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資料編 若年層向け薬物再乱用防止プログラムについて 中部総合精神保健福祉センター 若年者向け薬物乱用防止プログラム「OPEN」 薬物使用者を抱えた家族へのサポート

若年層向け薬物再乱用防止プログラムについて 中部 …...P

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資料編

若年層向け薬物再乱用防止プログラムについて

中部総合精神保健福祉センター 若年者向け薬物乱用防止プログラム「OPEN」

薬物使用者を抱えた家族へのサポート

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1

若年層向け薬物再乱⽤防⽌プログラムについて

(独)国⽴精神・神経医療研究センター精神保健研究所 薬物依存研究部

⼼理社会研究室⻑嶋根卓也

1.5%

1.8%

1.5%1.6%

1.4%

1.2%

1.0%0.9%

0.0%

0.5%

1.0%

1.5%

2.0%

1996 1998 2000 2002 2004 2006 2008 2010

いずれか 有機溶剤 大麻 覚せい剤

過去10年間で半減

出典:和田清、嶋根卓也、他:薬物乱用に関する全国中学生意識・実態調査(2010年).平成22年度厚生労働科学研究費補助金(医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究事業)

(年)

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2

多様化する薬物乱⽤

3, 4-methylenedioxymethamphetamine(MDMA)

ハーブ系脱法ドラッグ パウダー系脱法ドラッグ リキッド系脱法ドラッグ

MDMA (3, 4-methylenedioxymethamphetamine)セロトニンとドパミンの両⽅の神経伝達系に作⽤し、中枢興奮作⽤と幻覚作⽤を併せ持つ薬物

クラブ(ダンスイベント、レイブパー

ティー)薬物乱⽤の

ブラックボックス

クラブに関連する急性中毒症例が報告(死亡を含む)(Asamura H et al., 2006; Mizukami H et al.,2008; Sano R et al. , 2009)

CBTに参加する薬物依存者の7割がクラブ利⽤歴あり(嶋根ら、平成23年度障害者対策総合研究事業(精神障害分野)「薬物依存症に対する認知⾏動療法プログラムの開発と効果に関する研究」)

MDMAの検挙者・押収量は過去10年間で劇的増加(⿇薬・覚醒剤⾏政の概況:厚⽣労働省監視指導・⿇薬対策課,2011)

⼀般住⺠における⽣涯経験率:2007年0.2%,2009年0.2%、2011年0.1%(和⽥ら、厚⽣労働科学研究、全国住⺠調査)

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3

Step1. リクルートクラブの⼊⼝でカードを配布、調査案内を呼びかける

Step4. ドリンクチケット、啓発パンフ協⼒者にはドリンクチケット(500円程度)および薬物依存に対する認知⾏動療法プログラムのフライヤーを配布

Step3. ⾃記式調査(5〜10分)調査項⽬がインストールされたノート型パソコンで実施(Adobe® Flash® Player )画⾯上で研究説明・インフォームドコンセントを得る

⽬的: クラブイベント来場者におけるMDMA等の薬物使⽤の状況と乱⽤者の⼼理社会的特徴を明らかにすること

⽅法: クラブイベント来場者をクラブ内でリクルートする(クラブイベント来場

者を直接ターゲットとする薬物依存研究は我が国で初めての試み)ノート型PC(オフライン)を使った⾃記式調査

Step2. 調査ブースクラブ内に調査ブースを設置、対象者はカードを持参

本研究実施にあたっては、国⽴精神・神経医療研究センターの研究倫理審査委員会の承認を得た。

クラブ利用者層の属性(n=300)女性:47.3%20‐29歳:68.3%、30‐39歳:25.3%高卒:31.3%、大学・短大卒:61.0%

クラブイベント来場者の薬物乱⽤経験率は、⼀般⼈⼝に⽐べ、極めて⾼率である。

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4

Visitors who received the card (n=673)

Visitors who completed the questionnaire (n=324)

Overlapping subjects (n=19)

Study samples (n=305)

( )MDMA users

(n=24) ( )Cannabis users 

(n=74) ( )Non‐drug control 

(n=202)

Exclusion criteria*(n=5)

Non‐MDMA users (n=281)

*Participants who reported that they had used drugs other than MDMA and cannabis

分析⼿順(フロー)

MDMA使⽤者は、多剤乱⽤型P< 0.001

P=0.008

P=0.006

P< 0.001

P< 0.001

P< 0.001

Shimane T, Hidaka Y, Wada K, Funada M: Ecstasy (3, 4-methylenedioxymethamphetamine) use among Japanese rave population, Psychiatry and Clinical Neurosciences. 2012. (in press)

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5

MDMA使⽤者は、過量摂取・多剤乱⽤による健康被害が顕著にみられる。

P=0.018

P=0.034

P=0.008

P=0.002

P=0.003

P<0.001

P=0.030

Shimane T, Hidaka Y, Wada K, Funada M: Ecstasy (3, 4-methylenedioxymethamphetamine) use among Japanese rave population, Psychiatry and Clinical Neurosciences. 2012. (in press)

MDMA使⽤者は、クラブ来場頻度が⾼く、⼩中規模のクラブを好む

Shimane T, Hidaka Y, Wada K, Funada M: Ecstasy (3, 4-methylenedioxymethamphetamine) use among Japanese rave population, Psychiatry and Clinical Neurosciences. 2012. (in press)

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6

クラブ内の個室(VIPルームなど)利⽤者層に注⽬

嶋根卓也、日高庸晴:クラブ内の個室利用とアルコール・薬物使用との関連性.第71回日本公衆衛生学会総会、山口、2012.10.24-26.

個室利⽤者は⾮利⽤者と⽐べ、イッキ飲み、ブラックアウト(飲酒による記憶喪失)、⼤⿇使⽤率が有意に⾼い。

嶋根卓也、日高庸晴:クラブ内の個室利用とアルコール・薬物使用との関連性.第71回日本公衆衛生学会総会、山口、2012.10.24-26.

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7

薬物依存中毒性精神病

薬物依存に基づく乱⽤者

乱⽤だけの乱⽤者

⾮乱⽤者⼀次予防

(教育・啓発)

⼆次予防(相談⽀援・アウトリー

チ)

三次予防(リハビリテーション、

社会復帰⽀援)

若年薬物乱⽤者のステージ

精神科医療(解毒治療)⾃助グループ

学校教育、地域啓発活動

家族相談

若年層向けプログラムの需要

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8

若年薬物乱⽤者の特徴• 薬物乱⽤歴は⽐較的短い• 他の問題⾏動が併存する

– 外的暴⼒性(いじめ加害、暴⼒、万引き、器物損壊)

– 内的暴⼒性(過⾷・拒⾷・⾃傷⾏為など)

• 「依存」ではなく「乱⽤」がメイン• 中毒性精神病症状(幻覚、妄想、離脱症状)を伴わら

ない場合も• 本⼈の治療動機は必ずしも⾼くない(本⼈は困

っていない。困っているのは親。)

• 家族と同居、⽣活保護を受給していない• 在学・在職中

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9

若年薬物乱⽤者に対する予防介⼊• ⼀次予防が中⼼

– (乱⽤防⽌教育、啓発キャンペーン)• 再乱⽤に対する予防は⼗分とは⾔えない

– ⼆次予防(早期発⾒・介⼊)三次予防(リハビリ)

1.退学・停学処分では、薬物問題は解決しない2.治療動機の低さは、介⼊しない理由にはならない3.若年薬物乱⽤者に特化した受け⽫はほとんどない

なぜ、若年者向けのプログラムが必要?

