54
平成25年度インフラ・システム輸出促進調査等事業 インドネシア共和国における 中小規模分散型発電事業に係る 事業実施可能性調査 報告書 2014 3 31 株式会社野村総合研究所

インドネシア共和国における 中小規模分散型発電事 …µ¦水 ・Tarum Barat(ジャアティルフル・ダムからジャカルタ市内へ流れる潅漑水路、

Embed Size (px)

Citation preview

Page 1: インドネシア共和国における 中小規模分散型発電事 …µ¦水 ・Tarum Barat(ジャアティルフル・ダムからジャカルタ市内へ流れる潅漑水路、

平成25年度インフラ・システム輸出促進調査等事業

インドネシア共和国における

中小規模分散型発電事業に係る

事業実施可能性調査

報告書

2014年 3月 31日

株式会社野村総合研究所

Page 2: インドネシア共和国における 中小規模分散型発電事 …µ¦水 ・Tarum Barat(ジャアティルフル・ダムからジャカルタ市内へ流れる潅漑水路、

i

目次

1. はじめに ...........................................................................................................................1

1.1. 背景 ...........................................................................................................................1

1.2. 目的 ...........................................................................................................................2

2. 方法論 ...............................................................................................................................3

2.1. 対象工業団地.............................................................................................................3

2.2. 事業実施に必要な現地調査 .......................................................................................6

2.2.1. 第一回現地調査(2014 年 1 月 20 日~2014 年 1 月 24 日) ...........................6

2.2.2. 第二回現地調査(2014 年 1 月 28 日~2014 年 3 月 14 日) ...........................7

2.2.3. 第三回現地調査(2014 年 3 月 24 日~2014 年 3 月 26 日) ...........................7

3. 調査結果 ...........................................................................................................................8

3.1. インドネシアにおける分散電源整備の傾向 .............................................................8

3.2. ジャカルタ周辺 .........................................................................................................9

3.2.1. 事業の着眼点 .....................................................................................................9

3.2.2. 基本計画策定 ...................................................................................................14

3.2.3. 事業実施可能性調査 ........................................................................................25

3.3. 東カリマンタン周辺 ................................................................................................36

3.3.1. 東カリマンタンにおける工業団地開発の現状 ................................................37

3.3.2. 主要工業団地概要 ............................................................................................38

3.4. 派生プロジェクト ...................................................................................................50

Page 3: インドネシア共和国における 中小規模分散型発電事 …µ¦水 ・Tarum Barat(ジャアティルフル・ダムからジャカルタ市内へ流れる潅漑水路、

ii

図目次

図 1 カラワン工業団地の立地 ......................................................................................3

図 2 カラワン工業団地のマスタープラン ....................................................................5

図 3 インドネシアにおける分散電源の定義 .................................................................8

図 4 PLN の顧客種類別全国平均電力料金推移 .........................................................10

図 5 PLN の発電用燃料消費量の推移 ........................................................................11

図 6 天然ガス調達ソースの見通し .............................................................................12

図 7 天然ガスの国際価格の推移(USD/MMBTU) .................................................13

図 8 某需要家における電力トラブル年間発生回数 ....................................................16

図 9 KIIC 向けに想定している CGSシステム概要 ...................................................19

図 10 想定される事業スキーム ..................................................................................21

図 11 採算性評価の結果 .............................................................................................30

図 12 タンジュンプリオク港からカラワン工業団地への資機材運搬ルート .............31

図 13 今後のアクションプラン ..................................................................................35

図 14 日本のシーレーン .............................................................................................36

図 15 東カリマンタン州の工業団地開発計画.............................................................37

図 16 Kariangau Industrial Zone の立地と進出済み日系企業 .................................38

図 17 Kariangau Industrial Zone のレイアウト ......................................................39

図 18 Kariangau General Cargo Terminal の概要 ..................................................42

図 19 Kariangau Power のスペック ..........................................................................43

図 20 Maloy のマスタープランと開発スケジュール .................................................44

図 21 Maloy に立地が期待される企業 .......................................................................45

図 22 Maloy SEZ の開発に必要な高規格(重量車両が通行可能な)接続道路の開発

................................................................................................................................46

図 23 Maloy SEZ の開発に必要な高規格(重量車両が通行可能な)接続道路の建設の

様子 ...................................................................................................................47

図 24 Maloy SEZ の開発に必要な高規格(重量車両が通行可能な)接続道路との接続

道路の建設の様子 .............................................................................................48

図 25 Maloy SEZ のパームクルードオイル(PCO)輸出港湾整備イメージ ...........49

Page 4: インドネシア共和国における 中小規模分散型発電事 …µ¦水 ・Tarum Barat(ジャアティルフル・ダムからジャカルタ市内へ流れる潅漑水路、

iii

表目次

表 1 KIIC のインフラの状況 ........................................................................................4

表 2 第一回現地調査のインタビュー先 ........................................................................6

表 3 KIIC 調査対象地区電力需要 ...............................................................................14

表 4 KIIC 調査対象地区冷熱需要 ............................................................................15

表 5 KIIC で想定している電力・熱供給事業の想定需要家 .......................................18

表 6 事業実施体制 .......................................................................................................20

表 7 コジェネレーションプラントの効率 ..................................................................22

表 8 米S社の提案概要 ...............................................................................................24

表 9 建設資金のファイナンス方法 .............................................................................25

表 10 採算性評価に関わる原単位 ...............................................................................27

表 11 KIIC 現地日系工場における電気料金水準(レギュラー、プレミアム) .......28

表 12 採算性評価の結果 .............................................................................................29

表 13 インドネシアにおける電力販売に関わる規制 ..................................................32

表 14 KariangaU Industrial Zone の入居企業および候補一覧 ................................40

Page 5: インドネシア共和国における 中小規模分散型発電事 …µ¦水 ・Tarum Barat(ジャアティルフル・ダムからジャカルタ市内へ流れる潅漑水路、

1

1. はじめに

1.1. 背景

新興国にて需要の高いインフラ分野において、建設、資金調達から運営まで含めて事業権

を発注するケースが増加しており、我が国企業においても個々の機器、設備の納入のみでな

く、設計・建設から維持・管理までを含めてインフラやシステムを統合的に受注する「イン

フラ・システム輸出」の促進はいまや喫緊の課題となっている。

こうした中、今後の発展が期待できる重要な国として、経済成長が著しいインドネシアが

挙げられる。2011 年に発表したインドネシア経済開発迅速化・拡大マスタープラン(MP3EI)

では、同国は 2025 年に GDP で世界のトップ 10 入りを目標として掲げている。インドネ

シアは、開発目標を達成するための戦略の一つとして、豊富な資源に付加価値をつけて輸出

することで、資源輸出国から製品輸出国へ変わろうとしている。

具体的には、2012 年 2 月 6 日付で鉱物資源に対する高付加価値義務に関する大臣令が発

行され、鉱物資源の生産者は 2014 年 1 月以降、高付加価値化が義務付けられ、違反者には、

事業停止、鉱業事業許可(IUP)の取り消し等の罰則が定められている。これに伴い、精錬所

建設計画等が多数持ち上がっており、工業団地およびその電力・エネルギーインフラの整備

が急務となっている。しかしながら、PLN からの電力供給が十分とは言えず、鉱物資源を

精錬する工場の建設が遅れており、高付加価値義務の 2014 年1月導入が危ぶまれている状

況である。

このような現状を踏まえ、インドネシアの工業団地を対象とした電力・エネルギーインフ

ラの整備が必要不可欠な課題となっており、これらの基礎インフラ整備には、政府間協力が

不可欠である。

工業団地の開発においては、投資リスクを最小化する目的から、工業団地の成長に合わせ

て徐々に拡張が可能な分散型システムが適している。複数の分散型発電設備のベストミック

ス制御を導入することにより、ベース需要、ピーク需要を考慮した最適の組合せでの運用が

可能となり、さらにコジェネ分散型システムから工業団地で使用される蒸気も供給でき、省

エネにも資するシステムが提供できる。今後の工業団地向け電力等の基盤インフラ輸出ショ

ーケースとしてこうした差別化技術を採用することで、日本開発技術の世界展開に寄与する。

本調査では上記の背景に基づき、本邦技術を活用したインドネシアにおける分散電源整備

の可能性について調査を行うものである。

Page 6: インドネシア共和国における 中小規模分散型発電事 …µ¦水 ・Tarum Barat(ジャアティルフル・ダムからジャカルタ市内へ流れる潅漑水路、

2

1.2. 目的

本事業では、インドネシアの工業団地を対象に、本邦技術を活用した中小規模分散型発電

設備提供の具体的プロジェクトの事業実施可能性調査を行う。

まず、工業団地向け中小規模分散型発電事業を相手国関係者に示すため、(1)基本計画

策定、(2)事業実施可能性調査を行う。なお、対象とする工業団地は、一部の土地が購入

済みであること、すでに入居企業との契約交渉を開始していること等、3 年以内に実現する

具体的計画があること等、実現性が高く、導入効果が高い工業団地を想定した。

Page 7: インドネシア共和国における 中小規模分散型発電事 …µ¦水 ・Tarum Barat(ジャアティルフル・ダムからジャカルタ市内へ流れる潅漑水路、

3

2. 方法論

2.1. 対象工業団地

本調査は、ジャカルタ郊外のカラワン工業団地(Karawang International Industrial

City:KIIC)を対象地区として選定している。この KIIC は、伊藤忠商事がインドネシア

近郊でシナルマスグループと共に開発・運営している工業団地であり、既に自動車や関連の

部品産業が立地している。このため、「一部の土地が購入済みであること」、「すでに入居

企業との契約交渉を開始していること」、「3 年以内に実現する具体的計画がある」等、実

現性が高く、導入効果が高いと考えられたからである。

なお、カラワン工業団地は既に PLN の系統と二系統受電を行っており、プレミアム契約

も行える。このため、電力供給の状況は現状で比較的安定している。ただし、近年、プレミ

アム契約の電力価格が上昇しており、中長期的には電力供給が電力需要を満たさない危険性

があることから、カラワン工業団地に提供されている天然ガスパイプラインからのガス供給

を利用したガスコジェネレーションによる分散電力供給の検討を行うに至っている。

出所)http://www.itochu-realty.com/solutions/industrial_park/kiic/

図 1 カラワン工業団地の立地

Page 8: インドネシア共和国における 中小規模分散型発電事 …µ¦水 ・Tarum Barat(ジャアティルフル・ダムからジャカルタ市内へ流れる潅漑水路、

4

表 1 KIIC のインフラの状況

インフラ種別 概要

道路 幹線道路:全体幅 37M~47M、8M(2車線)×2方向 計 4車線舗装

一般道路:全体幅 29M、10M(1車線)×2方向 計 2車線舗装

※全体幅の中には、歩道、雨水側溝、街灯が含まれ、幹線道路には上記に加え、

中央分離帯或は中央雨水溝が含まれる。

電力 ・PLN(電力公社)からの供給。但し、安定供給実現のため、KIIC~PLN間で優先

供給契約(プレミアムサービス)を締結。

・これ以外にも、KIIC~PLN間の包括変電契約により、工業団地内に KIIC専用の

変電所を建設。同変電施設にて 180MW(60MW×3基)契約済み。

・KIIC第三期エリアでは、この専用変電所に加え、KIIC隣接の他の変電所内にも

専用のトランスフォーマーを設置し、2変電所からの供給を実現。必要に応じ

容量の増設が可能。

・工業団地内ルーピングシステムにより、更なる電力の安定性を確保。

・電力契約は各入居企業様と PLNとの個別契約となるが、KIICが接続までサポー

ト。

・電圧:20kV (380乃至 220Vにての使用は各企業にてトランスフォーマー設置の

上、降圧必要)

