GENDAI GUITAR MAGAZINEVol.44 No.11 October2010 No.558

O c t o b e r

PHOTO REPORT22 コンサート・フォト・レポート ハクジュギターフェスタ

朴 葵姫

大萩康司

谷辺昌央

栗田和樹

長岡克己＆倉石アオミ

長谷川 弦

REPORT18 第4回イベロアメリカ・ギターフェスティバル30 第 35回 GLC 学生ギターコンクール38 GGサマースクール2010 in 那須42 第39回神奈川新人ギタリストオーディション

READING/ESSAY34 濱田滋郎・鑑賞術［7］ タレガの音楽②

46 巨匠の時代［新連載］（富川勝智）

ナルシソ・イエペス①

50 ロンドン便り［17］

52 ニューヨーク便り［新連載］

54 ナクソス・ギター・ライブラリー［7］

58 渡辺和彦の a tempo 日記［7］（渡辺和彦）

TALK & LECTURE14 愛器を語る［19］

塩谷牧子（ポール・フィッシャー）

45 ギター弦測定（君島 聡）

60 動画をクリック！ テクニックレシピ［7］

（松尾俊介）

INFORMATION62 新譜案内65 新刊案内70 めもらんだむ71 イベントガイド78 コンクールインフォメーション

EMSEMBLEアンサンブルの広場68 あんさんぶる今月のイチオシ

69 ホットトーク＆掲示板

5 特　集　中古ギターの選び方 　　　 お得な中古ギター購入術

　　　　　　ギター専門店に聞く中古ギターの現状インタビュー

13 デイヴィッド・ラッセル

　　　　　　

C O N T E N T S表紙：デイヴィッド・ラッセル

Gendai Guitar　5

●不景気には中古だ！　ギター弾きは誰しも、いつかは理想のギターを持ってみたいと夢見ているが、近年世間は景気が悪い。全国民的にお小遣いが目減りしている。デフレとはいえ、ギターは牛丼とは違い、値下げされる見通しは少ない。国産手工ギターは数十万円から、輸入品の高級ギターは数百万円となると、夢は遠のくばかり。　しかし、ここで活気を呈しているのが中古ギターである。うまくすれば安くて良いギターが手に入る。さらに、近年はインターネット・オークションやインターネット・ショップが一般化してきて、わざわざお店に出向かなくても情報収集ができて、購入することも容易になってきた。　とはいえ、便利さと安さの裏には必ず陥穽がある。安く買ったはいいが、実際には期待はずれのギターで、返品もできないということはよくあると聞く。この特集では、中古ギターを買う際に失敗しないためのポイントをお伝えする。

●ギター専門店　クラシックギター専門の店が日本国内に約 60 軒ある。クラシックギターの専門家が経営しているので、しっかりと検品、調整、さらには修理をして、完全に使える状態にした楽器を販売していると言えよう。身近に専門店がある場合には、そこに通うのが一番確実であろう。本特集では後半で各専門店へのアンケートを掲載しているので、参考にされたい。

●質屋　最近はリサイクル・ショップとか洒落た名前を付ける店もあるが、要は質流れ品や中古品を販売する店である。身近に質屋がある場合は、よくチェックしてみよう。ギターがぶら下がっているのを発見するだろう。多くはエ

レキやフォークだが、稀にクラシックギター、ごく稀に高級品と遭遇することがある。｢ 質屋のオヤジは目利き｣ というのが定説だが、クラシックギターの目利きはなかなかいないようで、高額なギターにとんでもなく安い値段が付けられていることがある。せっかくのチャンスに遭遇したら、試奏してみるだけの価値はあろう。