①薬物関連問題の重症度の違い• ⾃分の問題に対する過⼩視を助⻑する可能性を避けるため

(松本ら、2009)• 若者に効果的な治療とするために、⼤⼈⽤にデザインされ

たプログラムを修正する必要があった (NIDA,2009)

②若年者に特有のニーズや特徴がある(NIDA,2009)• 仲間からの影響を受けやすい時期であること• 併存症(摂⾷障害、性感染症など)への配慮• 動機付け⾯接法や家族介⼊が有効(Cochrane

review,2009)

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10

薬物依存症に対する認知⾏動療法とは?

薬物依存中毒性精神病

薬物依存に基づく乱⽤者

乱⽤だけの乱⽤者

⾮乱⽤者⼀次予防

(教育・啓発)

⼆次予防(相談⽀援・アウトリー

チ)

三次予防(リハビリテーション、

社会復帰⽀援)

CTBの主たるターゲット層

精神科医療(解毒治療)⾃助グループ

学校教育、地域啓発活動

家族相談

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薬物依存症に対する認知⾏動療法プログラムとは?

引き⾦を特定するところから始めます引き⾦ 考え 再使⽤渇望渇望

再使⽤の引き⾦は(場所・状況・⼈・感情)は⼈によって異なります。

引き⾦ 考え 再使⽤

かつぼう

渇望

渇望 渇望渇望 渇望

使いたい、使いたい今すぐ使いたいどうにかして

使いたい

引き金に刺激され・・・

薬物のことを考えはじめ・・・

大きくなった渇望につぶされ・・・

渇望が膨らみ

外的引き⾦薬物使⽤とつながりのある⼈・物・場所・時間・状況など内的引き⾦薬物使⽤とつながりのある気持ちや感情H.A.L.T.!(⽴ち⽌まれ!)

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薬物依存症に対する認知⾏動療法プログラムとは?

初⼼者に優しいプログラムですワークブックとマニュアル

薬物依存症に対する認知⾏動療法プログラムとは?

参加型のグループセッションですワークセッション/ロールプレイ

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薬物依存症に対する認知⾏動療法プログラムとは?

Welcomeの姿勢/わかりやすい報酬随伴性マネジメント

薬物依存症に対する認知⾏動療法プログラムとは?

参加者の動機を⾼めます(動機づけ⾯接法)

プログラムへの定着がカギ平成23年度厚生労働科学研究費補助金(障害者対策総合研究事業)「薬物依存症に対する認知行動療法プログラムの開発と効果に関する研究(研究代表者:松本俊彦)報告書より

1クール平均参加率:62%(薬物依存症外来)

小林桜児:専門外来における認知行動療法プログラムの開発と効果に関する研究.pp.11-pp.19,2012.

外来治療継続率:79%(薬物依存症外来)

成瀬暢也:入院治療と連動した認知行動療法プログラムの開発と効果に関する研究.pp.21-pp.32,2012.

1クール修了率:61 %(精神保健福祉センター)

近藤あゆみ:精神保健福祉センターにおける認知行動療法プログラムの開発と効果に関する研究.pp.33-pp.42,2012.

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薬物依存症に対する認知⾏動療法プログラムとは?

職員の態度がポジティブに変化します

薬物使⽤障害患者とかかわる際の態度を測定する尺度(DDPPQ:Drug and drug probems perception questionaaire)

プログラム実施群は、⾮実施群に⽐べ半年後のDDPPQスコアが有意に⾼い。高野歩:認知行動療法プログラムを実施する医療従事者における効果の検証~患者や仕事に対する態度の変化の検討.平成23年度厚生労働科学研究費補助金(障害者対策総合研究事業)「薬物依存症に対する認知行動療法プログラムの開発と効果に関する研究(研究代表者:松本俊彦)」平成23年度総括・分担研究報告書. pp.135-pp.147,2012.

⽇本全国に広がりつつあります

精神科医療機関 28箇所保健・行政機関 7箇所民間機関 7箇所KUMARPP

HAMARPP

TAMARPP

TUMARPP

KOMARPPSMARPP

CHIBARPP

T‐DARPP

NARARPP

Serigaya Methamphetamine Relapse Prevention Program (SMARPP)

OPEN

LIFE⽶国マトリックスモデルをベースに国内向けにアレンジ

スライド提供:松本俊彦

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OPENの開発と運⽤状況

都⽴中部総合精神保健福祉センター(世⽥⾕区、H22.3〜) 常勤職員6名(福祉職3、保健師1、

⼼理1、医師1) ⾮常勤職員2名(⼼理2) 回復者スタッフ2名(ダルク職員)

京都府薬務課・京都ダルク(京都市、H23.8〜)

OPEN若年薬物使⽤者を主たるターゲット層とした認知⾏動療法

全16回セッション(90分/回)

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1.各地で採⽤された経緯• 東京都中部総合精神保健福祉センター

若年者を対象とした薬物再乱⽤防⽌(⼆次予防)プログラムの必要性を感じていた。

既にCBTを開始していた都⽴多摩総合精神保健福祉センターを通じて紹介(2009年2⽉)

京都府薬務課 2010年12⽉「薬物乱⽤のない社会づくり きょうとふプラン」(

アクションプラン)を策定。 再乱⽤防⽌対策が⼤きな柱、アクションプランの検討委員であった

京都ダルクの助⾔もあり、OPENが採⽤に。京都府薬務課からの意⾒ 薬物再乱⽤防⽌対策については、国の「第三次薬物乱⽤防⽌五か年戦略」等に

おいてもその必要性が位置づけられているものの、担当する部署や国、都道府県等の役割分担が明確でないため、具体的な事業の実施に当たって、所要の財源措置がされにくい状況

そのため、今後、国、都道府県等の役割分担を明確にするなど、事業化に向けてのバックアップ体制(例:厚⽣労働省通知など)が必要

薬物依存中毒性精神病

薬物依存に基づく乱⽤者

乱⽤だけの乱⽤者

⾮乱⽤者⼀次予防

(教育・啓発)

⼆次予防(相談⽀援・アウトリー

チ)

三次予防(リハビリテーション、

社会復帰⽀援)

ターゲット層の共有

精神科医療(解毒治療)⾃助グループ

学校教育、地域啓発活動

家族相談

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開発上の課題1. 担当スタッフの課題年齢層が⾼い

若者のこころを掴みきれない薬物依存に対する価値観

再乱⽤者に対するネガティブな感情(法的対応)本⼈向け⽀援に対する苦⼿意識

ファシリテーションに対する不安2. 実施施設の課題他施設との差別化に対するこだわり

オリジナルのワークブックを作りたい他のセンターと同じことをしても予算が確保できないのでは?という不安

課題に対する解決策解決策1:回復者を⾒せる 回復のモデルとの触れ合い 薬物乱⽤者に対する苦⼿意識の克服 当事者の視点・価値観に対する理解 スタッフの平均年齢を下げる

