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小学校

小学校 - Tochigi Prefecture...小学校 理 論 編 1 評価タ目的(P1) 2 ェポヾペタ評価タ基本的セ考ん方(P1) 3 指導要録ゼヽゥボ評価わ評定タ基本的セ考ん方(P6)

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小学校

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は じ め に

この4月から、小・中学校におきましては、新しい学習指導要領に基づく教育が実施

されております。各学校におかれましては、これまで2年間の移行期間に、新学習指導

要領の趣旨に沿った教育の実現に向け、各種教育計画の作成や総合的な学習の時間の実

施など、様々な準備に取り組んでこられたことと思います。

去る平成12年12月に出されました教育課程審議会答申「児童生徒の学習と教育課

程の実施状況の評価の在り方について」において、指導と評価の一体化の重要性など、

これからの評価の基本的な考え方が具体的に示されました。これを受けて、国において

も、平成14年4月27日付初等中等教育局長通知の中で、指導要録を作成する際の「参

考となる考え方」として、これまでの観点別学習状況の評価に加え、評定についても目

標に準拠した評価とすることを示しております。

このように、新しい教育課程における評価観が明確になったことにより、各学校には、

児童生徒の学習状況評価の客観性・信頼性をより一層高めていくことが、これまで以上

に強く求められることになります。

また、平成13年秋に実施した調査によれば、評価について、多くの学校が「適切な

評価規準の設定やその評価方法」「評価の客観性・信頼性の確保」など、目標に準拠し

た評価である観点別学習状況評価の実施について、いくつかの不安を抱えていることが

明らかになりました。

県教育委員会では、これら国の動向や各学校の実態等を踏まえ、これからの評価の基

本的な考え方や新学習指導要領に示された目標の実現状況を適切に評価するための具体

的方策について、平成13年度中に研究を進め、去る平成14年2月にはその中間まと

めを示し、各学校の代表者を招集して研修会を開催したところです。

その後公表された国立教育政策研究所教育課程研究センターの「評価規準、評価方法

等の研究開発(報告)」とともに、市町村教育委員会、学校関係者等からいただいた様

々な御意見等を参考にしながら、改善を加えた上でここに本資料を配布するに至りまし

た。

各学校におかれましては、本資料を基にこれまでの評価への取組を学校全体で十分に

見直し、より適切な評価が行われ、指導に生かすことができますようお願いいたします。

平成14年5月

栃木県教育委員会事務局務教育課長

新 沼 隆 三

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目 次はじめに

【理論編】

1章 評価の目的 1p~

2章 これからの評価の基本的な考え方 1p~

(1) 学力と評価

(2) 目標に準拠した評価及び個人内評価の重視

(3) 指導と評価の一体化、評価の信頼性

(4) 評価方法の工夫改善

(5) 学校全体としての評価の取組

3章 指導要録における評価・評定の基本的な考え方 6p~

(1) 基本的な考え方

(2) 指導要録における評価

(3) 評定

4章 観点別学習状況の評価の手順と方法 8p~

(1) 観点別学習状況の評価の一般的手順

(2) 単元(題材等)の目標の分析と観点別評価規準の設定

(3) 単元(題材等)の指導計画と評価計画の検討

(4) 学習活動ごとの「具体の評価規準」の設定と評価場面・方法の検討

(5) 十分満足できると判断される状況

(6) 評価結果の累積

5章 学期末・学年末の評価と評定 16p~

(1) 基本的な考え方

(2) 学習活動ごとの「具体の評価規準」を総括する方法

(3) 「学習のまとまり」ごとの「総括的な評価規準」による評価方法

6章 総合的な学習の時間の評価 21p~

(1) 基本的な考え方

(2) 評価計画作成の手順

(3) 評価の観点の設定

(4) 評価方法の工夫

7章 評価に関する留意事項 25p~

(1) 個人内評価の重視

(2) 自己評価の活用

【教科編】 28p~

1 教科目標

2 評価の観点及びその趣旨の理解

3 単元の評価計画作成手順と考え方

4 評価の実際

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小学校

理 論 編

1 評 価の目的 ( P 1 )

2 こ れ か らの評価の基本的な考え方 ( P 1 )

3 指 導要録にお け る 評価 ・ 評定の基本的な考え方 ( P 6 )

4 観 点別学習状況の評価の手順 と方法 ( P 8 )

5 学 期末 ・ 学 年末の評価 と評定 ( P 16)

6 総 合的 な学習の時間の評価 ( P 21)

7 評 価 に関す る 留意事項 ( P 25)

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1章 評価の目的

教育課程審議会答申「児童生徒の学習と教育課程の実施状況の評価の在り方について」

によれば、評価の機能について次のように示している。

学校が児童生徒の学習状況等の評価を行うことは、公の教育機関である学校の基

本的な責務である。評価の機能は、各学年、各学校段階等の教育目標を実現するた

めの教育の実践に役立つようにすること及び児童生徒のよさや可能性を評価し、豊

かな自己実現に役立つようにすることであり、学校教育における評価の役割は重要

である。

学 習 の 評 価 学習の評価は、教育がその目標に照らしてどのように行われ、児童がそ

は、児童のよ の目標の実現に向けてどのように変容しているのかを明らかにし、また、

りよい成長を どのような点でつまずき、それを改善するためにはどのように支援してい

助長するため けばよいかを明らかにしようとするものであり、教育改善の方法とも言う

の も の で あ べきものである。

り、教育自体 新学習指導要領においては、内容の3割削減の下で、基礎的・基本的な

を改善するた 内容の確実な定着と自ら学び自ら考える力などのいわゆる[生きる力]の

めに必要なも 育成が求められている。教師は、児童に、こうした基礎的・基本的な内容

のである。 や[生きる力]を確実に身に付けさせる指導を充実させることはもちろん

であるが、その指導によって、本当にそれらの能力が児童に身に付いてい

るのかを正しく評価し、もし、身に付いていなければ新たな指導の手だて

を講じて、確実にそれらを身に付けさせるようにしなければならない。さ

らに、その評価を通して、自らの指導に対して改善を加え、一層適切な指

導を実施する必要がある。

また、児童は、評価を通して、自分のよい点を理解しそれらを一層伸ば

していったり、自分の学習状況の問題点や課題に気付き、その改善を図っ

たりすることができる。

つまり、評価とは、児童のよりよい成長を助長するためのものであると

同時に、学校や教員が進める教育自体を改善するためのものであるとも言

うことができるのである。このようなことから、指導と評価は表裏一体を

なすのもであり、学校においては、学習指導と評価が常に一体となって行

われることが求められるとともに、評価についての深い理解が求められる

のである。

2章 これからの評価の基本的な考え方

学習の評価を適切に行う上では、まず、評価の基本的な考え方を理解することが重要で

ある。ここでは、前出、教育課程審議会答申に示された評価の基本的な考え方について述

べる。

[理論編]

