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以下に該当する情報は開示することができないので黒塗りしています。 ・商業的に機微な内容(認証機関への要求事項 5.3.3(漁業、養殖)、5.3.5(CoC)) ・認証活動の公平性を損なう圧力に結び付き得る情報(ISO/IEC17065 4.2.2) 北海道漁業協同組合連合会 秋鮭定置網漁業 公益社団法人日本水産資源保護協会 2018年2月27日 審査報告書 マリン・エコラベル・ジャパン 漁業認証規格 Ver.2.0

審査報告書 マリン・エコラベル・ジャパン 漁業認証規格Ver.2...漁業認証規格2.0 適合の判定基準(審査の手引き)2.1 北海道秋鮭定置網漁業

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以下に該当する情報は開示することができないので黒塗りしています。

・商業的に機微な内容(認証機関への要求事項 5.3.3(漁業、養殖)、5.3.5(CoC))

・認証活動の公平性を損なう圧力に結び付き得る情報(ISO/IEC17065 4.2.2)

北海道漁業協同組合連合会

秋鮭定置網漁業

公益社団法人日本水産資源保護協会

2018年2月27日

審査報告書

マリン・エコラベル・ジャパン

漁業認証規格 Ver.2.0

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漁業認証規格 2.0

適合の判定基準(審査の手引き)2.1

北海道秋鮭定置網漁業

1

目次

1.はじめに .................................................................. 3

2.漁業規格及び適合の判定基準(審査の手引き)のバージョン ..................... 3

3.審査結果の概要 ............................................................ 3

4.漁業の概要 ................................................................ 4

5.申請者 .................................................................... 4

6.認証対象となる漁業 ......................................................... 5

7.審査員 .................................................................... 5

8.審査経過 .................................................................. 5

9.審査方法 .................................................................. 5

10.審査基準 ................................................................ 6

11.審査基準に係る用語 ....................................................... 6

12.漁業認証に係る管理点・要求事項・審査項目・評価及び根拠 ................... 8

管理点 1.管理体制に関する要件 ............................................... 8

1.1 漁業許可の取得審査 .................................................... 8

1.1.1 漁業免許・許可等の取得 ............................................ 8

1.1.2 管理体制 ......................................................... 12

1.1.3 漁業実態の把握 ................................................... 13

1.2 審査対象となる漁業及び対象資源に関する規制、取決め等の遵守 ........... 19

1.2.1 規制・取決めの遵守 ............................................... 19

1.2.2 「資源管理計画」の策定及び履行 ................................... 21

1.2.3 参加型管理、透明性の確保 ......................................... 23

1.2.4 広域的な協力体制の構築 ........................................... 26

1.2.5 放流計画の策定 ................................................... 27

1.2.6 予防的アプローチ、順応的管理 ..................................... 30

1.2.7 多面的利用に関する合意形成 ....................................... 31

1.2.8 管理ルールの周知 ................................................. 32

管理点 2.対象資源に関する要件 .............................................. 33

2.1 生物学的情報の把握 ................................................... 33

2.2 科学的根拠........................................................... 39

2.3 対象漁業以外の漁獲及び回復力の考慮 ................................... 43

2.4 資源評価及び結果の開示 ............................................... 47

2.5 資源管理方策の設定 ................................................... 51

2.6 TAC(漁獲可能量)の遵守 ........................................... 57

2.7 過剰漁獲の防止 ....................................................... 58

管理点 3.生態系への配慮に関する要件 ........................................ 62

3.1 生態系に配慮した管理体制の確立 ....................................... 62

3.1.1 非対象種及び生態系への影響評価のための情報 ....................... 62

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漁業認証規格 2.0

適合の判定基準(審査の手引き)2.1

北海道秋鮭定置網漁業

2

3.1.2 生態系への配慮 ................................................... 67

3.1.3 漁場環境及び生息環境の保全 ....................................... 71

3.2 栽培/増殖漁業における生態系への配慮 .................................. 72

3.2.1 生態系に配慮した人工種苗の生産 ................................... 72

3.2.2 自然再生産個体群維持のための管理目標及び管理措置の設定 ........... 77

3.2.3 種苗放流による対象資源および生態系への影響モニタリング ........... 81

13.是正措置 ............................................................... 84

14.審査の結果 ............................................................. 85

15.将来の審査に向けた提言 .................................................. 85

16.根拠となる資料.......................................................... 85

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漁業認証規格 2.0

適合の判定基準(審査の手引き)2.1

北海道秋鮭定置網漁業

3

1.はじめに

2016 年 12 月、マリン・エコラベル・ジャパン(Marine Eco-Label Japan: MEL)協議会は、

日本発の水産エコラベル認証に係るスキームオーナーとして発足した。本スキームは、「持

続可能な水産物」を「将来の世代にわたって 適利用ができるよう、資源が維持されている

水産物」と定義づけている。

本スキームの仕組みは、水産資源の持続的な利用や環境・生態系の保全管理に対し、積極的

かつ効果的に取り組んでいる事業者を認証し、その製品にロゴマークを貼付して流通させ

ることである。そして、本スキームの目的は、ロゴマークが付いている水産物を、多くの消

費者から積極的に選んでもらうことで、資源・環境・生態系の保全管理に資する関係者を増

やし、日本の水産業と食文化の持続的な発展へ寄与することである。

本スキームの規格や指標は、FAO 責任ある漁業のための行動規範(1995)及び FAO 水産エコ

ラベルガイドライン(2005)に準拠した内容で、国際標準を満たすことを目指している。同

時に、日本における、魚種・漁法・コミュニティ・食文化等の豊かな多様性に恵まれた水産

業の特性を反映していることが、本スキームの主な特徴となっている。

本報告書は、認証の申請を行った漁業者に対し、漁業規格及び適合の判定基準(審査の手引

き)に基づき、認証機関がその取り組み内容を審査・評価し、当該認証付与の可否を検討す

るためのものである。

2.漁業規格及び適合の判定基準(審査の手引き)のバージョン

以下に示す、「漁業認証規格」及び「適合の判定基準(審査の手引き)」の管理点・要求事

項・指標に沿って実施された審査結果に基づき、本報告書は作成された。

・ 漁業認証規格バージョン 2.0(2017 年 10 月 7 日制定、2018 年 2 月 1日発行)1

・ 漁業認証規格適合の判定基準(審査の手引き)バージョン 2.1(2019 年 1 月 23 日発行)

2

3.審査結果の概要

審査結果は下表の通りであったため、漁業認証の決定を推薦する。

1  http://www.melj.jp/wp‐content/uploads/2019/01/MEL%E6%BC%81%E6%A5%AD%E8%AA%8D%E8%A8%BC%E8%A6%8F%E6%A0%BC_ver.2.0.pdf  2  http://www.melj.jp/wp‐content/uploads/2019/01/MEL%E6%BC%81%E6%A5%AD%E8%AA%8D%E8%A8%BC%E8%A6%8F%E6%A0%BC_%E5%AF%A9%E6%9F%BB%E3%81%AE%E6%89%8B%E5%BC%95%E3%81%8D.pdf

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漁業認証規格 2.0

適合の判定基準(審査の手引き)2.1

北海道秋鮭定置網漁業

4

評価 審査結果の数 指標の番号

全審査項目 55

重大不適合 0

軽微不適合 2 3.1.2 ①; 3.2.2 ②

観察事項 2 3.1.1 ④; 3.2.2 ①

適合 48

該当なし 3 2.5 ④; 2.5 ⑤; 2.6 ①

4.漁業の概要

認証対象である秋サケ定置網漁業は北海道における主要な漁業の一つであり、2015~

2017 年の 3ヵ年の統計(北海道水産現勢)では、生産重量は全体の 6.5~11.7%、生産金額

は 17.8~20.8%を占める。北海道のサケ漁獲はほぼ全量が定置網漁によるものである。現

在は北海道知事から漁業権を免許された者(2018 年は 1,118 ヶ統)が定置網漁業を営んで

いる。本漁業はサケの来遊時期に合わせ、漁具を土俵などで固定して敷設位置を変えずに営

む漁業である。定置網付近に回遊してきたサケを受動的に漁具内に誘引して漁獲する漁法

であり、誘引した漁獲物は生きた状態で船上に引き上げられる。そのためサケ以外の魚類や

生物が混獲された場合でも生きた状態で再放流することが可能となっている。

本漁業が対象とするサケには増殖(ふ化放流)由来の魚が含まれる。サケの増殖事業は

1880 年代にはじまり 130 年もの歴史を持つ。北海道へのサケの来遊数は 1970 年代から増加

し、1990 年代から 2000 年代前半にかけて 5,000 万尾を超える来遊数を記録した。現在、北

海道ではサケの来遊数の目標を 5,000 万尾とし、目標達成のため毎年約 10 億尾の稚魚が放

流されている。資源管理の考え方は産卵親魚量一定方策であり、ふ化放流事業に必要な数の

親魚の確保が難しい場合は、行政、漁業者、増殖事業協会、試験研究機関などの関係者が協

議をし、沿岸での漁獲率を下げるなどして親魚の遡上を促し、再生産用の親魚を確保してい

る。 近の北海道へのサケの来遊数は 2000 年代前半と比べると減少しているが、再生産用

親魚を確保するための体制が整っており、毎年、親魚の捕獲計画が達成され、放流計画に定

められた数の稚魚が放流されている。北海道に来遊するサケの多くはふ化放流由来と考え

られてきたが、 近になり自然再生産由来のサケが多く含まれることがわかり、自然再生産

個体群に関する多くの調査研究が行われ、資源モニタリングや管理を行う地区もみられて

いる。

5.申請者

1)名称

北海道漁業協同組合連合会

2)代表者

川崎一好

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漁業認証規格 2.0

適合の判定基準(審査の手引き)2.1

北海道秋鮭定置網漁業

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2) 書面審査は、当該漁業に関する文献及び実態に関連する書類等の審査である。

3) 現地審査は、事前に申請者から提出された資料に基づき、申請者や現地関係者からの聞

き取り及び現場での踏査などにより、申請内容等の再確認を行った。

4) 現地審査では、行政機関や研究機関など関係者からの聞き取り調査も併せて行った。

5) 漁業認証の有効期間は 5 年間であるが、「認証機関への要求事項」に沿って認証機関は

年次審査あるいは臨時審査を行い、MEL 協議会へ報告する。

10.審査基準

審査中に以下のいずれかが確認され、「認証機関への要求事項」3に定める是正措置が検証

されなかった場合、MEL 漁業認証を与えてはならない。

・ 重大不適合が 1つ以上確認された。

・ 漁業認証規格の要求事項の 1つの原則に対して、4つ以上の軽微不適合が確認された。

11.審査基準に係る用語

・ 重大不適合(Major Non-Conformity)

漁業認証規格の要求事項に対して、当該の漁業が適合していることを示す情報が完全に

欠如している、または、漁業認証規格の要求事項と当該の漁業が矛盾することを示す情報・

証拠が存在していると、審査チームが判断した場合。

・ 軽微不適合(Minor Non-Conformity):

漁業認証規格の要求事項に対して当該の漁業が適合していることを示す情報・証拠は存

在するが、適合であると判断するに足る情報・証拠が十分には存在しないと、審査チームが

判断した場合。

・ 観察事項(Observation):

漁業認証規格の要求事項に対して不適合ではないが、改善の余地がある、あるいは不適合

に発展する可能性があると、審査チームが判断した場合。

・ 適合(Conformity):

漁業認証規格の要求事項に対して当該の漁業が適合していることを示す情報・証拠が十

分に存在すると、審査チームが判断した場合。

・ 該当なし(Not Applicable):

3  http://www.melj.jp/wp‐content/uploads/2019/02/%E8%AA%8D%E8%A8%BC%E6%A9%9F%E9%96%A2%E3%81%B8%E3%81%AE%E8%A6%81%E6%B1%82%E4%BA%8B%E9%A0%85%E6%BC%81%E6%A5%AD.Ver_.2.1.pdf 

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漁業認証規格 2.0

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漁業認証規格の要求事項に対して当該の漁業では該当しないと、審査チームが判断した

場合。

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漁業認証規格 2.0

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12.漁業認証に係る管理点・要求事項・審査項目・評価及び根拠

