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研究論文 「概要」集 - e - k a m o s y s t e mmcarchive.sfc.keio.ac.jp/.../0302-0000-0592.pdf岡部研究会 「研究論文概要集」(2007年 度春学期)に ついて

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ISBN 978-4-87762-184-1

SFC-RM2007-005

岡部光明 研究会

研究論 文 「概 要 」集

2007年 度 春 学期

慶應義塾大学 湘南藤沢学会

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岡部研究会 「研究論文概要集」(2007年 度春学期)に ついて

岡部研 究会 では、1998年 度春学期以 降 、参加 メ ンバーが学 期 中に執筆 したすべて の研究論 文

の 「概 要」を 学期 毎 に一冊 にと りま とめ て刊行 して います。本書 は、2007年 度春 学期 のもので

あ り、 この シ リーズの第16号 に該 当 します 。そ して、 この16号 は 、担 当者(岡 部)が この

8月 末 をもって慶應 義塾 を退職するのでシ リー ズ最終号 にな ります。

今学期の研 究テー マは、従 来同様 、研究会1が 「金融 研究」 、研究会2が 「日本 経済研究 」

で した。本書 に収録 されて いる論文は、研究報 告会議(2007年7月14~15日 に川崎市で実施)に

お いて報告 され、論文概要 はそ こでの討議 を踏 まえて改訂 された ものです。

この 「概要集」シ リーズ全16冊 を振 り返ってみると、3つ の感想を持 ちます。第一に、収

録された論文(概 要)総 数が実に342編 にも達 している ことです。 岡部研究会在籍者が この

10年 間にこれほど多量 の研究論文 を作成した ことに感慨 を覚えます。第二に、研究会履修者

が採 り上げた研究テーマはこの10年 間における日本経済の課題の変遷を如実に反映 してお り、

全体として一種のクロノロジーを提供している ことです。当初は規制緩和、電子 マネー、銀行

の経営破綻な どに大きな関心が寄せ られていたのに対 して、最近はM&A(企 業の合併および買

収)、 郵政民営化、年金問題、機関投資家、自由貿易圏の形成 などを扱 った論文が多 くなって

います。そ して第三は、論文の視点がよ り研ぎ澄まされ分析 レベル も次第に高まってきている

うえ論文 としての完成度も着実 に高 まってきていることです。近年 の論文の中には、担当者

(岡部)と の共著論文 というかたちをとって学会で発表 したものが数件 あります。 また、研究

会優秀論文 としてウェブ掲載 している論文の中には、国内の研究者によって引用 されているも

のも散見されるようになっています。実にうれしいことです。

なお、今学期 も、これ ら論文のうち最優秀と認められたもの(各 研究会1編 、合計2編)は 、

従来 どおり単独刊行物 として湘南藤沢学会よ り刊行 される予定です。従来のそ うした岡部研究

会優秀論文はインターネット上か ら全文をダウンロー ドすることができます。

2007年7月

総合政策学部 岡部 光明

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目 次

研 究 会1

マル コフ連鎖 モ ンテカル ロ法の理解 と実践-TOPIXに 対す る感応度 βの推定一(風 岡宏樹)ー6

M&Aの 経済効果 に関す る実証研究(斉 藤裕紀)一 一一一一一一一一ー一一一-一 一一一一8

無形資産 の最適な移転価格算定方法 とは(細 井 陽子)一 一-一-一 一一 ー一 ー-一 一一一10

地方債 の現 状 と問題点一債務不履行 リスクの観点か ら一(堀 江恵理子)-一 一一一一一-12

単 一金融政策下 にお けるEU加 盟国の金融制度分析(小 林龍 一良)一 一一一-一 一一-一 一14

敵対的買収が株価 に与 える影響(大 矢洋平)一 一一一一一一一一一一一一一一一一一一一16

研究会2

不動産投資における価格決定とリスク分析一 リスク中立確率のもとでのエッシャー

変 換 を 用 い て-(木 上 貴 史)一-一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一-一 一 一 一20

金 融 環 境 の変 化 と 中小 企 業 金 融 にお け る今 後 の展 望(喜 多 康 平)一 一 一 一-一 一 一 一 一 一22

日本 の 貿 易 にお け る 今 後 の 展 望(鈴 木 麻 里 絵)一-一 ー 一 一 一 一-一 一 一 一 一 一 一 一 一-24

診 療 報 酬 決定 過 程 の ゲー ム理 論 分 析 ー 最 適 反 応 動 学 の 導 入一(塚 越 博 基)-一 一 一 一--26

預 貸 率 低 下 の現 状 につ いて(室 田侑 嗣)一 一 一-一 一 一 一 一 一一 一 一 一--一 一 一-一 一28

食 料 自給 率 低 迷 に関す る研 究(山 本 巧)一 一 一 一 一-一 一 一 一 一 一 一 ー 一 一 一 一 一 一 一 一30

新 しい報 酬 制 度 の構 築 にむ けて の経 済 学 的 分 析一ス チ ュ ワー ドシ ッ プ理 論 の

イ ンセ ンテ ィ ブ報 酬 モ デ ル へ の適 用(荒 井 俊 多)-一 一 一 一-一 一-一 一 一 一一 一 一32

開 発 途 上 国 の 財 政 と 経 済 成 長(安 田 憲 治)一 一 一-一 一 一-一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一34