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(1) 学力と評価

(1) 学力については、知識の量のみでとらえるのではなく、学習指導要領に示す基

礎的・基本的な内容を確実に身に付けることはもとより、それにとどまることな

く、自ら学び自ら考える力などの[生きる力]がはぐくまれているかどうかによ

ってとらえる必要がある。

知識や技能を 新学習指導要領は、完全学校週5日制の下、教育内容を厳選し、ゆとり

中心とする学 の中で学習指導要領に示す基礎・基本を確実に身に付け、[生きる力]を

力観で学力を 育成することを基本的なねらいとしている。

とらえること 平成元年度版学習指導要領においても、知識や技能だけでなく、自ら学

なく、学習指 ぶ意欲や思考力、判断力、表現力などの資質や能力などまで含めて学力と

導要領に示さ とらえているが、新学習指導要領では、こうした学力のとらえ方を一層深

れた目標及び め、学力の質の向上を図ることをねらいとしている。

内容すべてを 「学習指導要領に示す基礎的・基本的な内容」とは、知識や技能だけで

学力としてと はなく、自ら学ぶ意欲や思考力、判断力、表現力など各教科等の学習指導

らえることが 要領に示された目標及び内容全体を表す。目標には育成を目指す様々な資

大切である。 質や能力が、また、内容には習得すべき知識や技能が具体的に示されてい

ることから、多様な学習活動を通して、知識や技能のみならず様々な資質

や能力の育成を図ることが重要である。

さらに、よりよく問題を解決する資質や能力、豊かな人間性、たくまし

く生きるための健康や体力などいわゆる[生きる力]を育成することが重

視されていることから、各学校においては、どのようにこの[生きる力]

を育成していくのか、その指導内容や指導方法を十分検討するとともに、

[生きる力]を適切に評価できるよう、工夫することが必要である。

(2) 目標に準拠した評価及び個人内評価の重視

(2) これからの評価においては、観点別学習状況の評価を基本とした現行の評価方

法を発展させ、目標に準拠した評価(いわゆる絶対評価)を一層重視するととも

に、児童生徒のよい点や可能性、進歩の状況などを評価するため、個人内評価を

工夫すること。

これからの評 新学習指導要領では、自ら学び自ら考える力などの[生きる力]をはぐ

価 に お い て くむことを目指し、学習指導要領に示された基礎的・基本的な内容の確実

は、絶対評価 な定着を図ることを重視していることから、学習指導要領に示す目標に照

を一層重視す らして、それがどのように達成されているのかその実現状況を見る評価(い

る。また、個 わゆる絶対評価)を一層重視する必要がある。

人内評価を工 この目標に準拠した評価では、目標を幾つかの観点に分析して、その観

夫することが 点ごとに目標に照らして、その実現状況を評価していく観点別学習状況の

重要である。 評価を行う。観点については、これまでの指導要録に示された評価の観点

を基本とすることが示されている。評価に当たっては、この観点の趣旨を

[理論編]

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[理論編]

十分に理解し、目標に示された内容の何を評価するのかを明確にしておく

ことが大切である。

個人内評価で また、これからの学習においては、課題を発見する能力や自ら学び自ら

は、児童のよ 考える力、よりよく問題を解決する能力などの育成や児童の興味・関心、

い 点 や 可 能 進路、習熟度など個に応じた指導の推進が一層重要となる。こうした能力

性、進歩の状 や個性を伸長させるためには、児童一人一人のよい点や可能性、進歩の状

況などを適切 況などを適切にとらえ(いわゆる個人内評価)、児童の進歩をさらに促し

にとらえる たり、努力を要する点を伝えたりするなどの指導・支援が必要である。そ

ことが重要で のためにも、各学校においては、児童の個人内評価を一層工夫する必要が

ある。 ある。

さらに、集団の中での相対的な位置付けに関する情報も、自分の適性を

知る手がかりとなるものであり、児童は、これにより、自分の目標を定め

相対評価は、 て学習に取り組む動機付けを得たり、将来の進路を考えていく際の情報と

目的に応じて して活用したりすることができる。したがって、集団に準拠した評価(い

生かすように わゆる相対的評価)も、児童の発達段階などに配慮した上で、目的に応じ

する。 て指導に生かすようにする。

(3) 指導と評価の一体化、評価の信頼性

(3) 学校の教育活動は、計画、実践、評価という一連の活動が繰り返されながら展

開されるものであり、指導と評価の一体化を図るとともに、学習指導の過程にお

ける評価の工夫を進めることが重要である。また、評価が児童生徒の学習の改善

に生かされるよう、日常的に児童生徒や保護者に学習の評価を十分に説明してい

くことが大切である。

指導に生かす 学校の教育活動は、指導計画の作成、指導の実践、指導に対する評価と

評価を充実さ いう一連の活動が繰り返されながら、児童のよりよい成長を目指した指導

せることが重 が展開されていく。すなわち、指導と評価とは別物でなく、評価の結果に

要であり、そ よって後の指導を改善し、さらに新しい指導の成果を再度評価するという、

のためには 指導に生かす評価を充実させることが重要である(いわゆる指導と評価の

学習指導の過 一体化)。

程における評 具体的には、児童の学習状況を授業の中で記録し、後で活用するという

価を重視しな だけではなく、指導に対する児童の学習状況を、設定した評価規準によっ

ければならな て判断し、「努力を要すると判断される状況」の児童に対して適切な指導

い。 (支援)を加え、「おおむね満足できると判断される状況」に引き上げる

こと、また、「おおむね満足できると判断される状況」の児童を「十分満

足できると判断される状況」まで伸ばしていく指導(支援)をすることで

ある。このように評価を教師の指導(支援)に機能させることが大切であ

る。

指導と評価を一体化させるためには、学習指導の過程において目標に対

する児童の実現状況を常に評価しながら、指導を進めることが重要である。

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[理論編]