●インターネット・オークション　本来のオークション（競売）は出品された商品を検品して値踏みし、入札、競りに勝てばその金額で買い取ることができる。それに対してインターネット・オークション（略してネットオークション）はインターネットという仮想空間でやりとりする。ヤフーオークション（略してヤフオク）を代表格として、日本国内にはいくつかのネットオークションがあり、さらに英語に自信があれば世界 40 ヵ国で運営されている ebay（イーベイ）のような巨大なオークション・サイトも利用できる。　ネットオークションでは、商品に関する情報は出品者の提供する写真と文字情報だけなので、買い手が必要とするだけの情報が得にくいのが最大の難点となる。ギターにとって最も重要な「音」と「弾きやすさ」は確認しようがない。出品者がギターを出品する場合、ギターに詳しい人が出品するのと、まったく何も知らない人が出品するのとでは、写真にしろ文章にしろ、情報量に雲泥の差がある。疑問点は出品者に質問することもできるが、出品者が素人ではまともな回答は期待できない。　ネットオークションの概略をヤフオクを例にとって述べると、まず入会手続きをして自分の ID（identifi cation、身分証明の記号）、メールアドレスなどを登録すれば、5000 円未満までの入札（買い物）ができる。さらに高額な入札や自分が出品するには、会費を払ってプレミアム会員となる必要がある。現在、ヤフオクのプレミアム会員数は約 1,600 万人、イーベイは会員数 8,400 万人と言わ

お得な中古ギター購入術編集部　

特集　中古ギターの選び方

愛器を語る

塩谷牧子 ◆ポール・フィッシャー（1984）

写真：木田新一

塩谷牧子 Makiko En-ya　4歳よりギターを始める。ベルギー、ブリュッセル王立音楽院、フランス、パリ国立高等音楽院（コンセルヴァトワール）卒。ギター科、室内楽科、音楽史科等を専攻。ギターをA.ラゴヤ、M．サダノフスキー、R.アウセルに師事。国内のコンクール数々で第 1位を取った後、16歳でデビューリサイタル。フランスの「プリュリエル・ドゥ・ラ・ギタール」国際コンクールの室内楽部門においても第 3位受賞。パリ、ロンドン、ベルギーなど国内外においてテーマを持つコンサートを中心に、ソロ、さまざまな楽器と組んだ室内楽でも活躍中。また、東京、京都において大学生の指導に奔走中。

18　Gendai Guitar

　第4回イベロアメリカ・ギターフェスティバルは、メキシコの作曲家マヌエル・ポンセを讃えて2010年 6月、3日間で22回のコンサートをワシントンD.C. にあるスミソニアン博物館のアメリカ・インディアン館を使って開催された。演奏したギタリストは、スペイン・ポルトガルをはじめ南米大陸のほとんどの国を代表していた。このイベントは芸術監督のベルタ・ロハスとイベロアメリカ文化大使館員協会会長であるパトリシア・アブデルノーの共催で行なわれた。

　スペインのマルガリータ・エスカルパの演奏曲目は、レオ・ブローウェルの〈鐘のあるキューバの風景〉、マヌエル・デ・ファリャの〈ドビュッシー讃歌〉とクロード・ドビュッシーの〈グラナダの夕暮れ〉〈とだえたセレナード〉。エスカルパは、曲の組み合わせについて説明した。ファリャはドビュッシーのピアノ曲に触発され、ドビュッシーはフラメンコの影響を受けるなど作曲家同士がお互いに影響しあったことを示しているという。エスカルパの演奏は完璧で、流れるようにクリーンであり、音量と音色の幅の広さが奥深く印象的で、各作品のメロディーに微妙な軽快さを与えていた。プログラムの終わりは、アルベニスの〈グラナダ〉、〈コルドバ〉、〈カタルーニャ〉を彼女独特のニュアンスで編曲したものを演奏した。

　マヌエル・ポンセ・カルテットは、ギタリストでポンセの研究家である4人、ヘラルド・ディアス・デ・リオン、ビクトール・ガルドキ、アルトゥーロ・エルナンデス、ラウル・

サンブラーノで構成され、M.バーナル・ヒメネス作曲の〈Vice Royal Quartet〉を活気のあるポンティチェロを多用して演奏した。カルテットは18世紀バロックから古典派・ロマン派までを想わせるポンセの作品を演奏した。格調高く物憂い感じで〈前奏曲ホ長調〉を始め、〈バレット〉〈フェルナンド・ソル讃歌 :ソナタ・クラシカからアレグロ〉と続き、加えて

