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―  ― 241 東北大学大学院教育学研究科研究年報 第62集・第2号(2014年) 本論文では,2003年に実施された国際学力調査 PISA の日本調査データを用いて,高校生の学業 的自己概念に対する学校平均学力の影響について検討する。個人の学力を統制した場合,学校平均 学力は学業的自己概念に対して負の効果(いわゆる「井の中の蛙効果」)をもつ。学業面で優れた学 校に所属することは学業的自己概念に対して負の効果(対比効果)と同時に正の効果(同化効果)を もつことが指摘されており,「井の中の蛙効果」は両者のnet effectとして定義される。本論文では, 学業的自己概念に対する学校平均学力の直接効果を対比効果,学校の地位に関する生徒の認識を媒 介した間接効果を同化効果として捉え,学校平均学力が学業的自己概念に対して負の効果(対比効 果)と同時に正の効果(同化効果)をもつことを示した。また,先行研究で示唆されているように, 学校平均学力の正の効果(同化効果)の存在自体は否定されないものの,それは負の効果(対比効果) に比べて小さいものであることが確認された。 キーワード:学業的自己概念,学校平均学力,井の中の蛙効果 1. 問題の所在 本論文では,2003年に実施された国際学力調査 PISA(Programme for International Student Assessment)の日本調査のデータを用いて,高校生の学業的自己概念(academic self-concept)に対 する学校平均学力(school-average ability)の影響について検討する。学業的自己概念とは「学業に 対する有能感」を表す概念である(Marsh 1990)。学業的自己概念は,それ自体が教育の重要な結果 変数の1つであると同時に,後の学業達成や学習意欲・学習行動に影響を及ぼす要因としても重要 な意味をもっている(OECD 2004; Marsh and Craven 2006; Marsh and Martin 2011)。 学業的自己概念の形成に関する先行研究の重要な発見の1つは,個人の学力と学業的自己概念の 間に正の相関が存在する一方,個人の学力を統制した場合,所属している学校(または学級)の学力 水準は生徒の学業的自己概念に対して負の効果をもつということである。この学校平均学力の負の 効果は「井の中の蛙効果(big-fish-little-pond effect: BFLPE)」(Marsh 1987)と呼ばれている 1 BFLPE に関する研究は主に教育心理学の分野で行われているが,これは社会学が伝統的に関心 学業的自己概念に対する学校平均学力の対比効果と同化効果 鳶 島 修 治 教育学研究科 教育研究支援者

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� 東北大学大学院教育学研究科研究年報 第62集・第2号(2014年)

 本論文では,2003年に実施された国際学力調査 PISA の日本調査データを用いて,高校生の学業

的自己概念に対する学校平均学力の影響について検討する。個人の学力を統制した場合,学校平均

学力は学業的自己概念に対して負の効果(いわゆる「井の中の蛙効果」)をもつ。学業面で優れた学

校に所属することは学業的自己概念に対して負の効果(対比効果)と同時に正の効果(同化効果)を

もつことが指摘されており,「井の中の蛙効果」は両者の net effect として定義される。本論文では,

学業的自己概念に対する学校平均学力の直接効果を対比効果,学校の地位に関する生徒の認識を媒

介した間接効果を同化効果として捉え,学校平均学力が学業的自己概念に対して負の効果(対比効

果)と同時に正の効果(同化効果)をもつことを示した。また,先行研究で示唆されているように,

学校平均学力の正の効果(同化効果)の存在自体は否定されないものの,それは負の効果(対比効果)

