RNAナノスイッチ:目的の細胞を安全・ 簡便・精密 …...DNAを傷つけない...

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RNAナノスイッチ:目的の細胞を安全・

簡便・精密に同定・識別する新技術

京都大学 iPS 細胞研究所 (CiRA)未来生命科学開拓部門

齊藤 博英

1

京都大学 新技術説明会May 23, 2017

本日お話したいこと

1. 標的の細胞を安全かつ精密に選別できる新技術、「マイクロRNAスイッチ」の紹介

特定の細胞内で発現するマイクロRNAを検知する合成RNAを利用することで、標的とする細胞を自在に選別・制御できる

2. 「マイクロRNAスイッチ」の応用例と産業応用への思い

iPS/ES細胞から分化した様々な細胞を精密に取得できる(成功例:心筋細胞、インスリン産生細胞、肝細胞など)

iPS細胞研究所 (CiRA)

2010年4月設立

約30の研究グループ

およそ500名の研究者

3期棟が今春完成

未来生命科学開拓部門 (2015年度新部門)私のミッション:安全かつ精密な標的細胞の創出

克服すべき“2つの課題”

ほぼ全ての細胞へ分化できる

ほぼ無限に増殖できる

幹細胞(ES/iPS)

様々な細胞が混在すると

遺伝子が損傷/細胞が残存すると 腫瘍形成の危険

【安全性の課題】

【精密性の課題】

目的細胞の取得が困難

従来の細胞選別:抗体による方法

分化細胞(様々な種類の細胞が混在)

ヒトiPS細胞

特異的な表面抗原が同定されていない細胞種が多数存在

例) 心筋細胞、肝細胞、膵臓細胞 etc.

特異的な細胞表面抗原により選別

抗体

新たな細胞選別法の開発が重要!

RNAスイッチの特徴

【安全性の課題】○ゲノム損傷の危険が回避【精密性の課題】○細胞内環境に応じた制御が可能

マイクロRNA

タンパク質発現制御

細胞質

核合成mRNA

DNAを傷つけない 速やかに分解される

人工RNAの導入による細胞プログラミングにより

安全かつ精密な制御を可能にさせる

RNAスイッチによる標的細胞の選別と創出

本技術で達成したい課題

未分化

がん化 除去

除去

目的細胞A

目的細胞B

RNAスイッチ

安全かつ精密な制御

分化

マイクロRNAスイッチ:細胞の選別

マイクロRNA: mRNAに結合することで遺伝子発現の抑制に関与

目的のmiRNAの相補的配列

レポーター人工mRNA

マイクロRNAスイッチ

マイクロRNA

目的のmiRNAがない細胞の

場合翻訳

目的のmiRNAがある細胞の

場合

マイクロRNA

mRNA分解

翻訳抑制

××

細胞が光る

細胞が光らない

蛍光タンパク質

マイクロRNAスイッチの原理

FP2

FP1

マイクロRNAを発現していない細胞

FP2

FP1

FP2FP

1

マイクロRNAの発現に応じて標的細胞を精密に選別可能

2種類の人工mRNAを細胞に導入⇒細胞が発現する蛍光の比がほぼ一定になることを発見⇒ 特定のマイクロRNAを発現している細胞を精密に識別可能に !

マイクロRNAを発現している細胞

2種類の人工mRNAを細胞に導入

1. マイクロRNAスイッチmRNA(FP1発現を抑制)

2. コントロールmRNA(FP2を発現)

蛍光タンパク質(FP1) 蛍光タンパク質

(FP2)

HaLa細胞 (microRNA21を発現)と293細胞を分離した例

細長い帯状に分離

FP1が抑制

Miki et al., Cell Stem Cell , 2015 (CiRA吉田研究室との共同研究)

心筋以外の細胞を自律的に除去

ヒトiPS細胞

ES細胞

抗体による選別(細胞表面)

RNAスイッチ(細胞内)

精製前

マイクロRNAスイッチによる心筋細胞の純化心筋細胞の選別率

(%)

機器 (FACS) を必要としない純化も可能!

細胞死誘導因子

ヘテロな細胞集団

心筋細胞の純化

Purification of cardiomyocytes without cell sorting

セルソーターを用いた方法では大量の細胞数を得ることは難しい。

マイクロRNAスイッチによる心筋細胞の純化(大量純化法の確立)

心不全治療を想定した必要な心筋細胞数 数億個

セルソーターを用いない純化法の開発が重要!!

Purification of cardiomyocytes without cell sorting

miR-Bimスイッチ

ピューロマイシン耐性mRNA +

Bim

Puror

導入

分化細胞集団

非心筋細胞

Bimによるアポトーシス誘導→細胞死

非導入細胞

培地中のピューロマイシン

→細胞死

→生存

心筋細胞

アポトーシス抑制

ピューロマイシン耐性

×

マイクロRNAスイッチによる心筋細胞の純化(アポトーシス誘導因子を利用した細胞純化法の確立)

0

20

40

60

80

100

心筋細胞陽性率

(%)

マイクロRNAスイッチ

非純化

409B2KhES1

201B7

cTNT 核 merge

RNAスイッチの汎用性

肝細胞 膵臓細胞

アルブミン陽性細胞 インスリン陽性細胞

取得困難な細胞も選別が可能!