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研究会1:金 融研究

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マルコフ連鎖モンテカル ロ法の理解 と実践

一TOPIXに 対 す る感 応 度 βの 推 定 一

総合政策学部4年

70401913風 岡宏樹

概要

近年、 「マル コフ連鎖モ ンテカル ロ法(MCMC:Markov Chain Monte Carlo)」 とい

う手法 を用 いた研究 が、米 国の学会等 で盛 んに行われ ている。 このMCMCを 利用す る

と、未知のパ ラメー タ θの平均値 ・標 準偏 差を求め ることが出来 る。これ にはまず 、「マ

ル コフ連鎖」(現 時点の値 が、一期 前の値 か らのみ影響 を受け、それ よ り前 の値 か らは

独立で ある とい う確率過程)の 性質 を利用 し、θの初期分布p(θ0)と 推移核p(θ。1θ。-1)の

2つ を仮定 した上で、このマル コフ連鎖 を利用 した無数 の乱数列 を発生 させ る。 この無

数の乱数列か ら θの新た な確率分布 が求ま り、θの確率分布 か ら未知 のパ ラメー タ θの

平均値 ・標 準偏差が求 まる、 とい う流れで ある。

この よ うなMCMCに つい て、日本 で もよ うや く知名度 が高ま って きた。しか し、「回

帰分析」 「ニュー ラルネ ッ トワーク」の よ うな手法 とは異 な り、いまだ大学 生で も読み

こなせ る入 門書や、実際に動 かす ことがで きるプ ログラム例 な どがほ とん どない ため、

初 学者 に とってハー ドルが とて も高 くなってい る。そ こで本稿 では、筆者 自身がMCMC

につ いて学習 しなが ら、その内容 を出来 る限 り易 しくま とめた上で、実際 のデー タに対

して適用す る。

適用例 として、「トヨタのT0PIXに 対す る感応度 βの推定」を行 った。一般的 には、

Y軸 に個別銘 柄の 日次収益率、X軸 にTOPIXの 日次収益率 を とってデー タをプ ロッ ト

し、 これ に対 して回帰分析 を行 い、 「係 数 を β、切片 を α」 として求 める。そ こで今回

は、回帰分析 か ら求 めた βが、MCMCを 用いて求めた βの結果 と一致す るこ とを確認

す る。

適用の結果、回帰分析 では(β,α)=(0.92506,0.00027)、MCMCに よる推 定では(β,

α)=(0.92480,0.00027)と な り、誤差が極 めて小 さくなる ことがわかった。また、MCMC

の推定 を行 う際、初期設定 として 「事前分布」を与 え るのだが、これ をどの よ うな設 定

に して も、回帰分析 に よる β ・αの値 に極 めて近い値 に収束す るこ とが、今 回の実験か

ら分か った。つま り未 知のパ ラメー タの期待値 ・標 準偏差 を推 定 したい場合 、これ に関

す るデー タ と、そ のパ ラメータに関す る事前 の見識 か ら妥 当だ と思 われる分布 さえ当て

はめれば、未知のパ ラメー タを十分 な精度で予測可能で あるこ とが分 かった。

キー ワー ド:MCMC、 事前 分布 、事後分布 、尤度 、マル コフ連鎖 サ ンプ リング法

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〈目次 〉

は じめに

1

2

1⊥

[ 一

1

2

2

2

3

3

1

2

1

2

3

-

-

4

2

2

2

2

2

2

3

3

回帰分析 を用 いたTOPIXに 対す るα ・βの推 定

MCMCを 用 いた α ・βの推定

MCMCを 実行 す るた めの ソフ トウェア につい て

尤度 ・事前分布 ・事後分布 とは何 か 一ベ イズの定理 を用いて 一

尤度 ・事前分布が必要 となる理論的背景

実際に必要 となる作業

WinBUGSを 実行 した結果

マルコフ連鎖 とは

回帰分析 ・MCMCの 推定結果の比較

MCMCを 用いた α ・βの推定は回帰分析の結果 と一致するのか

MCMCの 柔軟性の検証

結論 と残 された課題

〈参考 文献 ・URL>

表1:回 帰分析 による β ・αの推定値 とMCMCに よる推定値の比較

推定方法

回帰分析 MCMCに よる回帰分析 誤差

α 0.0002681 0.0002656 0.0000025

β 0.9250599 U.924$t}00 0.0002599

1500-0

1加E+3

500.O

o.o

-0 ,002 。{〕.001 0.0 0.001

15.0

10.0

50

0.0

0.7 0.8 0.9 1.0

図1:β ・αの事後 分布(MCMCに よる推 定 結果)

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M&Aの 経済効果に関する実証研究

総合政策学部4年 斉藤 裕紀

Log in#sO4334ys

概要

近年 、わが国の産 業構 造は大 き く変化 した。業界再編 とい う言葉 に象徴 され るよ うに

同業種 間及 びその周辺 でのM&A(合 併 と買収)が 多 く実施 されて きた。外資 による 日

本産業へ の資本参加 も活発 にな り、 「三角合併」や 「TOB」 、 「敵対的買収」な どの言

葉 を聞 くこ とも珍 しくな くな った。日本 にお ける企業 のM&Aの 件数 も年々増加傾 向に

あ り、1990年 代前 半の年 平均約500件 か ら2006年 には2725件 と5倍 強 もの水 準にな

ってい る。

M&Aに 関す る研 究 は30年 も前か ら米 国で行われていた ものの、その経済効果 に関

す る結論は学者 によって様 々で ある。日本 で も、最近 になってM&Aに 関す る研 究が積

極 的 に行われ るよ うになった。今 回の研究 では先行文献 について しっか りと リサーチ し

たので、とりわけその研究結果 が有効 であ ると思われ る論 文の-一部について本稿 の 中で

紹介す る。

本稿 においては、 日本 の企業が行 うM&Aが 日本経済に与 える影響 について実証分析を

行 った。 従来 は経済学的なアプローチ とファイナンス的なアプ ローチは独立 して行 われ る

ものであったが、今回は両方の側面か らアプローチを行 うことに した。具体的 には、株価

を用いた企業価値評価 とROAを 使用 した経営指標 を用いて企業評価 を行 うものである。

M&Aの 効果が見 られ るのに必要 と言われてい る3年 もののデー タを用い、またM&Aを

行 ってい ない財務内容の近似 した企業 と比較す ることでM&Aの 効果 を測定 した。 その結

果、M&Aは ファイナ ンス的な側面か らでも、経済学的な側面か らで もM&Aを 行ってい

ない企業 よりも有意に効率性や企業価値が高い ことがわかった。

キー ワー ド:M&A、 時価 総 額 、有利 子 負債 、ROA

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目 次

第0章:は じ め に ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ … 1

第1章:M&Aと は ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ … 2

1-1:定 義 と 目 的 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ … 2

1-2:最 近 の 動 向 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ … 2

第2章:M&Aの 実 証 研 究 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ … 3

2-1:先 行 研 究 ・ ・ ・ ・ ・ ・ … ● ● ● ● ● ● ●'● ●.● ● ● ● ●3

2-2:実 証 研 究 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ … g

2-3:分 析 と 結 果 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ … 11

第3章:ま と め ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ … 14

3-1:考 察 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ … 14

3-2:残 さ れ た 研 究 課 題 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ … 14

第4章:お わ り に ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ … 16

41-1:参 考 文 献 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ … 16

4-2:分 析 で 使 用 し た 企 業 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ … 16

8a+11一

企票価値の推移

4e+]1

2e←羽

0

-2e+11

,4e+11

一゚e+11

-10

- ■

鱒 .二

鳳- 1隠

..

