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「現在の学校経営の活性化と幹部教員のあり方」 「現在の学校経営の活性化と幹部教員のあり方」 学校の校務分掌組織の見直しと その運営についての分析と解決方法- 調査研究機関 教育研修事業財団 調査・情報収集グループ

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「現在の学校経営の活性化と幹部教員のあり方」

「現在の学校経営の活性化と幹部教員のあり方」

- 学校の校務分掌組織の見直しと

その運営についての分析と解決方法-

調査研究機関

教育研修事業財団

調査・情報収集グループ

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「現在の学校経営の活性化と幹部教員のあり方」

目 次

はじめに

1.調査研究主題設定について 2.調査研究の目標

3.調査研究の方向性(解決に向かう処方)

4.調査研究の内容

5.調査研究の実態

(1)校長と補佐役としての役目を果たすための組織マネジメントと課題解決

計画書

(2)課題解決計画書の取り組み例

(3)組織マネジメントと課題解決計画書の取り組みを考察して

(4)校務分掌組織と幹部教員の役割

(5)学校における校務分掌組織の現状と問題点

(6)校務分掌組織の見直し

(7)校務分掌組織の見直しの実際

6.「組織」としての学校

7.「組織」としての学校を重視した改革動向

(1)「学校組織マネジメント」とは何か

(2)政策の流れ

(3)政策の進展状況

【参考】助言活動の実際

①校長、幹部教員との懇談

②校長、幹部教員との協議、改革の中心を担ってきた教諭

③養護教諭を含む教員へのインタビュー

④授業見学

⑤全体を通しての助言

8.教育組織の現状

(1)教員の直面している問題と学校組織の課題

(2)学校組織の特性と問題点

(3)学校組織の変革の視点と方向

表1. 重点課題1の課題解決計画書

表2. 重点課題2の課題解決計画書

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「現在の学校経営の活性化と幹部教員のあり方」

はじめに

企業や自治体で実施されている組織マネジメントとは、一人で果たせない結

果を生むために、環境と折り合いをつけながら組織内外の資源(人的、物的、

財的、情報、ネットワーク)や能力を統合・開発し、複数の人々による活動を

調整する一人ないしはそれ以上の人々の活動と過程であるとされています。

この考え方を学校に照らすと、学校組織マネジメントとは、学校の有してい

る能力・資源を開発・活用し、学校に関与する人たちのニーズに適応させなが

ら、学校のミッションを達成していく過程と言えます。

組織マネジメントを視点として現在の学校を考えると、組織としての学校の

課題が見えて来ます。学校経営の中心となる学校教育目標は、抽象的で曖昧な

ままにとどまっているモノでしか見えなくなります。

また、それぞれの教員がおおまかな職務理解のもと、自らの経験と判断に基

づいた活動を個々に展開している場合が多いのではないでしょうか。

学校運営の改善のため、教員が協働しながら持ち味を生かして学校経営に参

画するなど組織として力を発揮することが、学校組織マネジメントの視点から

学校に求められているのです。

学校組織が活性化し、学校経営で成果を収めるためには、「教員の潜在能力、

意欲をどれだけ引き出せるか」「個々の教員の持ち味をいかに学校教育目標の

達成に結び付けるか」ということが重要なポイントになると考えます。

文部科学省は「マネジメント研修カリキュラム等開発会議」を設置したこと

があります。その実施要項の趣旨に「これからの教員は、総合的なマネジメン

ト能力を身に付ける必要があり、また、学校運営の改善のため、学校に組織マ

ネジメントの発想を導入し、校長が独自性とリーダーシップを発揮することが

期待されている」との記載があります。そこで述べられている学校組織マネジ

メントの手法は、現在の学校に欠けているミッションの探索、ビジョンの構築、

SWOT分析等多くのことを示しています。

しかし、学校組織マネジメントの研修を全教員に一斉に行うことは、現実の

教育課題に迫られた学校現場において、時間的にも困難なことです。そこで、

すべての教員が協働して取り組む、校務分掌に学校組織マネジメントの考え方

や手法を取り入れ、実践研究する中で学校現場への導入方法の検証をしていき

たいと考えます。

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それには、校長という学校でのリーダだけではなく、その補佐役でもある幹

部の教員の動きというものがどうしても重要になってきます。

1 調査研究主題設定について

学校経営とは、各学校に於いて学校教育目標の達成を目指して、人・物・予

算等の教育諸条件を踏まえながら教育活動を編成し展開することです。

21世紀に入った今日、戦後3番目に大きな学校経営改革の時期になっている

と言われる。(1番目:終戦直後の学校経営改革、2番目:1950年代の地方教

育行政法の制定による学校経営改革)

それは、社会の急激な変化、不登校児童・学級崩壊に代表される学校が抱え

られます深刻な諸問題発生、学校制度と学力のとらえ方の変化、学校評価や説

明責任への対応等、個々の教師の力を結集しなければ解決できない問題が山積

している状況にあるからです。

このような中で学校が大きく動き出すためには、校長・教頭の果敢な職務遂

行能力が強く求められます。

これまでの学校経営の見直しの視点として、教育内容や教育方法が考えられ

ますが、それらを支えられます学校の校務分掌組織やその運営のあり方も見直

しの視点として重要ですと考えられます。

校務分掌とは、学校教育目標達成のために行う諸活動を教職員が分担して行

うことです。この校務分掌組織を各校の学校要覧等で確認すると、ここ数十年

大きな見直しはされていないのではないでしょうか。多くの学校は、一人一人

の役割を明確にした短冊形の図で表現されています。今、学校が抱える複雑・

高度な課題は、個々の教職員で取り組み方を工夫することでは対処できなくな

っていると考えられます。

つまり、学校として課題を焦点化したうえでの組織的な対応が必要であり、

校務分掌組織とその運営のあり方について見直しをする時期にきていると言え

るのです。

この課題に対して、校長には、改革の方針を立て教職員に意欲を持って改革

に取り組ませる強い指導性が求められます。そして、教頭には校長が目指す改

革が円滑に行われるようにするための補佐職としての役割を十分に果たすこと

が求められます。

そこで、校務分掌組織の見直しにおいて校長の補佐職としての副校長や教頭

など幹部教員の役割を果たすために調査研究を行った。

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2 調査研究の目標

学校経営を活性化させるために、校長の補佐職としての副校長や教頭など幹

部教員のあり方を校務分掌組織の見直しと運営のあり方という課題において調

査研究し、実践シュミレーション化を行うことで、調査・分析し、解決策など

を探求するものです。

3 調査研究の方向性(解決に向かう処方)