管理点 1.管理体制に関する要件

1.1 漁業許可の取得審査

1.1.1 漁業免許・許可等の取得

【要求事項】

国の法令に基づき、審査対象となる漁業を営むために必要な漁業免許、許可等を管理当局

(国または都道府県)から受けている等、適法に漁業が行われている。

【審査項目 1.1.1 ①】

① 審査対象となる漁業を営むための以下を確認できるか。

□ 国または都道府県知事発行の免許状あるいは許可証の取得

□ 上記が取得されていない場合、許可や免許が無くとも当該漁業が禁じられていない

こと

【評価】

適合

【審査員の所見】

サケ定置漁業権の免許の手続きが漁業法により明確に定められており、各経営体が公

正な審査を経た上で、免許を受けて定置漁業を営んでいることが確認できる。

【評価の根拠】

審査対象となる北海道での「さけ定置漁業」は、北海道知事から免許を受けた者のみが

本漁業を営むことができる。さけ定置漁業権の存続期間は5年間で、期間満了後は新たに

漁場計画を策定し、免許手続きを行うものであり、現在は総数 1,118 件の免許が発行さ

れている。免許状には操業期間、漁場の位置、制限および条件が記されている。

漁業権の免許設定の流れは次のとおりである。北海道知事が漁民の要望および漁場条

件を調査した上で漁場計画(案)を作成する。この案が各地区に設置されている海区漁業

調整委員会に諮問され、各海区漁業調整委員会では、広く関係者の意見を聞くため公聴会

を開催し、各海区漁業調整委員会から北海道知事に対し答申がある。その後、各海区漁業

調整委員会における意見を集約した上で、北海道知事は漁場計画を決定し公示する。公示

後、定置免許を希望する者(漁業者、漁協等)は北海道庁に免許を申請し、各海区漁業調

整委員会において申請者の適格性および優先順位が審査された後、免許される者が決定

される。

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漁業認証規格 2.0

適合の判定基準(審査の手引き)2.1

北海道秋鮭定置網漁業

9

第13次定置漁業権(さけを付冠するもののみ)の免許状況

全道計 1,118 件 平成29年12月31日時点

振興局名 件数 免許番号 振興局名 件数 免許番号

石狩 15 石さけ定第1~15号 日高 58 えさけ定第1~17号

小樽 208 小樽さけ定第1~2号 様さけ定第1~9号

小樽小さけ定第1~11号 浦さけ定第1~7号

余ほっけ・まぐろ・さけ定第1~2号 浦小さけ定第1~2号

余さけ定第1~2号 三さけ定第1~6号

余小さけ定第1~7号 静さけ定第1~6号

美ほっけ・まぐろ・さけ定第1号 静小さけ定第1号

美底さけ定第1~4号 新さけ定第1~3号

古ほっけ・まぐろ・さけ定第1号 門さけ定第1~7号

古小さけ定第1~15号 十勝 25 浦幌さけ定第1~5号

神小(底)さけ定第1~16号 豊頃さけ定第1~6号

盃ほっけ・まぐろ・さけ定第1~2号 大樹さけ定第1~6号

盃底さけ定第1~3号 広尾さけ定第1~8号

泊小(底)さけ定第1、3~16号 釧路 45 浜中さけ定第1~10号

岩小(底)さけ定第1~53号 厚岸さけ定第1~3号

寿ほっけ・まぐろ・さけ定第1~2号 昆さけ定第1~13号

寿小(底)さけ定第1~46号 釧路さけ定第1~10号

島ほっけ・まぐろ・さけ定第1号 白糠さけ定第1~5号

島小(底)さけ定第1~25号 音さけ定第1~4号

檜山 35 瀬さけ定第1~6号 根室 176 羅さけ・いか定第1~33号

北さけ定第1~2号 標さけ定第1~28号

大さけ定第1~4号 別さけ定第1~50号

熊さけ定第1~3号 風さけ定第1~5号

乙さけ定第1~5号 温さけ定第1~2号

江さけ定第1~9号 根さけ定第1~44号

上国さけ定第1~6号 羅さけ・ます定第1~14号

渡島 196 長さけ・かれい・すけとうたら定第1~23号 オホーツク 248 雄さけ定第1~8号

八さけ・かれい・すけとうだら定第1~18号 興さけ定第1~9号

森いか・いわし・さけ・すけとうだら定第1~14号 興小さけ定第1~2号

森さけ・いか・すけとうたら定第1~9号 紋さけ定第1~7号

鹿まぐろ・いか・さけ定第1号 紋小さけ定第1~2号

鹿さけ・いか定第1~4号 湧さけ定第1~4号

函まぐろ・いか・さけ定第1~19号 湧小さけ定第1号

函さけ・いか定第1~22号 常さけ定第1~8号

函まぐろ・いか・さけ・ぶり定第1~2号 常小さけ定第1~3号

函いか・ぶり・さけ定第1~5号 網さけ定第1~8号

函いか・さけ定第1~2号 小清さけ定第1~6号

函さけ定第1~17号 網小さけ定第1号

北斗さけ・いわし第1、3~22、24~42号 斜さけ定第1~9号

木さけ・かれい定第1~5号 斜さけ・ほっけ定第1~14号

知さけ・かれい定第1~5号 雄さけ・ます定第1~14号

福さけ・かれい定第1~6号 興さけ・ます定第1~13号

松さけ第1号 紋さけ・ます定第1~12号

松ほっけ・かれい・さけ定第1~3号 湧さけ・ます定第1~7号

胆振 43 鵡さけ定第1~2、6号 常さけ・ます定第1~21号

苫小さけ定第1~5号 網さけ・ます定第1~27号

白老さけ定第1~8号 斜さけ・ます定第1~36号

登さけ定第1~2号 宇さけ・ます定第1~36号

室さけ定第1号 宗谷 51 豊富さけ定第1~3号

伊さけ定第1~9号 稚さけ定第1~18号

洞さけ定第1号 猿さけ定第1~6号

豊浦さけ定第1~8号 浜頓さけ定第1~3号

白老さけ・ます・まぐろ定第1号 枝さけ定第1~21号

登さけ・ます・まぐろ定第1号 留萌 18 幌延さけ定第1~3号

室さけ・ます・まぐろ定第1号 天さけ定第1号

伊さけ・ます・いわし定第1号 初さけ定第1~2号

豊浦さけ・ます・いわし定第1~2号 羽さけ定第1~2号

遠さけ定第1~3号

小平さけ定第1号

留さけ定第1号

増さけ定第1~5号

表 1.1.1-1 第 13 次定置漁業権(さけを付冠するもののみ)の免許状況

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漁業認証規格 2.0

適合の判定基準(審査の手引き)2.1

北海道秋鮭定置網漁業

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図 1.1.1-1 漁業権の免許設定までの流れ

 漁民の要望及び漁場条件の調査 北海道

 ①漁業種類、漁場の位置及び区域、漁業時期その他免許の内容たるべき事項

 ②免許予定日

 ③申請期間

 ④地元・関係地区

北海道

海区

海区

北海道

漁業者、漁協 等

北海道

海区

海区

海区

北海道

漁業権の免許設定までの流れ

 漁場計画(案)の作成  (海区)

 免許又は不免許(法第10条、法第13条)

 海区漁業調整委員会から都道府県知事への答申(法第12条)

 優先順位の審査(法第15条~法第19条)

 海区漁業調整委員会への諮問(法第12条)

 免許申請(法第10条)

 漁場計画の公示(法第11条第5項)

 公聴会の開催(法第11条第4項)

 海区漁業調整委員会への諮問(方第11条第1項)

 海区漁業調整委員会の答申(法第11条第1項)

 適格性の審査(法第14条)

免許の内容等の事前決定

免許手続き

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漁業認証規格 2.0

適合の判定基準(審査の手引き)2.1

北海道秋鮭定置網漁業

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図 1.1.1-2 定置免許状の文面例

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漁業認証規格 2.0

適合の判定基準(審査の手引き)2.1

北海道秋鮭定置網漁業

12

1.1.2 管理体制

【要求事項】

審査対象となる漁業を管理するための組織及び体制が確立されている。

【審査項目 1.1.2 ②】

審査対象となる漁業を管理する組織(漁協等)や体制(国、都道府県、水産試験場等)が

確立されているか。

□ 当該漁業の管理体制を示す資料

【評価】

適合

【審査員の所見】

組織・体制は漁業法、水産業協同組合法を遵守して構築されていることが資料と説明か

ら確認できる。

【評価の根拠】

サケ定置漁業の管理にあたり、北海道庁、海区漁業調整委員会および漁業協同組合によ

る管理体制が下記のように構築されている。違反者に対する取締りの体制も北海道庁、海

上保安部、警察により下記のとおり構築されている。

図 1.1.2-1 さけ定置漁業の管理体制および取締り体制

定 置 網 漁 業

(漁 業 者)

海 上 保 安 部 警 察

【海面・公害】 【内 水 面】

北海道庁(行政)

【海面・内水面】

北海道庁(行政)

北海道漁業協同組合連合会

海区漁業調整委員会

取締

水揚指導

免許

答申諮問

漁獲

報告

【さけ定置網漁業の管理体制】

漁業調整

漁業権免許設定

漁業協同組合

漁場利用調整

○販売

○商流対策

○環境対策

申 請 者

指導連携流通の安定

申請

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漁業認証規格 2.0

適合の判定基準(審査の手引き)2.1

北海道秋鮭定置網漁業

13

1.1.3 漁業実態の把握

【要求事項】

審査対象となる漁業の実態等が把握されている。把握すべき漁業実態の内容については以

下の項目を含む。

① 漁業の概要

② 漁具・漁法

③ 漁獲量・漁獲努力量

④ 漁業経営形態及び経営状況

【審査項目 1.1.3 ①】

審査対象となる漁業の概要

□ 審査対象となる漁業の概要(操業期間、漁場図など)を示す資料

【評価】

適合

【審査員の所見】

定置漁業権を免許する北海道庁では、秋サケ資源の適正な利用を考慮して、漁場や操業

期間を設定していることが資料から判断できる。

【評価の根拠】

漁場としては北海道沿岸全域にわたる。持続的漁業として維持するため操業期間は8月

30 日~12 月 25 日としており、海区及び地区、さらに同一漁場の中でも沖側と陸側の身

網でも異なる操業期間が設定されている。これはサケの回遊特性を考慮し、地区間の資源

の適正利用を図るとともに、産卵親魚の河川遡上を確保することを目的としたものであ

る。

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北海道秋鮭定置網漁業

14

図 1.1.3-1 第 13 次定置漁業権に係る秋さけ操業期間(平成 26~30 年)

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【審査項目 1.1.3 ②】

審査対象となる漁業の漁具・漁法

□ 審査対象となる漁業の漁具の模式図

【評価】

適合

【審査員の所見】

一般的な定置網の構造はよく把握されている。

【評価の根拠】

定置網は垣網、身網などから成っており、沿岸に回遊したサケが垣網に沿って自然に身

網に誘導される漁法である。定置網の一般的な構造を下図に示す。

図 1.1.3-1 定置網の一般的な構造図

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【審査項目 1.1.3 ③】

審査対象となる漁業の漁獲量・漁獲努力量

□ 審査対象となる漁業の漁獲量データ,ヶ棟数

□ 審査対象となる漁業の漁獲努力量

【評価】

適合

【審査員の所見】

毎年の漁獲量は北海道庁により把握されている。漁獲努力量としては、定置網の統数が

相当し、長い歴史の中で現状の統数へ落ち着いたもので適正なものと判断できる。

【評価の根拠】

各定置網の漁獲(水揚)量は各地の魚市場で計量され、漁業協同組合を通じて北海道庁

に報告されている。下表の漁獲量は北海道内の 12 地域別に整理した年別漁獲量を示した

ものである。漁獲努力量に相当するデータとしては定置網の統数があり、現在は北海道全

体で 1,118 カ統の定置網がサケを漁獲している。

表 1.1.3-1

魚種 さけ

合計 / 数量 振興局別

年 01_石狩 02_後志 03_檜山 04_渡島 05_胆振 06_日高 07_十勝 08_釧路 09_根室 10_オホーツク 11_宗谷 12_留萌 総計

2014 926 801 303 3,415 5,548 8,419 7,884 5,186 23,416 37,944 9,822 2,060 105,725

2015 1,530 1,146 345 2,693 6,340 11,198 6,072 4,862 23,171 36,022 11,693 1,510 106,581

2016 1,077 802 168 2,101 2,905 5,716 3,460 3,563 16,394 31,974 7,511 1,363 77,034

(数量:トン)

北海道におけるサケの漁獲状況について(2014~2016)

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北海道秋鮭定置網漁業

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表 1.1.3-2

区分魚種名 数量 金額 数量 金額 数量 金額 数量 金額さけ 105,725 51,711,534 106,581 54,705,802 77,034 49,103,612 289,340 155,520,948 あいなめ 15 3,496 10 3,378 11 3,228 36 10,101 あかいか 0 0 0 0 あかがれい 0 9 0 70 0 12 0 91 いかなご 0 1 1 38 1 34 2 72 かたくちいわし 153 5,864 4 1,205 489 8,557 646 15,626 からふとます 152 43,852 65 29,514 1,363 298,060 1,579 371,426 ぎんざけ 1 302 13 5,987 1 640 15 6,929 くろがしらかれい 57 14,299 63 17,721 43 11,623 163 43,643 こまい 9 700 5 382 18 943 32 2,025 さくらます 155 74,976 175 118,407 303 108,391 633 301,774 さば 400 20,822 821 38,192 800 36,265 2,020 95,280 さめ類 86 2,154 66 1,620 101 1,659 252 5,433 さんま 0 0 1 12 0 6 1 18 ししゃも - - すけとうだら 245 15,177 328 33,552 446 31,604 1,018 80,332 すながれい 6 504 5 394 5 450 16 1,348 するめいか 2,338 616,113 2,099 583,874 348 251,552 4,784 1,451,539 ずわいがに - - そい類 154 42,015 297 46,037 392 52,569 843 140,622 そうはち 137 15,904 608 67,556 462 59,314 1,207 142,774 その他のいか類 48 4,532 78 9,220 130 10,420 256 24,172 その他のかに 12 3,424 7 2,810 7 3,217 26 9,452 その他のかれい類 142 27,019 153 31,991 188 33,692 483 92,702 その他の貝類 - - その他の魚類 548 82,486 474 85,380 622 84,050 1,645 251,916 その他の水産動物 0 1 0 7 0 36 0 44 たら 171 21,369 96 13,061 109 21,020 376 55,449 つぶ類 1 158 0 45 0 2 1 205 なまこ 0 22 0 16 0 0 0 38 にしん 37 4,902 114 26,339 95 17,161 246 48,402 はたはた 4 706 9 1,622 2 361 15 2,690 ひらめ 176 102,538 115 83,553 100 87,121 391 273,212 ひれぐろ 0 8 0 7 0 2 0 17 ぶり 2,232 542,091 2,055 401,894 2,323 469,591 6,610 1,413,575 べにざけ 1 792 0 742 0 360 1 1,894 ほたて貝 - - ほっけ 869 199,454 384 122,620 936 135,268 2,189 457,341 まいわし 110 3,261 26 5,087 18 422 153 8,770 まがれい 28 8,092 27 8,864 18 5,132 73 22,088 まぐろ 23 42,190 15 30,217 9 19,268 48 91,675 ますのすけ 6 14,829 7 17,418 6 17,727 19 49,974 まつかわ 31 37,921 43 51,848 32 44,786 106 134,555 みずだこ 60 29,531 47 22,331 71 28,435 177 80,298 めぬけ 0 0 0 2 0 2 やなぎだこ 1 392 0 231 0 60 1 683 やりいか 21 7,991 44 17,276 16 9,458 81 34,725

総  計 114,150 53,701,430 114,836 56,586,319 86,501 50,956,110 315,488 161,243,860

サケ定置網漁業における漁獲(数量・金額)状況

数量:トン、金額:円2016 合計2014 2015

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北海道秋鮭定置網漁業

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【審査項目 1.1.3 ④】

審査対象となる漁業の漁業経営形態および経営状況

□ 審査対象となる漁業の経営形態及び経営状況

【評価】

適合

【審査員の所見】

各経営体に対して経営状況の報告が漁業法134条に基づき義務化づけられており、

免許を出す北海道庁が各経営体の経営状況を把握していることがわかる。

【評価の根拠】

免許を受けた漁業者は、北海道定置漁業経営状況報告規則に基づき、毎年の漁期終了後

に「定置漁業経営状況報告書」を北海道庁に報告している。報告項目は、1.漁場の位置、

2.定置漁業の規模、3.着業の期間、4.漁獲高及び処理内訳、5.従事者等、6.給

与形態等、7.共同経営の内容、8.収入、9.支出、10.収支などとなっており、こ

れにより、経営状況について把握できる。

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1.2 審査対象となる漁業及び対象資源に関する規制、取決め等の遵守

1.2.1 規制・取決めの遵守

【要求事項】

審査対象となる漁業について、効果的かつ適切な監視及び取締が行われ、国、地方公共団体

による規制、取決め等が遵守されている。

【審査項目 1.2.1 ①】

審査対象となる漁業を含む、当該漁業全体に関連する規制や取決め等を遵守するための、

実効ある管理体制(監視体制を含む)があるか。

□ 当該漁業に関連する法体系

□ 法令・規則を遵守させるための実効ある管理体制

【評価】

適合

【審査員の所見】

関係法令が整備されており、実行ある管理・監視体制が備えられていることが資料から

わかる。

【評価の根拠】

北海道サケ定置漁業は、漁業法、水産資源保護法、北海道海面漁業調整規則及び漁業法

第84条に基づく海区漁業調整委員会の委員会指示等を遵守して営まれている。

漁業の適切な管理を図るため、北海道庁、海上保安庁及び警察による取り締まりの体制

が構築されている。審査項目 1-1-2 に管理および取り締まり機関の体制図を掲載した。

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【審査項目 1.2.1 ②】

審査対象となる漁業を含む、当該漁業全体に関連する規制や取決め等を遵守していない

場合にとられる措置(罰則等)があり、実施されているか。

□ 法令・規則を遵守しなかった場合の措置(罰則)

