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104 JNTO…訪日旅行誘致ハンドブック…2019(アジア 6…市場編) 外国旅行の動向 1 台…湾 1 外国旅行の現状と展望 ①概況 ■交通部観光局の統計によると、台湾からの外国旅行者数 は、2018 年に1,664 万人(前年比 6.3% 増)と過去最高を 記録した。2012 年に年間で初めて 1 千万人を超えてから、 2018 年までの間、外国旅行者数の前年比は、毎年 6% 〜 11% 台の増加で推移した。2018 年の外国旅行者数は、 2012 年比で 62.5% の大幅増となっている。 ■台湾人の外国旅行で特筆すべきことは、高い出国率であ る。2018 年の人口約 2,360 万に対する出国率は 70.5% で あった。外国旅行は台湾人の日常生活に定着している。 ■台湾で外国旅行が盛んな背景としては、領土が狭いことや 国内旅行が割高であることなどが挙げられる。例えば、面 積が九州ほどの台湾では、台北から南部最大都市の高雄 まで、高速鉄道で約 90 分で行ける一方で、台北(桃園空 港)から那覇までの飛行時間も約 90 分であり、旅行先と して外国が非常に身近な存在にある。 ■人々は日常生活におけるストレス発散の機会として癒しを 求めている。 ■近年の LCC 路線の拡大も相まって、外国旅行の需要が更 に拡大している。 ■交通部観光局の統計によると、外国旅行者の男女比は、 2017 年に初めて女性が男性を上回った。これは、商用を 含む全目的の外国旅行者数に基づく統計であり、観光旅 行に限定すると、更に女性の割合が高くなる。2018 年の 訪日旅行者に関しては、女性が 57%、男性が 43% と、お よそ 6:4 の割合になっている。 ■2018 年の外国旅行者の年齢別構成では、30歳代(21.0%) と 40 歳代(20.7%)が全体の 4 割強を占め、次いで 50 歳 代の 18.0%、20 歳代の 14.2%、60 歳〜 65 歳の 8.3%、66 歳以上の 7.6% と続いた。 ■2013 年の出国者総数は 1,105 万人であったが、2018 年は 1,664 万人と 559 万人も増加し、全年代での出国傾向の伸 びがみられる。 ■2017 年の居住地別の外国旅行者の構成比は、台北市を含 む北部地方が 54.0%、台中市を含む中部地方が 20.8%、 高雄市・台南市を含む南部地方が 21.2% となっており、北 部が半数を超えている。なお、東部地方は 2.1%、離島は 0.9% と少ない。 ■近年は、中部最大の都市である台中、および南部最大の 都市である高雄と外国を結ぶ航空路線が、LCC を中心に 拡充されており、出発地域の多様化が進んでいる。 ②旅行先 ■国連世界観光機関(UNWTO)の統計によると、2017 年 の台湾人の旅行先は、中国(大陸)587 万人、日本 456万 人、香港 201 万人(日帰り客を含む)の順に多かった。上 位 3 市場が出国者全体に占める割合は 7 割以上と高いが、 一方で旅行地の多様化も進んでいる。 ■日本は地理的に近く、治安、衛生、交通網などの旅行の 基本条件が優れていることに加え、同じ漢字文化圏である ことから来る安心感、四季の変化に富んだ景色、グルメ、 温泉、ショッピングなどの多彩な観光魅力と、多様な旅行 地の存在により、長年、台湾の外国旅行市場の牽引役を 担っている。更に、近年の LCC による日台航空路線の拡 充も、訪日旅行需要の拡大に大きく寄与している。 ■中国は台湾人の旅行先の首位となっている。2016 年の民 進党政権発足後、訪台中国人の減少に見舞われる中でも、 訪中台湾人は増加している。その背景には、歴史的経緯 から親族訪問の需要が一定数存在することに加え、中国に 進出する台湾企業がおよそ 10 万社、中国に居住している 台湾人がおよそ 100 万人と言われるほど、政治的関係に左 右されない密接な経済的結び付きあることが挙げられる。 ③旅行情報の収集・申込方法 ■2017 年の JNTO 調査によると、訪日旅行情報の収集方法 は、多い順に、①インターネット検索(90.3% の人が利用)、 ② SNS(74.5%の人が利用)、③インターネットブログ(61.1% の人が利用)となっており、オンラインが中心になっている。 ■グーグルによる検索が一般的で、お気に入りのブロガーを 継続的に追跡することもあるが、自分の興味・関心に基づ く検索結果に現れた複数のブログから、総合的に情報を収 集することが多い。 ■生の意見や体験談等を参考にすべく、旅行情報が多数投 稿される掲示板サイトで情報を収集する人も多い。口コミに よる影響が大きい台湾では、口頭による口コミに加え、フェ イスブックや LINE(ライン)等で、友人や親戚など、身近 な人の旅行体験に触れることが、旅行需要喚起の大きな 要因になっている。 ■旅行の手配をする際、オンライン旅行会社を利用する人が 増 加している。 宿 泊 の 手 配 は、Agoda.com( アゴダ )、 Booking.com(ブッキングドットコム)、Hotels.com(ホテルズ ドットコム)といった、世界的なホテル予約サイトの利用が

外国旅行の動向 - Japan National Tourism …第 1章 外国旅行の動向

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  • 104 JNTO…訪日旅行誘致ハンドブック…2019(アジア 6…市場編)

    外国旅行の動向第 1 章台…湾

    1 外国旅行の現状と展望①概況■交通部観光局の統計によると、台湾からの外国旅行者数

    は、2018 年に 1,664 万人(前年比 6.3% 増)と過去最高を記録した。2012 年に年間で初めて 1千万人を超えてから、2018 年までの間、外国旅行者数の前年比は、毎年 6% 〜11% 台の増加で推移した。2018 年の外国旅行者数は、2012 年比で 62.5% の大幅増となっている。

    ■台湾人の外国旅行で特筆すべきことは、高い出国率である。2018 年の人口約 2,360万に対する出国率は 70.5%であった。外国旅行は台湾人の日常生活に定着している。

    ■台湾で外国旅行が盛んな背景としては、領土が狭いことや国内旅行が割高であることなどが挙げられる。例えば、面積が九州ほどの台湾では、台北から南部最大都市の高雄まで、高速鉄道で約 90 分で行ける一方で、台北(桃園空港)から那覇までの飛行時間も約 90 分であり、旅行先として外国が非常に身近な存在にある。

    ■人々は日常生活におけるストレス発散の機会として癒しを求めている。

    ■近年の LCC 路線の拡大も相まって、外国旅行の需要が更に拡大している。

    ■交通部観光局の統計によると、外国旅行者の男女比は、2017 年に初めて女性が男性を上回った。これは、商用を含む全目的の外国旅行者数に基づく統計であり、観光旅行に限定すると、更に女性の割合が高くなる。2018 年の訪日旅行者に関しては、女性が 57%、男性が 43% と、およそ 6:4 の割合になっている。

    ■2018 年の外国旅行者の年齢別構成では、30 歳代(21.0%)と40 歳代(20.7%)が全体の 4 割強を占め、次いで 50 歳代の18.0%、20 歳代の14.2%、60 歳〜 65 歳の 8.3%、66歳以上の 7.6% と続いた。

    ■2013 年の出国者総数は 1,105 万人であったが、2018 年は1,664 万人と559 万人も増加し、全年代での出国傾向の伸びがみられる。

    ■2017 年の居住地別の外国旅行者の構成比は、台北市を含む北部地方が 54.0%、台中市を含む中部地方が 20.8%、高雄市・台南市を含む南部地方が 21.2% となっており、北部が半数を超えている。なお、東部地方は 2.1%、離島は0.9% と少ない。

    ■近年は、中部最大の都市である台中、および南部最大の都市である高雄と外国を結ぶ航空路線が、LCC を中心に

    拡充されており、出発地域の多様化が進んでいる。

    ②旅行先■国連世界観光機関(UNWTO)の統計によると、2017 年

    の台湾人の旅行先は、中国(大陸)587 万人、日本 456 万人、香港 201万人(日帰り客を含む)の順に多かった。上位3市場が出国者全体に占める割合は7割以上と高いが、一方で旅行地の多様化も進んでいる。

    ■日本は地理的に近く、治安、衛生、交通網などの旅行の基本条件が優れていることに加え、同じ漢字文化圏であることから来る安心感、四季の変化に富んだ景色、グルメ、温泉、ショッピングなどの多彩な観光魅力と、多様な旅行地の存在により、長年、台湾の外国旅行市場の牽引役を担っている。更に、近年の LCC による日台航空路線の拡充も、訪日旅行需要の拡大に大きく寄与している。

    ■中国は台湾人の旅行先の首位となっている。2016 年の民進党政権発足後、訪台中国人の減少に見舞われる中でも、訪中台湾人は増加している。その背景には、歴史的経緯から親族訪問の需要が一定数存在することに加え、中国に進出する台湾企業がおよそ10 万社、中国に居住している台湾人がおよそ100 万人と言われるほど、政治的関係に左右されない密接な経済的結び付きあることが挙げられる。

    ③旅行情報の収集・申込方法■2017 年の JNTO 調査によると、訪日旅行情報の収集方法

    は、多い順に、①インターネット検索(90.3% の人が利用)、② SNS(74.5% の人が利用)、③インターネットブログ(61.1%の人が利用)となっており、オンラインが中心になっている。

    ■グーグルによる検索が一般的で、お気に入りのブロガーを継続的に追跡することもあるが、自分の興味・関心に基づく検索結果に現れた複数のブログから、総合的に情報を収集することが多い。

    ■生の意見や体験談等を参考にすべく、旅行情報が多数投稿される掲示板サイトで情報を収集する人も多い。口コミによる影響が大きい台湾では、口頭による口コミに加え、フェイスブックや LINE(ライン)等で、友人や親戚など、身近な人の旅行体験に触れることが、旅行需要喚起の大きな要因になっている。