〈シューベルト讃歌 :ソナタ・ロマンティカ〉を演奏した。　「ポンセはギターという楽器の歴史の中で、ギタリストではない作曲家の礎を築いた人と考えるべきだ」とセゴビアは言っている。ポンセとセゴビアとのコラボレーションでは、有名なギターコンチェルト〈南の協奏曲〉のようなギターのレパートリーの中核をなすような作品が生まれた。カリフォルニア大学リバーサイド校の音楽学教授であるレオナラ・サーヴェドラは、メキシコの民族主義運動に対するポンセの貢献と題して講義を行なっている。彼女はオックスフォード大学出版のためにメキシコの音楽に関する本を執筆している。マヌエル・ポンセ・カルテットはポンセの経歴と、当時挑戦的かつ生産的だったアンドレス・セゴビアとの関係について講演をした。

　ボリビアのチャランゴ奏者ホセ・メンドーサとギタリスト、ヘラルド・ベルハが、南米で用いられているウクレレ程度の小さな伝統楽器チャランゴを子供たちの前で模範演奏した。

　2009年度ラテン・グラミー賞候補に選ばれたギタリスト

マルガリータ・エスカルパ

IberoAmerican Guitar Festival 2010

イベロアメリカ・ギター・フェスティバル 2010イベロアメリカ・ギター・フェスティバル 2010イベロアメリカ・ギター・フェスティバル 2010イベロアメリカ・ギター・フェスティバル 2010イベロアメリカ・ギター・フェスティバル 2010イベロアメリカ・ギター・フェスティバル 2010

レポート : ジュリア・クロウ Julia Crowe翻訳 : 関塚亮司

22　Gendai Guitar

Concertphoto report

荘村清志、福田進一プロデュースのHakujuギター・フェスタが5回目を迎えた。質の高い充実した内容が多くのファンを掴み、夏の恒例コンサートとしてすっかり定着した感がある。今年のテーマは“ワールド・ミュージック”。西欧中心の枠を越えた多様多彩なギター音楽が名手たちの聴き応えある演奏で3日間にわたって繰り広げられた。〔20日〕Part1は荘村のソロ。折り目正しい演奏はこのベテラン奏者にいかにも相応しいが、ディアンス「20通の手紙」より〈黒い手紙〉のアフロ感や〈北東部よりの手紙〉のブラジル風リズムのノリ、また〈ヌアージュ〉の哀愁漂うジャズ・バラードや《バーデンジャズ組曲》の軽快なサンバなど、ポップス風やジャジーな曲の楽しげな演奏にも、この人ならではの捨てがたい味がある。福田とのデュオでは昨年の

委嘱初演曲ファジル・サイの〈プリンセス・オブ・リキア〉をグレード・アップした演奏で聴かせ、ユーモラスな〈サーカス・ミュージック〉で客席を沸かせた。Part2はブルガリア出身アタナス・ウルクズノフ（G）と小倉美英（Fl）のデュオ＆ソロ。リゲティ〈ムジカ・リチェルカーレ〉（G,Fl）では声や息音までも援用しての迫力ある演奏。〈通りゃんせ物語〉（G）や〈3つの東方の物語〉（G,Fl）などの自作品は日本的要素とブルガリア＝バルカン的要素を共存・融合させた斬新な書法で、特殊奏法も交えた演奏で新鮮に聴かせる。変拍子が魅力的な〈3つのブルガリア民謡〉（G,Fl）も聴き応え充分。アンコールはルーマニア伝承曲〈熊の踊り〉（ブルガリアの小さな縦笛使用）他 2曲。〔21日〕マチネの“旬のギタリスト”シリーズはタケオ・サトー（ドイ

20 日 Part1：荘村清志ソロ

ハクジュギターフェスタ写真：三好英輔Hakuju Guitar Festa

20 日　荘村清志＆福田進一

20 日 Part2：小倉美英（Fl）＆アタナス・ウルクズノフ