その際、目標と指導が遊離していたのでは、指導と評価の一体化の意味は

なくなってしまう。目標に応じた適切な指導があってはじめて、評価が指

導に生かされるのである。また、評価は、児童にとって、自らの学習状況

に気づき、自分を見つめ直すきっかけとなり、その後の学習や発達を促す

ものであり、教師にとっても、自らの指導を改善し、指導の質を高めてい

くものであることから、より適切な評価を実施することが重要である。

評価が児童の学習の改善に生かされるようにするためには、学習の評価

を、日常的に、通信簿や面談などを通じて、児童や保護者に十分説明し、

学習の評価を児童や保護者と共有していくことが大切である。その際、学

習の結果としての評価の情報だけでなく、どのような内容を、どのような

目標で、どのように指導し、どのような観点や規準で評価するのか、また、

それらをどのような方法で評価するのかといった学校としての指導と評価

の考え方や方針をあらかじめ児童や保護者に示し、理解してもらうことが

重要である。学習の評価は、学校の教師のみが行うものではない。児童の

評価の信頼性 自己評価や保護者による評価もきわめて重要なものである。したがって、

をもたせるた 評価が、教師から児童、保護者への一方向の情報でなく、家庭と学校との

めには、学校 双方向の情報となるような手だてを講じることにより、児童の学習の一層

が、児童や保 の改善を図っていく必要がある。

護 者 に 対 し また、評価には、信頼性が求められるが、単に数値化したデータだけが

て、評価につ 信頼性の根拠になるものではない。評価は、評価の目的に応じて、評価す

いての考え方 る人、評価される人、それを利用する人が、お互いにおおむね妥当である

を示し理解し と判断できることが信頼性の根拠として意味をもつのである。その意味で

てもらうこと も評価規準や評価方法等に関する情報が児童や保護者に適切に提供され、

が重要であ 共通に理解されていることが重要である。

る。

(4) 評価方法の工夫改善

(4) 評価に当たっては、教育活動の特質や評価の目的等に応じ、評価の方法、場面、

時期などを工夫し、児童生徒の成長の状況を総合的に評価することが重要である。

評価に当たっ [生きる力]を育成する新学習指導要領の下での評価においては、児童

ては、教育活 の学習状況を単一の時期や方法によって評価するのではなく、各教科、道

動の特質や評 徳、特別活動及び総合的な学習の時間のそれぞれの教育活動の特質や評価

価の目的に応 の目標に応じ、評価方法、評価の場面や時期などについて適切な方法を工

じて、多様な 夫し、それらの積み重ねによって児童の成長の状況を総合的に評価するこ

方法を工夫し とが一層重要である。

継続的・総合 そのためには次のような点に留意する必要がある。

的に評価する ① 評価を、学習の指導の改善に役立たせる観点から、総括的な評価のみ

ことが重要で ではなく、学習過程に応じた分析的な評価、学習状況を具体的に示す記

ある。 述的な評価を工夫する。

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[理論編]

② 評価を行う場面としては、学習後の評価のみならず、学習の前や学習

の過程における評価を工夫する。

③ 評価の時期としては、学期末や学年末だけでなく、目的に応じ、単元

ごと、時間ごとなどにおける評価を工夫する。

④ 具体的な評価の方法としては、ペーパーテストのほか、観察、面接、

質問紙、作品分析、発言分析、ノート、レポートなど多様な方法を学習

[生きる力] 内容や評価の観点によって使い分ける。また、単一の方法に限ることな

の育成におい く複数の方法を組み合わせて評価するなどの工夫が必要である。

ては、児童の また、自ら学び自ら考える力などいわゆる[生きる力]を育成する上で

自己評価能力 は、児童が自分自身を評価する自己評価能力の育成が重要である。自己評

の育成が重要 価は、自己の能力や適性などを自分で確認し、将来を展望できるようにす

であり、学習 るためにも大切であり、児童の[生きる力]を育てる活動そのものである

過程において と言える。したがって、学習過程において自己評価の機会を意図的・計画

自己評価の機 的に位置付ける必要がある。

会を意図的・ さらに、学習活動の特質に応じ、学習の過程における児童のレポートや

計画的に位置 作品など具体的な事例を保存し、学習の進め方などの指導に役立てる評価

付ける必要が (ポートフォリオ)も有効であると考えられ、今後さらに多様な方法を活

ある。 用した評価が必要である。

(5) 学校全体としての評価の取組

(5) 評価活動を充実するためには、各学校において、評価の方針、方法、体制など

について、校長のリーダーシップの下、教員間の共通理解を図り、一体となって

取り組むことが不可欠である。また、各教員が、評価についての専門的力量を高

めるため、自己研鑽に努めたり、校内研究・研修を実施することが重要である。

評価活動を充 評価活動を充実させるためには、各学校において、評価の方針、方法、

実させるため 体制などについて、校長のリーダーシップの下で、教員間の共通理解を図

には、校長の り、一体となって取り組むことが不可欠である。また、各教員が評価につ

リーダーシッ いての専門的な力量を高めることが大切で、そのためには自己研鑽に努め、

プの下、校内 校内研究・研修を適時実施することが大切である。

研究や研修を 新学習指導要領では、総合的な学習の時間の創設や選択学習の幅の拡大

充実させ、各 が図られるとともに、学習内容の習熟の程度に応じた指導やティーム・テ

教員が評価に ィーチング、合同授業、個に応じた指導の充実のための多様な学習形態、

ついての専門 指導体制が一層取り入れられることも踏まえ、複数の教員で協力して評価

的な力量を一 を行うなど、多角的・多面的な評価を行うことが求められる。

層高める必要 教員が評価についての考え方を深め、評価方法を改善したり、その結果

がある。 を指導に生かしたりするためには、校内研究・研修を通して評価について

の力量を高めることが必要である。とりわけ、評価方法の中でも、教員に

よる観察は重要な意味をもつものであり、そのためにも校内研究・研修の

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[理論編]

