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監訳者からのメッセージ - jjasp.jp · 手指衛生改善のための手引き ―医療従事者の実務改善のための手引書― 医療の質改善協会(ihi)

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監訳者からのメッセージ 

医療の質改善協会(Institute for Healthcare Improvement: IHI)は非営利の任意団体であり、医療の質の改善には何が必要なのかを検討し、また医療の質を改善する活動を通して展開する目的で設立されました。感染制御領域における昨今のIHIの取り組みの特徴は、第1には科学的な根拠に基づく

エビデンス(米国疾病管理予防センター[CDC]などが発行したガイドライン等の中から)を、ストレートに臨床の現場で現実的に取り組める“バンドル(Bundle)”と呼ばれる感染対策に効果的な複数の対策の組み合わせによる紹介です。IHIの第2番目の特徴は、全米の医療機関に対して働きかけている点です。IHIの取り

組みは実にダイナミックです。全米でバスを用いた講演会ツアーを企画したり、マスコミの協力を仰いだり、“とにかくこれだけは取り組もう!”というスタンスでこの“Bundle”を展開してきました。第三の特徴は、明確なゴールを設定し医療の質の改善に取り組んでいる点です。努力

目標として“10万人を救おう! キャンペーン”などいかにもストレートです。また、こうして達成された目標に関しては、達成宣言を高らかにしている点も見逃せません。いつの日からか、米国ではIHIのもとCDCもSHEA(米国医療疫学学会)もAPIC(感染

制御疫学専門家協会)もみな円陣を組んで互いに協力するようになりました。ここに企業支援によるスポンサーシップも加わり、まさに産・官・学の連合プロジェクトが誕生しているわけです。“良いことにみんなで取り組もう”、そんな基本理念がIHIには息づいています。さあ、本書を手に、皆さんも“Bundle”を始めてみませんか?なお、挿絵、写真、チャート表記、チェック欄は原文にはなく、監訳者の判断で加え

たものです。

公立大学法人横浜市立大学附属病院感染制御部部長・准教授 

満田年宏

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本手引書の流れ 本手引書の流れ

① 手指衛生の知識を評価するためのアンケート(質問集)……………………………………p.26 ② 擦式アルコール製剤および清潔な手袋が利用可能な状態かどうかのチェックリスト……p.28 ③ 手指衛生の実施および手袋使用の状況をモニタリングするための用紙……………………p.30

付録:資料集 ~組織改善のための評価ツール〔サンプル〕~

医療従事者の手指衛生および手袋使用の改善に関する実情

chart 1 医療従事者の 手指衛生遵守 は不十分

chart 2 CDC/HICPAC が呈示した 改善案

chart 3 WHOが 呈示した 改善案

chart 4 追加的介入法 としての 手袋着用

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手指衛生の改善に見込まれる効果

chart 5 改善により 病院感染・ MRSA症例減少

7

手指衛生介入のためのパッケージ ①新任スタッフおよび研修生を含む臨床スタッフは手指衛生実践の主要な要素を理解すること(知識の確認)……………p. 9 ②新任スタッフおよび研修生を含む臨床スタッフは適切な方法で手指を清潔にすること(遵守の確認)……………………p.10 ③患者ケア実施の現場で擦式アルコール製剤および手袋が利用できること(スタッフの利便性)……………………………p.11 ④手指衛生を実施し、手袋はCDCの“標準予防策(スタンダードプリコーション)”による勧告に則して適切に使用する  (能力の検証、遵守の確認、フィードバックの提供)…………………………………………………………………………………p.13

chart 6 改善ための 介入策 (総論)

chart 7 介入策 -1 正確な知識の

確認

chart 8 介入策 -2

正確な手指衛生 の遵守の確認

chart 9 介入策 -3 製剤/手袋 使用の利便性

chart 10 介入策 -4 検証・監察・ フィードバック

8

組織の改善にどう着手するか ・チームの結成…………p.15 ・目標の設定……………p.16 ・改善モデルの利用……p.17

・開始……………………p.18 ・最初の変更検証………p.19 ・評価……………………p.20

・予測される障壁………p.24

chart 11 多職種間で構成 されたチーム 結成の要点

chart 12 目標の設定の 利点と要点

chart 13 改善モデルの 概要

chart 20 評価指標 -4 正確な接触の 回数の割合

chart 21 変革に対する 障壁の認識と 克服法

chart 14 改善策を 開始する際の 重要ポイント

chart 15 最初の変更検証 における 重要ポイント

chart 16 評価ツール

(付録①~③) の利用法

chart 17 評価指標 -1 知識評価テストで 全問正解した者の割合

chart 18 評価指標 -2 正確な実践者の

割合

chart 19 評価指標 -3 手袋、ディスペンサー の設置状況

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手指衛生改善のための手引き―医療従事者の実務改善のための手引書―

医療の質改善協会(IHI)協力:

米国疾病管理予防センター(CDC)

感染制御疫学専門家協会(APIC)

米国医療疫学学会(SHEA)

How-to Guide: Improving Hand HygieneA Guide for Improving Practices among Health Care Workers

Institute for Healthcare Improvement(IHI)with

Centers for Disease Control and Prevention(CDC)Association for Professionals in Infection Control and Epidemiology(APIC)

Society of Healthcare Epidemiology of America(SHEA)

3

http://www.IHI.org

4

手指衛生改善のための手引き―医療従事者の実務改善のための手引書―

医療の質改善協会(IHI)

[監訳注]*1:世界保健機関(WHO)は2004年10月に患者安全プログラム(World Alliance for Patient Safety)を設立しています。このプログラム下

に設けられた“Global Patient Safety Challenge”の最優先課題は、「医療関連感染の減少」です。その主要な活動は、「清潔なケアはより安全なケア(Clean Care is Safer Care)」と題されたキャンペーンによって世界的に、または国家レベルで医療環境における手指消毒を促進することにあります。そのためにWHOは全世界で適用可能な“医療における手指衛生のためのガイドライン(Guidelines onHand Hygiene in Health Care)”を作成中です(関連資料:Am J Infect Control 2006;34:627-635)。患者安全プログラムについては、http://www.who.int/patientsafety/events/05/GPSC_Launch_ENGLISH_FINAL.pdfも参照下さい。

*2:IHIは医療の質を向上させるために有識者らにより設立された非営利の団体です。医療安全ならびに医療関連感染を減らすために数々のキャンペーンを展開しています。その活力に牽引され、現在では関連学術団体や政府組織も活動の主旨に賛同し現在では多くのプロジェクトが産・官・学により構築されています。設立者は、Regina M. Benjamin医師です。下記サイトをご参照ください。http://www.ihi.org/IHI/Programs/ConferencesAndSeminars/8thAnnualOfficePracticeSummitMarch2007.htm?TabId=1

手指衛生改善のための手引き ―医療従事者の実務改善のための手引書―

この手引書は米国疾病管理予防センター(Centers for Disease Control and Prevention:CDC)、感染制御疫学専門家協会(Association for Professionals in Infection Control andEpidemiology: APIC)、米国医療疫学学会(Society of Healthcare Epidemiology ofAmerica: SHEA)との協力で作成され、APICおよびSHEAによって承認されたものです。また、世界保健機関(WHO)により展開されている“患者安全プログラム(World Alliance

for Patient Safety)”からも、“Global Patient Safety Challenge”の資料を通じて貴重な情報の提供を受けました *1。

この文書はパブリックドメインにあり、www.IHI.orgで閲覧できます *2。

謝 辞

医療の質改善協会(Institute for Healthcare Improvement: IHI)は、以下の方々による貴重な貢献に感謝申し上げます:● W. Charles Huskins, MD, MSc; Assistant Professor of Pediatrics, Mayo ClinicCollege of Medicine, Consultant, Pediatric Infectious Diseases, Mayo Clinic,Rochester, MN

● John M. Boyce, MD; Chief, Infectious Diseases Section, Hospital of Saint Raphael,New Haven, CT (SHEA)

● Loretta Litz Fauerbach, MS, CIC; Director, Infection Control, Shands Hospital at theUniversity of Florida, Gainesville, FL (APIC)

● Barbara I. Braun, PhD; Project Director, Center for Health Services Research,Division of Research, JCAHO

● Nancy Kupka, DNSc, MPH, RN; Project Director, Division of Standards and SurveyMethods, JCAHO

● Linda Kusek, Rn, BSN, MPH; Associate Project Director, Division of Research,JCAHO

この手引書の目的は、医療従事者の手指衛生実践および手袋着用を改善することにより、医療機関における耐性菌感染症を含む医療関連感染の減少を支援することにあります。

医療関連感染症は世界中の入院患者の合併症および死亡の主な原因です。米国では、年間200万人近くが医療関連感染症に罹患し、そのために毎年約8万人が死亡しています。医療関連病原体の伝播は、ほとんどの場合、医療従事者の汚染した手指によって生じます。従って、手指衛生(流水と石けんによる手洗い、または擦式アルコール製剤の使用)は長年にわたり、医療関連感染防止のための最も重要な制御方法の1つと考えられてきました。しかし、医療従事者に勧告された手指衛生手順の遵守は依然として十分な水準には到達しておらず、その遵守率は概して手指衛生が必要な状況の50%未満です。

●Jarvis WR. Selected aspects of the socioeconomic impact of nosocomial infections: Morbidity, mortality, cost, andprevention. Infect Control Hosp Epidemiol. 1996 Aug;17(8):552-557.●Pittet D, Mourouga P, Perneger TV. Compliance with handwashing in a teaching hospital. Ann Intern Med.1999;130:126-130.