に比べて小さいものであることが確認された。

キーワード:学業的自己概念,学校平均学力,井の中の蛙効果

1. 問題の所在 本論文では,2003年に実施された国際学力調査 PISA(Programme for International Student

Assessment)の日本調査のデータを用いて,高校生の学業的自己概念(academic self-concept)に対

する学校平均学力(school-average ability)の影響について検討する。学業的自己概念とは「学業に

対する有能感」を表す概念である(Marsh 1990)。学業的自己概念は,それ自体が教育の重要な結果

変数の1つであると同時に,後の学業達成や学習意欲・学習行動に影響を及ぼす要因としても重要

な意味をもっている(OECD 2004; Marsh and Craven 2006; Marsh and Martin 2011)。

 学業的自己概念の形成に関する先行研究の重要な発見の1つは,個人の学力と学業的自己概念の

間に正の相関が存在する一方,個人の学力を統制した場合,所属している学校(または学級)の学力

水準は生徒の学業的自己概念に対して負の効果をもつということである。この学校平均学力の負の

効果は「井の中の蛙効果(big-fish-little-pond effect: BFLPE)」(Marsh 1987)と呼ばれている1。

 BFLPE に関する研究は主に教育心理学の分野で行われているが,これは社会学が伝統的に関心

学業的自己概念に対する学校平均学力の対比効果と同化効果

鳶 島 修 治*

*教育学研究科 教育研究支援者

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学業的自己概念に対する学校平均学力の対比効果と同化効果

を寄せてきた「文脈効果(contextual effect)」ないし「構造効果(structural effect)」(Blau 1960)の一

種であり,そもそも BFLPE は大学生のキャリア選択における大学の威信の負の効果に着目した

Davies(1966)の社会学的研究から着想を得たものである。また,Meyer(1970)は学校組織の社会

学的分析という観点から高校生の大学進学意向に対する学校平均学力の効果を検討している。この

他にも,学業的自己概念を被説明変数としたものに限らなければ2,学校平均学力の負の効果(いわ

ゆる “frog pond effect”)に着目した社会学的研究は少なくない(Alwin and Otto 1977; Espenshade

et al. 2005; Jonsson and Mood 2008)。このように,BFLPE に関する研究には教育心理学だけでな

く[教育]社会学の観点からも重要な位置づけが与えられる。

 現在のところ,日本では BFLPE に関する研究がほとんど進められていない(外山 2008: 566)。

国際学力調査の大規模データを用いた研究には日本を対象に含むものもあるが(Seaton et al. 2009;

Nagengast and Marsh 2012),そこでは個人の学力と学校平均学力だけを考慮した単純なモデルで

学校平均学力の(有意な)負の効果(BFLPE)が観察されるか否かが焦点とされており,それ以上の

詳細な検討は行われていない。日本を対象とした研究を進めていくことは,BFLPE の文化差に関

する理解を深めることにも寄与する重要な課題である(外山 2008: 566)。日本を対象とした実証研

究を展開していく上での第一歩として,本論文では,BFLPE に関する既存の研究とは異なる方法で,

日本の高校生の学業的自己概念に対する学校平均学力の影響について検討する。

 BFLPE に関する先行研究では,学力水準の高い(学業面で優れた)学校に所属することは学業的

自己概念に対して負の効果をもつだけでなく,同時に正の効果をもつことが指摘されている(Marsh

et al. 2000, 2008; Trautwein et al. 2009)。学校平均学力の負の効果は準拠集団(同じ学校または学

級の生徒)との比較によって生じる「対比効果(contrast effect)」であり,学業面で優れた学校に所

属することの正の効果は同じ学校または学級の生徒への同化によって生じる「同化効果

(assimilation effect)」3として捉えられる。そして,BFLPE は両者の net effect として定義される

(Marsh et al. 2000, 2008)。本論文では,学校の(学業面での)相対的地位に関する生徒の認識がも

つポジティブな効果を考慮に入れた分析を行い,日本の高校生の学業的自己概念に対する学校平均

学力の効果(BFLPE)をより精緻に捉えることを課題とする。

2. 先行研究の検討 Marsh(1987)は,個人の学力を統制した場合に観察される学業的自己概念に対する学校平均学

力の負の効果を「井の中の蛙効果(BFLPE)」と呼んだ。その後,BFLPE の検証は数多く行われて

きたが,ほぼすべての研究で予測どおりに学業的自己概念に対する学校平均学力の負の効果が確認

されている(Marsh et al. 2008; 外山 2008)。

 一例として国際学力調査 PISA のデータに依拠した研究の知見を参照すると,PISA2000のデー

タにもとづく Marsh and Hau(2003),PISA2003のデータにもとづく Seaton et al.(2009),そし

て PISA2006のデータにもとづく Nagengast and Marsh(2012)で対象とされた計123サンプル(国)

のうち,学校平均学力の有意な負の効果は114サンプルで観察されている。なお,統計的に有意な

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� 東北大学大学院教育学研究科研究年報 第62集・第2号(2014年)

