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The Mipro’s Guide to Starting a Business in Japan ~Preparation for Start-up~ 外国人のための 起業ガイドブック (起業準備編)

外国人のための 起業ガイドブック(起業準備編)外国人の方が、日本で起業する場合に確認しておきたい在留資格と会社設立について、ど

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The Mipro’s Guide to Starting a Business in Japan~Preparation for Start-up~

The Mipro’s Guide to Starting a Business in Japan~Preparation for Start-up~

外国人のための起業ガイドブック(起業準備編)

一般財団法人 対日貿易投資交流促進協会(ミプロ)

外国人のための起業ガイドブック(起業準備編)

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このガイドブックの使い方

ミプロの『外国人のための起業ガイドブック』は、外国人の方が事業主として日本でビジネスをする場合に必要な事柄についてテーマ別に解説するものです。「起業準備編」では、外国人の方が日本で事業を開始するために、最初に何をすればいいのか、どんな準備が必要かご説明します。

外国人の方が、日本で起業する場合に確認しておきたい在留資格と会社設立について、どのような手続きや手順で行っていけばいいのか、一目でわかるように、「起業準備の流れ」および「起業のタイムテーブル」を載せました。こちらを最初に確認し、全体のイメージをつかんでください。そこに出てくる言葉の解説は、次ページ以降の各項目で確認してください。

なお、この「起業準備編」を読み、更に詳しい内容が知りたいときは、『外国人のための起業ガイドブック』各シリーズ、「会社設立編」、「税務解説編」、「公的保険・雇用管理編」、「在留資格編」をご参考ください。

ミプロでは、この他にも輸入ビジネス等、起業に役立つ多様な資料を作成しています。また、外国人の皆様のために、会社設立・起業・在留資格などのご相談窓口も設けています。是非ご活用ください。

2014年12月 一般財団法人 対日貿易投資交流促進協会

ミプロ対日投資アドバイザー 行政書士 高橋秀次

2003 年 12 月に行政書士事務所を開業。起業支援・許認可手続き・外国人在留許可申請を専門とする。ミプロにおいて、無料面談相談の相談員及び外国人のための起業セミナーの講師を務める。

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目 次

起業準備の流れ___________________________ 03

起業のタイムテーブル_ ______________________ 04

_Ⅰ._ 起業スケジュールの作成_____________________ 06_Ⅱ._ 在留資格____________________________ 08Ⅲ._ 事業内容____________________________ 10_Ⅳ._ 事業を誰と始めるか?______________________ 11_Ⅴ._ 収支計画____________________________ 12_Ⅵ._ 資金計画____________________________ 14_Ⅶ._ 個人か法人か?_________________________ 15_Ⅷ._ 公的支援機関の活用_______________________ 18_Ⅸ._ 専門家の活用__________________________ 20_Ⅹ._ 官公庁への申請・届出等について_________________ 22

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起業準備の流れ

《在留資格の検討》

 �現在の在留資格で起業可能か否か確認し、在留資格の変更が必要な場合、入国管理局への手続きの準備をしましょう。

《会社設立》

 �個人事業と会社設立どちらで事業を始めるか、また、法人を設立する場合、合同会社か、株式会社どちらを設立するかなどを検討しましょう。

《官公庁への手続き》

 �法人設立手続き、入国管理局への在留資格に関する申請、事業に必要な許認可の申請などの準備をしましょう。

《事業計画》

 �事業内容、創業者、収支計画、資金計画などを検討しましょう。

起 業 手 続 き 開 始

《公的支援機関の活用》

 公的機関が提供している起業相談サービスや補助金・助成金について調べ、必要があれば活用しましょう。

《専門家の活用》

 起業に際して弁護士、税理士、行政書士などのサポートを受けるべきか検討してみましょう。

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起  業  準  備  開  始

起業スケジュールの作成(「Ⅰ.起業スケジュール作成のチェックポイント」参照)

適宜見直し

《在留資格》 現在の在留資格を確認(「Ⅱ.在留資格のチェックポイント」参照)

適切な在留資格の選定在留資格に関する申請の準備

起 業 手 続 き 開 始

入国管理局に事業の実施に必要な在留資格を得るための手続きを行う

事業の実施に必要な在留資格の許可を得る

《事業計画》 事業内容の検討(「Ⅲ.事業内容のチェックポイント」参照)