RNAスイッチは、細胞内の情報を検出し、標的細胞の精密な識別や運命制御など、様々な出力に対応できる!

心筋細胞

RNAスイッチで純化した心筋細胞

機器(FACS)なしで純化が可能!

選別

様々な細胞

RNAスイッチの汎用性

EGFP

BFP

miR-122-5p switch

0

20

40

60

80

100

ALBUMIN+ cellsHNF4A+ cells ALBUMIN/Hoechst

bar: 100 mmmiR-122-5p w/o sortnegativefraction

% o

f cel

ls

肝細胞

EGFP

BFP

miR-375 switch

0

20

40

60

80

100

INS

ULI

N+

cells

(%)

miR-375 w/o sortnegativefraction

bar: 100 mm

INSULIN/Hoechst

インスリン産生細胞

取得困難な細胞も選別が可能!

in vivo assays of purified cardiomyocytes by miRNA switch

心臓への移植 (生着試験)

精巣への移植(造腫瘍性試験)

ヒトiPS細胞 純化前分化細胞

移植後3ヶ月の心臓

純化した心筋細胞

1週 2週 4 週 12週

移植後

cTNT

核 Merge

ヒト核

移植後3ヶ月のマウス心臓

RNAスイッチによリ純化した心筋細胞の移植

100

80

60

40

20

0

腫瘍

形成

率(%

) 6/6

1/80/8

ヒトiPS細胞 純化前分化細胞

純化した心筋細胞

Future possibility of miRNA switch

分化細胞集団

ヒトES/iPS細胞

インスリン産生細胞

肝細胞

内皮細胞

心筋細胞

RNAスイッチで選別できた細胞種

各細胞種特異的マイクロRNAスイッチ

細胞内を精密に識別!

マイクロRNAスイッチによる標的分化細胞の同定・純化

iPS細胞を精密に識別

iPS細胞

残存するiPS細胞

危険な細胞(分化が不完全)

分化した細胞、安全な細胞

iPS細胞の腫瘍形成リスクを下げる

RNAスイッチで未分化iPS細胞を除去すれば、腫瘍は形成されない

miRNA switch has no significant harmful effects.RNAスイッチの安全性

発現タンパク質の残存

時間(h)導入後(日)

速やかに分解

マイクロRNAスイッチ(mRNA)の残存

24h 48h

BFP陽

性率

(%)

相対

発現

量(d

1=1)

相対

発現

量(非

導入

細胞

=1)

マイクロRNAスイッチ導入細胞

非導入細胞

細胞内ターゲットマイクロRNA量の変化

遺伝子発現への影響

miR-1スイッチ

非導入

d18心筋

d0ヒトiPS細胞

d25心

筋d1

9心筋

miR-1スイッチ

非導入

miR-1ターゲット遺伝子

応用例 1) RNAスイッチによる標的細胞の純化・創出

RNAスイッチの産業応用にむけた戦略

目的細胞の純化・創出様々な細胞集団

神経細胞血球細胞

骨格筋

RNAスイッチ

応用例 2) 不要な細胞(がん細胞など)の選択的な死滅

人工RNAスイッチのin vitro モデル実験に成功 (Nature Biotechnology, 2015)標的細胞のみに細胞死を誘導!

細胞内を精密に識別!iPS/ES 細胞

分化

生存

細胞死

他の細胞

マイクロRNA-X +マイクロRNA-Y -

マイクロRNA-X -マイクロRNA-Y +

標的細胞(がん細胞など) マイクロRNA-X

マイクロRNA-Y

RNAスイッチ:細胞選別のコア技術

神経細胞

心筋細胞

インスリン産生細胞

血液細胞

未分化iPS/ES細胞

骨格筋細胞

目的とする細胞を安全かつ精密に選別できる!

RNAスイッチを未来医療へ

RNAスイッチのメリット 新分野開拓・産業応用

(1) 安全 (遺伝子を傷つけない)

(2) 精密 (細胞環境の検知が可能)

(3) プログラマブル(改変が容易、様々な細胞に対応)

(1) 新しい生命工学分野の開拓生きた細胞を精密に計測・制御

(2) 再生医療、創薬を加速これまで純化が不可能であった細胞(膵臓細胞など)を創出できる均一な細胞の調整、不要な細胞の除去を一気に解決

安全・精密な細胞創出技術により

再生医療や創薬を加速したい!

企業への期待

• 未解決の「細胞の純化、選別」については、合成RNAの技術により克服できる 。

• 再生医療や細胞の選別に興味がある企業との共同研究を希望。

• また、細胞製造工場を開発中の企業、ヘルスケア分野への展開を考えている企業には、本技術の導入が有効と思われる。

本技術に関する知的財産権 (代表特許)

• 発明の名称 :miRNAの発現を指標として所望の細胞種を判別する方法

• 出願番号 :PCT/JP2015/050467(2015/01/09)出願人 :京都大学

• 発明者 :齊藤博英 ほか

お問い合わせ先

京都大学

iPS細胞研究所 齊藤博英研究室

• E-mail: hsaito-g@cira.kyoto-u.ac.jp• TEL: 075-366-7029• FAX: 075-366-7096

様々な共同研究を通じて、産業応用を目指します!

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