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中部空港検疫所支所 感染症情報 105 号 1 平成 30 年 8 月 15 日発行 目次 1. 検疫所の業務紹介 【第 5 回 検疫感染症患者に対する検査、措置】 ..2 2. 検疫感染症とは ................................................................................................................4 3. 名古屋検疫所管内における検疫感染症の発見状況 .....................................5 4. 検疫感染症の発生状況................................................................................................6 (1) エボラ出血熱 【コンゴ民主共和国】 .......................................................................6 (2) デング熱 【アジア・太平洋地域】........................................................................... 10 5. 検疫感染症以外の感染症の発生状況............................................................... 13 (1) 伝播型ワクチン由来ポリオウイルス 【ナイジェリア】 ................................... 13 (2) ニパウイルス感染症 【インド】................................................................................ 16 6. 海外へ渡航されるみなさまへ .................................................................................. 19 (1) 夏休みにおける海外での感染症予防について .............................................. 19 (2) 蚊に刺されないようにするには............................................................................... 21 (3) 食べ物・水にご注意を ................................................................................................. 23 7. 検疫所からのお知らせ ............................................................................................... 24 【インド】 ニパウイルス感染症 【コンゴ民主共和国】 エボラ出血熱 【ナイジェリア】 伝播型ワクチン由来 ポリオウイルス 【アジア・太平洋地域】 デング熱

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中部空港検疫所支所 感染症情報 105号

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平成 30年 8月 15日発行

目次

1. 検疫所の業務紹介 【第 5回 検疫感染症患者に対する検査、措置】 .. 2

2. 検疫感染症とは ................................................................................................................ 4

3. 名古屋検疫所管内における検疫感染症の発見状況 ..................................... 5

4. 検疫感染症の発生状況 ................................................................................................ 6

(1) エボラ出血熱 【コンゴ民主共和国】 ....................................................................... 6

(2) デング熱 【アジア・太平洋地域】 ........................................................................... 10

5. 検疫感染症以外の感染症の発生状況 ............................................................... 13

(1) 伝播型ワクチン由来ポリオウイルス 【ナイジェリア】 ................................... 13

(2) ニパウイルス感染症 【インド】 ................................................................................ 16

6. 海外へ渡航されるみなさまへ .................................................................................. 19

(1) 夏休みにおける海外での感染症予防について .............................................. 19

(2) 蚊に刺されないようにするには ............................................................................... 21

(3) 食べ物・水にご注意を ................................................................................................. 23

7. 検疫所からのお知らせ ............................................................................................... 24

【インド】

ニパウイルス感染症

【コンゴ民主共和国】

エボラ出血熱

【ナイジェリア】

伝播型ワクチン由来

ポリオウイルス

【アジア・太平洋地域】

デング熱

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平成 30年 8月 15日発行

1. 検疫所の業務紹介 【第 5 回 検疫感染症患者に対する検査、措置】

平成 30年度の本誌は、検疫所の業務を 1年間 12回に分けてご紹介するページを掲載しています。

第 5回目となる今号では、検疫感染症患者に対する検査、措置をご紹介いたします。

検疫所では外国からの航空機および船舶の検疫を実施し、体調不良の方や感染症流行国から帰国/入

国する方に対して、健康状態や渡航歴、媒介動物との接触歴などを確認します。その結果、検疫感染症に

感染しているおそれがあると認められた場合は、必要な検査および措置を実施します。

<検査>

前号まででご紹介したとおり、外国から来航した全ての乗

員、乗客に対して、様々な手段を通じて健康状態の確認(検

疫)を行います。発熱や体調不良の方がいた場合は、適切な

場所にご案内して詳しく質問(検疫法第 12条)および診察

(同 13条)を行います。その結果、検疫感染症が疑われる患

者であると検疫所の医師が判断した場合は、同じく検疫法第

13条に基づいて、病原体の有無を確認するための検査を実

施します。検査は、検疫感染症の種類に応じて、血液、尿、

のどや鼻を専用綿棒で拭ったものなどの検体を用いて行いま

す。

新型インフルエンザ等感染症など、ヒトからヒトへ強い感染力を持つ病原体の場合は、空気を外へ出さな

いように特別に設計された個室(陰圧室)へ患者さんと共に移動し、そこで検体を採取します。対応する医師

や看護師は、自分の体を病原体から守るために専用の個人防護具(PPE)を着用します。

検疫法第 2条第 3号に基づき政令で指定する感染症(別表

参照)については、検体採取後は検査結果を待たずに入国審査

に進んでいただきます。検査結果は判明次第、電話等でご本人

へ連絡します。

採取した検体は、検疫感染症の種類に応じて、病原体の遺伝

子の検出や顕微鏡検査等を実施します。この際に検査担当者も

同じく適切な PPEを着用して臨みます。

検査によって病原体が発見された場合は、検疫法 26条の 3

に基づいて、患者の居住地または滞在地を管轄する都道府県

知事に通知します。

<措置>

検疫感染症に対する措置(病原体侵入防止のための手続き)には、検疫法第 14条に基づいて、患者の

隔離、患者の同行者等の停留、患者が使用した場所の消毒等があります。隔離および停留という強い権限

を持った措置は、現行法では一類感染症と新型インフルエンザ等感染症に対してのみ行われます。

新型インフルエンザ等感染症疑い患者の検体

採取の様子(※訓練時の写真です)

新型インフルエンザ等感染症の検査をして

いる様子

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平成 30年 8月 15日発行

○隔離

隔離は、指定された病院の感染症対応病室への入院によって患者が外部と接触しないようにし、病原体

が国内で拡散することを防ぐために行います。隔離は、検査によって患者が病原体を持っていないことが判

明した時点で解除されます。

○停留

停留は、現在は症状がないが、患者に同行した等の理由で病原体に感染したおそれがある方が対象と

なります。停留は検疫感染症の種類によって、病院または指定した宿泊施設(ホテルなど)に収容して行わ

れます。隔離と同じく外部と接触しないようにすることで、病原体が国内で拡散するのを防ぐために行いま

す。期間は、それぞれの検疫感染症の潜伏期間(病原体が感染してから症状が出現するまでの期間)を考

慮して政令で定められた期間までです。

○消毒

消毒は、接触感染等のおそれがある検疫感染症の場合に、患者さんが触ったり使用した場所や物(航空

機内の座席やトイレ、船舶内の居室や備品など)に対して行います。

場所や物の性質上、消毒して再利用するのが困難な場合には、その使用を制限することもあります。

感染症 検査 隔離 停留 消毒

検疫感染症

法 2条 1号

一類感染症(エボラ出血熱、クリミア・コンゴ出

血熱、痘そう、南米出血熱、ペスト、マールブル

グ病、ラッサ熱)

