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平成 18 年度 地球環境・プラント活性化事業等調査 「イラク・主要都市通信網整備事業調査」 (イラク) 報告書要約 平成 19 3 丸紅株式会社 株式会社アイエスインターナショナル

平成 18 年度 地球環境・プラント活性化事業等調査 …...3. Atheer Telecom Iraq (イラク南部をカバー) インターネット 約20 万利用者 SCIS (主にダイヤルアップサービス)

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平成 18年度

地球環境・プラント活性化事業等調査

「イラク・主要都市通信網整備事業調査」

(イラク)

報告書要約

平成 19年 3月

丸紅株式会社

株式会社アイエスインターナショナル

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要約

本報告書はイラクの電気通信の現状分析を基に、イラク全土電気通信網の復興整備事業

(以下、本プロジェクト)の事業化調査結果を述べるものである。本プロジェクトは、同

国で現在最も欠如している通信網の一つである加入者網(ローカル・アクセス網、電話局

より加入者宅までの所謂ラスト・ワンマイル)を整備し、現在の電話普及率 3.7%を 2012

年において 10.92%まで高めることを目的としている。主な事業内容として、86 万 6 千の

加入者網新設(音声通信と共にデータ通信を可能にする IP 技術を適用)の他に、IP 通信

システムの構築、局外設備保守センター(OPMC : Outside Plant Maintenance Center)構築、

通信センター(NCC : New Communication Center)構築、及び、人材育成(HRD : Human

Resource Development)を含んでいる。

本プロジェクトは 2 期(2 フェーズ)に分割して実施するが、フェーズ 1 の対象地域は

バグダッド含むイラク全土の主要都市(54 万 9 千回線新設)、またフェーズ 2ではその他

の都市及びルーラル・エリア(31万 7千回線新設)を対象とする。このフェーズ毎の実施

は電話サービス需要の緊急度の評価に基づくものであり、イラク側実施機関(イラク通信

省、イラク通信郵政公社及びインターネットサービス国営会社)の確認と同意を得たもの

である。表 S-1に事業項目、及び、概算事業費を示す。

表 S-1概略事業費

単位 : 百万ドル

事業内容 フェーズ 1

(54万 9千加入新設)

フェーズ 2

(31万 7千加入新設)

A. 事業内容

1. IP通信システム 103.9 60.5

2. 加入者網整備 160.7 144.4

3. 局外設備保守センター (OPMC) 5.2 0

4. 人材育成 (HRD) 2.9 0

5. 通信センター (NCC) 4.6 0

小計 277.3 204.9

B. コンサルティングサービス 14.9 10.7

C. 警備費 41.4 41.4

D. 土木復旧工事費(内貨分) 1.7 0

E. 工事管理費(内貨分) 1.5 1.5

事業費合計 336.8 258.5

総合計 595.3

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事業内容は以下のとおり要約される。

(1) 事業名 : 「イラク全州電気通信ネットワークの復興整備事業」

(2) 事業目標 :

- イラク固定電話普及率の増大(2012年までに 10.92%を達成)

- インターネットサービス利用者の拡大及びブロードバンドアクセス網の整備

- 既存電気通信網およびインターネットサービスの量的及び質的改善

- イラク側実施機関職員の人材育成とスキル向上

- イラク社会経済基盤の再興

(3) 所轄の省庁 : イラク通信省(MOC: Ministry of Communication)

(4) 事業実施機関 :

イラク通信郵便会社(ITPC: Iraqi Telecommunication and Posts Company)

インターネットサービス国営会社(SCIS: State Company for Internet Service)

(5) 事業化の必要性 :