事業内容の決定

創業者・協力者の検討(「Ⅳ.事業を誰と始めるか?のチェックポイント」参照)

創業者・協力者の決定

収支計画の検討(「Ⅴ.収支計画のチェックポイント」参照)

収支計画の策定

資金計画の検討(「Ⅵ.資金計画のチェックポイント」参照)

資金計画の決定 資本金の準備 融資の申込

《会社設立》

個人事業か、会社を設立するかの検討(「Ⅶ.個人か法人か?のチェックポイント」参照)

会社の概要を決定会社設立に必要な書類の準備

会社設立登記申請 会社設立完了

《官公庁への手続き》 許認可事項の確認(「Ⅲ.事業内容のチェックポイント」参照)

事業に必要な許認可の申請税務署への届出社会保険関係手続き

許認可の取得

《公的支援機関の活用》支援機関に起業について相談(「Ⅷ.公的支援機関の活用のチェックポイント」参照)

《専門家の活用》専門家に起業について相談(「Ⅸ.専門家の活用のチェックポイント」参照)

会社設立手続きを専門家に依頼

入国管理局他、官公庁への手続きを専門家に依頼

起業のタイムテーブル

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起  業  準  備  開  始

起業スケジュールの作成(「Ⅰ.起業スケジュール作成のチェックポイント」参照)

適宜見直し

《在留資格》 現在の在留資格を確認(「Ⅱ.在留資格のチェックポイント」参照)

適切な在留資格の選定在留資格に関する申請の準備

起 業 手 続 き 開 始

入国管理局に事業の実施に必要な在留資格を得るための手続きを行う

事業の実施に必要な在留資格の許可を得る

《事業計画》 事業内容の検討(「Ⅲ.事業内容のチェックポイント」参照)

事業内容の決定

創業者・協力者の検討(「Ⅳ.事業を誰と始めるか?のチェックポイント」参照)

創業者・協力者の決定

収支計画の検討(「Ⅴ.収支計画のチェックポイント」参照)

収支計画の策定

資金計画の検討(「Ⅵ.資金計画のチェックポイント」参照)

資金計画の決定 資本金の準備 融資の申込

《会社設立》

個人事業か、会社を設立するかの検討(「Ⅶ.個人か法人か?のチェックポイント」参照)

会社の概要を決定会社設立に必要な書類の準備

会社設立登記申請 会社設立完了

《官公庁への手続き》 許認可事項の確認(「Ⅲ.事業内容のチェックポイント」参照)

事業に必要な許認可の申請税務署への届出社会保険関係手続き

許認可の取得

《公的支援機関の活用》支援機関に起業について相談(「Ⅷ.公的支援機関の活用のチェックポイント」参照)

《専門家の活用》専門家に起業について相談(「Ⅸ.専門家の活用のチェックポイント」参照)

会社設立手続きを専門家に依頼

入国管理局他、官公庁への手続きを専門家に依頼

事  業  ス  タ  ー  ト

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Ⅰ.起業スケジュールの作成 起業するために最初に何をしたらいいのでしょうか? �いつごろから事業を開始したいのですか? そのためにいつ何を準備したらいいのでしょう。まずは大よそのスケジュールを作成してみましょう。�

起業スケジュール作成のチェックポイント

1.在留資格の許可を得るための期間 在留資格認定証明書交付に要する期間・在留資格変更の許可を得るための期間を見積

もってみましょう。

この期間には、上記の申請の準備期間および入国管理局での審査に要する期間を含めます。

 現在、なにも在留資格を持っていない場合と、すでに就労の在留資格を持っている場合

とでは、入国管理局での審査期間も違います。

 つまり、「在留資格認定証明書交付申請」を行う場合は、「在留資格変更許可申請」を行

う場合と比較して、より多くの審査期間が必要になると考えましょう。

 「在留資格認定証明書交付申請」の場合、2か月以上の審査期間がかかる場合があります。

2.事業内容の検討および準備のための期間 事業内容を決定し、収支計画や資金計画を作成して、それらを準備するための期間を見

積もりましょう。

3.人的準備のための期間 創業者や協力者を検討し、決定するための期間を見積もりましょう。

 事業内容により、1人で開始できる事業なのか、または、最初から誰かの協力が必要な

のか検討していきます。

 特に、現在、中長期の在留資格を有してない場合は、住民登録ができません。そのため、

法人を設立する場合は、日本に住所を有する者の協力が必要になりますので、その協力者

を決めるなどの時間も考慮しましょう。

 複数の人で起業することを計画している場合は、人選に要する時間やその人達に参画し

てもらうのにどのくらいの期間が必要かも見積もりましょう。

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4.会社設立のための期間 事業は「個人」で始める方法と、「法人」を設立して始める方法の2種類があります。