解決策2:セッションに参加する 先輩プログラムへの⾒学 CBT研修でのデモセッション

「あれでいいのか・・・失敗してもいいんだ。」「テキストを読み合わせることで、それなりにできそうだ」「⼀⼈でやろうとせず、周りがサポートすればいいのか」「むしろ、参加者から学ぶことが多いんだな」

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2.ワークブックの作成 SMARRP、SMARRP-jrなどをもとに、オリ

ジナルのワークブックを作成(中部センター職員、回復者スタッフ、研究者) メール、電話でのやり取りに加え、⽉1〜2回の

ペースで作成会議(2009年秋〜2010年2⽉) 必要に応じて外部有識者(研究者、医療関係者、

⼤学⽣)からも助⾔を得た

オリジナルワークブックを作ることのメリット・デメリットメリット1. オーナーシップ2. 制作⾃体がトレーニング3. ターゲット層を意識した内容にカスタマイズできる4. 他施設との差別化5. ファシリテーションがやりやすい6. プログラム開始後の改訂が⽐較的容易

デメリット1. ヒト・モノ・カネがかかる(特に印刷製本費)2. 各⼈の理解度やこだわりをすり合わせることが困難

コンセプト>⽬次(14章)>各章のねらい>各章のテキスト

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ワークブックのこだわり(デザイン)①「薬物」や「ドラッグ」を表紙に⼊れない②写真・イラストが多い雑誌スタイル③薬物乱⽤者と周囲から悟られない

ワークブックのこだわり(総論)

1. 読み⼿を依存者と決め付けない表現2. 若年層の⽣活に合わせた表現(ex.引き⾦)3. DVD、画像、コラムの活⽤4. ルビはあえて付けない(優しい表現で⾔い

換える)5. 薬物依存以外の健康問題にも触れる

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ワークブックのこだわり(各論)

1. 対⼈コミュニケーション(ロールプレイ)2. アルコールの扱い(引き⾦、カレンダーの

評価項⽬、胎児性アルコール症、ロールプレイ)

3. 隣接領域の健康問題(⾷⽣活・ダイエット、摂⾷障害、セックスと性感染症、⽉経前症候群、愚痴と相談)

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ワークブックのこだわり(各論)

1. 対⼈コミュニケーション(ロールプレイ)2. アルコールの扱い(引き⾦、カレンダーの

評価項⽬、胎児性アルコール症、ロールプレイ)

3. 隣接領域の健康問題(⾷⽣活・ダイエット、摂⾷障害、セックスと性感染症、⽉経前症候群、愚痴と相談)

出典:Rawson, R.A.; Obert, J.L.; McCann, M.J.; and Mann, A.J. Cocaine treatment outcome: Cocaine use following inpatient, outpatient, and no treatment. (1986). In Harris, L.S., ed. Problems of Drug Dependence: Proceedings of the 47th Annual Scientific Meeting, the Committee on Problems of Drug Dependence. NIDA Research Monograph Series, Number 67. DHHS Pub. No. (ADM) 86-1448. Rockville, MD: National Institute on Drug Abuse, 271-277.

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アルコール使⽤あり

アルコール使⽤あり

アルコール使⽤あり

アルコール使⽤あり

P=0.058 *P=0.013 P=0.432 *P=0.007

p value for fisher’s exact test

セックス時に飲酒経験のあるMSMは対照群に⽐べセックス時の覚せい剤使⽤率が有意に⾼く、被挿⼊時のコンドーム常⽤率が有意に低い

嶋根卓也、日高庸晴:MSMにおけるアルコール影響下でのセックスと覚せい剤使用との関連-インターネット調査の結果より-.第26回日本エイズ学会学術集会、横浜、2012.11.24-26.

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ワークブックのこだわり(各論)

1. 対⼈コミュニケーション(ロールプレイ)2. アルコールの扱い(引き⾦、カレンダーの

評価項⽬、胎児性アルコール症、ロールプレイ)

3. 隣接領域の健康問題(⾷⽣活・ダイエット、摂⾷障害、性感染症、⽉経前症候群、愚痴と相談)

Donʼt you? 〜私もだよ〜(ダルク⼥性ハウス)

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参加者プロフィール(n=27) ⼥性40.7% 平均年齢27.1歳(19-36

歳)最終学歴:⾼校卒業以上

70.4%住まい:親と同居40.7%,

⼀⼈暮らし33.3%就労者:63.0%⽣活保護受給者:29.6%精神科治療歴あり:70.4%⾃助グループ歴あり:

51.9%逮捕歴あり:55.6%

OPENにつながった経路

主たる使⽤薬物

嶋根卓也:若年薬物乱用者向け認知行動療法プログラムの開発と効果に関する研究.平成23年度厚生労働科学研究費補助金(障害者対策総合研究事業)「薬物依存症に対する認知行動療法プログラムの開発と効果に関する研究(研究代表者:松本俊彦)」平成23年度総括・分担研究報告書.pp.121-pp.134,2012.

3.対象者のリクルート

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リクルート• 短期的リクルート:

–ある程度の強制⼒を持った参加者–グループ安定化(開始時)–職員の⾃信向上

• ⻑期的リクルート:–種まき⽬的–フライヤー配布–ホームページ–シンポジウム(デモ・セッションを含む)

OPEN ドラッグ 検索

ホームページ

フライヤー

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4.若年薬物乱⽤者との接触から感じること(特に成⼈薬物依存者との違い)

• 中部総合精神保健福祉センター– 友⼈に誘われ、「ちょっとだけ」「⾃分は⼤丈夫」「⼀度だけでやめられる

」など、安易な動機で乱⽤を開始している。– ⾃分が薬物をやり、⽌めたいのだけれど誰にも相談が出来ず、幻覚などの症

状がでて親が気付き受診。そこで医師の勧めでOPENに参加し始めるというケースが複数⾒られる。

– 乱⽤・依存の程度は様々だが、他のメンバーの話に共感する部分は多いようである。OPENの場を薬物のことを正直に話せる場として肯定的に受け⽌めている。

• 京都府薬務課– 使⽤薬物が多様な傾向にあり、ガス、脱法ハーブ、向精神薬、OTC薬等、取

り締まりにくく安価なものへシフトしていく傾向を感じる。– 失敗体験も少なく、また、⾝近な⼈間関係も残されており、他者の助けの必

要性を受け⼊れにくい。しかし、⽐較的スムーズに⼀定期間の断薬が成功する傾向にある。

5.プログラムの維持

①共感と受け⽌め②ともに考えていく姿勢③Welcomeの態度④⼩さな変化に気づく⑤褒めて伸ばす⑥わかりすい評価

参加者の脱落をいかに防ぐか?