- 同国通信インフラは、旧政権下での制限された設備投資に加え、国連制裁、戦争

によって劣化・破壊が著しく、隣国の電話普及率と比較しても極めて低い。

- 戦後の米国・日本の緊急援助によって基幹網の整備・復旧は進んでいるものの、

通信インフラで最も重要な加入者に直接繋がる加入者網が含まれていない。

- 移動電話(携帯電話)は急激にその加入者を増やしているものの、端末が高い、

積滞が多い等、一国の通信インフラとしては極めて脆弱である。

- 加入者網の構築は、通信インフラの中で最も初期投資が必要となり、回収期間が

長い為、民間企業が実施しない一方、社会経済活動に不可欠なデータ通信・ファ

ックス通信を可能にする通信インフラで早期に整備する必要性がある。

(6) プロジェクト計画の根拠

イラク GDP/GNI、人口、積滞数、電話普及率並びに既存設備状況から通信需要を

予測し、2012 年の電話普及率 10.92%を得た。その為、86 万 6 千の固定電話用加入

者網をイラクの全土に構築する。データ通信並びにブロードバンド化のため、既存

通信ネットワークを有効利用して、IP 通信システムを構築する。あわせて局外設備

保守センター及びインターネットサービス改善のための通信センターをバグダッド

に建設して設備の保守運用の向上を図る。

(7) 事業範囲 : 表 S-1に示す 5つの事業内容から構成される。

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(8) 事業展開エリア : イラク全土

(9) プロジェクト裨益効果 :

- 信頼性の高い通信インフラを構築することによりライフラインの安定化。

- 行政・商業の中心である首都バグダッド及び主要都市の通信インフラの回復によ

り、首都圏機能の回復、社会基盤の安定化、経済、産業活動の促進・活性化。

- 相手側実施機関職員の ICT 人材育成、運用保守スキル向上により自立的運営に寄

与。

- 通信インフラの復旧・改善工事に伴うイラク国内の大規模な雇用創出。

(10) 定量・定性データ

(a) 財務的内部収益率 : 12.3%(ベース)

(b) 経済的内部収益率 : 13.0%

(c) 総事業費 : US$595.3Million(表 S-1に詳記述)

(d) 収入源 : 電話料金とインターネット・ブロードバンドサービス

(e) プロジェクト・ライフタイム: 14 年

(f) 電気通信指標 : 表 S-2のとおり。

表 S-2イラク電気通信指標

指標 2006年現在 2012年達成目標

市内呼:99% 市内呼:100%

市外呼:30% 市外呼:50% 通話完了率

国際呼:10% 国際呼:50%

故障率 戦争により不明 MOC設定予定

積滞数

約 30万

(実数は 60万と MOCは想

定)

積滞ゼロ

(新たな積滞約 50 万が予想

される。)

電話普及率 3.70% 10.92%

インターネット利用者数 200,000

(ダイヤルアップユーザ)

109,800

(ブロードバンドユーザ)