○ ○ ○ ○

検疫感染症

法 2条 2号 新型インフルエンザ等感染症 ○ ○ ○ ○

検疫感染症

法 2条 3号

中東呼吸器症候群(MERS)、鳥インフルエンザ

A(H5N1、H7N9)、ジカウイルス感染症、チクン

グニア熱、デング熱、マラリア

○ - - 必要に

応じて

検疫感染症以外の感染症で

国内に侵入するおそれのある重大な感染症

法 34条

- ○ ○ ○

新感染症

法 34条の 2 - ○ ○ ○

これら措置においては、対象者等の行動を制限する必要が生じますが、検疫感染症の病原体が国内に

侵入したり拡散するのを防止するための重要な対策です。

措置をはじめとする検疫所業務への皆さまのご理解ご協力をよろしくお願い申し上げます。

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平成 30年 8月 15日発行

2. 検疫感染症とは

検疫法は、「国内に常在しない感染症の病原体が船舶又は航空機を介して国内に侵入することを防止す

る」ことを目的としています(検疫法第 1条)。

「国内に常在しない感染症」は、検疫法第 2条及び検疫法施行令第 1条で具体的に定められています。

これらの感染症を「検疫感染症」と呼びます。

この他に、同法第 34条に基づいて「検疫感染症以外で、国内に侵入するおそれのある重大な感染症」

が、同法第 34条の 2に基づいて「未知の新しい感染症」が、検疫所で水際対策する感染症としてそれぞれ

指定される場合があります。

またこれらの感染症は同時に、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(感染症法)

においても取り扱いが指定・分類されています。

検疫所は、検疫感染症が国内に侵入しないよう監視するとともに、海外での検疫感染症の発生動向に常

に注目しています。

本誌「中部空港検疫所支所 感染症情報」は、名古屋検疫所及びその支所・出張所と関係が深い事業所

の皆さま向けに、検疫感染症及びその他注意が必要な感染症について最新の情報をお届けします。

【検疫感染症の一覧】(平成 30年 8月 15日時点)

検疫法の条項 感染症の種類 感染症法上の

分類

第 2条 第 1号 エボラ出血熱、クリミア・コンゴ出血熱、痘そう、ペスト、

マールブルグ病、南米出血熱、ラッサ熱 一類感染症

第 2条 第 2号 新型インフルエンザ等感染症(※1) 新型インフルエ

ンザ等感染症

第 2条 第 3号

施行令第 1条

鳥インフルエンザ A(H5N1)、鳥インフルエンザ A(H7N9)、

中東呼吸器症候群(MERS) 二類感染症

ジカウイルス感染症、チクングニア熱、デング熱、マラリア 四類感染症

第 34条 検疫感染症以外の感染症で、

国内に侵入するおそれのある重大な感染症(※2) ------

第 34条の 2 未知の新たな感染症(※3) 新感染症

赤字は今号で取り上げている感染症

(※1、2、3 いずれも平成 30年 8月 15日時点で指定なし)

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3. 名古屋検疫所管内における検疫感染症の発見状況

検疫所には、外国から来航した人のうち検疫感染症が疑われる者に対し、病原体検査を行う権限があり

ます(検疫法第 13条)。

今号より、中部空港検疫所支所における病原体検査および病原体発見の状況を随時お知らせいたしま

す。

【2018年 中部空港検疫所支所における病原体検査の実施および病原体発見の状況】

中部空港検疫所支所 (管轄:中部国際空港)

検査人数 病原体発見数 病原体の内訳

1月 5 0

2月 1 0

3月 9 1 デングウイルス 1

4月 4 0

5月 4 1 デングウイルス 1

6月 6 0

7月 4 0

8月

9月

10月

11月

12月

計 33 2

(単位:人)

【2017年 中部空港検疫所支所における病原体検査の実施および病原体発見の状況】

検査人数 病原体発見数 病原体の内訳

2017年 44 7 デングウイルス 6

チクングニアウイルス 1

(単位:人)

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平成 30年 8月 15日発行

4. 検疫感染症の発生状況

(1) エボラ出血熱 【コンゴ民主共和国】

【ポイント】

エボラ出血熱は、エボラウイルスが引き起こす、致死率が高い極めて危険な感染症です。

コンゴ民主共和国では、2018年 5月 8日付けで、同国としては 1年ぶり 9回目のエボラ

出血熱の流行発生が発表されました。封じ込め対策が徹底して行われ、患者の発生は 6

月 2日が最後でした。その後 7月 24日付けで同国より公式に終息宣言がなされました。

患者数は 54人(うち 31人が死亡)でした。

一方で同じくコンゴ民主共和国において、上記の終息宣言の直後の 8月 1日に、全く別

の地域で新たなエボラ出血熱の流行が宣言されました。8月 7日時点で 44人の患者が

確認され、うち 36人が死亡しています。上記の流行とは独立した別の流行だと考えられ

ています。

実は今号では、コンゴ民主共和国でのエボラ出血熱の流行に関して、終息宣言と流行宣言の両方をお

知らせせねばなりません。前号までで既報の流行は 7月 24日付けで終息宣言が出たものの、その直後の

8月 1日に同国の別の地域での新たなエボラ出血熱流行が宣言されました。

【終息宣言】

世界保健機関(WHO)の 2018年 7月 25日付け発表によりますと、5月 8日に初回報告されたコンゴ民

主共和国でのエボラ出血熱の流行は、7月 24日付けの同国政府からの公式発表により終息が宣言され

ました。4月 5日の発端患者の確認以降、6月 2日に確認された患者が最後となりました。最後の患者が

確認されてから最長潜伏期間 21日間のさらに 2倍である 42日間が経過し、その間に新たな患者が報告

されなかったため、終息宣言となりました。

4月 5日~6月 2日の間に総患者数 54人(うち確定例 38人、可能性例 16人)が報告され、うち 33人

が死亡し、致死率は 61%でした。この中には 7人の医療従事者(うち 2人死亡)も含まれています。

患者のすべてが、同国北西部に位置する赤道州(Équateur 州;首都キンシャサから北東へ約 500km)の

3つの地区での発生でした。内訳は、ビコロ地区 21人(確定 10人、可能性 11人)、イボコ地区 29人(確定

24人、可能性 5人)、ワンガタ地区 4人(確定 4人、可能性 0人)でした。

【新たな流行宣言】

上述の赤道州での終息宣言が出された直後の 8月 1日、同国保健省は北キヴ州(North Kivu州)での

エボラ出血熱流行を宣言しました。同州は同国の東部にあってウガンダ国境に接しており、上述の赤道州

からは 2,000km以上離れています。さらに検出されたウイルスの遺伝子解析も併せて、先の赤道州の流行

とは関係なく独立して発生した流行であることが確認されています。

【出典】

WHO Disease Outbreak News | Ebola virus disease - Democratic Republic of the Congo | 25 July 2018