    ■旅行の手配をする際、オンライン旅行会社を利用する人が増加している。宿泊の手配は、Agoda.com(アゴダ)、Booking.com(ブッキングドットコム)、Hotels.com(ホテルズドットコム)といった、世界的なホテル予約サイトの利用が

  • JNTO…訪日旅行誘致ハンドブック…2019(アジア 6…市場編) 105

    韓国

    中国

    台湾

    香港

    タイ

    シンガポール

    第1章 外国旅行の動向

    一般的である。■ここ数年は、個人旅行化・オンライン化の進展に伴い、

    Klook(クルック)、KKday(ケイケイデイ)などの旅行のオプション商品(観光施設の入場券、交通パス、着地型の1日ツアー等)を主に販売するオンライン旅行会社が成長している。

    2 旅行に対する一般消費者の考え方■20 歳代〜 50 歳代の働き盛りの台湾人にとって、旅行はス

    トレス解消の一つの手段になっており、旅行によって日常の活力を取り戻そうとする傾向が強い。ストレス解消には、旅行中にリラックスすることや、旅行で日常とは異なる文化、風土、景観に触れるなど多種多様な経験をすることを希望する人が多い。

    ■台湾交通局観光部の「台湾人旅遊状況調査」(2017 年)*1

    によると、旅行時に行った活動(大項目、複数回答)では、「自然環境の鑑賞」(73.7%)、「(バーベキュー、歌を歌うなど)その他のレジャー」(55.0%)、「美味しいものを食べる」

    (50.7%)が 50%を超えている。以下、「文化体験」(31.2%)、「スポーツ」(6.0%)、「親戚・友人を訪ねる」(10.8%)、「遊園地」(5.9%)が続いている。

    ■さらに具体的な小項目では、「海岸の地質の景観、湿地の自然、田園風景などの鑑賞」(54.9%)が最も多く、「トレッキング、登山、キャンプ」(38.8%)、「動植物を見て楽しむ」

    (30.1%)、「街歩き・ショッピング」(45.4%)、「土地の特産や特色のある食べ物を楽しむ」(42.8%)、「屋台の食事を楽しむ」(11.6%)、「喫茶、カフェなどを楽しむ」(10.2%)、

    「ドライブ」(9.4%)、「温泉・スパ」(4.9%)などとなっている。

    ■台湾は山地が多くを占め、玉山山脈の主峰玉山は標高3,952mと富士山よりも高い。平野は狭く、島の西部と東部にある平野に人口が密集している。山の標高差が大きく、主に北北東から南南西方向へ山脈が延びている。このような地形のため、高地から海辺までし台湾では自然の生態や景観が多様性に富んでおり、週末や祝祭日に登山やトレッキングを楽しむ人が多い。都市近郊の山ではハイキングコースが整備されており、家族連れ向けの短距離のハイキングから本格的な登山まで楽しめるようになっている。また、健康維持のための身近な屋外スポーツとして、サイクリングも盛んである(第 1 章「外国旅行の動向」3. 一般消費者の志向の変化 ①健康志向も参照)。

    ■ショッピングセンターとしては、「台北 101」、「微風広場」、「誠品生活」、「誠品書店」、「Qスクエア(京站時尚広場)」

    や、日系百貨店の「遠東そごう」、「新光三越百貨」、フランス資本の「台湾家楽福(カルフール)」、林口と台中港の「三井アウトレットモール」などがあり、休日には多くの若者や家族連れでにぎわっている。消費者の購買意欲は旺盛で、ショッピングだけでなく、グルメや娯楽など多角的な経営を展開しているショッピングセンターには多くの顧客が集まり、大型店の出店・改装が続いている。

    *1:… https://admin.taiwan.net.tw/statistics/market.aspx?no=133

    3 一般消費者の志向の変化①温泉の人気■台湾には日本と同様に温泉が多い。日本統治時代からあ

    る温泉や、日本の温泉施設と共同で開発した新しい温泉、さらには、ヨーロッパの温泉療養施設のようにテラピーの要素を多く取り入れて、総合リゾート施設として造られた温泉などがある。

    ■台北北部に所在する北投温泉のあるホテルは、国際的な旅行情報誌『Condé Nast Traveler』 で「アジア癒やしの温泉 28 選」に選ばれてもいる。

    ■台湾には温泉が多いが、人前で裸になる習慣がない。日本式の浴場がある北投温泉を除き、台湾の大多数の温泉は水着入浴するスタイルであり、個室風呂の設備が充実している。

    ■台湾人にとって、日本の温泉は根強い人気がある。訪日旅行中に、日本の習慣に従って大浴場に入ったり、各地の日帰り入浴施設を訪れたりすることもある。

    ■その一方で、訪日旅行中に、習慣上、室内風呂・個室風呂・家族風呂での入浴を希望する人も多い。そのため、日本の温泉旅館に宿泊し、部屋にシャワー室が備わっていない場合、人によっては豪華な大浴場には入りたがらず、シャワーを浴びられなかったという苦情が発生することもある。

    ②健康(スポーツ)志向■近年の台湾人の生活習慣、あるいは余暇の過ごし方とし

    て、スポーツをする人が増えている。台湾教育部体育署の調査によると、何らかのスポーツをする習慣のある人は85.3% で、10 年前より約 10 ポイント増加している。親しんでいるスポーツは、ウォーキング・ジョギングが 53.2%、ランニングが 24.4% となっており、登山・トレッキング 11.6%、サイクリング 11.4% と屋外スポーツが続いている。

    ■台湾では年間 500 回を超えるマラソン大会が開催されており、マラソンシーズンには 3㎞程の短距離からウルトラマラ

  • 106 JNTO…訪日旅行誘致ハンドブック…2019(アジア 6…市場編)

    ソンまで様 な々大会がほぼ毎週のように開かれている。大会への延べ参加者数は150万人〜200万人にも達すると言われている。マラソン愛好者は海外の大会に参加する人も多い。

    ■台湾各地でサイクリング専用道路が整備され、利用者の安全性が確保されている。サイクリングの人気に伴い、駅の階段には専用レールが設置されている所もあり、また、2017年 10 月から台北 MRT(地下鉄)の特定の駅で自転車の持ち込みが可能になるなど、公共交通機関で自転車の利用者に優しい環境が整いつつある。

    ■サイクリングを楽しむ人が増えていることから、台北国際観光博覧会(TTE2018)などでは、日本各地を自転車で回るツアーが販売された。

    ■近年、台湾の旅行会社では、海外のマラソン大会や自転車ロードレースに参加するツアーの造成・販売が目立つようになっており、今後の市場拡大に期待がかかっている。

    ③日本食の人気■台湾の主要都市には、鍋料理、すき焼き、しゃぶしゃぶ、

    とんかつ、焼肉、寿司、ラーメン、たこ焼き、お好み焼きなどの専門店が多数存在する。以前は「日式料理」と言う台湾風にアレンジされた日本料理が中心であったが、日系外食チェーン店の台湾進出が活発に行われ、日本と同じ味を出す店舗が次 と々開店するにつれ、本場の「日本料理」を求めるようになっている。

    ■訪日旅行時や台湾の日常生活で本場の日本料理を楽しむ熱狂ファンの中には、日本の家庭料理の調理法を紹介する動画や、本格的な寿司や懐石料理をプロの職人が教える料理本などに関心を寄せる人がいる。

    ④食の安全への意識の高まり■外食文化が定着している台湾で、食の安全性について急速

    に意識が高まるきっかけとなった事件が以下のとおり起こった。

     ・ 2013 年、行政院衛生署(日本の厚生労働省に相当)の食品薬物管理局の調査で、露店やコンビニエンスストア、スーパーマーケットなどで販売されている麺類、練り物、デンプン系スイーツや点心(タピオカミルクティのタピオカ)など大量の市販食品に、違法な添加物が使用されていたことが発覚した。添加物は無水マレイン酸という本来は食品用包装紙の製造などに使われるものであった。それが食品の生地をモチモチさせる効果があるとして広がっていた。

     ・ 2014 年には、廃油や飼料用脂などを大量に混入させた

    違法な食用ラードが製造され、正常な商品のように偽装販売されていたことが明らかになった。

    ■これらの事件を教訓に、台湾当局は「食品衛生管理法」を改正*2 して、食品の安全性確保への取り締まりを強化した。

    ■こうした食品問題が起きたことを契機に、食の安全性に対する台湾人の意識が高まった。日々の野菜などの買物でも、1つ1つの食品に入念な注意を払ったり、確かな食材を使って自宅で料理を作ったりする台湾人が増えた。そのため、料理レシピのサイトもよく利用されるようになった。

    ■台湾で食の安全意識が高まっている最中、東日本大震災後に、日本の食品の中に原発事故で汚染された物が混じっているのではないかという不安の声が上がり、5 県(福島、茨城、栃木、群馬、千葉)産食品の禁輸措置が取られてきた。2018 年 11月 24 日に、同措置を継続するか否かを問う住民投票が行われたが、賛成多数で禁輸措置が継続されることとなった。台湾の住民投票法の規定から、今後2 年間、同措置が取られることとなる。

    *2:… 内閣府食品安全委員会の食品安全総合情報システム「台湾衛生福利部、食品衛生管理法の改正案が可決された旨公表」http://www.fsc.go.jp/fsci is/foodSafetyMater ial/show/syu04160850492

    ⑤インターネットショッピングとキャッシュレス経済■台湾ではインターネットやスマートフォンの普及に伴い、イン

    ターネットショッピング市場が急速に拡大した。調査会社「ニールセン」(http://www.nielsen.com)が行った「ネットショッピングについての調査」によると、12 歳〜 65 歳の台湾人のうち、37.4% の人が 2017 年前半にネットショッピングをしており、ネットショッピング人口は 676 万人に達した。