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6.修了証をもらった後の状況(リピーターはいるか、リピーターにはどう対応するのか)

• 中部総合精神保健福祉センター– 原則、2クールまでの参加はOKということになっている。それまでの

間にNAやダルク等につなげるように働きかけている。– 修了者全員を対象に3ヶ⽉に1度のOB会には誘っている。

• 京都府薬務課– 失敗体験も少ないが成功体験も少ないようで修了書をもらうこと⾃体

にテレやうれしさを感じているようであった。– その⼀⽅で、修了書を⼿にすることで「終えた感」があるようで、そ

の後、断薬継続への取り組みが先細り感を感じる。– 初回受講者を優先した上で、1講座の運営に⽀障のない⼈数(15名

程度)の中で、再受講者の受⼊を可能とした。

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28

7.今後、更に広げていくためのアイディア

• 中部総合精神保健福祉センター– 医療機関との丁寧な連携– 厚⽣労働省⿇薬取締部との連携(初犯者)

• 京都府薬務課– 薬物依存者を多様な分野からケアするためのネットワー

クが必要– 例えば、京都府や京都市、京都府警、薬剤師会、医師会

、薬局や製薬会社等の⺠間企業、弁護⼠会、NPO法⼈京都ダルク等が参加するプロジェクトチームを構築し、ワンストップでサポートする体制づくりが今後必要と考えられる。

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Makoto Sugahara M.D., ph.D.東京都立中部総合精神保健福祉センター

東京都立中部総合精神保健福祉センター生活訓練科長 菅原 誠

(精神保健指定医、精神保健判定医、産業医、労働衛生コンサルタント)

許可無く内容の複写・転載を禁じます申し訳ありませんが、講演内容のうち、このレジュメにないスライドについては資料配布できません

Makoto Sugahara M.D., ph.D.東京都立中部総合精神保健福祉センター

地域での若年者に対する薬物乱用の予防

薬物乱用を開始させないための一次予防が中心(教育機関における薬物乱用防止教育、地域での啓発キャンペーン)

再乱用防止を目的とする薬物乱用者に対する介入は十分とは言えない現状(二次、三次予防)

1.地域における受け皿の不足薬物依存治療を行う精神科医療施設や民間リハビリテーション施設(DARCなど)でも若年者向けのプログラムは存在しない状況

2.介入の困難性薬物乱用歴の比較的短い若年者は治療動機が概して低い逮捕や退学を恐れて、自発的な相談に結びつきにくい

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Makoto Sugahara M.D., ph.D.東京都立中部総合精神保健福祉センター

なぜ若者向けの再乱用防止プログラムが必要か?

①薬物依存症の重症度の違い

「自分の問題に対する過小視を助長する可能性を避けるため」(松本ら、2009)

重篤な依存者と一緒にプログラムを参加することで、「自分はあそこまでひどくない」と自分の問題と向き合いにくくなる可能性

「若者に効果的な治療とするために、大人用にデザインされたプログラムを修正する必要があった 」(NIDA,2009)

②若年者に特有のニーズや特徴がある(NIDA,2009)

家族を積極的に巻き込んでいくことが有効

仲間からの影響を受けやすい時期であること

他の精神障害との併存症(ADHD、摂食障害など)が多い

動機付け面接法や家族介入が有効(Cochrane review,2009)

Makoto Sugahara M.D., ph.D.

都立中部総合精神保健福祉センター「OPEN」事始め

平成17年3月「東京都薬物の乱用防止に関する条例」制定⇒脱法ドラッグ規制

平成19年3月「東京都における薬物乱用対策の推進について」諮問 相談、治療、社会復帰支援の3PT立ち上げ

当センターも参画

青少年を中心とした啓発の充実

薬物乱用者に対して周囲からの働きかけによるエンパワメント強化を狙う既存の精神保健福祉センターでの支援の限界 アルコール・薬物依存特定相談、事例検討

家族講座

本人向け治療的心理教育プログラムの開発の必要性 NCNPとの共働による既存の認知行動療法プログラム(SMARPP)を元に

した若年向け新プログラム(OPEN)の作成

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31

Makoto Sugahara M.D., ph.D.東京都立中部総合精神保健福祉センター

OPENプログラムの施行について

ワークブックを主軸とする認知行動療法

1クール14回16セッション(1セッション約90分)

チェックイン→ワークブック→チェックアウト

対象:東京都内に在住・在勤・在学している方

医療機関受診、未受診は問わない

対象年齢:概ね30歳代まで(30歳以上は応相談)

対象依存薬物:違法薬物、脱法ドラッグ、処方薬、市販薬

平成22年3月より中部センターにてOPEN

Makoto Sugahara M.D., ph.D.東京都立中部総合精神保健福祉センター

「OPEN」プログラムの特徴

1.初期薬物乱用者を意識した内容 参加者の治療動機は必ずしも高くないことを想定して、スタッフとの信頼関係を築くことに重点をおく 対象者の価値観や考えを即座に否定することは避ける(『薬物乱用は今すぐやめるべきだ』、など)

「薬物について何でも話せる場」、「自分のことを素直に話せる安全な場」という雰囲気づくり ただし、再乱用を肯定する場や、薬物の情報を交換する場ではない

対象者の価値観や考えを受け止め、共感し、信頼関係を構築していく中で行動変容への動機を高めていく 薬物乱用を確認するための尿検査は実施しない(捜査機関ではない)

「薬物依存者」と断定するような表現は避け、「(依存症であってもなくても)薬物を使わない生活を送るために」というスタンスをとる 「自分は依存症ではない」と自己の問題を過小視する傾向をさらに強める恐れもあるため

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Makoto Sugahara M.D., ph.D.東京都立中部総合精神保健福祉センター

「OPEN」プログラムの特徴2.若者の生活や価値観を尊重する

若者の生活や価値観を汲み入れた表現やデザイン

例えば、引き金の特定をする時には若者の生活に密接な項目をリストに挙げるなど

20代のコアメンバーがデザインやレイアウトを担当

図や写真を数多く:難解なイメージを避けるため

映像資料(DVDなど)の活用:対象者を飽きさせない努力

3.先行研究のエビデンスを盛り込む

生活リズム・食行動・飲酒・反社会行動と薬物乱用との関連性が報告されている

薬物を使っていた頃の生活を見直し(チェックリスト)、薬物乱用との結びつきを理解させる:薬物を使わない新しい生活スケジュールを組み立てる上での動機付けとなることを期待

Makoto Sugahara M.D., ph.D.東京都立中部総合精神保健福祉センター

「OPEN」プログラムの特徴

4.コミュニケーションスキル 仲間からの影響を大きく受ける年齢層 薬物を介さないコミュニケーションのトレーニング 自分の感情を相手に適応的に伝えるトレーニング 書き込み式のワークではなく、ロールプレイを用いた学習

仲間からの薬物の誘いを断るトレーニング

5.実効的な健康教育 若年薬物乱用者に関連の深い健康問題

性感染症や摂食障害

単なる疾病教育ではなく、健康教育・啓発プログラムの専門家の協力も得ながら予防に結びつけるような実効的な健康教育を目指す

6.自助グループなど支援機関との連携 当センターは通過型の利用機関であるため、専門支援機関とつながり今後のサポートを受けることが修了条件

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Makoto Sugahara M.D., ph.D.東京都立中部総合精神保健福祉センター

【ワークブックの概要】

POINT、STUDY、TRYの3要素から構成

POINT:セッションにおける学習目標

STUDY:文章や図による解説

TRY:書き込みや発表などのワーク

第 1回 言いたいことを言ってみよう

第 2回 あなたの引き金と渇望

第 3回 依存症ってどんな病気

第 4回 回復へのステップ

第 5回 あなたのまわりにある引き金への対処

第 6回 あなたの中にある引き金への対処

第 7回 大切な人を失わないために

第 8回 ライフスタイルと薬物乱用

第 9回 新しい生活のスケジュールを立ててみよう

第10回 自分と大切な人の健康のために

第11回 再発のメカニズムと予防

第12回 コミュニケーションスキルアップ 1

第13回 コミュニケーションスキルアップ 2

第14回 明日への扉を今開こう!