効果が見られなかったケースを含めて,学校平均学力の係数は PISA2006の韓国を除く122サンプ

ルで負の値を示している。

学校平均学力の対比効果と同化効果

 BFLPE に関する研究の課題の1つとして指摘されているのは,学業面で優れた学校に所属する

ことのネガティブな効果(対比効果)とポジティブな効果(同化効果)を区別して捉えることである

(McFarland and Buehler 1995; 外山 2008: 564-565)。BFLPE は学校平均学力が生徒の学業的自己

概念に対して負の効果をもつことに注目したものだが,同時に,学業面で優れた学校に所属するこ

とには,それ自体が生徒の学業的自己概念を高める側面もあると考えられるためである。この点を

考慮した研究によると,同化効果の存在それ自体は否定されないものの,それは対比効果に比べて

はるかに小さい(それゆえに,両者を区別しない場合には学校平均学力が負の効果を示す)とされる

(Marsh et al. 2000, 2008; Trautwein et al. 2009)。また,学力水準の高い学校に所属することによ

るポジティブな効果(同化効果)は見られないとする研究もある(Lüdtke et al. 2005)。

 学校レベルの学力水準の対比効果と同化効果の相対的重要性を検討する際に用いられる主なアプ

ローチは次の3つである(Trautwein et al. 2009: 855-856)。第1に,学校平均学力の他に利用可能な

(学校レベルの)情報が存在しない場合,対比効果と同化効果を区別して捉えることができず,両者

の net effect を学校平均学力の係数から解釈することしかできない。従来の研究では総じて学校平

均学力の負の効果が観察されてきた(Marsh et al. 2008; 外山 2008)。そのため,対比効果は同化効

果よりも大きいと判断できる。

 第2に,高度に階層化された教育制度を採用している国(典型例はドイツ)を対象とする場合,学

校の学力水準に加えて,学校(トラック)の地位に関する変数を追加する方法がある。ドイツの中等

教育の生徒を対象としてこの方法による検討を行った Trautwein et al.(2006)によると,学校平均

学力は予想どおり負の効果を示すが,所属トラックの効果に関しては,実科学校(Realschule)の生

徒に比べてハウプトシューレ(Hauptschule)に所属する生徒の学業的自己概念が有意に高い。他方,

ギムナジウム(Gymnasium)への所属は学校平均学力と独立した効果をもたない。つまり,非アカ

デミックなトラックに所属している生徒は学業的自己効力感が相対的に高く,これはアカデミック・

トラックへの所属がポジティブな効果(同化効果)をもつという予想と逆の結果である。

 第3に,学校/学級レベルの学力水準に加えて,所属している学校(または学級)の地位に関する

生徒の認識に注目する方法がある。この方法は香港の第7学年の生徒を対象とした Marsh et

al.(2000)やドイツの中等教育の生徒を対象とした Trautwein et al.(2009)で用いられており,学

校/学級の地位に関する生徒の認識はいずれの研究でも学業的自己概念に対して有意な正の効果を

示している。これらの研究の知見は,学業面で優れた学校/学級に所属することが学業的自己概念

に対して負の効果だけでなく正の効果をもっていることを示唆する。

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学業的自己概念に対する学校平均学力の対比効果と同化効果

先行研究の問題点と本論文の課題

 BFLPE に関する研究の課題として次の2点を指摘できる。第1に,国際学力調査 PISA のデータ

を用いた一連の研究によって,学業的自己概念に対する学校平均学力の負の効果(BFLPE)それ自

体 は 日 本 を 含 む 大 部 分 の 国 で 観 察 さ れ て い る が(Marsh and Hau 2003; Seaton et al. 2009;