http://www.who.int/csr/don/25-july-2018-ebola-drc/en/

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平成 30年 8月 15日発行

現地の診療記録などを参照すると、最初の患者は本年 5月には発生していたと推測されています。

8月 7日までの時点で、患者は北キヴ州の 5つの地区と隣接するイトゥリ州(Ituri州)の 1つの地区か

ら、計 44人(確定例 17人、可能性例 27人)が報告され、うち 36人が死亡しています。これらには 2人の

医療従事者が含まれ、うち 1人が死亡しています。患者の大半は北キヴ州のマバラコ地区から報告されて

います(確定例 13人、可能性例 21人)。

この他に 47人の疑い例が検査結果待ちの状態です。

同州は同国最大の人口密集地でもあり、域内紛争が継続して治安情勢が悪く、国内避難民および難民

が 100万人を超えるとされています。

北キヴ州、イトゥリ州を含む周辺一帯に対して、日本の外務省は退避勧告を出しています。

【出典】

WHO Disease Outbreak News | Ebola virus disease - Democratic Republic of the Congo | 4 August 2018

http://www.who.int/csr/don/4-august-2018-ebola-drc/en/

WHO Disease Outbreak News | Ebola virus disease - Democratic Republic of the Congo | 9 August 2018

http://www.who.int/csr/don/9-august-2018-ebola-drc/en/

外務省 | 海外安全ホームページ | コンゴ民主共和国の危険情報【一部地域の危険度引き上げ】(更新) | 2017年 04 月 05 日

https://www.anzen.mofa.go.jp/info/pchazardspecificinfo_2017T031.html#ad-image-0

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エボラ出血熱とは

エボラ出血熱は、エボラウイルスによる致死率が高い極めて危険な感染症です。

●感染経路

エボラウイルスに感染し、症状が出ている患者の体液等(血液、分泌物、吐物、排泄

物)や患者の体液等に汚染された物質(注射針など)に十分な防護なしに触れた際、

ウイルスが傷口や粘膜から侵入することで感染します。一般的に症状のない患者から

は感染しません。空気感染もしません。

エボラウイルスは、オオコウモリ(果実を餌とする大型のコウモリ)、サル、アンテロー

プ(ウシ科の動物)などの野生動物にも感染します。流行地では、それらの感染動物の死体や生肉(ブッシ

ュミート)に直接触れた人がエボラウイルスに感染することで、自然界から人間社会にエボラウイルスが持

ち込まれていると考えられています。

なお WHOは、流行地では以下のような集団がエボラ出血熱に感染するリスクが高いとしています。

医療従事者

患者の家族・近親者

埋葬時の儀式の一環として、遺体に直接触れる参列者

病気に関する知識を持ち、しっかりした対策を行うことで感染を防ぐことができます。

●症状

エボラウイルスに感染すると、2~21日(通常は 7~10日)の潜伏期の後、突然の発熱、頭痛、倦怠感、

筋肉痛、咽頭痛等の症状を呈します。次いで、嘔吐、下痢、胸部痛、出血(吐血、下血)等の症状が現れま

す。

●治療法

現在、エボラ出血熱に対するワクチンや特異的な治療法はないため、患者の症状に応じた治療(対症療

法)を行うことになります。

補液による初期の支持療法、対症療法は生存率を向上させます。まだ、エボラ出血熱に対して使用でき

る承認された治療法はありませんが、ある種の血液療法、免疫療法、薬物療法は、現在、評価の段階にあ

ります。

●予防法

承認されたワクチンはありませんが、有望なワクチンが臨床での安全性評価の段階にあります。

【出典】

厚生労働省 エボラ出血熱に関する Q&A

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平成 30年 8月 15日発行

過去のエボラ出血熱の発生状況

1970年代以降、中央アフリカ諸国(コンゴ民主共和国、スーダン、コンゴ共和国、ウガンダ、ガボン等)で、

しばしば流行が確認されています。2014年に、初めて、西アフリカでの流行、アフリカ大陸以外(スペイン、

米国、イタリア、英国)での発生が確認されました。

発生年 国名 患者数 死亡者数 致死率

2017 コンゴ民主共和国 8 4 50%

2014-2016 ギニア、リベリア、シエラレオネ等 28,616 11,310 40%

2014 コンゴ民主共和国 66 49 74%

2012 コンゴ民主共和国 57 29 51%

2012 ウガンダ 7 4 57%

2012 ウガンダ 24 17 71%

2011 ウガンダ 1 1 100%

2008 コンゴ民主共和国 32 14 44%

2007 ウガンダ 149 37 25%

2007 コンゴ民主共和国 264 187 71%

2005 コンゴ 12 10 83%

2004 スーダン .17 7 41%

2003 コンゴ 35 29 83%

2003 コンゴ 143 128 90%

2001-2002 コンゴ 59 44 75%

2001-2002 ガボン 65 53 82%

2000 ウガンダ 425 224 53%

1996 南アフリカ(ガボンからの輸入症例) 1 1 100%

1996 ガボン 60 45 75%

1996 ガボン 31 21 68%

1995 コンゴ民主共和国 315 254 81%

1994 コートジボアール 1 0 0%

1994 ガボン 52 31 60%

1979 スーダン 34 22 65%

1977 コンゴ民主共和国 1 1 100%

1976 スーダン 284 151 53%

1976 コンゴ民主共和国 318 280 88%

※症例数は 3カ国の合計です。この他、マリ、ナイジェリア、セネガル、スペイン、アメリカ、イギリス、イタリア

でも限定的な感染が確認されました。

【出典】

厚生労働省 エボラ出血熱に関する Q&A

WHO | Ebola outbreak 2014-2015 http://www.who.int/csr/disease/ebola/en/

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平成 30年 8月 15日発行

(2) デング熱 【アジア・太平洋地域】

【ポイント】

デング熱は、デングウイルスが蚊の媒介によってヒトに感染することで発症します。

デング熱に感染すると一部の人が発症し、発熱・痛み・発疹などの症状を生じます。1週