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OPENの利用開始まで 利用申し込み

本人から直接の申し込みは多くなく、医療機関などからの紹介が多い。 家族が電話相談や薬物特定相談に来所してそこから本人利用につながるケースもある。 本人の意思を確認するために必ず対面でインテーク面接を実施する。

インテーク面接の視点 様子(落ち着いて会話可能か、グループワークに耐えられるか) 利用動機(再乱用しない動機も含めて聴取) 過去の薬物乱用歴 現在の生活状況(同居家族の有無、就労の有無、1日のタイムスケジュールなど) 家族関係(キーパーソンは誰か) 生活史(生育環境を把握するため) 受診歴 病的体験の有無

利用開始にならない事例 知的にグループワーク(認知行動療法)についていくのが難しいと考えられる事例(療育手帳

所持者など) 現在薬物乱用中で断薬の意志が乏しい

反社会性が強い、衝動性が強い、操作性が極めて高いなど、グループワークになじまないパーソナリティーあるいは病状があると考えられる場合

幻覚妄想が強く、行動化するなど、治療が優先されると考えられる状態の場合

利用可否の判断 職員の面接を元にアディクションスタッフで合議をして決定 通常申し込みから1-2週間で利用開始となる

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OPEN各セッションのポイント1 第1回 言いたいことを言ってみよう

薬物乱用、の言葉の意味を理解してもらう。大麻のハームリダクションについての知識を提供。薬物を使うメリットを自覚することで、そのメリットを薬物以外の方法で手に入れる必要があることを伝える。

第2回 あなたの引き金と渇望 引き金と渇望の関係を自分のことに当てはめて理解してもらう。渇望に対する対処

法(引き金に近づかない以外の思考ストップ法)を他の人の意見も参考にして考えてもらう。

第3回 依存症ってどんな病気? 依存症という病気の特徴や、治療とともに病気と上手く付き合っていくことが必要で

あることを理解してもらう。TRYでは、使っていた時期には当てはまるが、今はなくなったもの(自分自身の良い変化)に着目してもらう。

第4回 回復へのステップ メンバーやリカバリースタッフにステップごとに自身の状況や乗り越え方を話してもら

う。自身の現在のステップを自覚し、過ごし方のヒントを見つけてもらう。セッション前後では、自分がどのステップかという自覚が違う場合もある。

第5回 あなたのまわりにある引き金 薬物使用につながるきっかけとなる状況、場所、人を「外的な引き金」として扱い、自

分の外的な引き金を知る。自分のアンカーを見つける。

アルコールが引き金になりやすいことを説明するも、自分はそうではない(アルコールは飲むが薬は使わない等)という意見が出ることが多い。依存しやすい傾向を持っている人にとっては、アルコールは危険であること、お酒を飲むことについて引き金等突っ込んで聞いてみるもなかなか納得しないこともある。

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OPEN各セッションのポイント2 第6回 あなたの中にある引き金

内的引き金を振り返ることで自身の気持ちに目を向けることに気づいてもらう。グチを言うのが苦手、慣れていない、言ってはいけない(悪口になる)、経験がない人も多い。信頼できる人にグチを言うことの大切さを伝えている。

第7回 大切な人を失わないために -信頼と正直さ- 薬物を使ったことにより、嘘をついて信頼を失った経験を振り返る。薬をやめるために

は自分の気持ちに正直で嘘をつかないことが大切。正直に話せる人や場所を持つことの大切さを伝える。

第8回 ライフスタイルと薬物乱用 薬を使っていた時期とやめてから、OPENに参加してからのライフスタイルの変化につ

いて振り返る。良くなった点、がんばっている点に目を向ける。

第9回 新しい生活のスケジュールを立ててみよう スケジュール表に記入して薬を使っていた時期と今の生活を比べる。スケジュールを

書き込むことで、引き金への対処など薬を遠ざける生活を具体的に組み立ててみる。自分でスケジュール表を用意して書き込む(日記もかねて)メンバーもいる。

第10-①回 自分と大切な人の健康のために 薬物が脳やこころに与える影響 大麻の動物実験のDVDを見た後で医師から脳の変化、精神症状について説明。メン

バーは診察場面では聞けない疑問や不安を気軽に医師に質問している。

第10-②回 自分と大切な人の健康のために 薬物が食生活や性の健康に与える影響 セッションを男女別々に実施。薬物を使っていた時期と今の食生活を比較。性に関して

は自分も相手も大切に(避妊、NOと断る等)。セッション終了後にHIV検査に行ったメンバーもいる。

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OPEN各セッションのポイント3

第11回 再発のメカニズムと予防 依存症的行動や依存症的思考を振り返り、これらが再発のサインになることを知る。

再発のサインに気づいた時の対処法、再発した時の対処法(正直になれる人や場所)を用意しておく。

第12回 コミュニケーションスキルアップ(1) コミュニケーション上手になろう 自分のコミュニケーションのタイプを知り、アサーティブな言い方で自分の気持ちを伝え

る練習してみる。自分の気持ちがわかるためには正直な気持ちを伝える、受け止めてもらうことが必要。自分にとって安心して話せる人、場面を持っておく。

第13回 コミュニケーションスキルアップ(2) 「NO」と言ってみよう 自分や大切な人の安全を守るために「NO」を言うことが必要な時もあることを理解して

もらう。「NO」を言えなくて困った経験も出してもらう。「NO」を伝えるテクニックをあげてもらい、「NO」を言う練習してみる。

第14回 明日への扉を今開こう! これまでのセッションのまとめ(復習)として、「引き金とアンカーのリスト」の作成、再発

した時に正直に話すロールプレイを練習。今後の地域の相談機関を紹介。

OB会 (メンテナンスプログラム) 平成24年度は年4回実施。現役メンバーとゲームなどを通して交流してもらいつつ現

在の状況、悩みなどについて相談できる場を提供している。

Makoto Sugahara M.D., ph.D.