●Lankford MG, Zemblower TR, Trick WE, Hacek DM, Noskin GA, Peterson LR. Influence of role models andhospital design on hand hygiene of healthcare workers. Emerg Infect Dis. 2003;9:217-23.

医療従事者における手洗いの遵守不良には、感染症の伝播予防における手指衛生の重要性および手指がどれほど汚染されるかに関する医療従事者の知識不足、正しい手指衛生の実施に関する理解の欠如、人手不足および過密状態、手洗い設備が利用しにくいこと、頻繁な流水と石けんへの曝露に伴う刺激性接触皮膚炎、適切な手指衛生の実践に関するシステムが施設に欠如していることなど、多くの要因が関与してきました。

●Pittet D, Boyce JM. Hand hygiene and patient care: Pursuing the Semmelweis legacy. Lancet Infect Dis. 2001;1:9-20.

このような障壁を乗り越えるため、米国疾病管理予防センター(CDC)の医療感染制御実務諮問委員会(HICPAC)は2002年、総合的な“医療現場における手指衛生のためのCDCガイドライン2002(Guideline for Hand Hygiene in Health-Care Settings in 2002)”を公開しました。このガイドラインでは、基本的な勧告の1つとして、擦式アルコール製剤(液状、ゲル状、

あるいはフォームタイプ)は手指の細菌数を迅速に減少させる効能に優れ使用が簡便であるため、多くの場合で望ましい手指衛生法であるということが謳われていました*3。また、擦式アルコール製剤は医療関連感染を引き起こす多くの真菌およびウイルスをも迅速に死滅させます。このCDCガイドラインは、医療施設が多面的なプログラムを作成して手指衛生の実践の改善を目指すよう勧告しました。

●Boyce JM, Pittet D, et al. Guideline for Hand Hygiene in Health-Care Settings: Recommendations of the HealthcareInfection Control Practices Advisory Committee and the HICPAC/SHEA/APIC/IDSA Hand Hygiene Task Force.Morbid Mortal Wkly Rep. 2002;51(RR16):1-45.

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医療従事者の手指衛生および手袋使用の改善に関する実情

chart 1医療従事者の手指衛生遵守は不十分

chart 2CDC/HICPACが呈示した改善案

[監訳者注]*3:日本環境感染学会関連用語英和対照表(http://www.kankyokansen.org/iinkai/yogo.html)ではalcohol-based hand rubsを擦式アルコール製剤と訳している。

医療従事者の手指衛生および手袋使用の改善に関する実情

世界保健機関(WHO)は、世界的な医療施設における手指衛生改善の必要性を認識し、2005年10月、“医療における手指衛生に関するガイドライン(改良草案)(Guidelines onHand Hygiene in Health Care[Advanced Draft])”に着手しました。世界的な合意に立脚したこのWHOのガイドラインは、手指衛生促進の最も効果的なアプローチとして、多面的な戦略の必要性を強調しています。そこでは、スタッフの教育および動機付け、手指衛生の第一手段としての擦式アルコール製剤の採用、実践の指標(performance indicators)の利用、最前線のスタッフ、経営者、医療部門のリーダーなどすべての利害関係者による手指衛生改善のための強力な姿勢表明が主な要素となっています。

●WHO Guidelines on Hand Hygiene in Health Care (Advanced Draft): A Summary. World Health Organization;2005. [http://www.who.int/patientsafety/events/05/HH_en.pdfより入手可能]

患者ケアの際の手袋着用は、ハイリスクな状況における感染性病原体の伝播阻止に役立つ追加的な介入です。手袋は医療従事者の手指の汚染を軽減し、手指の汚染によって他の患者へ病原体が伝播することを予防し、患者を防護します。さらに、CDCの標準予防策(スタンダードプリコーション)に従って手袋を着用した場合、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)やB型肝炎ウイルスおよびC型肝炎ウイルスのような血液媒介感染病原体への曝露から医療従事者を防護することができます。ただし、その場合には適切に使用する必要があります。手袋はケア中に汚染される可能性

があり、同じ患者におけるケアでも汚染部位から清潔な部位に移動する際には手袋を取り外したり交換したりすることが必要です。また、手袋をはめていても手袋のピンホールによって手指が汚染したり、手袋の取り外しの際に手指が汚染されたりすることもあります。このため、手袋着用は適切な手指衛生実践のための重要な補助手段ではあっても、手指衛生の代用手段ではありません。

●Pittet D, et al. Bacterial contamination of the hands of hospital staff during routine patient care. Arch Intern Med.1999;159:821-826.●Pessoa-Silva CL, Richtmann R, Calil et al. Dynamics of bacterial hand contamination during routine neonatal care.Infect Control and Hosp Epidemiol. 2004;25:192-197.

●Tenorio AR, Badri SM, Sahgal NB, et al. Effectiveness of gloves in the prevention of hand carriage of vancomycin-resistant Enterococcus species by health care workers after patient care. Clin Infect Dis. 2001;32:826-829.●Johnson S, Gerding DN, et al. Prospective, controlled study of vinyl glove use to interrupt Clostridium difficilenosocomial transmission. Am J Med. 1990;88:137-140.

●Garner JS, Hospital Infection Control Practices Advisory Committee. Guideline for isolation precautions inhospitals. Infect Control Hosp Epidemiol. 1996;17:53-80. [http://www.cdc.gov/ncidod/dhqp/gl_isolation.htmlにて閲覧可能]

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chart 3WHOが呈示した改善案

chart 4追加的介入法としての手袋着用

手指衛生改善のための手引き ―医療従事者の実務改善のための手引書―

数多くの研究により、様々な介入、擦式アルコール製剤の導入、教育および行動に関する指針があれば、手指衛生の遵守が少なくともそこそこ改善できることが示されてきました。大半の専門家は、多面的な介入により効果が増大すると考えています。例えばPittetらは、擦式アルコール製剤の推進を中心とした、多岐の専門分野にわたる包括的な手指衛生改善プログラムを実施し、手指衛生の遵守率を著明に改善しました。改善の多くは、擦式アルコール製剤の使用増加によるものでした。著者らは厳密な因果関係が証明されたとまでは断言していませんが、手指衛生遵守の改善により、病院感染およびメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)の新規症例の発生が減少したと報告しています。(図1、図2参照)。

●Pittet D, Hugonnet S, et al. Effectiveness of a hospital-wide programme to improve compliance with hand hygiene.Lancet. 2000;356:1307-1312.