・周波数:50Hz

天然ガス PGN(ガス公社)からの供給。ただし、PGNとの直接契約による

給水 ・Tarum Barat(ジャアティルフル・ダムからジャカルタ市内へ流れる潅漑水路、

流水量、毎秒 25t)から原水を取水。

・ジャアティルフル潅漑公社との間で Max 1t/秒の取水許可取得済。

・上記 Tarum Baratがメンテナンス時渇水した場合の為に 350,000tonの調整池を

確保。

・団地内の工業用水プラント(凝集沈殿池付急速ろ過方式)で処理後工業用水と

して供給。

・供給可能量 30,000t/日(24時間)。

・給水契約は各企業・KIIC間で契約。 [水圧及び水質]

水圧:1.0Kg/cm3 以上確保

下水処理 各企業で一次処理後、前面道路埋設の共同配水管に排水。これを KIIC廃水処理プ

ラント(活性汚泥処理方式)で二次処理し西ジャワ州排水規制値に従いチタルム

川に放流。

通信 TELKOM(電電公社)より 1,000回線据付済み。

電話・Fax・リース回線・ISDN・ADSL・専用線の利用が可能、TELKOMより供給。

申請は各社より直接 TELKOMへ、KIICがサポート。

出所)http://www.itochu-realty.com/solutions/industrial_park/kiic/

Page 9: インドネシア共和国における 中小規模分散型発電事 …µ¦水 ・Tarum Barat(ジャアティルフル・ダムからジャカルタ市内へ流れる潅漑水路、

5

出所)http://www.itochu-realty.com/solutions/industrial_park/kiic/

図 2 カラワン工業団地のマスタープラン

Page 10: インドネシア共和国における 中小規模分散型発電事 …µ¦水 ・Tarum Barat(ジャアティルフル・ダムからジャカルタ市内へ流れる潅漑水路、

6

2.2. 事業実施に必要な現地調査

2.2.1. 第一回現地調査(2014年 1月 20日~2014年 1月 24日)

現地事業環境の把握を目的に、ジャカルタ周辺および東カリマンタンにて、関連政府機関、

電力会社、業界団体、工業団地デベロッパー等へのインタビュー調査を実施した。特に、東

カリマンタンにおいては、工業団地開発に関わる州政府機関およびオフテイカーへのインタ

ビュー・現地視察から、州内の工業団地開発計画の有り様を把握する事に注力した。具体的

なインタビュー先およびインタビュー事項は下表の通りである。

表 2 第一回現地調査のインタビュー先

機関種類 検証事項 ジャカルタ周辺 東カリマンタン

政府機関 • 電力需給状況

• 売電規制

• Directorate General of Electricity, Ministry of Energy

and Mineral Resources

• 当該地域での工業団地

開発計画

• - • Bappeda Kaltim

電力会社 • 電力需給状況

• 売電価格見通し

• PLN HQ • PLN Unit Induk

Pembangunan X

工業団地

オペレータ

• 当該工業団地における

エネルギー需給状況

(電力・熱)

• 当該工業団地の開発状

況(東カリマンタン)

• Management Body of

KIIC

(KIIC 工業団地)

• Bappeda Balikpapan

(KIK 工業団地)

• PT Kariangau Power

• Kawasan Kariangau

Terminal

業界団体 • 当該地域での工業団地

開発計画

• 工業団地のエネルギー

需要

• Association of Industrial Estate Indonesia(HKI)

ガス

供給者

• 当該地域でのガス供給

可能性

• 天然ガス価格水準

• PGN

• PT Gagas

• -

コントラク

• 当該地域における EPC

の提供状況

• - • PT Distraco

Page 11: インドネシア共和国における 中小規模分散型発電事 …µ¦水 ・Tarum Barat(ジャアティルフル・ダムからジャカルタ市内へ流れる潅漑水路、

7

2.2.2. 第二回現地調査(2014年 1月 28日~2014年 3月 14日)

ジャカルタ周辺については第 2 回現地調査を実施した。事業実現性評価のため、KIIC 内

需要家へのアンケート調査および個別インタビューにより、各需要家の電熱利用状況および

新規プラントへのニーズを把握した。アンケート調査は、需要家 43社を対象として実施し、

そのうち 25 社から回答を得た(回答率 58.1%)。また、回答企業 25 社のうち 9 社に対し

ては追加インタビューを実施し、KIIC における電力利用課題、新規プラントおよびエネル

ギーサービスに対する需要について確認した。

2.2.3. 第三回現地調査(2014年 3月 24日~2014年 3月 26日)

第三回の現地調査は主に、金融機関と EPC 企業に対して、ファイナンスの条件と EPC、

O&M サービスの提供状況について情報収集を行った。具体的には、国際協力銀行、PT

Indoturbine、米 C 社である。PT Indoturbine は米S社のコジェネレーションシステム(発

電機は日本製、ガスタービンはN社もしくは米S社)の導入 EPC 企業である。また、米S

社に販売金融の条件等を確認した。

これらのインドネシアにおけるインタビューとは別に、日本国内でも可能性のあるメーカ

ーに見積依頼を行った。

Page 12: インドネシア共和国における 中小規模分散型発電事 …µ¦水 ・Tarum Barat(ジャアティルフル・ダムからジャカルタ市内へ流れる潅漑水路、

8

3. 調査結果

3.1. インドネシアにおける分散電源整備の傾向

インドネシアにおける分散電源は多様である。PLN が整備する電源であっても、ジャワ

島・バリ島以外の地域は、規模も小さく、グリッドも十分に発達していないため、分散電源

とみなすことができる。一方で、工業団地等の自家発電やコジェネレーションのための電源

は、100MW を超えるような大規模な発電設備も存在するが、それらも分散電源とみなすこ

とができる。規模と用途の観点から分散電源について示したものが以下の図である。

本調査では、以下の図のなかで工業団地・エネルギー多消費産業向けのすべての規模の電

源、および、PLN の主電源ではあるがジャワ・バリ島以外の高圧系統に接続されていない

中小規模電源について検討対象としている。

図 3 インドネシアにおける分散電源の定義

100MW

PLN主電源工業団地

エネルギー多消費産業等

分散電源

スマトラ・カリマンタン・スラウェシ・パプア島の地域主力電源(送電網整備が不十分な地域)

製錬所、製鉄所等のエネルギー多消費産業向け自家発電施設

工業団地等向け電源

ジャワ・バリ等の高圧系統に接続したPLNの主電源

Page 13: インドネシア共和国における 中小規模分散型発電事 …µ¦水 ・Tarum Barat(ジャアティルフル・ダムからジャカルタ市内へ流れる潅漑水路、

9

3.2. ジャカルタ周辺

3.2.1. 事業の着眼点

3.2.1.1. 不安定な電力供給

インドネシアにおける電力需給バランスの動向を見ると、経済発展による電力需要の増加

に対して、発電プラント開発等の供給力増設が遅れをとっており、当面は需要過多の状態が

継続する可能性が高い。

インドネシアの電力需要は 2008年から 2012年の 5年間に年平均 7.5%の速度で伸長して

いる。地域別に見ると、国内電力消費の約 80%を占めるジャワ・バリ地域は年平均 6.7%の

速度で、スマトラ地域、カリマンタン地域、スラウェシ地域、その他東インドネシア地域は

いずれも年平均 10%以上の速度で成長している。このような旺盛な電力需要成長に応える

べく、エネルギー鉱物資源省および PLN は 2006 年より各地域における大規模な発電設備

増設計画(クラッシュプログラム I および II)を開始した。しかし計画の多くは大きく遅延

しており、2009 年に完了する予定であったクラッシュプログラム I は、2013 年 7 月時点で

全体の 46.4%が未完了のままという状態である。

PLN の公表値によると、ジャワ・バリ地域の電力供給力は 29,159 MW、ピーク需要は

21,968 MWであり、計算上は 25%程度の運転予備力があるように思える。しかし、Ministry

of Energy and Mineral Resources へのインタビューによると、発電設備の経年劣化による

出力減、水力発電の乾期による出力減、定期点検、自己停止点検など諸々の要因により、実

効的な運転中予備力は殆どない状態である。

また、ジャワ・バリ以外の地域では、いずれも年率 10%超で急成長する電力需要に発電

設備整備が追いついていない状態である。例えば、カリマンタンでは 2008 年から 2012 年

の 5 年間に年平均 10.2%の速度で電力需要が増加したにも関わらず、同期間中における発

電容量の増加は 1%に留まり、多くの地域で電力危機が生じた。スマトラ、スラウェシでも

同様の問題が発生している。PLN は当面、余剰電力の買取り、および発電所の借受けによ

り需給バランスの改善に取り組んでいる状況である。

以上の検討を踏まえると、インドネシアはジャワ・バリ地域、その他地域含め電力供給力

不足状態にあり、クラッシュプログラムが遅延する中、この傾向は今後暫く継続することに

なる可能性が高いと考えられる。

Page 14: インドネシア共和国における 中小規模分散型発電事 …µ¦水 ・Tarum Barat(ジャアティルフル・ダムからジャカルタ市内へ流れる潅漑水路、

10

3.2.1.2. 高騰する産業向け電力料金

次に、産業需要家向け電力料金の動向を見る。財政を圧迫する電力補助金見直しの流れに

伴い、2013 年の一年間だけで約 14%の値上げが実行されている。更に今後も高騰を続ける

事が予想されている。

出所)PLN Statistics

図 4 PLN の顧客種類別全国平均電力料金推移

一般的に電力料金は、供給原価(燃料費が殆ど)に一定の事業報酬を上乗せした総括原価

方式によって算出されるが、インドネシアの需要家が負担する実際の電力料金は、この総括

原価方式によって算出された本来価格から政府による電力補助金分を差し引いた金額であ

る。この事から、当該国における電力料金動向を予測するには、①燃料構成の変化による本

来価格の推移、②政府の電力補助金の増減動向の二点について検討する事が必要となる。

まずは、燃料構成の変化による本来価格の推移について検証する。PLN は発電用燃料の

約 11%を占める石油を、中期的にはより安価な天然ガスで、長期的には更に安価な石炭と

地熱で代替していく方針であり、インフレを勘案しても発電コスト自体は中長期的に緩やか

に下降していくと予想される。

550

600

650

700

750

800

850

900

950

1000

2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012

Rp./kWh

Residential Industrial Business

Page 15: インドネシア共和国における 中小規模分散型発電事 …µ¦水 ・Tarum Barat(ジャアティルフル・ダムからジャカルタ市内へ流れる潅漑水路、

