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低血糖マニュアルあなたを守る糖尿病ハンドブック
監修: 安田 圭吾 先生 (社会医療法人 蘇西厚生会 松波総合病院 生活習慣病センター長) 林 慎 先生 (社会医療法人 蘇西厚生会 松波総合病院 副院長)
©J&JKK 2015 LSE0085LSE055-01-201508
http://www.jnj.co.jp/jjmkk/lifescan
メディカル カンパニー ライフスキャン事業部〒101-0065 東京都千代田区西神田3丁目5番2号
ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社
ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社
ブドウ糖補給のめやす●ブドウ糖(10~20g) または・・・●砂糖(ショ糖)の場合はブドウ糖の2倍量●ブドウ糖を含むジュースや清涼飲料水(150~200mL)
運転中の人が心がける正しい対処法
*ゼロカロリー飲料やダイエット飲料は ブドウ糖をほとんど含んでいないため適しません
低血糖のときの対処法
低血糖を感じたら
運転OK
30分~60分すぐに
ブドウ糖補給
次の行動を控え、回復したと感じたあともしばらく休憩
切り取り線
低血糖の“予防”これから気をつけよう
公益社団法人日本糖尿病協会検証済
血糖値は低い方がいいと思っていませんか?糖尿病で問題になるのは高血糖だけではありません。低血糖でもさまざまな症状が現れます。
21
一般的に、血糖値70mg/dL以下が低血糖とされます。これは、必要以上に血糖値が下がりすぎてしまっている“からだにとって不自然な状態”です。
“低血糖”は体にとっての緊急事態
とくに薬による低血糖に注意
❶血糖コントロールの乱れ
糖尿病の治療は、おもに血糖値を下げることをめざします。治療にインスリンや経口薬を使用している人は、低血糖にならないよう、主治医の指示を守ることが大切です。
“低血糖”にも 気をつけるのか
低血糖の誘因と症状
低血糖による悪い影響とは?薬物療法中の
患者さんはとくに注意してね!
高低低血糖になると、血糖値を上げるホルモンが増え、逆に高血糖になりやすくなることも。また低血糖への不安から、インスリンや経口薬を減らし、治療がうまくいかない場合もあります。
Insulin
??? ?
低
高
❷心血管障害
❸認知障害認知機能が低下したり、認知症が進行しやすくなることも。
不整脈、狭心症、心筋梗塞などを誘発・悪化させたりすることも。
どんなときに低血糖になるの?またその理由とは?
4
低血糖になる理由
3
インスリン治療中の方は、とくに注意が必要インスリンを決められた量よりも多く打ってしまったり、打つ時間を間違えると、低血糖になることがあります。また食事や運動の量やタイミングも影響するので気をつけましょう。
低血糖の誘因をチェック日頃の生活を振り返り、低血糖の誘因になるようなことがなかったか、当てはまる にチェックしましょう。
1型糖尿病の患者さんは、血糖値を上げる作用のあるホルモン(グルカゴンなど)の分泌能力が低下しているので、低血糖になりやすいとされています。
インスリン注射の量を増やしたまたはタイミングを間違った経口薬の量を増やしたまたはタイミングを間違った
食事量が少なかった、食事を抜いた炭水化物が少なかった食事時間が遅れた、不規則だったお酒を飲みすぎた
薬
食事
運動
( )
運動時間が長かった運動量が多かった、激しかった運動のとき補食をしなかった
インスリンは主治医の指示を
守って
低血糖を起こしやすい1型糖尿病Insulin
シックデイ( )は、低血糖になることも発熱や下痢などシックデイのときは、よく高血糖が心配されますが、血糖値が不安定になり、また食欲不振により低血糖になることもあるので気をつけましょう。
ワンポイントアドバイス
病気にかかっているとき空腹時や服薬直後
また長時間の入浴をしたその他
その他
量
タイミング
これでOK!!
低血糖のときにすぐ対応できるよう症状をよく理解しておきましょう。
6
低血糖の症状①
5
低血糖にともなう症状(血糖値の程度と一般的な低血糖 症状)
70
60
50
40
302010
血糖値(mg/dL)
症状例
*低血糖の症状は一人ひとり異なります。必ずこの通りに症状が起きるわけではありません。
意識レベルの低下、異常行動、ろれつが回らないけいれん、昏睡など
空腹感、だるさ脱力感
血糖値は急激に下がることも穏やかに下がることも
あります
頭痛、眼のかすみ眠気(生あくび)など
無自覚な低血糖を経験したときは
必ず主治医に相談してください
重症低血糖では生命のリスクにつながることも
発汗、不安、手や指のふるえ胸がどきどきする、脈が早くなる、顔面蒼白など
あぶない“無自覚性低血糖”初期の軽い症状がないまま血糖値が極端に低下する“無自覚性低血糖”という症状が現れることがあります。突然意識を失うこともあり危険です。
無自覚性低血糖を防ぐには
低血糖を繰り返さないようにすることで、本来の低血糖の症状を自覚できるようになります。医師と相談し、こまめな血糖自己測定で、低血糖を予防しましょう。
よく低血糖を起こす人は、無自覚性低血糖になりやすい
ですよ
低血糖が起きない状態が3週間ほど続くと、低血糖に対する反応が回復
しやすくなります
人により低血糖の症状は異なります。あなたの症状は?