比較の企桑価値

-璽

一 ■瞳

Be+11

4け11

20+11

一2e+11

-4e←11

-一゚e+11

m。の禽s

9

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無形資産の最適な移転価格算定方法とは

総合政策学部4年

sO4769yh@

細井 陽子

近年企業 の拡大や新規事業立ち上げの際に係 る組織体制が多様化 しそれに伴い関連企業

間において資産や役務移転が盛んに行われている。 その際資産や役務 が関連企業間では無

償提供または市場取引価格よ り著 しく上回る又は下回る価格で提供 されてお り、国税庁に

よる追加課税命令が下 されるケースが 目立つ よ うになってきた0移 転価格 とは、一方が一

方の株式や資本、役務提供等 によ り50%以 上所有 している企業間において資産または役

務が提供 された際 の当該資産 にかかる価格の ことをいい、企業は財務指標 の向上や商品価

格形成戦略等 により法人税が他国 より著 しく低 い国(タ ックスヘイブン)を 迂回 させた関

連社 間取引を行 うこ とによ り市場価格 と比較 して著 しく高価或いは安価な移転価格で取引

を行 うイ ンセ ンテ ィブをもつ。最近では企業が海外進 出を行 う際に初期段階に販売促進の

方法や機械技術指導 として企業側 が無償で資産を提供 した として国税庁 による追加課税が

求め られ るケースも増加 してお り、今後 グローバル取引が盛んになるにつれ て無形資産移

転価格の算定方法がより重要になることが認 められ る。

関連企業間取引において有形資産(商 品、機械 、資本金等資産化できるものをい う)の

価格算定は、有形資産がもともと市場 において取引されているものであ り価格算定 も市場

価格 を規準 とすれ ばよいが無形資産は市場で取引 されてい るものでないが商品、企業の存

続に とって重要な意味を持つ ことか ら本稿 では無形資産 に焦点を当てて議論す る。まず第

一章にて無形資産、関連企業、法人税 の定義について考察 した後第二章にて現在 日本、ア

メ リカ、OECDに て適用可能 とされてい る移転価格の算定方法について概観 した。 その結

果① 関連企業の定義の狭 さ②APA締 結 国数の少 なさ③国税庁によるさらなる企業へのモニ

タ リングの必要性④比較可能な企業、取引は存在 しない⑤利益指標の妥当性⑥貢献度指標

の曖昧性⑦内部資料の重要性 による非公開の矛盾、の問題点が挙げ られた。 以上の議論 と

法人税法の根拠、各手法のデメ リッ トを最小限にお さえるとい う観点 を元 にして 「当該資

産 を形成す るに当たって必要な経費 を当該経費が発生 した地域の所得 とし、当該経費 をも

って各 関連企業の貢献度 を第三者 が測量 し、その数値で無形資産 を分配す る」移転価格算

定手法が最適であることを第三章にて論 じる。

キー ワー ド

移転価格 無形資産 APA 二重課税 基本三法 利益法

10

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新聞報道年 会社名 推定所得移転額(百 万円) 推定追徴税額(百 万円)

1993 目本 ロシ ュ 9,500 :11

1994

日本 コ カ ・コ ー ラ 36,000 15,000

日本 チバ ガイ ギー 14,000 5,700

ヘ キス ト 7,000 3,000

1996 日本 ロ シ ュ 14,000 .111

1997

ジ ヤー デ イン ワイ

ンズ ア ン ド ス ピ

リッツ

16,000 7,000

..;

村田製作所 13,700 5,570

バ ク ス タ ー 15,000 .111

山之内製薬 54,100 24,200

ネ ス レ 日本 1,500 700

1999日本 メ ド トロニ ック 12,000 5,000

日本 チバ ガイ ギー 111 3,300

111 日本 コ カ ・コ ー ラ 45,000 1�,000

2004 ホンダ 25,400 13,000

2005

京セラ 24,300 13,000

ソ ニ ー 21,400 4,500

TDK 21,300 12,000

2006武 田薬品工業 122,300 57,000

ソ ニ ー ・SCE 74,400 27,900

(参考資料:大 河原健 「移転 価格 税制執 行 にお け る独 立企 業間価 格算 定 方法 の 問題 σ)検討」

p.286表3お よび 日経 産 業新 聞(2007/02/27)26ペ ー ジ)

(引 用:桑 原 靖 夫 「時 空 を 超 え てBeyond Time and Space」2006年07月06日)

11

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地方債の現状 と問題点

-債 務不履行 リス クの観 点か ら一

総 合政 策学 部4年

堀江 恵理 子(70407767)

[email protected]

概要

2006年6月20日 に夕張市が財政再建団体の指定を総務省 に申請す ることを明 らかに し

た。結果 、2006年 中旬から下旬にかけ地方債流通利回 りの対国債 スプ レッ ドが大幅 に拡大

し、にわかにその債務不履行 リスクに関心が抱かれ るようになった。加 えて近年、三位一

体改革に代表 され るよ うに地方 自治体の 自立を促す制度改革が行われ、 自治体が財源確保

にあた り民間資金に頼 らざるを得な くなったことか ら民間資金 による地方債、 とりわけ市

場公募地方債 の発行が増加傾向にある。また2006年4月 か ら発行が許可制か ら協議制へ移

行 したこと、同年8月 より地方債発行 にあた り統一条交渉方式か ら個別条件交渉方式へ移

行 した ことに より発行の 自由度が一層増 した といえる。そ こで、本稿 では①発行制度 中心

に、近年の地方債 を巡 る制度変化 とそれに伴 う影響 を変化前 と比較検討する とともに、②

各地方 自治体の地方債発行行動 と地方債の格付 けに基づ く信 用 リスクの関係 を分析 し、地

方 自治体や格付 け機 関が前提 としている「暗黙の政府保証」の存在 と市場原理 の適切なあ り

方 を考察す る。

その結果、①個別条件交渉方式採用後、統一条件交渉方式採用時 と比較 し、市場原理 の

導入 により流通利回 りに即 した応募者利回 りの決 定がなされ、発行体の実情 を反映 した条

件決定による不公平性 の解消 と資金調達 コス ト決定の不透明性緩和が促進 された こと ②

地方債の債務償還 リスクに関する法的な政府保証は明記 されていないが、自治体や投資家

は保証を期待 して行動する傾 向にあるとい うことが分かった。

これ に基づ き、①地方 自治体はその性格上政府 の介入すべ き部分 と市場原理 を働かせ る

べき部分の両者が必要であり、②市場原理の導入 に際 して 自治体の最重要課題 は積極的な

情報 開示であ り、 自治体間利回 り格差が生 じるこ とで情報 開示のインセンテ ィブが生 じる

にせ よ、制度的開示義務が必要であること、③ 自治体の財政運営に関 してナ ショナル ・ミ

ニマムの明確化 を図 り、地方債流通 に向け、市場商品 としての地方債の多様性 を図る とと

もに、 自治体の多元的な自主運営を可能 にす ることが重要で あると結論付 けた。

【キー ワー ド】地 方債 ・信 用 リス ク ・対 国債 ス プ レ ッ ド・暗 黙 の政府 保 証 ・市 場原理 ・応

募者 利 回 り ・流通利 回 り

12

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はじめに

第1章 地方債 とは

1-1 地方債引受資金の種類の特徴

1-2 発行体 としての地方 自治体の特徴

第3章 地方債 の信用

3-1地 方債 とその格付け

3ー2 政府の暗黙の保証に関す る考察

3-3 政府介入 と市場原理活用のバ ランス

第2章 近年の地方債 に関す る環境変化

2-1 近年 の地方債 に関す る制度変化

による影響

2-2対 国債スプ レッド拡大に関する考察

2・3 引受資金構成の変化

第4章 結論

4-1 今後の課題 と展望

4.2 政策提言

図1

公 募 地 方債 流 通 利 回 りの 対 国債スプレッドの 推移(東 京 都 ・大

阪 府 ・北 海 道)40

35

30

蓋25

a

.辺20

給15コ

10

5

慶 琴鵜韓箏鵜難

.