【評価】

適合

【審査員の所見】

資料にある関係法令違反で取り締まりが実施されていることが確認できる。

【評価の根拠】

漁業関係の法令違反により海上保安部、道警察、水産庁、道取締船に摘発、検挙された

人数は、2012~2015 年の 4 年間では、年間 300 人強となっている(北海道水産林務部漁

業管理課調べ)。

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1.2.2 「資源管理計画」の策定及び履行

【要求事項】

審査対象となる漁業及び対象資源について、科学的根拠を勘案し、国及び地方公共団体が

作成した「資源管理指針」(管理目標及び管理措置を含む)に沿って、関係漁業者が「資源

管理計画」を作成している、あるいはこれと同等の資源管理措置を遵守する実効ある管理

ルールが確立されている。また、その履行状況が確認されている。

【審査項目 1.2.2 ①】

漁獲努力量と漁獲量の包括的規制に関する「資源管理指針」及び左記に沿った当該漁業

及び対象資源の「資源管理計画」(または同等の資源管理措置)が作成されているか。

□ 「資源管理指針」(同等のものを含む)の作成

□ 「資源管理計画」(同等のものを含む)の作成

【評価】

適合

【審査員の所見】

漁獲魚種及び定置漁業に関する資源管理指針が策定されていることが資料の指針及び事

例で確認できる。

【評価の根拠】

北海道水産業における主要魚種および主要漁業ついて、北海道庁が「北海道資源管理指

針」を作成している(www.pref.hokkaido.lg.jp/sr/ggk/sisin.htm)。中でも第2「海洋

生物資源毎の動向及び管理の方向」の1に「さけ定置漁業」が記載されており、(1)漁

獲の状況、(3)資源管理措置を取り上げている。

指針に沿って、各漁業協同組合により「資源管理計画」が作成されている。

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【審査項目 1.2.2 ②】

「資源管理計画」の履行状況が、漁業を管理する組織によって確認されているか。

□ 「資源管理計画」の履行報告書

【評価】

適合

【審査員の所見】

資源管理計画の実施状況が定期的に確認されていることが分かる。

漁業関係団体、北海道立総合研究機構水産研究本部などで構成される北海道資源管理

協議会が設置されており、毎月の資源管理協議会へ報告される管理状況資料から資源管

理計画の履行状況を把握できる。

表 1.2.2-1 自主的資源管理措置履行確認一覧表の例

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1.2.3 参加型管理、透明性の確保

【要求事項】

審査対象となる漁業の管理に関する意思決定に、関係漁業者、研究者、行政、その他利害関

係者が参画しており、その合意形成プロセスが透明性を有している。

【審査項目 1.2.3 ①】

審査対象となる漁業の管理に関する意思決定に、関係漁業者、研究者、行政、その他利害

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関係者が参画しているか。

□ 利害関係者が参加する組織図あるいは概要

【評価】

適合

【審査員の所見】

海区漁業調整委員会(含む連合海区)は法的に漁業者の意見を反映させるために組まれ

た体制・組織であり、道に対し意見を述べる権限を持っている。また、資源維持を図るさ

け・ます増殖事業協会は、歴史的に長い時間をかけて構築された体制・組織である。従っ

て、意思決定にあたり充分に漁業関係者等の意見が反映されている。

【評価の根拠】

海区漁業調整委員会(10 海区)において、漁業者・利害関係者・学識経験者等の意見

が反映され意思決定が行われている

(http://www.pref.hokkaido.lg.jp/ki/kgt/index.htm)。また、サケ資源の維持・増殖

に関しては、さけ・ます増殖事業協会、漁業者、道、国の関係者及び連合海区漁業調整

委員会が参画して意思決定を行っている。

図 1.2.3-1 北海道のさけ・ます増殖事業の管理体制

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【審査項目 1.2.3 ②】

合意形成プロセスが存在するか。

□ 合意形成プロセスのルール、協議の記録

【評価】

適合

【審査員の所見】

合意形成のための仕組みは確立されており、適正に合意形成が諮られていることが確

認できる。

【評価の根拠】

利害関係者による検討が必要な場合は海区漁業調整委員会に諮られ、合意形成がなさ

れている。北海道連合海区漁業調整委員会のホームページでは同委員会の開催状況(開催

月日、議事事項およ検討結果)が公開されている。

(http://www.pref.hokkaido.lg.jp/ki/kgt/kaisaizyoukyou.pdf)。

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1.2.4 広域的な協力体制の構築

【要求事項】

対象資源を利用する地域あるいは広域的な資源管理体制が構築されている。対象資源が、

国際的に管理されている場合(越境性魚類資源、跨界性魚類資源あるいは高度回遊性魚類

資源等)、当該機関等の定める資源管理措置を遵守している。

【審査項目 1.2.4 ①】

審査対象となる漁業を管理する国(または地方公共団体)に加え、対象資源を利用する

地域あるいは広域的な資源管理体制があるか。

□ 地域間の資源管理体制

□ 国家間の資源管理体制

【評価】

適合

【審査員の所見】

国内的・国際的に広域の管理体制が構築され、構成員となっていることが確認できる。

【評価の根拠】

北海道内の広域的な資源管理体制として、連合海区漁業調整委員会が設置されている

(http://www.pref.hokkaido.lg.jp/ki/kgt/index.htm)。

国家間の管理体制として、日本は NPAFC(北太平洋溯河性魚類委員会;北太平洋におけ

る溯河性魚類の系群の保存のための条約)に加盟し、溯河性魚類に関する国際的な管理体

制に参画している(https://npafc.org)。

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【審査項目 1.2.4 ②】

対象資源が国際的に管理されている場合、審査対象となる漁業を管理する国(または地

方公共団体)に加え、該当する国際的な機関等の定める資源管理措置を遵守しているか。

□ 管理措置を遵守しない場合の措置(罰則等)・違反状況

【評価】

適合

【審査員の所見】

サケが遡上する環太平洋5か国で条約が締結されており、違反に対する措置も規定さ

れているので適合していると見なすことができる。

【評価の根拠】

NPAFC(北太平洋溯河性魚類委員会)の第 1 条および第 3 条により、北緯 33 度以北の

北太平洋及び接続する諸海の水域であって領海の幅を測定するための基線から 200 海里

の外側に位置する水域において(第 1条:条約区域)、溯河性魚類(サケを含む)を対象

とする漁獲は禁止する(第 3条:保護措置)としている。さらに、条約(第 5条:取締)

により、管理措置に対する取り締まり内容が規定されている。

図 1.2.4-1 NPAFC 条約区域(第 1条)

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1.2.5 放流計画の策定

【要求事項】

対象資源の種苗放流が行われている場合は、国または地方公共団体が関係漁業者等と協議

の上、放流計画等が策定され、実施されている。

【審査項目 1.2.5 ①】

国または地方公共団体と関係漁業者等と協議を経て、放流計画等が策定され、実施され

ているか。

□ 「放流計画」(同等のものを含む)

□ 実施状況(報告書)

【評価】

適合

【審査員の所見】

放流計画等が策定、実施されていると判断できる。

【評価の根拠】

北海道でのさけ・ますふ化場放流計画の検討では、12 月に北海道庁(水産林務部漁業

管理課)が翌年度のふ化放流計画策定の基本的な考え方を示し、それを踏まえ、9管内の

さけ・ます増殖事業協会が中心となって各地区における翌年度のさけ・ますふ化放流計画

案(放流河川および放流数)を作成し、翌年 1月に北海道庁に提出する。

各地区のさけ・ますふ化放流計画案の提出を受けて、北海道さけ・ます増殖事業協会、

管内さけ・ます増殖事業協会、北海道庁および北海道立総合研究機構さけます・内水面水

産試験場が集まり、各地区の計画案について検討する。ここでの検討を踏まえて、北海道

庁が翌年度のふ化放流計画案をとりまとめ、3月に北海道連合海区漁業調整委員会に諮問

し、同委員会での答申を経て、さけ・ますふ化放流計画が決定される。

なお、ふ化放流計画ではサケ(シロザケ)のほか、カラフトマス、サクラマス、ベニザ

ケが対象魚種となっている。

秋以降、各地区でのサケの親魚捕獲、採卵が開始されると、毎日の親魚捕獲数(日別、

河川別、雌雄別)が公益社団法人北海道さけ・ます増殖事業協会のデータベース上で集計

され、関係機関の担当者はインターネット経由で捕獲数を確認することができる。その後

の各ふ化場での卵管理、稚魚の飼育と放流実績(放流月日、放流河川、放流数および稚魚

のサイズ)は放流事業終了後、各管内さけ・ます増殖事業協会から北海道庁に報告され、

集計される。

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1.2.6 予防的アプローチ、順応的管理

【要求事項】

水産資源や生態系、資源管理に伴う様々な不確実性を考慮し、漁業管理が予防的に行われ

ている。また、対象資源や生態系の状態に応じて、管理施策の内容を順応的に修正、改善す

る仕組みを有していること。

【審査項目 1.2.6 ①】

環境変動等に伴う様々な不確実性を考慮し、臨機応変な対応ができる体制ができている

か。

□ 予防的措置、順応的管理の仕組みの有無

【評価】

適合

【審査員の所見】

管理における不確実性及び予防的措置については、漁期前の来遊予測に基づき親魚を

確保するための措置が検討される体制が確立されており、充分考慮されていると判断で

きる。また、管理施策を順応的に修正、改善する仕組みとして北海道さけ・ます増殖事業

協会が中心的な役割を果たしていることが分かる。

【評価の根拠】

北海道におけるサケの漁業および増殖管理では、北海道立総合研究機構さけます・内水

面水産試験場が漁期前の 5 月までにその年の秋のサケの来遊数を予測する。同試験場で

の来遊予測は、北海道におけるサケの漁業と増殖管理の単位である 5海区 14 地区ごとに

算出され、毎年 6 月に開催される北海道連合海区漁業調整委員会において来遊予測の数

値が公表される。それに続いて 7 月には北海道定置漁業協会が全道の 8 箇所で漁業者、

増殖関係者等を集めた会合「現地対話集会」を開催し、さけます・内水面水産試験場が各

地区の来遊予測について詳しく説明する。来遊予測の結果、河川での親魚捕獲見込みが

「さけ・ますふ化放流計画」に定められた捕獲計画数を大きく下回る場合には、漁期前の

時点で、親魚確保のための対策が漁業者、増殖事業協会、道庁などの関係者により検討さ

れ、対応策が用意される。漁期に入り、各河川において親魚遡上数が毎日報告され、親魚

が不足する場合には、沿岸の定置網の操業期間の短縮や網の一部撤去などを行い、親魚遡

上数を確保するための措置が実施される。実際の措置(手法、期間など)については親魚

数を把握しながら、関係者が集まり随時検討を行って決定する。

このように北海道におけるサケの管理では、北海道庁の管理の下、試験研究機関から情

報も踏まえて不確実性及び予防的措置を考慮し、関係機関が連携して産卵親魚数を確保

するための実施体制が構築されている(管理体制は審査項目 1.2.3 で示したとおり)。

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適合の判定基準(審査の手引き)2.1

北海道秋鮭定置網漁業

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1.2.7 多面的利用に関する合意形成

【要求事項】

審査対象となる漁業の操業水域において、漁業生産以外の活動が行われている場合、管理

措置の実効性について当事者間の継続的な話し合いが持たれており、その内容が記録され

ている。

【審査項目 1.2.7 ①】

(該当する場合には、)漁業以外の幅広い関係者も参画した協議の場が設定されており、

協議内容が記録されているか。

□ 協議の場の有無

□ 協議の結果が管理に反映されている記録

【評価】

適合

【審査員の所見】

漁業の操業水域における海面利用について幅広い話合いの組織・体制が構築されてお

り、持続的に活動が実施され、それらの内容も記録されていることが資料から確認でき

る。

【評価の根拠】

漁業と遊漁等の円滑な海面利用の調整を図るため、北海道海面利用協議会が設置され

ている(http://www.pref.hokkaido.lg.jp/sr/ggk/ggs/new/kyougikai.htm)。また、海区

漁業調整委員会においても海面利用の調整に関する検討、協議が行われている

(http://www.pref.hokkaido.lg.jp/ki/kgt/index.htm)。

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漁業認証規格 2.0

適合の判定基準(審査の手引き)2.1

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1.2.8 管理ルールの周知

【要求事項】

管理ルールや漁業者の取組みについて、漁業者以外にも情報発信されている。

【審査項目 1.2.8 ①】

管理ルールや漁業者の取組みについて、漁業者以外にも情報発信されているか。

□ 情報発信・開示の有無

【評価】

適合

【審査員の所見】

資料の冊子から管理ルールや漁業者の取組みが、漁業者以外の一般人へ情報発信され

ていることが確認できる。

【評価の根拠】

一般の人々に対する啓蒙・周知活動として、管理ルールや漁業者の取組みについてわか

りやすく解説した「フィッシングルール 2017 ルール&マナー」を作成し、冊子体として

各振興局から釣具店等に配布するとともに、ホームページ上で公開している

(http://www.pref.hokkaido.lg.jp/sr/ggk/ggs/new/turi-osirase/top2.htm)。

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漁業認証規格 2.0

適合の判定基準(審査の手引き)2.1

北海道秋鮭定置網漁業

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管理点 2.対象資源に関する要件

2.1 生物学的情報の把握

【要求事項】

対象資源の生物学的情報(以下の項目を含む)が把握されている。

① 分布と回遊

② 年齢・成長・寿命

③ 成熟と産卵審査対象となる漁業を管理するための組織及び体制が確立されている。

【審査項目 2.1 ①】

対象資源の分布と回遊

□ 対象資源の分布に関する知見・文献

□ 対象資源の回遊に関する知見・文献

【評価】

適合

【審査員の所見】

審査対象のサケの生物学的情報については古くから多くの科学的知見が蓄積されてい

る。分布や回遊に関する知見も十分に得られていることが提出された資料により確認で

きる。

【評価の根拠】

サケの分布および回遊について多くの知見が得られている(永沢, 2015; 浦和, 2015

など)。サケは北太平洋に広く分布しており、北太平洋のアジア側および北米側の広い範

囲の河川に遡上、産卵する。日本はサケのアジア側の分布域の南限近くに位置しており、

北海道から九州までの範囲で遡上が確認されている(永沢, 2015)。海洋における回遊範

囲や経路については近年の耳石への温度標識や遺伝解析の技術向上により、詳細な情報

が得られるようになった(浦和, 2015)。北海道系を含む日本系のサケは春に河川から海

洋へ降海した後、水温が上昇する初夏には北海道沿岸を離れてオホーツク海に回遊し、そ

の後、北西太平洋、ベーリング海、アラスカ湾を回遊した後、成熟した個体から産卵のた

めに回帰することがわかっている(浦和, 2015)。

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(永沢, 2015)

(浦和, 2015)

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【審査項目 2.1 ②】

対象資源の年齢・成長・寿命

□ 対象資源の年齢・寿命に関する知見・文献

□ 対象資源の成長に関する知見・文献

【評価】

適合

【審査員の所見】

審査対象のサケの生物学的情報については古くから多くの科学的知見が蓄積されてい

る。年齢・寿命および成長に関する知見も十分に得られていることが提出された資料によ

り確認できる。

【評価の根拠】

サケの年齢・寿命および成長について多くの科学的知見がある(小林, 1961; 宮腰ら,

2015; 斎藤ら, 2015)、日本系のサケの成熟年齢は 2~8年と幅があるが、4年魚と 5年魚

が主体であり全体の 90%近くを占める。近年は成熟年齢が高齢化していることが報告さ

れており、9歳魚の回帰が確認されている(宮腰, 2014)。サケは生涯で一回だけ繁殖し、

繁殖行動後にはすべての個体が死亡するので、回帰年齢と寿命は同じである。

成長については、春に概ね体長 5 cm 未満で降海した稚魚は、7~8 cm 程度に成長する

7月頃になると離岸して沖合へと回遊する。1歳の夏には 30 cm を超え、2歳の夏に 40 cm

を超える(Ishida et al., 1998; 水産庁・水産研究・教育機構, 2017)。その後、成長し

た魚から回帰し、回帰時の平均体長は 3年魚では 60 cm、4 年魚では 65 cm、5 年魚では

70 cm 程度である(北海道立総合研究機構, 2018)。ただし、サケの成熟時の体サイズは

地域間や河川間で異なり、近年はサケが小型化する傾向がみられている(Ishida and Ito,

1993)。

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【審査項目 2.1 ③】

対象資源の成熟と産卵

□ 対象資源の成熟に関する知見・文献

□ 対象資源の産卵に関する知見・文献

【評価】

適合

【審査員の所見】

審査対象のサケの生物学的情報については古くから多くの科学的知見が蓄積されてい

る。成熟および産卵に関する知見も十分に得られていることが提出された資料により確

認できる。

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【評価の根拠】

サケの成熟および産卵に関する情報は古くから多くの知見がある(佐野, 1955; 佐野・

長沢, 1958)。沿岸に回帰したサケは成熟が進むと河川に遡上し、河川内で成熟、産卵す

る。産卵時期は 8 月から 1 月にかけてである。河川遡上時期や孕卵数、卵径などの繁殖

形質には地域および河川による違いがみられる(斎藤ほか, 2015)。

河川内でサケが産卵する環境についても古くから調べられ、サケは湧水がある場所な

ど通水性の高い河床の砂礫を掘って産卵することがわかっている。産卵床は水深 50 cm

未満の場所に造られることが多いが(佐野, 1955)、50~100 cm 程度の深い場所に造られ

ることもある(佐野・長沢, 1958)。産卵床が造られる箇所の流速は 20~30 cm/秒である

ことが多い(小林, 1968)。産卵床内の水温は河川の表流水よりも高く、冬季間でも 8℃

以上の水温が保たれている場合もあることが報告されている。

近は北海道内の河川でのサケの遡上・産卵状況について調査が行われ(宮腰ら, 2011;