校長の判断を仰ぎながら、多くの学校での実態を踏まえた校務分掌組織と運

営のあり方を改善していけば、学校経営の活性化につながると考えられます。

4 調査研究の内容

(1) 校長の補佐職としての幹部教員のあり方について

(2) 校務分掌組織と運営の現在の問題点とこれからの方向性

(3) 校務分掌組織と運営の円滑な改革に当たっての幹部教員のあり方

(4) 取り組みの考察

5 調査研究の実際

(1) 校長の補佐職としての役目を果たすための組織マネジメントと課題解決

計画書

今日、組織マネジメントの発想を学校に取り入れる必要性が指摘されて

いる。組織マネジメントとは、学校目標を達成するために人・物・予算・

情報・時間などの資源を効果的に活用し、PDCA(Plan:計画、Do:実

施、Check:評価、Action:行動)とういう一連のマネジメントサイクルの

考えを基にして行動の改善を図っていくことです。

学校には、難しい課題が複雑に絡み合いながら山積しています。学校が

そうした難しい社会の流れに飲み込まれないようにするためには、学校の

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主体性・自主性を堅持して、創意工夫した独自の教育活動を創り出し、P

DCAを意識した実践を行い、説明責任(アカウンタビリテイ)にも十分

に対応できるような組織マネジメント機能を備えた学校経営をしていくこ

とが重要だと言えます。

従って、これからの管理職には、マネジメント感覚と具体的なマネジメ

ントスキルを持つことが必要となってきます。

そこで、幹部教員として校長を補佐しながら学校の様々な課題に積極的

に取り組まなければならない中で、組織マネジメントの発想で補佐職とし

ての職務遂行のあり方を考えてみた。

職務遂行の問題点として、各職員は自分の校務分掌の一年間の具体的な

計画はあるが、幹部教員がとらえている課題の具体的な計画はないという

ことです。

そこで、PDCAも行えられますよう「課題解決計画書」を作成するこ

とが必要ではないかと考えられます。これを作成することにより幹部教員

としての具体的な行動が明らかになり、校長からの指導も得やすくなりま

す。加えて、自己評価や他者評価も行いやすくなると考えられます。

また、次の幹部教員への事務引継の現状としては文書ファイルをただ渡

すだけですが、この「課題解決計画書」があることにより、本来引継をし

なければならなかったものができるようになり、より効率的に学校の課題

解決ができるのではないかと考えられます。

(2) 課題解決計画書の取り組み例

学校における「学力の向上と進学率の上昇」「校務分掌の見直し」という重

点課題の2つについての「課題解決計画書」とその取り組み状況をシュミレー

ションし、実践に使えるよう試みた。

表1 重点課題1の課題解決計画書

「充実した生徒の学力アツプを図る学習の時間にするための諸準備」

特に計画書の作成については、内容を検討し積極的に作成する必要がある。

教員は何でも自分たちで作成し、あるいは作成できるものとして進めて行

くが、とくに初期の場合は専門家や講師の指導を受けながら進めていく中

で理論研究が進むと解される。

また、授業研究を中心とした研修の場を設定することにより、総合の諸

問題も解決することができる。さらに、各学年のテーマや育てたい力を明

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らかにして、年間指導計画も作成することができる。

表2 重点課題1の課題解決計画書

「充実した生徒の学力アツプを図る学習の時間にするための諸準備」

「校務分掌組織の見直しと運営のあり方を考える」についての取り組みの

詳しいシミュレーションなどについては、次頁以降に述べることにする。

(3) 組織マネジメントと課題解決計画書の取り組みを考察して

幹部教員の職務遂行にあたっては、行動の具体化と行動したことに対しての

評価を確実に行うことが大切です。つまり、PDCAのマネジメントサイクルを機

能させないといけないと言うことです。

今回、調査研究を実施した「課題解決計画書」には、多くの学校の現状を分

析したうえでの具体的課題、その到達目標、具体的活動の時期などを明らかに

しょうとしました。こうすることにより、幹部教員としての具体的な行動の曖

昧さがなくなり、時期を逃さず的確な行動を取ることができます。

また、幹部教員の職務は年々多忙を極め、校長の意を理解し補佐職としての

役割を果たしにくくなっている状況の中で、校長との意思疎通を円滑にする役

目が期待できます。

PDCAを意識した計画書は、校務分掌を機能させ全職員で課題解決に臨むこと

に対して効果的と思われます。

今後の課題として次の3点が考えられます。

一つは、今後も試行を重ね校長の補佐職としての能動的な面を出していくこ

と。

二つには、幹部教員の職務に対して、PDCAの流れの中での自己評価・校

長評価・職員評価・地域評価等の評価方法を有効に機能させること。

三つには、新たな課題設定に当たって職員の考えをどのように取り入れてい

くかです。

(4) 校務分掌組織と幹部教員の役割

学校教育法28条4項では、幹部教員の職務規定として「校長を助け、校務

を整理し、及び必要に応じ生徒の教育をつかさどる。」と定められ、幹部教員

が校長の補佐役であることが明らかにされています。

ただ、幹部教員が行う補佐も、校長の指示に従って校務を行い教職員を指揮・

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監督するだけという狭い意味での補佐だけではいけないと考えられます。幹部

教員は、校長が行う校務に対して能動的に関わり、時には具申や提案を行うな

どの積極的な補佐も必要だと考えられます。

また、幹部教員の姿勢として次のことも重要です。

① 幹部教員によって考え出されたことは、最終的には校長の意思と一致

させること。

② 校長に正しい情報を提供するため、教職員の考えや動向・活動の様子

をしっかり把握しておくこと。

③ 学校全体の活動の調整を常にしていくこと。

④ 校長の見解に学び自分の考えを進化させること。

校長が行う学校経営の中心となるものが校務分掌であり、教職員の動向に注

意しながらこの校務分掌をまとめていくのが幹部教員です。校務分掌における

幹部教員の役割はとても重要だと言えます。

そこで、本校の校務分掌組織改善の取り組みをシュミレーションしました。

以下、そのシミュレーションを紹介します。

(5) 学校における校務分掌組織の現状と問題点。

多くの学校での校務分掌組織を次の視点で点検を行いました。

視点① 学校教育目標達成を意識した校務の遂行が行われているか。(個々

の取り組みは学校全体を見通した取り組みになっていることが大切

です。)

視点② 学校としての課題が焦点化され、それが校務分掌組織に反映された

ものとなっているか。(反映されないと課題解決が進まない。)

視点③ 校務の統合・廃止・新設が検討されているか。

視点④ 個々の力を出し合い、協力して校務が遂行されているか。(難しい

課題が山積している中で一人一人の対応では限界があります。また、

新しいアイデアも生まれず組織が停滞してしまいます。)

視点⑤ 教職員個々の力量や年齢差から来る経験が校務分掌組織の中にう

まく取り入れられているか。

視点⑥ 仕事内容が明確化されているか。

視点⑦ 指示・報告がスムーズに行われる体制になっているか。(高い目標

や困難な課題に挑戦させるためには幹部教員と教職員の情報交換が

円滑に行われていなければなりません。)

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一般の学校の校務分掌組織では、教務部・実践部・庶務部・渉外部と大きく