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chart 5改善により病院感染・MRSA症例が

減少

手指衛生の改善に見込まれる効果

図1 手洗いおよび擦式アルコール製剤による手指消毒に対する介入の効果

図2 メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)および病院感染に対する手指衛生の効果

■擦式アルコール製剤による手指消毒

■流水と石けんによる手洗い

■病院感染  ● MRSAの症例

手指衛生遵守の割合

入院患者100例あたりの

MRSA新規症例の割合

入院患者100例あたりの

病院感染の割合

● ●

● ●

1

1009080706050403020100 0

0.7 20181614121086420

0.6

0.5

0.4

0.3

0.2

0.1

2 3 4 5 6 7 1993 1994 1995 1996 1997 1998

手指衛生の改善に見込まれる効果

手指衛生介入のためのパッケージは、個別の方策でも患者ケアを改善しますが、包括して実施することによりさらに著明な改善をもたらす最善の介入策の集成です。おのおのの介入を裏付ける科学的根拠は、標準的なケア方法と見なされるに足るものです。以下に掲げた手指衛生の介入パッケージにおける4つの構成要素は、重要な方向性を有した多面的な手指衛生プログラムです。手袋の使用は手指衛生と密接に関係しているため、手袋の使用方法もここに含まれています。

1. 新任スタッフおよび研修生を含む臨床スタッフは、手指衛生実践のための主要な要素を理解すること(知識の確認)

2. 新任スタッフおよび研修生を含む臨床スタッフは、適切な方法によって手指を清潔にすること(遵守の確認)

3. 患者ケアを実施するあらゆる現場で擦式アルコール製剤および手袋が利用できること(スタッフの利便性)

4. 手指衛生は適切な時に正しい方法で行い、手袋はCDCの提唱する標準予防策(スタンダードプリコーション)の勧告どおりに適切に用いること(能力の検証、遵守の確認、フィードバックの提供)

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手指衛生介入のための介入パッケージ

chart 6改善ための介入策(総論)

手指衛生改善のための手引き ―医療従事者の実務改善のための手引書―

1.新任スタッフおよび研修生を含む臨床スタッフは手指衛生実践の主要な要素を理解すること(知識の確認)

医療従事者の手指の汚染の起因として、患者の体から出る分泌物、排泄物、損傷した皮膚、創傷との接触があげられますが、患者の正常な皮膚や患者周囲の環境表面に触れても汚染されることがあります。医療従事者は、こうした行為のすべてで手指が汚染される可能性があることをきちんと認識し、実践しなければなりません。

●Pittet D, Dharan S, Touveneau S, Savan V, Perneger TVl. Bacterial contamination of the hands of hospital staffduring routine patient care. Arch Intern Med. 1999;159:821-826.●Duckro AN, Blom DW, Lyle EA, Weinstein RA, Hayden MKl. Transfer of vancomycin-resistant enterococci viahealth care worker hands. Arch Intern Med. 2005;165:302-307.

擦式アルコール製剤(alcohol-based hand rubs)は、手洗い(handwashing)と比較して、手指上に生存する細菌およびウイルスの数をより効果的に減少させることが証明されている他、使用時間が短くて済み、ケア実施場所で簡便に利用でき、繰り返し使用しても刺激や乾燥が少なくて済みます*4。手洗いは手指が目に見えて汚染されている場合、下痢を伴うクロストリジウム・ディフィシル(Clostoridium difficile)などに感染した下痢症の患者のケアの後、食事前、トイレ使用後にも必要です*5。医療従事者は、特に手洗いが必要な場合はもちんのこと、擦式アルコール製剤の使用を正確な知識に基づいて実践しなければなりません。

●Boyce JM, Pittet D. Guideline for Hand Hygiene in Health-Care Settings: Recommendations of the HealthcareInfection Control Practices Advisory Committee and the HICPAC/SHEA/APIC/IDSA Hand Hygiene Task Force.Morbid Mortal Wkly Rep. 2002;51:1-45.●WHO Guidelines on Hand Hygiene in Health Care (Advanced Draft): A Summary. World Health Organization;2005.[http://www.who.int/patientsafety/events/05/HH_en.pdfより入手可能]

■どのような変更を行なえば改善につながるでしょうか?

これまで全米および世界中の国々における感染対策チーム(ICT)により、手指衛生実践の主要な要素に関する知識向上のための改善策の構築と検証が行われてきています。成功した方法の例を以下に示します。

□ 医療従事者に提供する教材の補足として、手指汚染につながる患者ケア業務のグルーピングを検討する

□ 患者ケアを実施する現場での手洗いおよび擦式アルコール製剤使用の相対的な利点と欠点について臨床スタッフと検討する

□ 手指の汚染が多剤耐性病原体やウイルスといった医療関連の病原体の伝播に関与することの重大性を強調する

□医療関連感染が原因の発症率と死亡率に関する情報を臨床スタッフに提供する

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chart 7介入策-1正確な知識の確認

[監訳者注]*4:ここで表記している“手洗い”は流水と石けんによる衛生手洗いのことです。*5:クロストリジウム・ディフィシルは芽胞を形成するため消毒薬抵抗性です。クロストリジウム・ディフィシル腸炎の患者ケアの際には、

ディスポーザブルの手袋を装着し、患者ケア後には流水と石けんによる手洗いを行います。

手指衛生介入のための介入パッケージ:介入策-1

2.新任スタッフおよび研修生を含む臨床スタッフは適切な方法で手指を清潔にすること(遵守の確認)

十分な効果を得るためには、適量の擦式アルコール製剤または石けんを手指の表面全体に行き渡るようにし、十分な時間作用させなければなりません。それが遵守されなかった場合は、手指衛生の効果は減弱します。このため、臨床スタッフは手指衛生を正確に実施できることが求められます。擦式アルコール製剤の適切な手指への擦り込みには、十分な量を手指の表面全体に行き渡らせて、手指が乾燥するまで少なくとも15秒間擦り合わせる必要があります。適切な手洗いには、十分な量の石けんを手指の表面全体に適用し、少なくとも15秒間摩擦させて擦り合わせてから洗い流す必要があります。手洗い後の手指の汚染を避けるよう、十分に注意してください(乾燥にはペーパータオルまたはシングルユースの布タオルを使用し、手動で水を止める場合はペーパータオルを用いて栓を締めます)。

●Larson EL, Eke PI, Wilder MP, Laughon BE. Quantity of soap as a variable in handwashing. Infect Control.1987;8:371-375.●Widmer AE, Dangel M. Alcohol-based hand rub: Evaluation of technique and microbiological efficacy withinternational infection control professionals. Infect Control Hosp Epidemiol. 2004;25:207-209.

■どのような変更を行なえば改善につながるでしょうか?

これまで、ICTにより、手指衛生を改善するための改革戦略の構築および検証が手がけられてきました。以下に改善例を示します:

□ 医療従事者向けの教育講習の中で、擦式アルコール製剤の使用および正しい手洗い方法について、実演による実技指導を行なう

□ 医療従事者向けの教材として正しい手洗い方法および手指擦り込み方法をプレゼンテーションしたビデオテープを提供する

□ 手指衛生を効果的に行なうためには、適量の擦式手指消毒剤または石けんを使用しなければならないことを強調する

□蛍光染料ベースの研修方法*6を用いて臨床スタッフに正しい手指衛生方法を提示すること□ 臨床スタッフの手指衛生方法が妥当であるか定期的にモニタリング(監察)し、フィードバックを提供する

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chart 8介入策-2

正確な手指衛生の遵守の確認

[監訳者注]*6:蛍光染料ベースの研修方法:やや粘性のある蛍光物質の入ったクリームを手指に塗布した後に、流水と石けんで手洗いを行い、洗い残

しをブラックライトで確認する方法

手指衛生改善のための手引き ―医療従事者の実務改善のための手引書―

手指の表面全体に十分な量のアルコール製剤を擦り込むこと。指先は特に入念に

手動で水を止める場合には栓に直接触れないこと。ペーパータオルを使用するか、肘を使います

3. 患者ケア実施のあらゆる現場で擦式アルコール製剤および手袋が利用できること(スタッフの利便性)

患者ケアを実施するあらゆる現場の近くに擦式アルコール製剤のディスペンサーを置くことにより、医療従事者に勧告された手指衛生の遵守が改善します。例えば、Bischoffらは、擦式アルコール製剤のディスペンサーが各患者のベッドの近辺に

設置してある場合と、4床に1個だけ設置してある場合とを比べて医療従事者による手指衛生の遵守率が著明に向上することを確認しています。救命救急医療においては、ベッドサイドで擦式アルコール製剤が利用できることにより、患者ケアを実施する現場で手指衛生に費やす時間が少なくなり、遵守率の向上につながることが明らかとなっています。Pittetらは、医師の手指衛生に関する研究により、擦式アルコール製剤へのアクセスが容易であることが手指衛生の遵守を改善する独立した予測因子*7であることを解明しました。

●Bischoff WE, Reynolds TM, Sessler CN, Edmond MB, Wenzel RP. Handwashing compliance by health careworkers: The impact of introducing an accessible, alcohol-based hand antiseptic. Arch Intern Med. 2000;160:1017-1021.●Pittet D, Hugonnet S, et al. Effectiveness of a hospital-wide programme to improve compliance with hand hygiene.Lancet. 2000;356:1307-1312.●Hugonnet S, Perneger TV, Pittet D. Alcohol-based hand rub improves compliance with hand hygiene in intensivecare units. Arch Int Med. 2002;162:1037-1043.●Pittet D, Simon A, Hugonnet S, et al. Hand hygiene among physicians: Performance, beliefs, and perceptions. AnnIntern Med. 2004;148:1-8.