Miyakoshi et al., 2012)、発生した稚魚の生息環境なども調べられている(卜部ら,

2015)。自然産卵サケの保全の重要性の認識が高まっており、多くの論文が発表され科学

的知見が蓄積されている(長谷川ら, 2013; 森田ら, 2013a; 2013b; Kitada, 2014)。

表 2.1-1 地域ごとのサケの回帰率、体長、成熟年齢、卵径、卵数(斎藤ら, 2015)

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図 2.1-1 サケとカラフトマスの産卵床

数と流速(小林, 1968)

図 2.1-2 サケとカラフトマスの産卵床

内の水温と河川水温(小林, 1968)

表 2.1-2 北海道内のサケの自然産卵がみられた河川数(宮腰ら、 2011)

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2.2 科学的根拠

【要求事項】

対象資源の現状と傾向を判断するための科学的根拠が収集・維持されている。

【審査項目 2.2 ①】

① 対象資源の管理にあたっては、国際的な基準に沿った、科学的な根拠に基づく以下の

データが、収集・維持されているか。(国際的な基準とは、FAO Guideline for the

routine collection of capture fishery data 等のこと。)

□ 漁獲量のデータ

□ 漁獲努力量のデータ

□ その他対象種の資源評価に必要なデータ

【評価】

適合

【審査員の所見】

サケの漁獲、採卵数や河川への遡上等現状と傾向を判断するために必要な科学的デー

タが収集・維持されていることが提出された資料から分かる。漁獲努力量を示すデータと

して定置網の免許統数が相当し、既に提示されている 1-1-3 により確認できる。

【評価の根拠】

サケの漁獲量(尾数、金額)は北海道連合海区漁業調整委員会が毎旬取りまとめてい

る。同委員会は各海区漁業調整委員会および各漁業協同組合を通じ、定置漁業以外の漁業

による混獲も含む、すべての漁獲量データを集計している。河川での採卵用親魚の捕獲は

全道に 9 つある各管内さけ・ます増殖事業協会が実施しており、各河川での捕獲数は毎

日、公益社団法人北海道さけ・ます増殖事業協会が集計している。

漁獲努力量については、北海道におけるサケの漁獲はほとんどが定置漁業によるもの

であることから、定置網の免許件数を漁獲努力量とみなすことができる。また、漁期終了

時には各定置網の操業状況が北海道庁に報告されている。

その他の資源評価に必要なデータとして、サケでは年齢組成を調べ、年級別の回帰率を

把握する必要がある。北海道立総合研究機構さけます・内水面水産試験場では北海道内の

28 河川に遡上したサケの年齢・魚体サイズを旬ごとに調べており(北海道立総合研究機

構, 2018)、得られたデータが資源評価に活用されている。

表 2.2-1 さけ沿岸漁獲速報(北海道連合海区漁業調整委員会)

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表 2.2-2 北海道内の河川に遡上したサケの年齢組成(北海道立総合研究機構, 2018)

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表 2.2-3 北海道内の河川に遡上したサケの年齢組成(北海道立総合研究機構, 2018)

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2.3 対象漁業以外の漁獲及び回復力の考慮

【要求事項】

資源評価にあたっては、対象資源の分布範囲における、審査対象となる漁業以外による漁

獲の影響、及び資源の回復力についても考慮されている。

【審査項目 2.3 ①】

① 対象資源の現状と動向の評価にあたっては、対象資源の分布範囲とみられる全域にお

ける、全ての漁業による対象資源の漁獲と、それに起因する致死(投棄、未確認の致

死、意図的な致死、未報告の漁獲、漁獲等含む)を考慮しているか。

□ 審査対象となる漁業による対象漁業の漁獲データ

□ 審査対象となる漁業以外による対象資源の漁獲データ

【評価】

適合

【審査員の所見】

秋サケ定置網以外の漁法による漁獲も存在するが、それらの漁獲量も把握されており、

定置網以外の漁業における漁獲は混獲レベル(年による変動はある)である。一方、遊漁

は規制されており一定ルールの元で管理されている。これらの資料から漁獲量に関する

記録が得られており充分影響が考慮されていることが分かる。

【評価の根拠】

対象漁業、すなわちサケ定置漁業による漁獲量データは審査項目 2.2①に提示したとお

り、北海道連合海区漁業調整委員会により集計され、把握されている。

また、対象以外の漁業による漁獲についても、北海道連合海区漁業調整委員会が同時に

取りまとめており、漁獲尾数、重量および金額が把握されている(はえ縄、混獲)。

河川での捕獲尾数は北海道さけ・ます増殖事業協会により集計され、把握されている。

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【審査項目 2.3 ②】

② 対象資源の「資源管理措置」は、対象資源の分布範囲とみられる全域における、全て

の漁業による対象資源の漁獲に関する影響を考慮しているか。

□ 対象資源を漁獲するすべての漁業による対象資源の影響の有無

【評価】

適合

【審査員の所見】

対象資源を漁獲するすべての漁業による漁獲量は把握されており、それら資料を基に

対象資源(サケ)の現況、資源動向及び管理方策が定められて実践されている。従って、

充分影響が考慮されていることが分かる。

【評価の根拠】

対象漁業および対象以外の漁業による漁獲は把握されており、水産庁および水産研究・

教育機構ではそれらを基にして日本系サケの資源評価を行っている(水産庁・水産研究・

教育機構, 2017)。北海道立総合研究機構さけます・内水面水産試験場では北海道系サケ

の資源評価と来遊予測を行っている。これらの資源評価をもとに、北海道庁では北海道資

源管理指針を策定し、その中で資源管理措置が定められている。これらのことから、資源

の現況評価や資源管理措置の検討、決定においては、対象資源の分布域における対象資源

を漁獲するすべての漁業による対象資源への影響を考慮しているとみなすことができ

る。

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【審査項目 2.3 ③】

③ 対象資源の現状や動向の評価は、対象資源の回復力に寄与する生物学的特性(寿命な

ど)を考慮しているか。

□ 回復力に寄与する対象資源の生物学的特性(寿命など)の考慮の有無

【評価】

適合

【審査員の所見】

サケ資源の回復力に関しては、生活史における産卵から稚魚期、さらに産卵期までの生

残率の把握が重要である。サケのついてはこれら生物学的特性に関する研究がなされて

おり、資源評価において考慮されていると判断できる。

【評価の根拠】

資源の回復力を評価するには、生活史を通じたサケの生残率に関するデータが必要で

ある。サケマス類では河川での産卵から稚魚期までの死亡率が高いことが知られており

(Bradford, 1995)、北海道内でも古くからサケの産卵から稚魚の降下時期までのデータ

が得られている(長沢・佐野, 1961)。稚魚から成魚まで生残率は、放流数と来遊数から

回帰率として計算することができる。これらのデータは北海道および北海道立総合研究

機構さけます・内水面水産試験場が収集、保管している。北海道を含む全国のサケの回帰

率は水産研究・教育機構北海道区水産研究所のホームページ上で公表されている(北海道

区 水 産 研 究 所 ホ ー ム ペ ー ジ ;

http://salmon.fra.affrc.go.jp/zousyoku/ok_relret.htm)。このほかにも北海道のサケ

の回帰率について、海水温変動の影響、稚魚のサイズの効果なども含む詳しい分析も行わ

れており(永田, 2009; Saito and Nagasawa, 2009; Saito et al., 2011)、回復力に寄

与する対象資源の生物学的特性が考慮されていると評価することができる。

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図 2.3-1 日本系サケの回帰率(1963~1988 年級)(永田, 2009)

図 2.3-2 海水温とサケの回帰率の関係(Saito and Nagasawa, 2009)

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2.4 資源評価及び結果の開示

【要求事項】

収集された情報をもとに対象資源の現状と傾向に関する評価が行われ、評価結果が管理の

ための意思決定に反映されている。また、評価結果及びその手法について、適時情報が開示

されている。

【審査項目 2.4 ①】

「 良の科学的根拠」に基づいた対象資源の評価が実施されているか。また、その評価

結果に基づき、予防的措置や順応的管理が実施されているか。

□ 「 良の科学的根拠」に基づいた対象資源の評価

□ 「 良の科学的根拠」に基づく評価結果が反映された、予防的措置及び順応的管理

【評価】

適合

【審査員の所見】

豊富な情報を幅広く収集して、科学的研究を根拠にした資源評価が行われていること

が、資料から分かる。

【評価の根拠】

既に示された漁獲データおよび回復力に寄与する生物学的な情報を踏まえ、水産庁お

よび水産研究・教育機構が日本系のサケ資源の現況を評価している。北海道系のサケに

ついては、北海道立総合研究機構さけます・内水面水産試験場が資源評価および来遊予

測を実施している(http://www.hro.or.jp/list/fisheries/research/hatch/

section/shigen/td6oqn0000000v98.html)。

さけます・内水面水産試験場は前年までのサケの年齢別来遊数に基づき、毎年 6 月上

旬までにその年のサケの来遊予測の数値をとりまとめ、各地区における親魚確保の見込

みについて北海道庁に報告する。さらに、6月中旬には、北海道さけ・ます増殖事業協会

が主催する「さけ・ます増殖等に関する連携調整会議」が開催され、北海道庁、さけます・

内水面水産試験場、北海道区水産研究所、北海道定置漁業協会が集まり、親魚確保のため

の措置の必要性を検討する。北海道におけるサケ資源・増殖の統括管理を担う北海道庁で

は、親魚の不足が見込まれる地区については、事前に当該管内さけ・ます増殖事業協会に

その旨を伝え、地区内での親魚確保措置について漁期前の検討を促す。このように、漁期

前の時点で親魚の不足が見込まれる場合には親魚および種卵確保のための措置を事前に

準備する。その上で漁期に入り、来遊状況および河川への親魚の遡上状況をリアルタイム

で把握し、親魚確保のための措置を講じるかどうか、また、措置を講じる必要がある場合

にはどのような手法(網の一部撤去またその度合いなど)でどの程度の期間実施するかな

ど、漁業者、増殖関係者が主体となって決定している。このように、北海道のサケの資源

管理では「 良の科学的根拠」に基づき、産卵親魚量の確保のために予防的かつ順応的な

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管理が実施されている。

【審査項目 2.4 ②】

対象資源の評価結果が、「資源管理指針」及び「資源管理計画」の作成のための意思決定

に反映されているか。

□ 評価結果の意思決定への反映を示す報告書、議事録

【評価】

適合

【審査員の所見】

「 良の科学的根拠」に基づいた資源評価が実施されており、北海道庁ではそれに基づ

いて「資源管理指針」を作成している。さらに、指針を実施するために各漁業協同組合に

より「資源管理計画」が作成されている。漁業管理のための意思決定に反映されるための

システムがあり、実施されていることは資料から確認できる。

【評価の根拠】

北海道庁では、水産研究・教育機構および北海道立総合研究機構による資源評価に基づ

き、資源管理指針(案)が検討、作成されている。作成された資源管理指針(案)は連合

海区漁業調整委員会に諮られ、そこで承認を受けて決定される。資源管理指針に沿って各

漁業協同組合により資源管理計画が作成されている。これらのことから評価結果が資源

管理指針(http://www.pref.hokkaido.lg.jp/sr/ggk/sisin.htm)や資源管理計画の決定

に反映されているとみなすことができる。

図 2.4-1 近のサケの漁獲量と金額(北海道資源管理指針,平成 29 年 12 月, 6 p)

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【審査項目 2.4 ③】

漁業管理を行う組織が、対象資源の状況や、審査対象となる漁業による対象資源や生態

系への悪影響の見込みや程度について、時宜を得た 良の科学的根拠を受けとれるか。

また、漁業管理を行う組織が定期的に(あるいは必要に応じて)、情報収集、資源評価、

管理対象・目標・計画・措置の策定、あるいは漁業規則の設定等を行うために、総合的な

プロセスを運営するための機会を設けているか。

□ 時宜を得た科学的根拠を受けとるための包括的な体制

□ 総合的なプロセスを運営するための包括的な体制

【評価】

適合

【審査員の所見】

評価結果が漁業管理のための意思決定に反映されるためのシステムがあり、実施され

ていることは資料から確認できる。特に、海区漁業調整委員会制度は都道府県に対応する

漁業者主体の意思決定を実践する機能を持つ。

【評価の根拠】

北海道系のサケについて、北海道立総合研究機構さけます・内水面水産試験場が北海道

内の 5海区 14 地区ごとの資源評価を行い、漁期前には来遊数および親魚の確保見込みを

予測している。資源評価および来遊予測の結果がまとまった時点でさけます・内水面水産

試験場は北海道庁(水産林務部漁業管理課)にその結果を伝え、情報を共有している。さ

けます・内水面水産試験場が実施する資源評価や来遊予測の結果は、毎年 7 月に北海道

定置漁業協会が全道 8 箇所で開催する「現地対話集会」で北海道内の漁業および増殖関

係者に情報提供されている。さらに、その年の北海道へのサケの来遊結果について、同協

会が 12 月に札幌市で開催する「定置漁業振興会議」で関係者に対して報告される。そこ

ではサケの資源動向だけでなく、サケ漁業および増殖が関係する(サケの生息環境、被捕

食者、同所に分布する他の魚種に関することなど)特徴的な事象についても適宜、情報提

供されている。また、水産研究・教育機構北海道区水産研究所では北海道系を含む日本系

のサケについて資源評価やサケの資源変動に関する各種調査研究を行っており、毎年8月

上旬には札幌市において「さけます関係研究開発等推進会議 さけます報告会」を開催し、

新の資源動向や調査結果について漁業・増殖関係者、道県庁および試験研究機関に対し

て情報提供をしている。このように科学的データに基づくサケの資源評価の結果および

サケ漁業・増殖に関連する 新の調査結果が定置漁業者および増殖事業関係者、管理組織

である北海道庁等に定期的に報告される機会が設定されている。

北海道におけるサケの放流計画、来遊予測、来遊および親魚捕獲状況、その他の資源お

よび漁業管理に関する措置の決定に向けては、定期的に開催される北海道連合海区漁業

調整委員会で議論され、意思決定がなされている。このように、サケ定置網漁業による対

象資源であるサケおよびそれを取り巻く生態系への影響について、定期的に情報共有が

図られ、管理措置が検討、決定される体制が整っている。

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50

【審査項目 2.4 ④】

対象資源の評価結果及びその手法について、適時情報が開示されているか。

□ 対象資源の評価手法及び結果の開示

【評価】

適合

【審査員の所見】

資源評価やそれに基づく来遊予測については水産庁および北海道立研究機構のホーム

ページに公開されており、広く公表されていることが分かる。

【評価の根拠】

現在、日本系サケの資源評価は水産庁および水産研究・教育機構が実施しており、 近

の 資源状況 をホーム ページ上 で閲覧す ることが 可能とな っている ( www.