11

出所)PLN Statistics

図 5 PLN の発電用燃料消費量の推移

次に、②政府の電力補助金の増減動向について検証する。PLN の 2012 年版事業報告書

によれば、同年の産業需要家向け本来価格の 40%以上が電力補助金によって賄われている。

電力含むエネルギー補助金は例年財政を圧迫しており、政府は補助金政策の見直しを進める

方針を明らかにしていた。そのような背景の中、2013 年 10 月、エネルギー鉱物資源省は、

2014 年中に産業中圧および産業高圧需要家向けの電力補助金を完全撤廃する方針を国会に

て合意した。仮に実行された場合、当該需要家の電力料金は年内に 2013 年末比 30%以上値

上がりすることになる。

以上の検討を踏まえると、燃料構成変化により本来価格は減少するものの、補助金が撤廃

あるいは大幅減額されることにより、産業需要家向けの電力料金は高騰する可能性が高い。

電力料金の高騰は、現地製造業の大きな負担となることが懸念される。

0

50,000

100,000

150,000

200,000

250,000

300,000

350,000

400,000

0

5,000,000

10,000,000

15,000,000

20,000,000

25,000,000

30,000,000

35,000,000

40,000,000

MMSCFOil (kl)Coal (t)

Oil (kl) Coal (ton) Natural Gas (MMSCF)

Page 16: インドネシア共和国における 中小規模分散型発電事 …µ¦水 ・Tarum Barat(ジャアティルフル・ダムからジャカルタ市内へ流れる潅漑水路、

12

3.2.1.3. 安定化するガス供給と価格動向

インドネシアの天然ガス需給バランスは、直近供給不足傾向にあるが、国内割当比率の見

直しに伴う国内 LNG 転送量の増加に伴い中長期的には安定する見通しである。

現在国内で産出された天然ガスの約 3 割は LNG として海外輸出されているが、政府は既

存販売契約が満了するに従い徐々に国内割当て比率を高めていく方針である。これを受けて、

国内ガス会社は、既に天然ガスの主要消費地である西ジャワにて、浮体式再ガス化貯蔵施設

(FSRU)の整備を進めており、インドネシア東部から転送される LNGを同施設にて再ガ

ス化し流通させる事で供給力強化を図っている。同様の FSRU 整備計画は主要消費地であ

る南スマトラや中央ジャワにおいても 2015 年の開設を目指して進められている。また政府

は、国内需要の更なる増加により、国内 LNG 転送だけでは需要が賄えなくなった際、外国

からの LNG 輸入を開始する可能性も示唆している。このように、中長期的には需給バラン

スは安定推移することが期待されている。

図 6 天然ガス調達ソースの見通し

一方、天然ガスの価格動向について検討すると、天然ガス調達方法の変化に伴い、今後緩

やかに上昇し一定水準にて高止まりする可能性が高い。先述のように政府は天然ガスの国内

割当比率を増加する方針であるが、そのためには国内天然ガス価格を LNG 輸出価格に均衡

させていく事が必要になる。また、今後国内ガス供給量に占める LNG比率が高まると、LNG

転送コストおよび再ガス化コストがガス販売価格に転嫁され、ガス価格は必然的に上昇する。

インドネシア政府の価格政策を踏まえると、国内天然ガス価格は、海外向け LNGの FOB

価格と、国内 LNG政府参考価格の中間である 11 USD/MMBTU 前後で安定すると予想さ

れる(NRI 推定)。

~2014国内天然ガスパイプラインガス供給

2015~2020頃国内天然ガスパイプライン+LNGガス供給

2020頃~国内天然ガスパイプライン+LNG、輸入LNGガス供給

天然ガス調達ソース

の変動要因

パイプライン整備による天然ガス供給拡大・Pipelines between Cirebon and Bekasi

in West Java(2014)

同左・Pipelines between Gresik in East Jawa

and Semarang in Central Java ( 2014)

・ Pipelines between Cirebon and

Semarang(PT Rekayasa Industri )・ Pipeline from the Kepodang gas field

to the Tambaklorok power plant in Central Java(2014)

同左

・東カリマンタン・ジャワ島のパイプライン整備の可能性

想定天然ガス調達ソース

•国内天然ガス供給(主)•国内LNG供給(従)

•国内天然ガス供給(主)•国内LNG供給(従~主)

•国内天然ガス供給(主)•国内LNG供給(従~主)•海外輸入LNG供給(従)

国内PLガス

国内LNG

輸入LNG

FSRU、LNGTerminal建設による供給拡大・FSRU in West Java (PT Nusantara

Regas, 2013-4, 22 million tons )

・DONGI LNG Terminal(2014)

同左・FSRU in Lampung (2014-15)・ FSRU in Central Java by Pertamina( 2014-15 )

同左・Abadi LNG Terminal(20××)

- -・需給見合いによってはLNG輸入開始・拡大の可能性有り

ガス需給見通し ・国内パイプラインガスでは供給不足気味・国内パイプラインガスに加え、LNG転送により供給が需要上回る見込み

・国内生産分を需要が上回り需要が逼迫する可能性がある

Page 17: インドネシア共和国における 中小規模分散型発電事 …µ¦水 ・Tarum Barat(ジャアティルフル・ダムからジャカルタ市内へ流れる潅漑水路、

13

出所)IMF

図 7 天然ガスの国際価格の推移(USD/MMBTU)

Page 18: インドネシア共和国における 中小規模分散型発電事 …µ¦水 ・Tarum Barat(ジャアティルフル・ダムからジャカルタ市内へ流れる潅漑水路、

14

3.2.2. 基本計画策定

3.2.2.1. 対象工業団地 KIICの電力・熱需要

前述の通り、本調査では CGS 導入効果を高めるために事前のインタビュー調査により電

力需要の大きい工場を中心にした 1km 圏内の需要家を電熱併給の対象として電力・熱需要

調査を実施した。

電力需要については、対象地区 A は約 28MW、対象地区 B では約 87MW のピーク需要が

確認された。大型の加工組立てラインである工場に加え、電力を活用した鋳造工程のある工

場の電力需要が相対的に多い(表 3)。

表 3 KIIC 調査対象地区電力需要

出所)NRI 現地調査 JES 一部推計

対象地区 A では、温熱需要として蒸気需要が確認された。冷水需要については冷却工程、

工場の空調等の需要が確認された。対象地区 A では、蒸気、冷水を共同利用できる可能性

がある。

一方、対象地区 B でも、温熱需要としては一部蒸気需要、冷水需要が確認されたが限定て

きである。

以上のように、KIIC 需要家へのアンケート調査から、対象地区 A、B の両者で一定の電

力・熱(蒸気・冷水)需要が存在する事が明らかとなった。

年間電力

消費量ピーク需要 PLN

[MWh/年] [kW] カテゴリ

対象地域A 計 97,267 28,517 I3対象地域B 計 192,395 87,906 I3

386,929 144,940

企業名

Page 19: インドネシア共和国における 中小規模分散型発電事 …µ¦水 ・Tarum Barat(ジャアティルフル・ダムからジャカルタ市内へ流れる潅漑水路、

15

表 4 KIIC 調査対象地区冷熱需要

出所)NRI 現地調査 JES 一部推計

年間GJ t/h 年間GJ t/h 年間GJ t/h 対象地域A 計 86,683 5.5 8,294 0.7 132,970 11.4対象地域B 計 32,008 3.7 9,876 0.9 54,983 4.6総計 205,374 14.7 26,464 2.3 320,923 27.4

企業名

蒸気需要推定値

(JES推定)

温水需要蒸気換

算値(JES推定)

冷水需要蒸気換

算値(JES推定)

Page 20: インドネシア共和国における 中小規模分散型発電事 …µ¦水 ・Tarum Barat(ジャアティルフル・ダムからジャカルタ市内へ流れる潅漑水路、

16

3.2.2.2. 対象工業団地 KIICの新規電源ニーズ

PLN の電力安定供給は改善傾向だが依然安定供給ニーズはある

アンケート回答企業の一部に対してフォローアップインタビューを実施した結果、KIIC

内需要家は電力供給の安定性は直近改善傾向にあり不満は解消傾向にある一方で、電力料金

の高騰と今後の見通しの不透明さに懸念を抱えていることの 2 点が明らかになった。

まず、電力供給の安定性についてであるが、工業団地 KIIC の管理会社と PLN の交渉の

結果、KIIC 内需要家は 2009 年より割高な特別料金を支払い、電力優先供給をうけるプレ

ミアムサービスを受けている。敷地内に複数の専用変電所が設置され、変電・受電設備に問

題が生じた場合に備え PLN より専属担当エンジニアが派遣常駐している。更に 2011 年か

ら、需要家サイトの電源盤と PLN 間での通信が可能となり、何らかの原因で PLN が電源

供給を遮断する際、事前に需要家サイトの電源盤に指示を送りバックアップ電源を稼働させ

る事が可能となった。

図 8 は、2011 年から 2013 年までの過去 3 年間における KIIC 某需要家の電力トラブル年

間発生回数を示したものであるが、実際に電力トラブルの回数が減少しており電力供給の安

定性が年々改善している事がわかる。インタビューにおいても電力供給の安定性は改善して

おり、年間 1-2 回程度の瞬停はあるものの、UPS 等電力安定化装置の導入により十分対処

可能であり、操業へのインパクトは限定的である、というのが主要な意見であった。

(注)Trip/Small:一部の生産設備/電力設備にエラーが発生

Trip/Big:一部の生産設備/電力設備がダウン

Shutdown:全て機械がシャットダウン(バックアップシステムを備えた機械を除く)

Maintenance:工場のメンテナンスにより全ての機械がシャットダウン

図 8 某需要家における電力トラブル年間発生回数

7

3

5

1

4

2

2

1 1

1

0 0

2011 2012 2013

Trip/Small Trip/Big Shutdown Maintenance

11

8 8

単位:回

Page 21: インドネシア共和国における 中小規模分散型発電事 …µ¦水 ・Tarum Barat(ジャアティルフル・ダムからジャカルタ市内へ流れる潅漑水路、