バリア・テクニック*8が適応となる前述のハイリスク状況下では、患者ケアを実施する現場でアルコール製剤が利用できるだけでなく、複数サイズの手袋も準備しておかなければなりません。この用途の場合は滅菌手袋は不要です:清潔なシングルユースの手袋には非病原性微生物がごく僅かしか存在しないことがいくつもの研究において培養検査により証明されています。

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chart 9介入策-3

擦式アルコール製剤/手袋使用の利便性

[監訳者注]*7=独立した予測因子(independent predictor):特定の項目に単独で取り組んだ場合に改善がみこまれる因子を意味します。*8=バリアテクニック:プラスチックエプロン、ゴーグルなどの個人防護具を装着すること。

手指衛生介入のための介入パッケージ-:介入策-3

■どのような変更を行なえば改善につながるでしょうか?

医療従事者が擦式アルコール製剤および手袋を即座に利用できる状態へ改善する戦略に取り組んできたICTは、手指衛生の遵守率を向上させることができました。以下に改善例を示します:

□ 擦式アルコール製剤のディスペンサーおよび複数のサイズの清潔な手袋を入れた箱を、以下のような方法でベッドサイドに設置:・各患者のベッド付近・ベッドフレームに装着・各患者の病室のドア付近(廊下側のドア近く、またはドアのすぐ内側のいずれか)・ナースステーションまたは医薬品カートの上・個人携帯用の(ポケットまたはベルト)ディスペンサーとして個別に供給

□ 行政により設定された火災安全規則に準拠した場所に擦式アルコール製剤のディスペンサーを設置

□ 以下を確実に実施するため、擦式アルコール製剤のディスペンサーおよび手袋の箱を定期的にチェックする責任者の割り当て:・ディスペンサーおよび手袋用の箱が空になっていないか?・ディスペンサーは使用可能か?・ディスペンサーは適量が吐出できるか?

□ 機能性の乏しいディスペンサーは手指衛生の遵守を妨げるおそれがあるため、製品を選ぶ前にはディスペンサーのデザインおよび機能性を評価

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手指衛生改善のための手引き ―医療従事者の実務改善のための手引書―

手袋(複数サイズ)、擦式アルコール製剤のディスペンサー、ペーパータオルなどは、患者ケアにとって最も有効な場所に、機能的な整理方法で配備しておくこと

壁付けの自動水栓

予備器材を収納する戸棚

手袋(複数サイズ)

ペーパータオル

消毒液(ディスポタイプ)

石けん水(ディスポタイプ)

十分な広さのある手洗い器

4.手指衛生を実施し、手袋はCDCの標準予防策(スタンダードプリコーション)による勧告に則して適切に使用する(能力の検証、遵守の確認、フィードバックの提供)

臨床スタッフはCDCの“医療現場における手指衛生のためのガイドライン”に記載された勧告の内容に即して手指を清潔にする必要があります。以下に勧告の内容例を示します:

以下の場合は抗菌成分の入っていない石けんまたは抗菌成分の入った石けん*9による手洗いを実施:□ 手指が蛋白質を含んだ物質または血液その他の体液で目に見えて汚れているか、または汚染されている場合

□食事の前□トイレを使用した後□クロストリジウム・ディフィシルを保菌した患者をケアした後

手指が目に見えて汚れていない場合は、以下の状況で擦式アルコール製剤を用いて日常的に手指を消毒:□患者と直接接触する前□中心静脈カテーテルの挿入時、滅菌手袋を着用する前□尿路留置カテーテル、末梢血管内留置カテーテル、その他の侵襲的な器材を挿入する前□患者の皮膚と直接接触した後□ 体液、粘膜、損傷した皮膚、創部のドレッシング材との接触後で、手指が目に見えて汚れていない場合

□患者のケア中、汚染された身体部位から清潔な身体部位に移動する場合□患者のすぐ近くにある物品と接触した後□手袋を外した後

患者または患者環境との接触があった場合は、患者のベッドサイドまたは病室から離れる際に手指を消毒

●Boyce JM, Pittet D, et al. Guideline for Hand Hygiene in Health-Care Settings: Recommendations of the HealthcareInfection Control Practices Advisory Committee and the HICPAC/SHEA/APIC/IDSA Hand Hygiene Task Force.Morbid Mortal Wkly Rep. 2002;51(RR16):1-45.●WHO Guidelines on Hand Hygiene in Health Care (Advanced Draft): A Summary. World Health Organization;2005. [http://www.who.int/patientsafety/events/05/HH_en.pdfより入手可能]

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chart 10介入策-4検証・監察・フィードバック

手指衛生介入のための介入パッケージ-:介入策-4

[監訳者注]*9=抗菌成分の入った石けん:わが国では“スクラブ剤”として多くが供給されている。

臨床スタッフは、CDCの“標準予防策(スタンダードプリコーション)”に記載された勧告の内容に従って手袋を着用してください。以下に勧告の内容を示します:

□ 血液やその他の感染性の体液、排泄物、分泌物(汗以外)、粘膜、損傷した皮膚との接触が生じるおそれがある場合は手袋を着用

□ 患者ケア後は手袋を外す―医療従事者は同じ手袋を着用したまま2名以上の患者のケアをしない

□患者のケア中、汚染された身体部位から清潔な身体部位に移動する際には手袋を交換□手袋を外した直後に、手指衛生を実施

●Garner JS, Hospital Infection Control Practices Advisory Committee. Guideline for isolation precautions inhospitals. Infect Control Hosp Epidemiol. 1996;17:53-80. [http://www.cdc.gov/ncidod/dhqp/gl_isolation.htmlにて閲覧可能]●WHO Guidelines on Hand Hygiene in Health Care (Advanced Draft): A Summary. World Health Organization;2005. [http://www.who.int/patientsafety/events/05/HH_en.pdfより入手可能]

■どのような変更を行なえば改善につながるでしょうか?

これまでにICTにより、医療従事者の手指衛生実践および手袋使用の改善案の構築および検証が行われてきました。以下に変更例を示します:

□手指衛生および手袋使用の適応について医療従事者に提供する教材に盛り込む以下に教材の例を示します:□ 有識者による定期的な講義(可能であれば利用者参加型のインタラクティブなソフトウェアを含める)

□ 医療環境における適切な手指衛生法の重要性を解説したビデオテープおよびPowerPointによるプレゼンテーション

□ 病院のイントラネットを介して臨床スタッフが利用できるコンピュータを利用したインタラクティブな学習

□ 流水と石けんで手洗いをする場合、または擦式アルコール製剤を使用する場合の適切な使用方法の指導を含めた医療従事者向けの教育プログラムを実施する。

□ 教材の提供者自身が、手指衛生および手袋に関する論理的根拠を理解しており、最善の実践方法を遵守でき、患者の予後を改善することを確実にしておく。(自己達成感)

□ 多面的な要素から構成された広報キャンペーンを開始する。(例えば手指衛生および手袋着用を勧告する著名な病院勤務医/スタッフの写真を掲載したポスター;小児病院の子どもが描いた絵;目標とするメッセージを表示したスクリーンセイバーなど)

□模範者および教育者としてオピニオンリーダーを起用する(学術的な説明)□ 誰もが進んで自発的に手指衛生および手袋着用を話題に載せて喚起することが奨励され、それらの遵守が職場社会での規範となる文化基盤を構築する

□ ベッドサイドで擦式アルコール製剤および適切なサイズの手袋を常に容易に利用できるシステムを構築し、それによって医療従事者が最善の手指衛生および手袋着用の実践を遵守できるようにする

□ 患者やその家族に、手指衛生および手袋の適切な実践についてまとめた患者の安全性に関する情報パンフレットを提供して手指衛生に関心を持ってもらい、医療従事者に手指衛生の遵守を喚起してくれるよう奨励する

□ 医療従事者に対し、リアルタイムのフィードバックや長期にわたる遵守傾向を含め、勧告された手指衛生法および手袋使用法を実践しているかどうかをモニタリングする

14

手指衛生改善のための手引き ―医療従事者の実務改善のための手引書―

チームの結成

医療の質改善協会(IHI)は、医療従事者間で、多職種間で構成されたチーム(ICT)によって手指衛生の改善に取り組みがなされるよう勧告しています。改善チームの構成員が多職種間にわたっている場合でも、統一された理念がなければなりません。様々な医療従事者が集まることの意義は、医療チームのメンバー全員が結果に関与し、協力して同じ目標を達成することにあります。関係者全員が適切な手指衛生法の実施に参与していることは、全員の賛同および協力を得