Nagengast and Marsh 2012),学校平均学力の対比効果と同化効果を区別して捉えた研究はごくわ

ずかであり,現在のところ日本を対象とした実証研究は行われていない。

 第2に,学校または学級の地位に関する生徒の認識に注目し,学校平均学力の対比効果と同化効

果を区別して捉えることを試みた先行研究(Marsh et al. 2000; Trautwein et al, 2009)で示されてい

るのは,実際には,学業的自己概念に対して学校平均学力が負の効果をもち,所属する学校または

学級の地位に関する生徒の認識が正の効果をもつ,ということである。つまり,これらの研究にお

いて,学校平均学力が学業的自己概念に対して負の効果(対比効果)と同時に正の効果(同化効果)を

もっているのかどうかは厳密には明らかにされていない。本論文では,これら2つの問題を解決す

ることで,BFLPE に関する理解を深めることに貢献したい。

3. 分析枠組みと仮説 本論文の基本的な分析枠組みは図1に示したとおりである。学業的自己概念に対する学校平均学

力の負の効果(BFLPE)を準拠集団(同じ学校の生徒)との比較をとおして生じるネガティブな効果

(対比効果)と準拠集団への同化をとおして生じるポジティブな効果(同化効果)に区別して取り出

すことが課題となる。

 そのための方法として,本論文では媒介分析(mediation analysis)の枠組みに依拠した検討を行

う。すなわち,学業的自己概念に対する学校平均学力の総効果(これが BFLPE にあたる)を「直接

効果(direct effect)」と学校の学業面での相対的地位に関する生徒の認識(以下,「生徒の学校地位

認識」)を媒介した「間接効果(indirect effect)」に区別し,前者を対比効果として,後者を同化効果

としてそれぞれ把握する。学校平均学力の負の効果(BFLPE)を対比効果と同化効果に区別して捉

えることで,両者の相対的重要性を従来の研究よりも厳密に把握することができるだろう。

図1 分析枠組み

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 続いて,本論文の仮説を提示する。前述のように,学業的自己概念に対する井の中の蛙効果

(BFLPE)とは,生徒の学業的自己概念に対して本人の学力は正の効果をもち,学校平均学力は負の

効果をもつことを予測するものである。まず,このような BFLPE の考え方に即して,以下の2つ

の基本的な仮説が設定できる。

[仮説1]生徒個人の学力は学業的自己概念に対して正の効果をもつ。

[仮説2]学校平均学力は生徒の学業的自己概念に対して負の効果をもつ。

 そして,学業的自己概念に対する学校平均学力の負の効果(BFLPE)は準拠集団(学校または学級)