在り方を一層工夫し、学校全体としての評価の力量を高めることが重要で

ある。

3章 指導要録における評価・評定の基本的な考え方

教育課程審議会答申の指導要録改善の基本方針によれば、新しい学習指導要領の下での

小・中学校の指導要録について、現行の様式を基本的に維持した上で、次のような改善を

図ると述べている。(詳細は、県教委刊行 H13.9「小学校児童指導要録・中学校生徒指導

要録の手引」参照)

学習指導要領に示す基礎的・基本的な内容の確実な習得を図るなどの観点から、

学習指導要領に示す目標を実現しているかどうかの評価を重視し、現在いわゆる絶

対評価を加味した相対評価をすることと示されている各教科の評定を、目標に準拠

した評価(いわゆる絶対評価)に改めること。

(1) 基本的な考え方

指導要録は、児童の学籍並びに各教科等の指導の過程及び結果の要約を

記録する公簿であり、教師の指導に役立てたり、外部に対して証明等を行

ったりする場合の原簿である。教師は、年度末において児童の年間におけ

る学習の記録を基に、各教科の目標に照らしてその実現状況を適切に評価

し、その結果を指導要録に記録しなければならない。そのためには、日々

の評価の積み重ねが大切であり、児童の活動の様子や発言内容、思考過程

の変容、知識・技能の深まりの程度などを評価補助簿等に記録しておき、

それらを総合的に判断して評価を行う必要がある。

また、評価においては評価の客観性・信頼性が重要であり、各学校にお

いては、これからの評価の考え方を十分に理解し、適切な評価が実施でき

るよう研究を深めなければならない。

目標に準拠し 平成元年改訂による指導要録においては、目標に準拠した評価である観

た評価である 点別学習状況の評価を基本とすることとし、それまでの相対評価である評

観点別学習状 定を主体とした評価から目標に準拠した評価への転換が図られた。また、

況の評価を基 評定は観点別学習状況の評価を補完するものとして、目標に準拠した評価

本 と す る こ を加味しつつ、集団に準拠した評価を行うものとしていた。

と。評定も目 今回の指導要録においては、目標に準拠した評価を一層重視し、平成3

標に準拠した 年版の指導要録の考え方を更に発展させ、評定についても目標に準拠した

評価とするこ 評価に改め、学習指導要領に示す目標が実現されたのかどうかを客観的に

と。 評価していくことになった。答申では、目標に準拠した評価に改めた理由

を次の5点から説明している。

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[理論編]

① 新しい学習指導要領の下では、自ら学び、自ら考えよりよく問題を

解決する資質や能力などの評価を重視することが必要であり、児童生

徒一人一人の進歩の状況や教科の目標の実現状況を的確に把握し、学

習指導の改善に生かすことが一層重要であるが、そのためには、目標

に準拠した評価が適当であること。

② 新学習指導要領では、教育内容を厳選し、基礎・基本の確実な定着

を図ることを重視していることから、学習指導要領に示す内容を確実

に習得したかどうかの評価を一層徹底することが必要であり、そのた

めには、目標に準拠した評価が優れていること。

③ 初等中等教育における各学校段階において、児童がその学校段階の

目標を実現しているかを評価することは、上級の学校段階の教育との

円滑な接続に資する観点から重要となっており、そのためには目標に

準拠した評価を適切に行うことが必要となっていること。

④ 新学習指導要領においては、児童の学習の習熟の程度に応じた指導

など個に応じた指導を一層重視しており、学習集団の編成も多様とな

ることが考えられるため、指導に生きる評価を行っていくためには、

目標に準拠した評価を常に行うことが重要となること。

⑤ 今日、少子化等により、かなり広範囲の学校で、学年、学級の児童

数が減少してきており、評価の客観性や信頼性を確保する上でも、集

団に準拠した評価によるよりも、目標に準拠した評価の客観性を高め

る努力をし、それへの転換を図ることが必要となっていること。

(2) 指導要録における評価

指導要録にお 指導要録における評価については、目標に準拠した評価である観点別学

ける評価につ 習状況の評価を基本として、評価の観点ごとに実現の状況を「十分満足で

いては、評価 きると判断されるもの」「おおむね満足できると判断されるもの」「努力

の観点ごとに を要すると判断されるもの」の3段階で評価する。

実現の状況を 各観点の評価に当たっては、各時間における児童の学習状況や目標の実

3段階で評価 現状況を評価補助簿に記録し、蓄積されたそれらの資料を十分に分析して

する。 総括的に評価を行うことが大切である。総括の時期については、単元や題

材の終了時や学期末、学年末などが考えられるが、評価情報を児童の学習

に生かすことを考えれば、単元や題材ごとで総括し、児童に返すことが有

効である。

したがって、教師は、各時間の指導において指導と評価を一体化させる

とともに、総括のための評価資料の蓄積についても工夫しなければならな

い。特に情意面の評価については、普段の学習状況や発言内容などを適宜

記録しておくことが大切である。また、思考力や表現力、技能などの評価

については、作業用紙やワークシート、レポートなど記録として残る資料

から目標の実現状況を分析したり、テスト問題を観点別に作成したりする

などの方法を検討する必要がある。さらに、こうした評価の記録を適切に

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[理論編]

