やはりデータ設計は大切です 藤原紀章

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データモデリングについて簡単に整理した。

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DBエンジニアのための技術勉強会

「やはりデータ設計は大切です」

㈱ファイナンシャル ブレイン システムズ

藤原紀章

本日の講演骨子

情報システムの付加価値とデータ設計

データ設計の設計目標

データモデルについての概説

データ設計の実際– 要件定義工程– 設計工程

総括

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自己紹介

氏名:藤原紀章(ふじわら のりあき)

学歴:関西学院大学 商学部 卒業

職歴:– 信託銀行 営業店、システム部– システムインテグレータ アプリケーションSE、PL– DOAコンサルティング会社 DOAコンサルタント– 海外パッケージ導入コンサルタント– システムインテグレータ PM

趣味:フルートを吹く

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私とデータ設計

 「データフロー図自体は、単にシステムを写し取ったものにすぎないので、直接的な成果とは認められ難いからである。」

堀内一、『データ中心システム設計』、1988、オーム社 より

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情報システムが付加価値を生む仕組み

情報システムを単純なモデルで考察する。

このモデルが示唆することは、『情報システムによる価値実現は、 データおよびプロセス設計の巧拙による』、と言える。

記録

蓄積情報の生産

【情報システムの価値実現モデル】 そうだったのか!!

データ

プロセス

事実 情報の再利用

編集

価値の実現

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価値実現のイネーブラー 情報システムの価値実現過程を「情報連鎖」という。

その場合、「蓄積」と「再利用」が生み出す付加価値を左右する。

連鎖をつなぐ「蓄積」

利用者にサービスを提供する「再利用」

記録

蓄積情報の生産

そうだったのか!!

Data

Process

事実 情報の再利用

編集

価値の実現

【情報連鎖を実現するもの(イネーブラー)】

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データ設計の設計目標

業務忠実– ユーザ業務、要求事項を忠実に理解し、

データ構造に表現すること。– 「忠実な理解」とは、業務の目的、存在意義、

意味を含む。

データ品質– 質の良いデータ構造を作成すること。– 質とは、「業務忠実」を検証しやすいこと。

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「業務忠実」を考察する

マスタ

イベント 集約

情報

資源

投入

分析

営業・生産・財務活動 評価・統制

・・・ データ

・・・ 事業活動

「事業・データ生産モデル」で考える。

【事業・データ生産モデル】

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「事業・データ生産モデル」の考察

事業の流れに沿っている

  →業務の組み立て順に開発工程が設計できる。

単純、判りやすい

  →関心の共有。

問題が具体化しやすい。

  →事業課題をデータ項目まで構造化出来る

「あるべき姿」を提供できる。

  →具体化してこそ、理想は達成できる。

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例えばこんな課題については?グループ企業内事業統合をする

 ①場所    拠点の統合効果 

 ②取引相手 与信管理の一元化

 ③商品・部品 SCM、集中購買によるコストカット

 ④銀行口座 資金管理、内部統制の厳格化

 ⑤各種コード 勘定科目の統一、仕事の標準化

グループ統合マスタの「あるべき姿」を定義

イベント、集計情報へ展開10

具体化すると?

①場所     場所を表すコードが統一されていない。 

②取引相手  取引先、支店、法人、グループが

          システムごとに持ち方が違う。

③商品・部品  同じ商品、部品に複数のコード。

④銀行口座   口座番号を一元管理していない。

⑤各種コード  勘定科目が不統一、意味が違う。

          多重意味定義な区分が多い。

事業統合したいのだが。。。。

課題をデータ項目に具体化出来る。11

「業務忠実」ってレビュー出来るの?

マスタ

①範囲 なにをマスタにするか?

②粒度 1レコードが指示す範囲は適切か?

イベント

③完全 正しく事実を捉えているか?

④存在 その場面で発生して良いか?

集計データ

⑤適合 意思決定に資するか?

⑥正確  偏向がない、再現性があるか?