4つに分かれ、そこから多くの線が延び一つ一つの校務に名前が書かれていま

す。

問題点① 校務分掌組織でねらう学校教育目標達成という意識化があまり

されていなかった。

問題点② 学校としての課題が校務分掌組織に反映されていない。

問題点③ 校務の統合・廃止・新設の検討がされておらず、この組織図が数

十年続いている。

問題点④ 各部の話し合いの時間がほとんど設定できていなかったので、孤

立した一人一役の校務分掌運営となっている。担当内容(責任の

所在)は明確になっているが、その反面意見の交流があまりでき

ないために活性化があまり感じられない。

問題点⑤ 分断されて個々に活動しているため、幹部教員と教職員の情報交

換があまり円滑ではない。

これらの問題点から来る教職員の体質として、自分の職務を無難にこなす、

職務への相互不干渉主義、前年度計画を踏襲するだけというマンネリ化等、困

難な学校状況にあって職員の体質の甘さを感じることになります。

(6) 校務分掌組織の見直し

校務分掌組織の見直しに当たっては、学校の問題点を踏まえられるだけでは

なく、これからの校務分掌組織のあり方についても十分理解をしておかなけれ

ばならない。

アこれからの学校組織

行動目標としては、今あるものを効率よく行う方向と新しく創造していく方

向がある。指揮系統としては、上司からの指示を強く出す場合と個々の自主性

を大切にする場合がある。これらの原理はどれも大切のものであり、原理のバ

ランスをとっていくことが管理職に求められます。

幹部教員としても教職員との対話の中で十分気を配っていかなければならな

い。しかし、これからの組織のあり方としては「創造」と「自主性」をある程

度重視したものになる。

イ創造性を重視した組織

学校を取り巻く学校環境は以前とは大きく変わりました。学校の独自性・主

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体性の重視、学校教育に対する考えの多様化等です。

また、学校環境は不安定さを増してきています。それらに対応するための技

術も従来の技術だけでは限界があり、優れた技術を常に創造していく心構えが

重要になってきています。

以上のことから、校務分掌組織の改革に当たっては、「職員の主体性と創造

性を発揮できる組織づくり」ということを重視して、管理職の指導性のもと教

職員が協働して教育活動に取り組んでいけるようにしていくことが大切です。

また、個々の教職員が自分の役割を組織全体と関連づけ、自己の専門性を組

織全体に生かしていくことができるよう、管理職として教職員の取り組みのす

ばらしさを激励し意欲を持たせることも大切です。

(7) 校務分掌組織の見直しの実際

ア校務分掌組織の見直し

改善に当たっては校長の指導を受けながら、幹部教員で原案を作成し、全職

員で話し合い決定する方法が望ましい。

そして、考えられる改善点は次の5つです。

① 学校教育目標の達成を目指してその課題の焦点化と、これまでの校務分掌を

職員数との関係からいくつの大きなまとまりにするかを話し合うことが必要

です。その結果、として、教務部・実践部(特活部・生活部・保体部)・庶

務部・渉外部と大きく4つに分かれていた組織を3つの部に統合することも

可能となります。

② 地域的な共通した校務分掌は従来通り残して、他の校務分掌の統合・廃止・

新設を検討すべきですが、多くの時間を割き、ほとんど手を付けないことにな

る可能性が高いと言えます。

③ 校務分掌組織図は、これまで各部から多くの線が延び一つ一つの校務分掌に

名前が書かれているのが常識でした。しかも各部の話し合いの時間も設定さ

れていなかったので、個々が分断され校務分掌のマンネリ化にもなっている

のが普通です。そこで、協働で校務分掌を行う意識を促すために3つに統合

し、それぞれをチームとします。

各チームは数名程度の構成とし、その結果として、視覚的にも協働のイメ

ージ化がされやすいようになります。

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④ これまで各部の名称は「○○部」としているのが普通でした。ですが、受動

的な考えではなく、各自が斬新な発想をもって協働で創造的に校務分掌に取

り組んでもらうために「○○プロジェクト」という名称にすることを提案し

ます。

「学び」や「心」という視点に立って、どんなことを計画・実施していけ

ば鬼小がもっと良くなる新しいものを創造するのかを、能動的に考えてもら

いたいという思いです。

⑤ 校務分掌組織図の中に各プロジェクトが目指すものを表記する必要もあり

ます。これは、各プロジェクトが何を目指すのかを強く意識化してもらうも

のであり、PDCA(マネジメントサイクル)にもつながるようにするため

です。

イ校務分掌組織の運営の見直し

運営においては、いくつもの問題点があると考えられます。

① 学校には、様々な課題に対処するためにいくつもの委員会が設けられ、連日

会議が行われているのが通常です。その会議の多さからくるのは、ただ多忙

化です。毎月1回の職員会議、校内研修会、生活指導協議会の他に、学力向

上委員会、研究推進委員会、教育相談委員会、就学指導委員会、図書館運営

委員会、各部会、運営委員会等の会議が、ほぼ毎日、授業後に行われている

というのも珍しくありません。

あまりの多さから本来必要とする各部の話し合いの時間などは設定できず、

部としてのまとまりのある校務分掌が行いにくい面があったと思います。

② 小委員会の会議などは、水曜日以外の日に設定されていたりし、出張と重な

り予定していた期日に開催できず変更することが再三あるのも通常です。

また、十分に話し合いの時間も取れません。管理職不在で、話し合いを行

う等の問題も多々あるのも日常です。

③ 各委員会で話し合ったことを再度職員会議で話し合うため、職員会議での議

題が多くなり時間をかけて深まりのある話し合いができていないのも、よく

ある場面です。

④ 特活部・生活部・保体部の各部会がなかなか設定できないために、一人一人

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が分断されて校務分掌を行っているのもよく見かけます。

結局は、狭い視野で校務分掌を行っているだけで、学校教育目標の具現化が

意識化されていません。

これらの問題を解決するために、校長・職員と話し合いながら校務分掌の運

営について次のような改善を行うことを提案します。

① 各プロジェクトでの話し合いの時間を十分確保するためにプロジェクト会

議を月2回の設定とします。協働体制と校務分掌の質の高まりを期待するこ

とになります。

各プロジェクトで話し合われたことの大部分は尊重し、重要な事項だけを

職員会議で話し合うことにすれば、会議の効率化が図れます。

② 月2回のプロジェクト会議の中に小委員会の話し合いも吸収させ、会議の数

を減らします。

③ 毎月1回、3役と各プロジェクト代表者が出席するキャップ会議を設定する

ことも大切です。

プロジェクト会議は企画・実行部門であり、キャップ会議は各プロジェク

トの力を引き出し成功に導く調整部門として位置づけるからです。また、中

堅層の人材を育てる意図もあります。

ウ校務分掌組織の見直しの歩み

これまで慣れていたことに対する大きな改革は難しいものです。校長の指導

を受けながら時間をかけ、全職員の合意を得ながら進めていかなければならな

りません。

そこで、1学期から2学期にかけて行事毎や各学期の反省で、校務分掌組織

と運営の見直しの必要性を話すように心がけます。また、3役(校長、副校長・

教頭、教務)で行う企画委員会でも、校務分掌組織と運営の問題点について度々

話し合うようにします。これらをとおして、職員にも徐々に問題点が意識化さ

れるようになるはずです。

6.「組織」としての学校

(1)学校に何が必要なのか-

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取り組みの整理(仮説による事例)