    ■同調査で、2017 年にネットショッピングで購入した品目の購入率を見ると、上位 4 品目は前年同様、「服」(34.1%)、

    「旅行/ レジャー/ 交通」(18.7%)、「靴 / かばん / 皮革製品」(16.3%)、「化粧品 / 保健用品 / 香水」(14.1%)となっている。

    ■購入率で第 2 位の「旅行/ レジャー/ 交通」の多くは航空券と考えられる。特に LCC(格安航空会社)の台湾路線が増加し、便数も発着地も格段に増えた 2015 年以降は、選択幅が広がり、航空券のオンライン予約・購入がより促進された。

    ■モバイル決済「台湾ペイ」が台湾の人々にも意識され始めている。2018 年 4 月末時点でのモバイル決済の取引額は281.3 億台湾ドル(約 1,020 億 6,000 万円)と、前年同期に比べて 7 倍の大幅増を記録しており、今後も拡大基調が見込まれる。

  • JNTO…訪日旅行誘致ハンドブック…2019(アジア 6…市場編) 107

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    第1章 外国旅行の動向

    ■台湾の金融情報会社「財金資訊公司」によると、「台湾ペイは今後、マスターカード(MasterCard)やビザ(Visa)など国際ブランドのカードとも提携して利用できるようになる」とのことで、一層の利用促進、利便性の向上が見込まれる。

    4 気候 ・風土が外国旅行に与える影響■台湾の平均気温は年間を通じて東京よりも数度ずつ高く、

    最も寒い時期でも平均最低気温は 12 度ほどである。そのため、一部の高山地帯でしか見られない雪に対する憧れは強く、冬から春先にかけて、雪景色を見に、北海道、立山黒部アルペンルート、韓国などを訪れるツアーが数多く催行される。山形は樹氷が見られることで知られつつある。

    ■雪景色を楽しむだけでなく、スキーを目的としたツアーも増加している。

    ■季節の変化が乏しい台湾では、春の桜、初夏のラベンダーや新緑、秋の紅葉など、四季折々の風景は、日常的に見られるものではない。台湾人にとっては大変魅力的に映り、訪日旅行の目的の一つともなっている。

    ■「日本の花見を体験してみたい」、「紅葉狩りをしたい」など、日本は季節と場所の組み合わせを変えることで何通りものパターンで旅行を楽しむことができるため、日本を何度も訪れるリピーターは多い。そして、リピーターほど滞在日数が長くなり、消費する金額も多くなる傾向にある。

    5 外国旅行の旅行形態別特色①団体旅行■台湾は外国旅行の需要が多いながらも、団体旅行の割合

    が高いのが特徴である。交通部観光局の「国民旅行状況調査報告(2017 年)」によると、台湾人の外国旅行形態は団体旅行が 31% となっており、中高年層で安定した団体旅行需要が見られる。訪日旅行でも、韓国人・香港人は団体旅行比率が 1 割程度であるが、台湾人は 3 割強と高くなっている(観光庁「訪日外国人消費動向調査(2017年)」)。

    ■団体旅行の割合が高い背景としては、友人、家族、親族などのグループで余暇を過ごすことを好む国民性に加え、訪れたい旅行先が多様であり、団体旅行であれば容易に効率良く回れることが挙げられる。観光庁の「宿泊旅行統計調査(2017 年)」によると、台湾人の延べ宿泊者数は、47 都道府県中 21 県で、他の外国人の延べ宿泊者数を上回って首位を占めている。

    ■台湾からの訪日団体旅行は、4 泊 5 日の行程が多くを占めている。いわゆるゴールデンルートを巡るツアーはなく、地域内で完結する行程が主流である。他の市場に比べて日本へのチャーター便の運航も多いため、定期便就航都市以外の空港を利用するツアーが多いのも特徴である。

    ■東北へは以前から、桜や紅葉の時期に多くのチャーター便が運航されているが、最近では冬季の運航も多い。チャーター便を利用したツアーの中には、週 2 便程度のチャーター便を利用した3 泊 4日の行程もある。こうしたツアーでは、定期便利用時には移動時間を要する地域に直行し、短い日程で訪問地を楽しめる点が売りとなっている。

    ■個人旅行化の影響で、航空会社から旅行会社に与えられる座席供給の条件が厳しくなっている路線も多い。

    ■旅行会社では、体験型やテーマ型の旅行商品を開発した結果、単に航空券とホテルと観光を組み合わせた旅行商品ではなく、達人と行くスキーツアー、プロカメラマンの指導が付いた撮影ツアー、熟年登山者と行く登山ツアーといった、付加価値を訴求する旅行商品が増加している。

    ■台湾中南部では、台湾北部と比較して訪日旅行経験者が相対的に少なく、大家族が多いこともあり、団体旅行を選ぶ傾向が強い。台湾中南部からの訪日団体旅行の日程では、より多くの観光地が旅程に組み込まれることが多い。ゆったりとした滞在よりも、多くの観光資源を見ることによって、価格に対する旅程内容の多さを重視する傾向がある。

    ②個人旅行■近年、LCC が、日本をはじめとする近隣諸国と台湾の間

    で就航路線を拡大させている。これに伴い、外国への個人旅行者増、リピーター旅行者増が促されている。

    ■訪日個人旅行者は大都市圏への訪問が主流であるが、LCC 側は、当初予想していたよりも、日本の新規地方路線の個人旅行者率が高いと見ている。LCCの就航路線の拡大は、日本の地方への旅行者増ももたらしている。

    ■LCC は台湾の地方発着便もあり、台湾の地方(台中・高雄などの)から直接、気軽に外国旅行ができるようになっている。

    ■ただし、台湾中南部からの訪日個人旅行者は、台湾北部と比べると少ないので、台湾中南部の個人旅行需要を開拓する場合は、台湾中南部で観光客の誘致を目的としたイベントを開催するのも一案である。

    ■日本の鉄道・バスの交通パスが台湾で幅広く宣伝され、知名度が向上している。訪日個人旅行者は、日本の着地と発地の空港を変えて、その間を交通パスで移動するなど、

  • 108 JNTO…訪日旅行誘致ハンドブック…2019(アジア 6…市場編)

    周遊旅行をする傾向も強まっている。■LCC の深夜発早朝着便を利用して、特定の目的(観劇・ス

    ポーツ観戦・ショッピング等)のために、0 泊 1日・1 泊 2日の弾丸旅行など、多様な旅行スタイルが生み出されている。

    ■訪日台湾人は、台湾の運転免許証に指定機関発行の翻訳を添付すれば、日本での運転が可能となる。しかし、訪日台湾人によるレンタカー利用件数は、訪日香港人と比べると多くない。その理由としては、台湾と日本では通行方向が異なることに加え、交通事故が起きた場合の対応を不安がる台湾人の慎重な性格が影響していると考えられる。

    ■ただし、沖縄や北海道では台湾人のレンタカー利用者が増加している。夏には北海道でキャンピングカーを利用した旅行商品も販売されている。訪日旅行のリピーター化や目的地の多様化が進むにつれ、自由度の高いレンタカー旅行が増えることが予想される。

    ③テーマ旅行(スペシャル・インタレスト・ツアー:SIT)③−1 インセンティブ旅行■外国旅行は企業にとって、社員や取引業者の業績向上を

    奨励するための重要な手段となっている。■インセンティブ旅行を実施している企業は、金融・保険業、

    自動車・靴・化粧品などの製造業、飲食業、情報・通信業、流通業、教育関連産業など多業種にわたっているが、特に保険会社やネットワークビジネス等によるインセンティブ旅行は規模が大きい傾向にあり、最大数千人から5,000人を超える規模になることもある。

    ■インセンティブ旅行は、通常の観光ツアーに比べて規模が大きい場合が多いため、インセンティブ旅行を実施する企業は、旅行会社を対象に、インセンティブ旅行のための競争入札を行っている。価格やツアー行程はもちろんのこと、国際空港での現地要人による出迎えの有無や、旅行先で実施される表彰式の内容、地元の地方政府からの粗品(ギブアウェイ)の提供などに関する提案も、競争入札の重要な要素となっている。また、大手企業や毎年インセンティブ旅行を実施する企業では、社会貢献につながる内容を求める傾向も見られる。

    ■インセンティブ旅行先としては、日本やタイなど一般観光でも人気の旅行先が好まれる傾向にある。日本と競合する旅行地としては、豪州などが挙げられる。インセンティブツアーを催行する旅行会社にとって、最も多い要望は、補助金などの支援内容に関するものである。

    ■訪日インセンティブ旅行で特に人気が高い訪問地は、北海道、東京周辺、大阪周辺である。他市場に比べて、東北

    等の地方を訪問するグループも多く見られる。■訪日インセンティブ旅行の訪問日数は、4 泊 5 日が主流で

    ある。■訪日インセンティブ旅行の実施時期は、旧正月と桜の時期

    に挟まれた 3 月や、夏休み後の 9 月〜11月頃が多い。

    ③− 2 マラソン■台湾では年間 500 以上のマラソン大会が開催されている。

    走ることは道具も必要なく、手軽な運動として一般大衆に浸透している。

    ■教育部体育署(日本のスポーツ庁に相当)の 2017 年調査によると、運動習慣のある市民が行う運動の1 位は「散歩・ウォーキング」で 53%、2 位が「ジョギング」で 24% である。また、台湾のスポーツメディア「運動筆記」のジョギングに関する2017 年調査によると、2017 年のランニング人口の男女比は、「男 60%:女40%」で、前年の「男 68%:女 32%」と比較して、女性の競技人口が増加している。