17

但し、PLN から優先供給されるプレミアム契約の場合においても上述の通り瞬停、電圧

降下、場合によっては停電も起きうる状況に変わりはなく、PLN の供給に不安は存在して

いる。このため依然として電力安定供給についてのニーズはあるものといえる。

PLN の高い電力料金、不透明な価格設定には不満多数

一方で、電力料金の高騰、価格変動メカニズムの不透明性には多くの懸念の声があがって

いる。2014 年 2 月現在のプレミアム電力料金は kWh あたり Rp1300-1400 程度と、既に日

本の産業需要家向け電力料金に近い水準まで高騰している(比較参考:平成 24 年 9 月 1 日

の高圧電力500kW以上の電力量料金は、夏季で15.34円、その他季で14.34円※東京電力)。

先述の通り、今後産業需要家向けの電力補助金が大幅にカットされれば、現行料金から 30%

程度の値上げが行われる可能性もある。

また、電力料金の変動は燃料価格の影響を受けるが、Pertamina 等燃料会社と PLN との

交渉による調達価格決定プロセスが不透明なため、電力料金の見通しが困難であるという声

も上がっている。電力料金推移の予測困難性は中期的な操業・投資計画の策定プロセスに支

障をきたしていると言える。

このように、KIIC 需要家はプレミアム契約の恩恵により比較的安定した電力供給を受け

られているものの、電力価格の高騰による採算性の悪化に懸念を抱えている事が、インタビ

ューを通して明らかになった。

KIIC 需要家の新規電源整備ニーズは電力価格水準に大きく依存

上記の通り、KIIC 需要家の電力供給安定性対する不満は改善傾向にあり、インタビュー

にて確認した限り、安定供給という観点のみでの新規プラント導入に対しての需要は限定的

であった。但し、直近 PLN の供給は安定しているものの、前述の通り PLN の電源整備遅

延により電力需要の増加に供給能力が追い付かない場合は再度PLNの供給が不安定になる

可能性もあり安定供給に対するニーズが再び顕在化する可能性はある。また、電力料金高騰

への懸念は強く、明確なコストメリットが期待できるのであれば、導入を検討するとの回答

が主流であった。KIIC 工業団地向けのエネルギー供給サービスを実現する上では、電力安

定供給を担保することに加えて、高騰する PLN 電力料金に対していかにコストメリットが

提供できるかが論点となる。

Page 22: インドネシア共和国における 中小規模分散型発電事 …µ¦水 ・Tarum Barat(ジャアティルフル・ダムからジャカルタ市内へ流れる潅漑水路、

18

3.2.2.3. 中小規模分散型発電プロジェクト概要

ここでは本プロジェクトで想定しているプラントの概要について整理する。

a)想定需要家

本事業では、前項で記載した KIIC 内の対象地区 A、及び、対象地区 B における各需要家

電力、冷熱需要規模を踏まえて、以下の通り現段階で想定しうるコジェネレーション事業の

構想を設定した。対象地区 A の中核的な工場の自家消費電源から温冷熱を周辺需要家に供

給するプロジェクト A、を核需要家として周辺需要家に電力・熱併給を実施するプロジェク

ト A’、対象地区 B の中核的な工場の自家消費電源から温冷熱を周辺需要家に供給するプロ

ジェクト B を想定した。表 5 にプロジェクトの概要を示す。

表 5 KIIC で想定している電力・熱供給事業の想定需要家

ケース 供給 電力供給 温熱供給 冷熱供給

A 電力自家消費

熱供給システム

中核的な工場

※CGS 設置想定

中核的な工場

その他工場

中核的な工場

その他工場

A’ 電熱供給

システム

中核的な工場

※CGS 設置想定

中核的な工場

その他工場

中核的な工場

その他工場

B 電力自家消費

熱供給システム

中核的な工場

※CGS 設置想定

その他工場 その他工場

b.電力・熱供給システム概要

当該地域では PGN のパイプラインが通っており天然ガスの調達が可能である。本事業で

は、 想定事業 A、A’では中核的な工場に CGS を設置し、中核的な工場と近隣の工場に対

して電力と熱の供給を行うシステム、想定事業 B では中核的な工場に CGS を設置し近隣の

工場に対して熱の供給を行うシステムを想定している。

Page 23: インドネシア共和国における 中小規模分散型発電事 …µ¦水 ・Tarum Barat(ジャアティルフル・ダムからジャカルタ市内へ流れる潅漑水路、

19

出所)JES

図 9 KIIC 向けに想定している CGS システム概要

対象事業 A では、中核的な工場の電力自家消費向けに中核的な工場内に CGS を設置し、

その他工場に蒸気を供給、上記 2 社に別工場を加えて 3 社に冷水を供給するモデルを想定

している。ピーク電力需要は約 13MW、蒸気需要は年間 56,683GJ(平均 5.5t/h)、冷熱(冷

水)需要(蒸気換算)は 132,094GJ(平均 11.3t/h)となっている。中核的な工場から周辺工

場向けの蒸気導管敷設距離は 1,050m、冷水配管敷設距離は 1,450m を想定している。

設置する CGS は 6,000h/年の稼働、5.75MW×2台=11.5MW のガスエンジンを導入する

ことを想定している。CGS にはガスエンジン以外にもガスタービンを用いたシステムが存

在するが、KIIC の需要家の傾向として電力需要が熱需要を上回るため発電効率の高いガス

エンジンを用いることを想定される。また、中核的な工場にてある程度 PLN からのバック

アップを受けることも想定している。

対象事業 A’では、中核的な工場工場内に CGS を設置し、中核的な工場、その他工場に電

力を供給するとともに 3 社に蒸気・冷水を供給するモデルを想定している。ピーク電力需

要は約 28MW、蒸気需要は年間 86,683GJ(平均 5.5t/h)、冷熱(冷水)需要(蒸気換算)

は 132,094GJ(平均 11.3t/h)となっている。中核的な工場から周辺工場向けの電力自営線距

離は 1,450m、蒸気導管敷設距離は 1,050m、冷水配管敷設距離は 1,450m を想定している。

電力・熱融通ケース

系統電力

受電

受電(特高)

工場内電力設備

電力

新設ガスエンジンCGS(5,750kW×3基)計17.3MW

TMMIN

排熱蒸気

排熱蒸気 その他工場

排熱(熱導管)自営線(高圧)

【導入システムイメージ】

Page 24: インドネシア共和国における 中小規模分散型発電事 …µ¦水 ・Tarum Barat(ジャアティルフル・ダムからジャカルタ市内へ流れる潅漑水路、

20

設置する CGS の規模は 6,000h/年の稼働、5.75MW×3台=17.25MW のガスエンジンを

導入することを想定している。中核的な工場にて PLN からのバックアップとも想定してい

る。

対象事業 B では、中核的な工場の電力自家消費向けに中核的な工場工場内に CGS を設置

し、その他工場に蒸気を供給、別工場に冷水を供給するモデルを想定している。蒸気需要は

年間 13,708GJ(平均 2.2t/h)、冷熱(冷水)需要(蒸気換算)は 52,563GJ(平均 4.5t/h)

となっている。中核的な工場から周辺工場向けの蒸気導管敷設距離は 2,000m、冷水配管敷

設距離は 1,000mを想定している。設置する設置する CGS の規模は 6,000h/年の稼働、

5.75MW×3台=17.25MW のガスエンジンを導入することを想定している。中核的な工場

にてある程度 PLN からのバックアップを受けることも想定している。

c.事業の実施体制

上記事業は原則、事業主体に加え、想定事業の核需要家になる中核的な工場を主要な事業

主体として想定しているが、個別企業が事業主体として推進可能かどうかについては今後本

FS 結果を踏まえて調整する予定である。

表 6 事業実施体制

役割 企業

コジェネ事業推進主体(企画、資金調達、事業運営) 事業主体

中核的な工場等

コジェネシステム提

供・設置

ガスエンジン、発電機他電機品

提供

日系重電メーカー

エンジニアリング 日系エンジニアリング会社

d.事業モデル

事業スキームについて、現在、各社で保有している自家発施設を共同自家発電設備会社

(SPV)に集約し、各社が共同自家発電設備会社(SPV)に出資する共同自家発モデルを

想定する。また、配電に関しては、自営線を想定する。インドネシアでは PLN から電線を

借りることは可能であるが、過去、PLN が配電線を貸し出した事例はないためである。

共同自家発モデルに関する法規制は現時点で明確にない。唯一、「共同自家発電設備会社

(SPV)から各社に電力を販売する際に、電力価格に利益を含んではいけない」というこ

とのみが定められている。

ただし、コジェネレーションプラントの場合、発電部分と熱供給部分の間の原価配賦、ま

た、共同自家発電設備会社のメンバー企業と PLN への余剰電力販売分の間の原価配賦につ

いて、明確に定められたルールは存在しない。

Page 25: インドネシア共和国における 中小規模分散型発電事 …µ¦水 ・Tarum Barat(ジャアティルフル・ダムからジャカルタ市内へ流れる潅漑水路、

21

さらに、共同自家発電設備会社に関して、資本と負債の間の比率や、株主間の資本比率に

関するルールも存在しない。

本事業モデルは、それを規定した明確な法規制がないため、事業モデルを確立した後に、

エネルギー省、PLN 等の関係者で開催される会議において事業モデル自体が承認される必

要がある。また、この事業モデルが、現時点で現行法に抵触しないことを証明する、ノン・

アクション・レターをエネルギー省から入手する必要がある。

一端、エネルギー省からノンアクションレターを入手した暁には、PLN からの一括受電

なしに、日系工場向けのエネルギー供給安定化を実現できる。また、本スキームが一般化し

た際には、近隣の工業団地の日本企業にも展開可能である。

図 10 想定される事業スキーム

具体的なプロジェクトスキームは、中核的な工場の自家消費向けのプロジェクト A、B に

ついて、各社による自社資金、一部金融機関等からのローン、リース等を活用した個別企業

が共同で CGS を所有し、冷熱を周辺工場に販売するケースが考えられる。なお、SPC 等で

金融機関から調達するケースも、本事業の事業規模が数十億円と比較的小さいためプロジェ

クトファイナンスではなく、一部出資者のコーポレートローンで資金を調達することが求め

られることが想定される。

PLN

A 社

B社

C社

D社

↓電気料金↑

共同自家発SPV

バックアップ

↓電気料金(原価)↑

↓料金(利益込)熱↑

O&M

サービス

支払→

←サービス

↓料金(公定)余剰発電力申請強制買取↑

PLN交渉リスク軽減

収益源は自家発電力販売(原価)、熱・蒸気販売(利益込)、PLNへの余剰電力販売(公定)

利益源は熱・蒸気販売、余剰電力販売分

株主構成比率に関する規制なし(極言すれば1%ずつで、残りを投資家が占めてもよい)

自家発電力算定に関する原価計算ルールは定められていない。プロジェクトの総費用を販売電力量で割った金額を超えない限り、あとは、常識の世界

O&Mサービス費用にサービサーの利益を載せることはOK

Non Action Letterの際に、利害関係者(PLN)も招集され

意見を求める。反対されないためには、ほどほどでビジネススキームを設計する必要がある。

Page 26: インドネシア共和国における 中小規模分散型発電事 …µ¦水 ・Tarum Barat(ジャアティルフル・ダムからジャカルタ市内へ流れる潅漑水路、

22

3.2.2.4. 他国企業の提案しうるプロジェクトに対する優位性

本調査の検討地域である KIIC はガスパイプラインが整備されているため、本検討で採用

を想定する技術はガスコジェネレーションシステムである。

ガスコジェネレーションシステムの主機は、ガスエンジンとガスタービンの両方が想定で

きる。発電だけをみれば、本検討で想定している電力量ではガスエンジンの方が効率はよい

が、蒸気の供給まで考えるとその差はほぼない。

表 7 コジェネレーションプラントの効率

出所)K社業資料および刑部真弘1(2011)

インドネシアでは、10MW 未満のガスタービンコジェネの主な供給実績がある会社は、

K社業、米S社、独 S 社の三社である。

この三社の機器の性能はほとんど変わらないとされている。ただし、インドネシアでは米

S社が、最もアフターサービスが充実している。

1 刑部真弘(2011)エネルギーのはなし ─熱力学からスマートグリッドまで─, 朝倉書

Page 27: インドネシア共和国における 中小規模分散型発電事 …µ¦水 ・Tarum Barat(ジャアティルフル・ダムからジャカルタ市内へ流れる潅漑水路、