OPENを実施してみて(スタッフの感想) 友人に誘われて「ちょっとだけ」「自分は大丈夫」「一度だけでやめられる」など、気楽に乱用

に入っている。

「大麻や脱法ドラッグはナチュラルだから体に良い」、「処方薬や市販薬は認可された薬だから多めに飲んでも安全」と信じて疑わないケースが未だ少なくなく、学校での的を絞った教育や普及啓発、OPENのようなプログラムの普及が必要

自分が薬物をやり、止めたいのだけれど誰にも相談が出来ず、幻覚などの症状がでて親が気付き受診。そこでDrに勧められて参加し始める、というケースが多く医療機関への周知と連携が重要。

依存症が深まっていないためか認知の困難さがほとんどなく、学んだことが素直に入っていると思われ、当初のプログラムへの取り組みは良好だが、中盤になると「自分で何とかできる」という判断のもとで中断しやすい。

OPENでの発言やスタッフとの個別面接の中で、生活全般に関する話題が出ており、社会的な経験の不足、知らない、身についていないことが多い印象を受ける。

パーソナリティ障害を合併している事例も少なくないため、スタッフ、あるいはメンバー間の対人関係 を理由とした中断が起きやすい。

スタッフとの個別の関わりの様子からはこれまで大人に話を聞いてもらったり受容してもらったりする経験が少なかったことがうかがわれるメンバーも少なくない。

学生の場合には復学、社会人の場合には就労など、はっきりとした目標が必要で、そのために別の支援が必要な人も少なくない。

パートナーや子どもがいる場合には、本人のみではなく家族に対しての支援が必要なケースもあるため他の機関との連携が必要となってくる。

女性では、DVや性的暴力の被害体験を持っている、不安、やせたい、寂しさ、気持ちの落込み(うつ)等の感情を抱えているメンバーが少なからずいる。

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違法薬物乱用 OPEN利用事例139歳 自営業男性 22歳から大麻・覚醒剤乱用開始 保釈中利用開始 精神科受診歴無し

<経路>

弁護士のすすめ

<成育歴・生活状況>

<薬物使用の経過>

<OPEN利用後の経過>

X年7月よりOPEN利用開始。仕事のために欠席する以外はコンスタントに出席。

利用開始時点では保釈中であったが、その後の判決で執行猶予判決となった。

X+1年3月月全セッション終了し修了証授与。薬物を使っていた頃と現在の違いを客観的に内省できるようになった。

センター職員と退所後も相談関係あり。OB会へも参加。就労を継続しており、再乱用の報告は無い。

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Makoto Sugahara M.D., ph.D.

違法薬物乱用 OPEN利用事例229歳 会社員男性 25歳から覚醒剤乱用 執行猶予中 精神科受診歴なし

<経路>

父より当センター薬物専門相談窓口に相談があった 。

<成育歴・生活状況>

<薬物使用の経過>

乱用薬物は覚醒剤のみ。精神科受診歴はなし。

<OPEN利用後の経過>

X年7月よりOPEN利用開始。コンスタントに出席。参加途中で父親と同じ職場でアルバイト開始した。

家族は薬物問題家族教育プログラムに参加、本人はOPENに参加。

X+1年3月月全セッション終了し修了証授与。アルバイトから正社員に登用され就労継続中。

センター職員と退所後も相談関係あり。OB会へも参加。

東京都立中部総合精神保健福祉センター

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Makoto Sugahara M.D., ph.D.

処方薬・市販薬乱用 OPEN利用事例326歳 無職女性 23-4歳から処方薬、市販薬乱用開始 精神科医療機関受診中

<経路>

主治医のすすめ

<成育歴・生活状況>

<薬物使用の経過>

処方薬(マイスリー、エリミン、ハルシオン、ベゲタミンA)・市販薬(ブロン、新トニン、パブロン等)の乱用のみでその他の薬物の乱用歴はない。

<OPEN利用後の経過>

X年8月よりOPEN利用開始。情緒不安定で他のメンバーやスタッフと小さなトラブルが発生したりこともあったが、X+1年2月全セッション終了した。2回目の参加中に自殺企図(OD、リストカット等)や短期の入院などの経過を経て、X+2年1月グループ参加終了となった。

NAに一時期参加したが定着せず中断している。 センター職員と退所後も相談関係あり。再乱用の報告は無い。

東京都立中部総合精神保健福祉センター

Makoto Sugahara M.D., ph.D.

脱法ハーブ乱用 OPEN利用事例419歳大学生 男性 高校3年時友人に勧められ乱用開始 精神科医療機関受診中

<経路>

母親と主治医

<成育歴・生活状況>

<薬物使用の経過>

脱法ハーブ、大麻(?)の乱用歴あり。

<OPEN利用後の経過>

退院後のX年6/1~OPENに休むことなく毎回出席。皆勤でX年9月末に修了証を渡すが、その後も継続して出席している。

X+1年4月の復学をめざして、今後アルバイトを始める予定。

センター職員と退所後も相談関係あり。再乱用の報告は無い。

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Makoto Sugahara M.D., ph.D.

脱法ハーブ乱用 OPEN利用事例520歳大学生 男性 大学入学後友人から勧められ乱用開始 精神科医療機関受診中

<経路>

精神科クリニック主治医の勧め

<生育歴・生活状況等>

<薬物使用の経過>

脱法ハーブ、大麻(海外旅行中に乱用)の乱用歴あり。

<OPEN利用後の経過>

X年8月~X+1年3月 OPENに参加。この間、1~3月に留学、3月末に修了証を渡す。

X+1年4月~大学に復学。OB会に参加あり。

センター職員と退所後も相談関係あり。再乱用の報告は無い。NAに行ったが定着はできていない。他の相談機関にはまだつながっていない。

東京都立中部総合精神保健福祉センター

Makoto Sugahara M.D., ph.D.

OPEN利用者のご紹介をお待ちしております<主な利用対象者>

30歳代くらいまでの都民で、薬物再乱用を防止したい意志を持っている方

脱法ハーブや処方薬、市販薬の乱用者などの方

違法薬物に関しては、犯歴無し、児童自立支援施設や少年院退院者、保釈中、執行猶予中あるいは終了後、短期受刑保護観察中あるいは終了後の方などを主な対象者として考えています(申し込み前に個別にご相談ください)

医療観察法通院処遇中の方の利用も可能です

知的水準が低い方、反社会性が強い方の参加はグループの性格上難しいと考えています(申し込み前に個別にご相談ください)

当センターでは尿検査は行っていません

<家族からの相談も受けております>

家族向けの講座もあります

<OPENに関するお問い合わせ・お申し込み>

03-3302-7430(相談係直通)

<交通>

京王線八幡山駅下車徒歩1分(新宿より快速で12分・各停で17分)

東京都立中部総合精神保健福祉センター

⇦府中 甲州街道(国道20号線)▲練馬

環状8号線

▼蒲田

八幡山駅

東京都立松沢病院

東京都立中部総合精神保健福祉センター

京王線 ⇨新宿

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薬物使用者を抱えた家族へのサポート

アルコール薬物問題全国市民協会

やっかれんプログラムコーディネイター

近藤京子

目次

1.家族援助の必要性

2.家族の状況(2009年全国薬物依存症者家族連合会調査)

3.家族のためのプログラム3-1 大切な人の薬物問題で悩む家族による家族のためのワークブック3-2 薬物依存症者をもつ家族を対象とした心理教育

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1. 家族援助の必要性

家族は薬物問題に関する知識を持てば、有効な介入者・回復の伴走者になる

家族は身内の薬物問題によって傷つき動揺し、対応する力を失っている

家族をサポートすることは、薬物使用者の回復をサポートすることにもなる

薬物使用者は、治療につながるなどしていったん断薬をした後も、再使用や治療プログラムからの離脱、逮捕など複雑なプロセスを歩む。薬物以外に抱え持つ問題も違い、社会復帰を含め、長期的・多角的な視野に立った家族サポートが必要。