間ほどで自然に治ります。しかし、4つあるウイルス型の 2つ目以降に感染すると、デング

出血熱という重い状態になることがあり、稀に死亡することもあります。

デング熱は世界の熱帯・亜熱帯地域で広く発生しています。

流行地域へ渡航する場合には、蚊に刺されないことが重要な予防法です。

世界保健機関(WHO)の西太平洋事務局(WPRO)の 2018年 8月 2日付け発表、ならびに台湾 CDC、タ

イ保健省およびインド保健家族福祉省のそれぞれの最新の発表によりますと、アジアの 2018年初以降の

デング熱発生状況は以下の通りです。これらの国・地域ではデング熱が恒常的に発生しています。

患者報告数 患者報告数の集計期間

(2018年) 備考

参考:

およその人口

中国 254人 1月 1日~6月 30日まで 13億 7,000万人

台湾 156人 1月 1日~8月 9日まで 輸入例を含む 2,350万人

フィリピン 20,108人 1月 1日~3月 10日まで 1億人

ベトナム 32,174人 1月 1日~7月 14日まで 死亡 8人 9,270万人

カンボジア 3,868人 1月 1日~7月 24日まで 1,500万人

ラオス 2,823人 1月 1日~7月 7日まで 死亡 12人 680万人

タイ 41,094人 1月 1日~8月 6日まで 死亡 48人 6,700万人

マレーシア 36,191人 1月 1日~7月 14日まで 死亡 59人 2,930万人

シンガポール 1,507人 1月 1日~7月 21日まで 560万人

インド 14,233人 1月 1日~7月 22日まで 死亡 30人 13億 1,000万人

オーストラリア 457人 1月 1日~8月 2日まで 2,400万人

仏領ポリネシア 22人 7月 1日~2週間 28万人

ニューカレドニア 1,777人 1月 1日~7月 30日まで 死亡 2人 27万人

【出典】

WPRO | Dengue Situation Update Number 548, 2 August 2018 http://www.wpro.who.int/entity/emergencies/dengue_20180802.pdf?ua=1

台湾 CDC | Taiwan National Infectious Disease Statistics System | Dengue fever

https://nidss.cdc.gov.tw/en/SingleDisease.aspx?dc=1&dt=4&disease=061&position=1

Thailand MoPH | Bureau of Epidemiology | National disease surveillance (Report 506)

http://www.boe.moph.go.th/boedb/surdata/506wk/y61/en/d262766_3061_en.pdf

India | Ministry of Health & Family Welfare | National Vector Borne Disease Control Programme

http://nvbdcp.gov.in/index4.php?lang=1&level=0&linkid=431&lid=3715

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中部空港検疫所支所 感染症情報 105号

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平成 30年 8月 15日発行

デング熱とは

この疾患はデングウイルスによる感染症です。ヤブ蚊によってヒトに感染します。

●感染経路

デングウイルスは、ウイルスを持っているヤブ蚊(ジカウイルスやチクングニアウイルスを媒介するのと同

じ蚊)に刺されることで感染します。

デングウイルスに感染しているヒトをヤブ蚊が刺す(吸血する)と、蚊の体内にウイルスが入り、1週間か

ら 10日ほどかけて蚊の体内でウイルスが増殖します。その蚊がまたヒトを刺すと、今度はヒトの体内にウイ

ルスが侵入し、ヒトがデングウイルスに感染します。

代表的なヤブ蚊にはヒトスジシマカやネッタイシマカがありますが、このうちヒトスジシマカは日本にも多

数生息しています。2014年 8月から 9月にかけて東京・代々木公園を発端に日本国内に一時的に拡がっ

たデング熱は、ヒトスジシマカが媒介したと考えられています。

デングウイルスはヒトからヒトへ直接感染することはありません。

●症状

蚊に刺されてウイルスがヒトの体内に侵入してから 2~15日の潜伏期間の後(通常は 3~7日後)、2~4

割の人が発症します。症状は、38~40℃の発熱、激しい頭痛、関節痛、筋肉痛、眼窩痛などが現れます。

頭痛や関節痛などの痛みは激しく、英語では break bone fever(骨が折れたかのような痛みが出る熱)とも

呼ばれています。発症 3~4日後から全身に発疹が出現します。

これらの症状は 1週間程度で自然に治り、後遺症はありません。

デング熱を起こすウイルスには 4種類あります(1型~4型)。1つの型に感染した後はその型に対する

免疫が生涯続きますが、他の型への免疫は一時的に(数か月)しか続きません。他の型のウイルスに感染

したときに(2回目以降の感染で)、デング出血熱と呼ばれる重い病状になることがあります。デング出血熱

は稀に死亡することがあります。

●治療法

特異的な治療法はなく、発熱や痛みに対する対症療法、補液程度のみです。ただし、デング熱では血小

板が減少して出血を起こしやすくなるので、同じく血小板に影響するサリチル酸系と呼ばれる解熱鎮痛薬

(アスピリンなど)は使用できません。

●予防法

流行地へ渡航する外国人がとるべき予防法は、蚊に刺されないことです。→19ページの「蚊に刺されな

いようにするには」を参照

【出典】

FORTHお役立ち情報 | デング熱 Dengue Fever 2016 年 8月更新

国立感染症研究所 | デング熱とは https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/238-dengue-info.html

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中部空港検疫所支所 感染症情報 105号

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平成 30年 8月 15日発行

デング熱の世界における発生地域

デング熱は世界の熱帯・亜熱帯地域で広く発生しています。

【出典】

WHO | GLOBAL STRATEGY FOR DENGUE PREVENTION AND CONTROL 2012-2020

http://apps.who.int/iris/bitstream/10665/75303/1/9789241504034_eng.pdf?ua=1

デング熱の地域別発生リスク(2012年)