kokusai.fra.go.jp/index-2.html)。

北海道系サケの資源評価については北海道立総合研究機構さけます・内水面水産試験

場が実施しており、毎年漁期前の来遊予測をホームページ上で公開している

(http://www.hro.or.jp/list/fisheries/research/hatch/section/shigen/td6oqn0000

000v98.html)。漁期終了時期の 12 月中旬には北海道定置漁業協会が北海道内の漁業関

係者を集めて札幌市で会議を開催し、そこで、さけます・内水面水産試験場が来遊状況

を、北海道漁業協同組合連合会が流通状況を報告している。そこでの報告内容は冊子体

に印刷され、関係者に配布されている。このように、資源評価の手法および結果は開示

(公開)されている。

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51

2.5 資源管理方策の設定

【要求事項】

大持続生産量(MSY)または適切な代替基準を実現できる水準に対象資源を維持、回復さ

せることを目的として、公的機関によって設定された維持すべき水準(目標管理基準)や下

回ってはならない水準(限界管理基準)、あるいは科学的根拠に基づき代替水準が設定され

ている。

【審査項目 2.5 ①】

管理目標において、予防的措置や 良の科学的根拠に基づき、「対象種」、「限界管理基準」、

あるいは「代替水準」を定義しているか。また、「目標管理基準」は、平均してMSY(あ

るいは代替水準)を達成するよう定義され、「限界管理基準」は、加入乱獲や回復不可能

な影響(あるいは回復がほとんど見込まれない影響)を避けるよう定義されているか。

□ 管理目標等において、「対象種」、「限界管理基準」、「目標管理基準」、あるいは「代替

水準」の適切な定義

【評価】

適合

【審査員の所見】

管理方策としては産卵親魚量(取り残資源量)一定方策が採用され、MSY 方式の代替基

準として設定されている。管理基準値に相当する数値として、河川ごと、時期ごとの必要

親魚数を北海道庁が定めている。

【評価の根拠】

北海道のサケの資源管理は、産卵親魚量一定方策という考え方によって行われている。

これにより再生産用の親魚量を確保し、加入乱獲を避けるという考え方である。管理基準

値に相当するものとして、北海道内の各地区、各河川における必要親魚数が北海道庁が毎

年策定する「さけ・ます人工ふ化放流計画」に明記されている。漁期中には各河川に遡上

する親魚数が毎日集計され、親魚数が不足することがないようモニタリングが行われて

いる。親魚数の不足が見込まれる場合には、当該地区の関係者が協議をし、沿岸での漁獲

率を低下させる措置を講じる体制が整っている(管理措置検討の体制について審査項目

1.1.2 に記載)。

表 2.5-1 さけ・ます人工ふ化放流計画に記された親魚捕獲予定数の地区別総括表

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表 2.5-2 さけ・ます人工ふ化放流計画に記された河川別親魚捕獲数(抜粋)

平成29年度 海区別さけ・ます親魚捕獲採卵及び放流計画

親魚捕獲 採  卵 稚魚放流 親魚捕獲 採  卵 稚魚放流 使用親魚 採  卵 稚魚放流 幼魚放流 親魚捕獲 採  卵 稚魚放流 幼魚放流

予 定 数 予 定 数 予 定 数 予 定 数 予 定 数 予 定 数 予 定 数 予 定 数 予 定 数 予 定 数 予 定 数 予 定 数 予 定 数 予 定 数

(尾) (千粒) (千尾) (尾) (千粒) (千尾) (尾) (千粒) (千尾) (千尾) (尾) (千粒) (千尾) (千尾)

オホーツク 340,300 301,000 236,800 267,600 121,500 94,900 2,600 1,300 1,000 100

日 本 海 201,200 200,900 197,400 0 0 2,000 2,540 3,220 1,675 1,031

根   室 259,800 227,800 192,000 119,600 51,300 41,500 510 390 170 130

えりも以東 278,300 255,530 216,900 0 0 0 60 60 50 0

えりも以西 221,200 230,440 199,600 75 110 100 150 150 0 100

全 道 計 1,300,800 1,215,670 1,042,700 387,200 172,800 138,400 5,725 5,020 2,945 1,261 210 210 50 100

海  区

サ  ケ カラフトマス サクラマス ベニサケ

平成29年度 サケふ化放流計画(河川別合計)北水研への 稚魚 稚魚

捕獲場 供給卵数 受給卵数 供給卵数 ふ化場 生産尾数 供給場 稚魚数 放流水系 放流数

(尾) (千粒) (千粒) (千粒) (千粒) (千粒) (千尾) (千尾) (千尾)

秋の川 1,500 ◎文吉湾 1,500秋の川 500 ルシャ 1,500来運 1,000

岩尾別 8,600 7,300 岩尾別 2,300 1,900 来運 3,100 岩尾別 5,000秋の川 2,000 ◎ウトロ漁港 2,000

(遠音別) 来運 1,000 遠音別 1,000来運 2,000 ◎知布泊漁港 2,000

(奥蘂別) 秋の川 4,000 奥蘂別 4,000来運 1,000 ◎斜里漁港 1,000

12,700 ※斜里 12,700 11,600斜里 51,700 43,900 秋の川 18,500 15,200 斜里 25,000

来運 17,700 14,300(止別) 止別 6,100 5,000 止別 5,000

相生 1,000 浦士別 1,000(藻琴) 藻琴 8,800 7,000 藻琴 7,000網走 75,800 64,500 相生 24,800 20,500 網走 31,000

上里 24,800 20,500上里 1,000 バイラギ 1,000

(能取) 相生 4,000 ◎能取漁港 8,000上里 4,000

136,100 115,700 0 0 12,700 8か所 115,700 96,000 26,100 15水系 96,000

置戸 1,500 ◎常呂漁港 1,000常呂 29,100 24,800 置戸 10,300 8,400 常呂 12,500

日吉 10,300 8,600置戸 500 佐呂間別 500置戸 1,100 ◎浜佐呂間 1,100置戸 1,900 ◎トカロチ沖 1,900

湧別五線 500 芭露 500湧別五線 150 ◎湧別湖南 150湧別五線 150 ◎湧別湖北 150湧別五線 700 ◎湧別漁港 700

湧別 36,000 30,900 丸瀬布 15,900 13,200 湧別 20,500湧別五線 10,800 8,800

渚滑 2,100 ◎コムケ湖 2,100渚滑 4,400 ◎紋別港湾 4,400

渚滑 27,200 23,400 渚滑 22,800 19,000 渚滑 12,500興部 3,000 ◎沙留漁港 3,000興部 2,000 ◎興部漁港 2,000

興部 13,200 11,000 興部 6,000幌内 1,000 ◎沢木漁港 1,000

(雄武) 幌内 2,000 雄武 2,000幌内 1,000 ◎雄武漁港 1,000幌内 1,000 ◎元稲府漁港 1,000幌内 500 ◎幌内漁港 500

幌内 27,100 23,200 幌内 19,000 15,500 幌内 10,000

119,400 102,300 0 0 0 7か所 102,300 84,500 23,500 22水系 84,500

収容卵数稚魚移動

オホー

ツク

東部

オホー

ツク

地区計

中部

オホー

ツク

地区計

海区

地区

(総合)

振興局

捕獲数 採卵数地区間移殖卵数

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【審査項目 2.5 ②】

長期的かつ持続的な資源の利用に向けた「管理目標」及びその達成に向けた「管理措置」

が、 良の科学的根拠に基づいて設定されているか。

□ 「管理目標」の設定(同等のものを含む)

□ 「管理措置」の設定(同等のものを含む)

【評価】

適合

【審査員の所見】

管理目標が水産庁および水産研究・教育機構による「国際漁業資源の現況」に書かれて

おり、北海道庁でも資源目標を設定している。管理基準には産卵親魚量を設定しており、

親魚数が不足することが見込まれる場合は、漁獲率を低下させて親魚の河川への遡上を

促す措置とその検討および決定手順を定めて実施している。

【評価の根拠】

日本系サケの管理目標は水産庁および水産研究・教育機構による「国際漁業資源の現

況」の中で「現在の資源水準を維持」することと記されている。北海道庁では「さけ・ま

すふ化放流計画中期策定方針」(さけ・ます増殖事業の推進についての基本方針;平成 29

年 3 月 31 日策定)の中で 5,000 万尾を来遊資源の目標として設定している。

管理目標を達成するために、毎年約 10 億尾の稚魚を放流することとしており、「さけ・

ますふ化放流計画」ではそれに必要な親魚数を定め、管理基準値としている。親魚数が不

足することが見込まれる場合は、沿岸での定置漁業による漁獲率を低下させて親魚の河

川への遡上を促す措置をとることとしている。親魚を確保するための措置をどのように

するか、すなわち、漁獲率を下げるための手法や期間などは当該地区の漁業者や行政、試

験研究機関により協議され、決定される。また、定置漁業免許状には、「再生産親魚に不

足が生じるおそれがあるときは、知事は、当該親魚の確保のための必要な措置を指示する

ことがある」と記されている。

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【審査項目 2.5 ③】

「管理目標」、「限界管理基準」、「目標管理基準」、あるいは「代替水準」に合致した、「ア

ウトカム(成果)指標」(あるいは同等のもの)が設定されているか。

□ アウトカム(成果)目標の設定(同等のもの含む)

【評価】

適合

【審査員の所見】

科学的根拠に基づいた管理基準を有しており、資源回復を達成する措置(体制と手順)

を実践している。これにより、過去の歴史から対象漁業の持続性が保たれている。

【評価の根拠】

北海道では、北海道庁がサケの管理目標として設定している来遊数 5,000 万尾を達成

するために 10 億尾の稚魚を放流することとしており、そのためには、北海道庁が定めた

「さけ・ますふ化放流計画」に記された親魚数 130 万尾を確保する必要がある。これが北

海道系サケの資源と持続的漁業を維持するための管理基準に相当する。

管理基準値に対する達成指標としては、北海道さけ・ます増殖事業協会が漁期中に集計

している親魚捕獲数あるいは採卵計画数に対する充足率がそれに相当する。計画に対し

て 100%の充足率となるように漁期中に遡上数のモニタリングが行われ、必要な管理措置

がとられている。

稚魚の海洋での生残率は自然環境の影響を受けて変動するため来遊数は変動している

が、毎年ほぼ計画どおりの親魚および稚魚の放流数を確保できており、管理基準が達成で

きるよう適切な措置がとられているものと評価することができる。

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漁業認証規格 2.0

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【審査項目 2.5 ④】

小規模漁業やデータ不十分な漁業の場合、リスクマネジメントを踏まえつつ、小規模漁

業やデータ不十分な漁業のための管理・運営体制が構築され、その体制に基づき管理が

行われているか。

□ 小規模漁業やデータ不十分な漁業の存在

□ 小規模漁業やデータ不十分な漁業のための管理・運営体制の存在

【評価】

該当なし

【審査員の所見】

サケ定置漁業は北海道水産業の基幹をなす漁業のひとつであり、データも多く存在す

ることから、本項目には該当しない。

【評価の根拠】

サケ定置漁業は北海道水産業の基幹をなす漁業のひとつであり、データも多く存在す

る。

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【審査項目 2.5 ⑤】

管理システムに活用される、伝統的な漁業、漁業者、または漁業地域に関する知識が、客

観的に検証できるようになっているか。

□ 検証する手段の存在

【評価】

該当なし

【審査員の所見】

サケ定置漁業に関する科学的なデータが十分蓄積されており、伝統的な知識等を活用

する必要はなく、本項目には該当しない

【評価の根拠】

サケ定置漁業に関する科学的なデータが十分蓄積されており、伝統的な知識等を活用

する必要はない。

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2.6 TAC(漁獲可能量)の遵守

【要求事項】

対象資源に漁獲可能量(TAC)制度が実施されている場合は、審査対象となる漁業により

遵守されている。

【審査項目 2.6 ①】

対象資源に漁獲可能量(TAC)制度が実施されている場合は、審査対象となる漁業に

より遵守されているか。

□ 審査対象となる漁業によるTACの遵守

【評価】

該当なし

【審査員の所見】

サケは TAC 対象種にはなっていないことから、本項目には該当しない。

【評価の根拠】

サケは TAC 魚種に含まれていない(水産庁ホームページ;

(http://www.jfa.maff.go.jp/j/suisin/s_tac/index.html)。

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2.7 過剰漁獲の防止

【要求事項】

対象資源に対して過剰な漁獲は行われておらず、資源回復措置を講じる必要のある基準を

下回る場合には、加入乱獲を避けるため適時必要な措置が講じられている。

【審査項目 2.7 ①】

過剰漁獲の定義が定められているか。

□ 過剰漁獲とみなされる基準値等、定義の設定(同等のもの含む)

【評価】

適合

【審査員の所見】

北海道のサケの資源管理では、産卵親魚数一定方策が採用されており、必要な親魚数が

設定されている。来遊数が多く、定置漁業により多くのサケが漁獲されているにもかかわ

らず河川への遡上数が少なく産卵親魚が不足する状態を過剰漁獲として定義されてい

る。

【評価の根拠】

北海道のサケの資源管理では、産卵親魚数一定方策が採用され、北海道庁が「さけ・ま

すふ化放流計画」の中で河川ごとに必要な親魚捕獲数を定めている。北海道へのサケの来

遊数が多いにもかかわらず沿岸に設置された定置網での漁獲率が高く、その結果、河川へ

の親魚の遡上数が少なく産卵親魚が不足する場合は管理目標を達成するための稚魚の数

を確保できないこととなり、この状態を過剰漁獲として定義することができる。

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【審査項目 2.7 ②】

審査対象資源が、過剰な漁獲の状態になっていないか。

□ 対象資源の資源状態

【評価】

適合

【審査員の所見】

サケの資源状態は公的評価として公表されており、有効な管理措置が示されて、必要な

場合には実施されている。また、産卵親魚数が毎年ほぼ確保されており、過剰な漁獲の状

態になっていないことが資料から分かる。

【評価の根拠】

水産庁・水産研究・教育機構による「国際漁業資源の現況」では日本系サケの資源評価

が行われ、資源水準は「中」、資源動向は「横ばい」とされている。ただし、この評価資

料の中で「1998 年級群以降、多獲地域である北海道のサケを中心に回帰率が大きく変動

しながら低下している」、とも記されているように、北海道へ回帰するサケの回帰率が低

下する傾向がみられ、2016 年以降は来遊数が顕著に少なくなった。しかしながら、遡上

数の少なくなった地区でも毎年、漁業関係者により親魚確保のための措置がとられ、その

結果、ほぼ計画どおりの親魚捕獲数・採卵数および稚魚放流数が確保されている。このこ

とから、産卵親魚数(130 万尾)確保のための適切な措置がとられており、対象資源は過

剰な漁獲になっていないものと判断される。

北海道へのサケの来遊数は 1970 年代から急速に増加し、1990 年代から 2000 年代半ば

にかけて 5,000 万尾を超える高い水準となった後、2008 年以降はピーク時と比べ減少し

ている。1970 年代以降の資源増加の要因として、放流技術の向上、北太平洋の気候変動、

公海での沖獲りの中止などが挙げられている(Kaeriyama, 1998; 1999; Miyakoshi et

al., 2013)。 近では来遊時の沿岸水温の上昇がサケの来遊数に影響する要因となって

いる可能性が指摘されている(宮腰, 2014)。

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60

図 2.7-1 北海道へのサケ来遊数と稚魚放流数

図 2.7-2 北海道でのサケ親魚捕獲数

0

2

4

6

8

10

12

14

0

1,000

2,000

3,000

4,000

5,000

6,000

7,000

197

0

197

5

198

0

198

5

199

0

199

5

200

0

200

5

201

0

201

5

放流

数(億

尾)

来遊数(万尾)

来遊数

放流数

0

1

2

3

4

5

6

1982

1984

1986

1988

1990

1992

1994

1996

1998

2000

2002

2004

2006

2008

2010

2012

2014

2016

親魚

捕獲

数(単

位:百

万尾

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【審査項目 2.7 ③】

対象資源が、合理的な時間枠のなかで、その資源回復が見込まれる管理目標の水準を下

回った場合に発動される管理措置が準備されているか。なお、措置の設定に当たっては、

過去に移入され自然の生態系の一部になっている種も考慮する。

□ 資源回復に向けた措置の準備(同等のもの含む)