1)一人ひとりのペースを重視した合同授業の体制

・一人ひとりの生徒が学習に取り組む意欲を喚起

・生徒は、自分のペースに合わせて学習できる時間として落ち着く

・教員にとってみると、生徒からのマイナスのイメージを、他の教師

からの助言で転換する機会となり、他のクラスの生徒から「先生」

として認められることで、自信を回復できた

2)「支援員」や「相談員」などによる支援

・教諭の精神的負担をやわらげ、克服への意欲と取り組みを促す「相

談員」が 教諭の苦悩を受け止め励ました

・「支援員」が教師-生徒という関係とは異なる大人-子ども関係を

生み出した

3)学校で暮らす情報を共有する仕組みをつくる

・「生徒指導会議」を全教師で定期的にもつこと

・お互いにクラスの状況について忌憚なく相談し合える機会を定期的

に確保

(2)「組織」とは何か

定義:「2 人以上の人々の、意識的に調整された諸活動、諸力の体系」

(Barnard)

組織は、生き物(有機的組織体)

①社会的な存在

❷目的を持ち、目標によって駆動する

❸コミュニケーションを通じた「協働」が前提

❹意図的に構成され、調整される活動システム

⑤外部の環境と結びついている(オープンシステム)

⇒急激な社会変化 → 変化への対応 → 進化・発達(退化・淘汰)

(3)学校は「組織」として機能しているか

学校に横たわる焦燥感や多忙感の中で、「やらされ仕事」や「納得の

いかない仕事」の多さ=疲労感・多忙感

❷との関わり:学校教育目標の曖昧性

組織を方向づけるものとして学校教育目標が共有化されているか?

目標達成の手立てが明確か?

→個別教員の解釈と判断に委ねられる

❸との関わり:理解を深め納得するコミュニケーションの希薄性

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教職員同士が本音を語り合っい、通勤の途中地域住民や保護者と

のコミュニケーションをはかる機会が減少、目の前の問題の処理だ

けで手一杯の状況、互いに不干渉、牽制=「個業性」、「自律性」。

このことの両面性(メリット、デメリット)

・学校の全体経営が不在の状況、学年・学級や個々の教職員が孤立。し

かし、それを慣行や慣習が補っているため、問題状況が見えにくい

・個々の教職員の力量の問題のみに帰してしまう危険性

・「経営」と「教育」との対立

❹との関わり:「疑い」を生みにくい組織文化

学校と企業における組織特性のちがい:「不易」の重視=「改善」が

位置づけられにくい

→硬直した組織

7.「組織」としての学校を重視した改革動向-「学校評価」政策と「学校組

織マネジメント」政策-

(1)「学校組織マネジメント」とは何か

組織マネジメント:組織が、その目的に向かって持っている各種資源を

開発・活用し、適切な活動を行うこと

学校における組織マネジメント:学校の有している能力・資源を活用し、

学校に関与する人たちのニーズに適応させながら、

学校教育目標を達成していく過程(活動)

①マネジメントの目的

生徒の成長・発達のため、学校内外の関与者の期待をくんだ学校教育

目標の達成

②マネジメントの対象

学校運営に大きな影響力を与える要素・要因は、すべて対象となる。

ただし、学校に大きな影響は与えるが、こちらからはまったく操作で

きない要素・要因はマネジメントの対象ではなく、「与件」として存

在する環境

③マネジメントの方法(マネジメント・サイクル)