【事業・データ生産モデルから導出されるデータ品質基準】

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データモデルの一般構造

タイプリソース

オカレンスリソース

イベント

要約

在庫

断面

1:Nの関係

【椿のエンティティ類型(1997年)によるデータモデルの一般構造】

【記号の説明】

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椿のエンティティ類型の功績

タイプリソース

オカレンスリソース

イベント

要約

在庫

断面

1:Nの関係

【記号の説明】

①データ発生順序を提示した

作業展開するにあたり上記順序で検討する14

タイプリソース

オカレンスリソース

イベント

要約

在庫

断面

1:Nの関係

【記号の説明】

椿のエンティティ類型の功績

②「タイプリソース」の発見

ビジネルルールを可視化した15

データ設計の実際(要件定義)

要件定義工程のポイント

現行分析は「必ず」行う。

データ設計を行う。

凝った業務フローは作らない。

「用語」の意味定義を行う。

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要件定義工程 作業展開例

素材収集現行IPF

作成

現行部分図作成 現行

統合図作成新規IPF

作成

新規統合図作成

【再構築プロジェクトの例】

IPF:インフォメーション・プロセス・フロー(椿、2005)

部分図:1つの業務画面、帳票のデータ構造を図示したもの。

統合図:システム化範囲すべてのデータ構造を図示したもの。

データ定義書作成

データ設計の実際(要件定義)

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IPFの紹介(椿、2005)

データ設計の実際(要件定義)

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【証券取引の例】

「処理」を書かない。

用紙は横向きがお勧め。

データ設計の実際(要件定義)

よくある 「業務フロー」 は使えない

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【よくある「業務フロー」】

受注 出荷 売上計上

電話注文

受注伝票

請求書

納品書

損益仕訳

受注 出荷 売上計上

【IPF】

無駄な分析をしなくていい。客観的で標準化可能。

データ設計の実際(要件定義)

データ設計はKJ法と同じ発想で行う。

業務入出力

(具体的な事実)

画面

帳票

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モデル化

部分図A

モデル化

部分図B

統合図

統合

※KJ法とは川喜田二郎氏が提唱した知的生産方法。

川喜田二郎、「発想法」、中公文庫、1967

データ設計の実際(設計)

設計工程のポイント

「意味論的ドメイン設計」を行う。

データ構造に基づく部品化を行う。

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データ設計の実際(設計)

「意味論的ドメイン設計」は意味がある。

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【ドメイン設計の例】

区分:排他集合(分岐に使用)

分類:集約キー項目

コード:マスタのキー項目

シーケンス番号:イベントのキー項目

数値:演算の対象

文字列:属性

「1桁文字」、「9桁数値」(形式的ドメイン)は使い勝手が悪い

データ設計の実際(設計)

データ構造は情報システムの部品の集合。

部品化に適した構造をしている。

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【株式約定照合データモデル例】 ※表記の説明

総括

データ設計は、情報システムがユーザにもたらす付加価値を最も左右する。

なので、情報システム開発において最も関心を置かなければならない。

要件定義工程では、要求事項の具体化と、実現可能性の両者を具現化する。

設計工程では、用語の意味とデータ構造に沿った部品化を行うことで、そこに示された要求事項を正確に設計することが可能になる。

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「統合」と「総合」

要素技術を提供するベンダと、価値を実現するために要素技術を「統合」するユーザの構図はこの40年間変化していない。

情報システムは「統合」によりユーザの業務に付加価値をもたらす。

要素技術を集めただけの状態、すなわち「総合」では、付加価値を提供したことにならない。

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参考文献

• 堀内一、『データ中心システム設計』 、オーム社、1988

• 椿正明、『データ中心システムの概念データモデル』 、オーム社、1997 

• 椿正明、『名人椿正明が教えるデータモデリングの“技“』、翔泳社、 2005

• 川喜田二郎、『発想法』、中公文庫、1967

• ルイス・ガースナー、『巨像も踊る』、日本経済新聞社、2002

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ご清聴ありがとうございました。

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