【評価】

適合

【審査員の所見】

北海道のサケの来遊数が管理目標を下回った場合でも、漁獲規制を行い、管理基準値に

相当する産卵親魚量を確保するための措置が準備されている。

【評価の根拠】

前述のとおり、漁期中には各河川での毎日の親魚の捕獲数が把握され、リアルタイムで

北海道さけ・ます増殖事業協会のデータベースに集計されている。河川への親魚の遡上数

が不足する場合には関係者が協議し、沿岸の定置網での漁獲率を軽減し、親魚を確保する

措置をとる体制が準備されている。

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62

管理点 3.生態系への配慮に関する要件

3.1 生態系に配慮した管理体制の確立

3.1.1 非対象種及び生態系への影響評価のための情報

【要求事項】

審査対象となる漁業が非対象種及び生態系に与える影響を評価するため、以下の項目に関

し、科学的根拠に基づいた情報が収集・維持されている。

(i) 対象資源以外の漁獲及び投棄

(ii) 当該漁業による希少種の混獲及び保全・保護の取り組み

(iii) 対象資源にとって重要な生息域に関する情報(産卵場や稚魚の生育場など)

(iv) 当該漁業が使用する漁具が生態系(海底環境など)に与える影響

(v) 対象資源の被捕食関係

(vi) 生態系全体のバランス(生態系の攪乱を起こしていないか)

【審査項目 3.1.1 ①】

以下全てについて、十分に信頼できる 新の情報が存在しているか。

(i) 審査対象となる漁業による、非対象種の混獲(投棄を含む)に起因する、当該非

対象種の過剰漁獲やその他の回復不可能な影響(あるいは回復がほとんど見込ま

れない影響)に関する情報と評価。

(ii) 審査対象となる漁業による、希少種への影響に関し、国際的な基準に沿って収集

された情報と評価。

(iii) 審査対象となる漁業による、対象資源の重要な生息域、及び左記漁業で使用す

る漁具に対し特に脆弱な生息域への影響の情報と評価。(左記漁業により潜在的

に影響を受ける空間部分のみではなく、関係する生息域の全ての空間を含む。)

(iv) 対象資源が、生態系の中で主要な被食種であるか、もしその場合には、対象資源

の漁獲が捕食種への深刻な悪影響を与えていないかを判断するための、対象資源

の食物網における役割に関する情報と評価。

(v) 審査対象となる漁業が、生態系の構造・機能へ与えうる影響の可能性や程度に関

し、時宜を得た科学的助言を得るための、国際的な基準に沿って収集された情報

と評価。

□ 上記(i)〜(v)の情報の存在

【評価】

観察事項

【審査員の所見】

(i)非対象種の漁獲及び投棄

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63

サケ以外の漁獲魚類も対象魚類の一部であるので日々の漁獲記録は充分把握されてい

ることが分かる。また、網の構造、網目合等から小型魚類や幼魚類が混獲されることも無

いので、投棄される魚類も無いことが分かる。網内へ混入する海産ほ乳類は、多くが自力

で脱出するので、漁具が破損される被害となる。漁業現場では漁具の破損を防ぐ意味でも

網外への再放流で逃がすことは、充分理解できる。

(ii)希少種

資料からわかるように、漁業における実態把握は、資料に見るとおり把握されており、

対処も適切と判断できる。

(iii)生息域・漁具の影響

資料からわかるように、サケ資源の生息域全体のうち、重要な産卵場や沿岸域の稚魚の

生息域に関する情報は資料から把握されている。

定置網漁具や操業が生態系(海底環境等)に影響を与える可能性が低いことは分かる

が、設置(張り建て)方法について、幾つか実態を観察することが望ましい。

(i)非対象種の漁獲及び投棄

対象種(サケ)以外の漁獲のうち、販売されているものについては漁獲量が報告され、

北海道庁がとりまとめている。2015 年および 2016 の漁獲状況をみると(表 3.1.1-(1)お

よび-(2))、ブリ、スルメイカなどが多くなっている。サケ以外の魚種の漁獲量が多い地

区もみられるが、これはサケと同時に他の魚種の漁獲も免許により認められている網が

あるためである。2007 年と 2008 年には通常は販売しない魚種も含む、定置網での混獲実

態の調査が行われた(杉若・神力, 2010)。その結果をみると(表 3.1.1-4~6)、サケ以

外の魚種は 73 種が確認されたが、重量にすると調査した定置網での水揚げ重量の 3%未

満と少ない(杉若・神力, 2010)。対象種以外の市場価値のない漁獲物については、通常

の操業では水揚げされずに海中還元(放流)されている。

(ii)希少種

国内外の絶滅のおそれのある野生生物の種を保存するため、平成 5 年 4 月に「絶滅の

おそれのある野生動植物の種の保存に関する法律」(種の保存法)が施行され、環境省が

レッドリストを作成、公表している(https://www.env.go.jp/nature/kisho/

hozen/redlist/index.html)。北海道庁では、自然環境の一部である野生動植物の生物多

様性の保全を図るため、「北海道レッドデータブック」を作成するとともに、絶滅の恐れ

のある種のリストを「北海道レッドリスト」として公表し、北海道内に生息・生育する野

生動植物を対象として絶滅の恐れのある種の現状を的確に把握し、その保護に取り組ん

でいる(http://www.pref.hokkaido.lg.jp/ks/skn/yasei/tokutei/

rdb/redlist2.htm)。

これらを踏まえた上で、北海道のさけ定置網漁業では、希少な生物が定置網に入網した

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漁業認証規格 2.0

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北海道秋鮭定置網漁業

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場合には直ちに網から解放している。

表 3.1.1-1 サケ定置網漁業における漁獲状況(2015 年)

漁業種類名 101_さけ定置年 2015合計 / 数量 振興局 単位:トン魚種名 01_石狩 02_後志 03_檜山 04_渡島 05_胆振 06_日高 07_十勝 08_釧路 09_根室 10_オホーツク 11_宗谷 12_留萌 総計104_さけ 1,530 1,146 345 2,693 6,340 11,198 6,072 4,862 23,171 36,022 11,693 1,510 106,581 101_にしん 0 0 3 93 17 0 114 102_まいわし 4 13 0 2 6 0 26 103_かたくちいわし 4 0 4 105_べにざけ 0 0 0 0 0 106_ぎんざけ 0 0 0 4 6 2 0 0 13 107_ますのすけ 0 0 3 0 3 1 0 0 7 108_からふとます 0 1 0 2 51 8 2 0 65 109_さくらます 0 0 0 85 1 41 25 15 7 0 175 110_たら 6 1 0 50 12 23 4 0 96 111_すけとうだら 0 36 25 262 1 1 3 0 328 112_こまい 0 0 3 1 5 113_ほっけ 328 38 0 1 0 4 13 0 384 114_さば 0 28 49 11 687 4 35 3 3 0 821 115_さんま 1 1 116_ひらめ 8 34 2 46 8 9 0 0 0 0 3 5 115 117_まがれい 0 1 0 0 0 5 0 8 3 8 0 0 27 118_ひれぐろ 0 0 0 0 119_すながれい 0 2 0 0 0 1 1 1 0 5 120_そうはち 0 1 4 591 0 2 6 4 0 608 121_あかがれい 0 0 0 0 0 0 0 122_くろがしらかれい 0 2 0 0 0 1 0 8 22 28 2 0 63 123_まつかわ 0 0 1 1 22 7 7 4 0 0 43 129_その他のかれい類 1 1 0 21 16 32 2 26 33 15 7 0 153 133_まぐろ 0 2 0 2 1 8 1 0 0 15 134_ぶり 49 100 2 153 55 415 11 29 724 349 134 34 2,055 135_さめ類 0 0 0 1 32 0 5 28 0 0 0 66 136_いかなご 1 1 138_はたはた 0 7 2 0 9 139_あいなめ 0 5 0 4 0 1 0 0 0 0 0 0 10 140_そい類 1 11 1 31 8 23 1 13 161 40 6 1 297 199_その他の魚類 5 26 0 25 33 45 3 30 136 112 51 10 474 201_するめいか 3 43 0 59 0 1,965 27 2 2,099 203_やりいか 25 20 0 44 209_その他のいか類 0 1 0 0 77 0 78 211_みずだこ 0 17 0 9 0 3 1 9 7 0 47 212_やなぎだこ 0 0 0 0 0 0 221_なまこ 0 0 239_その他のかに 0 0 4 0 0 0 1 7 299_その他の水産動物 0 0 0 305_つぶ類 0 0 0 0 0 総計 1,595 1,737 350 3,208 6,505 13,532 6,119 5,212 26,454 36,652 11,908 1,562 114,836

サケ定置網漁業における漁獲状況(2015)

表 3.1.1-2 サケ定置網漁業における漁獲状況(2016 年)

漁業種類名 101_さけ定置年 2016合計 / 数量 振興局 単位:トン魚種名 01_石狩 02_後志 03_檜山 04_渡島 05_胆振 06_日高 07_十勝 08_釧路 09_根室 10_オホーツク 11_宗谷 12_留萌 総計104_さけ 1,077 802 168 2,101 2,905 5,716 3,460 3,563 16,394 31,974 7,511 1,363 77,034 101_にしん 0 0 0 3 82 6 4 0 95 102_まいわし 17 0 1 0 18 103_かたくちいわし 489 489 105_べにざけ 0 0 0 0 0 0 106_ぎんざけ 0 0 0 0 1 0 0 0 1 107_ますのすけ 0 2 0 2 1 0 0 6 108_からふとます 0 0 347 5 47 117 811 34 1 1,363 109_さくらます 0 0 0 153 4 82 28 29 7 303 110_たら 38 2 0 22 17 23 6 0 0 109 111_すけとうだら 0 0 0 442 1 1 1 0 446 112_こまい 2 0 2 13 2 18 113_ほっけ 918 5 0 0 0 1 12 0 0 936 114_さば 0 44 0 126 9 604 2 1 7 7 0 0 800 115_さんま 0 0 116_ひらめ 16 27 3 27 5 4 0 0 0 0 5 12 100 117_まがれい 0 1 0 0 0 3 0 5 1 5 2 18 118_ひれぐろ 0 0 0 119_すながれい 0 1 0 0 0 0 1 2 1 5 120_そうはち 0 0 18 428 0 1 13 2 462 121_あかがれい 0 0 0 0 0 122_くろがしらかれい 0 1 0 0 0 1 0 3 13 23 3 0 43 123_まつかわ 0 0 0 1 1 12 8 7 3 0 0 0 32 129_その他のかれい類 2 2 0 31 28 23 3 23 31 37 9 0 188 131_めぬけ 0 0 133_まぐろ 0 1 0 4 0 3 0 0 0 9 134_ぶり 31 85 2 202 51 444 138 108 727 358 161 16 2,323 135_さめ類 0 0 0 0 76 2 6 15 0 1 0 101 136_いかなご 1 1 138_はたはた 2 0 0 2 139_あいなめ 0 6 0 3 0 1 0 0 0 0 0 0 11 140_そい類 20 17 3 26 9 27 1 9 207 57 11 6 392 199_その他の魚類 8 40 1 37 43 32 4 18 190 132 91 25 622 201_するめいか 15 29 0 9 0 293 1 348 202_あかいか 0 0 203_やりいか 3 13 0 16 209_その他のいか類 1 1 128 0 130 211_みずだこ 0 29 0 6 0 3 0 1 17 13 1 71 212_やなぎだこ 0 0 0 0 0 0 221_なまこ 0 0 239_その他のかに 2 0 2 0 0 0 3 7 299_その他の水産動物 0 0 0 305_つぶ類 0 0 0 総計 1,155 2,049 177 3,109 3,070 8,358 3,648 3,988 18,212 33,472 7,837 1,427 86,501

サケ定置網漁業における漁獲状況について(2016)

(北海道水産林務部, 2018)

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(iii)生息域・漁具の影響

サケの生活史を通じた生息域はよく知られており、生残率に大きく影響する重要な生

表 3.1.1-4 定置網別混獲調査結果(2007 年)

表 3.1.1-5 定置網別混獲調査結果(2008 年)

表 3.1.1-6 混獲物の種類と重量(2008 年)

(杉若・神力, 2010)

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息域としては、産卵する河川(宮腰ら, 2011;卜部ら, 2013)と稚魚が降海した直後に滞

泳する沿岸域(小林, 1977;Mayama and Ishida, 2003;入江, 1990)が挙げられる。沿

岸滞泳期を終えたサケは沿岸から離岸した後オホーツク海で海洋生活 1 年目を過ごした

のち、北西太平洋、ベーリング海、アラスカ湾を回遊した後、成熟した個体は母川へ向け

て産卵回遊することが 近の標識放流や遺伝解析により詳しくわかってきた(浦和,

2015)。

さけ定置漁業はサケの来遊時期に合わせて一定の水面に漁具を土俵などで固定しその

敷設位置を変えないで営む漁業である。回遊してくるサケを受動的に漁具内へ誘引して

漁獲する方法であり、海底環境へ影響はほとんどないものと考えられる。また、産卵場で

ある河川や稚魚期の生息環境には全く影響を与えない。

(iv)被食・捕食

サケに関連する食物網に関する情報として、サケの被食・捕食に関する情報が古くから

調べられている。稚魚は河川でユスリカ、カゲロウ、カワゲラなど水生昆虫を捕食し、降

海直後の沿岸滞泳期にはカイアシ類を中心とした動物プランクトンを主食とし、ベーリ

ング海での海洋生活期には魚類や頭足類、動物プランクトンを主として捕食することが

報告されている(Okada and Taniguchi, 1971; 境, 2012)。

一方、被食については、幼稚魚期のサケを捕食する魚類として 12 種(ウグイ、マルタ、

アメマス、ヒラメ、ソウハチ、スズキ、クロソイ、アブラツノザメ、ホッケ、コマイ、カ

ラフトマス、サクラマス)が報告されている(長澤・帰山, 1995; 長澤・真山, 1997; 宮

腰ら, 2013)。また、ウミウやウミネコなどの鳥類は有力なサケの捕食者であり、捕食量

も大きいものと考えられている(長澤・帰山, 1995; Kawamura et al., 2000)。未成魚・

成魚期には大型魚類(ネズミザメ、ミズウオダマシ等)や海産哺乳類(ゼニガタアザラシ、

オットセイ、カマイルカ等)に捕食されることが知られている(長澤・真山, 1997;

Nagasawa et al., 2002)。

(v)生態系への影響

サケ定置漁業が、生態系に与える影響については、(i)~(iv)に述べた項目のほか、

対象魚種のサケおよびそれを取り巻く自然環境にみられる特徴的な事象を観察すること

により評価がなされる。

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3.1.2 生態系への配慮

【要求事項】

3.1.1 (i)~(v)の結果を踏まえ、非対象種及び生態系への悪影響を 小限に抑えることに

配慮して漁業が行われている。

【審査項目 3.1.2 ①】

3.1.1の評価結果を考慮して、以下に示す「管理目標」と「アウトカム(成果)指標」

が全て存在するか。

(i) 審査対象となる漁業による、非対象種の混獲(投棄を含む)に起因する、当該非

対象種の過剰漁獲やその他の回復不可能な影響(あるいは回復がほとんど見込ま

れない影響)を回避するための管理目標とアウトカム(成果)指標。

(ii) 審査対象となる漁業による、希少種の過剰漁獲やその他の回復不可能な影響(あ

るいは回復がほとんど見込まれない影響)を回避するための管理目標とアウトカ

ム(成果)指標。

(iii) 審査対象となる漁業による、対象資源の重要な生息域、及び左記漁業で使用する

漁具に対し特に脆弱な生息域において、審査対象となる漁業の影響を除外、 小

化、あるいは緩和するための管理目標とアウトカム(成果)指標。

(vi) 対象資源の漁獲による主要な捕食種への深刻な悪影響を回避するための管理目

標とアウトカム(成果)指標。

(v) 審査対象となる漁業が、生態系の構造・機能へ与えうる影響を 小限に抑えるた

めの管理目標とアウトカム(成果)指標。

□ 上記(i)~(v)の管理目標及びアウトカム(成果)指標(左記相当含む)の存在

【評価】

軽微不適合

【審査員の所見】

漁法的に定置網が生態系に強度の悪影響を及ぼすことは 400 年以上続く漁業の歴史か

ら見ても考えにくい。サケ以外の漁獲魚は、必ずしも非対象種では無く有効利用されてい

るが、無用な漁獲の防止及び生態系への悪影響を 小限に抑えるため、網目合いを大きく

するなど、小型魚や非対象種に配慮して漁業を実施していることは資料から確認できる。

管理目標、アウトカム指標が機能していると思われるが十分な明文化がされていない。

【評価の根拠】

3.1.1①に記した各項目について情報が得られ、現状の評価ができる状況となってい

る。

このうち、北海道レッドリストに掲載されている種を含む海棲哺乳類では、近年、北海

道において漁業被害が報告されているゼニガタアザラシについて環境省が管理事業実施

計画を定め、ゼニガタアザラシ個体群と沿岸漁業を含めた地域社会との将来にわたる共

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存を図る取組を行っている(hokkaido.env.go.jp/post_34.html)。北海道庁ではアザラシ