Plan(計画)→Do(実施)→Check(評価)→Action(更新):PDCA サ

イクル

④マネジメントの資源

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「現在の学校経営の活性化と幹部教員のあり方」

人的資源、物的資源、資金的資源、情報的資源、ネットワーク資源

唯一最善の正解はない。置かれた状況の中で、「一般解」ではなく「特

殊解」を探索することが重要

(2)政策の流れ

中央教育審議会答申「今後の地方教育行政の在り方について」では、第

3章学校の自主性・自立性の確立について 3 校長・教頭への適材の確保

と教職員の資質向上

「ク 校長、教頭の学校運営に関する資質能力を養成する観点から、例

えば、企業経営や組織体における経営者に求められる専門知識や教

養を身に付けるとともに、学校事務を含め総個々の教師や子どもが

すすめる教育実践人的物的運営管理各方面において組織統制し指揮

する作用合的なマネジメント能力を高めることができるよう、研修

の内容・方法を見直すこと」

一方、教育職員養成審議会答申「養成と採用・研修との連携の円滑化

について」

Ⅳ 研修の見直し (3)教職経験者研修等の見直し

「管理職研修については、校長、教頭の学校運営に関する資質能力や

新しい教育課題に対応できる能力を養成する観点から、これからの

学校教育や学校経営の在り方についての理解に加えて、一般に組織

体の経営に必要とされる専門知識や教養を身に付け、学校事務を

含め総合的なマネジメント能力を高めることができるよう、管理職

研修カリキュラムの開発を行うとともに、・・・研修の内容・方法

を見直すことが必要である」

更に、教育課程審議会答申「児童生徒の学習と教育課程の実施状

況の評価の在り方について」第4章 教育課程の実施状況等から見た

学校の自己点検・自己評価の推進

「ア 各学校が、児童生徒の学習状況や教育課程の実施状況等の自己点

検・自己評価を行い、それに基づき、学校の教育課程や指導計画、

指導方法等について絶えず見直し、行い改善を図ることは、学校の

責務である。

ウ 各学校における自己点検・自己評価に当たっては、学校評議員制

度を活用することなどにより、結果を保護者や地域の人々に説明す

ることが重要である。また、点検・評価の実施に当たっても、保護

者や地域の人々の声を参考に進めることが大切である」

教育改革国民会議提言:新しい時代に新しい学校づくりを 地域の信頼

に応える学校づくりを進める

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「現在の学校経営の活性化と幹部教員のあり方」

(2)各々の学校の特徴を出すという観点から、外部評価を含む学校の

評価制度を導入し、評価結果は親や地域と共有し、学校の改善に

つなげる。通学区域の一層の弾力化を含め、学校選択の幅を広げ

る。

(4)学校運営を改善するためには、現行体制のまま校長の権限を強く

しても大きな効果は期待できない。学校に組織マネジメントの発

想を導入し、校長が独自性とリーダーシップを発揮できるように

する。組織マネジメントの発想が必要なのは、学校だけでなく、

教育行政機関も同様である」

中央教育審議会答申「今後の教員免許制度の在り方について」

「Ⅱ 教員免許更新制の可能性 4 教員の資質向上に向けての提案

④学校評価システムの確立

学校と学校外との双方向のコミュニケーションの成立を確実にする

ため、学校の自己点検・自己評価の実施とその結果を保護者や地域住

民等に公表する学校評価システムを早期に確立することを提言する。

各都道府県教育委員会等において、学校や地域の実情に応じた評価を

行うための具体的方策について、先進的な取組を参考にしつつ、調査

研究を進め、自己点検・自己評価の実施とその結果の公開の進展に併

せ、外部評価が加味され、外部評価の導入へと段階的に進めていくこ

とが求められる。

⑤新しい教員評価システムの導入教員がその資質能力を向上させなが

ら、それを最大限に発揮するためには、教員一人一人の能力や実績等

が適正に評価され、それが配置や処遇、研修等に適切に結び付けられ

ることが必要である。このため、各都道府県教育委員会等において教

員の勤務評価について、公務員制度改革の動向を踏まえつつ、新しい

評価システムの導入に向け、早急に検討を開始することを提言する。

→今後、公開授業の実施など保護者や地域住民とのコミュニケーショ

ンの拡充を図ることを通じて、教員個々の力量や学校としての取組

が日常的に外からの評価を受けることになり、良い意味での競争原

理が働き、力量ある教員やしっかりした取組をしている学校は、そ

の意欲と努力が外からも評価されることになる。また、教員個々の

力量の発揮や学校の取組は、校長のマネジメント能力等の力量の表

れでもあり、これらを通じて、校長のマネジメント能力等も外から

評価されることになろう。

小学校設置基準及び中学校設置基準制定

「小学校は、その教育水準の向上を図り、当該小学校の目的を実現する

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「現在の学校経営の活性化と幹部教員のあり方」

ため、当該小学校の教育活動その他の学校運営の状況について自ら点

検及び評価を行い、その結果を公表するよう努めるものとする。②前

項の点検及び評価を行うに当たっては、同項の趣旨に即し適切な項目

を設定して行うものとする。」(第2条)

(3)政策の進展状況

1)学校評価(担当課:初等中等教育局企画課)

文部科学省「学校評価および情報提供の実施状況」(08 年度)調査(2009

年1 月公表)

①自己評価

実施(公立学校):96.5%(前回94.6%)(幼稚園81.5%、小学校99.2%、

中学校98.9%、高校95.9%、盲・聾・養護学校97.2%)

結果公表:42.8%(前回39.0%)、評価回数:各学期末56.0%(前回52.9%)

評価項目:教育課程、校内研修・研究、学校行事、授業(方法・形態)が

上位

②外部評価

実施(公立学校):78.4%(前回64.1%)(幼稚園44.8%、小学校84.7%、

中学校82.8%、高等学校76.7%、盲・聾・養護学校77.2%)

結果公表:82.9%(前回83.0%)、評価回数:年度末59.9%(前回63.7%)

評価項目:地域・家庭との連携最多

評価者:保護者(80.5%)、学校評議員(48.7%)、PTA役員(45.9%)、

児童・生徒(42.5%)、地域住民(19.3%)

③学校評価結果の公表方法:学校だよりを配布(71.3%)、学校評議員に説

明(60.9%)、保護者に説明(40.3%)、ホームページに掲載(12.4%)、

地域住民に説明(5.8%)、地域の広報誌に掲載(2.1%)

④学校評価の成果:次年度の取組みの参考(93.1%)、全職員の共通理解の

推進(86.2%)、改善点の明確化(86.0%)、教職員の意欲の喚起(69.8%)、

児童生徒、保護者の意識の把握(68.9%)、保護者の協力の推進(49.1%)、

保護者の意識の変化(38.6%)、地域の協力の推進(28.5%)、児童生徒

の学力向上(25.9%)、児童生徒の意識の変化(25.4%)、地域の意識の

変化(15.8%)

⑤学校評価の課題:評価項目の設定(57.6%)、評価の活用(50.4%)、評

価基準の設定(43.3%)、改善方策の設定(37.2%)、評価結果の公表方

法(33.5%)、自己評価と外部評価のずれ(30.0%)、評価の客観性(29.5%)、

企画の設定(22.5%)、評価者(15.3%)、自己評価と学校設置者評価の

ずれ(2.7%)

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「現在の学校経営の活性化と幹部教員のあり方」

2)学校組織マネジメント(担当課:初等中等教育局教職員課)

文部科学省に「マネジメント研修カリキュラム等開発会議」が設置

校長・教頭等管理職向けカリキュラム・テキスト開発

組織マネジメント研修(校長、教頭、主任クラス対象)試行実施

研修企画・実施担当者および講師向け説明会実施し、すべての教職員を

対象とした組織マネジメント研修カリキュラム開発開始している。

「学校組織マネジメント研修-これからの校長・教頭等のために-(完

成版)」DVDを各都道府県教育委員会等に送付もしている

【参考】助言活動の実際

①学校長、教頭との懇談(学校の概要及び現状の説明、助言を希望する内容の

説明)

