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15 調調218 只見学 共有林への入山ルールを示す横断幕 調23 24 26 調調

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15

明らかにされ、自然首都・只見

がますます評価されていくこと

でしょう。今月号から、調査に

あたっている研究者から共有林

について執筆していただきま

す。世

界遺産級の森林を

支えてきた多様なルール

2009年、私は森林総合研

究所を中心に行われていた前述

の研究プロジェクトのお手伝い

をすることになり、はじめて只

見町を訪れました。只見町には

ブナを中心とする世界遺産級の

貴重な森林生態系が残されてお

り、その生態系にはさまざまな

経済的・文化的な価値があるこ

とが明らかにされ、そのことは

広報ただみバックナンバーでも

紹介されています。しかし、只

見地域の貴重な生態系はただ単

に残ったのではありません。人々

に利用されつつ、その利用に一

定のルールが課されたから、残っ

たのだと思います。

最初に只見町を訪れたとき、

すぐ隣の集落(=行政区)に行

くと、共有林に関してずいぶん

異なるルールが採用されてい

る、という事実に私は強く興味

を惹かれました。ある集落では

部外者は入山料を払えばすべて

の共有林に入ることができ、一

方別の集落ではきびしい入山禁

止措置をとっていて部外者が共

有林に入ることは一切許されな

いといった違いです。そうした

ルールには明文化されているも

のも、暗黙のルールもあります。

何度も訪れるうちに、共有林

の利用や管理に関して、集落に

よって、地形・生態・歴史にあ

わせたさまざまなルールが存在

することがわかってきました。

生態系だけでなく、それを管理

するルールも多様だったので

す。こうした多様なルールがな

ぜ生まれたのかを明らかにする

ことが現在の研究関心です。こ

れまでに布沢・坂田・塩ノ岐・

黒谷・小川・楢戸・只見・叶津・

蒲生・塩沢などの各集落で、区

長さんや共用林野組合長さんに

お話を伺い、必要な場合には区

長さんや個人のお宅に保存して

ある貴重な資料を拝見・撮影さ

せていただいています。

共有林管理について、只見町

では、なぜこれほど多様なルー

ルが存在しているのでしょう

か。この問いに対する十分な答

えを得るには今後の調査結果を

待つ必要がありますが、一つの

仮説はこうです。つまり、集落

のことは集落が自主的に決め

る、言い換えれば集落の自治と

でも言える慣習あるいは制度が

只見町では今も生きているから

こそ、集落ごとに多様なルール

がみられるのではないかという

ことです。ほかの集落のやり方

を参考にしたり、町や県などの

行政の意見を聞いたりすること

はあっても、基本的には自分た

ちの共有林なのだから、自分た

ちで決めます。そうした集落の

自治あるいは自立性が多様なル

ールとその帰結としての貴重な

森林生態系を支えているのでは

ないでしょうか。

こうした私たちの研究関心の

背景には、「コモンズ」の研究

が世界的に注目されていること

があります。今年惜しくも亡く

なられたアメリカの政治学者エ

リノア・オストロム氏は、コモ

ンズが地元のコミュニティに

よって管理されるべきであるこ

とを明らかにした業績が評価さ

れ、2009年にノーベル経済

学賞を受賞しました。コモンズ

とは共有資源のことで、具体的

には漁場や共同牧草地、共有林

などの資源を指します。詳しく

は次号以降でご紹介することに

なりますが、日本の共有林は世

界の研究者から関心を集めてい

るのです。     

とっておきの話

218

森林総合研究所東北支所

  林  雅 秀

只見学

共有林への入山ルールを示す横断幕

共有林はムラの財産〜只見町の共有林に学ぶ〜①

▼森林総合研究所は、農林

水産省所管の独立行政法人

です。森林や林業について

試験、研究等を行い、森林

の多様な恵みを生かした循

環型社会の形成に寄与する

ことを目的に運営されてい

ます。以前「里山イニシア

ティブに資する森林生態系

サービスの総合評価手法に

関する研究」という調査が

只見町で行われました。

▼今回、「共有林を管理す

るための〝自主的ルール〟

の形成」(平成23年度)、そ

して「開かれたコモンズへ

の移行に関する多面的・体

系的アプローチ:共有林を

事例として」(平成24~26

年度)という新たな研究テ

ーマで只見町が調査地と

なっています。同研究所の

ほか、東京大学・東北大学・

岩手県立大学・立教大学の

研究者も参加されていま

す。

▼このような調査を通じ

て、町の自然や社会慣行が