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日本語教育と ラーニング
早稲田大学 日本語教育研究科
李 在 鎬
e
2017年8月19日 国際交流基金関西国際センター20周年記念シンポジウム
「日本語学習者のためのeラーニングとは」
ディスカッションポイント1: eラーニングの役割や意義
eラーニングの可能性&意義
多様な学習者に日本語学習の機会を提供できる
しかし,
環境の変化に耐えられる下地はあるか。
私たち日本語教師において
ディスカッションポイント1: eラーニングの役割や意義
eラーニングの可能性
多様な学習者に日本語学習の機会を提供できる
しかし,
環境の変化に耐えられる下地はあるか。
ディスカッションポイント1: eラーニングの役割や意義
従来型(日本語)教育 これからの(日本語)教育
eラーニングがもたらす新たな教育の形
知識は教師の頭か本の中。 教師は学習者にわかりやすく伝える。
学習者を見る目が重要
知識はウェブの中。学習者と教師も 共有する。教師は情報を集め, 授業をデザインする。
コンテンツを評価する目が重要
データを見る目が重要
AI時代の日本語教育におけるeラーニングのさらなる活性化に向けて日本語教育が手を結ぶべき相手
• 自然言語処理 →言語処理による日本語学習支援
• 教育工学研究者 →履歴データによる教育イノベーション
データを見る目, コンテンツを評価する目を持つために
ディスカッションポイント1: eラーニングの役割や意義
AI時代の日本語教育におけるeラーニングのさらなる活性化に向けて日本語教育が手を結ぶべき相手
• 自然言語処理 →言語処理による日本語学習支援
• 教育工学研究者 →履歴データによる教育イノベーション
ディスカッションポイント1: eラーニングの役割や意義
自然言語処理
1. 自然言語処理とは、コンピュータを用いて言語を解析する工学研究の領域である。1940年代後半からコンピュータが出現することにより、成立した分野。
2. 1950年代, アメリカの数学者ウォーレン・ウィーバー(Weaver,Warren) がコンピュータの論理性を翻訳に利用することを試みたことからスタート。
3. 日本では,1994年,言語処理学会の設立で本格的な研究が開始。正会員799人+アルファ。年次大会は300件前後の発表あり。とても元気な領域(日本語教育学会は会員約4000人、年次大会80件前後の発表)
自然言語処理
1. 自然言語処理が注目されるようになった背景として、コンピュータとインターネットの普及。2000年以降、大規模データ+技術革新で,社会的重要性が認識される。
2. 自然言語処理の研究においては、人の言語が自由に操れるコンピュータを工学的に実現することを目指して,計算モデルによる大規模なデータ処理を実現するアルゴリズムを開発。
3. 自然言語処理の研究者は,処理のプロであっても,どのような応用やニーズがあるかについては,必ずしも明るくない。
4. そう遠くない未来に押し寄せてくる「日本語教育×大規模データ」の時代への備える。
自然言語処理の技術を利用した自立学習のためのシステム 自然言語処理に基づくシステムの役割・意義
いわゆるeラーニング
1. 用意されたコンテンツを受身的に学習する。
2. 知識の提供が主になる。
3. 産出タスクに関しても与えた知識の定着を図るのが目的。
4. 学習者の主体的な言語産出活動を支援するには物足りない。
http://jreadability.net/jwriter
書くタスクとは
1. 自律的な日本語運用にとって不可欠
2. 特に大学などの高等教育機関での活動においては重要
3. しかし、
• 日本語学習者にとっては、書く作業は孤独。辞書を頼りに黙々とすすめるしかない。
• 日本語教師にとっては、作文の評価は不安。自分の判断に自信がなく、迷う。
文章に表れる表面的な情報(形式)をもとに、熟達度を判定し、より良い文章にしていくためのアド
バイスをする。
http://jreadability.net/jwriter
AI時代の日本語教育におけるeラーニングのさらなる活性化に向けて日本語教育が手を結ぶべき相手
• 自然言語処理 →言語処理による日本語学習支援
• 教育工学研究者 →履歴データによる教育イノベーション
ディスカッションポイント1: eラーニングの役割や意義
教育工学
• 教育現場の改善に資する、教育効果の高い構造物を設計・開発・評価する学問。
• 学びを促進するツールとしての各種システムやメディアの利用に関する研究も含まれる。
• 日本における教育工学。日本教育工学会。1984年に設立。情報化の進展の波に乗って発展。人文社会系と理工系、ならびに人間に関する学問分野を融合した学際的な学問。
設立当初は716名 2016年の会員数は2950名
Learning Analytics
• LMSや e ポートフォリオなど,ネットワークにつながったコン
ピュータシステムを利用して授業を実施することが増えてきているが,
この際,学習者がシステムをどう利用して学習したかという学習行動
の履歴が自動的に蓄積される.この学習履歴をデータマイニングの手
法を使って可視化,分析することにより,学習者の達成度の評価,将
来的な能力の予測,隠された問題の発見などを行う分野が LA である.
• 最終的な目的は,さまざまなレベルやニーズの学習者に合わせた教育
を(リアルタイムに近い形で)可能にすること
出典:情報処理 Vol.55 No.5 May 2014
宝探し ビッグデータ×データマイニング
• 国際交流基金のコンテンツの特徴:大規模なユーザー。
→ いわゆるビッグデータの構築されている状況
• ビッグデータから宝探し:統計的な方法や情報の可視化技術を利用し、ユーザーの特徴的な行動パターンを抽出。
→ 利便性向上をはかったり、個人の特性を考慮した
システム開発につなげる。
パラダイムシフト:教育の関心
何を学ぶか?
どう学ぶか?
1. 解答記述過程を見る
2. 教育の情報化によりICT機器が普及→学習ログデータの取得が可能
3. 一般的に生徒の解答過程の分析が重要→生徒のつまづいた箇所を発見
解答時間帯から
• 放課後に宿題を片付ける
• 朝になって宿題をやる
• 深夜に宿題をやる学生も
村上(2016)「中学校でのタブレット活用による学習ログの取得と解析~京都ICT教育モデル構築プロジェクト~」
回答時間の量から
• 科目によって,回答時間のばらつきが異なる。
1. 数学と理科、苦手な人と得意な人の差が激しい。
2. 英語より国語のほうがばらついてる。
3. 記述量のわりに社会の回答時間にばらつきが少ない。
村上(2016)「中学校でのタブレット活用による学習ログの取得と解析~京都ICT教育モデル構築プロジェクト~」
日本語教育へ 習得研究へ
• 文字の習得における差
• 個別型学習へ
• 学習者のつまずきを発見
ディスカッションポイント2: eラーニングの課題と解決策
学習と遊びの融合へ
SNSによる交流の活性化を はかるも,うまくいかず
勉強 遊び
ディスカッションポイント3: 日本語教育におけるeラーニングの展望と可能性
• eラーニングの可能性:時間と空間の壁を超えて、新たな日本語学習者の
発掘。AIなどの技術革新によってさらに発展する可能性もあり。
• JFへの期待
1. 継続的な運用が可能な環境構築:ウェブシステムは作ってからが大変。
ツールを育てていくという心構えが必要→戦略的&経営的な視点も必要。
2. 日本型の教育インフラとしてのeラーニング。
3. 開発のノウハウをモデル化し、日本語教育以外の分野の研究者と知見を
共有する努力。
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