今後、同校には不登校の経験や可能性をもった生徒の割合が高くなると思わ

れる。そうした子どもたちには、社会化を図るための「ベース基地」が必要で

あり、それは、従来のシステムではHRやクラブ活動が果たしてきました。

しかしながら、「学びたい人が、学びたいときに、学びたいスタイルで学べ

る学校」といった「個の学び」を中軸にすえる同校の改革を進めていくために

は、こうした機能の代替物が必要となります。

生徒指導に関して、同校教職員の多くは、夜間部の多様な年齢構成がうまく

機能してきた成功体験を強く意識していますが、そうした生徒指導のあり方は

質的に大きく変わらざるをえないことをまだ十分認識しえないでいます。

これには、現在の改革が、管理職の他3名の教諭を中心に進められてきたこ

ととも関係しています。改革の方向性と学校が置かれている現状について、教

職員全員が共有することが必要です。

②校長、教頭との協議、改革の中心を担ってきた教諭3名に対し、各自事前に

作成した「学校改革のグランドデザイン」を素材として、インタビューを実施。

各教員の生徒及び学校組織に対する実態把握や今後のストラテジーを明らかに

しながら、個別に助言実施

学校では、教員の勤務時間帯(A勤、B勤)の違いや学習プロセスの個別化

といった限定された条件の下で昼間部を設置・運営していて、また赴任して間

もない教員が増加していることから、改革に対して十分に教職員間の共通理解

が図られているとは言えない状況にあります。

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「現在の学校経営の活性化と幹部教員のあり方」

そのため、改革に対応すべき学校運営業務が、主として管理職と改革を進め

てきた3名の教諭によって担われ、かつ、それらが個々の教員において分節化

されています。

つまり、

ⅰ)「学びたいときに学べる学習スタイル」の全体計画・運営

ⅱ)具体的な新規事業の企画・実施

ⅲ)昼間部設置に伴う生徒指導上の問題への対応

といった仕事を、管理職及び改革を担う3名の教諭がそれぞれ抱え込んでおり、

その連携のあり方に課題が存在しています。

こうした問題はまた、近年、学年組織が十分に機能しなくなってきたことと

も関係しています。来年度以降の人事異動によっては、同校の教職員組織が大

きく変わることも十分予想されます。従来の夜間部の機能を活かしつつ、不登

校の経験や可能性をもった生徒へのきめ細かな対応が焦眉の課題となる中で、

今年度中に「1つの学校」として、こうした課題に対応するための組織の基盤

づくりをしておく必要があります。

③養護教諭を含む3名の教員に対し、「同校の現状と課題」について事前に記

述を依頼し、それを基にインタビューを実施し、個別に助言。その結果を整理・

検討し、学校長との協議を実施。

現在、質的に大きく変わりつつある生徒に対し、物心両面での「居場所」を

確保することが重要であるのは当然ですが、そうした生徒への指導の充実を図

るためには、養護教諭と学級担任等はじめとする教員との間での情報交換の機

会を確保し、学校観・生徒観について認識を深めることが必要です。

具体的には、職員室に養護教諭の机を設置する、養護教諭も学年会議に参加

する、「保健室だより」をコンパクトにまとめて全生徒に配布し、情報発信の

頻度及び質を高める等の措置が挙げられます。

学校における最大の課題である教職員の協働システムの構築については、

中・長期的展望に立ち、これまで改革の中心を担ってきた3名の教諭以外のワ

ーキング・ユニットを作っていくことが有効です。

こうしたユニットにおける討論を基に改革案を作成し、それをたたき台とし

て職員会議に提案し、全教職員によって検討するという手続きを実質化する必

要があります。

また、職員室が2つに分割されていることも、教職員の協働の障害となってい

ます。これにより、教職員間のコミュニケーションが阻害されている側面は否

定できず、早急に改善を要します。

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④授業見学、続いて、学校長との協議を実施。

学校では、学校組織の安定性が揺らぐ危険性が存在しています。学校に課さ

れている重要な課題に対処していくためには、中・長期的な見通しをもって学

校組織づくりに取り組んでいくとともに、すぐに着手できる具体的措置の実施

により改善を図っていくことが必要です。

たとえば、中庭にベンチを置いたり簡単なサロンを設ける等、学校の中に「子

どもの居場所」をつくることによって、生徒の授業や学校行事へのアクセスを

容易にすることであったり、職員室内の個別の机を取り払ってラウンドテーブ

ルを置くこと等、その配置を工夫することによって、教職員間のコミュニケー

ションの円滑化を図るといったことです。

金銭的及び空間的制約を理由に、こうした提案に消極的になってしまうこと

もあると思いますが、お金をかけずにボランティア等をうまく活用し、運用上

の工夫によって空きスペースを捻出する等、できることを学校全体で模索して

いくという意識が、今後求められていくことになります。

⑤全体を通しての助言

「学びたい人が、学びたいときに、学びたいスタイルで学べる学校」。こう

した非常に魅力的なキャッチフレーズの下、生涯学習の基盤としての教育環境

づくりをめざした活動を展開しています。

また、本年度より昼間部が設置され、一人ひとりの学びのスタイルを重視し

た12時限授業が開始された。これに続いて平成×年度には、通信制が開設され

ることになっており、さらに、定時制・通信制課程高等学校のネットワーク化

が構想されています。

今日の教育改革の波に乗る形で、定時制の特性を活かした発展形態を模索す

る姿には、現在の学校に対する危機感がにじみ出ています。数年前より全国各

地の特色ある学校の視察を重ね、多くのモデルを検討する中でこうした方向性

を探ってきたわけです。そして改革元年となった本年度は、定員いっぱいの120

名の新1年生と9名の新たな教員を迎えてスタートしました。

当初の目論見とは異なる現実を目の当たりにして、アドバイスを求めた内容

は、日常の問題を解決し、改革をいっそう進めていくための具体的方策でした。

しかしながら、インタビューを進める過程で、最大の課題として明らかにな

ってきたのは、「組織」の問題でした。

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「現在の学校経営の活性化と幹部教員のあり方」

不登校の経験や可能性をもつ者も含め、子どもたちは、戸惑いつつも自らの

学びを求めており、そのために何らかの手助けをしたいと、多くの先生が思っ

ています。時間をかけて一人ひとりの子どもに寄り添おうとする先生や、子ど

もの身になって教員の振る舞いや学校行事のあり方へ疑問を投げかける先生。

そして、昼間部生徒と夜間部生徒の互いへの意識について配慮する先生。子ど

もたちからの「もっと勉強したい」という声をきっかけに、カリキュラム改革

に着手した先生や、学校としての発展に重点を置いて考えてきた先生。自分な

りの改革のアイデアを同僚にどう切り出していいのか迷っている、先生。

インタビューにより、それぞれの先生の「想い」が浮き彫りになるとともに、

主としてコミュニケーション不足から生じる誤解と感情の行き違いが見えてき

ました。

こうして、わたしたちが得た「データ」には、管理職が有していたものとは

異なる側面もありました。わたしたちは、組織が機能していくために必要な「リ

ソース」は存在しているものの、それをうまく引き出せていないのだと分析し

ました。

「組織」の力量は、そこに所属している構成員の力量の単純総和ではなく、

「組織」として有する力量です。つまり、「チームワーク力」が問題なのです。

この「チームワーク力」を学校において育てていくために、わたしたちは、人

事に関わる事項から施設・設備面での措置に至るまで、具体的な助言を重ねて

行きました。

すぐに効果があらわれる措置もあれば、時間のかかる取り組みもあります。

学校が今後どのような形で「チームワーク力」をつけ、発展を遂げていくのか、

見守っていきたいと思っています。

なお、実際に子どもたちと接する機会を確保することができなかったため、

ここで記載した子どもの実態は、あくまでそれぞれの先生からみた「実態」と

なっています。

子どもたちの「居場所」づくりについて助言を行ったものの、具体的にどの

ような「居場所」を子どもたちが望んでいるのかについてまでは、触れること

ができませんでした。今後、ワーキング・ユニットとしての「生徒指導部」の

調査によって、この点が深められることを期待しています。

8.教育組織の現状

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「現在の学校経営の活性化と幹部教員のあり方」

(1) 教員の直面している問題と学校組織の課題

社会の急激な変化に伴い、学校現場では子どもたちの抱える問題は多様

化、複雑化し、学校に求められる役割は非常に広範囲になっている。マス

コミ報道によると、現在7割近い教員が「これまでの自分の経験だけでは

指導困難な子どもが多くなっている」ことを認識していることが明らかに

なっていまい。

同時に、「教師同士が子どもの実態をじっくりと話しあったり、とらえ

直す機会や時間を確保したりすることが難しい」については、6割を超す

教員が肯定していることも見出されています。このことは、子どもの問題

性が増大しているにも関わらず、教員は閉鎖的な環境の中で、一人で厳し

い場面に立ち向かわなければならず、教員同士がお互いに関わることがで

きにくい状況に、学校が陥っていることを示唆しています。

個々の教員の力量に頼った問題解決の限界を踏まえ、学校という組織(シ

ステム)の問題を考え、改善変革していくことが求められていると実感で

きる事象です。

(2) 学校組織の特性と問題点

学校組織の特性は、

① 教育活動の遂行に関して個別の教員の裁量性に委ねられているこ

② 職務遂行における相互依存性が低く、お互いに直接影響を及ぼす

ことがほとんどないこと

③ 職務が個々の教室に分離され並列的に集積する形で構造化されて

いること

などとして捉えられており、一般組織と異なる特徴的な組織として存立し

てきたとされています。

しかし、このような学校組織は、教師の個別的裁量性に専ら依存するが

ゆえに、教育活動の遂行や改善に教師が相互的に関わることを困難にさせ、

教職をそれぞれ教師の自己完結的な活動へと転化させる傾向を強くさせて

います。

このような学校組織を「個業型組織」と呼んでいます。個業型組織は、

組織的な調整機能を要しないことや、教員による個性的な教育活動が展開

できるというメリットも有しています。

しかし、個々の教員の力量において対処できない様々な問題が起こって

いる今日では、個業型組織の限界が顕在化してきていると考えられます。

つまり、「学校としての自律性が損なわれていること」「教育活動の停滞

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をもたらすこと」「自己完結型の教職観が形成されやすいこと」などの問