(11) プロジェクトの実施スケジュールを表 S-3に示す。

本スケジュールは治安状況、政策状況および法制の状況に大きな変化がないことを

前提条件とする。

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表 S-3プロジェクトスケジュール要約

項目 フェーズ 1 フェーズ 2

詳細設計 2008年 1月 ~ 6月 2009年 3月 ~ 8月

事前資格審査 2008年 5月 ~ 6月 2009年 4月 ~ 5月

入札 2008年 10月 ~ 11月 2009年 10月 ~ 11月

入札評価と審査 2008年 12月 ~ 2009年 1月 2009年 12月~ 2010年 1月

契約交渉と調印 2009年 2月 ~ 3月 2010年 2月~ 3月

製造と輸送 2009年 7月 ~ 2010年 2月 2010年 7月 ~ 2011年 2月

据付・設置工事 2009年 11月 ~ 2011年 4月 2010年 11月 ~ 2012年 3月

受入検査 2011年 4月 2012年 5月

保証期間 2012年 3月 2013年 4月

1. プロジェクトの背景

世銀統計によれば、旧政権下、通信セクターへの投資が不十分であったため、イラクに

おける 1985年から 1990年までの固定電話普及率は、5.6%前後と横ばいであった。その後、

(1)1991年の湾岸戦争、(2)国連制裁により、固定電話普及率は 4%にまで落ち込み、2006

年の固定電話普及率では 3.7%と、隣国ヨルダン及びシリアの 12%台に比較し極めて低い

状態となっている。

イラク国内では、旧来型の電話交換機と老朽化した銅線ケーブルが未だに各地で使用さ

れており、布設されてから 20年以上を経過した古い銅線ケーブルは適切な保守がなされて

いないものが多く、固定電話の品質は極めて貧弱である。2003年の戦争時、主要設備の大

半が破壊され、国内網は麻痺し、戦争終結後、幾つかの緊急復旧プログラムが米国、日本

などの海外機関の援助によって実施されたが、それらのプログラムは緊急復興を要する通

信インフラの上位階層である中継交換機、長距離幹線網を対象に行われ、加入者網の復旧

には至っていない。従って、イラクでは、低品質かつ高価な移動電話(携帯電話)サービ

スを利用せざるを得ない状況であり、固定網を利用する必要のあるインターネット等のデ

ータ通信は極限られた地域での利用に限定されている。

表 S-4に最新の固定電話端子数、移動電話加入者数とインターネット利用者数を示す。

同表が示すように、固定電話端子数は、移動電話加入者数と比較して少なく、インターネ

ットに至っては、最大で 20 万利用者分の処理能力しかない状況である。2005 年にイラク

政府が策定した国家開発戦略(NDS)によれば、通信インフラの整備はイラク経済復旧の

ために急務であると報告されている。

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表 S-4固定電話と移動電話の加入者数

サービス 端子数/加入者数

/利用者数 通信事業者

固定電話 約 150万端子 ITPC

移動電話 約 600万加入者

民間企業

1. Asia Cell Telecommunications Company Ltd

(イラク北部をカバー)

2. Orascom Telecom Iraq Corporation

(イラク中央部とバグダッドをカバー)

3. Atheer Telecom Iraq

(イラク南部をカバー)

インターネット 約 20万利用者 SCIS (主にダイヤルアップサービス)

2. プロジェクトの必要性

2.1 通信インフラの現状

イラクでは 333局の電話局が存在し、既存電話回線の 40%はバグダッド、8%はモスル、

6%はバスラ、13%はスルマニヤに設置されている。しかしながら、このうち 71局は戦争

中に破壊、もしくは、保守用部品が調達出来ないために稼動しておらず、現在稼動可能な

交換機は 262台に限られている。表 S-5にイラクにおける電話交換機の現状を示す。

表 S-5イラク電話交換機の状況

2006年 11月 24日現在 2007年 1月

26日現在

既存交換機容量 非稼動交換機容量 稼動交換機容量 州

交換機数 端子数 交換機数 端子数 交換機数 端子数

積滞登録

件数

Baghdad 40 608,693 6 14,552 34 594,141 60,443

Bassra 19 80,800 0 0 19 80,800 10,271

Samawa 6 21,138 0 0 6 21,138 1,144

Nassyriah 16 26,682 7 1,174 9 25,508 35,800

Mosul 39 109,901 14 12,955 25 96,946 17,075

Hilla 18 51,796 0 0 18 51,796 37,618

Kerbarah 6 25,000 0 0 6 25,000 30,351

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Najaf 15 53,985 2 485 13 53,500 37,766