る際に役立ちます。例えば、看護師のいないチームに失敗は避けられません。看護師および療法士が主導するチームには成功が見込まれますが、概して影響力を欠きがちです。医師もチームの一員として必要です。チームには少なくとも、改善策実施の障壁を取り除く際の助けとなりうる管理者または上級指導者のほか、臨床の場に手指消毒剤を供給する部署のメンバーを含める必要があります。チームは手指衛生のポスター、自己啓発の材料、教材のデザインまたは選択にも関与してください。優秀なチームメンバーを集めて引き止めておくために以下の提言をします。

□データを用いて問題を特定し解決する□ 病院内に熱心な推進者およびオピニオンリーダーを見いだし、努力に対してすぐに信頼を示すようにしてもらう

□ プロジェクトへの取り組みを希望しない人を説得するのではなく、希望する人に参加してもらう

施設のリーダーの意欲が成功の決定要因です。委員会、幹部、臨床部門の長、および感染対策チームのリーダーの一致団結が必要です。リーダーは激励を与え、期待を示し、障壁を取り除き、成功を賞賛することが求められます。具体的な“常に高いレベルを目指す(raise-the-bar)”という目標(すなわち前例のない実践水準を達成するという目標)は、これまでの達成水準をゆうに超える遵守率を達成する発端となります。最高のレベルで確実な成果を得るためには、遵守に対する全か無か(all-or-none)の考え方(すなわち適切な実践の全要素を実施する)が必要です。患者の視点からすれば、適切な手指衛生および手袋着用の実践に関する全要素を遵守してくれることは当然の期待です。高いレベルの遵守が達成された段階でその工程の策定者を特定してください。その人物で

あれば、高いレベルの実施を確実に維持してくれるでしょうし、遵守率が低下した場合には手指衛生プログラムの重要な側面に関する問題の解決を支援してくれるでしょう。

15

組織の改善にどう着手するか

chart 11多職種間で構成されたチーム結成の要点

組織の改善にどう着手するか:チームの結成

医師、看護師、臨床検査技師、臨床薬剤師による多職種間で構成されたチーム(ICT)を結成して改善に取り組んでください

目標の設定

劇的な改善には明確な目標および期間ごとの定量的な改善目標が必要です。確固たる意欲と実現可能な目標がなければ、組織は改善しません。明確かつ集中的な目標がある場合、チームは成功を収めやすくなります。数値目標を設定すれば目標が明確化し、変更に対する緊張が生じ、評価への方向付けが行われ、初期変化が注目されます。チームは、いったん目標が設定されたら、意図的に目標を取り下げたり、無意識のうちに目標から離れて“漂流”したりしないよう注意する必要があります。高い目標を達成するためには、適切な人員配置ならびに時間配分を割り当てる必要があります。

□ 手指衛生の遵守改善の目標は、例えば“1年以内に手指衛生遵守率を25%向上させる”といった控えめなものでもかまいませんが、より積極的な目標が望まれます。病院認定合同委員会*10の「米国患者安全目標#7」に従えば、90%を超える手指衛生遵守率の向上が高い目標ということになります。高い目標により、手指衛生の実践は、感心なことというレベルから、必要不可欠の行動というレベルに焦点が移行します。

□ 厳しい数値目標であることとは別に、施設のリーダーおよびオピニオンリーダーから全面的かつ積極的にコンセンサスを得た目標である必要があります。

16

chart 12目標の設定の利点と要点

[監訳者注]*10:病院認定合同委員会(Joint Commission on Accreditation of Healthcare Organizations: JCAHO)は日本の医療機能評価機構設立時に参

考にした米国の医療機能評価システムです(http://www.jcaho.org/mainmenu.htm)。

手指衛生改善のための手引き ―医療従事者の実務改善のための手引書―

改善モデルの利用

組織の改善を進めるため、IHIは改善モデルの利用を推奨します。Associate in ProcessImprovement(API; http://www.apiweb.org/API_home_page.htm)が開発した改善モデルは、簡単であるにも関わらず強力な改善推進のツールで、これまでに何百もの医療組織が多様な医療のプロセスの改善および結果の向上のために活用し、成功を収めてきました。この改善モデルは次の2つの部分に分かれています:

●改善チームに3つの基本的な質問をします:これにより、①明確な目標の設定、②変更が改善に結びついているかどうかがわかる指標の確立、③改善につながりうる変更であるかどうかの判定、ができるように指導します。

● Plan-Do-Study-Act(PDSA)*11:実施現場における変化を調査するための小規模なテストを実施します。チームは、テストの計画・実施・結果の観察を行った後、判明したことに基づいて行動します。テストは小規模かつ迅速であることが極めて重要です(集中治療室の患者2例のテストを明日実施する、など)。これは行動指向型の学習に適用される科学的な方法です。

■実施

小規模な形で変更の検証を行って各テストから学び、何度かのPDSAサイクルを通じて変更プログラムを改良した後、チームはより大規模な変更を実施します。ICU内の1部屋か2部屋を利用して、患者ケアの現場では手指衛生用アルコール製剤および手袋を置くのに適切な場所はどこであるか決定してみる;手指衛生用アルコール製剤の利用性や手指衛生および手袋に関する指針の遵守に関するチェックをICTのラウンドに盛り込んでみる、など。

■拡大

試験的なグループまたはユニット全体に対して1つまたは一連の改善の実施に成功したチームは、次にその変更を組織の他のグループや別の組織にも広げて実践することが可能です。改善モデルおよび改善の拡大方法に関する詳細は、IHIのホームページ(http://www.IHI.org/IHI/Topics/Improvement)で入手可能です。

17

chart 13改善モデルの概要

[監訳者注]*11:PDSAは品質管理システムの略号。PDCA(計画、実証、点検、改善:Plan-Do-Check-Act)サイクルとほぼ同義。

組織の改善にどう着手するか:改善モデルの利用

開 始

手指衛生および手袋に関する介入パッケージは一夜にして遂行できるだろうという考えは持たないでください。プログラムの成功には、入念な計画、プロセスが機能しているかどうかの検証、必要に応じた修正、再検証、周到でベストな実践が必要です。

□最初の改善案を検証するためのチームおよび病室(病棟)を選択

□ 現時点での実践および遵守状況を評価。現在実施中の手指衛生および手袋に関するプログラムがある場合でも、スタッフと協力して、より高いレベルの成果目標を達成するための改善案の作成に着手してください。調査を行ない、手指衛生および手袋に関する遵守率のベースラインを明らかにしてください。その遵守率が文献に発表されている遵守率と比較してどの程度であるか判断してください

□ 教育プログラムを作成。手指衛生および手袋着用の実践のコア原則について病院全体の臨床スタッフを指導します。ベースライン時の遵守データをスタッフにフィードバックすることにより、改善の必要性をより強く意識するようになります

□ 現在使用中の手指衛生製品の満足度を評価。手指衛生用アルコール製剤がすでに施設内で利用できる場合は、皮膚刺激度、粘稠度(「粘性」)、乾燥時間、におい、使いやすさ、ディスペンサーの信頼性といった点から当該製品の満足度について、臨床スタッフにインタビューを行ってください

□ 現時点で手指衛生用アルコール製剤が施設内で利用されていない場合は、看護師および医師の何人かに2、3種類の製品を試用してもらい、臨床スタッフに最も受け入れられやすい製品を決めてから製品を選択してください。また、機能性の乏しいディスペンサーは手指衛生の遵守率に悪影響を及ぼしかねないため、ディスペンサーのデザインおよび機能性を評価してから使用する製品を選択することも重要です

□ 手指衛生用アルコール製剤のディスペンサーの適切な設置場所について、臨床スタッフ(看護師、医師、呼吸療法士、その他の医療従事者のチーム)から情報を収集

□手指衛生介入のパッケージを医療従事者全員に紹介

18

chart 14改善策を

開始する際の重要ポイント

手指衛生改善のための手引き ―医療従事者の実務改善のための手引書―

最初の変更検証

チームが現行プロセスを調査し医療従事者を教育して、改革方法の準備を終えた後、次のステップとして手指衛生介入のパッケージの検証を開始することになります

□介入パッケージを実行する看護ユニットを2、3グループ選択

□ 患者ケアの現場に、すでに手指衛生用アルコール製剤のディスペンサーが設置され、適切に機能していることを確認

□ ケアの実施場所に複数のサイズの清潔な手袋が十分に供給され、利用可能であることを確認。

□ 個々の看護ユニットへの教育機会、または複数の看護ユニットの職員が参加できる勉強会を開催。初期の教育集会には、患者ケアの責任者を含めてください

□ 擦式アルコール製剤の使用および流水と石けんによる手洗いの適切な方法に関するデモンストレーションの実施

□ チームメンバー(感染制御の専門家を含む)に看護ユニットを訪問してもらい、手指衛生のための日常的な手指衛生用アルコール製剤の使用および手袋の適切な使用について質疑応答