    ■同じく「運動筆記」によれば、ランニング人口の年代は 36歳〜 45 歳が 41% と最も多い。台湾から外国へマラソン旅行に出掛ける人たちは、マラソン歴のある 40 歳前後の中・高所得者層が多いと言われている。

    ■台湾で販売されているマラソン旅行商品の行き先は、ハワイ、グアム、豪州(ゴールドコースト)、香港等であり、中には、ブータン、ドバイ等の旅行商品も販売されている。

    ■「運動筆記」の調査によると、回答者の16% は 2017 年に外国でのマラソン大会に参加した経験があり、そのうち79% の行き先が日本であった。また、今後マラソン大会に参加したい国も日本がダントツの1 位(87%)であった。

    ■訪日マラソンツアーは、北海道、花巻、東京、長野、富士山、名古屋、佐賀、鹿児島、沖縄など、日本各地で開催されるマラソン大会を日程に入れたものが造成・販売されている。マラソン大会に合わせてチャーター便が運航されることもあり、訪日マラソンツアーの目的地が年々拡大している。

    ■静岡マラソンは 2014 年度に台北マラソンと大会同士の友好協定を締結し、相互に大会参加選手を派遣するだけでなく、大会に合わせた交流訪問団も派遣している。

    ③− 3 サイクリング■台湾では屋外スポーツや健康に対するブームの影響もあ

    り、サイクリングが人気である。教育部体育署の 2017 年調査によると、運動習慣がある市民が行う運動で、「散歩・ウォーキング」、「ジョギング」、「登山」に次ぐ4 位が「自転車」(11%)であった。休日には、台北市の河岸に整備され

  • JNTO…訪日旅行誘致ハンドブック…2019(アジア 6…市場編) 109

    韓国

    中国

    台湾

    香港

    タイ

    シンガポール

    第1章 外国旅行の動向

    たサイクリングロードに家族連れが詰めかける。「Youbike」などのシェアサイクルも市民の足として日常的に利用されている。

    ■台湾から外国へのサイクリング旅行商品は、フランス、ドイツ、タイもあるものの、圧倒的に日本が多い。

    ■訪日サイクリングツアーは、北海道、富士山、長野、飛騨高山、静岡、琵琶湖、京都、しまなみ海道、宮崎、沖縄など、日本各地を対象にしたものが造成・販売されている。

    ■訪日サイクリングツアーの内容は、集団でのロードサイクリングの場合もあれば、「ツール・ド・○○」といった競技大会への参加もある。また、自転車旅行のスペシャリストの同伴を売りにした、「○○さんと行く」と銘打った旅行商品も多い。

    ③− 4 スキー/ 雪遊び■台湾人は雪に対する憧れが強い。全体的にはスキーやス

    ノーボードよりも、スノーモービルや雪原での雪遊びの人気が高い。冬季ツアーは、雪見、雪遊びを謳ったものが多い。

    ■台湾人スキー旅行者の多くは、家族全員での気軽な雪遊びを好み、宿泊施設から直接ゲレンデに行けるスキー場を選択する。疲れたら全員ホテルで休憩を取るというもので、本格的なスキーを楽しむ人口はまだ多くない。

    ■台湾の若者は、費用が安い韓国スキーツアーに参加することが多いが、雪質、スキー場の規模の問題から、必ずしも評判が高いとは言えない。

    ■大手旅行会社は訪日スキーツアーを、中国語のスキーインストラクター付きで販売している。

    ■訪日スキーツアーは、北海道、北関東、新潟、北陸、長野を対象にしたものが造成・販売されている。スキーの目的地は多様化する傾向にある。

    ■体験プログラムが求められる訪日教育旅行でも、冬季の雪遊び・雪体験・スキーなどの要望が増加している。

    ■東北へのチャーター便の運航は、これまで桜と紅葉の時期が中心であったが、スキーや雪遊びを目的とした旅行の人気が高まっており、冬季もチャーター便が続けて運航されることが増えている。

    ■大手旅行会社等に加え、中華民国滑雪滑草協会(中華民国スキー協会)の関連旅行会社も、本格的な訪日スキーツアーを販売している。2019 年 3 月現在、安比高原、雫石、夏油高原、蔵王温泉、磐梯山、勝山の 6 か所を指定スキー場としている。

    ③− 5 キャンプ■台湾ではキャンプの人気が高まっている。中華民国キャン

    プ協会によると、台湾のキャンプ人口は約 200 万人と言われる。

    ■2018 年 1月、交通部観光局が台湾の約 1,800カ所のキャンプ場のうち、合法と認められるのは 5% だけであると発表した。それだけ多くのキャンプ需要があるということを示すニュースとなった。

    ■旅行博でもアウトドア(野外活動)のフェアが併設され、テントやキャンピングカーが展示されることが多い。

    ■週末に台湾でキャンプを楽しむ人々が、旅行先として慣れ親しんでいる日本でもキャンプを楽しむ傾向がみられる。

    ■昨今、訪日旅行商品の中で、キャンピングカーを借りて移動する北海道ツアーや、台湾でも人気のある日本のアウトドアメーカーを訪れるツアーなども販売されている。食事や宿泊が提供される贅沢なグランピングツアーも注目を集めており、台湾人ブロガーによる紹介記事が増加している。

    ③− 6 登山■登山は、台湾で「散歩・ウォーキング」、「ジョギング」に次

    いで人気がある運動である。台湾には標高 3,000メートル以上の山が 200 以上あると言われ、運動習慣のある人々が登山を楽しんでいる。

    ■台湾から外国への登山ツアーの中で、富士登山ツアーは最も人気が高い。時期が 7月〜 8 月に限られるため、旅行博の会場でも夏ならではの旅行商品として販売されている。

    ■富士山以外の訪日登山ツアーは、「日本百名山」と銘打って、北海道の大雪山系、北アルプス、屋久島など、日本各地を対象にしたものが造成・販売されている。

    ③−7 クルーズ旅行■クルーズ旅行は以前から催行されていたが、昨今人気を集

    めている。人気の理由は、旅行代金が安く、宿泊や航空移動を伴わないこと、荷物の制限がないこと、食や娯楽

    (エンターテイメント)などの船内サービスが充実していること、リピーターの特典(価格割引、優先乗船、リピーター専用エリアや専用コンシェルジュなど)があること、リピーターを飽きさせないよう新航路が開発されていることなどが挙げられる。

    ■訪日クルーズ旅行は、基隆発の沖縄(那覇・宮古島・石垣島など)を巡る2 泊〜 3 泊のツアーが最も多い。金曜の深夜に基隆港を出発し、土曜の午前に石垣港に到着、その夜に石垣港を出発して、日曜の昼に基隆港へ戻るという、

  • 110 JNTO…訪日旅行誘致ハンドブック…2019(アジア 6…市場編)

    通常の週末(土日)のみで楽しめる最短のクルーズもある。■訪日クルーズ旅行で需要が多い寄港地は九州である。■航空・宿泊の手配が難しい桜の時期に、四国(高知など)

    や大阪、名古屋、東京に寄港し、帰路は航空便を利用する桜観賞クルーズツアーも人気がある。

    ③− 8 教育旅行(修学旅行)■台湾では、日本のような学校行事としての修学旅行はなく、

    希望者を募って外国の学校を訪問する教育旅行が主流である。

    ■台湾の教育部(日本の文部科学省に相当)は、日本の修学旅行を参考に、高校生を対象とした国際教育旅行を推進している。一定の条件を満たせば、教育部から学校側に補助金が交付される。当該補助金の要件もあり、訪日教育旅行は 1 グループ 35 名程度で、日程は 5 泊 6 日が基本である。

    ■ビジット・ジャパン事業では 2004 年以降、台湾側の教育関係者を対象に、「台湾における訪日教育旅行セミナー」の場を設定し、説明会や商談会などを行ってきた。また、台湾教育部や学校長など、教育関係者から成る「台湾訪日教育旅行視察団」の訪日招請事業も、毎年実施している。

    ■台湾国際教育旅行連盟によると、高校生を対象にした外国への教育旅行の訪問先は、8 割〜 9 割が日本である。台湾からの訪日教育旅行の 2017 年実績は、学校数 248 校、参加者数 9,123 人であった。

    ■訪日教育旅行で最も重要なのは、訪問先での学校との交流である。台湾側で補助金が交付されるには、学校交流が必須である。2 校との半日交流、または 1 校との1日交流の実施が一般的である。また、進学校であれば、SGH

    (スーパーグローバルハイスクール)や SSH(スーパーサイエンスハイスクール)との交流が、農業高校や工業商業高校、調理師専門学校など専門科を持つ学校であれば、学力や専攻で共通点を有する学校との交流が、希望されることが多い。

    ■学校交流の意義に鑑み、教育旅行を誘致する際、行政側の観光部門と教育部門の円滑な連携体制は欠かせない。日本の一部の自治体では、高校長の経歴者を観光部門の学校交流コーディネーターに起用し、円滑な学校交流の手配に貢献している。

    ■台湾では学校の年度が 9 月に始まり6 月に終わるため、訪日教育旅行の実施時期は 4 月〜 5月が最も多く、次いで10 月〜12 月が多い。従って、新学期を迎えて対応が難しい日本側との時期調整も求められる。

    ■日本での滞在は、一般のホテルや旅館に加え、民宿で宿

    泊することもある。地元の人とより深く触れ合え、日本人の生活を体験できるホームステイを望むことが多く、農家民泊も人気である。また、昨今は、学校交流を行った学校の生徒の家にホームステイしたいという希望が多い。

    ■学校交流・ホームステイ以外の行程は、テーマパーク(TDRや USJ)など一般の観光プログラムもあるものの、体験プログラムへの関心が高い。浴衣・和服、農村生活、スキー等の雪体験、陶芸等の製作など、豊富な体験メニューが求められる。