Dawaniya 17 38,005 2 300 15 37,705 3,156

Ramade 36 70,945 17 2,450 19 68,495 19,784

KUT 15 45,273 2 472 13 44,801 431

Amara 12 20,675 0 0 12 20,675 300

Baquba 25 37,774 13 1,904 12 35,870 15,842

Kirkuk 15 36,519 1 200 14 36,319 5,650

Tikrit 21 49,992 7 1,320 14 48,672 2,591

Sulmania 23 194,000 0 0 23 194,000 12,915

Duhok 3 20,000 0 0 3 20,000 1,657

Arabel 7 15,000 0 0 7 15,000 4,738

計 333 1,506,178 71 35,812 262 1,470,366 297,532

2.2 通信需要予測

2006年 11月現在で、電話交換機の総端子容量(147万回線)のうち稼動中の固定電話回

線数は 105万 8千、積滞件数は 29万 8千で、電話需要合計数は 135万 6千である。しかし

ながら、イラクのように電話申込みをしてもサービスが提供されない、サービス開始まで

に非常に時間がかかる国では、申込みすらしていない場合が多く、この積滞数は実態を反

映していないと考えられる。イラク側実施機関よりは、本プロジェクトを実行することで、

電話設備復旧が一般に認知されれば、電話申込みは少なくとも現在の 5 倍(149 万)に達

するであろうとの意見が出されているが、本調査では、需要予測の方法としてマクロ需要

予測(トップ・ダウン方法)を行い、予測手法として、(1) 時系列予測および (2) 回帰分

析手法にて需要予測を行った。結果は以下の通り。

2012年における需要予測値

- 2006年における交換機容量 : 147万回線

- 2012年における総需要数 : 367万 2千回線

- 需要充足率 : 80% (目標)

- 必要な純増設回線数 : 146万 8千回線

146万 8千回線の必要増設数に対し、本プロジェクトでは 86万 6千回線 (実固定電話

回線数)の新設を実施(需要予測計算の詳細は本報告書の第 3章 3.3.3項を参照)する拡張

計画について検討したが、既存交換機の増設は、持続的運用保守の観点から経済的でない

ため、音声及びデータ通信を可能にする IP技術導入により 86万 6千回線の新設を行う計

画とした。

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2.3 インターネット需要予測

2007 年から 2011 年まで時系列分析によりインターネットサービスの需要予測を実施し

た。その予測結果は以下表 S-6の通り。

表 S-6インターネットサービス需要予測(単位:千利用者)

2002年 2003年 2004年 2005年 2006年

12 15 80 150 200

2007年 2008年 2009年 2010年 2011年

462 664 908 1,198 1,534

インターネットシステム容量設計については、2011年の需要予測値(153万 4千利用者)

を採用する。

3. 事業範囲に関する基本方針

固定電話網は行政サービス、国家安全保障、経済活動、社会生活等あらゆる分野の基盤

となる社会インフラであり、この復旧整備はイラク復興の為には欠かせないものである。

2005年 6月に発表された 2005から 2007年国家発展戦略(National Development Policy)に

おいて、イラク政府は通信分野に対する基本方針を以下の様に述べている。

現在のイラクの通信、インターネット設備は整備が遅れており、市内、市外、国際通信

を含めた接続環境を改善しなくてはならない。通信インフラ整備のために、多大な設備投

資、政策変更が必要である。適正な政策と行政の枠組みにより魅力的なビジネス環境を作

り、最先端の技術を採用することにより、この分野での飛躍的な発展が可能であると考え

ている。このために以下の施策を実行に移す。

(1) 2007 年までに 3.3 百万人が固定電話通信サービスを受けられるように既存の交換機並

びに加入者網の整備、土木工事の実施。

(2) 最先端の技術を採用した国際回線への接続を含む長距離国内伝送網の構築。

本プロジェクトにて計画している内容は上記基本方針と完全に合致しており、イラク側

実施機関(MOC, ITPC/SCIS)からも本プロジェクトの実施への強い期待が表明された。

4. IP技術展開

固定電話の設備は、回線交換機を使用する回線交換網(PSTN)が過去数十年間採用され

ていた。しかしながら、IP技術の開発・導入後、世界の殆どの国において交換回線網は下

記の理由により IP網へと移行しつつある。

- 通信事業者の収益構造が音声からデータ通信に移行しており、回線交換方式はイ

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ンターネット並びにブロードバンドのデータ通信には向いてないこと。

- 回線交換網は IP網に比べて高価であること(また、多大な設置スペースが必要)。

- ITU-T および IETFが推進する次世代網(NGN)の標準化が進展していること。

- 回線交換網は初期投資額、アップグレードの費用、訓練経費など通信網事業者に

かかる負担が増えること。

上記の理由により、通信設備製造会社の殆どは回線交換機の開発・製造を中止し、IPベ

ースの設備製造へ移行している。図 S-1 に通信分野における技術移行の推移を示す。

時間

デジタル回線交換

Technology Migration (技術移行)