●起きていることを認められない

●いつの間にかやめられなくなる

●問題から目をそらす

●問題があることを認めざるを得ない

「まさか! どうして!?」「何かの間違いだ」

「あの友だちが悪い」「仕事に行っているから

大丈夫かも」

薬物使用者本人 VS 薬物使用の家族

「いつだってやめられる」「みんなやっている」

「俺の勝手だ」「毎日やってるわけじゃない」

「こんな子に育てた覚えはない」「あなたがしっかりして

くれないから」「お前の子育てが悪い」

「うるさい!」「お前らが悪いんだ」

「お前にわかってたまるか!」

薬物問題は家族内の愛情とコミュニケーションを壊して力を奪う

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●続けるために駆け引きをする

●薬なしでは何もできなくなる

●なだめたり脅したりしてコントロールする

●うまくいかず殻に閉じこもっていく

「これで最後にしてちょうだい」「薬さえやめれば買ってあげる」

「お母さんのためにやめて」「警察に来てもらうぞ」

「今度こそやめる」「車を買ってくれるならやめる」

「そんなに言うならやめる」「一人暮らしをさせてくれ」

「私が不甲斐ないからこうなった」「もうどうしていいのかわからない」

「もうどうにもならない」「この子(人)を殺して私も死のう」

「やめてどうなる」「どうせやめられない」「おれはダメな奴だ」

「死にたい」

●薬物に対し無力を認める ●相手をコントロールすることはできないと認める

「やめたくてもやめられなかったんだ」「これは病気だったんだ」「薬の力には勝てない」

「自分の力だけではどうにもならない」

「何とかなるかもしれない」「私にできることがある」

「やめられるかもしれない」「新しい生き方を見つけた」

希望

しかし、これはスタートラインにすぎない。

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42

2. 家族の状況(2009年全国薬物依存症者調査)

家族の9割以上が親の立場。本人の年齢は20歳~39歳が9割を占める(20代は38%)

家族会参加半年未満では、本人の所在地に同居・刑事施設が多いが、半年~2年ではダルクが増え、5年以上ではダルク以外に別所帯や刑事施設が増える

本人のダルク入寮経験は「ある」が約7割。平均利用回数は2.2回(最多20回)

2009年度~心とからだのヘルスケアに関する市民活動支援ファイザープログラム助成

を受け、5つの家族会(仙台家族会、アディクション家族会とちぎ、茨城ダルク家族会、ドムクス・しずおか、愛知家族会)の191名の家族に対して実施。(実施期間:平成21年3月~5月/有効回答187名)

本人のプロフィール

男性80%/女性20%ダルク利用経験あり67.9%ダルク利用経験なし32.1%(平均利用回数2.2回)

●年齢

●現在の所在地

●主要使用薬物

有機溶剤12%

大麻11%

覚醒剤49%

ガス4%

市販薬5%

処方薬14%

アルコール3%

その他2%

15~19歳

20~24歳

25~29歳

30~34歳

35~39歳

40~44歳

45~49歳

50~54歳

1

28

44

55

44

10

5

1

同居

別世帯

一人暮らし

精神病院

行刑施設

ダルク

ダルクスタッフ

不明

その他

7.90%

12.10%

14.70%

3.70%

12%

34%

2%

10.50%

3.20%

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43

家族のプロフィール

男性28%/女性72%親の立場96.8%配偶者の参加あり52.2%家族内で薬物の相談ができる87.3%

●年齢

●現在のつらさ

1~3ヶ月10%

4~5ヶ月6%

半年~1年9%

1年~1年半7%

1年半~2年8%

2年~3年14%

3年~5年19%

5~7年13%

7~10年10%

10年以上4%

25~29歳

45~49歳

50~54歳

55~59歳

60~64歳

65~69歳

70~74歳

1

7

29

48

64

26

10

1ヶ月~半年 半年~2年 2年~5年 5年以上

28%

10%

0%6%

33%

21%

3%

14%

23%

26%

16%

16%

13%

29%

47%

30%

3%

14%

34% 34%

つらくない あまりつらくない ふつう

少しつらい つらい

家族会参加期間別に見た本人の所在地

0%

20%

40%同居中

別世帯

1人暮らし

ダルク

精神病院

拘置所・刑務所

不明

その他

●1ヵ月~半年

0%

50%

100%同居中

別世帯

1人暮らし

ダルク

精神病院

拘置所・刑務所

不明

その他

●半年~2年

0%

50%同居中

別世帯

1人暮らし

ダルク

精神病院

拘置所・刑務所

不明

その他

●2年~5年

0%

20%

40%同居中

別世帯

1人暮らし

ダルク

精神病院

拘置所・刑務所

不明

その他

●5年以上

1ヵ月~半年 半年~2年 2年~5年 5年以上

23%

2%8%

4%

7%

9%

10% 20%

7%

19%

17% 12%

20%

51%45%

25%

13%

2% 2%

21%

20%

9%7%

18%

10% 8% 11%19%

不明その他拘置所・刑務所精神病院ダルク1人暮らし別世帯同居中

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44

家族会参加期間別に見た、本人の状況と希望の度合い

●家族から見た本人の状況 ●回復への希望

1ヵ月~半年

半年~2年

2年~5年

5年以上

34%

39%

51%

59%

52%

44%

47%

31%

14%

17%

2%

10%

希望を持っている

少し希望を持っている

あまり希望を持てない

希望を持てない

1ヵ月~半年

半年~2年

2年~5年

5年以上

7%

2%

3%

0

53%

21%

5%

24%

20%

42%

44%

24%

3%

12%

27%

31%

17%

16%

17%

12%

7%

4%

9%

否認 止まっていない

ダルク 社会参加

分からない その他

家族の役に立った相談機関・人・グループなど

*30項目から複数回答可

①精神科の病院 39.8%②ダルク 36.1%③警察 32%④家族 30.4%⑤精神保健福祉センター 27.7%⑥保健所 26.7%

*その他司法書士 8.4%保護観察所 7.3%

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45

家族会に求めること(家族会に参加する理由)

*44項目から複数回答可

①自分が回復・成長したい 70.2%②薬物依存という病気についての知識を知りたい 63.4%③家族会に参加すると元気がもらえるから 52.4%

④ダルクやNAメンバーの体験談やメッセージをききたい 51.3%⑤他の家族の体験談を聞きたい 48.2%⑥12ステップのプログラムを勉強したい 45.5%⑦本人との新しい関係の構築 43.5%⑧誰にも話せないことを話せる 42.4%

3. 家族のためのプログラム-1

⼤切な⼈の薬物問題で悩む家族による家族のためのプログラム(薬物依存症者家族連合会作成)

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46

2008年度

スペイン治療共同体プロジェクト・オンブレ調査・セラピスト研修

家族会実態調査

2009年度

プログラムの試行プログラム検討会

2010年度

家族プログラムの作成

*2011年、ファシリテーター講座実施

プログラム作成の流れ

2008~2010年度~心とからだのヘルスケアに関する市民活動支援ファイザープログラム助成(家族の多様なニーズに対応するプログラムを作成することを目的に実施)

A4版120ページ

B5版20ページ

*運用者のための冊子付

スペインの家族プログラム

・家族の治療目標・思春期プログラム

日本の家族プログラム

・家族の経験・家族会の経験

自助・成長

プログラムの特徴

共通の重点項目だった自助と成長を軸に、PH基本プログラム

の家族に対する治療目標と、思春期プログラム(親用)の内容を参考に、日本の家族や家族会の経験を合わせて構成

*主役は家族。経験を力に変えていく=自助

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47

●主語は「私たち」

●随所に家族の体験談

●家族がファシリテーターとなり分かち合いをする

テキストの読み合わせ→ワークと分かち合い

*ミーティング形式・ロールプレイ・ポストイットを使った分かち合いと発表)