との比較をとおして生じるネガティブな効果(対比効果)と準拠集団への同化をとおして生じるポ

ジティブな効果(同化効果)の net effect である(Marsh et al. 2008)。この点を考慮に入れることで,

さらに以下の3つの仮説が導出される。

[仮説3]学校平均学力は生徒の学校地位認識に対して正の効果をもつ。

[仮説4]学校の地位に関する肯定的な認識は学業的自己概念に対して正の効果をもつ。

[仮説5] 学業的自己概念に対する学校平均学力の効果は生徒の学校地位認識によって媒介され

ている。

      →生徒の学校地位認識を媒介した学校平均学力の間接効果が有意な正の値を示す。

 なお,図1に示したように,学校の地位に関する生徒の認識を媒介した間接効果 ab は,学業的自

己概念の形成における学校平均学力の同化効果として解釈できる。また,学校地位認識を媒介した

同化効果を考慮に入れた上での学業的自己概念に対する学校平均学力の直接効果 c は,学力水準の

高い学校に所属することによる対比効果として解釈される。

 これら5つの仮説のうち,日本でも[仮説1]と[仮説2]が支持されることは,本論文と同じ

PISA2003のデータを用いた Seaton et al.(2009)ですでに示されている。本論文ではこれらの仮説

についても生徒の性別や出身背景を統制することでより厳密な検証を行うが,BFLPE に関する理

解を深めることへの本論文の貢献は,主に[仮説3][仮説4][仮説5]の検証の結果によって評価さ

れることになるだろう。

4. データと分析方法データ

 本論文では国際学力調査 PISA の日本調査のデータを用いて分析を行う4。PISA は経済協力開発

機構(OECD)が2000年から3年ごとに実施している国際学力調査である。調査対象は義務教育修了

段階にあたる15歳の生徒であり,日本調査は高校1年生を対象として7月に実施されている。本論

文では,生徒の学校地位認識についての情報が含まれている PISA2003のデータを使用する5。

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学業的自己概念に対する学校平均学力の対比効果と同化効果

PISA2003には41カ国(OECD 加盟30カ国を含む)から約276,000名が参加した(日本からは144校

の4,707名が参加)。PISA2003では数学的リテラシーが中心分野とされているため,本論文では数

学自己概念(math self-concept)に着目して分析を行う。使用する変数の記述統計量は表1に示した

とおりである。リストワイズ法による欠損値処理の結果,分析対象のケース数は N =4,654(学校数

は144)となった。

分析方法

 PISA では学校を無作為に抽出した上で各学校から生徒を無作為に抽出するという手続き(層化

二段無作為抽出法)がとられている。すなわち,PISA のデータは生徒が学校にネストされた階層

的な構造を有している。このような階層的データ(マルチレベルデータ)を扱う上で問題になるの

が,クラスター内における誤差項の相関に起因するバイアスである。たとえば,同じ学校に通う生

徒たちが学力レベルや家庭背景等の特徴を共有している場合,誤差項の独立という仮定が満たされ

ず,通常の最小二乗法(OLS)による回帰分析では標準誤差が過小に推定される。

 この点を踏まえ,本論文の分析には「マルチレベルモデル(multilevel modeling)」を用いる6。マ

ルチレベルモデルは切片の分散を導入した「ランダムインターセプトモデル(random intercept

model)」とさらに1つまたは複数の独立変数の係数の分散を導入した「ランダムスロープモデル

(random slope model)」に大別される。ランダムスロープモデルでは,係数の分散や切片と係数の

共分散を導入することで,ランダムインターセプトモデルに比べてより柔軟なモデリングが可能に

なるが,複雑なモデルは同時に不安定なモデルでもある(Kreft and de Leeuw 1998=2006)。本論

文では係数の分散に着目した複雑な分析を主たる目的としていないため,シンプルなランダムイン

ターセプトモデルを用いる。推定は最尤法(ML)によって行った。マルチレベルモデルの推定に使

用したソフトウェアは Stata/SE 13である。

 なお,PISA は複雑な調査デザインを採用しており,精確な推定のためにはウェイトを用いた調

整が必要となる(OECD 2005b; 白川 2009; 川口 2012)。マルチレベルモデルにおけるサンプリング

ウェイトの取り扱いについては議論があるが,現在のところ,レベル1のウェイトとして学校内で

の生徒の抽出確率にもとづくウェイト wi|j,レベル2のウェイトとして学校の抽出確率にもとづく

ウェイト wj を用いる方法が提案されている(Pfeffermann et al. 1998)。PISA データを用いて

BFLPE の検証を行った Nagengast and Marsh(2012)に倣い,本論文ではこの方法を用いた。

変数

 従属変数として使用するのは数学自己概念(変数名:SCMAT)である。数学自己概念の測定にあ

たって,PISA では「自己記述質問票(Self-Description Questionnaire:SDQ II)」(Marsh 1992)の一

部の項目が使用されている。具体的には,「数学はまったく得意ではない」「数学では良い成績をとっ

ている」「数学はすぐわかる」「数学は得意科目の1つだといつも思う」「数学の授業ではどんな難し

い問題でも理解できる」という5つの項目に対する回答にもとづく。回答の形式はいずれも「全くそ

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の通りだ」「その通りだ」「その通りでない」「全くその通りでない」の4件法である(国立教育政策研

究所編 2004; OECD 2005a: 291-294)。数学自己概念の尺度化には項目反応理論の1つである partial

credit model が用いられている(OECD 2005a: 278)。

 独立変数として用いるのは,生徒の性別(男子ダミー),出身背景,数学の学力,学校平均学力,そ

して生徒の学校地位認識である。学力については数学的リテラシーの plausible values(PVs)を用

いる。PV とはテスト結果から項目反応理論によって予測された(潜在的な)能力=学力の事後確率

分布から無作為に抽出された値であり,精確な推定のため,5つの PVs を用いて繰り返し推定を行

う(OECD 2005b; 白川 2009; 川口 2012)。なお,PISA の PV は OECD 平均を500,標準偏差を100

としたものであり,これをそのまま独立変数として使用した場合,係数が非常に小さい値をとり,

結果を解釈しにくい。そのため,本論文では平均0,標準偏差1に標準化した変数を用いる。学校平

均学力については,標準化した変数をもとに各学校の平均値を算出した。

 生徒の出身背景に関しては,「社会経済文化的背景(Economic, Social and Cultural Status:

ESCS)」という総合指標を使用する。この変数は,OECD 加盟国のデータをプールした上で,両親

のうち高い方の教育年数,両親のうち高い方の職業的地位(ISEI),家庭の所有財にもとづく主成分

分析を行った結果として得られた第1主成分の得点である(OECD 2005a: 316-318)。

 PISA2003では生徒に〈今の学校に通っている理由〉を尋ねている。この設問で「この地域では,

他校より優秀な学校として知られているから」という選択肢を選んだ生徒は,自分が通っている学

校が学業面で(相対的に)優れていると認識していると解釈できる。本論文では,この質問への回

答にもとづく変数(1:選択,0:非選択)を用いて,学業面で優れている(と主観的に認識された)学

校に所属することによる学業的自己概念への同化効果ないし「栄光浴効果」を捉える。すなわち,学

校平均学力が高い学校の生徒は自分が通っている学校の学業面での地位を高く評価する傾向があ

り,また,自分が通っている学校の学業面での地位を高く評価している生徒は,同じ学校に通う生

徒への同化をとおして,肯定的な学業的自己概念をもつようになると考えられる。

 注意が必要なのは,この変数が,Marsh et al.(2000)や Trautwein et al.(2009)といった先行研

究で用いられているものとは異なり,0または1の値をとる2値変数だという点である。そのため,

学校の地位に関する生徒の認識を大まかにしか捉えられていない可能性がある。これは既存の調査

データを用いた二次分析の限界でもあるが,PISA のデータセットに含まれている変数を用いて検

討を行うことには,将来的に国際比較分析へ展開しうる点でメリットもある。

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学業的自己概念に対する学校平均学力の対比効果と同化効果

5. 分析結果 本論文における分析の手順は次のとおりである(Baron and Kenny 1986)。まず,個人の学力を

統制した上で数学自己概念を従属変数とする分析を行い,学校平均学力が有意な負の効果(BFLPE)