会社を設立して事業を始める場合は、会社設立のための期間を見積もりましょう。

 会社の骨格を決める時間、書類作成のための時間および法務局での審査の時間を考慮す

ると、1か月くらいかかると考えておきましょう。

現在何らかの在留資格で滞在している人が、その在留資格によって許可された活動範囲以外の活動を行っているケースが見受けられます。

ケースⅰ;�「人文知識・国際業務」の資格で在留し、企業に勤務していたが、自分で貿易業務(国際業務)を始めることを計画し、勤務していた企業はすでに退職している。まだ「人文知識・国際業務」の在留期間は残っているので、起業の準備をしている。

ケースⅱ;�「留学」の資格で在留しているが、すでに卒業している。または、中途退学している。在留期間はまだ数ヶ月あるので起業の準備をしたい。

上記2つのようなケースの場合、いずれもすでに「資格外活動」を行っているとして、違法な在留であるとみなされるおそれがありますので注意しましょう。なお、許可を受けずに3か月以上資格外活動を行った場合は、現に有する在留資格が取り消される場合があります。

参 考

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Ⅱ.在留資格 外国人の方は、日本での活動に適した在留資格を有している必要があります。 現在の在留資格で起業可能か否か確認しましょう。�

在留資格のチェックポイント

 外国人の方は、日本に在留する目的に応じた在留資格を得る必要があるので、起業するに

あたっては、現在の在留資格の種別・期限について確認し、起業に支障のない在留資格か否

か確認をした上で、必要な場合、手続きをしなければなりません。

1.起業に際して在留資格に関する手続きが必要ない4 4 4 4

場合 「永住者」、「定住者」、「日本人の配偶者等」、「永住者の配偶者等」などの場合は、在留

資格を変更する必要がありません。従って、在留資格に関する手続きに要する期間を考慮

することなく、起業スケジュールを作成することができます。

2.起業に際して在留資格に関する手続きが必要4 4

な場合 在留資格が「人文知識・国際業務」、「技術」「留学」、「短期滞在」などの場合は、その

ままで起業すると資格外活動となり、違法な状態となりますので、在留資格に関する手続

きが必要です。

 その場合、検討する点として以下のようなことが挙げられます。

①どのような在留資格に変更するのか?

事業活動に適した在留資格は何か

②その在留資格の許可を得る条件はどのようなものか?

出資者は誰か、出資額はいくらか、外国の関係会社は存在するか

現在検討している起業計画は、その在留資格の許可条件に適合しているか

③的確な在留資格の許可を得るために必要な時間はどのくらいか?

現在の在留資格の期限、在留資格の変更または在留資格認定証明書の交付に要す

る期間を把握しているか

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3.在留資格の変更等の例(1)「留学」の場合は「資格外活動の許可」を取得

留意事項:卒業(「留学」の在留期限)の際に事業をどのようにするか

事業を継続する場合に、「投資・経営」に変更するか

他の適切な在留資格はあるか

(2)「人文知識・国際業務」「技術」から「投資・経営」に変更

留意事項:起業計画は「投資・経営」の許可条件を満たしているか

・投資額

・事業所の確保 等

(3)「短期滞在」から「投資・経営」に変更

留意事項:起業計画は「投資・経営」の許可条件を満たしているか

日本における協力者はいるか

在留資格認定証明書取得のタイミングと「短期滞在」の期限

4.不法滞在にならないように注意する 日本では、原則として、外国人の方は許可された在留資格の範囲内でしか活動できませ

ん。

 現在の在留資格のままで起業することで、資格外活動になっていたり、現在の在留資格

の期限が経過してしまうことがないように注意しましょう。

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Ⅲ.事業内容 思い描いている事業内容を具体的に整理してみましょう。