-

鴨※ 1ベ ー シ スポ イ ン ト=0。01%/Bloombergと 日本 証 券 業 協 会 「公 社 債 店 頭 売 買参 考 統 計 値 」 に基 づ き残

存 期 間 が10年 に最 も近 い銘 柄 の 値 を とつ た。 ま た 、選 択 地 域 に 関 して は 、石 川(2007)を 参 考 に 夕

張 シ ョ ッ クの影 響 を 受 け た 北海 道 、財 務 状 況 の 良好 地域 と悪 化 地 域 を選 択 。

表1 統一条件交渉方式時と個別条件交渉方式移行後の発行利回りと流通利回 りの差

差の平均 差の最大値 標準偏差

制度施行前 0.0769 0.167 0.0495

制度施行後 0.0391 1 1: 0.0300

※ 既発債 と新発債の利回 りの差の絶対値で平均と標準偏差を出 した。

13

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単一金融政策下におけるEU加 盟国の金融制度分析

総合政策学部4年

小林 龍一良(70430291)

[email protected]

概 要(Abstract)

EU加 盟国 は、過去10年 にわたって 自国独 自の金融制度 と欧州 中央銀 行が実施 す る単一・

金融政策 を両立す る道 を模索 して きた。本稿 の 目的は 「ECBが どの ような金 融政策 を

志 向し、またEU加 盟国が どの ような金融制度 を持つ のか」 を定性 ・定量面か ら把握す

るこ とであ る。第一章 にお いてEUの 金融政策 の中核 を担 うECBを 中心 に扱いECBの

組織 お よび金融政策 をサーベイ した。第 二章において、W0rld Bankの デー タを用 い、

EU加 盟国の金融制度 の類 型化 を行 った。デ ータ として は1:銀 行部 門 による国 内信用

供 与額 の対GDP比 率、2:株 価時価総額額 の対GDP比 率 を用 いた。 この統計(デ ータ

数 は297)を 元 に散布 図 を作成 し、基本統 計量の中央値 を軸 に類型化 を行 った(表2.1)。

結果 として、EU加 盟 国の多 くが従 来の銀 行型の金融制度か ら市場型 も しくはハイ ブ リ

ッド型(市 場型 間接 金融)の 金融制度へ転換 して い ることが判 明 した。 この上で、ECB

の問題 点 として東欧諸 国がユー ロを導入 した場合 、その金融構 造の違いか ら信 用 リスク

が高 まる可能性があ り、発展途上型の金 融制 度を各国の 中央銀 行お よび政府が金 融 ・財

政政策の面か ら主体 的に発展 させ てい く必要 があ る と言及 した。補 論 にお いて欧州憲法

条約が条約 であ るかそれ とも憲法 であ るか とい う問題 を取 り上 げ、 その特徴 点 として

1:欧 州憲法 は条約 とい う批准形式 を取 りつ つ も、2:内 容的 には通常憲法 に含 まれる

べ き基本権憲章 な どが含 まれてお り、EUが 真 に政治統合 を目指す段 階(フ ェーズ)に

達 して いる ことを示 した。

キーワー ド:金 融構造、欧州 中央銀行、格差是正、欧州憲法

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目次

は じめ に

第一章 ECBと 金融政 策

1-l ECB(欧 州 中央銀行)