8
低血糖の症状②
7
低血糖の症状や出方には個人差がある高血糖による合併症に個人差があるように、低血糖の症状も一人ひとり異なります。自分が低血糖になったときの症状を、しっかり理解しておくことが大切です。
これまで低血糖が現れたときのことを記録しておきましょう。
自分の症状を確認しておこう
あなたが感じた低血糖の初期症状は?
どんなときに感じましたか?(薬・食事・運動など)
そのときの血糖値は?
あなたの初期症状チェック
❼ 頭痛❽ 眼のかすみ❾ あくび 他( ) 初期症状が なかった
症状
(数字)
早く低血糖に気づくことが大切ですよ
「P5」の低血糖症状のうち、あなたに当てはまる症状は?
まずは自分の低血糖症状について知ることからだね!
不安感?
発汗?
動悸?あくび?
頭痛?
mg/dL
mg/dL
mg/dL
mg/dL
mg/dL
低血糖の症状は、加齢とともに強くなりやすいとされます。また高齢者は低血糖に気づきにくく、昏睡になりやすいので危険です。転倒による骨折のリスク、認知症の進行も避けたいものです。
高齢者でとくに大切な低血糖予防
高齢者のいつもと違う言動も、低血糖のせい?低血糖により脳の活動が低下し、いつもと違う言動をとる場合があります。高齢の患者さんは、認知症と間違えることもあるので、注意が必要です。おかしいな、と思ったら低血糖を疑って、血糖を測ってみましょう。
10
11
❶ 空腹感❷ 発汗❸ 不安感❹ 動悸❺ 頻脈❻ 顔面蒼白
低血糖を予防する心がけとは。低血糖の誘因や自分の症状について把握できたら、次は「対処」と「予防」について理解しましょう。
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低血糖を感じたときの“対処”を知る
低血糖の“予防”を心がける
考えよう─“運転時”の低血糖
低血糖の対処と予防
低血糖とは「ブドウ糖が足りない」状態のため、まずは食べ物や飲みもので補給しましょう。
P13~16
P11~12
P17~20
ふだんの暮らしの中で、低血糖にならない工夫が可能です。血糖自己測定をはじめ、どのような工夫ができるか考えてみましょう。
テレビなどで低血糖による交通事故が伝えられることがあります。安全運転のため、運転時低血糖の対処と予防を心がけましょう。
ドライバーのための低血糖チェックカードを用意しました(P22)
万一、昏睡になってしまったときには自分で対処できないため、緊急連絡用の糖尿病IDカードを携行する習慣をつけましょう。
突然の昏睡など緊急時のために
家族や友人、職場の上司など、周囲の人へ協力をお願いしましょう
日本糖尿病協会でも発行しています
ブドウ糖が
足りない!!
きちんと測ってくれてうれしいわ
糖尿病患者用IDカード
インスリン
低血糖ブドウ
糖
低血糖には素早い対処が 不可欠。対処方法の確認も忘れないで。
12
低血糖への対処① ─基本─
11
①ブドウ糖または ブドウ糖を含む飲料をとる
基本の対処方法を覚えよう
参考資料 日本糖尿病学会編・著『糖尿病治療ガイド 2014-2015』文光堂, 2014, p70
短時間で症状が変わるので、素早く対処低血糖の症状は、時間とともに重症になりがちです。低血糖を感じたらすぐに対処しましょう。
あらかじめ医師に指示してもらいましょう
医師による指示内容メモ
低血糖の誘因は一人ひとり異なるので、自分にとっての適切な対処方法を医師に確認しておきましょう。
医師から指示された低血糖時の対処方法を書き留めておきましょう
合言葉はブドウ糖20g!