デング熱の危険性

高い

低い

発生していない

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5. 検疫感染症以外の感染症の発生状況

(1) 伝播型ワクチン由来ポリオウイルス 【ナイジェリア】

【ポイント】

ポリオ(急性灰白髄炎、小児麻痺)は経口生ワクチンの世界的な普及により、根絶が近づ

いています。

しかし、ワクチン接種率が低い地域等で伝播型ワクチン由来ポリオウイルス(cVDPV)によ

る新たな患者発生が相次いでおり、対策強化が図られています。

野生株ポリオまたは伝播型ワクチン由来ポリオウイルスの発生地域へ渡航する際には、

ポリオワクチンの追加接種が推奨されます。また一部の国・地域では渡航等にあたってポ

リオワクチンの接種と国際証明書の提示を要求されます。

主として小児が感染・発症する、ウイルスによる急性の麻痺性疾患であるポリオ(急性灰白髄炎)は、世

界保健機関(WHO)が根絶キャンペーンを長年行っている重要な疾患です。

現在では世界の殆どの国でポリオ患者は報告されなくなっており、2017年の 1年間で全世界から報告さ

れたポリオ患者は計 22人でした。

しかし、これまで多くの国・地域で使用され高い予防効果を上げてきた経口ポリオ生ワクチンから、伝播

型ワクチン由来ポリオウイルス(後述)が発生し、ヒトに感染して麻痺性疾患を発症する例が報告されていま

す。

【ナイジェリア】

世界保健機関(WHO)の 2018年 8月 8日付け発表によりますと、ナイジェリアのソコト州において、同年

6月 5日付けでワクチン由来ポリオウイルス 2型の集団発生が確認されました。1月 30日~5月 23日の

間に 2か所から採取された 10検体の環境検体(下水等の採取)のすべてからワクチン由来ポリオウイルス

2型が検出され、遺伝的な関係性も示されました。このワクチン由来ポリオウイルス 2型が原因の急性麻痺

性疾患の患者は報告されていません。

ナイジェリアはこの報告とは別の同ウイルス集団発生が持続しています。ヨベ州では、6月 16日に発症

した急性麻痺性疾患の患者の便検体と、5月 31日に採取された環境検体 1検体から、いずれもワクチン

由来ポリオウイルス 2型が検出されています。ゴンベ州で 4月 9日に採取された環境検体 1検体からも同

じウイルスが検出されました。さらにはジガワ州では、4月 15日に発症した急性麻痺性疾患患者と 1月 10

日~5月 2日に採取された環境検体 6検体からも同じウイルスが検出されています。

【出典】

WHO Disease Outbreak News | Circulating vaccine derived poliovirus - Nigeria | 8 August 2018

http://www.who.int/csr/don/08-august-2018-polio-nigeria/en/

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ポリオとは

ポリオ(急性灰白髄炎)は、ポリオウイルスの感染によって起きる急性の麻痺性疾患です。

主に 5歳以下の小児が発症し、日本では「小児麻痺」とも呼ばれています。ヒトだけが感染します。

●病原体・感染経路

ポリオウイルスには 1型、2型、3型の 3つの型があります。

ウイルスに汚染した水などによりヒトの口から感染します。感染者の腸で増えたウイルスが便に排出さ

れ、下水などからさらに感染拡大します。

●症状・治療法

感染者の 90%以上が症状が出ないままですが(不顕性感染)、数%の感染者で腸や咽頭で増えたウイル

スが発熱、頭痛、咽頭痛、嘔吐などの感冒様の症状を生じます。さらにごく一部(0.1~2%)で、ウイルスが脊

髄や脳の中枢神経に入り、腕や脚の急激な麻痺を生じます。麻痺に至った患者の多くは快復しますが、一

部の患者で永続的な麻痺が残り、重い障害となります。また、呼吸筋の麻痺などで死亡することもあり、小

児で致死率 2~5%、成人の場合 15~30%に達します。

ウイルスに対する治療法はなく、対症療法のみです。

●予防法

弱毒ウイルス株による生ワクチンは 1、2、3型のすべての型を含み、口から飲む形で接種します。長年世

界的に広く普及し、患者数の激減をもたらしてきました。

一方で、患者数が激減すると、ワクチンそのものによるポリオ様の麻痺性疾患(vaccine-associated

paralytic poliomyelitis; VAPP)が稀ながら重大な副反応として問題視されるようになりました。

注射型の不活化ワクチンも近年普及しており、生ワクチンによって患者発生が激減した国・地域では、

VAPP と、次に解説する伝播型ワクチン由来ポリオウイルスの発生を避ける目的で、不活化ワクチンに順次

切り替えられてきました。

●日本におけるポリオ

日本では 1980年の発生が最後であり、その後の詳細な調査を経て 2000年にポリオ排除が宣言されま

した。

また、ワクチンは VAPPを防ぐために、2012年に経口生ワクチンから注射型の不活化ワクチンに切り替

えられています。

伝播型ワクチン由来ポリオウイルスとは

経口ポリオ生ワクチンに含まれるワクチン株ウイルスは、実際に病気を引き起こすポリオウイルス(野生

株)と同様、接種されたヒトの腸の中で増殖し、一部は便に排出され下水などに流入します。このワクチン株

ウイルス自体が他のヒトの口から入っても病気を起こすことはありません。

しかし、このワクチン株ウイルスが地域の中で長期間循環し続けると、ごく稀に遺伝子変異を起こし、野

生株ウイルスのようにヒトに麻痺性疾患としての病気を起こすようになることがあります。これを「伝播型ワ

クチン由来ポリオウイルス(circulating vaccine-derived poliovirus; cVDPV)」と呼びます。cVDPVは、ワクチ

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ン接種が極端に低下した限定的な地域で、ワクチン株ウイルスが少なくとも 1年以上にわたって循環し続け

た場合に、発生する可能性が出てきます。

2017年時点で、世界の 21か国で計 24回の cVDPV発生が確認されており、総患者数は 760人にのぼ

ります。

検出されている cVDPVの 90%以上が 2型ウイルスです。一方で野生株ポリオの 2型ウイルスは 2015

年に根絶が宣言されました。したがって現在検出される 2型ウイルスはすべて cVDPV のみということにな

ります。そのため、ワクチン株 2型ウイルスによる新たな cVDPVの発生を防ぐ目的で、2型を取り除き 1型

と 3型だけで作られた経口生ワクチンが 2016年に導入されました(日本は 2012年から不活化ポリオワク

チンのみとなっています)。

世界保健機関は、野生株または cVDPVによるポリオ発生地域への渡航等の際にポリオワクチンを追加

接種することを推奨しています。

また、インドやパキスタンなどの一部の国・地域では、海外からの渡航者や同国からの出国者に対して、

ポリオワクチン接種と国際証明書の提示を要求しています。渡航の際には、当該国の大使館等に確認が

必要です。

【出典】

国立感染症研究所 | ポリオ(急性灰白髄炎・小児麻痺)とは https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/386-polio-intro.html