1-2 ECBと ブンデスバ ンク(ド イ ツ中央銀行)の バ ランスシー トに見 られ る差 異

1.3 ECBの 主 目的 と政策決定 の手段

第二章 欧州 の金融制度 の発展 と類型化 図2.lEU加 盟国の金融機 関数の変化

2.1先 行研究 に見 られ るEU加 盟国 の金融制度の

特徴

2.2

2.3

2.4

終 章

補 論

EU各 国の金融制度の動向

基本統計量

分析結果

結論 と残された研究課題

欧州連合の成立過程および欧州憲法条約

参考文献

F-AIIen(2005)の 数 値 を用 い て 筆 者 作 成

表2.lEU加 盟 国の金 融制度 の 変遷

1.995#市場型 i ハ イブリツピ 藝

アイルランF ベ ルギー オランダル クセンブル ク ス ウェー デン イギ リス

発展途上 屡 銀行型 tラトヴイア スロヴエニァ チ エコ オ ース トリア キプqスエストニア ス窺ヴアキア ハンガ リー マル タ フランス

ルー マニア デンマーク ポルトガル ドイツ

t一 ランF フィンランF リトアニア イタリアエストニア ブルガリア ギ リシヤ スペイン

2005奪

布場型 1 ハ イプリツド 1アイル ランド デ ンマ-ク

フィンランド ベルギ ー イタリア スペインエ ストニア スウェーデ ン ドイツ フランス

オ'ランダ ボ ルトガ ノレ

イギリス マルタ

ギ リシャ ル クセンブルク

発展途上 置 銀行型 iラトヴィア スCiヴ ェニ ア チ ェコ オ ーストリアエストニア スQヴ ァキア ハ ンガリー キプ目ス

JL一 マ ニ ア ブルガ リア リトアニア

ポ ーランド

15

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敵対的買収防衛策が株価に与える影響

~ファイナンス理論の観点から~

環境情報学部3年

70542082 大矢 洋平

[概要】

近年、敵対的買収は増加 し新聞の一面を賑わ してい る。Steel Partnersや 村上ファン ド、

そ してライブ ドアによる他業種への敵対的買収は未 だ記憶 に新 しい。 また、2007年5月1

日、戦後最大の改正 と言われ た会社法の施行か らちょうど1年 が経過 し、会社法施行の 日

から1年 凍結 されていた、いわゆる 「三角合併」も解禁 日を迎 えた。 この合併等対価 の柔

軟化によ り、敵対的買収 はさらに増加する事が予想 され、企業は早急に買収防衛策 を講 じ

る必要が出てきた。その一方、買収防衛策 は導入 に際 しては慎重な取 り組み も必要 とされ

る。なぜ ならば買収防衛策 を不適切 に設定 して しま うと、投資家の誤解 を招き株式市場で

不当な評価 を受 け、その結果、敵対的買収 リスクが増大す る可能性 があるか らである。

本稿 では、敵対的買収 が株価 にどのよ うな影響 を及 ぼすのか、明確にす る事 を目的 とし

てい る。第1章 では、 日本 にお ける買収防衛策の歴史 ・現状について概観す る。第2章 で

は、買収防衛策の類型 を整理 し、後半部分では 日本で最 もポ ピュラーな事前警告型 をよ り

詳細 に分類す る。第3章 では、敵対的買収防衛策が どの程度株価に影響を及ぼすのかを、

CAR(累 積異常収益率)を 使用 したイベン トスタデ ィによって実証分析 を行 った。また、

後半部分では、買収防衛策 の強弱が株価の変化に有意差を生むか検証す る為 に、買収 防衛

策の有効期限に応 じてグループを分け分析を行った。その結果(1)買 収防衛策 は有意 に

株価 を下げる(2)買 収防衛策は強 ければ強いほ ど株価 を下げる、事が分かった。最後の

第4章 では、本稿の結論 と残 された課題 を述べてい る。

【キー ワー ド】:事 前警 告型 、異 常 リター ン、異常 累積 リター ン、イ ベ ン トスタデ ィ

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目次

は じめに

第一章 日本における買収防衛策

1.1 敵対的買収防衛策 とは

1.2 日本 における防衛策の現状 ・歴史

第二章 買収防衛策の類型

2.1 4っ の買収防衛策

2。1.1株 主対策 としての買収防衛策

2.1.2 株式対策 としての買収防衛策

2.1.3経 営施策 としての買収防衛策

2.1.4 その他の買収防衛策

2.2 事前警告型買収防衛策

第三章 買収防衛策に関す る実証研究

3。1 買収防衛策が株価 に与える影響

3.1.1利 用データ

3.1.2 分析モデル

3.1.3 分析結果

3.2 買収防衛策の強弱が株価に与える影響

3.2.1利 用データ ・分析モデル

3.2.1分 析結果

第四章 結論 と残 された研究課題

4.1結 論

4.2残 された研究課題

付表 本章の分析において対象 とした企業

参考文献 図 買収防衛策の推移

買収防衛策数2004 2

2005 29

2006/5 93

2006/6 5

2006/7 1

2006/8 5

2006/9 3

2006/10 6

2006/11 6

2006/12 4

2007/1 4

2007/2 27

2007/3 23

2007/4 47

2007/5 144

(注)MARR(2006・2007)を 参 考に著者 作成

17

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研究会2=日 本経済研究

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不 動産 投資 にお ける価格決定 と リスク分析~ リスク中立確 率の もとでのエ ツシャー変換を用 いて~

総合政策学部4年

木上貴史

70402303

概要

近年、日本経済 も回復に向かい、 日経平均株価 も2007年7月 現在18,000円 台を推移

している。特に回復 が顕著 であるのが、不動産 であ る。現在不動産価格 は上昇 し続 け、不

動産バブル とまで呼ばれるようにな った。特に東京都の地価は上昇率が高 く、銀座 などの

地価の上昇は1980年 後半のバ ブル期を超えるものとなっている。このような不動産バ ブ

ル に連動 して、不動産投資も熱気を帯びてきている。不動産投資は代替投資の一つに挙 げ

られ、その他には、未公開株や雷デ リバティブズな どの天候デ リバテ ィブズ、そ してヘ ツ

ジファン ドな どがある。 このような代替投資の価値 は理論的にはブラツク ・ショ-ル ズな

どの価格決定モデルなどか ら価値 を求めることができる。 しか し、このような代替投資の

対象 となる原資産 は、株や債券などの流動性の高 い資産 と異な り流動性 が低 く、従来の価

格決定モデルから正 しい価格や価値 を算定す ることは困難 である。そのために、不動産や

未公開株に投資 してもその投資が割高か割安か判断できない。特に不動産投資においては、

不動産鑑定士による評価 に多数依存 してお り不明瞭である。そのため、本論では、住宅や

土地などすべての家計にとって最も重要な資産 である不動産の価格モデルの決定を行 った。

また投資家はリスク愛好型 とリスク回避型がいるため、 これを考慮 し、危険回避度や危険

の大きさをモデルに盛 り込むためにエツシャ-変 換を使い、モデ リング した。また実際に、

東証REIT指 数を用 いてエツシャーパ ラメーター(危 険回避度)を 推定 し、その上でエ ツシ

ャ-パ ラメ一夕の値をー1か ら1ま で変えた時の先物価格をモンテカルロシミュレーション

で推定 した。その結果、 リスク愛好型 になるにつれ先物価格 は上昇 した。これにより、 さ

まざまなインデ ックスから計算 されるエ ツシャーパ ラメータをベンチマークにし、 リスク

に伴 った投資を行 うことができるのはないだろうか。また今後の課題 として、 リアル ・オ

プションアプローチと融合 したM&Aに おける リスク分析に発展 させたい と考えている。

キ-ワ ー ド:不 動産 投資 、 デ リバ テ ィ ブ、 エ ッシ ャー変 換、 リスク、R日T指 数

20

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樹不∴

.不鎚

2

4

4

1

1

1

2

2

2

3

3

3

3

産 投 資 とRE-T

動産 投資

IT

R日Tの 特徴

RE-Tの 種 類

R日Tに お ける価 格 決 定

RE-Tに お ける リスク

J-RE-Tの 現状

産投資家価格モデルの決定

備市場におけるモデル

完備市場 におけるモデル

エッシャー変換とは

価格決定モデル

REIT投 資にお けるベンチマ-ク の設定

RE-T指 数におけるエ ツシャーパラメータの推定

先物価格のモンテカルロシミュ レ-シ ョン

適切なエッシャーパ ラメータの決定

結論 と今後にむけて

参考文献、参考WEB

エ ッシャーパラメ-夕 と先物価 格の変化 エ ッシ ャ-変 換 を用 いた資産 の価 格

島舞 鵠 」E舞満]

エ ッシ ャ-パ ラ メー タ

μ+σ2h*-rfーaz2

出典:著 者作成

2!

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金融環境の変化 と中小企業金融における今後の展望

総 合 政 策 学 部 4年 喜 多 康 平

(sO4240kk sfc.keio ac

概 要

中小企業は事業所数べ一スで 日本の産業全体の99%以 上 とい う高いシェアを占めてお り、

日本経済 ・産業の動向を探 る際には大変重要な存在である。 また、現在 のよ うな景気 の後

退、回復局面では、特 にその重要性は大 きい。 このため、中小企業 に対 しては政策面 にお

いて も景気後退 に陥 るたび、数多 くの中小企業金融の支援策がな されるが、多様 な側面を

持つ企業群であるため、一概に論ずることが難 しい といった問題がある。

本稿では、企業金融、 とりわけ中小企業金融の特性 を踏 まえた上で、中小企業が 日本経

済に与える影響(日 本経済 ・産業構造 における中小企業 の位置づ けな ど)を 具体的な数値 を

もって明 らかに し、今後の中小企業金融の動きについて言及 した。

本稿 の主張は以下の通 りである。間接金融市場は直接金融市場に比べて情報 の非対称性

が大きいため、中小企業金融 にとって情報の非対称性 を緩和す る リレーシ ョンシ ップバ ン

キングが有効である。 しか し、貸 し手金融機 関が過大な リスク負担 を強いられ るとい う問

題 があるため、 リスクを広 く市場に分配す る 丁市場型間接金融」が今後定着 してい くと考

え られ る。また、 ロー ンパーティシペー ションな どの手法によって融資契約 に関わる権利

義務関係 を移転せず に、経済的利益 とリスクを移転す ることが可能であるため、融資後 の

経営支援 ・指導な どのモニタ リングが可能であることな どのメ リッ トが あげられ る。証券

化を中心に、中小企業の資金調達は多様化 しているが、これは リスクの分配 とい う点で 「市

場型間接金融」に密接 に関係 していると考 えられ る。市場型間接金融が 円滑 に行 われ るに

は、制度整備が必要 となるが、債権保全 の多様化によって リレー シ ョンシップバ ンキング

のメ リッ トをより活かすことが可能 となる。

〈キーワー ド:情 報の非対称性 、規模の経済性、相対型市場、市場型間接金融>

22

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図表1:銀 行の与信 における限界費用逓減図

一件あた りの貸出額

注1:固 定費用+変 動費用(営 業経費)と は貸出案件における審査やモニタリングコス ト(人件

費 ・物件費)

