜひお立ち寄りください。

集合写真(2013 年 3 月)

川内村村民との車座(2012 年 11 月)

予防医療学分野 予防医療学教室では、2012 年 7 月に初の合宿を滋賀県箱館山山麓にておこないました。某教員の別荘をお借りし、自然に囲まれた環境、早寝早起き、自炊…と予防医療の実践とも言えるものでした。もちろんそれぞれの研究プランを発表してディスカッションしたり、法律の専門家をお招きして医学・医療と法と

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の関係についてレクチャーを受けたり、学内とはまた異なった雰囲気で大変充実した2日間を過ごしました。 予防医療学教室は、病院外心停止の疫学研究で世界の先端を走っていますが、2012 年度もまた Circulation に2論文を発表するなど情報を発信しています。そのほか、針治療効果の RCT、全国歯科医師コホートにおける歯と大腿骨骨折との関連、禁煙施策の有効性など、多岐にわたる研究論文を公表しました。他の大学や医療機関の研究も手伝っており、本邦から優れたエビデンスを発信する一助なるよう心掛けているところです。

社会疫学分野 社会疫学分野では、相変わらず外国の留学生や外国からの訪問者が多い国際性豊かな状況が続いています。これまでに、イラン、バングラデッシュ、ミャンマー、ザンビア、中国、エジプト、ペルー、ネパールから学生を

受け入れてきましたが、現在、イエメン、コンゴ民主共和国、タイ、アフガニスタン、スワジランドの学生が学び、それぞれの国で、ミクストメソッドを基本とした、非常に重要な研究を行っています。最も注目されるのが、コンゴで抗 HIV 治療のアドヒアランスが飢餓と強い関連を持つことを明らかにした研究で、世界的な抗HIV治療拡大と途上国の食糧問題を結びつけた知見として国際的に高い評価を受けています。タイでは、多段階無作為抽出による大規模住民調査プロジェクトを成功させ、性行動や意識の世代間格差の拡大を実証する多くの論文の作成が進んでいます。日本人の学生も負けてはいません。特に、第12期生は、課題研究として、パプアニューギニアの住民、東日本大震災被災地域の看護師、不登校児を抱える学校の教師を対象とした、難しい質的調査をやり遂げ、外国人留学生と共に、平成 24 年度の課題研究優秀論文賞を総なめにしました。これは、日本人学生と外国人留学生の日常的交流が、相乗作用をした結果と考えられます。 一方、社会疫学では、日本のパブリックヘルス研究の方法論的基盤の向上に貢献するために、国際的に評価の高い書籍を毎年翻訳発行しています。昨年度は、「現代の医学的研究方法-質的・量的方法、ミクストメソッド、EBP」、「疫学と人類学-医学的研究のパラダイムシフト」をメディカルサイエンスインターナショナルから出版しました。疫学・統計学と社会科学的方法論が統合された新しいパブリックヘルスのパラダイムを拓くという夢に向かって、今後も歩み続けて行きます。

環境生態学分野 環境生態学分野は現在、西渕光昭教授をはじめ、東南アジア研究所からは中口義次連携

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准教授、研究支援推進員1名、そして2名の教務補佐員のスタッフで構成されています。昨年度、唯一のSPHの学生であった私が専門職学位課程を(無事?)卒業したため、残念ながら現在はSPHとしての学生は在籍しておりませんが、当西渕研究室は、医学・医科学専攻の病原細菌学分野として、5名の博士課程の学生、その中にはシリアとペルーからの留学生2名が、日々それぞれの研究課題に取り組んでいます。また、当研究室は、東南アジア研究所とのタイアップにより、東南アジア地域を中心に、様々な国の研究者と協力してワールドワイドな感染症の共同研究を行なっています。昨年は、リーディング大学院グローバル生存学大学院連携プログラムの一貫として、タイ、マレーシア、バングラデシュの若手研究者を京大内のラボに招いて技術指導を行なったり、また、シンガポール、マレーシアをはじめ、アジア各国でワークショップを開催しました。このように当研究室では、国際色豊かに、世界レベルの感染症研究に日々励んでいます。 (中本 勲)

研究室のメンバー

研究室のメンバー4 名がリーディング大学院の院生を引率して、シンガポール国立公衆衛生研究所を訪問(2013 年 2 月 26 日~28 日)

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学生連絡委員会 活動報告 第 13期学生連絡委員会 委員長 木下琢也