をもつことを確認する(表2,モデル1)。次に,生徒の学校地位認識を従属変数として分析を行い,

学校平均学力の係数 a と標準誤差 sa を推定する(表3)。続いて,数学自己概念を従属変数として分

析を行い,生徒の学校地位認識の係数 b と標準誤差 sb を推定する(表2,モデル2)。生徒の学校地

位認識を媒介した学校平均学力の間接効果abについては,下記の計算式にもとづく統計的検定(Soel

test)を行う(Sobel 1982; Baron and Kenny 1986)。

 表2に示したのは数学自己概念を従属変数とするマルチレベル分析の結果である。[仮説1]と[仮

説2]を検証するため,ここではモデル1の推定結果に注目する。結果を見ると,数学自己概念に対

して,個人の学力は有意な正の効果を,学校平均学力は有意な負の効果をもっている。この結果は,

日本において,生徒の性別や出身背景を統制した上でも,学業的自己概念に対する BFLPE が確認

されることを意味する。この結果から[仮説1]と[仮説2]は支持される。

 なお,男子ダミーは数学自己概念に対して有意な正の効果をもっており,個人の学力や学校平均

学力を統制した上でも,男子は女子に比べて肯定的な数学自己概念をもつ傾向があるといえる。他

方,出身背景は数学自己概念に対して有意な効果をもっていない。ちなみに,単相関のレベルでは

出身背景と数学自己概念との間に有意な正の関連が見られる(詳細は省略)。数学自己概念に対す

る出身背景の影響は,おそらく個人の学力を媒介した間接的なものであると考えられる。

表1 使用する変数の記述統計量

Mean SD Min Max

数学自己概念 -.525 .953 -2.122 2.416男子 .489 .500 0 1出身背景 -.084 .732 -3.170 2.112学力(個人) 0 1 -3.876 3.224学校平均学力 0 .732 -1.691 1.888学校地位認識 .174 .379 0 1

Z = ab√a2s2

b+b2s2a

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 表3には学校の地位に関する生徒の認識を従属変数とするマルチレベル分析の結果を示した。な

お,前述のように,本論文でいう生徒の学校地位認識とは0または1の値をとる2値変数であり,一

般的にはロジットモデルやプロビットモデルが適用される。しかし,Stata/SE 13のマルチレベル・

ロジット分析(コマンド名:xtmelogit)はサンプリングウェイトの使用に対応していない。そのため,

本論文では線形のモデルによる分析を行っている。推定結果を見ると,学校平均学力の回帰係数 a

は .197,標準誤差 sa は .024となっている。学校平均学力は有意な正の効果をもっており,学力水準

の高い学校に通う生徒は学校地位認識が高い傾向がある。この結果から[仮説3]は支持される。

 続いて,表2に示した数学自己概念を従属変数とするマルチレベル分析(モデル2)の結果を確認

する。モデル 2では生徒の学校地位認識を独立変数として追加している。結果を見ると,生徒の学

校地位認識の係数 b は .131,標準誤差 sb は .050となっている。生徒の学校地位認識は有意な正の効

果をもっており,学校地位認識の高い生徒は肯定的な数学自己概念をもつ傾向がある。したがって

[仮説4]は支持される。

 ここまでの分析によって[仮説1][仮説2][仮説3][仮説4]は支持された。次に,[仮説5]を検

証するために媒介分析を行う。ここでは図1に示した媒介関係を想定している。表2と表3に示し

た係数と標準誤差の値から計算すると,間接効果 ab の係数は .026である(.197× .131)。そして,前

述の方法で間接効果 ab の統計的検定(Sobel test)を行ったところ,生徒の学校地位認識を媒介した

学校平均学力の間接効果は1%水準で有意であった(Z =2.496)。この結果から[仮説5]は支持され

る。

表2 学業的自己概念のマルチレベル分析

モデル1 モデル2

B   SE B SE

固定効果切片 -.620 ** .036 -.643 ** .035男子 .319 ** .034 .317 ** .033出身背景 .060 .034 .060 .034学力(個人) .316 ** .037 .316 ** .036学校平均学力 -.215 ** .062 -.241 ** .060学校地位認識 ― ― .131 ** .050