管理計画(www.pref.hokkaido.lg.jp/ks/skn/yasei/azarashi/kanri.htm)を策定し、人

とアザラシ類との共存を目指し、「鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律

(鳥獣保護管理法)」に基づく第2種特定鳥獣管理計画を策定し取組を進めている。北海

道・青森県日本海側に来遊するトドの個体群管理については、漁業被害の軽減とトドの絶

滅回避の両立を図ることを目的として、水産庁が平成 26 年 8 月に策定した「トド管理基

本 方 針 」 に 基 づ き 、 採 捕 頭 数 の 設 定 や 各 種 調 査 が 実 施 さ れ て い る

(http://www.jfa.maff.go.jp/j/sigen/todohigaitaisaku.html)。

また、北海道レッドリストに記載された魚類のうち、「絶滅危惧 IB 類(En)」として記

載されたイトウ Hucho perryi についてはさけ定置網で混獲される恐れがあるため、パン

フレットなどによりイトウ保護に向けた啓発活動を行っている。

北海道立総合研究機構では、北海道定置漁業協会からの受託研究「北海道における秋サ

ケ地区別来遊状況調査」を受託しており、3.1.1①に記した項目やサケの漁獲状況、なら

びにサケ漁業を取り巻く特徴的な事象について、漁業者や漁業協同組合から情報収集を

している。これらの項目について、特徴的な事象が見られた場合はその都度、さけます・

内水面水産試験場が分析を行い、漁業者や増殖関係者などに情報提供することとしてい

る。

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【審査項目 3.1.2 ②】

3.1.2.①(i) 〜 (v)に示した管理目標の達成に向けた「管理措置」が設定されて

いるか。また、必要に応じて、不要な混獲(投棄を含む)を 小限に抑える、あるいは、

偶発的な混獲が不可避な場合には再放流等、混獲された資源の致死率を抑えるための管

理措置が存在するか。

□ 管理措置の存在

【評価】

適合

【審査員の所見】

非利用種(本来の混獲魚等)については、無用な漁獲や投棄を回避する措置が取られて

いることが分かる。

【評価の根拠】

北 海 道 資 源 管 理 指 針 ( 平 成 29 年 12 月 ;

http://www.pref.hokkaido.lg.jp/sr/ggk/sisin.htm)では、さけ定置網漁業は漁法の特

性上、特定の魚種を選択的に漁獲することが難しく、特定種を対象に資源管理を実施する

ことが困難であるため、さけ定置漁業として包括的に資源管理に取り組むことと記され

ている。また、資源管理措置としては、漁業関係法令、海面漁業調整規則、免許の内容、

制限又は条件を遵守するほか、自主規制措置を設けて重点的に取り組む必要があるとし

ている。

具体的な措置としては、1)免許された期間以外は漁具を設置しない、2)幼稚魚類およ

び小型魚等は入網しても逃げられるように自主的に網目合を設定する、などしており、こ

れにより不要な漁獲・投棄を 小限に抑えている。また、希少な生物や海棲哺乳類が入網

した場合は直ちに解放することとしている。

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【審査項目 3.1.2 ③】

審査対象となる漁業による、生態系への も可能性の高い悪影響について分析するため

の方法と結果が、適切な守秘の下、時宜を得て開示されているか。

□ 生態系に も可能性のある悪影響についての分析手法及びその結果の開示

【評価】

適合

【審査員の所見】

生態系に影響を与える可能性があると考えられる場合の分析および結果の開示の体制

が整っている。

【評価の根拠】

サケ定置漁業が生態系に与える影響について、漁業や調査を通じ、審査項目 3.1.1 に

示した複数の指標で評価できる体制となっている。影響のある恐れがある場合は、北海道

立総合研究機構がその影響を分析する体制を有している。同試験場には水産資源学、水産

増殖学、生態学、魚病学などの研究を専門とする研究者が在籍しており、内容に応じて分

析が可能な体制が整っている。

北海道立総合研究機構では、北海道さけ・ます増殖事業協会からの受託研究「北海道に

おける秋サケ資源低迷原因を解明するためのモニタリング調査」を受託しており、サケの

資源変動要因に関連するモニタリングを行うとともに、サケの来遊が低迷する地区を中

心として、資源変動要因や生息域の環境等について適宜、調査項目を設定し研究を実施し

ている。さらに、北海道定置漁業協会からは受託研究「北海道における秋サケ地区別来遊

状況調査」を受託しており、同試験場がサケの資源状況およびサケ漁業に関連する特徴的

事象について情報を収集し、分析している。北海道定置漁業協会では毎年 7 月および 12

月に北海道内の漁業関係者が集まる会議を開催しており、その会議において同試験場か

らサケの資源状況や増殖、定置漁業に関する情報を提供(開示)し、関係者と意見交換を

行っている。

また、申請者(北海道漁業協同組合連合会)は北海道立総合研究機構と毎年 11 月に北

海道水産業に関する意見交換会を開催している。北海道立総合研究機構からは水産資源、

水産増殖、加工利用、さけますおよび内水面資源分野の研究責任者が出席し、各種の魚種

についての資源状況、水産資源や海洋環境等について当該年に特異的に観察された現象

等について意見交換を行い、それを受けて北海道立総合研究機構では研究が必要な項目

についての検討を行い、適宜実施している。

これらを通じて、生態系に対しての影響を評価する体制が準備され、適時、情報が開示

されている。

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3.1.3 漁場環境及び生息環境の保全

【要求事項】

申請者が、漁場環境及び対象資源の生息環境の保全に貢献している。

【審査項目 3.1.3 ①】

① 申請者が、漁場環境及び対象資源の生息環境の保全に貢献しているか(藻場・干潟の

保全、沿岸域の環境美化・保全、河川・湖沼の生態系保全、漁業活動による環境保全

等)。

□ 申請者による対象資源の生息環境の保全に対する貢献の有無

【評価】

適合

【審査員の所見】

申請者が、漁場環境及び対象資源の生息環境の保全に貢献していることが確認できる。

【評価の根拠】

北海道漁業協同組合連合会では、漁場環境の保全や汚染の予防のため、各種の活動に取

り組んでいる。漁業および水産業に関連する河川でのパトロールを行い、漁場環境の汚染

や水質汚濁などが起こっていないか監視をしているほか、各地の漁協(漁業者)の要請に

より(受益者負担)、環境保全活動の一環として漁場の水質調査、モニタリングを実施し

ている。平成 28 年度の水質調査の実績は、道内河川・湖沼の水質、各種工場・ゴルフ場

の排水の水質調査 45 件、1,328 検体であった。

また、各漁業協同組合では漁場や浜のごみ拾いを行うほか、森が海を育てる生態系保全

を意識した活動として植樹活動を行っている。

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漁業認証規格 2.0

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北海道秋鮭定置網漁業

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3.2 栽培/増殖漁業における生態系への配慮

3.2.1 生態系に配慮した人工種苗の生産

【要求事項】

人工種苗の生産や放流にあたっては、生物としてもつ種の特性と遺伝的多様性を維持する

ための十分な配慮がなされている。

【審査項目 3.2.1 ①】

① 種苗生産にあたり、必要な許可(占用許可、水利権等)が得られているか。

□ 自然環境に考慮することも求めている、種苗生産施設に関する許可等の取得

【評価】

適合

【審査員の所見】

説明および資料から見て、水利権を得ているとともに水質汚濁にも配慮しており、施設

の法的地位や利用法については問題ないと判断できる。

【評価の根拠】

サケの放流用種苗の多くは、全道 9管内(宗谷、留萌、日本海、渡島、胆振、日高、十

勝釧路、根室、北見)の一般社団法人さけ・ます増殖事業協会が運営するふ化場で生産さ

れる。各ふ化場の取水量、飼育池面積、設備等は公益社団法人北海道さけ・ます増殖事業

協会が管理する「サケマス増殖事業データベース」に記載されている。飼育用水として河

川水を使用するにあたっては、ふ化場を運営するさけ・ます増殖事業協会が水利権を取得

している。卵の管理および稚魚の飼育にあたっては、適正な水量および飼育密度での管理

に努め(さけ・ますふ化放流事業実施マニュアル, p. 61)、疾病対策にも未承認医薬品な

どは使用せず(同マニュアル, p. 88-91)、排水の処理を行うなど(同マニュアル, p.

67)、自然環境への配慮がなされている。

(さけ・ますふ化放流事業実施マニュアル, p. 61)

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【審査項目 3.2.1 ②】

放流種苗の系群について考慮され、遺伝的多様性の保全のための取り組みがなされてい

るか。

□ 系群保全に関する取り組み(移植放流など)

□ 遺伝的多様性に関する取り組み(親魚数の管理など)

【評価】

適合

【審査員の所見】

放流種苗の系群及び遺伝的多様性の保全を配慮して種苗生産を実施していることが確

認できる。

【評価の根拠】

北海道のサケには 5 つの遺伝的に異なる地域系群(個体群)が存在することが明らか

となっており(Beacham et al., 2008; 佐藤・浦和, 2015)、遺伝的撹乱を 小限にする

ため、増殖事業においては原則として異なる地域系群間(海区間)の移殖は行わないこと

としている(北海道さけ・ます人工ふ化放流計画中期策定方針, 平成 29 年 3 月, p. 4)。

人工ふ化事業での採卵・授精作業においては多くの数の親魚が使用されており(Kitada,

2014; 高橋, 2015)、これまでのところ遺伝的多様性の低下は確認されていない(Beacham

et al., 2008)。

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(佐藤・浦和, 2015)

【審査項目 3.2.1 ③】

種苗生産に用いる親魚は継代飼育をせず、捕獲履歴が明らかな親魚の利用を行う措置を

とっているか。

□ 親魚の捕獲履歴の確認

□ 親魚は継代飼育されていない

【評価】

適合

【審査員の所見】

ふ化放流事業における種苗生産に用いる親魚は毎年遡上したサケを用いており、捕獲

河川が限定されていることから、その履歴は明確であることが確認できる。

【評価の根拠】

種苗生産には河川に遡上した親魚を使用しており、すべて捕獲履歴が明らかである。継

代飼育した親魚は一切用いられていない。また、定置網等により海中で漁獲された親魚か

ら採卵された種卵は、他の地域系群の魚が混在している可能性が懸念されるため使用し

ないこととしている(北海道さけ・ます人工ふ化放流計画中期策定方針, 平成 29 年 3 月,

p. 4)。捕獲数および採卵数は公益社団法人北海道さけ・ます増殖事業協会が河川ごとに

集計しており、放流種苗の起源(捕獲河川、捕獲月日)はすべて記録されている。

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【審査項目 3.2.1 ④】

放流実績(放流数、時期、サイズなど)は収集したうえ、 適な放流方法(放流サイズ、

適切な発育段階など)を選定する措置をとっているか。

□ 放流実績(放流数、放流月日、サイズ)の収集

□ 適正な放流方法の検討(発育段階など)

【評価】

適合

【審査員の所見】

放流技術に関するマニュアルが整備され、適正な放流方法が検討されており、放流実績

(放流数、時期、サイズなど)も充分把握されていることが確認できる。

【評価の根拠】

放流数、放流時期、放流サイズなどの情報は、毎年の放流事業の終了後に各管内さけ・

ます増殖事業協会から北海道さけ・ます増殖事業協会に報告されて集計されている。北海

道区水産研究所が個体群維持および試験研究等の目的のために放流する実績も北海道に

情報提供されており、これにより北海道におけるすべて放流実績は把握されている。

増殖事業を効率的に実施するため、試験放流が繰り返し実施され、効果の高い飼育、放

流方法が確立されている。現在では、放流時の概ね体重 1 g が放流効果の高い適サイズ

とされている。放流時期については、各地区の沿岸水温が 5℃以上となった時期から放流

を開始し、13℃を超える頃に稚魚が沿岸域を離脱するように放流するのがよいとされ、こ

れが放流適期とされている。このような放流に対する目安は北海道が定めた中期計画に

記載され、飼育および放流の目標として設定されている。

(北海道さけ・ます人工ふ化放流計画中期策定方針, 平成 29 年 3 月, p. 4)

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【審査項目 3.2.1 ⑤】

疾病の蔓延を防止するための措置をとっているか。

□ 魚病診断の体制

□ 魚病蔓延防止のための措置

【評価】

適合

【審査員の所見】

資料から疾病の蔓延を防止するための措置が準備されていることがわかる。

【評価の根拠】

ふ化場でのサケの種苗生産にあたり、サケ稚魚に疾病が発症した時には各ふ化場から

さけます・内水面水産試験場にサンプルを送付し、魚病診断を行う。さけます・内水面水

産試験場には魚類防疫士の資格を持つ担当者が在籍しており、診断をした上で適切な対

処法を適宜指示している。サケの種苗生産にあたっては、原虫症(イクチオボド、トリコ

ディナ、キロドネラ)や細菌性疾病(細菌性鰓病、冷水病)が多く発症する。これらの疾

病予防のため、ヨード剤による卵の消毒を徹底するとともに、毎年の事業終了時には池や

器具などの消毒作業を行っている(さけ・ますふ化放流事業実施マニュアル, p. 87)。

また、北海道大学、東京農業大学、水産研究・教育機構、さけます・内水面水産試験場、

北海道庁、北海道さけ・ます増殖事業協会はさけ防疫連絡協議会を設置して、各機関が分

担して北海道内の河川に遡上したサケ親魚の体腔液を検査し、病原体の保有状況をモニ

タリング、情報を共有している。

さらに、さけます・内水面水産試験場や水産研究・教育機構により、原虫症の予防技術

などが開発されている。

図 3.2.1 サケ稚魚に多くみられる寄生虫

(さけ・ますふ化放流事業実施マニュアル, p. 86)

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3.2.2 自然再生産個体群維持のための管理目標及び管理措置の設定

【要求事項】

対象資源について、現存する自然再生産による個体群を持続的に維持するための管理目標

の設定及びそれに基づいた管理措置が講じられている。

【審査項目 3.2.2 ①】

放流魚に標識がなされる等、放流由来と自然再生産由来の個体群の別々の評価が可能と

なり、放流効果を評価しているか(自然再生産個体群が評価されているか)。

□ 放流魚への標識付けの実施等による放流効果の評価

【評価】

観察事項

【審査員の所見】

放流魚に標識がつけられ、放流由来と自然再生産由来の個体群別の評価及び放流効果

が把握されていることが分かる。但し、自然再生産由来の個体群については、今後地域差

を考慮した把握が望まれる。

【評価の根拠】

北海道から放流されるサケ稚魚 10 億尾のうち約 2 割に耳石標識がされている(NPAFC

ホ ー ム ペ ー ジ ; Salmon Marking デ ー タ ベ ー ス

http://wgosm.npafc.org/MarkSummary.asp)。これによって放流後の稚魚の追跡調査が可

能となっており、放流群の回帰率などの評価も可能となっている(福澤, 2016;森田,

2017)。放流魚のうち、標識付けされた個体と標識付けされていない個体の割合を調べる

ことにより、放流魚と自然再生産由来の個体群を別々に評価した研究例もみられている

(森田ら, 2013a;上田ら, 2018)。

北海道北見管内および根室管内では、さけます・内水面水産試験場と管内さけ・ます増

殖事業協会が共同で、非捕獲河川における放流魚および自然産卵由来魚の遡上状況を調

査している(北海道立総合研究機構, 2018, p. 9-10 および p. 40-41)。

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【審査項目 3.2.2 ②】

種苗放流等により対象資源の増殖を図る場合、対象資源の自然再生産個体群、及び増殖

に用いる個体を採捕した資源への深刻な悪影響を回避するための、管理目標と管理措置

が存在するか。

□ 管理目標及び管理措置(左記相当含む)