図 S-1 通信分野におけ

5. 本プロジェクトの構成・特徴

5.1 IP 通信システム

IP 通信システムはイラク全土の主要都市を接続

局外集線装置(RU)によって加入者網を構築する。

要を図 S-2に示す。また、IP通信システムの基礎とな

コアルータ及び DWDM(高密度波長多重方式)に

ステムの概略構成を示す。CUとRUはSIPサーバー

全国光ファイバ基幹伝送路は既に利用可能であり

(MOC/ITPC)によって建設中であるため、本プロ

NGN

IP通信

る技術移行

すると共に電話局内制御装置(CU)と

本プロジェクトの IP 通信システム概

る通信網は、光ファイバ基幹伝送路、

よって構成される。図 S-3に IP通信シ

とソフトスイッチによって制御される。

、DWDM は現在イラク側実施機関

ジェクトには含めない。

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(2) Router at each exchange is connected to its own local access network based on IP technology.(1)  IP over SDH is applied by means of Optical Fiber System (existing network).

POINT OF INTERFACE

PSTN 公衆電話網

MEDIA GATEWAY

Note;

Central Unit installed at Transit Sw Remote UnitRU

RU RU

RU

RU

SULMANIA

RU RU

RU RU BAGHDAD

KEEBARAH

RU

RU

RU RU

POI

SAMAWA

NASSYRIA

RU

RU

BASRA

RU RU RU

RU RU

RU RURU RU

DAWANIYA

TIKRIT

RAMADIPOI

KUT

RU

NAJAF

RU RURU RU

HILLA

AMARA

RU RU

POI

MOSULDUHOK

ERBIL

Transit Switches under Japanese Grant Aid

KIRKUK BAQUBA

RU RU

RU RU

PSTN Mobile

PSTN Mobile

PSTN Mobile

図 S-2 IP通信システム概要

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IP Communication System + Local Access Network

PSTN,

Mobile Network etc.

CU Central Unit

RU

RU DP RU DP

DP

Core Router

Media Gateway Signal Gateway

Edge Router Edge Router

OPF

ADSL (Metal) ADSL (Metal)

ADSL (Metal) ADSL (Metal)

FTTH FTTB

(OPF) (OPF)

Existing Network

DWDM

POI Point of Interface

Craft Terminal

DP ( Distribution Point )

RU

Switch

SIP Server

Existing Network

IP Communication System

Charge Server Domain Name Server

図 S-3 IP通信システムの概略構成

リモートユニット(RU)アクセス網 RUは二次ケーブルを集線する機能を有する。RUは光ファイバを使用して交換局 CUに接続される。CUは 10台の RUまで制御可能である。

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5.2加入者網

加入者網とは、電話局と加入者を接続する伝送路部分を意味する。この加入者網は、光

ファイバ・ケーブルで電話局内に設置する制御装置(CU)と町の中に設置する集線装置

(RU)とをつなぎ、または大きな通信需要の見込まれるビルには電話局から直接光ファイ

バ・ケーブルで接続する網構成とする。RUから加入者宅近傍まで配線される銅線ケーブ

ルには ADSL(非同期高速デジタル加入者線)が設置される。電話局内には、アクセス・

ゲートウエイ、スイッチ等が設置される。尚、RUは IP通信システムの一部であるため、

IP通信システムのスコープの一部としている。

5.2.1 FTTB(Fiber to the Building : ユーザビルまで光化)

大通信需要を持つビルでは光専用線、PON(受動型光回線)、IP 電話の需要が見込まれ

るため、光ファイバ・ケーブルを電話局から直接引き込むもの。

5.2.2 FTTH(Fiber to the Home : 加入者宅まで光化)

インターネットなど高速、広帯域伝送回線を望む加入者に PON 方式による1芯の光フ

ァイバ・ケーブルを加入者宅まで引くが、1芯光コアは PONで 32分岐される。

5.2.3 ADSL(非対象型デジタル加入者線)

メタリック・ケーブルで接続される加入者がインターネットを利用ができるように

ADSLを設備する。図 S-4 に加入者網の概要を示す。 Building Home

CU

RU

RU DP RU DP

DP

ADSL (Metal) ADSL (Metal)