事業内容のチェックポイント

1.販売する商品や提供するサービスの内容は何ですか?①販売を計画している商品・サービスを具体的に決定する。

②販売を計画している商品の仕入先を決定する。

③販売を計画している商品・サービスを誰に販売するかを想定する。

2.事業のためにどのような場所や設備が必要ですか?①ネットショップ型か店舗型か決定する。

②商品の在庫の保管場所を確保する。

③商品の発送はどのように行うか決定する。

④店舗の場所を決定する。

⑤店舗の必要面積を割り出す。

⑥�ネットショップの場合、販売用のウェブサイトの作成・管理・運営はどのように行

うかを決定する。

⑦店舗型の場合、どのような設備が必要かリストアップする。

⑧事業の場所、設備、ウェブサイトにかかる経費を把握する。

3.輸入や輸出をするための手続きは理解していますか?①輸送手段をどのようにするか決定する。

②通関手続きの方法について理解する。

③関税について理解する。

④輸出入の際に必要な官公庁の許認可を確認する。

4.許認可が必要な事業ですか? 検討している事業について官公庁の許認可が必要か否か確認しましょう。

【許認可が必要な主な事業】

飲食店、食品の輸入・製造・販売、酒類の輸入・販売、旅行、旅館・ホテル、

化粧品・医薬品の輸入・製造・販売、人材派遣、有料職業紹介、不動産仲介など

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Ⅳ.事業を誰と始めるか? 1人か、複数か、また、誰と始めるかなどについて検討します。