【評価】

軽微不適合

【審査員の所見】

野生魚維持に関する明確な管理目標、措置が充分に策定、共有されている訳では無い

が、策定のための要素は充分把握されており、一部管理措置は実施されている。なお、管

理指針では、目標、措置等の実践について、PDCA サイクルで成果・評価の改善を行って

いるので、管理目標、成果指標等の導入・設定も遠くない。今後管理目標が設定され、管

理措置が実施されていくことは充分理解できる。

【評価の根拠】

北海道では古くからふ化放流事業を主体としたサケの資源増殖に目が向けられ、サケ

の自然再生産個体群に関する情報も断片的なものしかなかった(鈴木, 1999)。2000 年代

以降、サケの自然再生産個体群を管理、保全することの重要性が認識されるようになり、

北海道全域にわたり自然再生産個体群の分布が調べられ(宮腰ら, 2011; Miyakoshi et

al., 2012)、自然再生産(野生)由来の稚魚の発生状況や生物情報なども調べられるよう

になった(長谷川ら, 2013; 實吉ら, 2015)。

自然再生産個体群の管理に向けて、北海道が定める「さけ・ます人工ふ化放流計画中期

策定方針(さけ・ます増殖事業の推進についての基本方針)」(北海道, 平成 29 年 3 月 31

日)においても、「野生魚については、河川ごとで遺伝的に異なる遺伝子を持つなど、多

様な地域環境に適応する能力を持つことが知られており、さけ・ます資源を将来にわたり

維持するためには、人工ふ化放流事業による資源づくりを基本としながらも、自然再生産

による野生資源の活用を進めるものとする。」と記載され、北海道のサケの資源管理おい

ても自然再生産個体群の保全が配慮されるようになった。

これを受けて、管理目標を定めて増殖事業協会が自然再生産個体の遡上数のモニタリ

ングを実施している地域もある(北見管内)。さらに、一部の増殖河川では捕獲したサケ

を捕獲施設(ウライ)よりも上流へ再放流するなど、自然再生産個体群を維持するための

取り組みが行われている(Kitada, 2014)。

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図 3.2.2-1 北海道北見管内における野生サケの管理体制

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【審査項目 3.2.2 ③】

3.2.2.②の管理措置として、自然再生産個体群の維持のため、生息環境の評価およ

び保全の取り組みがなされているか。

□ 生息環境保全の取り組み

【評価】

適合

【審査員の所見】

自然再生産個体群の維持のための河川の自然生息環境のレビュー・評価が成されてお

り、魚道等河川環境の保全の取り組みも実施していることが資料から確認できる。

【評価の根拠】

現在、北海道内でサケが自然再生産している河川についての情報が得られ(宮腰ら,

2011)、重要な産卵環境も調べられている(卜部ら, 2013)。北海道ではダムなどの河川工

作物の建設によりサケの遡上範囲が狭められており、このことがサケの自然再生産個体

群を維持する上での障害となってきた。 近では多くの河川工作物に魚道が設置される

ようになり(谷瀬ら, 2006)、ダムの切り下げ(スリット化)などの改良工事も行われ

(Nakamura and Komiyama, 2010)、サケの産卵環境は改善されてきている。また、1960

年代には国土の開発に伴い河川の水質汚濁が著しくサケの生息環境を劣化させたが、

1970 年代以降は水質汚濁が改善され(Morita et al., 2006)、サケの生息環境も改善し

ている。

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3.2.3 種苗放流による対象資源および生態系への影響モニタリング

【要求事項】

対象資源および生息域におけるモニタリングが行われており、種苗放流による対象資源の

自然再生産や生態系への影響を回避するための措置が講じられている。

【審査項目 3.2.3 ①】

対象資源の生物学的・遺伝学的なモニタリングが実施され、対象資源の形質等に変化が

みられないことを確認しているか。

□ 生物学的(魚体サイズ、年齢、卵数、来遊時期など)・遺伝学的モニタリングの実施

□ 対象資源の形質の変化

【評価】

適合

【審査員の所見】

サケ資源の生物学的・遺伝学的知見は、資料から充分把握され、歴史的に長いふ化放流

魚資源の形質等変化についても充分な知見を得ており、対象資源の形質の変化がないこ

とが分かる。

【評価の根拠】

北海道に回帰するサケについて、下記のような情報が継続して収集されており、これに

より生物学的なモニタリングが行われている。

・河川遡上魚の年齢・魚体サイズ(体長・体重): 道総研さけます・内水面水産試験場

・河川遡上魚の遡上時期、尾数、卵数(1 尾あたり採卵数):北海道さけ・ます増殖事業

協会

・沿岸漁獲時期、漁獲物の魚体サイズ(目回り):連合海区漁業調整委員会

このうち、成熟年齢や魚体サイズの変動はみられているが、環境要因等の影響を受けた

ものと考えられる。また、北海道区水産研究所では遺伝学的な情報を収集し、分析を行っ

ており、その結果では遺伝的多様性の減少も認められておらず、現時点では種苗放流がサ

ケ資源に深刻な影響を与えているという証拠は得られていない。

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82

【審査項目 3.2.3 ②】

審査対象となる漁業が、栽培・増殖漁業を含む場合、以下の全てについて、十分に信頼で

きる 新の情報が存在しているか。

(i) 関連する栽培・増殖漁業による、非対象種の混獲(投棄を含む)に起因する、当該

非対象種の過剰漁獲やその他の回復不可能な影響(あるいは回復がほとんど見込

まれない影響)に関する情報と評価。

(ii) 関連する栽培・増殖漁業による、希少種への影響に関し、国際的な基準に沿って収

集された情報と評価。

(iii) 関連する栽培・増殖漁業による、対象資源の重要な生息域、及び左記漁業で使用す

る漁具に対し特に脆弱な生息域への影響の情報と評価。(左記漁業により潜在的に

影響を受ける空間部分のみではなく、関係する生息域の全ての空間を含む。)

(iv) 関連する栽培・増殖漁業による、生態系の構造・機能へ与えうる影響の可能性や程

度に関し、時宜を得た科学的助言を得るための、国際的な基準に沿って収集された

情報と評価。

□ 上記(i)〜(iv)の情報の存在

□ 自然再生個体群が、関連する栽培・増殖により放流された個体群により大きく置き

換えられていないかを含む、放流後の分布域や成長に関する情報の存在

【評価】

適合

【審査員の所見】

種苗放流が他種や生態系に与える影響は把握されているが、生態系全てについての影

響評価には困難性を伴い、十分ではない面もある。しかし、影響を 小限にするための目

標が設定され放流計画に則って実施されていることが前述資料から分かる。したがって

情報収集が行われ理解されていると判断できる。

【評価の根拠】

(i)~(iii)については審査項目 3.1.1 と同様。

(iv)について、他種や生態系への影響について、河川では放流後にはサケ稚魚が高密

度で生息することとなり、生息場所や餌をめぐって自然再生産由来のサケや他種との競

合が起こり得る(Hasegawa et al., 2014)。降海後の沿岸域でも他魚種や生態系への影

響はあるものと考えられるが、サケの海洋生活初期をレビューした研究においても、種苗

放流による生態系へのインパクトは明瞭には確認されていない(Mayama and Ishida,

2003)。

北太平洋での海洋生活期では、日本系のサケの放流あるいは放流魚の増加が北太平洋

(北米系)のサケの成長や生残に影響を与えていることを懸念する研究(Ruggerone et

al., 2012)がみられる一方、個体レベルでの成長量の低下はみられるものの死亡率まで

影響は及んでおらず、サケの資源量の変動は環境変動に強く影響を受けているとの見解

もある(帰山, 2013)。

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【審査項目 3.2.3 ③】

審査対象となる漁業が、栽培・養殖漁業を含む場合、以下について「管理目標」、「管理措

置」、及び「アウトカム(成果)指標」が全て存在するか。

(i) 関連する栽培・増殖による、非対象種の混獲(投棄を含む)に起因する、当該非対

象種の過剰漁獲やその他の回復不可能な影響(あるいは回復がほとんど見込まれ

ない影響)を回避するための管理目標とアウトカム(成果)指標。

(ii) 関連する栽培・増殖漁業による、希少種の過剰漁獲やその他の回復不可能な影響

(あるいは回復がほとんど見込まれない影響)を回避するための管理目標とアウ

トカム(成果)指標。

(iii) 関連する栽培・増殖漁業による、生態系の構造・機能への回復不可能な影響(あ

るいは回復がほとんど見込まれない影響)を 小限に抑えるための管理目標とア

ウトカム(成果)指標。また、関連する栽培・増殖漁業による生息域の改変は、回

復可能な影響とし、生態系の構造・機能への回復不可能な影響(あるいは回復がほ

とんど見込まれない影響)を及ぼさないこと。

□ 上記(i)〜(iii)に示す管理目標、管理措置、アウトカム(成果)指標(左記相当

含む)

【評価】

適合

【審査員の所見】

現状のふ化放流事業においてサケ資源の自然再生産や環境・気候変動を伴う生態系へ

の深刻な影響を感知することは困難性が高い。歴史的経過の中で長期間実施されてきた

方策が回避措置となっていることが理解できる。

【評価の根拠】

(i)非対象種および(ii)希少種については審査項目 3.1.2①と同様。

その他、生態系への影響を 小限に抑えるための措置として、北海道が定める「さけ・

ます人工ふ化放流計画中期策定方針」の中で、計画河川以外への放流を行わないこととし

ている。このことは、増殖事業が現状よりも河川および自然生態系に影響を与えないこと

を目標としており、毎年の増殖事業においては「さけ・ます人工ふ化放流計画」に従い、

放流河川および放流数が遵守されている。このような基本方針と年次計画の徹底により、

種苗放流による自然再生産個体群や生態系への影響を 小限に抑えるような措置がとら

れている。

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【審査項目 3.2.3 ④】

関連する栽培・増殖漁業による、生態系への も可能性の高い悪影響についての分析す

るための方法と結果が、適切な守秘の下、時宜を得て開示されているか。

□ 生態系への も可能性のある悪影響についての分析手法及びその結果の開示

【評価】

適合

【審査員の所見】

生態系に影響を与える可能性があると考えられる場合の分析および結果の開示の体制

が整っている。

【評価の根拠】

増殖事業を含むサケ定置漁業が生態系に与える影響について、漁業や調査を通じ、審査

項目 3.2.2 に示した複数の指標で評価できる体制となっている。影響がある恐れがある

場合は、北海道立総合研究機構さけます・内水面水産試験場がその影響を分析する体制を

有している。同試験場には水産資源学、水産増殖学、生態学、魚病学などの研究を専門と

する研究者が在籍しており、内容に応じて分析が可能な体制が整っている。

同試験場は、北海道さけ・ます増殖事業協会からの受託研究「北海道における秋サケ資

源低迷原因を解明するためのモニタリング調査」を受託しており、サケの資源変動要因に

関連するモニタリングを行うとともに、サケの来遊が低迷する地区を中心として、資源変

動要因や生息域の環境等について適宜、調査項目を設定し研究を実施している。さらに、

北海道定置漁業協会からは受託研究「北海道における秋サケ地区別来遊状況調査」を受託

しており、同試験場がサケの資源状況およびサケ漁業に関連する特徴的事象について情

報を収集し、その分析結果を漁業者や増殖関係者などに定期的に周知している。北海道定

置漁業協会では毎年 7月および 12月に北海道内の漁業関係者が集まる会議を開催してお

り、その会議において同試験場からサケの資源状況や増殖、定置漁業に関する情報を提供

(開示)し、関係者と意見交換を行っている。

また、申請者(北海道漁業協同組合連合会)は北海道立総合研究機構と毎年 11 月に北

海道水産業に関する意見交換会を開催している。北海道立総合研究機構からは水産資源、

水産増殖、加工利用、さけますおよび内水面資源分野の研究責任者が出席し、すべての魚

種についての資源状況、水産資源や海洋環境等について当該年に特異的に観察された現

象等について意見交換を行い、それを受けて北海道立総合研究機構では研究が必要な項

目についての検討を行い、適宜実施している。

これらを通じて、生態系に対しての影響評価がなされ、適時、情報が開示されている。

13.是正措置

該当なし。

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適合の判定基準(審査の手引き)2.1

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14.審査の結果

3.1.2①項、3.2.2②項で軽微不適合を検出したが、その他については要求事項を満たしてい

る。なお、3.1.1④項、3.2.2①項について観察事項を指摘した。

15.将来の審査に向けた提言

持続的な漁業を達成するためには、管理目標設定、システム構築を具現化する現場生産活

動の把握を進めることで、より高い管理を目指すことが望ましい。

また、対象漁業の生態系への配慮として、自然再生産や生態系への影響を把握する科学的

ツールの高度化が図られることを望む。

16.根拠となる資料

List of Evidences

1)聞き取り相手

書面審査: 北海道漁業協同組合連合会、北海道庁、北海道立総合研究機構さけます・内水

面水産試験場

現地審査: ウトロ漁業協同組合、網走漁業協同組合、網走合同定置漁業、一般社団法人 北

見管内さけ・ます増殖事業協会

2)法令・免許・文献等

【法令】

・漁業法

・水産資源保護法

・海面漁業調整規則

・内水面漁業調整規則

【免許】

・定置漁業免許状

【文献等】

資 料

・「平成 28 年度国際漁業資源の現況 60 サケ(シロザケ)」水産庁・水産研究・教育機構

(2018)(www. kokusai.fra.go.jp/index-2.html)

・「秋サケ沿岸漁獲速報」北海道連合海区漁業調整委員会・水産林務部漁業管理課

(http://www.pref.hokkaido.lg.jp/sr/ggk/top.htm)

・「サケ資源動態・生物統計調査」平成 28 年度北海道立総合研究機構さけます・内水面水産

試験場事業報告書(2018), p. 11-14.

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漁業認証規格 2.0

適合の判定基準(審査の手引き)2.1

北海道秋鮭定置網漁業

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・「秋サケの資源状況について」(北海道立総合研究機構さけます・内水面水産試験場)

(http://www.hro.or.jp/list/fisheries/research/hatch/section/shigen/td6oqn0000

000v98.html)

・「今年のサケの来遊状況と特徴的事象について」北海道定置漁業協会, 札幌市 (毎年 12 月

中旬に定置漁業振興会議を実施して、サケの漁業、資源、流通状況を関係者に説明し、

その記録を冊子体に印刷して配布).

・平成 29 年度さけ・ます人工ふ化放流計画 HP 公表版

(http://www.pref.hokkaido.lg.jp/sr/ggk/sakemasuhouryukeikaku.htm)

・「さけ・ます種卵の需給調整業務の進め方」(北海道さけ・ます増殖事業協会)

・「サケ定置網漁業における漁獲状況」(北海道水産現勢)

・「さけ・ますふ化放流事業実施マニュアル」(北海道さけ・ます増殖事業協会)

・「さけ・ます人工ふ化放流計画中期策定方針(さけ・ます増殖事業の推進についての基本

方針)」(平成 29 年 3 月 31 日; 北海道水産林務部漁業管理課)

・「さけ・ます人工ふ化放流計画」(平成 29 年度; 北海道水産林務部漁業管理課)

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