    ■近年は、生徒が自ら事前に学習した上で、行程を計画して都市部を観光するシティツアーなど、学習要素を求める傾向が強まっている。

    6 日本の競合旅行地①欧州■欧州は異国情緒が感じられ、自然が美しいため、以前から

    台湾人にとって「憧れの地」となっている。2018 年の台湾の旅行博でのアンケート結果によると、「日本以外で最も行きたい国・地域」は、台北・台中・高雄のいずれの都市でも「欧州」と回答している。

    ■欧州への旅行は、テロや為替によって旅行料金が低下したことに加え、中東系航空会社が台湾へ新規参入し、欧州への経由便が増加したことや、中華航空・エバー航空などの台湾系航空会社が直行便を就航させたことなどが背景となり、これまでの欧州に対する「憧れ」が「現実」に変わってきている。

    ■旅行博に出展した旅行会社のブースでは、訪日ツアーよりも安い欧州ツアーが販売されている。

    ■欧州へは未訪問、または訪問回数が少ない台湾人は多い。北欧やアイスランド等への旅行商品が、旅行博や交通広告を通じて宣伝される機会が増えている。

    ②タイ■タイは、台湾人にとって東南アジアで 1、2 を争う人気旅行

    地である。食事やビーチリゾート、異国情緒、物価の安さなどが魅力であり、距離的にも料金的にも手軽に行けることから、個人旅行者が急速に増えている。

    ■台湾人がタイを旅行する場合、タイでの到着時に査証が発給される。また、タイ人が台湾を旅行する場合は、台湾側が東南アジア諸国などとの関係強化を目指す「新南向政策」に伴って、査証を不要とした。これにより、相互の人的交流が増加している。

    ■相互交流の強化は、航空便の増強などにもつながってい

  • JNTO…訪日旅行誘致ハンドブック…2019(アジア 6…市場編) 111

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    第1章 外国旅行の動向

    る。2018 年 7月には、新たにエバー航空がチェンマイ線に就航した。

    ③韓国■韓国ドラマや K-POP などのポップカルチャーの人気は台

    湾でも高く、地下鉄などの交通機関でも、スマートフォンで韓国ドラマを見る台湾人の姿が見かけられることもある。

    ■若年層の訪韓台湾人の男女比率を見ると、日本よりも女性の比率が高い。

    ■日本と同様に、四季の魅力(特に紅葉と雪)を売りにした訪韓ツアーが多く見られる。

    ■若年層の個人旅行者が増加する一方で、昨今は「韓国地方精選遊」と銘打って、韓国観光公社が中高年夫婦を対象に、ソウル・済州島・釜山などの主要観光地ではなく、地方を訴求する広告キャンペーンを行っている。

    7 訪日旅行の価格競争力■台湾からの外国旅行は、アジアの中では価格面で、日本よ

    りも韓国、中国、東南アジアが優位を保っている。特に韓国のツアー価格は、1万台湾ドル台からあり、訪日ツアーとの価格差が大きい。その一方で、品質の面では日本の評価が高い。

    ■過去数年間の訪日旅行ツアー価格を比較すると、LCC が団体旅行商品に対しても積極的に座席供給を行う事例が増えており、日本各地へのツアー価格の下落に一部影響を与えている一方、訪日旅行の需要増に伴う、特に週末の宿泊料金の高騰や、個人旅行者の増加によって航空会社が団体座席への供給量を減少させていることもあり、一部ではツアー価格の高騰を招いている。

    ■中華民国旅行業品質保証協会の「団体ツアー参考料金一覧」(2019 年 4 月〜 6 月分)によると、訪日旅行のツアー平均価格は、関東(東京・静岡)5 〜 6 日間が 28,800 台湾ドル〜 46,800 台湾ドル(約 10.4 万円〜16.8 万円)、関西 4 〜 6 日間が 26,900 台湾ドル〜 57,800 台湾ドル(約9.7 万円〜 20.8 万円)、北海道 5 〜 7日間が 29,800 台湾ドル〜 44,800 台湾ドル(約 10.7 万円〜16.1万円)の間でそれぞれ推移している。

    ■個人旅行の需要増に伴い、特に東京や大阪を中心に一般の募集団体ツアーの集客が難しくなっている中、各社とも様々なテーマに特化したツアーの造成・販売に意欲的になっている。

    ■そのような中、例えば、往復の航空移動はビジネスクラスを利用して、高級クルーズトレイン(周遊型の豪華寝台列

    車)の旅行を楽しむ約 40 万台湾ドル(約 140 万円)のツアーが完売するなど、高価格のツアーも販売・集客されている。

  • 112 JNTO…訪日旅行誘致ハンドブック…2019(アジア 6…市場編)

    8 日本のイメージ 8-1 一般的な日本のイメージ①日本と日本人についてのイメージ■台湾人の日本に対するイメージは総じて良い。台湾のメディ

    アでも、日本の事件・事故などのマイナス面のニュースを報道することはあるが、台湾人が抱く一般的な日本のイメージは、「清潔な街並み」、「きれいな空気」、「高い生活レベル」、「長寿と健康的な食生活」、「身だしなみの美しさ」、

    「公共の場がきちんとしていて安心できる」、「人当たりの良

    ■台湾発外国ツアー価格比較表

    旅行地 旅行日数価格(台湾ドル) 価格(日本円)

    安価 高級 安価 高級

    北東アジア

    ★ 九州(福岡・宮崎・鹿児島) 4〜 7 19,800 〜 29,800 33,800 〜 62,800 71,280 〜 107,280 121,680 〜 226,080★ 四国(高松) 4〜 6 28,800 〜 33,800 35,800 〜 51,800 103,680 〜 121,680 128,880 〜 186,480★ 山陰山陽(広島) 6〜 7 32,900 〜 34,900 35,900 〜 39,800 118,440 〜 125,640 129,240 〜 143,280★ 関西 4〜 6 26,900 〜 32,800 34,800 〜 57,800 96,840 〜 118,080 125,280 〜 208,080★ 関東(東京・静岡) 5〜 6 28,800 〜 34,800 38,800 〜 46,800 103,680 〜 125,280 139,680 〜 168,480★ 東北 4〜 7 28,800 〜 33,800 38,800 〜 47,800 103,680 〜 121,680 139,680 〜 172,080★ 北陸(名古屋・富山・小松) 4〜 6 25,800 〜 35,800 33,800 〜 48,800 92,880 〜 128,880 121,680 〜 175,680★ 北海道 5〜 7 29,800 〜 37,800 35,800 〜 44,800 107,280 〜 136,080 128,880 〜 161,280★ 沖縄 4 23,800 〜 29,800 37,800 〜 46,800 85,680 〜 107,280 136,080 〜 168,480

    韓国(ソウル) 4〜 5 12,800 〜 16,800 17,800 〜 27,800 46,080 〜 60,480 64,080 〜 100,080韓国(釜山・大邱) 5 12,800 〜 16,800 18,800 〜 23,800 46,080 〜 60,480 67,680 〜 85,680韓国(済州島) 4〜 5 12,800 〜 15,900 16,800 〜 22,800 46,080 〜 57,240 60,480 〜 82,080

    東南アジア

    タイ(バンコク、パタヤ) 5〜 6 18,000 〜 25,000 〜 64,800 〜 90,000 〜タイ(チェンマイ) 5 19,500 〜 29,500 〜 70,200 〜 106,200 〜

    インドネシア(バリ島) 5 20,000 〜 30,500 〜 72,000 〜 109,800 〜シンガポール 4 21,000 〜 26,500 〜 75,600 〜 95,400 〜

    フィリピン(セブ島) 5 20,000 〜 29,500 〜 72,000 〜 106,200 〜フィリピン(ボラカイ島) 5 20,500 〜 28,000 〜 73,800 〜 100,800 〜

    カンボジア 5〜 7 17,900 〜 20,900 23,900 〜 26,900 64,440 〜 75,240 86,040 〜 96,840ベトナム(南部) 5 17,900 〜 20,900 26,000 〜 32,000 64,440 〜 75,240 93,600 〜 115,200ベトナム(北部) 5 17,900 〜 21,900 21,900 〜 28,900 64,440 〜 78,840 78,840 〜 104,040

    北米

    米国(西海岸) 7 36,900 〜 39,900 − 132,840 〜 143,640 −米国(東海岸) 10 65,900 〜 69,900 75,900 〜 78,900 237,240 〜 251,640 273,240 〜 284,040

    ハワイ 6 54,900 〜 56,900 − 197,640 〜 204,840 −カナダ 9〜 10 54,900 〜 57,900 88,900 〜 90,900 197,640 〜 208,440 320,040 〜 327,240

    欧州

    フランス・スイス・イタリア 10〜 12 81,900 〜 92,900 118,900 〜 129,000 294,840 〜 334,440 428,040 〜 464,400オランダ・ドイツ・ベルギー・

    フランス9〜 10 59,900 〜 65,900 − 215,640 〜 237,240 −

    フランス 10〜 12 59,900 〜 86,900 119,900 〜 123,900 215,640 〜 312,840 431,640 〜 446,040イタリア 10〜 11 74,900 〜 89,900 109,900 〜 120,900 269,640 〜 323,640 395,640 〜 435,240

    オーストリア・チェコ 10 59,900 〜 73,900 76,900 〜 94,900 215,640 〜 266,040 276,840 〜 341,640ドイツ 10 67,900 〜 74,900 80,900 〜 95,900 244,440 〜 269,640 291,240 〜 345,240英国 9〜 10 64,900 〜 79,900 82,900 〜 94,900 233,640 〜 287,640 298,440 〜 341,640

    中国

    中国(北京・天津・承徳) 8 25,900 〜 28,900 31,900 〜 35,900 93,240 〜 104,040 114,840 〜 129,240中国(上海・南京・杭州) 8 19,900 〜 22,900 28,900 〜 33,900 71,640 〜 82,440 104,040 〜 122,040