□ 手指衛生推進ポスターを病院中の目の付きやすい場所に掲示し、多角的な改善キャンペーンを開始

□ 患者やその家族にも関心を持ってもらうため、最善の手指衛生実践に関する情報を記載した患者の安全に関する“情報パンフレット”を配付。患者やその家族から、臨床スタッフに対して手指衛生や手袋着用を喚起してくれるよう奨励

19

chart 15最初の変更検証における

重要ポイント

組織の改善にどう着手するか:最初の変更検証

評 価

この手引書の付録として3種の評価ツールを掲載してあります。

●付録1.手指衛生の知識を評価するためのアンケート(質問表) p.26

●付録2.擦式アルコール製剤および清潔な手袋が利用可能な状態かどうかのチェックリストp.28

●付録3.手指衛生の実施および手袋使用の状況をモニタリングするための用紙 p.30

付録2および3については、手指衛生改善のための勧告のプロセスおよび結果の指標に関して具体的に記載した用紙を参照して下さい。手指衛生改善のための介入パッケージの中の4つの介入方法はいずれにおいても、遵守さ

れているかどうかについて、“全か無か”で判定してください。言い換えれば、ある医療従事者が手指衛生と手袋使用に関してすべてではなく一部だけ正しい知識をもっている場合は、介入パッケージを遵守しているとは言えません。部分的に適格でも、遵守していることにはなりません。患者ケアを実施する現場にアルコール製剤があっても、ディスペンサーが空であったり手袋が置いてなかった場合、介入パッケージを遵守しているとは言えません。同じように、患者との接触の際、手指衛生および手袋着用に関するすべての指標が全て正確に実践されていなければ遵守したことになりません。こうした評価方法に立脚し、高いレベルの成果達成には極めて正確な患者ケアのプロセスが必要となり、なおかつ患者から見た場合に部分的な遵守は是認できないものであることを認識しなければなりません。変革が改善に結びついたかどうかを知る方法はこうした評価方法をおいて他にありませ

ん。手指衛生および手袋着用が改善の方向にあるかどうかを判定するための指標には、以下の

ようなものがあります(次ページ)。

20

chart 16評価ツール(付録1~3)の利用法

手指衛生改善のための手引き ―医療従事者の実務改善のための手引書―

■指標1.標準的な手指衛生に関する知識の評価テストで、5つの質問すべてを正解した医

療従事者の割合

この指標は、手指衛生および手袋使用に関する主な要素について十分な知識を有している臨床スタッフの割合を判定する方法です。病棟で患者ケアを行う医療従事者の知識をリアルタイムに評価する上で、とても簡単ですぐに実践できる方法です。毎月(または病院が特定したインターバルで)、様々な部門の医療従事者10名を無作為に選択し、能力チェック(以下の指標2を参照)と併せて5つの質問(付録1を参照)に回答してもらいます。具体的な質問事項は、それぞれの病院が作成しても、付録1に記載したサーベイランス例から選択してもかまいません。その他、イントラネットを利用した学習または知識マネジメント・システムを用いて知識

を評価する方法もあります。米国の医療施設では、このような電子システムが急速に採用されつつあります。このアプローチの利点は、臨床スタッフ全員が年1回の頻度でテストを受けられること、あるいは、サンプルテストを頻回に実施できることです。評価結果は電子文書化され、再評価の目的で使用することができます。間違った回答を認識できるシステムを使えば、全問正解した医療従事者の割合をすぐ計算できるので、教育プログラムの計画立案が容易になります。しかし、間違った回答を認識できないシステムや、回答者が満点を取れるまで何度もテストを受けられるようなシステムの場合は指標の算定ができません。

■指標2.主要な3つの手指衛生手順を正確に実践した医療従事者の割合

これも簡単ですぐに実践できるローテクな方法で、指標1で述べた方法と併用できます。毎月(または病院が特定したインターバルで)、様々な部門の臨床に携わる医療従事者10名を無作為に選択して観察し、3つの主要な手指衛生手順――手洗い・擦式アルコール製剤・手袋――を正確に実践しているかどうか評価します。この方法は多くの時間を要しますが、評価を直接的にフィードバックできるという利点があります。また、この方法をとることにより、医療従事者がつけ爪やエクステンダーをしていないこと、爪を6mm(1/4インチ)未満に切ることを確実に認識させることになります。

●Boyce JM, Pittet D. Guideline for Hand Hygiene in Health-Care Settings: Recommendations of the HealthcareInfection Control Practices Advisory Committee and the HICPAC/SHEA/APIC/IDSA Hand Hygiene Task Force.Morbid Mortal Wkly Rep. 2002;51:1-45.

その他の方法としては、医療従事者の実際の業務の中で、手指衛生の実践をモニタリング(監察)する方法があります(指標4を参照)。この方法は、押し付けがましさがないことや、他のモニタリング活動と統合できるという利点がありますが、直接的にフィードバックすることができず、モニタリングのプロセスに複雑性が加わります。

□ 手洗い:少なくとも15秒間は石けんに触れながら手指の表面すべて(手掌、手の甲、指、指先、爪)をカバーし、流水と石けんで手指を洗浄;擦り合わせます・手洗い後の手指が再び汚染しないように注意しながら水道を止めます:蛇口が手動の場合は、ペーパータオルを使って蛇口を閉めます;蛇口が自動の場合は、正確な動作が行われているかによって判定します

・新しいペーパータオルで手指の水分を除去します

21

chart 17評価指標-1知識評価テストで全問正解した者の割合

chart 18評価指標-2正確な実践者の

割合

組織の改善にどう着手するか:評 価

□手指衛生用アルコール製剤(擦式、ゲル、泡状):手指の表面すべて(手掌、手の甲、指、指先)をカバーできる十分な量を用います;乾燥するまで(15秒以上)擦り合わせることにより確実に十分な量が使われたことになります

□正確な方法で手袋を外します(汚染された手袋の表面で手指を汚染しないようにします)

■指標3.適切なサイズの清潔な手袋、および機能性があり適量吐出できるアルコール製剤

(擦式、ゲル、泡状)のディスペンサー(壁掛け式または立てておくボトル)が設

置できるベッドサイドの割合

指標1、2のモニタリング対象となっている病棟を、標準化された手順および評価用紙(付録2を参照)を用いて、月に1度直接モニタリングします。あるいは、ICTによるルーチンのラウンドの一部として、その利用性を定期的に評価します。

□ アルコール製剤のディスペンサーは、常にベッドサイドで利用でき、空になっておらず、機能性があり、適量吐出できることが必要です。携帯用あるいはポケットサイズのボトルを用いる場合は、その病棟に適した量と機能がなければなりません。

□ ベッドサイドでは、少なくとも2種類のサイズの手袋が、いつでも利用できるように設置されていなければなりません。

■指標4.医療従事者が患者と接触した回数のうち、正確な手指衛生および手袋着用の実践

の全指標を遵守した回数の割合

遵守率は、研修を受けた監察員により標準化された手順および評価用紙(付録3を参照)に即して直接モニタリング・調査します。監察員は患者ケアチームの一員ではなく、他の目的で日常的に病棟に滞在している人物であることが望まれます(この独立したモニタリングは、ICTによるルーチンのラウンド中の監察によってさらに強化されるため、迅速な評価およびフィードバックが可能となります)。患者と接触する回数が約25~30回であるとすれば、監察時間は20分~30分を要します(必要に応じ繰り返します)。手指衛生および手袋に関する介入パッケージの全指標が完全に遵守されているかどうか正確に判定するためには、患者との接触のすべてを漏らさず観察しなければなりません。全内容が正確に実践された回数を、監察した回数の数で除し、100をかけて遵守率(%)を算定します。“完全な遵守”は以下の表にまとめた手指衛生方法および手袋使用の遵守によって規定さ

れます。患者が隔離予防策の対象となっていて、その患者および患者環境との接触時に手袋着用が必要な場合、およびユニットごとの手順として常に手袋着用が必要な場合(いかなる患者との接触でも、患者に極めて近い環境と接触する場合でもすべて手袋を着用)は、あらゆる接触に際して手袋を着用しなければなりません。

22

chart 20評価指標-4正確な接触の回数の割合

chart 19評価指標-3手袋、

ディスペンサーの設置状況

手指衛生改善のための手引き ―医療従事者の実務改善のための手引書―

以下の指標を追加的に用いることは可能ですが、医療従事者が患者と接触する際の直接的なモニタリングに代用することはできません:

□ 週毎(または月毎)の手指衛生用アルコール製剤の消費量を、該当期間の患者日数で割ります。

医療従事者または患者による自己申告は遵守の評価としての信頼性を欠きます。

23

接触の種類

侵襲的な手技処置(血管内留置カテーテル、尿路カテーテル、他の侵襲的なデバイスの挿入)を含む、患者との接触

血液、体液、分泌物(汗以外)、排泄物、粘膜、損傷した皮膚(創傷、潰瘍)との直接的な接触または接触の可能性

上記の事項を含まない患者との接触(バイタルサインの測定、検査、体位変換など)

患者環境との接触

事前の手指衛生の実施

YES

YES

YES

事後の手指衛生の実施

YES

YES

YES

YES

手袋着用

YES

YES

*:患者が隔離予防策の対象となっていて、その患者および患者環境との接触時に手袋着用が必要な場合、およびユニットごとの手順として常に手袋着用が必要な場合(いかなる患者との接触でも、患者に極めて近い環境と接触する場合でもすべて手袋を着用)は、あらゆる種類の接触に際して手袋を着用しなければなりません。

組織の改善にどう着手するか:評 価

□ 変更に対する抵抗、現状の容認:変更には困難がつきものです。困難に対抗する方法は、現行プロセスの不備について認識してもらうことと、新たなプロセスに見込まれる利点に対する希望的な意識です。ほとんどの施設における遵守率は低く、それゆえ劇的な改善が見込まれます。

□ リーダーの意欲と遂行の欠如:リーダーの志気や支援がなければ、懸命な取り組みや誠意があっても劇的かつ長期間の変化は生じません。

□ 教育およびコミュニケーションの失敗:医療従事者は、手指衛生および手袋着用を遵守すべき論理的根拠、非遵守によって自分自身や患者に及ぼす危険性、手指衛生製剤の有効性および許容性について理解しなければなりません。

□ 医療従事者の恣意的な製品選択からくる失敗:医療従事者は導入前に製品をテストする必要があります。

□ 自己達成感および自己啓発の欠如:医療従事者は、自らに改善を達成する能力および才覚が十分あると信じる必要があります。

□ 遵守の社会規範化および安全に対する文化的基盤の構築の失敗:医療従事者は地位や立場に関わらず、他の患者ケアを行う医療従事者に対し、手指衛生の実践に関する意識を喚起する力を備えるべきです。それには、患者による後押しが必要です。

□ 実践データのリアルタイムのフィードバックの欠落:定期的かつ適切な実践データの報告を行います。最新のデータを目に付くところに掲示します。

□ 行動変革に対する団結した取り組みの欠如:行動変革に対する多面的かつ創造的な取り組みが不可欠です。

□ 医師による賛同の欠如:教材およびエビデンスで“武装”したオピニオンリーダー、模範者、推進派の医師が必要不可欠です。

24

chart 21変革に対する障壁の認識と克服法

予測される障壁

手指衛生改善のための手引き ―医療従事者の実務改善のための手引書―

25

付 録

1.手指衛生の知識を評価するためのアンケート(質問集) p.26

2.擦式アルコール製剤および清潔な手袋が利用可能な状態かどうかのチェックリスト p.28

3.手指衛生の実施および手袋使用の状況をモニタリングするための用紙 p.30

26

■ 付録1 ■

手指衛生の知識を評価するためのアンケート(質問集)

この設問は、手指衛生の主な要素に関する臨床スタッフの知識を定期的に調査する目的で用いてください。この中から5つの質問を選択するか、貴施設の既存の教育プログラムの中から選んで使って下さい。

[正解はp.32に掲載]

【1】手指衛生を実施すべき状況を下記の1~4の組み合わせから1つ選んでください

A.患者と直接接触する前B.侵襲的なデバイス(血管カテーテル、フォーリーカテーテルなど)を挿入する前C.患者ケア中に、汚染された身体部位から清潔な身体部位に移動する場合D.患者または患者のすぐ近くにある物品と直接に接触した後E.手袋の取り外し後1.B、E2.A、B、D3.B、D、E4.上記すべて

【2】医療従事者の手指が血液その他の蛋白性物質で目に見えて汚れていない、または目に見えて汚染されてい

ない場合、その手指上の病原菌数を最も効率的に減少させる方法はA~Cのうちどれですか? 1つ選んで

ください。

A.流水と石けんで手洗いをするB.流水と抗菌成分入りの石けんで手洗いをするC.1.5~3mLの擦式アルコール製剤を手指に塗り、乾燥したと感じるまで手指を擦り合わせる

【3】医療施設において、抗菌薬耐性の病原菌が患者間で最も伝播しやすいのはA~Dのうちどれですか? 1つ

選んでください。

A.患者の咳またはくしゃみによって空気伝播するB.汚染された器具と患者が接触することにより伝播するC.臨床スタッフの汚染された手指によって患者から別の患者へ伝播するD.環境のメンテナンスの不全によって伝播する

【4】適切な手袋の着用および手指衛生を実施しなかった場合に、患者から臨床スタッフへの伝播が危ぶまれる

感染症はA~Eのうちどれですか? 1つ選んでください。

A.単純ヘルペスウイルス感染症B.メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)による保菌または感染症C.RSウイルス感染症D.B型肝炎ウイルス感染症E.上記すべて

【5】クロストリジウム・ディフィシル(抗菌薬関連下痢症の原因菌)は、手指衛生用アルコール製剤で容易に

殺菌可能である。これは正しいですか、誤りですか?

__ 正__ 誤

手指衛生改善のための手引き ―医療従事者の実務改善のための手引書―

27

[監訳者注]*12:P. Gastmeier, Journal of Hospital Infection, 2006; 62:181-186参照

【6】患者環境の中で数日から数週間にわたって容易に生存する病原菌は1~4の組み合わせのうちどれです

か? 1つ選んでください。

A.大腸菌B.クレブシエラ属菌C.クロストリジウム・ディフィシル(抗菌薬関連下痢症の原因菌)D.メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)E.バンコマイシン耐性腸球菌(VRE)1.A、D2.A、B3.C、D、E5.上記すべて*12

【7】手指衛生用アルコール製剤に関する以下の記述のうち正しいものはA~Eのうちどれですか? 1つ選んで

ください。

A.流水と石けんで手洗いを繰り返すよりも皮膚が乾燥するB.グルコン酸クロルヘキシジン液よりもアレルギーおよび皮膚刺激を生じやすいC.既存の皮膚炎症により、一部の医療従事者で手指の刺痛感が生じるD.手指が目に見えて汚染されている場合でも効果的であるE.グルコン酸クロルヘキシジン液および他の消毒成分を含んだ石けんより殺菌速度が遅い

付録1:手指衛生の知識を評価するためのアンケート(質問集)

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■ 付録2 ■

擦式アルコール製剤および清潔な手袋が利用可能な状態かどうかのチェックリスト

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部屋番号 病床番号空ではない

病棟/診療科・部門          日付  /  /   曜日   時間:午前/午後 : ~午前/午後 : まで イニシャル   

患者の近くにある

擦式手指消毒剤のボトルまたはディスペンサー

機能が正常 適量吐出できる清潔な手袋が患者の近くにある

全ての要素を遵守している コメント

Yの総数

現在の% % % % % % %

手指衛生改善のための手引き ―医療従事者の実務改善のための手引書―

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■付録2 擦式アルコール製剤および清潔な手袋が利用可能な状態かどうかのチェックリスト【要領説明】

1.各列を用いて、患者ケアを実施する現場における擦式アルコール製剤(液体、ゲル、泡状)および清潔な手袋が利用可能かどうかに関するデータを、患者ごとに記録してください。患者ケア実施の現場には、病床、検査室、治療/処置のエリアが含まれます。特定の患者ケア実施の現場で複数の擦式アルコール製剤のボトルまたはディスペンサーが利用可能である場合は、1つについてのみ評価を行ないます。主に携帯用のボトル(ポケットボトルやベルトボトル)ないしディスペンサーで擦式アルコール製剤を供給する方法がとられているユニットまたは部門では、各列を用いて、当該ユニットまたは部門で評価期間中に患者をケアする個々の医療従事者のボトルまたはディスペンサーを評価します。

2.部屋番号および病床番号の欄は、病棟または診療家/部門におけるすべてのケアを実施する場所の完全な評価を促進し、擦式アルコール製剤のボトルまたはディスペンサーや清潔な手袋の利用が可能かどうかについての問題が認識された場合、または追加のコメントが記録された場合の参照とするために用います。