事業を誰と始めるか?のチェックポイント

1.1人で事業を始めますか?複数の人で事業を始めますか? 1人で事業を始めるのは、自分の都合だけで準備を進められて手軽ですが、事業運営の

すべてを1人で行おうとすると、逆に効率的でない場合もあります。

 事業内容にあった人数を検討しましょう。

2.1人で事業を始める場合、日本語や日本の習慣は十分理解できていますか? 日本でのビジネスコミュニケーションの中心はやはり日本語です。特に、個人を対象と

した事業では、英語やその他の言語でのビジネスは難しいのが現状です。

 自分自身が日本語に堪能でないならば、日本語が堪能な協力者を検討しましょう。

 また、生活習慣や商習慣は国により違います。日本の生活習慣や商習慣について知識を

習得しましょう。

3.複数の人で事業を始める場合、誰と始めるか決まっていますか? 事業への協力者について検討します。ポイントは、日本語、日本の習慣、事業に対する

知識や経験、そして、人件費です。

以上の点を考慮しながら、事業について人の面から計画を立てましょう。

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Ⅴ.収支計画 経費、売上、利益を見積もります。�

収支計画のチェックポイント

1.利益の計画 利益と言っても色々な捉え方があります。一番重要なのは、自分自身の生活費を賄うだ

けの利益が出せるかどうかです。

 なお、法人の場合は、自分の給与は経理上経費(損金)として扱われますが、給与を支

払うことができる利益が出せるかと言う点で考えます。

 ここで出された金額を元に、経費や売上計画を検討しましょう。

2.経費の把握(1)商品の仕入れ額について

 商品販売を計画している場合は、販売計画に応じた仕入れをすることになりますが、

商品の仕入れが経費のうちで大きな比重を占めます。また、仕入れ先にもよりますが、

先払いが必要になる場合があるので、資金の準備も事前に考えておく必要があります。

 これから販売しようとしている商品は、いくらで仕入れられるのか、把握しておきま

しょう。

 また、過剰な在庫を抱え込まないように販売計画を立てましょう。

(2)店舗やウェブサイトにかかる経費について

 店舗の賃貸契約時にかかる初期費用や毎月の賃貸料を計算します。

 店舗の内装費、特に、飲食店の場合は、客席や厨房にかなりの費用がかかります。

 また、開店時期を計画する際には、内装工事にもそれなりの時間が必要になりますの

で、どのような店舗にするのか十分に検討する必要があります。

 実店舗で開業する場合でも、ネットショップで事業を行う場合でも、集客活動や宣伝

媒体として、ウェブサイトは重要な役割を担っています。特に、ネットショップで事業

を行うのであれば、ウェブサイトの重要性は更に高まります。

 ドメイン名の取得・管理の費用、ウェブサイトの作成・管理・運営の費用を見積もっ

ておきましょう。

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(3)人件費について

 起業当初に人を雇用しない場合、人件費は必要ありませんが、自分1人だけでは事業

の運営が難しい場合もあります。適切な雇用計画を作成し、人件費も見積もっておきま

す。

 なお、自分自身の給与(生活費)については、人件費として見積もるのではなく、利

益として見積もっておきます。ただし、法人の場合には、その利益(自分の給与)は経

費として経理処理をします。

(4)通信費などの販売管理費について

 商品の仕入れ額や人件費以外にかかる光熱費、電話代、郵送費などの経費を算出しま

す。商品の販売業なのか、翻訳などのサービス業なのかで、経費は大きく異なってくる

と考えられます。

 これらの経費は、事業を始めるまで把握しにくいかもしれませんが、その場合は、普

段の自分自身の生活を振り返って試算してみましょう。

3.売上計画 経費の試算ができたら、目標とする利益を得るためにはいくら売り上げなければならな

いかを逆算することにより、売上計画を作成します。

 例えば、自分の給与を月 20 万円、商品の仕入れ代金以外の経費を月に 30 万円、商品を

1個販売することによる粗利益が1万円とした場合には、粗利益を月に 50 万円出す必要

があり、商品を 50 個販売しなければならないことになります。

 この試算をもとに、売上計画を作成します。この売上計画が実現可能なものなのか、検

討しましょう。

試算イメージ

給与20万円+経費30万円=粗利益1万円×販売数50個

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Ⅵ.資金計画 �事業開始に必要なお金や、「投資・経営」の在留資格の許可を得るために必要な資金を準備します。

資金計画のチェックポイント

1.事業の開始および事業の運営に際し必要な金額の試算 商品の仕入れ、店舗・事務所の設備費、ウェブサイトの作成・管理・運営費、通信費等

の販売管理費、人件費(自分自身の生活費)などを、前項の「Ⅴ.収支計画」を参考にし

て試算します。

2.在留資格「投資・経営」取得に必要な投資額の確保 「投資・経営」の在留資格の許可を得るには、500 万円以上の投資が必要になり、この

投資を行っていることは、申請書の添付書類において証明しなければなりません。

 なお、この証明は、500 万円以上の資本金で法人を設立するケースが多いようです。

3.資金調達先のめど 必要な資金は自己資金で準備可能ですか。家族や友人から資金提供を受ける予定です

か。

 起業に必要な資金の準備について、出資する人およびその時期について計画を立ててみ

ましょう。

4.融資・補助金・助成金の検討 用意した自己資金の他に資金が必要になる場合は、日本政策金融公庫の融資や国・地方

自治体の融資・補助金・助成金の制度が利用できないか、検討してみましょう。

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Ⅶ.個人か法人か? �個人事業と会社のどちらで始めるか、また、会社を設立する場合、合同会社を設立するか、株式会社を設立するか、などを検討します。

個人か法人か?のチェックポイント

1.�はじめようとしている事業は、個人事業と法人とでは、どちらが適していると思いますか?

 そのメリット・デメリットを簡単に比較すると、以下のようになります。

メリット デメリット

個人

・�手続き不要ですぐに事業が始められる(税務関係の届出は必要)

・開業費用が安い・経理事務が簡単

・�法人との取引がしにくい・�取引条件が悪くなる場合がある・�許認可を得られない場合がある・�複数の経営者による共同経営に不向き・�事業承継や事業売却がしにくい

法人

・�事業の利益が大きくなった場合、経営者にも給与を支払うことにより節税効果が期待できる

・�経営者も社会保険に加入可能・�法人との取引がしやすい・�許認可を得るためには、法人であることが条件とされる場合がある

・�法令で会社運営の基本ルールが定められているため、無用な紛争をあらかじめ防止できる

・�事業承継や事業売却が可能

・�法人設立手続きが必要・�役員変更など、法人の組織構成に変更があった場合、変更の登記が必要になり、手続きの手間と費用が必要・�法人設立に所定の費用がかかる・�税金の申告など経理処理が複雑

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2.会社を設立する場合、合同会社を設立しますか?株式会社を設立しますか?

合同会社の特徴 株式会社の特徴

設立費用 安い 高い

出資者と経営者 出資者と経営者が同一。 従って、経営に参画してもらうためには、出資してもらう必要がある。 逆に、経営から離脱する場合には、出資を精算する必要がある。