ぜったいに我慢しないこと
②意識レベルが低下した ときは医療機関へ意識レベルの低下が見られたときは、応急処置で回復しても再発の恐れがあるため、必ず医療機関で治療を受ける必要があります。
低血糖になったら動かないで安静に低血糖のときは体を動かさないよう心がけましょう。また右を下にして横になり、ブドウ糖を水分と一緒に腸に早く送るようにしましょう。
低血糖の症状が続くようなら、もう一度同じ量のブドウ糖を口から摂取できる場合は、ブドウ糖10~20gを
摂りましょう。またはブドウ糖を含む飲料(150-200mL)を飲みましょう。
ワンポイントアドバイス
*グルカゴン注射の仕方は医療機関で家族の方がしっかり指導を受けましょう。水と一緒にブドウ糖は
家族によるグルカゴン注射などの処置も大切
口から摂取ができないような重症の場合は、ブドウ糖や砂糖を口唇と歯肉の間に塗り付けてもらうか、グルカゴン1バイアル(1mg、1単位)を注射してもらいます。家族や友人に対処を知ってもらうことが必要です。
いつも身近にブドウ糖の用意を。清涼飲料は成分を確認。
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低血糖への対処② ─常備品─
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なぜ“ブドウ糖”がいいの?ブドウ糖は、ショ糖(砂糖)などほかの糖に比べて吸収が早く、すぐに効果が期待できるため、低血糖の対処に適しています。
薬局やオンラインショップ等で入手可能自宅やカバンの中に、ブドウ糖を常備しておきましょう。固形のほかパウダー状、ゼリー状などがあり、薬局やオンラインショップで入手できます。
砂糖を含むジュースやお菓子で代用ブドウ糖がないときには、ショ糖(砂糖)や、砂糖を含む食品でも代用できます。砂糖は、ブドウ糖の2倍量が必要です。
人工甘味料では効果を期待できない多くの清涼飲料やお菓子では、ブドウ糖や砂糖の代わりに、人工甘味料が使われています。人工甘味料は、ブドウ糖の代わりにならないので注意しましょう。
砂糖は、体内でブドウ糖と果糖に分解
されます
ゼロカロリー飲料やダイエット食品では効果を期待できない
あなたが使いやすいブドウ糖をメモしておこう
商品名: 入手先:ワンポイントアドバイス
砂糖を含むお菓子は、ブドウ糖よりも吸収に時間を要するため、低血糖時の補給よりも、予防に向いています。
あめやチョコレートは緊急時には間に合わないことも
インスリン
いつもの
ブドウ糖・・・
ブドウ糖
ブドウ糖砂糖
分解 +果糖
ブドウ糖は
体のエネルギー源!!
緊急用より
予防にGood!!
α-グルコシダーゼ阻害薬を服用している人は
低血糖の対処にブドウ糖が必須
ブドウ糖は、もっとも分解された
糖のカタチ
血管
細胞
インスリンにより細胞の中に
低血糖が起きないようにする“予防”が大切。まず血糖自己測定で自己管理を。
16
低血糖の予防 ─血糖自己測定─
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予防のための血糖自己測定を
こんなときの血糖測定のススメ●食事や運動の前後
自宅や外出先で簡単に血糖値を知る方法が、「血糖自己測定(SMBG)」です。利用法などを主治医に相談しましょう。
自分の血糖変動パターンを把握しよう血糖自己測定が習慣になると、自分の血糖変動パターンを理解でき、低血糖の予防に役立てることができます。
食事や運動の「前」と「後」に測定することで、血糖値への影響を知ることができます。
●インスリンや薬の前後
●体調が悪いときなど風邪や発熱、下痢、食欲不振のときなど血糖値をいつもと比較してみましょう。一般的に体調が悪いとき(シックデイ)は高血糖になりがちです。
糖尿病の人
健康な人
0
50
100
150
200
250(mg/dL)
1日の血糖値の変動イメージ
朝食
血糖値
昼食 夕食
運動血糖値を下げる
血糖値を上げる
薬やインスリン
指先などの血液からわずか数秒で
血糖値がわかります
低血糖になりやすい
各食前と夜中に血糖を測ろう
血糖自己測定: SMBG(Self-Monitoring of Blood Glucose)
インスリン注射や経口薬を服用する前後に測って、量やタイミングによりどのように血糖値が変動するか把握しましょう。
体調の変化を感じたら測って
みよう
◎睡眠時の低血糖への不安から、インスリンの自己判断での中止や夜食の摂りすぎは避けましょう。◎インスリン治療を行っているとき、低血糖の後に反動的に血糖値が上昇することがあります(ソモジー効果)。朝の高血糖は夜中の低血糖が原因かもしれません。
夜中の低血糖について
食事
血糖値
1時間 2時間
1時間後、2時間後など連続して測ると
さらに詳しくわかる!深夜2時ころに起きて血糖測定してみよう
ときどき
でOK!!