出所:益 田(2006)を 参考に著者作成

図表2:貸 出債権の証券化による市場型間接金融

㊥注1:多 様な金融市場とは証券化や債権流動化の関連市場

資料:著 者作成 23

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日本の貿易における今後の展望

総 合 政 策 学 部4年

鈴 木 麻 里 絵(70404566)

[email protected]

概 要

第二次世界大戦以後 、 日本 は輸出拡大 によって急 速な成 長 をとげ、1980年 代前後 に

は"Japan as No.1"と 称 され るまで になった。近年、長 引 く不況に よってその勢 いが

衰 えた とはい え、2006年 の輸 出額 は6,500億 ドル 、輸入額 は5,800億 ドルで共 に世界

第4位1の 位置 にあ り、 日本 は未だ に貿易 大国であ るとい って よいだ ろ う。一方 で、産

業 内貿易や製 品輸入 の増 大な ど、 日本国内 にお ける貿易 の構造的 な変化 が進 んで い る。

また、グローバル化の伸展や 中国 の台頭 な ど、日本 の貿易 を と りま く環境 も大 きく変 わ

りつつ ある。

本稿 では貿易 を 「財及びサー ビスの輸 出入取 引」 とす る。そ して、 こ うした変化 の中

で 日本の貿易 が今後 どの よ うな展 開を見せ るか、そ の可能性 を考察す る。まず第一章 で

は、伝統 的な理論や保護 貿易 について と りあげるこ とに よ り、貿易について概観す る。

続 いて第 二章では、実際の 日本 の貿易構造が戦後か ら現在に至 るまでにどの ように変化 し

てきたかを、GATTやWTO、 FTAな ど世界の貿易体制 の変化 を踏まえつつ述べる。 そ し

て 日本の貿易 における今後 の大きな課題 として、① 日本 の相対的なプ レゼ ンスの低下、②

貿易 自由化 の更なる進展の2つ を挙げた。最後 に第三章では、 こうした課題 に対応す るた

め、主にFTAの 推進 について考える。

キー ワー ド:自 由貿 易 、保 護 貿 易 、WTO、 FTA

1財 団 法 人 国 際 貿 易 投 資 研 究 所WEBサ イ ト(http://www.iti.or.ip/tradestat.htm)

2007/5/18掲 載 デ ー タ を 参 照 。

24

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第一章 貿易 の意義

1.1 貿易 とは

1.2 貿易 に関す る基礎理論

1.3 保護貿易 とは

第二章 貿易構造 の変遷

2.1GATTの 成 立 と自由貿易 の進展(第 二次世 界大戦後~1990年 代)

2.2WTOの 発足 と貿易ルールの強化(1990年 代 ~現在)

2.3 地域 貿易協定 とFTA・EPAの 増加(1990年 代~現在)

第 三章 考察

3.1 日本 の貿易 にお ける今 後の課題

3.2 日本 のFTA推 進の必要性

3.3 FTA以 外 の政策 の必要性

25

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診療報酬決定過程のゲー・ム理論分析一最適反応動学の導入一

総合政策学部4年

sO4568ht 70405532

塚越 博 基

概要

2005年 、医療費の公正な決定を図るための制度改革(中医協改革)が決定 された。この制度改

革は、従来の診療報酬の改定率(医療費の増減)の 決定過程において、中央社会保険医療協議会

(以下、中医協)、 いわゆる診療 を担 う側が、大きな影響力を持っていた とい う判断に基づ き実

行 された。 この改革後、改定率の決定において財務省や経済財政諮 問会議のみが権限を持つ よ

うになった。塚越(2006)は 、改革後の決定方式は財政的見地重視 で診療報酬が決定 されるため

望ま しくなく、従来の諮問方式の適否 を今一度検討すべきであることを理論的に導いた。諮問

方式 とは、まず、厚労省の諮問を受け中医協が審議 を し、それを受け、厚労省 と財務省の折衝

の後 に改定率を決定す る方式である。諮問方式は理論的に見れば、(医療 の)専門的見地 と財政

的見地の両方が考慮 され る方式であるのに関わ らず、実際は変更を余儀 なくされた。っま り、

従来の諮問方式には、中医協にとって有利 な政策が採択 されやすい要因があった可能性がある。

そこで本稿 では奥野 ・河野(2007)の 利害交渉ゲームを基に し、塚越(2006)に おける諮 問方式

モデルを拡張 し、分析 を行った。利害交渉ゲーム とは、どの選択肢 を採用す るかで関係者間の

利得配分が変化す るゲームである。また、本分析において中医協は医療政策重視、財務省は財

政政策重視、厚労省 は医療か財政の どちらかを重視す ると仮定す る。 この仮定の下では、本稿

の諮問方式モデルは実質的に中医協 と財務省の2人 ゲーム とみなす ことができる。このゲーム

においてナ ッシュ均衡は複数存在す る((a)財政重視の政策、(b)医療重視の政策、(c)時 と場合の

よって どち らを重視す るか決める政策)。 そのため、松井(2002)の 最適反応動学(人 は現状に対

する最適反応 を取 ると仮定 した動学過程)とい う概念を用い、安定的なナ ッシュ均衡を導き出 し

た。 その結果、① 各プ レイヤーの権限が同程度 または権限 の和 がある一定 の水準 の場合、

(a),(b),(c)の3つ の均衡 の全てが安定的であるが、②(b)の 均衡は相対的に安定性 が低い こと、③

権限 の程度 が違 う場合 は権限が高いプ レイヤーに とって有利の均衡が相対的 に安定的である

が、④両方 とも一定水準以上の権限を持つ と、権限が低いプレイヤーに有利な均衡が相対的 に

安定にな る可能性 があること、を導いた。

諮問方式は、中医協が大き く影響力 を持っていたため方式が変更 された と考えると、同方式

において、以下の2つ の可能性を指摘す ることができる。1つ 目は、中医協に有利 なナッシュ

均衡 が相対的に安定的であった ことである。2つ 目は、中医協が強行姿勢を取る確率の値が著

しく高かったため、中医協 に有利なナ ッシュ均衡が達成 されたことである。 これ らと先ほ どの

分析結果 を踏 まえると、諮問方式を維持す るためには、① 中医協 と財務省の権限を同等に し、

②両アクターの権 限を低下 させることが必要不可欠であると結論付 けた。

キー ワー ド:診 療報酬、諮 問方式、利害交渉ゲーム、最適反 応動学、安定的なナ ッシュ均衡

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表 利害交渉ゲームの利得表

A(中 医協)\B(財 務省) C(譲 歩) D(強 行)