国立感染症研究所 | ポリオ 2016年現在 https://www.niid.go.jp/niid/ja/id/602-disease-based/ha/polio/idsc/iasr-topic/6272-

tpc432-j.html

国立感染症研究所 | ワクチン由来ポリオウイルス(VDPV)によるポリオ流行の現状とリスク https://www.niid.go.jp/niid/ja/iasr-sp/2341-

related-articles/related-articles-432/6259-dj4324.html

WHO | Fact sheets | Poliomyelitis http://www.who.int/en/news-room/fact-sheets/detail/poliomyelitis

WHO | What is vaccine-derived polio? Online Q&A updated April 2017 http://www.who.int/features/qa/64/en/

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(2) ニパウイルス感染症 【インド】

【ポイント】

ニパウイルス感染症は、オオコウモリやブタからニパウイルスが感染することで起きる感

染症です。ウイルスに汚染された食物からや、感染したヒトからヒトへも感染します。致死

率が非常に高い危険な感染症で、快復後も長く後遺症が残ることがあります。

1999年にマレーシアで初めて発見され、その後はバングラデシュとインドで流行が繰り返

し発生しています。

今回は 2018年 5~6月にインドで流行が報告されました。

治療法もワクチンも開発されておらず、ブタや食物へウイルスが感染・付着することを防ぐ

等の予防策が重要です。

世界保健機関(WHO)の 2018年 8月 7日付発表によりますと、インドのケララ州でニパウイルス感染症

の流行があり、19人の患者が報告され、うち 17人が死亡しています。19人のうち 18人が検査で確定され

ました。残る 1人は発端患者で、既に死亡していたため検査が実施できませんでした。

同年 5月 19日に 3人の死亡患者が報告されたのが流行のはじまりでしたが、最後の患者発生は 6月

1日であり、それ以降新たな患者は確認されていません。7月 30日の時点で、ケララ州でのニパウイルス

感染症のヒト-ヒト感染は封じ込められました。

今回のニパウイルス感染症の流行はケララ州では初めてのことであり、インドとしては 3回目の流行でし

た(過去 2回はいずれも西ベンガル州で 2001年および 2007年)。

【出典】

WHO Disease Outbreak News | Nipah virus - India | 7 August 2018

http://www.who.int/csr/don/07-august-2018-nipah-virus-india/en/

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ニパウイルス感染症とは

ニパウイルス感染症は、パラミクソウイルス科のニパウイルスによって起きる感染症です。

●病原体・感染経路

ニパウイルスは 1999年にマレーシアで初めて発見された病原体で

す。1997年から同国の養豚業者の間で原因不明の脳炎が繰り返し流

行し、99年に原因となるニパウイルスが発見されました。「ニパ」の名

は、ウイルスが発見された患者が住んでいた村・川の名前に由来しま

す。

ニパウイルスは森林に生息するオオコウモリが保有していることが

わかっています(自然宿主)。また森林開発などによってオオコウモリか

ら家畜のブタにも感染し、ブタからヒトへと感染します。オオコウモリか

ら直接ヒトに感染する経路や、感染したヒトからヒトへの直接のヒト-ヒ

ト感染も生じます。また、ウイルスで汚染された食肉やフルーツ(オオコ

ウモリの尿などによる汚染)等の喫食によっても感染します。

ブタおよびオオコウモリとヒトとの、人獣共通感染症です。

●症状

4~14日間の潜伏期間を経て発症します(接触から 45日後に発症した例も報告されています)。

発熱、頭痛、筋肉痛、咽頭痛、嘔吐などで発症し、その後めまいや意識障害、けいれんなどの脳炎症状

に進展します。肺炎から重症肺炎に至る場合もあります。

致死率は 40~75%と非常に高く、快復した患者も、症候性てんかんや人格変化などの脳障害が残ること

があります。

●治療法・予防法

治療薬もワクチンも開発されていません。

流行の予防のためには、養豚場の衛生状態を日常的に良好に保つことが肝要です。流行の発生時に

は、感染が疑われるブタ等の家畜の殺処分と死骸の慎重な焼却等の徹底した対策が必要となります。ま

た、野生のオオコウモリの定期的なサンプル調査も必要です。

オオコウモリが好むフルーツなどが尿などの体液で汚染されるのを防ぐために、現地で頻用されるナツメ

ヤシの採取地でのオオコウモリの駆除や、ナツメヤシジュースの煮沸殺菌、その他フルーツは食用前に十

分洗浄し丁寧に皮むきすることが重要です。

感染が疑われるブタには決して近寄らないこと、感染患者をケアする医療従事者等は適切に防護服を着

用する必要があります。

【出典】

WHO | Fact sheets - Nipah virus http://www.who.int/news-room/fact-sheets/detail/nipah-virus

国立感染症研究所 | ニパウイルス感染症とは https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/447-nipah-intro.html

ニパウイルスを媒介するオオコウモリ

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ニパウイルス感染症の世界における発生地域

ニパウイルスが初めて発見されたのは 1999年のマレーシアで、流行開始の 1998年 9月以降で計 155

人の患者からニパウイルスが検出されました。これ以降現在まで、マレーシアではニパウイルス感染症の

流行は発生していません。

その後はバングラデシュとインドでそれぞれ流行が繰り返し発生しています。

【バングラデシュ】

年 月 患者数

(人)

死亡者数

(人)

致死率

(%)

2015 1~2月 9 6 67

2014 1~2月 18 9 50

2013 1~4月 24 21 88

2012 1月 12 10 83

2011 1~2月 44 40 91

2010 2~3月

8 7 87.5

8 7 87.5

1 1 100

2009 1月 3 0 0

1 1 100

2008 2月 4 4 100

4月 7 5 71

2007

4月 3 1 33

3月 8 5 63

1~2月 7 3 43

2005 1~3月 12 11 92

2004 4月 36 27 75

1月 31 23 74

2003 1月 12 8 67

2001 4~5月 13 9 69

【インド】

年 月 患者数

(人)

死亡者数

(人)

致死率

(%)

2007 4月 5 5 100

2001 2月 66 45 68

【出典】

国立感染症研究所 | ニパウイルス感染症とは https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/447-nipah-intro.html

WHO SEARO | Morbidity and mortality due to Nipah or Nipah-like virus encephalitis in WHO South-East Asia Region, 2001-2018

http://www.searo.who.int/entity/emerging_diseases/links/morbidity-and-mortality-nipah-sear-2001-2018.pdf?ua=1