題点が大きくなりつつあると考えられます。

(3) 学校組織の変革の視点と方向

① 内側からの教育改革の必要性

ヨーロッパなどにおける学校改革によると、マクロ政策が十分な成果

を収めることができなかった背景として、

① 一つの改革モデルを実施させようとする「標準化された解決策」

は個々の学校においては現実には機能しない

② 個々の学校が上位機関による新たな学校モデルや成果を「採用」

することはめったになく、実際にはそのモデルや成果を個々の学校

の現状や実態に「適応」させているに過ぎないこと

③個々の学校が上位機関によって設定された一つの目的を機械的に採

用して合理的に遂行するということは殆ど見られない

などが指摘されています。

このことから考えても、学校が変わるためには外から与えられたもの

でなく、個々の学校において改革の途につくことが必須であり、個々の教

師が主体的に取り組むことが原動力になると考えられます。

② 協働型組織への転換

以上のことから、学校変革は、教師の自律性を基盤にしつつ、個業性

のデメリットを補うように、教師同士がお互いの教育活動の改善に相互

に関与していくような協働的プロセスを成立させていくことが必要であ

ると考えられます。

個々の教師が自己完結的で閉じた状態で孤立する組織から、相補的

な関係を築きながら、教育意思を形成し、実践を改善していくことが

できる協働型組織へ転換を図ることは、これからの学校にとって重要

な課題であると考えます。

9 学校組織の変革と幹部教員のリーダーシップの必要性

教育研修事業財団では、教員個人の力量に依拠して運営されている個業型

の学校組織を問題があると捉え、教師の自律性を基盤にしつつ、協働的プロ

セスを成立させることによって、自律的に教育実践を改善していくことがで

きる学校へと変革していくための方法論を明らかにするため、調査研究を進

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「現在の学校経営の活性化と幹部教員のあり方」

めてきました。

具体的には、特定の学校を対象とし、そこに適合する学校組織開発の方法

論を構築・実施し、効果を検証することで、校務分掌の刷新と幹部教員の変

革こそが、学校変革の主軸であるという方法論を明らかにしました。

10 学校改善のための基本的な考え方

(1) 内発的な改善力の基本モデル

個々の教師に「実態認識」→「課題生成」→「実践変革」という連鎖(内

発的改善サイクル)が成り立つ中で、自律的に教育活動が改善されていく

ことが示されます。また、そのサイクルが、学校全体の協働的プロセスと

して、成立し共有されることで、教師と学校がともに自律的に教育改善し

ていくことにもつながります。

(2) 協働型学校への変革方法論

各種研究団体による学校組織開発の先行研究によって、内発的改善力の

基本モデルがあり、具体的な組織開発の考え方と方法論が、現在ではスキ

ルとなっています。

① 組織変革

ア.コアシステムの設定

個々の教師の児童の実態認識や課題認識を交流・共有し、さらに実

践とその成果に関する情報を交流・共有する場(コアシステム)を学

校の組織的活動の中心に置きます。

イ.ファシリテート機能の位置づけ

コアシステムで共有された情報を整理したりフィードバックしたり

しながら、課題を明確に共有することを促進し、教育意思を立ち上げ

ることを支援するファシリテート機能を学校組織に位置づけます。

② コミュニケーションの質と形態の改善

その学校の子どもの実態や課題など、教育の事実を交流するための情

報交換のツールや会合の運営の方法を導入します。

③ 学校変革における協働的プロセス

コアシステムの活動を、「実態認識」→「課題生成」→「実践変革」

へと順次展開していくことを構想して、学校改善を進展させて行くもの

です。

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11.調査研究での課題

この度の調査研究では、学校改革の好きるとされていますコアシステムとフ

ァシリテートチームの両面に渡って漸進的に変革する構想を具体化するような

組織開発プランを設計しました。さらに、この度の調査研究では、コアシステ

ム(=子どもの実態、課題、実践に関する情報を交流、共有する場)は、校内

研修の時間を用いて実践されています。

(1) コアシステムの段階的変革プラン

① 準備的段階

教職員間のコミュニケーションの開放を図り、実態認識の視点を徐々

に明確化する段階です。

② 初期的段階

学校組織開発の先行研究から成立しているスキルでは、協働性は授業

や学級経営などの教育活動の中核的領域に踏み込まない、いわゆる周辺

的な領域において成立するとされています。

この度の調査研究ではこのことを踏まえ、周辺的な領域での情報の交

流から、徐々に中核的領域に近づけていく手順を変革プランに組み込み

ました。

③ 進展段階

中核的な領域の課題に転換した上で学校課題を形成し、それに基づい

て協働的な実践変革に取り組んでいく段階として設定しています。

(2) ファシリテートチームの育成プラン

ファシリテート機能を果たすチームを学校の中に育成することが、学校

が主体的に教育活動を改善していくためには重要なキーです。

① チームの初期形成

まず学校の中に、変革の理念や具体的なイメージを共有することで

変革志向を形成したり、学校自身が学校における研修年間計画を作成

したりする初期的学習段階を変革プランに位置づけました。

② ファシリテート機能の学習

学校における研修年間計画を実施していくに当たって、チームのメ

ンバーが、コアシステムの情報交流をサポートしていくファシリテー

ト機能を学習していくことを重視しました。

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「現在の学校経営の活性化と幹部教員のあり方」

12. 学校組織開発の実際と学校の変容

学校変革における学校組織開発の実際と学校の変容について、コアシステム

の活動を中心に報告します。

(1) 第1段階(準備段階)

この段階では、日頃認識している子どもの状況や問題について自由に述

べあうこととして、オープンなコミュニケーションを実現しました。また、

お互いの問題認識の共通点を確認しながら、実態認識の視点を集約しまし

た。

① 第1段階での活動内容

ア.講師招聘研修

イ.生徒の実態認識ワークショップ研修

ウ.生徒の実態認識の方向性の理解

エ.次年度の校内研修計画の理解

② 第1段階における学校の変容

ここでは、教員の実態認識を共有する上で有意義であったワークショ

ップ研修での概要を報告します。

実態認識ワークショップ研修において、日頃生徒に対して思っている

ことを自由に話し会いました。その後、ブロック間のシェアリングを行

いました。この研修において、コミュニケーションが活性化し、教員は

開放的なコミュニケーションのよさを実感しています。

また、教員はそれぞれの子どもについての認識を話したが、それらの

内容には学年を越えて共通性が見出されていました。これを「授業の中

の学級経営」という視点で集約しました。

(2) 第2段階(学校課題が形成され共有された段階)