ランダム効果切片[分散] .022 .015 .023 .016残差[分散] .642 .394 .640 .393

N 4,654 4,654-2loglikelihood 671,262 670,777

** p<0.01 * p<0.05

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―  ―250

学業的自己概念に対する学校平均学力の対比効果と同化効果

 最後に,数学自己概念に対する学校平均学力の対比効果と同化効果の相対的重要性を検討するた

めに標準化係数を求めたところ,対比効果が -.185,同化効果が .020,両者の net effect =「井の中の

蛙効果(BFLPE)」が -.165となった7。国外の先行研究(Marsh et al. 2000, 2008; Trautwein et al.

2009)で指摘されてきたように,学力水準の高い学校に所属することで生じるポジティブな同化効

果ないし「栄光浴効果」の存在それ自体は否定されないものの,やはりそれはネガティブな対比効果

に比べて小さいものであるといえる。

6. 結論と課題 本論文では,PISA2003の日本調査のデータを用いて,高校生の学業的自己概念に対する井の中

の蛙効果(BFLPE)の検証を行った。その際,学校の地位に関する生徒の認識を媒介した間接効果

を考慮に入れることで,学校平均学力の負の効果(対比効果)と正の効果(同化効果)を区別して捉え

ることを課題とした。一連の分析をとおして得られた主要な知見は以下のとおりである。

 まず,[仮説1]と[仮説2]で予測したとおり,高校生の学業的自己概念に対して,個人の学力が正

の効果をもつ一方,学校平均学力は負の効果をもっていた。この結果から,生徒の性別や出身背景

を統制した上でも学業的自己概念に対する井の中の蛙効果(BFLPE)が観察されることが確認され

た。また,学校平均学力は生徒の学校地位認識に対して有意な正の効果をもつこと[仮説3],生徒

の学校地位認識は学業的自己概念に対して有意な正の効果をもつこと[仮説4]が示された。そして,

媒介分析の結果,生徒の学校地位認識を媒介した学校平均学力の(正の)間接効果は統計的に有意

であり,日本では,高校生の学業的自己概念の形成において,学校平均学力の負の効果(対比効果)

と正の効果(同化効果)がともに存在していることが明らかになった[仮説5]。

 学業的自己概念に対する学校平均学力の対比効果と同化効果の相対的重要性を検討するために標

準化係数を求めたところ,対比効果が -.185,同化効果が .020,両者の net effect = BFLPE が -.165

という推定値が得られた。先行研究では,学校平均学力は生徒の学業的自己概念に対してネガティ

表3 学校地位認識のマルチレベル分析

B   SE

固定効果切片 .177 ** .016男子 .016 .009出身背景 -.001 .011学力(個人) -.004 .013学校平均学力 .197 ** .024

ランダム効果切片[分散] .019 .003残差[分散] .082 .011

N 4,654-2loglikelihood 101,807

** p<0.01 * p<0.05

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� 東北大学大学院教育学研究科研究年報 第62集・第2号(2014年)

ブな効果(対比効果)をもつだけでなく,同時にポジティブな効果(同化効果)をもっているが,後者

は前者に比べてはるかに小さいものであることが指摘されてきた(Marsh et al. 2000, 2008;

Trautwein et al. 2009)。本論文でもこうした先行研究の知見と矛盾しない結果が得られている。

しかし,学校の地位に関する生徒の認識(またはその学校平均)ではなく,学校平均学力それ自体が

生徒の学業的自己概念に与える正の効果(同化効果)を直接捉えている点で,本論文の知見は従来の

ものとは異なる。

 ただし,本論文の限界として次の2点を指摘できる。第1に,生徒の学校地位認識に関する測定上

の問題がある。本論文では,PISA2003の質問紙調査で尋ねられた〈今の学校に通っている理由〉に

関して「この地域では,他校より優秀な学校として知られているから」という項目を選択したか否か

によって生徒の学校地位認識を把握したが,測定の妥当性の面でやや問題がある可能性は否定でき

ない。今後の課題として,Marsh et al.(2000)や Trautwein et al.(2009)といった先行研究を参考

にしつつ,学校地位認識の測定方法を工夫した研究を行うことが求められる。

 第2に,マルチレベル媒介分析の方法に関する問題がある。マルチレベルモデルにおいて,学校

レベルの変数(学校平均学力)の効果は同じ学校レベルの変数(学校地位認識の学校平均)によって

媒介されると考えるのが自然であるが(Zhang et al. 2009),本論文の分析では媒介変数にあたる生

徒の学校地位認識について学校間(between)の効果と学校内(within)の効果を区別しておらず,こ

の点で概念的な曖昧さを残している8。学業的自己概念に対する学校地位認識という変数の効果に

は学校間の効果と学校内の効果が交絡しており,本論文の分析において,学校地位認識を媒介した

学校平均学力の間接効果の推定・検定の結果は不正確になっている可能性がある(Zhang et al.