ADSL (Metal) ADSL (Metal)

FTTH FTTB

(OPF) (OPF)

DP

RU

CU; Central Unit RU; Remote Unit FTTH; Fiber To The Home FTTB; Fiber To The Building DP; Distribution Points OPF; Optical Fiber

24心光ケーブル 1心光ケーブル メタリック・ケーブル 対象外

図 S-4 加入者網の概要

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5.3 局外設備保守センター(OPMC : Outside Plant Maintenance Center)

ケーブル網などの局外設備の保守を行う OPMC(Outside Plant Maintenance Center)をバ

グダッド市内に建設し(イラク政府所有地を使用)、工事、保守用機器、車両、施設記録保

管庫、OPMCマネージメント装置、加入者網監視装置並びにイラク側実施機関(MOC/ITPC)

技術者用の訓練施設を設置する。

5.4 通信センター(NCC)

SCISのインターネットサービスの改善の為、通信センター(NCC : New Communication

Center)をバグダッド市内に建設し(イラク政府所有地を使用)、インターネット衛星用地

球局設備を含むインターネット設備(サーバ、ルータ、ファイアウォール等)を収容する。

NCCは下記の基本機能を有する:

- カスタマー・サポートセンター (情報環境整備による ICT教育の一環)

- インターネット・サービスの品質確保と信頼性向上のためのネットワーク運用

- スタッフのプロフェッショナル ICT教育・訓練

5.5 人材育成 (HRD : Human Resource Development)

HRDでは、イラク側実施機関(MOC, ITPC/SCIS)の要員の訓練と訓練設備の整備を行

う。

人材育成としては、ITPC及び SCISの要員(計 124人)に対し、日本において表 S-7 に示

す専門的な研修を行う。また、訓練設備として、IP電話網モデルシステムを提供する。

表 S-7研修カリキュラム概要

コース名 ITPC受講者数 SCIS受講者数 研修期間

IPネットワーク技術 30 5 2ヶ月

デジタル伝送技術 15 0 1ヶ月

無線伝送技術 15 5 1ヶ月

局外線路施設技術(OSP) 20 0 2ヶ月

通信電源技術 15 2 1ヶ月

トラフィック管理 10 2 1ヶ月

管理・調達 5 0 2ヶ月

6. 円借款要請、プロジェクト実施に関するフィージビリティの有無

イラク側実施機関は本プロジェクトの円借款による実現を強く期待しており、既に関係

機関(計画省等)との折衝を開始している。

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7. 問題点の解決

本プロジェクト実施にあたり、以下事項の改善が望まれる。

7.1 ITPCのプロジェクト・マネージメント・ユニット(PMU)

本プロジェクトの工程管理は非常に重要であり、プロジェクトの完成までイラク側実施

機関にプロジェクト・マネージメント・ユニット(PMU)を組織化し、スタッフを適正配

置する必要がある。又、PMUには、プロジェクトの運用、実施、及び、技術事項等をアド

バイスする優れたコンサルタントの雇用が必要不可欠である。

7.2 必要なデータ・情報の準備

加入者網の設計に際し、既設網、サイトなどのデータ・情報を必要とするので、イラク

側実施機関(MOC, ITPC/SCIS)はそのようなデータ・情報をプロジェクト開始に先立ち、

収集・準備する必要がある。

7.3 ベンダー選定

履行能力の高いベンダーを選定することが重要であり、ベンダーの選定には、技術力・

解析能力・インテグレーション能力を重要視する必要がある。

8. 環境および社会的影響度

国際協力銀行(JBIC)の環境アセスセメントに関するガイドラインによれば、通信プロ

ジェクトはカテゴリー“C”とされ、原則、環境及び社会生活に悪影響を与えないものであ

る。しかしながら、工事段階に、影響が出る恐れもあり、本プロジェクトをインパクト・

スクリーン・シートに基づき調査した。結果、自然環境、社会生活に大きな影響がないこ

とが判明した。

9. 財務・経済分析結果

9.1 財務的内部収益率 (FIRR)