23

米S社はインドネシアの販売代理店である PT Indoturbine が EPC サービスを提供し、

さらに O&M についてもサービスを提供している。また、バンドンにワークショップを有

していることからタービンのメンテナンスもインドネシアで完結している。ただし、発電機

については日本のN社やS社から購入している。また、ボイラーについてはマレーシアの

M 社から購入している。さらに、米S社は、米C社の一員として、販売金融機能も有して

いる。このファイナンスは、米S社のタービンだけでなく、発電機を含むプラント全体にも

提供される。

なお、三社のうちK社業は日本に工場があり、米 S社はN社がライセンス生産している。

したがってこれらの二社は日本で製造機能を有している。ただし、BOP と呼ばれる主機以

外のプラントは、現地で調達されることも多い。

一方で、ガスエンジンは、米 G社、K社、M社等が有力候補になる。今回の調査では、

試算段階ではM社のガスエンジンコジェネレーションシステムを想定して試算を行ってい

る。

これらのガスタービン、ガスエンジンとも、機器の性能面では、本邦企業、海外企業とも

その性能差はほぼないと言われている。米S社は、現地での施工実績数やアフターサービス

の面で有利であるが、本邦企業は JBIC 等の政策金融が活用できた場合、金利面で有利にな

る。

現時点で、機種選定の最終段階ではないため、これらの条件を比較検討しながら最終的に

機種選定を行うことを予定している。

Page 28: インドネシア共和国における 中小規模分散型発電事 …µ¦水 ・Tarum Barat(ジャアティルフル・ダムからジャカルタ市内へ流れる潅漑水路、

24

表 8 米S社の提案概要

項目 米 S 社

想定機種 タービン 4機種

ボイラ マレーシアM社(マレーシア)

発電機 N社 、S社

概算単価

(含む、予備品、およ

び、タービンリプレイス)

タービン単価 8 ドル/MWh

BOP 単価 2 ドル/MWh

O&M パッケージ PMC (顧客がすべて責任を持つ)

O&M (運転員もだしメンテナンスも行う)

代理店 現地I社 (EPC および O&M 等を実施)

トレーニング施設 マレーシアにトレーニング施設を保有

ワークショップ バンドンにインドネシアン某社がかつて保有していた事

業所を米S社が購入し事業所として利用

ファイナンス プラント全体に対してファイナスを提供

リース 、BOT、レンタル 等を提供

3.2.2.5. 日本国内経済への波及効果

K社と米S社は、日本にも製造拠点やライセンス製造拠点を有している。このため、これ

らの二社の設備を利用した場合、日本国内経済への波及効果も期待できる。

定量的な波及効果については、現時点で、設備が確定していないため今後確認する必要が

ある。

Page 29: インドネシア共和国における 中小規模分散型発電事 …µ¦水 ・Tarum Barat(ジャアティルフル・ダムからジャカルタ市内へ流れる潅漑水路、

25

3.2.3. 事業実施可能性調査

3.2.3.1. 建設資金(ファイナンス)提案

本検討で想定しているコジェネレーションプロジェクトの規模は大きくないため、プロジ

ェクトファイナンスは成立しづらい。そのため、コーポレートファイナンスでのファイナン

スを行うことになる。

プロジェクトオーナーが自らファイナンスをする場合、プロジェクト主体が日本企業や日

本企業の現地法人である場合は、国際協力銀行の投資金融もしくは貿易金融の利用ができる。

また、リース会社がファイナンスを提供することもありうる。所有権の所在、移転のタイ

ミングで、リース、BOT、レンタルが考えられる。いずれも、コーポレートファイナンス

の場合、3~5年程度のファイナンス期間になる。

表 9 建設資金のファイナンス方法

ファイナンス手法 内容 提供主体

コーポレートファイナンス

投資金融 事業に対する融資。プラントの立ち上げ時にコジェネレーションプラント等を入れる場合は、投資金融に分類される。バイヤーズクレジットよりも金利は低い。

JBIC

貿易金融 ・単なる機器調達等に対する融資。5 年以内であれば現在ベースが 1.78%でプレミアム+0.5%で計 2.3%程度の金利になる。最大でも 10~12 年程度である。

・バイヤーズクレジットはプロジェクト総額の上限 85%までとなる。

リース ・EPC 完工後に所有権はプロジェクトオーナーに移転し、プロジェクト費用をリース費用として支払う。

関連機器以外のプロジェクトの全体の 70%を上限にファイナンスを行う。

3~5 年程度

米ドル 6 ヶ月LIBOR+400~600bps

インドネシア Rp. 6 ヶ月

JIBOR+830bps

リース会社

BOT ・一定期間経過するまではEPC や機器サプライヤー等がプラントを保有するが、その後はプロジェクトオーナーに所有権が移転する。

レンタル ・所有は EPC や機器サプライヤー等が行い、ユーザーは電気・熱を購入する。EPC・機器サプライヤーは電気・熱料金によってプロジェクトコストを回収する。

出所)国際協力銀行および米 C 社へのインタビューより作成

Page 30: インドネシア共和国における 中小規模分散型発電事 …µ¦水 ・Tarum Barat(ジャアティルフル・ダムからジャカルタ市内へ流れる潅漑水路、

26

金利水準は、国際協力銀行のバイヤーズクレジットを活用できた場合に、米ドル建てで

2.3%、リースの場合に 4.5%~6.5%程度になる。この場合、為替リスクはプロジェクトオ

ーナーが負うことになる。

ルピア建てファイナンスの場合、国際協力銀行は単独でローカル通貨の貸出は行っていな

い。リース会社の場合、JIBOR が 6 ヶ月で 8.9%程度であるため全体で 16%~17%程度の

金利になる。

Page 31: インドネシア共和国における 中小規模分散型発電事 …µ¦水 ・Tarum Barat(ジャアティルフル・ダムからジャカルタ市内へ流れる潅漑水路、

27

3.2.3.2. プロジェクト採算性評価

3.2.2.3 で想定した3つのケース A、A’、B の電力・熱供給事業について各種公開情報調

査、インタビュー調査をもとに設定した原単位をもとに採算性評価を行った(表 10)。特

に採算性評価に大きな影響を与える電力料金単価については、現地アンケート及びヒアリン

グで得られた 17 円/kWh(中圧)を各ケースで上下に振り分けた条件を設定し評価を行っ

た。

表 10 採算性評価に関わる原単位

項目 値 単位 備考

一般電力料金 (高圧>=30,

000KVA)

(中圧<30, 000KVA)

13.9

17.0

円/kWh

円/kWh

高圧は現状の課電気料金で中圧より 18%安いためその比

より推計した。

中圧は現地日系需要家より受領した Invoice(プレミアム契

約)より設定(資料編参照)

一般契約ガス単価 36.5 円/m3N 現地インタビュー結果より約 3,500~3,800Rp/㎥(35~38

円/㎥) ※中間値を設定

水道料金 130 円/m3

JETRO 資料(月額基本料:7.12USD、1 立方メートル当た

り:1.29USD)より設定 ※供給した蒸気の 10%をブロー・補

給するものと想定する。

土地賃借料 2,500 円/m2・

JETRO 資料(土地購入価格:180~298USD/m2・年の 10%

より想定)

都市ガス発熱量 37.25 MJ/m3N タイと同等程度と想定

蒸気供給単価 1.2 円/MJ 一般契約ガス単価料金に都市ガス発熱量及びボイラー効

率 85%を考慮して算出

CGS 補機電力 3 % CGS 発電電力量に対して、左記の比率を考慮

CGS 建設費(GE) 110 千円

/kW 既存資料より

CGS メンテナンスコスト 1.7 円/kWh CGS 発電電力量に対して左記の単価を考慮して試算

出所)各種公開情報、現地インタビュー調査より NRI、JES作成

Page 32: インドネシア共和国における 中小規模分散型発電事 …µ¦水 ・Tarum Barat(ジャアティルフル・ダムからジャカルタ市内へ流れる潅漑水路、

28

表 11 KIIC 現地日系工場における電気料金水準(レギュラー、プレミアム)

会社名 電気料金 単位 備考

Y 社(中圧) レギュラー 8.4 円/kWh 841RP/kwh※インタビュー結果

A 社(中圧) レギュラー 8 円/kWh 800Rp/kwh※インタビュー結果

プレミアム 18 円/kWh 1,800Rp/kwh※インタビュー結果

I 社(中圧) レギュラー 8 円/kWh 電気料金:803RP/kWh※Invoice(2014/3 時点)より

抽出

プレミアム 15.6 円/kWh 基本料金(追加):52,143RP/KVA, 電気料金:

1,371.54RP/kWh

電気料金支払い実績より逆算した 1,560RP/kWh

※Invoice(2014/3 時点)より抽出

F 社(中圧) プレミアム 11 円/kWh 1,100RP/kWh が 2012 年実績※インタビュー結果

P 社(中圧) プレミアム 12 円/kWh 1,200RP/kWh が 2012 年実績※インタビュー結果

出所)現地インタビュー調査より NRI 作成

Page 33: インドネシア共和国における 中小規模分散型発電事 …µ¦水 ・Tarum Barat(ジャアティルフル・ダムからジャカルタ市内へ流れる潅漑水路、

29

採算性評価の結果、KIIC における電力販売単価が高水準にあるため電力供給を行う規模

が大きいほど、事業に関わる売上が増加し、設備投資額が大きくなっても投資回収年数は有

利になる傾向であった。ケース A’の採算性が一番高く電力料金が 16 円/kWh の想定で投資

回収年が 6.3 年、18 円/kWh では 5 年を下回る水準になる。

排熱利用率については、ケースAでは排熱を使い切ることができており、ケースBでは製

造排熱量の3割程度をロスすることになるが、事業採算性としてはそれほど大きな影響はみ

られない。

出所)各種公開情報、現地インタビュー調査より JES作成

表 12 採算性評価の結果

ケースA (東側エリア 電力自家消費・熱共有ケース)

ケースA’ (東側エリア 電熱共有ケース)

ケースB (西側エリア 電力自家消費・熱共有ケース)

電力単価(中圧) 排熱利用率PLNバックアッ

プ電力設備投資額 売上 売上原価 販管費

営業利益(年間経費削減効果)

単純投資回収年数

[円/kWh] [%] [MWh] [百万円] [百万円] [百万円] [百万円] [百万円] [年]

A-16円 16.00 90% 3,493 2,513 1,309 950 195 163 7.6

A-17円 17.00 90% 3,493 2,513 1,374 953 195 225 6.4

A-18円 18.00 90% 3,493 2,513 1,440 957 195 287 5.5

A-19円 19.00 90% 3,493 2,513 1,505 960 195 349 4.9

Case

電力単価(中圧) 排熱利用率PLNバックアッ

プ電力設備投資額 売上 売上原価 販管費

営業利益(年間経費削減効果)

単純投資回収年数

[円/kWh] [%] [MWh] [百万円] [百万円] [百万円] [百万円] [百万円] [年]