行うためには、単元や題材ごとに各観点の評価規準を明確にした評価補助

簿を作成して、評価資料の蓄積に努めなければならない。

(3) 評定

評定について また、評定については、平成3年版指導要録と同様に、小学校第3学年

は、小学校第 以上においては3段階、中学校の必修教科においては5段階で行われる。

3学年以上に 小学校の3段階の表示は、小学校学習指導要領に示す目標に照らして、

おいては3段 次のように示す。

階、中学校の

必修教科にお 「十分満足できると判断されるもの」を3

いては5段階 「おおむね満足できると判断されるもの」を2

で行われる。 「努力を要すると判断されるもの」を1

中学校の5段階の表示は、中学校学習指導要領に示す目標に照らして、

次のように示す。

「十分満足できると判断されるもののうち特に高い程度のもの」を5

「十分満足できると判断されるもの」を4

「おおむね満足できると判断されるもの」を3

「努力を要すると判断されるもの」を2

「一層努力を要すると判断されるもの」を1

なお、小学校第1・2学年については、既に評定を行わない評価が定着

していること、身に付ける内容等が基本的なものであることなどから、こ

れまで同様、評定を行わないことが示された。中学校の選択教科において

は、各学校で定める観点による観点別目標に準拠した3段階の評価を総括

して、3段階の評定を行う。

4章 観点別学習状況の評価の手順と方法

前述したように、これからの学習指導においては、「指導と評価の一体化」と「評価・

評定の客観性や信頼性」を一層重視する必要がある。これらを実現していくためには、目

標に準拠した評価である観点別学習状況の評価を適切に実施していくことが重要である。

本章では、観点別学習状況の評価を適切に実施するために、どのような手だてを講じる必

要があるのかについて述べる。

(1) 観点別学習状況の評価の一般的手順

次の図は、観点別学習状況の評価の一般的手順を示したものである。

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[理論編]

〈指導計画〉 〈評価計画〉

○教科目標の分析 ○評価の観点及びその趣旨の明確化

○学年(分野、領域等)目標の分析 ○学年(分野、領域等)の評価の観点

○単元等の目標・内容の検討 の趣旨の明確化

○教科書の内容の検討 ○単元等の評価規準の検討

単元等の指導計画の作成 単元等の評価計画の作成

①単元等の目標の設定 ①単元等の観点別評価規準の設定

②学習活動ごとのねらいの設定 ②学習活動ごとの具体の評価規準の

③具体的活動・内容の検討 設定

④指導上の留意点の検討 ③評価場面・方法の具体化

④十分満足と判断する状況の設定

○指導へのフィードバック 授業の実践 ○評価・評価資料の収集

(指導と評価の一体化)

○個々の実現状況の確認 単元の総括的評価 ○単元ごとの集計と判定

○指導結果の反省と指導

方法の改善

○個々の実現状況の確認 学期末の総括的評価 ○学期ごとの集計と総合判定

と指導方針の決定 ○評定、所見への活用

○指導結果の反省と指導 ○通信簿への記載

方法の改善

○個々の実現状況の確認 年度末の総括的評価 ○年度末の総合評定

と指導方針の決定 ○評定、所見への活用

○指導結果の反省と指導 ○指導要録への記載

方法の改善 ○評価規準の妥当性について

○年間指導計画の再検討 の検討

図 観点別学習状況の評価の一般的手順

観点別学習状 観点別学習状況の評価を適切に行うためには、まず、学習指導要領に基

況の評価を適 づいた適切な指導計画の作成が前提となる。先に述べたように、学習指導

切に行うため 要領に示された目標や内容から遊離した指導が行われていたのでは、指導

には、適切な と評価の一体化は意味をなさないものになってしまう。

指導計画の作 評価計画は、指導計画と同時に作成されることが望ましい。なぜなら、

成が必要であ 学習指導要領に示された目標をどのようにして達成を図るかという指導の

る。 側面と、それらが達成されたのかどうかという児童の学習状況をどのよう

に見取るかという評価の側面の二面から学習指導を検討することが指導と

「評価の観点 評価の一体化という点からも重要であるからである。

及 び そ の 趣 ア 「評価の観点及びその趣旨」の理解

旨」を十分に 評価計画を作成するにおいては、「指導要録の改善等について(通知)」

理解する必要 により示された教科や学年(分野、領域等)ごとの「評価の観点及びそ

がある。 の趣旨」を十分に理解する必要がある。評価の観点は、各教科の目標か

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[理論編]

ら導き出された各教科の指導の観点でもあり、これらの観点から教育内

容を見据えたものがその教科の基礎・基本である。したがって、教師が

何を指導し、何を評価するのかを明確にする上で、この評価の観点の趣

旨を理解することが重要である。

イ 単元(題材等)レベルでの評価計画の作成

単元(題材等) 評価を具体的なものにするためには、単元(題材等)レベルでの評価

レベルでの評 計画の作成が必要である。評価計画の作成に当たっては、まず、単元(題

価計画の作成 材等)の目標に応じた「観点別評価規準」を設定し、それを基に、学習

が 必 要 で あ 活動・内容に応じた「具体の評価規準」を設定する。この「具体の評価

る。 規準」は、目標に対して「おおむね満足できると判断される状況」を想

定して設定する。また、学習指導のどの場面でどのような方法で評価す

るのか評価場面や評価方法を具体的にしておくとともに、「十分満足で

きると判断される状況」についても判断できるような手だてを工夫して

おく。

「努力を要す なお、「努力を要すると判断される状況」については、「おおむね満

ると判断され 足できると判断される状況」を実現していない状況と判断できることか

る状況」の児 ら、表記しないが、こうした児童に対する指導(支援)の手だてを事前

童に対する指 に想定しておくことが大切である。

導(支援)の 教師は、実際の授業において、こうした評価計画に基づき、意図した

手だてを事前 評価場面で、具体的な評価方法を活用して、「具体の評価規準」を基に

に想定してお 児童の学習状況を見取り、「おおむね満足できると判断される状況」に

く。 達していない児童に対して、適切な指導(支援)を実施し「おおむね満

足できると判断される状況」の実現を図らなければならない。また、「お

おむね満足できると判断される状況」の児童には、それらの能力・態度

を一層高めたり、深めたりする指導(支援)を加えていくことが必要で

ある。

したがって、指導と評価を一体化させる上で、こうした評価計画の作

成は必要不可欠な作業であるといえる。

ウ 評価補助簿の作成

評価結果を適 さらに、教師は、こうした児童の学習状況の評価結果を記録に残し累

切に記録に残 積を図っていくことが必要である。評価結果を適切に記録に残すために

すためには、 は、「評価補助簿」の作成が必要となる。「評価補助簿」の作成に当た

「評価補助簿」 っては、できるだけ活用しやすい様式や記入の仕方を工夫するとともに

の作成が必要 継続して記録し累積していけるようなものにすることが大切である。

となる。 なお、「評価補助簿」の形式については、各学校において十分に協議

し、校内で統一的に活用できるような形式を検討することが重要である。

エ 評価・評定の判定

こうして累積した記録を基に、学期末や学年末に総括し観点別学習状

況の評価・評定を出すことになる。評価・評定の判定については、様々

な方法が考えられるが、5章「学期末・学年末の評価・評定」に示した

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[理論編]