    中国(桂林) 5〜 6 18,800 〜 26,800 26,800 〜 37,800 67,680 〜 96,480 96,480 〜 136,080中国(昆明・大理・麗江) 8 27,900 〜 34,900 35,900 〜 44,900 100,440 〜 125,640 129,240 〜 161,640

    中国(張家界) 8 22,800 〜 28,800 28,800 〜 34,800 82,080 〜 103,680 103,680 〜 125,280香港 4 15,500 〜 17,500 18,500 〜 20,500 55,800 〜 63,000 66,600 〜 73,800

    香港・マカオ 4 17,500 〜 18,500 19,500 〜 21,500 63,000 〜 66,600 70,200 〜 77,400

    その他

    豪州(東部) 9 62,900 〜 78,900 79,900 〜 91,900 226,440 〜 284,040 287,640 〜 330,840ニュージーランド周遊 10 80,800 〜 85,800 86,800 〜 96,800 290,880 〜 308,880 312,480 〜 348,480

    パラオ 4〜 5 28,900 〜 34,900 36,900 〜 42,900 104,040 〜 125,640 132,840 〜 154,440グアム 4〜 6 23,900 〜 26,900 32,900 〜 35,900 86,040 〜 96,840 118,440 〜 129,240インド 5〜 7 34,900 〜 39,900 − 125,640 〜 143,640 −エジプト 10〜 12 49,900 〜 64,900 69,900 〜 89,900 179,640 〜 233,640 251,640 〜 323,640トルコ 10〜 12 43,900 〜 49,900 54,900 〜 69,900 158,040 〜 179,640 197,640 〜 251,640

    ※ 2019年 3月時点。★は訪日ツアー(1台湾ドル= 3.6 円)

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    第1章 外国旅行の動向

    さ」、「就業環境の良さ」、「高品質」などの言葉で表現される。

    ■台湾の代表的なインターネット掲示板であるPTT(批踢踢實業坊)などでは、コミュニティ内で様 な々意見が交わされている。これらの意見によると、台湾人は一般的に日本を

    「参考に値する国」として見ていることがうかがえる。■2011 年に発生した東日本大震災では、被災地の映像を通

    じ、日本人の冷静さと秩序だった態度が放送された。2016年 4 月の熊本地震、2018 年 7月の中国地方の豪雨被害、同年 9 月の北海道胆振東部地震でも、きめ細かく災害情報や生活情報、避難情報などが放送等で提供される様子がメディアを通じて台湾にも伝わった。そうした報道を通じて、日本や日本人のイメージについて再認識されたと言える。

    ■台湾において、日本が良好なイメージを維持している理由の一つに、1896 年〜1945 年の半世紀に及んだ日本統治時代への郷愁がある。1947 年に台湾に居住していた台湾人(本省人)と中国大陸から新たに台湾に来た中国人(外省人)との間で武力衝突(2.28 事件)が発生し、外省人を率いる国民党により鎮圧されたため、本省人の間では「日本統治は国民党よりましだ」という感情が生まれた。日本統治時代を直接知る世代、いわゆる日本語世代は年々減少しているが、その子供や孫の世代にも日本に対する良好なイメージは受け継がれている。

    ②日本の大衆文化への関心■日本に対する良好なイメージの第二の理由としては、台湾

    の人々が日本の大衆文化に親しんだことが挙げられる。台湾では 1994 年に日本のテレビドラマの放映が解禁され、現在数多くの日本のドラマが放映されている。

    ■J-POP や日本の映画を楽しんでいる人も多い。木村拓哉、山下智久、Hey! Say! JUMP、新垣結衣、阿部寛などの芸能人は人気がある。アイドルグループのAKB48 は台湾でオーディションを行っており、また、姉妹グループの「AKB48 Team TP」は、2018 年 8 月に台北世界貿易センターで開かれた「第 4 回 Touch The Japan 観光文化展」に来場し、日本に関心の高い台湾の人々から喝采を浴びた。

    ■ハローキティ、すみっコぐらし、ガンダムなどのキャラクターや、「くまモン」などのマスコットは人気がある。日本の大衆文化や、オタク、コスプレといったサブカルチャーもよく知られていて、若年層を中心に人気を集めている。

    ■アニメやマンガの愛好家が一堂に集い、作品を披露・販売し交流するイベント「コミックマーケット」が、2018 年 8 月に 3日間、51万人が来場して東京で開催された。本イベン

    トは台湾でも知られており、わざわざ来日する台湾人愛好家もいる。

    ■日本のテレビ番組や芸能界のニュースが、台湾のテレビ、インターネット、新聞を通じて、随時伝えられている。

    ■台湾のタレントが日本を訪ねる観光特集番組などがよく制作されている。

    ■1970 年代以降に生まれた世代は、ソーシャルネットワークを使いこなす、いわゆる「デジタルネイティブ」である。スマートフォンの普及により、インターネットに投稿された番組などを通じて、ほぼ同時に日本の情報に触れていることから、日本に対する考え方や価値観に様 な々形で影響を与えていると考えられる。

    ■台湾の教育部(文部科学省に相当)は、高校生が海外へ旅行し、相互訪問・相互交流を通じて生徒の国際的視野を養う「国際教育旅行」を推進している。日本ともインターネットを通じた中学、高校同士の交流や、相互訪問などを行っている。また、高校や大学では、外国語の選択は日本語が英語に次いで人気が高く、高校卒業後に日本の大学への留学を希望する若者も多い。

    ■日本に対して素朴な憧れを持つ人を意味する「哈日族(ハーリーズー)」という呼び方は、以前は特別に目立つほど「日本が大好き」というイメージを伴っていたが、最近では SNSなどで日本の旅行や生活について紹介する投稿はほとんどが「哈日族」的と言ってよく、一般的な呼称になってきた。最近は日本のテレビ番組での呼び方の影響で、哈日族の他に、「日本達人」という言い方もある。

    ■日本の競合旅行地の一つである韓国に関しては、2001 年以降韓国ドラマが台湾に浸透した結果、2005 年からは韓国ブームが起き、韓国のサブカルチャーが日本のサブカルチャーに次ぐ主流を占めるようになっている。韓国ドラマは、放映権料の安さや海外版権が日本ほど複雑ではないこともあり、現在では相当数の番組が放送されている。台湾ドラマ、日本ドラマで最近大ヒット作が生まれていないことに加え、韓国側が韓国ドラマを積極的に海外に売り込んでいることも影響していると考えられる。

    ■日本のドラマだけでなく、最近では、日本のバラエティ番組や情報番組が次 と々台湾に輸出されている。特に情報番組は、日本の生活スタイルを参考にしたいという人たちにとって最新情報となっている。日本と同じ時期に放映される番組も増えている。

    8-2 旅行地としての日本のイメージ■台湾では、旅行地としての日本の認知度は非常に高い。

    2012 年以降、台湾での訪日旅行需要は毎年数十万人規模

  • 114 JNTO…訪日旅行誘致ハンドブック…2019(アジア 6…市場編)

    で拡大し、2016 年の台湾人の海外旅行先は、首位の中国大陸(573 万人)に対して、日本は 417 万人であり、近年その差を縮めつつある。(2017年の訪日台湾人数は456万人である。)

    ■2017 年 4 月発表のVisa の調査において、過去 3 年に海外旅行をした台湾人のうち、日本に行った人は 78.4% に達し、前年より2.2 ポイント増加した。

    ■台湾人はブログやメディアを通じて日常的に日本の情報に接する機会が多く、日本全体というより、日本の地域や都市単位での認知が進んでいる。

    ■JTB総合研究所とナビタイムジャパンの共同調査*3によると、台湾人旅行者に聞いた直近の訪日旅行の満足度は高く、調査対象者の 94.8% が 2 年以内に再訪したいとしている。

    ■同調査では、訪日旅行では「田舎を訪れるのが好き」という人が 55.8% に上った。訪日台湾人の 8 割超はリピーターで、那覇、福岡、中部などの地方空港の利用者が増加している。これら特定の地方だけに留まる傾向が進んでいる。

    ■日本への訪問回数が増えて、地方での滞在日数が増えても、ショッピングは重要事項で、アウトレットへの訪問回数は変わっていない。関東地方は、家電、ブティック、ファッションなどの面で世界の先端を行く地域として認識されており、実際に多くの台湾人観光客が最新の流行を目当てにショッピングを楽しんでいる。

    ■観光庁の「訪日外国人消費動向調査」(2017 年)によると、台湾人が日本への旅行に期待する内容として、「日本食を食べること」、「ショッピング」、「自然・景勝地観光」、「繁華街の街歩き」、「旅館宿泊」、「温泉入浴」が上位に上がっている。これらの項目は「訪日旅行前に期待したこと」だけでなく、「訪日旅行中に行ったこと」、「次回の訪日旅行でしたいこと」でも上位を占めている。

    ■台湾ではかつて、「ショッピング=香港」というイメージが定着していたが、その後の円安等の影響もあり、日本もショッピングの旅行先として浮上している。

    *3:… …「台湾からの旅行者の心理と行動に関する調査研究」… …h t t p s : / /www . t o u r i sm . j p / t o u r i sm - d a t a b a s e /survey/2017/03/taiwanese-tourist-mind-action/

    9 評価の高い日本の旅行地■台湾人にとって、旅行地としての日本の評価は地域を問わ

    ず非常に高い。日本台湾交流協会台北事務所への問い合わせ件数、訪日旅行ガイドブックへの掲載量、日本各地を訪れるツアーの多様性などから総合的に判断すると、台湾

    人の関心・評価が特に高い旅行地は、東京(関東)、大阪(関西)、北海道、沖縄である。

    ■東京と大阪については、航空便数の多さや国内移動の利便性、多彩な観光魅力が密集していること、LCC 就航による航空運賃の低廉化といった要因に加え、消費税免税制度の拡大以降、両都市でのショッピングが起爆剤となり、年齢・性別を問わず、絶対的な人気を集めている。