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6. 海外へ渡航されるみなさまへ

(1) 夏休みにおける海外での感染症予防について

夏休みにおける海外での感染症予防について、厚生労働省はウェブサイト及び各種ポスター・リーフレッ

トで注意喚起を行っています。

https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/travel-kansenshou.html

海外での感染症予防のポイント

海外で感染症にかからないようにするために、感染症に対する正しい知識と予防に関する方法を身に

付けましょう。

渡航先や渡航先での行動によって異なりますが、最も感染の可能性が高いのは食べ物や水を介した

消化器系の感染症です。

日本で発生していない、動物や蚊・マダニなどが媒介する病気が海外では流行していることがあり、注

意が必要です。

世界保健機関(WHO)が排除又は根絶を目指している麻しん(はしか)、風しん及びポリオは、日本での

患者は減少傾向又は発生していないものの、海外では感染することがあり注意が必要です。

※参照 https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/dl/travel-kansenshou_2018sm_00.xls

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渡航の前に・・・

厚生労働省のホームページや検疫所のホームページ、外務省の海外安全ホームページで、渡航先の感染症

の発生状況に関する最新の情報や注意事項を確認しましょう。

感染症情報/厚生労働省

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/index.html

FORTH/厚生労働省検疫所 https://www.forth.go.jp/index.html

外務省海外安全ホームページ http://www.anzen.mofa.go.jp/

海外渡航をする前に、これまで受けた予防接種について確認しましょう。国内の感染症を海外に持ち出さない、

又は海外の感染症を国内に持ち込まないために、国内で予防接種が推奨される疾患であって予防対策が不十

分なものがあれば、予防接種を検討しましょう。

予防接種が受けられる感染症については、余裕をもって医師にワクチン接種の相談をしておくなど、適切な感

染予防を心がけましょう。

FORTH/厚生労働省検疫所「予防接種機関の探し方」 https://www.forth.go.jp/moreinfo/vaccination.html

渡航が決まったら、外務省が提供している海外安全情報配信サービス「たびレジ」への登録をお願い致します。

「たびレジ」に渡航期間・滞在先・連絡先等を登録すると、渡航先の最新の安全情報がメールで届き、緊急時に

は在外公館からの連絡を受け取ることができます。

外務省海外安全情報配信サービス「たびレジ」 https://www.ezairyu.mofa.go.jp/tabireg/

渡航中及び帰国後に体調が悪くなったら

空港や港に設置されている検疫所では、渡航者の方を対象に健康相談を行っています。帰国時に発熱や咳、

下痢、具合が悪いなど体調に不安がある場合、又は、動物に咬まれたり、蚊に刺されたなど健康上心配なこと

がありましたら、お気軽に検疫官までご相談ください。

感染症には、潜伏期間(感染してから発症するまでの期間)が数日から 1 週間以上と長いものもあり、渡航中あ

るいは帰国直後に症状がなくても、しばらくしてから具合が悪くなることがあります。その際は、早急に医療機関

を受診し、渡航先、滞在期間、現地での飲食状況、渡航先での職歴や活動内容、動物との接触の有無、ワクチ

ン接種歴などについて必ず伝えてください。

その他不安な点は、最寄りの保健所にお問い合わせください。

保健所管轄区域案内/厚生労働省

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/hokenjo/index.html

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(2) 蚊に刺されないようにするには

蚊は「1年あたりで最もたくさんヒトを殺している生き物」と言われています。

ジカウイルス感染症、デング熱、チクングニア熱、マラリア、黄熱などは蚊が媒介する感染症です。

ワクチンや治療法があるのはこれらの感染症の一部だけであり、これらに対する最も重要な予防法は蚊

に刺されないようにすることです。

防蚊(ぼうぶん)対策について以下に説明します。

●服装

長袖のシャツ、ズボンを着て、できるだけゆったりとしたものにすると良いでしょう。皮膚の露出部を少なく

するようにしてください。

●宿泊施設について

可能な限り、しっかりと網戸がとりつけられているか、エアコンが備

わっている、または、蚊をしっかりと駆除しているホテルやリゾートに

滞在してください。蚊取り線香やその他の殺虫剤用噴霧器も有効で

す。

睡眠時には殺虫剤で処理された蚊帳の使用が良い予防方法で

す。

●虫除け剤の使用

流行地域では、屋外に出かける場合、網戸が備わっていない建物にいる場合などには、「ディート

(DEET)」または「イカリジン」という有効成分が含まれている虫よけ剤を皮膚の露出部または衣類につけて

ください。ただし、目の周囲や粘膜、傷口には使用しないでください。顔に塗る際には一度手のひらにつけて

伸ばしてから塗りましょう。

どちらの成分も濃度が重要です。

日本ではディート(DEET)は 6%~30%のものが販売されています。濃度が高い方が持続時間が長くな

り、30%で有効時間は約 5-8時間程度です。濃度が低いと頻繁に塗り直す必要があるため、日本で最も濃

いディート 30%のものをお勧めします。外国製の虫除け剤にはディート(DEET)濃度が更に高いものもありま

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すが、濃度がさらに高いものは皮膚に対する刺激が強くなるので注意が必要です。使用する場合には、必