A'-16円 16.00 90% 3,498 3,251 1,734 1,170 264 299 6.3

A'-17円 17.00 90% 3,498 3,251 1,826 1,173 264 388 5.4

A'-18円 18.00 90% 3,498 3,251 1,918 1,177 264 476 4.7

A'-19円 19.00 90% 3,498 3,251 2,009 1,180 264 564 4.2

Case

電力単価(中圧) 排熱利用率PLNバックアッ

プ電力設備投資額 売上 売上原価 販管費

営業利益(年間経費削減効果)

単純投資回収年数

[円/kWh] [%] [MWh] [百万円] [百万円] [百万円] [百万円] [百万円] [年]

B-16円 16.00 64% 3,486 3,186 1,531 1,012 261 258 6.8

B-17円 17.00 64% 3,486 3,186 1,621 1,015 261 345 5.7

B-18円 18.00 64% 3,486 3,186 1,712 1,018 261 432 4.9

B-19円 19.00 64% 3,486 3,186 1,803 1,022 261 520 4.3

Case

Page 34: インドネシア共和国における 中小規模分散型発電事 …µ¦水 ・Tarum Barat(ジャアティルフル・ダムからジャカルタ市内へ流れる潅漑水路、

30

ケース A'と B を比較すると、同じ容量の CGS が導入され、ほぼ同程度の時間稼働してい

るが、B において余剰分の排熱が発生していることから、若干投資回収年数が長くなってい

る。

A と A'を比較すると、導入システムの総合効率は同等程度であるが、ケース A では電力

需要と CGSの容量が小さいため、売電収入が少なくなり投資回収年数が長くなっている。

前述の通り、電力料金単価が高いため電力需要規模が大きいほど投資回収年が短くなる。

出所)各種公開情報、現地インタビュー調査より JES作成

図 11 採算性評価の結果

上記採算性評価の結果、現状の PLN の KIIC 向けの電気料金が高い水準にあることもあ

り、ガス価格が高騰している中においても、現在 18 円/kWh 近く PLN に支払っている需要

家にとっては若干安価な電力を提供できる可能性もあり、本事業は事業として成立しうる状

況であることが確認できた。

7.6

6.4

5.5 4.9 6.3

5.4 4.7

4.2

6.8

5.7

4.9 4.3

0

1

2

3

4

5

6

7

8

9

10

16円/kWh 17円/kWh 18円/kWh 19円/kWh

単純投資回収年数

[年]

A A' B

2,513 3,251 3,186

70,267

97,267 96,000

0

500

1,000

1,500

2,000

2,500

3,000

3,500

0

20,000

40,000

60,000

80,000

100,000

120,000

A A' B

設備投資額

[百万円

]

電力需要量

[MW

h/年

]

設備投資額[百万円] 電力需要[MWh/年]

各ケースの年間収支

-2500

-2000

-1500

-1000

-500

0

500

1000

1500

2000

2500

従来 A(16円) A(17円) A(18円) A(19円)

[百万円

]

-2500

-2000

-1500

-1000

-500

0

500

1000

1500

2000

2500

従来 A’(16円) A’(17円) A’(18円) A’(19円)

[百万円

]

-2500

-2000

-1500

-1000

-500

0

500

1000

1500

2000

2500

従来 B(16円) B(17円) B(18円) B(19円)

[百万円

]

ケースA ケースA' ケースB

収入

支出

電力購入費

ガス購入費設備償却費運用費

ガス購入費(CGS)

売電収入

排熱販売収入

各ケース投資回収年数 各ケースの設備投資額と電力需要量

ガス購入費(バックアップ用)

電力購入費

-2000

-1500

-1000

-500

0

500

1000

1500

2000

従来 B(16円) B(17円) B(18円) B(19円)

[百万円

]

工業団地内売電収入 工業団地内売電収入 排熱販売収入 電力購入費団地内

天然ガス費団地内 天然ガス費 CGS 運用費合計 (メンテ、人件費等) 設備償却費

CGS2台(11.5MW)

CGS3台(17.25MW)

CGS3台(17.25MW)

売電収入増(電力需要大の為)

排熱販売収入増(熱需要大の為)

A'とBの差の主因:排熱利用率

A'とAの差の主因:売電量(売電収入)

Page 35: インドネシア共和国における 中小規模分散型発電事 …µ¦水 ・Tarum Barat(ジャアティルフル・ダムからジャカルタ市内へ流れる潅漑水路、

31

3.2.3.3. サイト調査(ロジスティクス、資機材運搬ルート)

例えば、米S社は、米国でタービンを製造し、欧州で組み立て輸出し、輸出してから凡そ

12 か月で完工する。また、発電機は日本から輸入し、ボイラーはマレーシアから輸入して

いる。

インドネシアのジャカルタ周辺でのプラント輸入は、ジャカルタのタンジュンプリオク港

からジャカルタ・チカンペック高速道路を経由して輸送される。このルートはジャカルタ近

郊でも有数の幹線道路であり、片側 2 車線以上の高規格道路である。また、高速道路から

カラワン工業団地への接続道路も工業団地向けのトラック輸送ルートにあたるため、プラン

ト輸送に支障はないと考えられる。

図 12 タンジュンプリオク港からカラワン工業団地への資機材運搬ルート

Page 36: インドネシア共和国における 中小規模分散型発電事 …µ¦水 ・Tarum Barat(ジャアティルフル・ダムからジャカルタ市内へ流れる潅漑水路、

32

3.2.3.4. 今後の検討課題

事業主体候補との調整

本 FS ではT社インドネシアを主事業主体として想定し KIIC 地域における CGS 事業の

FS を実施した。FSの結果、中核的な工場等の想定プロジェクトケースの核需要家の協力

が事業推進に向けて重要となることが確認された。今後本事業推進に向け本 FS結果をもと

に上記核需要家と、事業参画に向けた調整する必要がある。

電力販売規制への対応

インドネシアでは、鉱物エネルギー資源省(ESDM)の規制により ESDM よりライセン

スを取得するとともに、及び、特定地域で電力販売が可能な事業地域を ESDM に認定して

もらう必要がある。但し、ESDM の規制により一つの事業地域には一つの電力供給者のみ

しか認定されない。事業地域が配分される際は、既存の事業者がいないか、いた場合でも供

給能力が不足しているか、既存事業者が事業地域を譲渡するかのいずれかが必要となる(表

12)。PLN が既に事業地域の認定を得ている供給地域では、電力販売を実施するためには

PLN と交渉の上事業地域を譲渡してもらう必要がある。

表 13 インドネシアにおける電力販売に関わる規制

概要 概要 規制

ライセンス Public Electricity Supply Business

require a license called IUPTL (Izin

Usaha Penyediaan Tenaga Listrik)

Law No. 30/2009, Ministry

Regulation (ESDM) No.

35/2013

事業地域 一つの事業地域には一つの電力供給者の

み事業可能

事業地域は ESDMによって定義される

事業地域が配分される際は、既存の事業者

がいないか、いた場合でも供給能力が不足

しているか、既存事業者が事業地域を譲渡

するかのいずれかが必要

Ministry Regulation (ESDM)

No. 28/2012

出所)各種公開情報、現地インタビュー調査(ESDM)

KIIC において電力販売事業を実施するためには、上記規制に基づき PLN から事業地域

を譲渡してもらう必要がある。上記交渉にあたっては一民間企業のみでは交渉力に欠けるた

め日本企業のインフラ輸出拡大に向けた支援の一環として日本政府としてインドネシアに

政府・PLN に働きかけることも有効な策と考えられる。

また、上記規制により電力販売が困難な場合は、本FSで想定したプロジェクトケースA、

B のように電力は核需要家(中核的な工場)の自家消費分としつつ熱(蒸気・冷水)等を周

辺工場に販売していく事業モデルを推進していく必要がある。インドネシア鉱物資源省への

Page 37: インドネシア共和国における 中小規模分散型発電事 …µ¦水 ・Tarum Barat(ジャアティルフル・ダムからジャカルタ市内へ流れる潅漑水路、

33

インタビューでは、現時点でインドネシアにおいて蒸気等熱の販売を制限する規制はなく熱

を販売していく事業モデルは推進可能な状況にある。

3.2.3.5. 政策支援等の活用見込み

ジャカルタ近郊について、現時点で、工業団地も既に稼働しており、土地取得等の特段の

課題は存在しない。また、本件は規模も大きくないため、環境影響評価等も簡易版ですみ、

地方自治体への報告で済む。

事業モデルに関して、共同自家発電モデルに関する明確な法規制がないため、ノンアクシ

ョンレター発行等の交渉を行うことが必要になる。順調にいけば、民間企業による交渉でも

問題は発生しないことが予想されるが、交渉が長期化したり、明確な回答が得られないよう

な場合は、政府による交渉支援が期待される。

一方、金融支援について、国際協力銀行等の政策金融支援が期待される。本件の場合、直

接的な生産設備ではないため、投資金融が用いにくい。単なる機器調達等に対する融資の輸

出金融では、機器等の購入主体である事業主体のコーポレートの信用リスクを取るバイヤー

ズクレジットが通常のケースである。

国際協力銀行の金利水準は、OECD のガイドラインで、通貨・期間によってベース金利

が決まっている。5 年以内であれば現在ベースが 1.78%でプレミアム+0.5%で計 2.3%程度

の金利になる。期間はバイヤーズクレジットであれば、10-12 年程度が通常になる。

バイヤーズクレジットを行う場合、原則日本からの製品を輸出、若しくは、現地で生産さ

れた日本企業の製品を活用するプロジェクト等が融資対象になる。現地企業の場合、マジョ

リティ、マイノリティに関する明確な基準はないが、実質的な経営関与が必要になる。

一方、プロジェクト規模については、プロジェクトの規模が小さくて融資対象にならない

ということはなく、数十億円でも融資対象にはなることが確認されている。

現時点で、国際協力銀行は、インドネシア現地企業の信用リスクはとらない方針である。

日系企業でも現地法人ではなく、原則親会社の信用リスクをとる。また、複数の案件向けに

融資枠を設定するということも案件次第では可能とのことであった。

現段階で、引き続きプロジェクト総額について調整中であるため、明確に、国際協力銀行

への協力依頼は行っていないが、プロジェクトの細部が固められて以降に、再び国際協力銀

行との融資交渉を行う必要がある。

制度面では、PLN から事業地域を譲渡してもらう必要がある。上記交渉にあたっては一

民間企業のみでは交渉力に欠けるため日本企業のインフラ輸出拡大に向けた支援の一環と

して日本政府としてインドネシアに政府・PLN に働きかけることも有効な策と考えられる。

もしくは、工業団地の自家発電施設の整備について、インドネシア政府はエネルギー消費

量が多い主要な産業に自家発設備設置と利用を義務付け、また、工業団地のデベロッパーが

自家発電設備を整備し工業団地内のテナントに対して電力供給を行うことを義務付ける法

Page 38: インドネシア共和国における 中小規模分散型発電事 …µ¦水 ・Tarum Barat(ジャアティルフル・ダムからジャカルタ市内へ流れる潅漑水路、