方法などを参考に、各学校において適切な方法を検討する必要がある。

指導要録における評価・評定の客観性や信頼性をもたせるためには、

こうした観点別学習状況の評価を適切に計画し、実施することが必要で

あるとともに、指導や評価についての考え方を児童や保護者に説明する

などして十分理解してもらうことが大切である。

(2) 単元(題材等)の目標の分析と観点別評価規準の設定

単元(題材等)レベルで評価計画を作成するに当たっては、まず、単元

(題材等)の目標の分析とそれに基づく観点別評価規準を設定しなければ

ならない。

以下、小学校社会科第5学年の内容(3) 「我が国の通信などの産業」の

単元を例に解説する。

ア 単元の目標の分析

単元の目標を具体化するに当たっては、まず、小学校社会科第5学年

の目標から分析していく。小学校学習指導要領社会科編の各学年の目標

には、理解目標・態度目標・能力目標が示されており、第5学年の内容

(3) 「我が国の通信などの産業」の単元にかかわる目標は次の通りであ

る。

観点【社会的事象についての知識・理解】

内容(1)から(3)にかかわる理解・態度に関する目標

我が国の産業の様子、産業と国民生活との関連について理解できるようにし、

我が国の産業の発展に関心をもつようにする。

観点【社会的事象への関心・意欲・態度】 観点【観察・資料活用の技能・表現】

能力に関する目標

社会的事象を具体的に調査し、地図、統計など各種の基礎的資料を効果的に活

用し、調べたことを表現するとともに、社会的事象の意味について考える力を育

てるようにする。

観点【社会的な思考・判断】

また、本単元の具体的内容について、学習指導要領には次のように示さ

れている。

我が国の通信などの産業について、次のことを見学したり資料を活用したりし

て調べ、これらの産業は国民の生活に大きな影響を及ぼしていることや情報の有

効な活用が大切であることを考えるようにする。

ア 放送、新聞、電信電話などの産業と国民生活とのかかわり

イ これらの産業に従事している人々の工夫や努力

この内容を上記に示した第5学年の目標に照らして小単元の目標を分析

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[理論編]

すると次のようになる。

我が国の通信などの産業について関心をもち、放送、新聞、電信電話などの産

業と国民生活とのかかわりや産業に従事している人々の工夫や努力を調べ、これ

らの産業が国民生活に大きな影響を及ぼしていることや情報の有効な活用が大切

であることを考える。

イ 単元の観点別評価規準の設定

上記単元目標の実現の状況を評価するに当たって、その状況を一括し

てとらえることは難しい作業であり、評価を曖昧なものにしがちである。

そこで、この単元目標を観点ごとに分けて、分析的に評価する必要があ

る。

観点別評価規準は、上記単元目標の実現状況を観点別(育成する能力

や態度)に分析して読みとるための判断基準である。つまり、各観点に

示した能力・態度がどのような状況になっていれば単元目標に到達した

と判断するかをあらかじめ分析しておくものである。

評価規準を設定するに当たっては、アに示したように、学年の目標を

観点別に分析して育成する能力・態度を明らかにしておき、単元の目標

や内容に応じて具体化しおおむね満足のレベルで設定する。

この単元の観点別評価規準を次のように設定する。

社会的事象への関 我が国の通信などの産業の様子に関心をもたせ、それを意

心・意欲・態度 欲的に調べることを通して、国民生活を支える通信などの産

業の発展について関心を深める。

社会的な思考・判 我が国の通信などの産業の様子から学習問題を見いだして

断 追究・解決し、国民の生活に大きな影響を及ぼしている通信

などの産業の意味を考え、適切に判断する。

観察・資料活用の 我が国の通信などの産業の様子を的確に見学したり、各種

技能・表現 の基礎的資料を効果的に活用したりするとともに、調べた過

程や結果を目的に応じた方法で表現する。

社会的事象につい 我が国の通信などの産業は国民生活に大きな影響を及ぼし

ての知識・理解 ていることや情報の有効な活用が大切であることを理解して

いる。

(国立教育政策研究所教育課程研究センター H14.2「評価規準、評価方法等の研究開発」報告の活用を図ること)

なお、この観点別評価規準は、指導目標から設定されたものであるから、

これを単元の観点別指導目標としてもよい。

(3) 単元(題材等)の指導計画と評価計画の検討

育成する能力 ア 単元(題材等)の指導計画の作成

・態度を絞り 単元(題材等)の指導計画の作成においては、単元(題材等)の目標

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[理論編]