私達第 13 期学生連絡委員は、昨年末より前年度からの引き継ぎを行い、活動を開始いたしました。委員は各研究室から募った計 10名で構成され、それぞれが委員長、副委員長をはじめ、メーリングリスト係、懇親会係、会計係などの役割を担っています。

活動内容は、学生と教員間の橋渡し、学生生活のサポートが中心です。前者に関しては、 教務委員会への参加を通じて、SPH全般に関する学生側の意見を教員に伝え、協議をしています。後者に関しては、メーリングリストを使用した特別講義・イベントのお知らせといった連絡事項の伝達、懇親会の企画運営を行っています。今年の 4 月には、私達学生連絡委員が中心となり、新入生歓迎会を開催いたしました。今年度は新入生の方々を含め、全員参加型の歓迎会にすることを目標とし、在校生から新入生へのウェルカムフラワーの贈呈や、研究室対抗のクイズゲームを新たに企画しました。

また運営面では、歓迎会が円滑に進行できるよう、学生連絡委員の間で意見を出しあい、会費の徴収方法などを前年度より変更しました。歓迎会当日は 70 名近くの方々に出席していただくことができ、盛況のうちに会を終えることができました。

今後も SPH の学生の代表として、前年度までの活動を参考にさせていただきながら、学生連絡委員一丸となって、学生生活をより良いものにできるよう尽力してまいりたいと思っております。

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学生近況

京都大学大学院医学研究科社会健康医学系専攻 同窓会ニュースレター No.4 (2013/5/20)

仮装するのにノリノリな原田先生仮装するのにノリノリな原田先生仮装するのにノリノリな原田先生仮装するのにノリノリな原田先生

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13131313期生と学生連絡委員(よろしくお願いいたします)期生と学生連絡委員(よろしくお願いいたします)期生と学生連絡委員(よろしくお願いいたします)期生と学生連絡委員(よろしくお願いいたします)

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SPH 同窓会交流サロンを開催 表紙に掲載しましたように昨年度は他大学SPH 同窓会との交流を行いました。経緯は、東大 SPH 同窓会で行われてきた同窓会サロンというイベントを開催しており勉強会・講演会などを実施していました。京大 SPH 卒業生を通じまして、各大学 SPH 学生・同窓会との交流を同時に実施してはどうかという提案をいただきました。 京大SPH教員会議でも提案いたしまして、まずはきっかけとして、参加を募るということになりました。 京都大学・東京大学・帝京大学 SPH 同窓会合同で第一回 SPHサロン「~MPH×社会貢献を考える~」は 2012 年 6 月 30 日に東京大学本郷キャンパスで実施され、京大からも 13名が参加し、東大、帝京大 SPHの学生、卒業生と交流を深めることができました。また第二回 SPH サロン「研究と実践をつなぐ ~“のりしろ”としての MPH~」は、2012年 11 月 3 日に行われました。

第 3 回 SPH サロンのご案内 今年度は第 3 回 SPH サロンが 6 月 15 日14 時-18 時に東京大学本郷キャンパスで開催されます。「社会とのコミュニケーション:パブリック・リレーション入門」をテーマとします。詳細は http://www.utsph.jp/?p=1093 を参照してください。多くの方のご参加よろしくお願いいたします。

会員名簿の作成を予定 これまで同窓会員のみなさまには会員登録を行ってきていただいております。会員相互のコミュニケーションのための名簿作成の準備を行っております。 会員登録を行っていただいた際にお知らせいたしましたように、登録項目の名簿掲載の可否については全会員に再度お問い合わせさせていただきます。ご協力よろしくお願いいたします。

同窓会活動 Alumni Activities

三大学 SPH交流サロン後の集合写真(2012 年 6 月)

京都大学大学院医学研究科社会健康医学系専攻 同窓会ニュースレター No.4 (2013/5/20)

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第 3期 修士課程 医療疫学分野 竹上 未紗

私は 2002 年に第 3 期生として社会健康医学系専攻医療疫学(当時は理論疫学でした)の修士課程に入学しました。その後博士課程、特定助教を経て、現在は、国立循環器病研究センターに勤務しております。 国立循環器病研究センターは、国立高度専門医療研究センター(ナショナルセンター)の1つで、1977 年に設立されました。当センターには病院、研究所、研究開発基盤センターの 3部門があります。私が所属している研究開発基盤センターは、新しい部門で、病院と研究所が連携して取り組んでいる研究・治療実績などを活かし、臨床研究と疫学調査の推進、知的資産の活用など複合領域の研究を推進することを目的に 2010 年 4 月に設立されました。