2009)。マルチレベル媒介分析の方法については精緻化の余地が残されており,この点は今後の課

題となる。

【注】1 学業的自己概念の形成メカニズムに関して,BFLPE の他には「I/E モデル(internal and external frames of

reference model)」(Marsh 1986, 1990; Skaalvik and Skaalvik 2002)が知られている。I/E モデルの考え方によれば,

個人は相対的に得意な領域に関して肯定的な自己概念をもつ傾向がある。たとえば,数学の学力は数学の自己概念

に対して正の効果をもつが,英語の学力を統制した場合,英語の自己概念に対しては負の効果をもつ(Marsh

1990)。

2 BFLPE に関する社会学的研究としては Thijs et al.(2010)が挙げられる。また,学業的自己概念とジェンダーの

関連に着目したものとして Sullivan(2009)がある。

3 「栄光浴効果(reflected glory effect)」とも呼ばれる(Marsh et al. 2000)。

4 PISA データの扱い方については OECD(2005b)を参照のこと。日本語の解説としては白川(2009)や川口(2012)

がある。

5 PISA の個票データは公式ウェブサイト(http://www.oecd.org/pisa/)で入手することができる。

6 マルチレベルモデルについては Kreft and de Leeuw(1998=2006),Raudenbush and Bryk(2002),Snijders

and Bosker(2011)等の成書を参照のこと。

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学業的自己概念に対する学校平均学力の対比効果と同化効果

7 標準化係数は[非標準化係数×(独立変数の標準偏差/従属変数の標準偏差)]を計算して求めた。

8 本論文でこうした方法を用いたのは,学校地位認識の学校平均と学校平均学力の相関が強く(r=.744),学業的自

己概念を従属変数とする分析のモデルに両者を投入した場合,学校地位認識の学校平均の係数が適切に推定できな

いためである(学校内の効果と学校間の効果を区別するためには,生徒の学校地位認識と学校地位認識の学校平均

を同時に投入する必要がある).なお,詳細は省くが,学校平均学力をモデルから除いて推定を行った場合,学校地

位認識の学校平均は生徒の学業的自己概念に対して有意な負の効果を示す。

【付記】 本論文は JSPS 科研費(課題番号:25885007)による研究成果の一部である。

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This study examined the effect of school-average ability on academic self-concept. When an

individual student academic ability is controlled, the school-average ability negatively affects

student academic self-concept. This negative effect of school-average ability is referred to as the

big-fish-little-pond effect (BFLPE) on academic self-concept. Previous studies on the BFLPE have

suggested that attending an academically selective school has not only negative contrast effect

but also positive assimilation effect. The BFLPE (the effect of school-average ability on academic

self-concept) is defined as the net effect of contrast and assimilation effects of school-average

ability. Almost all studies on the BFLPE have found negative effects of the school-average ability,

which implies that the magnitude of negative contrast effect is significantly larger than that of

positive assimilation effect. However, no research thus far has examined whether the school-

average ability itself has both negative and positive effects on student academic self-concept.

Using Japan’s PISA 2003 data, this study analyzed the effect of school-average ability on

academic self-concept. Within the framework of mediation analysis, the contrast effect was

represented by the direct (negative) effect of school-average ability on academic self-concept,

whereas the assimilation effect was represented by the indirect (positive) effect of school-average

ability mediated by students’ perception of the standing of their school. The results of multilevel

regression analyses showed that the school-average ability had both negative and positive effect

on academic self-concept. As previous studies have suggested, the negative contrast effect was

larger than the positive assimilation effect, therefore the school-average ability had the negative

net effect on student academic self-concept.

Keywords:academic self-concept, school-average ability, big-fish-little-pond effect

Contrast and Assimilation Effects of School-Average Ability on

Academic Self-Concept of Japanese High School Students

Shuji TOBISHIMA(Education and Research Supporter, Graduate School of Education, Tohoku University)

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