損益計算とキャッシュフロー計算結果を併用する方法で本プロジェクトの財務的内部

収益率についての感度分析をフェーズ 1及び 2 について行った(結果は、表 S-8)。 運用・

保守管理費用の変動に対して内部収益率が敏感な反応を示しており、あらゆる方策を用い

て同費用の抑制を図ることが重要性となる。

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表 S-8 FIRR感度分析

財務的内部収益率 項目 感度項目変動

フェーズ 1 フェーズ 2

基本ケース 12.3% 12.3%

営業収入

(加入料を除く)

プラス 10% 13.9% 13.9%

同上 マイナス 10% 10.7% 10.6%

運用・保守管理費用 マイナス 10% 16.2% 16.1%

同上 プラス 10% 7.9% 7.9%

9.2 経済的内部収益率(EIRR)

EIRRは、上記説明の FIRR計算結果に対し、下記の条件を加味し、EIRRを算出した。

9.2.1 加入料金に係わる消費者余剰

前述のとおり、現在の登録積滞数は 29 万 8 千であるが、イラク側実施機関(MOC,

ITPC/SCIS)によれば、実際の積滞数(加入申込みを希望する顧客)はその 2 倍以上と推

定され、更にプロジェクト実施が一般に認知されれば 5倍に増加すると予想されている。

本調査では、これらの事実も考慮しつつ、需要予測を行い、2012年に約 370万の需要を得

た(2.2項を参照)。充足率 80%では、74万の積滞となるが、この潜在的積滞を 50万と想

定し、その状態が毎年続くとの前提にたって消費者余剰を計算し便益に追加している。積

滞数は感度分析で±20%を条件に加味しているので、50万は 40~60万で変動することにな

る。

9.2.2 輸入関税等の初期投資額(費用)への追加

イラクにおける輸入税率は、2006年 4月以来 10%である。VAT(付加価値税)は 2.4%

が加算される。この調整は資本投資コストにおいて行った。表 S-9 に EIRR 感度分析結果

を示す。

表 S-9 EIRR感度分析

フェーズ 1 フェーズ

項目 感度項目変動 経済的内部収益率

基本ケース 13.0%

積滞件数 プラス 20% 13.4%

同上 マイナス 20% 12.7%

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9.3 結論

上記に示すごとく、FIRR (12%) および EIRR (13%)となり、本プロジェクトは有償資金

協力事業として財政上実現可能性がある。

10. 相手機関の運用保守能力

本プロジェクトの所管省庁は通信省(MOC; Ministry of Communication)であるが、ITPC

と SCISの 2社がプロジェクトの実施機関となる。事業内容の大部分は ITPCの固定電話サ

ービスの拡充整備に関するものであり、SCISのインターネットサービスに関するポーショ

ンは小さいので、ITPCに重点をおいて考察を行った。本プロジェクトを円借款にて実施す

る場合の業務の流れを、図 S-5に示す。(詳細は 6.1.2章)

MOC (Ministry ofCommunications)

JBIC

Ministry of Finance

ITPC

SCIS

図 S-5 円借款プロジェクト業務実施の流れ

本プロジェクト実施に関して、表 S-10に示す通り、イラク側実施機関(MOC, /TPC/SCIS)

の管理、技術能力は十分であると言える。

表 S-10イラク側実施機関の管理・技術能力

項目 管理・技術能力の証明

計画

- 2004年 1月に日本政府に提出された電気通信プロジェクトの復興支

援要請

- MOC自己資金による次世代ネットワーク(NGN)構築計画

実施

- 日本政府の無償資金協力事業の実施

(南北基幹通信網整備計画、市外交換網整備計画)

- 世銀経済協力事業の実施

(基幹デジタルマイクロ波伝送路の建設)

運用保守 - 電気通信およびインターネットサービスの事業展開と運用保守

11. プロジェクトサイト

本プロジェクトのサイトを次頁に示す。