C 1__1_V,=V2 2 (1-a)V,aV

D ゚V,(1一゚)V 00

α,゚は それ ぞれ財 務省 、 中医 協の 権限 の大 き さを表す(両 方 とも0.5よ り大 きい)。

(注)奥 野 ・河 野(2007)に 一部 著者 が加 筆。

1

E

q

図 最適反応動学

4

図 ナ ッシュ均衡 の改善

0

タ=4

A

ρ=q

(b) 3R'(P) 〆

,r戸

1撚'(P)'

/ 〆

ノビ

(c)/ノ

//

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'

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ノ「 〆/ノ

r

1

\ βR8(4\ i /4

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1 曳 琶 ω ,!ノ/

F

,(a} o_'Y、ミー 一~ ~ ~ 一__」_._■. ・P 一

y 1 社会的に最も望ましい点に(c)の均衡を近づける

P:財 務省 が戦略Dを 選択す る確率

9:中 医協が戦略Dを 選択す る確率

BR`'(p):中 医協 の最適反応 曲線

B1~β(q):財 務省 の最適反応 曲線

ε,Y:定 数

(a),(b),(c)は概要 に記 した3つ のナ ッシュ均衡 に対応。

(注)著 者作成。

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預貸率低下の現状について

総合政策学部4年

室田 侑嗣

[email protected]