34

改正を検討中と情報もある2。このような法改正が導入された場合、既に自家発電設備によ

る電力供給を行っている工業団地以外の工業団地も、分散電源整備を行う必要に迫られる。

この点について、日本政府としても工業団地の電力供給安定化に向けて分散電源整備の必要

性をインドネシア政府に積極的に訴えるとともに、生じる事業機会において日本企業が参入

できるような金融支援策を国際協力銀行等と開発することが考えられる。

2014 年 3 月末時点で、対インド向けには、ローカルバイヤーズクレジットを想定してツ

ーステップローンが国際協力銀行から State Bank of India 向けに提供されている。類似の

スキームをインドネシアの INDONEXIM 等にも提供されることが期待される。

2 Himpunan Kawasan Industri Indonesia (Industrial Estate Association of

Indonesia)Vice Executive Director: Ms. Cherria Supit へのインタビュー(2014 年 3

月 26 日)

Page 39: インドネシア共和国における 中小規模分散型発電事 …µ¦水 ・Tarum Barat(ジャアティルフル・ダムからジャカルタ市内へ流れる潅漑水路、

35

3.2.3.6. 今後のアクションプラン

本年度の FS 結果を踏まえ、関連するステークホルダー(中核的な工場等)と調整の上事

業検討開始に向けた合意を取り付けた上で、詳細な FSを実施し最終的な事業実施の可否を

判断していく必要がある。

図 13 今後のアクションプラン

20132014 2015

上期 下期 上期 下期

1.簡易FSの実施事業計画(素案)の策定

2.ステークホルダー間での事業検討開始に向け合意

5.設備の設計・建設の開始・必要設備の基本設計・ファイナンス手法

6.事業の運営開始

3.詳細FSの実施(工業団地・需要家向け最終提案)

4.ステークホルダー間での事業開始に向けた合意

検討開始に向けた合意

事業開始に向けた合意

Page 40: インドネシア共和国における 中小規模分散型発電事 …µ¦水 ・Tarum Barat(ジャアティルフル・ダムからジャカルタ市内へ流れる潅漑水路、

36

3.3. 東カリマンタン周辺

東カリマンタン州は、カリマンタン島に位置している。東カリマンタンとスラウェシの間

にあるマッカサル海峡は、ロンボク海峡につながる日本にとっても重要なシーレーンに面す

る地域である。大型タンカーをはじめとして日本からの通商にも便利な地域であり、フィリ

ピン等の ASEAN 東部諸国へもアクセスしやすい。

図 14 日本のシーレーン

従来から、石炭、天然ガス、原油の産出で有名な地域である。基本的に、資源の輸出が主

たる産業であり、産業集積も国営肥料会社による天然ガスを活用したガス化学プラントがボ

ンタンに、原油精製の製油所がバリクパパン南部に立地する以外は、内陸から産出する木材

の加工業が立地している程度であった。

しかしながら、インドネシア中央政府の産業政策の影響も受け、現時点で、東カリマンタ

ン州政府から工業団地の開発方針が公表されている。東カリマンタン州では、ジャカルタ近

郊とは異なり、原則的に、州政府が係らない民間単独開発案件は、過去、存在せず、今後も

認めない方針が示されている。

本章では、東カリマンタン州政府の工業団地開発について整理するとともに、その中でも

日本企業にとって有望地域とみられる Kawasan Industri Karianagu (KIK)と Maloy 工業

団地について、より詳細に見ていくものとする。なお、KIK については、既に工業団地向

け小型石炭火力発電所の建設が行われていたため、その概要について報告する。

Page 41: インドネシア共和国における 中小規模分散型発電事 …µ¦水 ・Tarum Barat(ジャアティルフル・ダムからジャカルタ市内へ流れる潅漑水路、

37

3.3.1. 東カリマンタンにおける工業団地開発の現状

東カリマンタン州政府は、現在 7 か所の工業団地整備を計画中である。このうち①の

Kariangau Industrial Zone は既に建設が着手されており、入居も開始されている。②の

Samarinda の工業団地は既存の工業団地を指定したものである。

③の Bontang の Gas, Oil and Condensate Industrial Zone は、Bontang が天然ガスの

輸出積み出し基地であるため、天然ガス等の東カリマンタン州で産出される化石燃料を基に

整備された小規模コンビナートとなっている。なお、このコンビナートには PT Pupuk

Kalimantan Timur(Kaltim)が肥料プラントを建設しており東洋エンジニアリングが受

託者となっている。

④の Maloy industrial Zone は、主にパーム油に関する産業集積が期待されている。パー

ム油原油の積み出し用の港湾整備も計画されている。Maloy には TKEZ と呼ばれる SEZ の

申請が行われており、現在承認待ちの状況である。

⑤は Derawan に計画されているリゾート計画であり、旅行・観光業関連の産業集積が期

待されている。⑥は Bulungan での食品産業の立地が計画されている。⑦はインドネシア

とマレーシアの国境地域の開発計画である。

これらの工業団地計画のうち、いわゆる一般的な製造業が立地することが期待されている

のは①と④である。ただし、①は、国の産業省が整備している工業団地計画リストにリスト

アップされておりマスタープラン整備もされているが、④は東カリマンタン州政府の主導の

計画であり、中央政府は現時点で公式に支援していない。

出所)東カリマンタン州提供資料

図 15 東カリマンタン州の工業団地開発計画

Page 42: インドネシア共和国における 中小規模分散型発電事 …µ¦水 ・Tarum Barat(ジャアティルフル・ダムからジャカルタ市内へ流れる潅漑水路、

38

3.3.2. 主要工業団地概要

3.3.2.1. Kariangau Industrial Zone (Balikpapan)

東カリマンタン州政府が進める Kawasan Industri Kariangau (KIK)は、既に、一期工事

が完了している。2700ha 強のうち残り 300ha になっており、大部分は売り切れている。日

本勢は、コマツと日野自動車が立地している。今後、二期工事は日本勢の参画も可能である。

KIK には、コンテナターミナルが造成されており、ジャカルタ・スラバヤ以外に、バリ

クパパンも、国際貿易に必須な通関業務を始めている。このコンテナ港も第一期分はインド

ネシア政府主導で、インドネシアの企業を中心に開発されたが、既存開発地域の周辺には自

治体留保分の開発余地が残されており、二期工事に日本勢も参画可能である。

工業団地の自家発電施設として Kariangau Power (15MW×2)が建設されている。こ

の運営会社は、PT Bayean Resources という炭鉱会社と州政府との JV となっており、プ

ロフィットシェアが行われている。現時点で整備されている容量は貯炭施設向けであり、今

後、工業団地開発に伴い、順次、発電能力を拡張していく予定である。

出所)東カリマンタン州提供資料

図 16 KARIANGAU INDUSTRIAL ZONE の立地と進出済み日系企業

KIKの開発区域

日野自動車のサービスセンター

コマツの工場

Page 43: インドネシア共和国における 中小規模分散型発電事 …µ¦水 ・Tarum Barat(ジャアティルフル・ダムからジャカルタ市内へ流れる潅漑水路、

39

出所)東カリマンタン州提供資料

図 17 KARIANGAU INDUSTRIAL ZONE のレイアウト

Page 44: インドネシア共和国における 中小規模分散型発電事 …µ¦水 ・Tarum Barat(ジャアティルフル・ダムからジャカルタ市内へ流れる潅漑水路、

40

表 14 KARIANGAU INDUSTRIAL ZONE の入居企業および候補一覧

NO. PERUSAHAAN LUAS

(HA)

INVESTASI

(MILYAR) KEGIATAN

1 PT. DERMAGA KENCANA INDONESIA 120.0 150.0 CPO

2 PT. MEKAR BUMI ANDALAS (WILMAR

NABATI)

50.0 150.0 CPO

3 PT. TUNAS CATUR LESTARI

(WILMAR NABATI)

97.5 50.0 CPO

4 PELABUHAN PETI KEMAS (PT.

KKT)

72.5 1,000.0 PELABUHAN

5 PT. PLN (PERSERO) PLTU 2 X 100MW 58.2 2,500.0 ELEKTRIK

6 PT. FORESTRA HIJAU MANDIRI 118.0 50.0 CHIPMILL

7 PT. KUTAI CHIP MILL 20.0 400.0 CHIPMILL

8 PT. GALANGAN KAPAL BALIKPAPAN 4.0 2.0 GALANGAN

9 PT. DERMAGA PERKASA PRATAMA

(BAYAN GROUP)

400.0

500.0 COAL TERMINAL

10 PT. KALTIM KARIANGAU INDUSTRI

(BAYAN GROUP)

500.0 PERUSAHAN

KAWASAN

11 POWER PLAN (BAYAN GROUP) 2,300.0 ELEKTRIK

12 PT. BALIKPAPAN ENVIROMENT

SERVICE

13.0 5.0 ENVIRONMENTAL

SERVICES

13 PT. PETROSEA 8.9 200.0 OIL TERMINAL

14 PT. DUA-DUA 3.0 5.0 WORKSHOP

15 PT. SEMEN GRESIK 2.0 120.0 PACKING PLANT

16 PT. ARYA CIPTA NUSA INDAH

NUSANTARA 110.0

5.0 GUDANG

17 PT. LOLO MITRA PRATAMA 50.0 GUDANG

18 PT. H & H INTERNASIONAL 18.1 10.0 WORKSHOP

19 PT. BALIKPAPAN OIL TERMINAL 9.0 200.0 OIL TERMINAL

20 PT. SARANA DAYA UTAMA 8.9 15.0 WORKSHOP

Page 45: インドネシア共和国における 中小規模分散型発電事 …µ¦水 ・Tarum Barat(ジャアティルフル・ダムからジャカルタ市内へ流れる潅漑水路、

41

21 PT. ASTIKU SAKTI 20.0 5.0 WORKSHOP

22 PT. CEMINDO 225.0 200.0 PACKING PLANT

23 PT. MANDIRI KARYA PROPINDO 277.0 100.0 WORKSHOP

24 PT. KARIANGAU CITRA RAYA 115.0 100.0 WORKSHOP

25 PT. EDIKA AGUNG MANDIRI 62.9 20.0 WORKSHOP

26 PT. RAPUTRA JAYA 5.0 2.0 WORKSHOP

27 PT. CAKRAWALA BUMI KUTAI

SEJAHTERA

708.0 3,000.0 WORKSHOP

28 PT. KHARISMA ARRAW 7.0 3.0 WORKSHOP,

GUDANG

29 PT. SASMA 1.5 5.0 PELABUHAN

30 PT. ARDENSI TATA PATRA 7.0 3.0 WORKSHOP,

GUDANG

31 PT. ALTRAC 1978 7.5 5.0 WORKSHOP,

GUDANG

32 PT. MERATUS LINE 4.5 1.0 DEPO

KONTAINER

2,429.0 11,656.0

出所)東カリマンタン州提供資料

Page 46: インドネシア共和国における 中小規模分散型発電事 …µ¦水 ・Tarum Barat(ジャアティルフル・ダムからジャカルタ市内へ流れる潅漑水路、