特定の血糖変動パターンから、ある程度重症低血糖の発現を予測できます
運転中に低血糖を起こさないために。もし運転中に低血糖を感じたら。
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運転中の低血糖① ─対処─
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運転中の低血糖はキケン!
運転時低血糖による「ヒヤリハット」例
運転中の人が心がける正しい対処
運転中のブドウ糖補給のめやす(P11参照)
運転時低血糖および事故の実態
糖尿病者における自動車事故の実態: 多施設共同調査成績より
低血糖を感じたら
運転OK
多くの方が運転時の低血糖を経験しています。低血糖の症状は意識に関わるものが多く、判断力の低下を招きます。もし意識を失ったら、大事故につながるかもしれません。
低血糖を感じたら“すぐに停車”運転中に「冷や汗・ふらふらする」など、低血糖のサインを感じたら、すぐに安全な場所に停車させ、ブドウ糖を補給しましょう。
運転中の人は、回復したあとも30分の休憩を。回復しないときは、さらに同量のブドウ糖を補給して休憩。それでも回復しなければ、すぐに医療機関へ。
ブドウ糖はつねに車内に用意して
おきましょう
運転中の心がけ次第で事故を未然に防げます
異常なほど眠い
50
40
30
20
10
0(%)
運転時低血糖
運転時低血糖による
n=1007
ヒヤリハット 事故
44.7%
9.2%2.1% 0.5%
低血糖
30分~60分すぐにブドウ糖補給
次の行動を控え、回復したと感じたあともしばらく休憩
●ブドウ糖 10~20g●ブドウ糖を含むジュースや清涼飲料
清涼飲料を選ぶときのポイント
手のふるえや動悸で注意散漫
2013年6月に道路交通法が改正され、運転に支障がある病状を自覚しながら、免許取得時や更新時に故意に申告を行わなかった場合の罰則が新設されました。対象となる疾患には「無自覚性低血糖」も含まれます。
体調不良に気づいても無理して運転
*「ゼロカロリー」「無糖」「ダイエット」などの表示があるものは ブドウ糖の補給には適していません。
◎成分表に、「砂糖」や「ブドウ糖果糖液糖」 などと記載されている飲料 (多く含まれる成分から順番に記載されています)
◎果汁成分の比率の高い(100%など)ジュース ・オレンジ、ぶどう、グレープフルーツ、りんごなど ・野菜ジュースは避ける
血糖自己測定で運転前の血糖値を把握。安全第一の習慣を。
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運転中の低血糖② ─予防─
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運転時低血糖を予防するには体調が悪いときは運転しないことが何よりです。自分では気づかなくても、低血糖で注意力や判断力が低下していることもあります。どうしても運転が必要なときは、血糖自己測定を行いましょう。
始めよう!! ドライバーの血糖値チェック
長時間・長距離の運転は、休憩しながら長時間の運転では疲労が蓄積し、血糖値にも影響します。ときどき休憩を兼ねて血糖自己測定を行うことで、安全なドライブを楽しめます。
運転する前の血糖値で判断しよう
91mg/dL以上71~90mg/dL70mg/dL以下
そのまま運転できます。
補食し、血糖値の上昇を確認してから運転を。
運転前に必ず血糖自己測定を行う習慣を身につけましょう。また運転中に“調子が悪い”と感じたら、安全なところに停車して血糖値を測ってみましょう。
ブドウ糖の補給等の処置(P18参照)をして、回復を待ちましょう。回復後もしばらく休憩してから運転を。
運転が仕事の人は、低血糖の予防と対処を覚えておこう予防ためにビスケットなどのスナックを、また低血糖対処のために、ブドウ糖か砂糖を車内に準備しましょう。
初期症状に気づかない無自覚性低血糖を経験したことのある人はとくに危険なので、運転する場合には慎重な対策と対処が必要です。
無自覚性低血糖の経験がある人は要注意
医師の指導を受けた上で、注意して
運転しましょう
ワンポイントアドバイス
2221
《MEMO》
低血糖の症状や対処・予防について、気になること、分からないこと、先生に聞きたいことなどをメモしておきましょう。
運転する直前に「血糖自己測定」を行いましょう
ドライバー必携!! 血糖値チェックカード
91mg/dL以上
71~90mg/dL
70mg/dL以下
そのまま運転可能
体調が悪いと感じたら運転を行わないようにしましょうまた運転前の血糖値から下記を参考に判断できます
補食し、血糖値の上昇を確認してから運転
ブドウ糖の補給等を行い回復を待つ回復後、さらに30分たってから運転
切り取り線
運転時の低血糖の予防と対処のため、車の中または免許証と一緒に携行しましょう。