異動した当初は、大学との違いを新鮮に感じるとともに戸惑いもしました。学生がいないのが大きな違いですが、その他にも多々ありました。まず、辞令を総長から直接受け取ることに驚きました。京大ではぴらぴらの紙でしたが、国循は厚紙でした。(私は独立行政法人になってからの勤務ですが、それまでは国家公務員の宣誓があったようです。)年末年始には、幹部による挨拶と巡視があります。私は、大学院は京大の社会健康医学専攻しか知りませんが、なかなか大学ではない光景だと思います。研究に関しては、医療政策に何を提言できるのかという視点が強く求められます。異動するまで、ずっと大学院生からお世話になっていた研究室にいた私にとっては、驚愕とともに、身の引き締まる思いがしたことを覚えています。

私の所属する研究基盤開発センターの予防医学・疫学情報部では、都市部地域住民を対象とした循環器病のリスク要因と代謝性疾患・動脈硬化の進展に関するコホート研究、多施設共同研究・循環器疾患登録や疾病調査による循環器病の実態把握、患者のアウトカム、診療の質に関する研究などを行っています。まさに、これまで社会健康医学で受けた授業やこれまで行ってきた研究が活かせる部です。まだまだ、私自身、いただいた機会を活かしきれておりませんが、このような場所で研究活動できることを幸運に思っております。 京大を離れて 3 年目になった今も、非常勤講師として講義・実習に参加させていただいております。私が参加させていただいている研究デザイン特論は、講義と実習で構成されています。毎年院生さんのグループワークに参加して、院生さんの素朴な疑問や鋭い質問にたくさんの刺激をいただいています。何よりグループワークの中で研究計画ができている課程を経験することで、初心に戻れる気がします。京大を離れて感じることは、同じ教育を受け、同じような言葉を共有し、同じ価値観をもった研究者の存在のありがたさです。そういう研究者とのディスカッションをする時間をとても貴重に感じています。 私が社会健康医学に入学して 10 年が経過しましたが、まだまだ未熟で、次々と難題が立ちはだかりますが、社会健康医学で学んだ知識と経験を活かして(今でも講義の資料にお世話になっています)、社会や臨床にとって意味のある研究をしていきたいと思っております。

卒業生近況 Alumni Activities

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編 集 後 記 ニュースレター第4号の発行にあたり、記事の執筆をいただいた専攻長、各分野、卒業生、在学生のみなさま大変ありがとうございました。記事、ニュース、写真、宣伝など、みなさまのご協力よろしくお願いいたします。 同窓会活動では他大学 SPH との交流もはじまり、新たなステージに入ったように思えます。2度の交流サロンに参加してきましたが、京大のほかにも SPHが設立されてきていますが、やはり最初に設立された京大 SPHの活動には関心が高いようです。今回の専攻長挨拶、各教室の近況から活躍ぶりを感じていただければと思います。

同窓会登録同窓会登録同窓会登録同窓会登録がまだおすみでないがまだおすみでないがまだおすみでないがまだおすみでない方方方方へへへへ 同窓会での活動の案内を行う上で、連絡先を把握したいと考えております。 同窓会に登録いただける方は、下記の項目について記入し、 事務局(kusphalumni-office@umin.ac.jp)まで返信お願いいたします。 回答項目 (氏名、入学年次、卒業年次、卒業時所属分野、 電子メールアドレス(継続性のあるもの)、住所(任意)、勤務先(任意)) 異動異動異動異動があるがあるがあるがある方方方方へへへへ 連絡先の変更などがありましたら、上記アドレスまでお知らせください。 Want to be listed in the Alumni Association? Email me at kusphalumni-office@umin.ac.jp! Include your name, your graduation date, and any personal and/or professional information you would like us to contact. We will deliver newsletters and events information.

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京都大学 SPH 同窓会ニュースレター 第3号 発 行 京都大学医学研究科 社会健康医学系専攻同窓会 〒606-8501 京都市左京区吉田近衛町 京都大学医学研究科環境衛生学分野内 TEL 075-753-4490 FAX 075-753-4458

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京都大学大学院医学研究科社会健康医学系専攻 同窓会ニュースレター No.4 (2013/5/20)