42

KIK に立地するコンテナ港湾は、2008 年から中央政府、州政府および PT. Pelindo に

よって開発が始まった。7140 億ルピア(約 70 億円)が投資されており、2012 年 10 月 24

日に大統領の臨席のもと運営が開始されている。

このコンテナ港湾は、国際通関業務も行われている。ジャカルタ・スラバヤの滞船を考え

ると、輸出入港湾としての魅力および、後背地としての KIK の工業団地の魅力が高まる。

このため、KIK の二期工事の必要性は高く、また、KIK の自家発電施設である Kariyangau

Power の発電能力の拡張も蓋然性が高い。

出所)東カリマンタン州提供資料、写真は野村総合研究所撮影(2014 年 1 月)

図 18 KARIANGAU GENERAL CARGO TERMINAL の概要

Container Yard (CY)/Open Storage

Stage I : 4 Ha, Stage II : 10 Ha

Capacity : ± 250.000 TEUS

Cargo Handling Capacity : 25 Box Container/Crane/Day

will be upgarde to 600.000 TEUS

Page 47: インドネシア共和国における 中小規模分散型発電事 …µ¦水 ・Tarum Barat(ジャアティルフル・ダムからジャカルタ市内へ流れる潅漑水路、

43

KIK 向けの自家発電会社である Kariangau Power は、PT Bayan Resources(炭鉱会社)

と東カリマンタン州政府の JV である。開発会社と州政府がプロフィットシェア契約を締結

することで、工業団地への独占契約を認められた。

PT Bayan Resources(PT Kariangau Power)は、最大 150MW規模で KIK に対する電

力供給を行う。現時点で建設中の発電プラントは 30MW(15MW ×2)であり、発電機メ

ーカーは Ygnis AG 製を採用している。小型石炭火力発電設備のスペックは以下の図の通り

である。

工事の進捗状況として、施工進捗度 90%の段階で EPC コントラクタを解雇し、現在残り

の 10%の工程を PT Kariangau Power とサブコンで協力しながら進めている。稼働開始は

2014 年 4 月の予定であるが、発電プラントの O&M は外部委託する方針だが、まだ委託先

は決まっていない。

出所)Kariangau Power 提供

図 19 KARIANGAU POWER のスペック

Page 48: インドネシア共和国における 中小規模分散型発電事 …µ¦水 ・Tarum Barat(ジャアティルフル・ダムからジャカルタ市内へ流れる潅漑水路、

44

3.3.2.2. Maloy Industrial Zone (East Kutai)

Maloy Industrrial Zone は、東カリマンタン北部の Maloy 周辺で州政府が開発を計画し

ている複合工業団地計画である。 MALOY 経済特区(SEZ)のマスタープランは以下の図

の通りである。

主に、パーム油関連の産業の集積を想定している。道路・港湾・水処理関連設備等のサポ

ートインフラは以下の通りである。

Maloy International Port (建設中)

Maloy International Port Terminal (完工)

Road Improvement Bontang - Sangatta - Maloy

Road Improvement Talisayan – Batu Lepok – Sangkulirang

Road Improvement Sp.Perdau – Maloy

Access Road toward Maloy Industrial Zone (建設中)

Maloy Industrial Inner Road (建設中)

Aji Tullur Jejangkat Bridge (建設中)

Water Supply (完工) dan Water Treatment (建設中) Infrastructure

なお、水処理について、パーム油関連の単一産業立地を想定しているため、立地企業によ

る一次処理は行わず、排水を集約して集中排水処理を行う予定である。汚水処理施設につい

て、日本側への参画要請があった。

Cluster Area Planning Stage Infrastructure Stage Industrial Stage

Oleochemical 5.305 Ha 2009 – 2012 2011 – 2014 2013 – 2033

Coal Based Mineral 26,500 Ha 2012 – 2013 2013 – 2015 2014 – 2054

Chemical 1.000 Ha 2012 – 2013 2013 – 2015 2014 – 2024

出所)東カリマンタン州提供資料

図 20 MALOY のマスタープランと開発スケジュール

Page 49: インドネシア共和国における 中小規模分散型発電事 …µ¦水 ・Tarum Barat(ジャアティルフル・ダムからジャカルタ市内へ流れる潅漑水路、

45

現時点で、Maloy に立地が期待されている企業は以下の通りである。なお、東カリマン

タン州には今回のような大型開発をマネジメントできるデベロッパーがいないため、開発デ

ベロッパーとして Sinar Mas が期待されている。

出所)東カリマンタン州提供資料

図 21 MALOY に立地が期待される企業

1). PT. SWAKARSA SINAR SENTOSAOffice: JL. Ir. Haji Juanda III, No.24,Jakarta Pusat

2). PT. SINAR MAS GROUPOffice: Plaza Simas Gedung I Jl. KH Fachrudin No.18 Jakarta 10250, Indonesia

3). PT. ASTRA AGRO LESTARIOffice: Jl.Pulo Ayang raya,Blok OR Kav.1 Kaw. industri Pulogadung Jakarta

4). PT. TELADAN/ TELEN GROUPOffice: Jl.Tomang Raya No.47ABC Jakarta Barat 11440

5). PT. GUNTA SAMBA GROUPOffice: Komp. Perkantoran Duta Merlin Blok. B No. 22-23, , Jakarta 10130

6). PT. BIMA PALMA NUGRAHAOffice: Jl. Warung buncit raya 49, Jakarta 12470 indonesia

7). PT. REA KALTIMOffice: Jl.Imam Bonjol, No.32, Samarinda 75113, Kaltim

8). PTPN XIIIOffice: Jl.Let.Jen.Sutoyo No.19 Pontianak, Kalimantan Barat

9). PT. GRAHA INTI JAYAOffice: MGK Kemayoran, Office Tower B, lantai 8 Blok C & D. Jakarta

10). PT. WILMAR GROUPOffice: B & G Tower Lt. 9Jl. Putri Hijau No. 10 Medan

11). PT. MUSIM MAS GROUPOffice: JL. KL. Yos sudarso KM 7,8 Tanjung Mulia – Medan 20242

12). PT. PERMATA HIJAU GROUPOffice: Jalan iskandar muda No.17 Medan Sumut, indonesia 20154

13). PT. FANGIONO AGRO PLANTATIONOffice: Jl. Jend Sudirman Blok A No 12Balikpapan

14). PT. BAKRIE POWEROffice: Wisma Bakrie 1Jalan HR. Rasuna Said, Jakarta

Page 50: インドネシア共和国における 中小規模分散型発電事 …µ¦水 ・Tarum Barat(ジャアティルフル・ダムからジャカルタ市内へ流れる潅漑水路、

46

Maloy SEZ の開発に必要な高規格(重量車両が通行可能な)接続道路の建設は始まって

いる。Sangatta から伸びる既存の幹線道路から内陸部を通過して Maloy 地区で海岸部にで

るルートである。

Long Distance: 17,3 Km

Cost Allocation : APBN-P 2012 (SAL)

Total Investment : Rp. 258.000.000.000(約 25 億円)

Road Type : Rigid Pavement

出所)東カリマンタン州提供資料

図 22 MALOY SEZ の開発に必要な高規格(重量車両が通行可能な)接続道路の開発

Page 51: インドネシア共和国における 中小規模分散型発電事 …µ¦水 ・Tarum Barat(ジャアティルフル・ダムからジャカルタ市内へ流れる潅漑水路、

47

出所)東カリマンタン州提供資料

図 23 MALOY SEZ の開発に必要な高規格(重量車両が通行可能な)接続道路の建設の様子

Page 52: インドネシア共和国における 中小規模分散型発電事 …µ¦水 ・Tarum Barat(ジャアティルフル・ダムからジャカルタ市内へ流れる潅漑水路、

48

さらに、パーム油コンビナート向けの取り付け道路の建設も始まっている。2012 年、2013

年で既に 1300 億ルピア(約 13 億円)が投資されている。2012 年時点で、A 線の整地が

6.24 ㎞、舗装が 1.24 ㎞×7m、2013 年時点で B 線、C 線の整地が行われ、2014 年には、B

線、C 線の整地の完了と舗装が開始される予定である。

Long Distance : 11,44 Km

Divided into 3 lines :

Line A : 6,24 Km (row wide 47 m)

Line B : 2,33 Km(row wide 40 m)

Line C : 2,87 Km (row wide 26 m)

出所)東カリマンタン州提供資料

図 24 MALOY SEZ の開発に必要な高規格(重量車両が通行可能な)接続道路との接続道路の

建設の様子

= Accsess Road Into Industrial Zone

= Maloy Inner Road

Page 53: インドネシア共和国における 中小規模分散型発電事 …µ¦水 ・Tarum Barat(ジャアティルフル・ダムからジャカルタ市内へ流れる潅漑水路、

49

また、パーム油コンビナートには、未精製パーム油(Crude Palm Oil (CPO)の国際港湾

(積出港)が建設中である。

Location : Industrial Zon (1.000 Acre)

Trestle : 1,5 Km from beachline

Draft : 15 – 20 meters

Number of Berth : 2 (two)

Capacity : up to 100.000 DWT

Investment : Rp. 254 Miliar

出所)東カリマンタン州提供資料

図 25 MALOY SEZ のパームクルードオイル(PCO)輸出港湾整備イメージ

Page 54: インドネシア共和国における 中小規模分散型発電事 …µ¦水 ・Tarum Barat(ジャアティルフル・ダムからジャカルタ市内へ流れる潅漑水路、

50

3.4. 派生プロジェクト

本調査に付随して、幾つかの分散電源開発機会が確認された

第一に、既存 PLN の入札案件や IPP 案件で、当初想定していた応札者が応札しなくなっ

た案件である。現在東カリマンタン州では、軽油によるディーゼル発電所が多く、天然ガス、

石炭に燃料転換を考えている。現在、東カリマンタンで日本企業が参画できそうな IPP 調

達案件は 2 件ある。燃料は確保できているもののオペレータが未定(入札関連資料はジャ

カルタの PLN 本社への問い合わせ必要)となっている。

Kaltim-2 (200MW: 2017 年稼働予定、Sangata の石炭火力発電所)

Kaltim Peaker-1 (50MW×2: 2015 年、2016 年稼働予定、ガスは PLN が

Pertamina から購入して Bontang から調達する計画)

第二に、Pertamina の製油所むけコジェネレーションシステムである。

BPPT(Energy resources development technology:Ministry of Research and

Technologyの管轄下)は、Pertamina の Balikpapan の製油所向けのコジェレーションシ

ステム(ガス・タービン)の FSを行った。FS の結果、IRR が 30%実現できるという結果

が出たため、Pertamina から次フェーズ予算が拠出された。次は Field Engineering にな

るが、コジェネレーションシステムの具体的な製品データがないと、タービンの規模等を決

定するのが難しい。現在、パートナーとなるコジェネレーション・メーカーを探していると

ころである。本案件の事業主体は Pertamina であり、Pertamina 向けに各種製品、EPC を

提供していく体制を検討する必要がある。現段階ではT社インドネシア中心に、日系重電メ

ーカー(K社、M 社等)、エンジニアリング会社等と案件提案に向けて調整を進める可能

性がある。

現時点で、40MW/蒸気量 250tの規模が検討されており、全部で 9 つの製油所への導入が

検討されている。