概 要

日本 の金融 システ ムは大 きな変貌 を遂 げてい る。これ は経営環境 が改善 した今 日で も

変 わ らない。例 えば、メイ ンバ ンク制 の変化や、株 式の持合解 消以外 に も、預金 と貸 出

で ある 「預貸率」 の水準が低 下を続 けて とい う現象 が起 こってい る。

全国 の預貸率 の推移 を見てみ る と、90年 代後半以降、預金 は緩やか な増加傾 向にあ

った一方 で貸 出は減少傾 向を辿 ってお り、この結果 、預貸率 は過去10年 の間、全 国的

に低下 している。実際、企業(特 に中小企 業)の 資金需要 は弱 く、銀行 の本業 の収益 の

多 くを 占める融資業務 は伸 び悩 んでい るのが現状だ。

そ こで本稿 は、先ず 中小企業 が 日本経 済の 中で どの よ うな位置付 けか確認 した上で、

中小企 業が置 かれ てい る現 状 を分析 した。

結論 は以下の通 りで ある。①企 業 か らの貸 出は減少 してい るが、企業 サイ ドの受 け止

め方 には改善傾 向にあ る。② コス ト削減 が進んだ結果 、収益力が向上 しキ ャ ッシュ ・フ

ローは増加 してい る。また、③企 業が増収 を続 けて いる限 り、競争 力維持 の為の設備 投

資に対 す る需 要は強い。 しか し、④ 以前 と して、設備 投資 をキ ャッシュ ・フローの 中で

実現 しよ うとす る傾 向にある。 したがって、⑤企業 の資金需要 は、中期的に減少 を続 け

る と考 えるのが妥 当である。

キー ワー ド=金 融 システム 銀行 融資 預貸率 キャ ッシュ ・フロー 設備 投資

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目次

は じめに

第1章 中小企業金融 とは

1-1 中小企業 とは

1.2 中小企業の金融 システ ム

1.3 中小企 業にお ける証券化の動 向

第2章 中小企業 向け貸出の現状 分析

2.1 中小企業 の資金需 要

2.2 投 資 と景気循環

2.3 法人企業の資金動 向

第3章 結 論

図 預貸 率の推移

(出 所 日本銀行 「民間金 融機関の資産 ・負債等」 か ら筆 者作成。

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食料 自給率低迷 に関す る研 究

総合政策学部4年 山本巧

学i籍番号:70409283 ログイン名:sO4928ty

【概要】

日本のカロリーべ一ス食料 自給率は調査開始の昭和35年 に73%を 記録 して以来、一貫 し

て下が り続け、平成17年 には40%を 記録 した。これは、先進国の中では異例の低 さである0

そこで、 自給率について再考す るために本研究を行 った。 まず、 日本の農業 の現状、戦後

の農 業政策 の歴史 、 日本 の農 業の課題についてま とめた。次 に自給率 とは何かについて記

述 し、自給率に関 して対立す る二つの意見をま とめた。 自給率を向上 させ るべ きとす る側

の意 見は① 自国生産に よる食糧安全保障、②食 品の安全性 の確保、③農業の文化的 ・環境

的価値の保全の3点 か らくる主張であ り、自給率の低迷 はやむ をえない とい う側の意見は

①供給元の分散 による食糧安全保障、② 国際分業の利益 の享受、③農業保護政策 にかかる

費用削減の3点 に集約 され る。以上をふまえつつ、過去 に各国で行われた自給率向上 ・農

業保護のため政策を考察 した。具体的には①EU加 盟前のイギ リスで行われた不足払い方式、

② ウルグアイラウン ド以降一般的 となった関税方式 の二つについてである。 両者 とも一長

一短であるが、生産者価格 を歪め貿易の利益を損な うことを確認 した。最後に 自給率 の向

上 は非経済的価値 を求 めるものであ り、 目標 をどの程度 に定め、 どの程度の費用まで許容

す るのか国全体で話 し合 うべきであるとい う提言を した。

【キーワー ド】

カ ロ リーべ一ス食料 自給率 食料安全保障 不足払 い方式 関税方式

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【目次】

第1章 日本 の農業の概観

1.1 日本 の農業の現状

1.2 日本の農業政策の歴史

1.3 日本の農業の課題

第2章 食料 自給率に関す る考察

2.1 自給率 とは何か

2.1.1 総合食料 自給率

2.1.2 品 目別食料 自給率

2.2 自給率に関す る二つの説

2.2.1 自給率向上推進派

2.2.2 自給率低迷容認派

第3章 農業保護政策の考察

3.1不 足払い方式

3.2 関税方式

第4章 政策提言

不足払い方式 の構造

P

9

W

P

P

P

Qw A:A Q' Q

※Pは 価格 、Qは 数量、需要 曲線 をDD、 供給曲線をSSと す る

注:荏 開津典生[2003]よ り引用

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岡部光明研究会 名前:荒 井俊多

所属:総 合政策学部3年

新 しい報酬制度の構築 にむけての経済学的分析

スチュワー ドシップ理論のインセンティブ報酬モデルへの適用 一

概要

日本企業 における報酬制度 はバ ブル崩壊後から人事管理制度 を構成す る柱の一つ として

大き く変化 してきた。 しか し成果制度の導入 を中心 とした改革には過度な利益の追求の指

摘を代表 として報酬制度に対す る懐疑的な見方が強 くなって きてい る。最適 な報酬制度 と

は一体 どのよ うに構築 され るべ きなのか。何 よりも重要なのが、報酬制度は人事管理制度

改革の中で どの ような状況にあるかを判 断す ること、またその状況の上で報酬制度 の構築

には人々が どのよ うな行動モデル をもつ と想定 されてい るのか、あるい はどのような行動

モデルが望ま しいのかを判断すること、である。

本稿 では数多 くある現代的な報酬制度の中でも導入 が最 も盛んな制度のひ とつであるイ

ンセ ンティブ報酬制度 を対象 に制度構築にあたっての理想的な行動モデル を経済学的 に分

析 した。 そのためにまず理論的な問題点 を明確化 した。その結果、理論 的には、企業 と従

業員の リスクシェア リングへのコス トの高 さ(主 に従業員の リスク許容度)、 最 も効率的に

従業員の高い努力水準 を達成する課題 の履行 問題 の存在 、 といった問題 点があることがわ

かった。 それ らの問題点を解決す るために、行動主体の行動原理の特徴に着 目して契約理

論を用いた二つの分析 を行った。 その分析 にあたって、企業 にお ける行動主体の行動原理

として最 も普遍的に使 われているエー ジェンシー理論ではなく近年新たな行動原理 として

確立 されつつ あるよ りスチ ュワー ドシップ理論 を基本的な行動原理 として採用 したのが本

稿の特徴である。 なお本稿ではスチュワー ドシップ理論を① リスク中立的、②従来 よ りも

リスク許容度 が大きい、③社会貢献を意識す る、④努力水準が常に一定 して高い経済主体

を支持す る理論 とした。

一っ 目の分析 は、従業員 を集団主義的であるスチ ュワー ドと仮定 して従来のイ ンセ ンテ

ィブ報酬モデルへの適用を試みたものである。分析の結果、①追加的な努力が リスクプ レ

ミア ムを上回 るときに限 りエージェンシー理論 よりも大きな利潤 を生む、②エージェン ト

の リスク回避度が0で ありなおかつインセンティブに対す る努力水準の反応 が強いため、

エー ジェンシー理論 における最適 なインセ ンテ ィブ強度よ りも高い利潤 を生む、 とい う結

果を導き出す ことができた。

二っ 目の分析 は従業員 ・経営者 の両方 をスチュワー ドと仮定 して従来のイ ンセ ンティブ

報酬 のモデルへの適用 を試 みた ものである。分析の結果、①エー ジェン トの資金能力をプ

リンシパル(大 規模)が 援助す る形式 となるためエー ジェンシー理論 よ り確実に利益が増

大す る、②双方が水平的 な組織 を前提に行動す るためイ ンセ ンティブに対す る努力水準の

反応 が必然的に強 くな り、結果利潤が増大す る、ことがわかった。

最後 に、インセンティブ報酬制度 は従業員 と経営者 の双方がスチ ュワー ドであるかつ長

期的な業務 となる場合はスチュワー ドシップ理論 の行動原理 を重視 した制度 の構築が望ま

しい と結論付 けた。 また今後の課題 として①スチュワー ドシ ップ理論の強化 、②人事管理

制度間の関連の明確化、③インセ ンティブ報酬モデルの多角化 を挙 げた。

キー ワー ド:ス チュワー ドシ ップ理論、イ ンセ ンテ ィブ報酬モデル、報酬制度

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岡部光明研究会 名前:荒 井俊多

所属;総 合政策学部3年

表2:エ-ジ ェンシ-理 論とスチュワ-ド シップ理論の比較

*出 所:柏 木(2005)よ り引用

表1-2人 事処遇制度の検討状況

処遇制度の検討状況 回答数 割合 サンプル数

営業・販 売職の歩合給 ・奨励 給 30 重11 270

年俸制 106 42.9 247

職能給 46 39.3 117

職務給 ・仕事給 55 23.9 230

年齢給 10 8.1 124

勤続給 4 1.9 209

賞与の業績 成果配分 67 45.3 148

退職金の本給との切り離し 68 27.5 247

諸手当の統合 65 22.8 285

地域別賃金 26 9.4 276

地域別住宅手当 26 i2.s 207

」定年齢 到達時 の年齢 引き下 げ 44 23.3 189

その他 0 0 308

ひとつもない 1 0一3 100

注)既に制度を導入済みである場合はサンプル数から除外している

出所:松繁.梅崎・中島(2005)

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開発途上国の財政と経済成長

総合政策学部3年 安田憲治

概要

2000年9月 の国連 ミレニアムサ ミッ トで 「ミレニアム宣言」が採択 され,こ の宣言を実

現するためのロー ドマ ップ(目 標を達成するための手段や施策 を,時 間軸 と道標 に従 って明

確 に示す こと)と して,「 ミレニアム開発 目標」(Milennium Development Goals:以 下,

MDGs)が 採択 された. MDGsの 第1目 標は,「極度の貧困 と飢餓 の撲滅」であ り,こ れを具

体的に達成するための数値 目標 の1つ が,「2015年 までに1日1ド ル未満で生活する人 口の

比率 を半減 させ ること」になっている.こ の数値 目標 を達成す るために,最 も重要な問題 の

1つ として,私 は 「開発途上国の財政」 を挙げることにす る.

開発途 上国の財政 において,① 与 えられた政府開発援助 を有効 に使 うために,開 発 途上

国政府 の 「ガバナ ンス(制 度 ・統治環境)」 を高めること,② 開発途上国政府 の 「最適な税

制」を整備す ること,③ 開発途上国が経済成長す るにあた り,人 口構造が多産多死か ら少産

少死に変わる 「人 口転換」が起 こること,の3点 が有意義な着 目点であると,私 は考える.

本稿 では,マ クロ経済学の1分 野である 「新古典派経済成長理論」 を,「開発途上国の財

政」をモデル に組み入れる形 で発展 させ る.さ らに,実 証分析によってモデルの整合性 を評

価 した うえで,「開発途上国の財政」 と 「経済成長」の関係 を明確にす ることを目的 とす る.

また,① ガバナンスの良い国に,必 ず しも政府開発援助が渡 っていない こと,② そ もそ も開

発援助が経済成長に寄与 しないこと,を 実証研 究によって明 らかに した.こ れ らの事実に

関 しては,財 政的な観点だけでな く,多 面的な考察 を必要 とす るため,残 された研究課題 と

して取 り上げることに した.

【キ ー ワ ー ド】 開発途上国の財政,政 府開発援助,ガ バナンス,

最適な税制,貧 困の罠,人 口転換,新 古典派経済成長理論

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【目次 】

は じめに

第1章

1.1

1.2

1.3

1.4

第2章

2.1

2.2

2.3

第3章

3.1

3.2

参 考 文 献

開発途上国の財政

政府開発援助 とガバナンス

最適な税制

貧困の罠

人口転換

財政を考慮した開発途上国の経済成長モデル

新古典派経済成長理論

財政を考慮した開発途上国の経済成長モデル

実証分析によるモデルの評価

結論と残された研究課題

結論

残 された研究課題

図 財政を考慮した開発途上国の経済成長モデル

産出

投資

減価償却

0k* ん

2ん 労働者1人 当た り資本

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岡部 光明 研究会 研究論文 「概要」集

発 行 日

著 者

監 修

発 行 所

印 刷 所

2007年8月15日

岡部研究会 メンバー

岡部 光明

慶應義塾大学 湘南藤沢学会

株式会社 ワキプリン トピア

ISBN 978-4-87762-184-1

SFC-RM2007-005