    ■北海道は、冬の雪、夏の広大な花畑など、台湾にはない要素に対する憧れから、根強い人気となっている。ホタテをはじめとする海鮮物、ソフトクリーム、北海道限定菓子などの需要も高い。それらの商品は台湾でも発売されているが、値段が 3 倍以上もするため、お土産として人気が高い。

    ■沖縄は美ら海水族館や国際通りでのショッピングに人気がある。レンタカーを利用した個人旅行需要も増加している。

    ■日台オープンスカイ協定締結に伴う、地方路線をはじめとする定期便の大幅な増加により、訪日台湾人は以前にも増して、地方の観光地へも足を運べるようになった。リピーター旅行者が増えるにつれ、主要観光地以外の所への旅行需要が高まっている。

    ■富山県と長野県にまたがる立山黒部アルペンルートの雪壁や、紅葉時期の東北地方など、場所ごと、季節ごとに旅行需要の増加が見られる。

    ■中国地方、四国、九州に関する問い合わせも増えてきているが、各地を個人で旅行するには言語や交通の問題がある。台湾の旅行会社への聞き取りなどによると、個人で移動するのには不安を感じる台湾人が多いため、これらの地域を旅行する人の 7 割が団体ツアーであるとのことである。

    10 訪日旅行の不満点■飲食店が禁煙でない。飲食店での喫煙はやめてほしい。た

    ばこの煙にまみれての飲食はあり得ない。分煙といっても席を分けているだけで、空気の流れを変えていないのでは分煙の意味が無い。

    ■ホテルの禁煙ルームの隣が喫煙ルームであったりして、たばこの煙が部屋に入ってくる。配管を伝って副流煙が拡散されるのだから、室内は全面禁煙にすべき。禁煙ルームに泊まったのに、たばこの匂いが残っていることがよくある。

    ■電柱や電線が多すぎて、街がゴミゴミした印象を受ける。電線を地中化したほうが美観的には良い。

    ■バスの運賃が鉄道の運賃よりも高くて、気軽に利用できない。台北では当たり前の制度である鉄道とバスの乗り継ぎ割引がない。

  • JNTO…訪日旅行誘致ハンドブック…2019(アジア 6…市場編) 115

    韓国

    中国

    台湾

    香港

    タイ

    シンガポール

    第1章 外国旅行の動向

    ■深夜早朝便を使って空港に着いても、市内までの交通がタクシーしかない。LCCの運賃以上に高いタクシー運賃は払えない。朝まで空港で足止めされてしまう。

    ■電車の車内放送がうるさい。車掌によっては DJ のようにしゃべりまくるのがサービスと勘違いしていて困る。

    ■日本食には野菜が少ない。■日本食には野菜炒めよりサラダが多い。■地方都市では店舗の閉店が早い。■日本食は塩分が多い。日本食には塩辛いものが多い。■無料 Wi-Fi が通じにくい、場所が少ない。無料 Wi-Fi が

    通じない。通じてもLINE が禁止であったりして困る。■英語があまり通じない。■大都市に観光客が多すぎて、日本の特色が失われている。■レストランなどでは、真冬でも氷たっぷりのお冷やが出され

    る。

    11 訪日旅行の買い物品目■2014 年 10 月以降、日本で外国旅行者を対象にした消費

    税免税制度が拡大された。円の下げ止まりの影響も受け、ショッピングを目的とした訪日意欲が急速に高まっている。

    ■従来、菓子、化粧品、医薬品といった少額の生活用品の購入が多かったが、最近はヘアドライヤー、スチームオーブンレンジ、ダニ掃除機、炊飯器、掃除機などの日本製家電製品が人気を博している。

    ①医薬品類■一般的に日本の医薬品類に対する信頼は高く、風邪薬や

    塗り薬、健康食品などが人気である。■化粧品についても日本ブランドが知られており、スキンケア

    や日焼け止め、口紅など、ブログ等で紹介されている人気商品を事前に調査し、商品名を指定して購入する旅行者も多い。

    ■政務部関務署は 2018 年から、台湾への医薬品の持ち込み制限を厳格化した。個人使用薬として、種類ごとに最大12 個(箱、瓶、缶、本を含む)、合計で 36 個を超えると、台湾入境時に課税されることとなった。

    ②ブランド商品■ルイ・ヴィトンやグッチ、エルメスといった、いわゆるヨー

    ロッパのブランドは、商品によっては日本での価格が台湾よりも高くなるため、台湾人にとってあまり魅力がない。

    ■その代わり、台湾では手に入りにくい日本のブランド(イッセイミヤケ、タケオキクチ、ヨウジヤマモトなど)が、ショッ

    ピング好きな個人旅行者の間で人気が高い。台湾でも一部販売されているが、日本の品揃えと違ったり、値段が高かったりする。

    ■最近では、ユニクロや無印など台湾に進出しているブランドの日本限定商品を買い求める旅行者も増えている。

    ③食品類■観光地で売られている土産用の菓子は包装が美しく、それ

    に惹かれて商品を購入する台湾人旅行者も多い。日本の菓子に対する情報・知識に通じている人が多く、「白い恋人」、「じゃがポックル」、「長崎カステラ」、「東京ばな奈」といった商品は広く知られており、空港や土産物店では、台湾の友人・親戚に土産として大量に購入する姿がよく見られる。

    ■菓子以外にも、北海道のホタテの貝柱やサケ、米、椎茸、静岡の緑茶といった、その土地の特産品を土産として買い求める人も多い。

    ④家電製品■日本の家電製品は台湾でも購入できるが、日本よりも割高

    である。■以前はデジタルカメラが大人気であったが、スマホで写真

    を撮る人が増えたため、カメラの購入者自体が少なくなった。カメラマニアは日本で高級機種を購入する。

    ■「メイド・イン・ジャパン」は台湾人の間で絶対的なブランドとなっており、訪日旅行の際にはなるべく日本製の商品を買いたいと考える人が多い。

    ■ここ数年は、ナノケア付きヘアドライヤーや、スチームオーブンレンジ、高機能掃除機なども注目を浴びており、アマゾンなどのショッピングサイトで購入した商品を宿泊施設に配送し、台湾へ持ち帰る傾向が強まっている。

    ■アップル社製品は日本で購入した方が低価格であるため、iPhone や iPadを購入する人も多い。

    12 日本の食に対する嗜好■日本食は台湾人にとって訴求力の高い魅力であり、「日本

    食を食べること」が訪日目的の最重要項目となっている。■寿司や鉄板焼きのほか、ラーメンやご当地グルメも人気を

    博している。「○○地域の○○という店がおいしい」という具体的な店舗情報が、個人ブログなどを通じて拡散している。

    ■2017 年秋に和牛の輸入が解禁され、和牛関連の商品は台湾で大ブームとなっている。次は実際の産地で食べてみた

  • 116 JNTO…訪日旅行誘致ハンドブック…2019(アジア 6…市場編)

    いという声も大きい。■こうした日本食への熱い思いもあって、台湾人旅行者を受

    け入れる際に、最も注意を要するのが食事である。台湾の旅行会社からしばしば耳にする事項は、以下のとおりである。

    ①ボリューム■「台湾人は量を見ながら食を楽しむ」と言われ、食事で最も

    大切なのは量、2 番目が品数、味は 3 番目である。■懐石料理のように一品一品順番に提供するのは好まれず、

    ご飯を含む全ての料理を一度に出すと、全体の量と品数が一目瞭然となり歓迎される。日本では料金に比例して食器の質も上がるが、台湾人にとっては「食器の質」が高いことよりも、「料理の品数」が多いことのほうが重要である。

    ■日本のホテルの朝食ビュッフェは、台湾人には品数が少なく貧弱に見えるという意見もある。

    ■以上の記述は一般論であるが、日本へのリピーター旅行者が増えるにつれ、質を求める人も増えている。

    ■台湾人は主食とおかずを同時に食べるものと考える。日本のように締めにご飯を食べるわけではなく、最初から食べる習慣がある。

    ②マナー■台湾では麺類は音を立てずに食べるのがマナーであり、そ

    ばなどを豪快にすすりながら食べる人はあまり見られない。

    ■立ち食い、立ち飲みは好まれない。

    ③温かいもの■鍋料理は、温かい食事を好む台湾人の食習慣に合致して

    いる上、生魚に抵抗のある一部の人も、刺身を鍋に入れて食べることができるため歓迎される。実際、台北市内には

    「日本式しゃぶしゃぶ(日式鍋)」をはじめ、各種鍋料理専門店が数多くある。

    ■日本では鍋料理は冬のイメージがあるが、台湾では真夏でも冷房の効いた室内で鍋料理を食べる。

    ■鍋や麺類の汁は全て飲む習慣があるため、スープの味付けは塩加減を薄めに調整するとよい。

    ■冷たいものは体を冷やすと考える人が多い。冷水ではなく温かいお茶を出すのが望ましい。

    ■旅行先に自分の水筒を持ち歩くのも一般的であり、レストランなどでお湯を求める旅行者も多い。台湾では空港等の公共施設で湯と水の給水器があり、水筒に入れて飲む習慣がある。

    ④食事制限■日本では豚肉より牛肉のほうが高級とされるが、台湾では

    牛肉を食べない人もいるため注意を要する。牛肉を食べない理由としては、農作業で牛を使っていた時代の名残であるとする説、牛は屠殺される時に涙を流すからという説、宗教に由来するという説など諸説ある。