ず添付文書に記載されている使用法を守ってください。

イカリジンはディート(DEET)と同じく高い虫除け効果があり、日本では 15%までのものが販売されていま

す。同じく最も濃いイカリジン 15%のものをお勧めします。

流行地域で虫除け剤が入手困難な事態も考えられますので、日本から虫除け剤を持参しましょう。その

上で、長期の滞在の場合には現地での購入も考えましょう。

日焼け止めを使用する場合には、先に日焼け止めを塗ってから、その上に虫除け剤を塗ってください。

●子供への虫除け剤の使用

子供、とくに乳児への虫よけ剤の使用については、小児科医にご相談ください。虫よけ剤が使用できない

場合、ベビーカーにぴったりと合う蚊帳でベビーカーを覆ってください。

●蚊の行動パターンを知りましょう

病気を運ぶ蚊が活動する時間帯には、特に虫除け対策を徹底し、野外活動を自粛しましょう

日中に活動しやすい蚊が運ぶ病気:デング熱、チクングニア熱、ジカウイルス感染症、黄熱

夜間に活動しやすい蚊が運ぶ病気:マラリア

【出典】

FORTH|お役立ち情報|虫除け対策をしよう

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(3) 食べ物・水にご注意を

旅行先での病気の多くが、食べ物・水からうつります。

●手洗いをこまめにしましょう

病原微生物は、土の中、水の中、動物や人の体など、あらゆるところにい

て、食べ物についたり、手についたりして、口に入ります。

手洗いはこまめに行い、特に食事の前には必ず石けんと水道水で手を洗

いましょう。きれいな水が使えない場合には、手洗い後にアルコールハンド

ジェルを使用することも考えましょう(ハンドジェルのみの使用では不十分な

こともあります)。

●生水を飲まないようにしましょう

飲料水が汚染されていると、病原微生物に感染してしまいます。清潔か

どうか疑わしい場合には飲まないようにしてください。しっかりと蓋が封印

されたボトル入りの水・清涼飲料水が最も安全です。

水道水の場合、最低 1分間しっかりと沸騰させます(標高 2000 メート

ル以上では 3分間)。水を沸騰させるための器具がない場合は、飲料水

消毒用薬剤を購入して使用することを考えましょう(各国で入手可能です。

あらかじめ品名を調べておくとよいでしょう)。

歯みがき、うがいの水にもボトル入りの水か沸騰した水を使いましょう。

ジュースや乳製品は信頼のできる店で飲みましょう。

●氷を避けるようにしましょう

氷は生水から作られている可能性があります。ボトル入りの水を使って自分で作るようにしましょう。

●完全に火の通った食べ物を食べてください

適切な加熱調理をすれば、ほとんどの病原微生物が殺菌されます。加熱の際には、食べ物の全ての部

分に完全に火が通っていることが大切です。

料理は完全に火が通っているものを、湯気が立っているうちに食べましょう。特に、生の魚介類、赤みが

残ってピンクの肉汁が出ているような鶏肉、生の部分が残るミンチ肉やバーガーは避けてください。

屋台やホテル・レストランのビュッフェを利用する場合、調理済みの料理が生の食べ物に接して置かれてい

ないことを確認しましょう。

調理済みの料理を何時間も室温に置くと、病原微生物を増殖させ、感染の原因になります。ビュッフェや

マーケット、レストランや屋台では、高温で保存されているか、冷蔵されている食べ物を食べましょう。

●サラダや生の野菜は避けましょう

野菜類は生水を用いて処理されている可能性があります。

野菜やフルーツなどは、自分で皮をむいて用意できるもの以外は食べないようにしましょう。

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7. 検疫所からのお知らせ

黄熱の予防接種について

中部空港検疫所支所では、黄熱の予防接種及び黄熱予防接種国際証明書(通称イエローカード)の交

付を行っています。

(※現在名古屋検疫所では予防接種を行っておりません。東海地方で黄熱予防接種を行っているのは中部

空港検疫所支所のみです。)

接種日時 毎週火曜日 13時 00分から

※祝日・年末年始(12月 29日~1月 3日)を除きます

予約について 完全予約制です

予約の受付は電話のみです

予約専用電話番号 0569-38-8205 (聴覚に障害をお持ち等の方は FAX 0569-38-8194)

予約受付日時

接種希望日の 1か月前の同日から接種希望日の前日までの、

平日朝 8 時 30 分~17 時 00 分まで(ただし、希望日前日は昼 12 時 00 分で〆

切)

※祝日・年末年始(12月 29日~1月 3日)を除きます

予約時の注意点

電話予約時に健康状態やアレルギー、治療中の病気などについて詳しく問

診するため、電話予約に 15分程度の時間がかかります

接種日ごとに予約数の上限があり、時期によっては予約が早期に満数に達

することもあります

黄熱以外の予防接種も予定されている場合は、予防接種同士の間隔(1 週

間もしくは 4 週間)を調整する必要があるため、希望日に予約できないことも

あります

治療中の病気がある場合は、ご自身で主治医の先生に接種の可否を相談

していただくことがあります

渡航・旅行が決まり次第、お早めに予約をお願いします

黄熱予防接種

国際証明書

黄熱予防接種国際証明書(通称イエローカード)は接種当日に交付いたしま

姓名(ローマ字)、性別、生年月日、署名をパスポートと完全に一致させる必

要があるため、電話予約時にパスポートの記載内容をお尋ねいたします

料金

料金は 11,180円です(国際証明書の交付手数料を含む)

料金は収入印紙で納めていただきます(※現金、クレジットカード等はお取り

扱いできません)

収入印紙は郵便局などで購入できます

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●黄熱予防接種国際証明書(イエローカード)の要求国について

外国から入国する渡航者に、黄熱の予防接種を要求する国があります。それらの国では、入国時に「黄

熱予防接種国際証明書(通称イエローカード)」を提示する必要があります。

要求国は 2種類に分けられます。

どの国・地域からの入国者に対しても要求する国

例:ガーナ(アフリカ)、フランス領ギアナ(南米)など

黄熱の発生リスクがある国・地域からの入国者に対して要求する国

例:ペルーからボリビアへの入国、ブラジルからタイへの入国など

国・地域別の黄熱ワクチン要求状況は下記の FORTHサイト内で確認できます。

WHOは 2018年 6月 14日付けで黄熱ワクチンの推奨及び要求状況を更新しました。

海外渡航の際には、渡航先が国際証明書(イエローカード)を要求するのか否かを詳細にご確認くださ

い。ご不明の点は検疫所へ個別にお問い合わせください。

国・地域によっては、WHOや検疫所が提供する情報以外に、大使館等にも確認が必要な場合がありま

す。

●黄熱予防接種証明書の有効期限の変更について

WHO(世界保健機関)の方針変更を踏まえ、日本でも平成 28年(2016年)7月 11日から黄熱予防接種

証明書(イエローカード)の有効期限が「生涯有効」へと変更されました。

平成 28年(2016年)7月 10日以前に取得済みのイエローカードも、平成 28年(2016年)7月 11日より

自動的に有効期限が生涯有効となりました。

発行から 10年以上が経過して書面上は無効になっているイエローカードであっても、そのまま有効な証

明書として入国・入域の際に提示できます。更新手続きなどは必要ありません。

FORTH|黄熱予防接種 国際証明書 要求状況

http://www.forth.go.jp/useful/yellowfever.html#a

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平成 30年 8月 15日発行

【編集・発行】

名古屋検疫所 中部空港検疫所支所 検疫衛生課

〒479-0881

愛知県常滑市セントレア1丁目1番地

電話 0569-38-8192

FAX 0569-38-8194