3.擦式アルコール製剤のボトルまたはディスペンサーや清潔な手袋は、患者の近くで利用できるように、医療従事者が立つか着席して患者ケアを実施する位置(患者のベッドの近くに設置するか、またはベッドフレームに取り付ける)に設置するか、患者ケアを実施するために患者に近づくときに利用できる場所(病室内のドアのすぐ内側か廊下側のドア近く)に設置しなければなりません。

4.この評価方法を実施する目的は、各ボトルまたはディスペンサーを実際に使用したときに適量が利用者の手指に出せるかどうか(ボトルが空でなく、機能が正常で噴霧に異常がなく、正確な量が出る)評価することにあります。置き場所が不適切である、ほとんど空である、機能が正常でない、といったボトルに関する追加のコメントは、用紙のコメント欄に記載し是正措置を促します。

5.コードの意味:Y=該当する、N=該当しない

6.遵守の欄には以下の規則を適用してください:Y=すべての要素がYである場合(すなわち、患者の近くにある、空ではない、機能が正常、適量吐出できる、清潔な

手袋が患者の近くにある、がすべてYである場合)N=そうでない場合

7.各列におけるYの総数を数え、合計を各列の下欄に記入して下さい。8.以下の公式を用いて遵守の割合を算定し、そのパーセンテージを各列の下欄に記入してください。

Yの総数 ÷患者ケアの実施現場の総数(データの記入がある列の数)× 100

付録2:擦式アルコール製剤および清潔な手袋が利用可能な状態かどうかのチェックリスト

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医療従事者の種類:D=指導医、後期研修医、前期研修医、医学生 N=看護師、看護助手TH=療法士(呼吸療法士、理学療法士、作業療法士) PH=採血/静脈療法(IV)チーム XR=放射線技師ES=環境整備業務担当者 TR=運搬担当者 OT=その他

事前/事後の手指衛生:Alc=擦式アルコール製剤 HW=流水と石けんによる手洗い N=なし

手袋が必要:Yは、患者が手袋着用が必要とされる隔離予防策の対象である場合、または接触の種類が侵襲的処置や血液、体液、分泌物/排泄物、粘膜、損傷した皮膚との接触を伴う場合。Nはそうでない場合。

遵守の項目:手指衛生:Yは接触の種類が患者との接触で、事前および事後の手指衛生のいずれもがYである場合、または接触の種類が環境との接触のみで、事後の手指衛生がYである場合。N=そうでない場合。手袋使用:Yは手袋の必要および使用のいずれもがYの場合。Nは手袋の必要がYで使用がNの場合。NAは手袋の必要がNの場合。総合:Yは手指衛生がYで手袋着用がYまたはNAの場合。Nはそうでない場合。

%%Yの総数遵守の% %

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■ 付録3 ■

手指衛生の実施および手袋使用の状況をモニタリングするための用紙

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手指衛生改善のための手引き ―医療従事者の実務改善のための手引書―

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■付録3 手指衛生の実施および手袋使用の状況をモニタリングするための用紙【要領説明】

1.各列を用いて、医療従事者が患者と接触するか、患者に極めて近い環境と接触した場合を含め、患者と1対1の接触をした機会を記録します。長時間または複雑な機会を伴う状況では、2列以上の使用が適切です(下記の4を参照)。接触を伴わない状況(医療従事者と患者との口頭でのコミュニケーションのみ)は記録しないこと。

2.“機会”には患者との接触、環境との接触または双方との接触が関与します。3.患者との接触には患者の身体、ガウン、衣服との接触が含まれます。環境との接触には、患者のベッドやシーツのほか、

ベッドサイド器具およびその他の器具、供給品、用品類、患者の病床内や病室内の表面との接触が含まれます。4.この評価の実施にあたっては、医療従事者が患者の病室に入った時点、または患者のベッドサイドに近づいた時点(病室

にベッドが複数ある場合)を“接触の機会”の開始とし、医療従事者が病室またはベッドサイドから離れた時点を“接触の機会”の終了とします。これを1回の接触の機会とした場合、患者が長時間または複雑なケアを必要とする状況(ICU内など)では、1回の接触の機会にも複数の接触が見込まれるため、それがはっきり区別できる場合には個別に記入することが適切と考えられます。例えば、ベッドサイドで看護師が複数の患者ケア業務を行い、このようなケアを終えた後に患者の環境と一連の接触を始めることがありますので、別途記入する必要があります。あるいは、看護師が患者の吸引など粘膜および分泌物との接触を伴うケアを終えた後に、別の身体部位で包帯を交換するといった別の業務を行った場合も別途記入する必要があります。このような接触は観察および明確な区別が可能な範囲で、別の列に個別に記入します。

5.監察者は、患者が接触にあたって手袋の使用が必要とされる隔離予防策の対象者であるかどうかを識別する必要があります。この情報は手袋が必要かどうかの判断に必要です(以下を参照)。

6.患者との接触について、監察者は接触の性質を認識する必要があります。この情報は手袋が必要かどうかの判断に必要です(以下を参照)。患者との接触については、通例下記の3種類のサブタイプを識別することが重要です。a.侵襲的手技の実施を伴う接触(血管内留置カテーテルまたは尿路留置カテーテルの挿入)b.血液、体液、分泌物(汗以外)、排泄物、粘膜、損傷した皮膚との実際または潜在的な接触が伴う接触(挿管された

患者の吸引、尿瓶または病人用の差し込み便器[ベットパン]の内容物処分、開放創の包帯交換)c.aまたはbに当てはまらない、その他の患者との接触(バイタルサインの測定、患者の診察、患者の体位変換など)

7.データの記録には以下のコードを用いること(注:Y=該当する、N=特に断りのない限り、該当しない)医療従事者の種類:D=指導医、後期研修医、前期研修医、医学生N=看護師、看護助手TH=療法士(呼吸療法士、理学療法士、作業療法士)PH=採血/静脈療法(IV)チームXR=放射線技師ES=環境整備業務担当者TR=運搬担当者OT=その他

事前/事後の手指衛生:Alc=擦式アルコール製剤(液体、ゲル、泡沫)HW=流水と石けんによる手洗いN=なし

手袋が必要:Yは患者が手袋の使用を必要とする隔離予防策の対象である場合、または接触の種類が侵襲的処置や血液、体液、分泌物/排泄物、粘膜、損傷した皮膚との実際/潜在的な接触が伴う接触を含む場合。Nはそうでない場合

8.遵守の項目では、以下の規則を用いて手指衛生、手袋の使用、総合的な遵守にYまたはNを記録します。手指衛生:Yは接触の種類が患者との接触で、事前および事後の手指衛生のどちらもYである場合、または接触の種類が環境との接触のみで、事後の手指衛生がYである場合。N=そうでない場合。

手袋使用:Yは手袋の必要および使用のどちらもYの場合。Nは手袋の必要がYで使用がNの場合。NAは手袋の必要がNの場合。

総合:Yは手指衛生がYで手袋使用がYまたはNAの場合。Nはそうでない場合

9.遵守の項目では、手指衛生、手袋使用、総合についてYの数を数え、合計を各列の下欄に記入します。10.遵守の項目では、以下の公式を用いて遵守の割合を算定し、パーセンテージを各列の下欄に記入する

手指衛生:Yの総数÷接触機会の総数(データの記入がある列の数)× 100手袋使用:Yの総数÷(接触機会の総数[データの記入がある列の数]-NAの総数)× 100総合:Yの総数÷接触機会の総数(データの記入がある列の数)× 100

付録3:手指衛生の実践および手袋使用の状況をモニタリングするための用紙

手指衛生改善のための手引き―医療従事者の実務改善のための手引書―

発 行 日監 訳発 行

編集制作

2007年7月12日満田年宏ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社 メディカルカンパニー ASPジャパン〒101-0065 東京都千代田区西神田3丁目5番2号  電話03-4411-7908 http://www.jjasp.jp

国際医学出版株式会社〒107-0052 東京都港区赤坂2-17-60電話03-5573-9205 http://www.imp-kokusaiigaku.com/

■ 付録1(p.26~27) ■ 手指衛生の知識を評価するためのアンケート(質問集)の正解

質問1..........4

質問2..........C

質問3..........C

質問4..........E

質問5..........誤

質問6..........3

質問7..........C

この印刷物は、Institute for Healthcare Improvement(IHI)の翻訳許可のもとに、“How-to Guide: Improving Hand Hygiene―A Guide for Improving Practices among Health Care Workers”を

ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社が、公立大学法人横浜市立大学附属病院感染制御部部長・准教授満田年宏先生の監訳のご協力を得、

翻訳出版いたしました。この印刷物の無断転載、複写は禁じられています。

Copyright© Institute for Healthcare Improvement

20 University Road7th Floor

Cambridge, MA 02138