    ■台湾には菜食主義の人(ベジタリアン)がいる。程度に差はあるが、厳格な場合は、肉、魚、卵に限らず、ニンニクやネギや生姜類、ニラといった臭気が強い五葷を食べないことも多い。あるいは、旧暦の1日と15 日はベジタリアンと同様の食事を取るという人もいる。そのため、台湾では「素食(菜食の意味)」の看板を掲げるレストランをしばしば見かける。台湾人ツアー参加者の中には、ベジタリアンが含まれ、特別な対応が求められる場合もあるので、食事制限の有無を事前に確認しておくことが望まれる。

    ⑤中華料理■台湾人は、「中華料理の本場は中国や台湾」という意識が

    強いため、海外で中華料理を好んで食べることは少ない。逆に 「日本料理は日本が本場であるから、台湾のものよりおいしいはずである」と考えている。そのため、観光関係者を視察ツアーなどに招請して歓迎会などを行う際には、中華料理店の利用は避けた方が良い。

    13 接遇に関する注意点①言語■台湾で一般に使用される標準中国語(「国語」と呼ばれる)

    は、中国大陸の標準中国語(「普通話」と呼ばれる)とは文字、語彙、表現方法において一定の違いが存在する。

    ■文字は、台湾では日本の旧漢字に似た「繁体字」が、中国では簡略化された「簡体字」が使われている。また、語彙については、例えば「鮭」は台湾では「鮭魚」、中国では

    「三文鱼」、中国で高級ホテルを指す「○○宾馆」の繁体字表記「○○賓館」は、台湾では「ラブホテル」の意味となる。

    ■日常的な挨拶も、中国で「皆さんこんにちは」の意味となる「你(妳)們好(ニーメンハオ)」を、台湾では「大家好(ダージャーハオ)」と言うのが適切である。「おはようございます」は、中国の「早上好(ザオシャンハオ)」と台湾の「早安(ザオアン)」とで異なる。

    ■台湾人はこうした言葉の違いに敏感であるため、台湾市場を対象にパンフレットを作成したり、台湾人を受け入れたりする際に使う中国語は、台湾人に翻訳・通訳を依頼するこ

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    第1章 外国旅行の動向

    とが望まれる。■香港でも繁体字を使用するため、一見すると同じように見

    えるが、言い方の違いが非常に多い。香港、台湾、中国の中国語は、それぞれ別物であると認識する必要がある。

    ②宿泊■台湾でイメージされる日本のおもてなしは、旅館で見られる

    列を成しての歓送迎である。歓迎の横断幕を掲げたり、宿泊客へ心のこもったメッセージを渡したり、宿泊施設周辺の地元住民にも声を掛け、地域全体で歓迎の意思表示をしたりすると、非常に喜ばれる。

    ■旅館での宿泊の予約は 2 名一室が基本である。■日本と同じく「4」は「死」を連想するため、「4」が付く客室

    は避ける必要がある。■温泉への関心は高くても、大浴場は苦手とする台湾人も多

    いため、露天風呂付きの個室や家族風呂など、貸し切りで利用できる浴室を用意できると良い。

    ■台湾では裸で入る浴場は少なく、温泉でもほとんどが男女混浴で、水着を着用する。代わりに、湯屋と呼ばれる貸切風呂が普及している。そのため、裸を人前でさらすことに抵抗を感じている人が多く、せっかく温泉旅館に泊まったのに部屋のシャワーで入浴を済ませてしまうこともある。貸切風呂を増やしてほしいという声は大きい。

    ■正座は得意ではないので、旅館の畳式宴会場などでも椅子席を用意すると、親切な対応とみなされる。

    ■台湾では、使用済みトイレットペーパーは流さずに、トイレの横に設置されたゴミ箱に廃棄するのが一般的である。そのため、日本ではトイレに流すよう案内しておくことが望まれる。

    ■台湾でも中国人観光客のマナーの問題が話題となっており、中華圏であるからといって中国人と同じ扱いを受けるのを好まない人も多い。チェックインやレストラン、浴室など、台湾人と中国人の動線がぶつからないように、時間・場所を分けて対応するなどの配慮が求められる。

    ③その他■土産物は大きいもの、見栄えが良いものが喜ばれる。■漢字の音やその意味から、土産物としてタブー視される品

    物がある。例えば、日本らしいデザインでも、傘や扇(=「散:別れる」と同音)、置時計(=「鐘:終わりを意味する「終」と同音)などは、一般的に送り合う習慣がないので注意を要する。また、白いタオルは香典返しで使われる物という認識があるため、通常の土産物としては避ける必要がある。タオルの場合はキャラクター物や色つきのものが良

    い。■色については、赤や金がめでたい席にもよく使われる一方、

    白地に青、黒は葬式を思わせるため、使わないほうが良い。

    14 訪日旅行の有望な旅行者層■若年層の男女(20 歳代〜 30 歳代前半)

    属性 ・…20歳代〜30歳代前半の独身・女性グループ・夫婦(子どもなし)

    旅行形態・…個人旅行、あるいは「航空券と宿泊」をセットにしたパッケージツアー

    ・家族や友達と旅行

    訴求ポイント ・…ショッピング、グルメ、テーマパーク、自然、温泉、美容、サブカルチャー

    費用、日数など

    ・…1 人当たり 5万円〜 20 万円程度。LCC の利用により安価な旅が可能になっている。都市型滞在なら 2泊〜 3泊、それ以外は 4泊5日。団体旅行商品は5日間のものが多い。

    選定の背景

    ・…幼少時代からアニメなどの日本文化に接しており、日本の自然、文化、サブカルチャーに対して強い関心がある。また、日本製品に高品質・良好なイメージを持ち、日本製品の購買意欲も高い。

    ・…旅行を、日常から脱してリフレッシュ、リチャージする機会と捉える人が多く、リピーター旅行者が多い。

    効果的な宣伝方法

    ・…潜在層へのダイレクトマーケティングが効果的である。

    例)・…ウェブサイト、モバイル広告。ウェブサイトや SNSを活用した交通、宿泊、食事など、具体的な訪日旅行情報を発信。

    ・…テレビ番組やブログなど、彼らがフォローする情報源での露出。最近では、人気ユーチューバーによる宣伝も効果的である。

    ・一般公開イベント・…なお、旅行中の情報検索、SNS での情報発信も頻繁に行うため、受け入れ観光施設や宿泊施設でも、Wi-Fi スポットを整備することが重要。

    ■家族旅行

    属性 ・…両親が 30 歳代後半〜 40 歳代(0 歳から12歳までの子どもあり)の家族

    旅行形態

    ・…家族全員での団体旅行が主流。3世帯や友人の家族らとも旅行する。しかし、家族全員での個人旅行も増える傾向が顕著である。

    ・都市部では個人旅行も見られる。

    訴求ポイント ・…テーマパーク、温泉、グルメ、大自然(キャンプ)、ショッピング

    費用、日数など

    ・…1 人当たり 8 万円〜 15 万円程度。4 泊 5日が多いが、それより長く、6日、7日もよく見かける。夏季休暇と春節休暇の旅行が中心。

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    選定の背景

    ・日本に対して良いイメージを持っている。・…子どもが楽しめる観光施設・観光地(東京ディズニーリゾートなど)も多く、安全で清潔な日本は、家族での旅行先として適している。

    ・…台湾からの訪日旅行者の中でもボリュームゾーンとなる。

    ・…3 世代での旅行も一定数あり、熟年層は日本通も多い。

    ・…団体ツアーを選択することが多く、地方への訴求力が高い。

    効果的な宣伝方法

    ・…若年層と同様、インターネットを駆使している率が高い。このため、インターネットやメディアを活用した情報提供が望ましい。

    ・…旅行費用総額を抑えるために、比較的廉価な旅行商品への要望が高い。台北国際旅行博などでの販促を兼ねた、旅行博への出展も効果的。

    ・…航空会社や旅行会社を対象としたセミナーや招請事業を実施し、家族向けの魅力的な旅行商品の造成を図る。具体的な宿泊施設等の情報に加えて、子どもや高齢者でも楽しめる観光魅力の提案が有効。

    ■高所得者(30 歳代以上)

    属性 ・…月収 8万台湾ドル(1台湾ドル≒ 3.7 円の場合、296,000 円)以上の高所得者層旅行形態 ・少人数での団体旅行

    訴求ポイント ・…伝統芸能、芸術、自然景観、ショッピング、温泉、グルメ

    費用、日数など

    ・4泊 5日から。・30万円以上。・中には 100万円を超すツアーもあり。

    選定の背景

    ・…所得格差が拡大し、100 万米ドル(1米ドル≒ 110 円の場合、1億 1千万円)以上の金融資産を保有する人口当たりの割合は日本を上回る。

    ・…高級ホテル、高級旅館での宿泊やビジネスクラスの利用など、高い経済効果が見込まれる。

    ・…日本の繊細な工芸品や、高品質な日本製品への関心も高い。

    効果的な宣伝方法

    ・…高所得者向けの旅行商品を扱う旅行会社を対象とした情報提供やセミナー、または招請事業

    ・…ロータリークラブなど、特定コミュニティへのアプローチ

    ・…季節限定、対象者限定などの「特別な」コンテンツを中心に、希少性を強調したセールスが効果的。

    ■教育旅行(高校生)

    属性 ・教育旅行層旅行形態 ・30人〜 40人規模の団体旅行

    訴求ポイント ・…異文化交流、学校交流、産業観光、グルメ、生活・文化体験費用、日数など ・5泊 6日が主流。12万円〜 15万円程度

    選定の背景

    ・外国教育旅行先として、日本人気が定着・安全、安心な旅行先としての位置付け・…外国教育旅行に対する台湾政府からの支援(補助金制度など)

    効果的な宣伝方法

    ・…決定権者である高校長らを対象とした招請事業、セミナーの実施

    ・…プログラムとして、日本の学校との交流が最重要視されているため、外国からの教育旅行受け入れに対して、日本各地の教育委員会、高校などの理解と協力を得ることが求められる。