第2段階は前半と後半に分かれます。前半では、「授業の中の学級経営」

という視点で再度子どもの実態認識を具体的に見直しながら、交流し集約

しました。後半では、それまでの実態認識の捉え直しを踏まえた上で、学

校として取り組むべき学校課題を形成しました。

① 第2段階前半での活動内容

ア.「授業の中の学級経営」での実態認識ワークショップ研修

イ.講師招聘研修

ウ.「授業の中の学級経営」における実態認識シート研修

② 第2段階前半における学校の変容

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「現在の学校経営の活性化と幹部教員のあり方」

ここでは、教員の実態認識を具体化していく過程である実態認識ワー

クショック研修とシート研修における概要を報告します。これらの研修

においても、教員はお互いの実態認識についてオープンに出し合うこと

ができていました。特に、シート研修においては、生徒の事実だけでな

く、自らの指導の情報についても出していました。

また、「授業の中の学級経営」というテーマに基づいた実態認識を繰

り返し行うことで、授業以外の拡散的な内容から次第に授業場面での問

題に焦点化されながら、実態認識の確認と交流が活性化しました。これ

によって、授業場面での子どもの行動上の問題認識を教員間で共有する

ことができました。

③ 第2段階後半での活動内容

ア.課題形成ワークショップ研修

イ.学校課題の理解(職員会議)

④ 第2段階後半で形成された学校課題の内容と意義

今までに報告してきましたような段階を経て、教員の間で共有され明

確になった生徒の実態認識に基づきながら、今後学校として取り組むべ

き課題を作るために、課題形成ワークショップ研修を行いました。

ワークショップでは、それまでに出された子どもの問題となる側面を、

「このような子どもにしたい」というポジティブな課題に転換し、さら

にそれを教師側の授業改善の課題という形で転換しました。

具体的には、

「①チャイムが鳴ったらすぐにとりかかれる授業」

「②一人でも多く一分でも長く参加できる授業」

「③聴き合い話し合える授業」

「④子どものよさを積極的に見つけていく授業」

という教師の改善課題としての学校課題が立ち上がりました。

このように、子どもの問題から出発しながら、プロセスを経て、学校

としての授業改善の課題に集約、形成され、かつ教員に共有されるもの

となりました。この学校課題について、教員は「子どもの姿と結びつく」、

「どうしたらいいかがイメージできる」などのように強い印象を示して

いました。

また、「自分たちが作ってきた」「みんなでこれをやろうという状況

になったのがいい」などと述べていますように、教員集団の教育意思と

して共有されたものとなりました。

こうして、子どもの実態に基づいて具体的な授業の改善課題として立

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「現在の学校経営の活性化と幹部教員のあり方」

ち上がった学校課題は、第3段階に至って、それぞれの教員が授業改善

に取り組む基軸として位置付くこととなります。

(3) 第3段階(学校課題に基づく自律的な教育活動の改善に取り組む段階)

第3段階では、第1段階と第2段階において成立した学校課題に基づき、

「授業研究」と「ノート研修」の二つの方法で自律的な授業改善に取り組

み ました。

この段階において、それぞれの教員が学校課題に基づいた教育改善への

取組を、定期的にオープンにして交流しながら取り組んだことで、個々の

教員の内発的改善サイクルに基づく自律的な教育改善の取組と、それを協

働的に展開する学校の状況が実現しました。

① 授業研究の方法と内容

ア. 方法と日程

学校課題①については全体で、課題②③④についてはそれぞれの教

員が重点課題を選んで、その選択したテーマに基づいて、授業者は授

業を工夫し、参観者は授業を観察するという方法をとりました。

イ. 授業研究に対する教員の取組方

授業者は学校課題を明確に認識しながら、生徒の実態を捉えたり授

業の手だてを考えたり、授業改善に取り組んでいました。また、授業

改善の有効性を検証するために「指標となる子」を設定したことによ

り、参観者の観察の視点が明確になり、授業後の授業者自身の捉え直

しも活発になりました。

また、授業検討会では、授業者が選択した学校課題が授業でどのよ

うに解決できたかについて、生徒の情報を中心に出しながら検討しま

した。和やかで参加しやすい雰囲気の中、多くの教員がフリートーク

で発言しながら、授業の成果と課題に関する意見を相互に交換するこ

とが実現してきました。

② ノート研修の方法と内容

ア. 方法と日程

学校課題①については全員が取り組み、それ以降は、個々の教員

が学校課題から重点課題を選んで取り組みました。

イ. ノート研修に対する教員の取り組み方

「指標となる子」を設定したことで、生徒を詳細に捉えようとす

る意識がより定着してきました。これにより、生徒の捉えに基づく

実践の手だてを考え、実践による生徒の小さな変容(成果)を

把握したりするようになりました。

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「現在の学校経営の活性化と幹部教員のあり方」

13. 教職員の意識変容

7 まとめ

(1) 調査研究における組織開発方法論の特徴と成果

この度の調査研究では、内発的な改善力の基本モデルと学校組織開発の

基本的な方法論に基づき、モデル事例校の現状を踏まえた漸進的な変革方

法論を構築し実践しました。調査研究の基本モデルは、個々の教師に「実

態認識」→「課題生成」→「実践変革」という内発的改善サイクルが成り

立つことと、そのサイクルが学校全体の協働的プロセスとして成立し共有

されることで、教師と学校がともに自律的に教育改善していくことにつな

がるという考え方でした。

また、その基本モデルを成立させるための組織開発の条件として、教育

組織改善スキルで提示されている、

①組織変革(コアシステムとファシリテートチームの位置づけ)

②コミュニケーションの質と形態の改善

③学校変革における協働的プロセス

の3つを調査研究でも取り入れ、現状に適合させながら展開しました。

(2) 実践への展望

学校組織開発の変革方法論の実践可能性について考察しておきます。

一つには、この度の調査研究で対象とした事例校は、ごく一般的な学校で

あり、特殊な条件で動いている学校ではないことです。変革プランの実施に

おいても、事例校の校内研修を活用し、そこに取り入れるようにしました。

このことから、校務分掌を全職員で取り組む方法は、全職員として取り組

みやすい課題であり、かつ、現実的に変革を望んでいる教員も多く、幹部教

員のリーダ的な役割が明確化するなど、多くの学校においても実践可能であ

ると考えられます。

二つめには、明らかになった漸進的な学校組織開発の有効性と汎用性です。

つまり、子どもの問題に関して、まず周辺的な領域(授業や学級経営とは関

わりの薄い場面での子どもの問題など)からスタートして教員間の協働的な

関係を作り、徐々に教育活動の中核である授業改善に向かって子どもの実態

認識の視点を進展させる方法論は、おそらく学校を変えていくための初期的

な活動として有効であろうと思われます。

この成果により、これまで教員を教室に閉じてしまっていた学校組織の仕

組みやシステムから、内発的改善サイクルを共有しあえる協働型学校に転換

していけば、多くの学校が新しい学校に変わることができるのではないかと

いう希望を持つに至りました。

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「現在の学校経営の活性化と幹部教員のあり方」

「中学・高校・大学・大学院・専門学校・

学習塾・予備校などの教育機関等における

新型インフルエンザ対策マニュアル」

2009年 9月 23日 初版発行

著 者 新型インフルエンザ2009年第3期

マニュアル検討・作成委員会編

発 行 財団法人教育研修事業財団

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