こみ、目標の をどのように実現するのか、児童や学校等の実態に応じて構想し、学習

焦 点 化 を 図 活動やそのねらい(目標)を設定する。学習活動ごとのねらいを設定す

る。 るに当たって大切なことは、育成する能力・態度を絞り込み(目標の焦

点化)、単元(題材等)の学習活動が終了した段階で単元(題材等)の

目標が実現できるようにすることである。

イ 単元(題材等)の評価計画の作成

評価計画の作成に際して、まず、学習活動ごとのねらいの実現状況を

見取るための「具体の評価規準」を目標に応じて設定する。さらに、そ

れらの評価を学習活動のどの場面で行うか、評価場面を明らかにすると

ともに、どのような方法で児童の実現状況を見取るのか、評価方法を明

らかにしておく。

ウ 指導計画と評価計画の形式

指導計画と評 こうした計画を日々の授業に活用していくためには、指導計画と評価

価計画が対応 計画が対応するような形式を工夫して作成することが重要である。指導

するような形 計画には「扱う時数」、学習活動ごとの「ねらい」、「主な学習活動・内

式を工夫して 容」、「指導上の留意点」等を位置付ける。評価計画には、「評価の重点」、

作成する。 「評価場面」、単位時間のねらいに応じた「具体の評価規準」、「評価方

法」、「十分満足できる状況と判断される児童の学習状況」等を位置付

ける。

また、「努力を要すると判断される児童に対する指導の手だて」につ

いても、指導計画の指導上の留意点に位置付けたり、評価計画中に位置

付けるなどの工夫をして具体的な支援ができるようにしておくことも大

切である。具体的な計画例については、「各教科編」に示されたものを

参考にしていただきたい。

なお、すでに指導計画が作成されている場合は、指導計画の形式に応

じて新たに評価計画を作成し、指導計画に添付するなどの工夫が必要で

ある。

(4) 学習活動ごとの具体の評価規準の設定と評価場面・方法の検討

ア 学習活動ごとの具体の評価規準の設定

具体の評価規 学習活動ごとの具体の評価規準は、単元(題材等)の目標を基に、学

準は、「おお 習活動のねらいや学習活動の展開に即して、児童の具体的な実現状況を

むね満足でき 「おおむね満足できると判断される状況」として想定して設定する。

ると判断され 評価規準の語尾は、児童の学習活動に応じて、「・・しようとする。」

る状況」とし 「・・している。」「・・する。」など児童の学習状況を見取りやすいよ

て想定して設 うな表現を工夫する。

定する。 なお、設定に当たっては、国立教育政策研究所教育課程研究センター

H14.2 「評価規準、評価方法等の研究開発(報告)」に示された評価規

準の具体例などを活用すると設定しやすい。

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[理論編]

〈具体の評価規準設定の例〉

学習活動のねらい

メディアから発信される情報について関心をもち、メディアによる情報の特性

の違いについて具体的資料を基に意欲的に調べることができる。

下線部 は関心・意欲・態度、下線部 は観察・資料活用の技能・表現

【関心・意欲・態度】

メディアから発信される情報について関心をもち、情報の入手方法や特性の違いに

ついて、意欲的に調べている。

【技能・表現】

教師の用意した具体的資料を活用して、メディアによる情報の特性の違いを調べて

いる。

イ 評価場面・方法の検討

評価場面の設定については、学習活動において、具体の評価規準に示

した学習状況が顕著に現れると考えられる学習場面を評価場面として設

定する。評価場面は一つの学習活動に限定されるものではない。場合に

よっては、数時間にわたって継続的に評価場面が設定されることもある。

評価場面の設定においては、特に中心となる場面や関連ある場面など幅

広くとらえて、多面的に評価できるよう工夫する必要がある。

また、多様な評価方法を検討することも重要である。観点別学習状況

の評価では学力を多面的に見ることが重要であり、一つの評価方法だけ

では十分な評価資料を得られないことが多い。したがって、複数の方法

を活用して多角的に資料を収集する必要がある。評価方法については、

様々なものがあるが、評価の観点によっては活用しにくいものもあるの

で、評価する観点や内容によって、評価方法を工夫する必要がある。

次の表は、一般的に利用される評価方法を評価の観点に対応させたも

のである。

評 価 方 法 一 覧

評価方法 観 点 関心・意欲・態度 思考・判断 技能・表現 知識・理解

観察法(行動・発言) ◎ ○ ○ △

作品法(ノート、プリント、作品等) ◎ ○ ◎ △

自己評価法・相互評価法 ◎ ○ ○ ○

テスト法(ペーパーテスト) △ ○ △ ◎

(◎適した方法 ○やや適した方法 △あまり適さない方法)

(「観点別学習状況の評価規準表」北尾倫彦・祇園全禄編集 図書文化社 より作成)

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[理論編]

(5) 十分満足できると判断される状況

「おおむね満 前述したように、具体の評価規準は、「おおむね満足できると判断され

足できると判 る状況」で設定されている。評価を指導に生かすためには、この評価規準

断 さ れ る 状 を拠り所として児童の実現の状況を見取り、実現していない児童に対して

況」と「十分 は適切な指導(支援)が必要である。また、目標を実現している児童につ

満足できると いては、その状況が「おおむね満足できると判断される状況」なのか、「十

判断される状 分満足できると判断される状況」なのかを判断し、「おおむね満足できる

況」の質的な と判断される状況」の児童の力を伸ばしていく指導(支援)が必要である。

違いを事前に 「十分満足できると判断される状況」とは、「おおむね満足できると判

明らかにして 断される状況」のうち、児童の実現の程度について質的な高まりや深まり

おく必要があ をもつと判断される状況である。したがって、「おおむね満足できると判

る。 断される状況」と「十分満足できると判断される状況」の質的な違いを事

前に明らかにしておく必要がある。

この違いは、一般的にB基準、A基準として文章で表すことが多いが、

その質的な違いを文章で明確に表現することは難しく、一部の文言の違い

など抽象的なものになりがちである。そこで、「十分満足できると判断さ

れる状況」を実現していると判断できる児童の具体的な学習状況、判断す

るためのキーワードやポイントを事前に想定しておき、その発現状況によ

って判断するようにするととらえやすい。設定に当たっては、各学習活動

に即して複数の状況やキーワード等を設定しておき、多角的に判断できる

ようにしておくことが重要である。

(6) 評価結果の累積

評価活動においては、指導と評価を一体化させながら、単位時間におい

て学級全員の学習状況を見取り、記録していくことは大変難しい作業であ

る。また、記録することに追われて、指導がおろそかになっては本末転倒

である。

評価結果を記録する方法として、次のような具体例が考えられる。

① 学級の座席表などを活用し、授業中または授業終了後に「十分満足できると判

断される状況」を実現している児童や、指導(支援)を加えたが「おおむね満足

できると判断される状況」を実現しなかった児童などの学習状況について記号な

どを用いて簡潔に記録する。記録の少ない児童については、次の時間や学習活動

において同じ観点を活用して評価する際、重点的に記録していくようにする。

② 複数の時間において継続的に学習活動が組まれ、1つの観点で学習状況を見取

るような場合、見取る児童をあらかじめ想定しておき、複数の時間で全員の記録

が取れるようにする。

③ 児童の学習の状況を示す作品(例えば、ノート、ワークシート、作文等)を提

出させ、評価の観点にかかわる部分について重点的に評価し記録する。

なお、この方法を活用するに当たっては、評価を優先させるあまり、学習活動

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[理論編]