出資者と経営者を別人とすることができる。 従って、出資して経営者になる、出資するが経営者にならない、出資しないが経営者になる、という形態が選択できる。

役員の任期 任期がない 任期がある最大10年の任期を設定できるが、有限であり、任期が満了した場合には、仮に同一人が役員に就任するとしても役員の登記が必要

役員の肩書き 「代表社員」「業務執行社員」「社員」で、「従業員」の呼称と紛らわしい。

「取締役」「代表取締役」が使用できる。

意思決定 出資額によるのではなく、社員(出資者)の全員又は過半数の合意

出資割合による多数決

会社の構造 定款作成の自由度が高い 定款作成の自由度が低い

会社種別の周知度 「合同会社」という会社形態の周知が不十分

歴史も古く、数も多いので、一般的に知られた会社形態

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 合同会社が適していると考えられるケース

  ・スタート時の費用をできるだけ低く抑えたい

  ・1人で出資して経営する、または、固定された少人数で出資と経営を行う

  ・経営の意思決定を出資割合によらず行いたい

  ・出資割合ではない割合で利益の分配を行いたい

  ・会社の種別や役員の肩書きにはこだわらない

 なお、アメリカの大手IT企業が、日本法人として、合同会社を設立している例もあり

ます。

 

 株式会社が適していると考えられるケース

  ・会社の種別や役員の肩書きが一般的に周知されているものを使用したい

  ・起業後も出資者を募るなど、経営に参画してもらう人を追加・変更することが多い

  ・利益分配や経営の意思決定は出資割合に応じて決定したい

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Ⅷ.公的支援機関の活用 �わからないことがあれば、公的機関が提供する起業相談サービスを利用してみましょう。また、公的機関が提供する補助金や助成金について検討してみましょう。

公的支援機関の活用のチェックポイント

 起業の中心は、もちろん、起業する本人です。しかし、自分1人ではなかなか解決できな

いこともあります。そこで活用したいのが、公的な支援機関です。

 主な支援内容は、「相談」や「情報提供」が多いですが、スタートアップ時に、事務所や

店舗などを提供して起業を支援している機関もあります。また、資金提供(融資・補助金等)

をしている公的機関もあります。

 「相談」や「情報提供」は、直接面談によるものと、ウェブサイトによるものとがあります。

(1)相談できる内容

起業準備

在留資格

起業手続き

事業計画

マーケティング・販路開拓

関連事業者の紹介(マッチング支援)

人材の採用

(2)資金提供

① 補助金・助成金

経済産業省系の産業振興のためのもの

厚生労働省系の離職者向け、雇用確保のためのもの

地方自治体による地域振興目的のもの

② 融資

日本政策金融公庫による創業融資

地方自治体による創業融資

(3)事務所の提供

 地方自治体、日本貿易振興機構(ジェトロ)によるインキュベーションオフィスの提供

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(4)起業を支援している主な公的支援機関

公的支援機関名 支援内容 URL

日本商工会議所 起業相談、関連事業者の紹介 他

http://www.jcci.or.jp/http://www.jcci.or.jp/english/ (英語)

東京商工会議所 起業相談、関連事業者の紹介 他

http://www.tokyo-cci.or.jp/http://www.tokyo-cci.or.jp/english/ (英語)

法務省入国管理局インフォメーションセンター

在留資格 http://www.immi-moj.go.jp/info/i_main.htmlhttp://www.immi-moj.go.jp/english/info/index.html(英語)

経済産業省 補助金・助成金 他

http://www.meti.go.jp/ http://www.meti.go.jp/english/index.html (英語)

地方経済産業局 http://www.meti.go.jp/intro/data/a240001j.htmlhttp://www.meti.go.jp/english/network/regionalbureau.html (英語)

厚生労働省 補助金・助成金、求人 他

http://www.mhlw.go.jp/ http://www.mhlw.go.jp/english/ (英語)

全国のハローワーク http://www.mhlw.go.jp/kyujin/hwmap.html

地方自治体の産業振興担当部局

補助金・助成金、融資、事務所提供 他

※各自治体ホームページ参照

中小企業基盤整備機構

起業相談、販路開拓・マーケティング相談 他

http://www.smrj.go.jp/ http://www.smrj.go.jp/english/index.html (英語)

J-NET21 http://j-net21.smrj.go.jp/index.html (J-NET21)http://www.smrj.go.jp/english/index.html (英語)

日本政策金融公庫 起業相談、融資、 他

http://www.jfc.go.jp/ http://www.jfc.go.jp/n/english/index.html (英語)

日本貿易振興機構(ジェトロ)

起業相談、事務所提供 他

http://www.jetro.go.jp/indexj.htmlhttp://www.jetro.go.jp/ (英語)

対日貿易投資交流促進協会(ミプロ)