●分かち合うことで家族会にある経験を引き出す

●家族会の一部の時間を使う補助教材の位置づけ

(40分~1時間)

●参加者のニーズに合わせ、興味のあるテーマを選

択できる

プログラムの内容

• 本人の問題や人生の肩代わりをやめる

• 家族会で気持ちを楽にする

• 自分の生活を取り戻す

• 過去からの課題や家族内の新たな課題に取り組む

• 本人との適切な距離を学ぶ

• 自分の人生や生活を発展させる

• それまで培ったものを維持しつつ、その時々の問題に向き合い、学んできたことや支援関係を活用しながら、自分なりに解決を見出していく

薬物問題について学ぶ

⾃分を再構築する

家族関係を再構築する

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48

基礎編イネイブリングや治療の勧め方など基本的な知識を得る

対応編本人の人格を否定せず薬物に対しNOという姿勢を示すための知識を得る

自分と向き合う編自分の変化をチェックし薬物問題の影響や家族関係を振り返る

自分を取り戻す編自分の価値観やコミュニケーションを振り返り、何をどう変えていくか考える

新しい関係編自分の後戻りを防ぎ、本人の回復を見守りつつ、問題に対応していく方法を知る

家族の回復編 セルフケアと自助

ワークブック実践編の構成

*ワーク数=35

ワークブック実践状況

●愛知家族会2012年 5月 テーマ:家族が変わる意味2012年 6月 テーマ:イネイブリング2012年 7月 テーマ:境界2012年 8月 テーマ:コミュニケーション2012年10月 テーマ:本人の回復プロセスを見守る2012年11月 テーマ:自律・自立をサポートする

●茨城家族会(家族会参加3年以上のグループ・1クール6回)

●びわこ家族会(2012年4月) テーマ:薬物に対しNOという姿勢を示す私たちが後戻りするとき本人の回復を見守る

●新潟家族会(2012年9月) テーマ:私たちはなぜイネイブリングをしてしまうのか●千葉菜の花家族会(2012年11月) テーマ:私たちが後戻りするとき

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プログラムの反応:愛知家族会アンケート(22名)

●プログラムの難易度 ●このプログラムについて *複数回答可

わかりにくい 0%大変わかりにくい 0%

また使いたい 100%使いたくない 0%

*一つ一つのケースに具体性があり大変わかりやすい*他の人の話を聴け、一緒に勉強する感じで楽しい*話を進めやすい*心の整理ができる*自分を見つめ直すことができる*いろいろと参考になる・勉強になる*同居なので自分が後戻りしないようにしたい、など

3. 家族のためのプログラム-2

依存症者をもつ家族を対象にした⼼理教育プログラム薬物依存症者の家族がもつ多様なニーズを満たすための家族教育プログラムの開発に関する研究平成22年度厚生労働科学研究費補助金(医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究事業)「薬物乱用・依存の実態把握と再乱用防止のための社会資源等の現状と課題に関する研究」(主任研究者 和田清)分担研究

*新潟医療福祉大学 社会福祉学部 社会福祉学科 近藤あゆみ氏より許可を得て報告

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本研究の背景及びこれまでの進捗状況

•これまでの家族心理教育は、「本人の問題を本人に返すことを徹底することが回復への決意を促すので、家族は本人の問題から手を引く必要がある」といった内容が中心。

→多様な家族のニーズに十分対応しきれていない。

→家族の多様なニーズに対応できる包括的な家族心理教育プロ

グラムの開発を目指すことを目的として本研究を実施。

•平成22年度→プログラム全体の中心となる基本的な事柄をまとめた4種類の教材を作成し、関係機関職員を対象に研修会を実施。

家族心理教育プログラムの目標と学習内容

脳内の依存形成のメカニズム

平成22年度研究成果物

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家族に必要な学習内容を検討するための参考文献

• Matrix modeにおける、家族教育プログラム。

• CRAFT (Community Reinforcement and Family Training)。

• The Concerned Other: How to Change Problematic Drug and Alcohol Users Through Their Family Members: a Complete Manual

• AFRG (Addiction and Family Research Group)から発

行されている依存症者とそのパートナーのための集団心理教育プログラム。

• 薬物問題を扱う相談員のためのマニュアル(厚生労働省)。

家族心理教育プログラムの学習内容(学習内容1~19)

• 脳内の依存形成のメカニズム

• アルコールが回復に与える影響

• 自助グループと12ステップ

• 薬物の作用と心身への悪影響

• 依存症からの回復の段階

• 再発に備える

• 依存症の影響による家族の変化

• 信頼関係を再び築くために

• 依存症者と上手く生活するために

• コミュニケーション・スキルの改善

• 問題行動に対し効果的に働きかける

• 暴力を避け安全に働きかける

• 家族の生活を豊かにする

• 効果的な治療の勧め方

• 薬物関連の用語を理解する

• 依存症者と家族との関係性

• 依存症者の心理

• 依存症治療の段階

• 薬物関連の法律

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家族心理教育プログラムの構成

全て3つの目標のいずれかに焦点を当てた内容。

実施者向けの解説(ファシリテーター用マニュアル)と、家族向けの配布資料(家族向け教材)と2冊1組。

1冊の分量は、90~120分の家族教室等で実施することを想定して作成。

内容には、それぞれの回の目標と、目標を達成するための課題が含まれており、必要な知識が身につくだけでなく、参加者が得た知識を実際の生活の中で活かせるよう工夫。

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●多摩総合精神保健福祉センター●東京都中部精神保健福祉センター●兵庫県精神保健福祉センター●静岡市精神保健福祉センター●岡山県精神科医療センター●医療法人せのがわ●他、4家族会で実施

*なお、4種類の教材は、家族心理教育プログラムの中心に位

置する基本的な内容であったが、今後も、補足的な内容の教材を作成し、多様な家族のニーズに応えることができる包括的なプログラムの開発を目指す予定。

プログラム実施状況

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家族の支援介入を行う際の7つの基本姿勢

今後の課題

●薬物使用者は、治療につながるなどしていったん断薬をした後も、再使用や治療プログラムからの離脱、逮捕・受刑など複雑なプロセスを歩むことが少なくない。また、薬物の問題以外に併せ持つ課題が違い、社会復帰の形もさまざまである。今回、報告した2つのワークブックは集団を対象にしたものであり、個々の微妙なケースには対応しにくい。本人の問題や進捗状況を考慮せず、家族のみにプログラムを提供するには限界がある。プログラムの普及や関係機関からのつなぎが求められると同時に、特に若年者とその家族に対しては、本人と家族、両方の状況を把握したサポート体制が求められる。

●若年の薬物使用者を持つ親は、薬物問題への介入だけでなく、本人の社会参加や自立を支援する必要に迫られる場合も多い。その際、親としてのスタンスを示し、意思疎通のできるコミュニケーションをとっていくために、親業などを取り入れたプログラムまたは家族サポートが必要になってくるだろう。