貿易・起業相談 他

http://www.mipro.or.jp/http://www.mipro.or.jp/english (英語)

日本貿易振興機構(ジェトロ)の対日投資・ビジネスサポートセンター(IBSC)が提供するインキュベーションオフィスなどのインキュベーター(経営アドバイス、企業運営に必要なビジネスサービス等への橋渡しを行う団体・組織)が支援しているオフィスは、一時的な貸与であっても、在留資格「投資・経営」の許可条件の1つである「事業所の確保」の要件に適合しているものとして取り扱われています。

参 考

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Ⅸ.専門家の活用 弁護士、税理士、行政書士などの専門家の活用を検討します。�

専門家の活用のチェックポイント

 公的支援機関の活用とともに検討したいのが、弁護士や行政書士など、専門家の活用につ

いてです。

 起業にあたっては、税務署や社会保険事務所など、いくつかの官公庁への書類の提出が必

要です。会社を設立する場合は、法務局への申請が必要です。事業開始にあたっては、管轄

官庁の許認可や届け出が必要になる場合もあります。外国人の方は、起業に適した在留資格

の許可を受ける必要があります。

 これらの手続きはすべて自分自身で行うこともできますが、慣れない場合は思わぬ時間が

かかったり、手続きに失敗してしまうこともあります。

 そこで、各種手続きについて専門家の活用を検討してみましょう。

 なお、専門家を利用する場合は、手数料が必要になります。

(1)専門家活用のメリットとデメリット

  ① メリット

     専門家の知識と経験を活用できる

     手続きがスムーズに短時間で進む

     書類作成や手続きに要する時間を本業に使うことができる

  ② デメリット

     費用がかかる

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(2)専門家の主な提供業務

主な提供業務 URL

弁護士 法律事務全般、訴訟や示談交渉

日本弁護士連合会http://www.nichibenren.or.jp/http://www.nichibenren.or.jp/en/ (英語)

行政書士 在留資格許可申請、事業に必要な許認可申請、会社設立書類作成

日本行政書士会連合会http://www.gyosei.or.jp/

司法書士 商業登記、不動産登記 日本司法書士会連合会http://www.shiho-shoshi.or.jp/�

税理士 税務申告、会計業務 日本税理士会連合会http://www.nichizeiren.or.jp/ http://www.nichizeiren.or.jp/eng/index.html (英語)

社会保険労務士 年金、健康保険、労働保険、雇用保険

全国社会保険労務士会連合会http://www.shakaihokenroumushi.jp/

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Ⅹ.官公庁への申請・届出等について �起業前、または、起業後に、官公庁に対してどのような手続きが必要か確認しましょう。

官公庁への申請・届出等についてのチェックポイント

 起業前に適格な在留資格の許可を得ます。また、起業後にも行わなければならない手続き

がいくつかあります。

 下の表を参考にして、手続き漏れのないようにしましょう。

提出先 申請・届出等の内容

起業前に必要な手続き

法務省入国管理局 資格外活動の許可申請在留資格変更許可申請在留資格認定証明書交付申請

法務省法務局 法人設立登記申請

起業後に必要な手続き

税務署 開業届(個人)法人設立届(法人)青色申告承認申請 他

都道府県税事務所 事業開始等申告

市区町村役場 事業開始等申告国民健康保険、国民年金関係手続き(個人)

年金事務所 健康保険、厚生年金関係手続き

公共職業安定所(ハローワーク) 雇用保険関係手続き

労働基準監督署 労災保険関係手続き

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貿易・投資に関するお問い合わせ先

ミプロ貿易・投資相談専用窓口

TEL.03-3989-5151 FAX.03-3590-7585相談時間:平日 午前10時30分~午後4時30分

http://www.mipro.or.jp/

※本誌掲載内容の無断転載を禁じます。

 本資料は、最新の情報に基づき、十分な注意を払い正確な情報を提供するよう努めておりますが、実際に手続をされる場合には、管轄官公庁等において必要書類及び必要事項等をご確認いただくか、あるいは行政書士等の専門家にご相談下さい。 また、本資料に掲載された情報または内容を利用することで直接的または間接的に生じた損失に関しては責任を負いかねますのでご了承下さい。

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The Mipro’s Guide to Starting a Business in Japan~Preparation for Start-up~

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外国人のための起業ガイドブック(起業準備編)

一般財団法人 対日貿易投資交流促進協会(ミプロ)

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