が制約されることがないよう留意する必要がある。

こうした方法を活用するにしても、1単位時間において4観点すべての

能力・態度を育成するような計画になっていたのでは指導や評価が大変難

しくなる。したがって、各学習活動におけるねらいを絞り込み(目標の焦

点化)、見取る観点を精選する必要がある。また、こうした方法は、学習

活動(単位時間)に応じて活用されるので、各学校においては、記録する

ことを含めて適切な指導計画や評価計画を作成する必要がある。

また、評価結果を記録する評価補助簿については、各教科編において様

様な形式が示されているので、各学校において適切に判断し活用しやすい

評価補助簿を作成することが大切である。

5章 学期末・学年末の評価と評定

(1) 基本的な考え方

授業などにおける教師の評価活動は、観点別に定めた評価規準に基づき

行われる。

また、先の文部科学省初等中等教育局長通知において、「評定に当たっ

観点別学習状 ては,評定は各教科の学習の状況を総括的に評価するものであり,『観点

況の評価 別学習状況』において掲げられた観点は,分析的な評価を行うものとして,

↓ 各教科の評定を行う場合において基本的な要素となるものであることに十

総括した観点 分留意することが望まれる。」とあることから、評定は観点別学習状況の

別学習状況の 評価を踏まえて行うことを基本とすることとなる。

評価 そして、観点別学習状況の評価の総括としては、各授業において具体的

↓ に評価するための学習活動ごとの「具体の評価規準」の評価結果を、学期

評定 末等において総括する方法と、「単元」や「題材」といった「学習のまと

まり」ごとに、4つの観点別の「単元(題材等)の評価規準」を設定し、

それに照らして評価するという方法の2つが考えられる。

(2) 学習活動ごとの「具体の評価規準」を総括する方法

学習活動ごとの「具体の評価規準」に照らして評価した結果を、学期末

等において総括する方法には次の2つが考えられる。

点数化 ① 学習活動ごとの「具体の評価規準」の評価結果をAは3点、Bは2

点というように点数化し、その合計あるいは平均を計算することによ

り総括する方法

例1 A、B、B、Aという評価を総括すると

(3+2+2+3)÷4=2.5 → 評価の総括は A

出現率 ② 学習活動ごとの「具体の評価規準」の評価結果におけるAやBが、

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[理論編]

どの程度の割合となっているかという出現率で総括する方法

例 A、B、B、B → B

ただし、上記の2つの方法も基本的には同じ考え方である。②の方法も

AとBの2段階であれば容易であるが、Cが加わると、それを総括するた

めには、計算が必要となる。

そこで、次に具体的に単位時間における「具体の評価規準」の評価結果

を学期末において①の方法により総括する例を示す。

〈児童Aの評価簿〉学 単 時 関心・意欲・態度 思考・判断 技能・表現 知識・理解 評

具 体 の 結 具 体 の 結 具 体 の 結 具 体 の 結期 元 間 評価規準 果 評価規準 果 評価規準 果 評価規準 果 定

1 規準① ◎1 単 2 規準① ◎

3 規準① ○ 規準① ○学 元 4 規準② ◎

5 規準② ◎期 1 6 規準② ◎ 規準② ○

7 規準③ ◎8 規準④ ○9 規準③ ◎10 規準③ ◎11 規準④ ○ 規準③ ◎

単 12 規準⑤ ・ 規準④ ◎13 規準④ ◎

元 14 規準⑤ ○15 規準⑤ ◎

2 16 規準⑤ ・17 規準⑥ ・18 規準⑥ ◎19 規準⑦ ・ 規準⑥ ・20 規準⑥ ・21 規準⑦ ◎ 規準⑦ ○22

単 23 規準⑦ ◎2425 規準⑧ ○

元 2627 規準⑧ ○28 規準⑧ ◎

3 2930 規準⑧ ○3132 規準⑨ ◎3334 規準⑨ ・35 規準⑨ ◎3637 規準⑨ ◎38 規準⑩ ○3940 規準⑩ ・4142 規準⑩ ◎434445 規準⑩ ○

総 括 B A B C 2

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[理論編]

ア 観点別学習状況の評価の総括

表のような評価結果となった児童の学期末の「関心・意欲・態度」の

観点別学習状況の評価は次のように総括される。

点数化 (ア) 各観点の評価結果を点数化する。

・今回は、「十分満足できる」状況の◎を3点、「おおむね満足でき

る」状況の○を2点、「努力を要する」状況の無印を1点とする。

平均の算出 (イ) 1学期における観点別の評価の結果の平均を計算する。

・関心・意欲・態度の評価結果は

◎、◎、◎、○、○、無印、◎、○、◎、○ であるため、

平均は、

(3+3+3+2+2+ 1 +3+2+3+2)÷ 10=2.4

となる。

評価の判断 (ウ) 平均点から評価を判断する。

平均点から評価を判断するためには、平均点の何点からAとするか

を定めなければならない。

区切りの検討 ここでは、児童のよりよい成長を助長するものという評価の基本的

な機能を考え、例えば◎と○が同数の場合もAと総括できるよう次の

ような区切りを定めた。これは、平均点を「四捨五入」し、「十分満

足できる」状況の点数である3となればA、「おおむね満足できる」

状況の点数である2となればB、「努力を要する」状況の点数である

1となればCとなるようになっている。

平 均 点 1.0~ 1.5~ 2.5~

観点別学習状況の評価 C B A

(イ)で算出した平均点を当てはめればこの児童の評価はBと総括さ

れる。

イ 評定への総括

学期単位の総 事例のように、学期単位で総括を行う場合、評定する範囲のすべての

括 学習活動ごとの「具体の評価規準」の評価結果から計算する方法が考え

られる。

点数化 この場合、各観点の評価結果を点数化し、学期の4つの観点すべての

平均の算出 観点別の評価結果の平均を計算する。

事例では、関心・意欲・態度が24点、思考・判断が26点、技能・

表現が24点、知識・理解が18点であるため、合計が92点となる。

観点数は40個あるため、92÷40で平均は2.3となる。

評定の判断 小学校の場合、評定も観点別学習状況の評価と同様に3段階となって

いるため、アの(ウ) と同様に、平均点を「四捨五入」し、「十分満足で

きる」状況の点数である3となれば3、「おおむね満足できる」状況の

点数である2となれば2、「努力を要する」状況の点数である1となれ

ば1となるように区切りを定めた。

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[理論編]

観点別学習状況の評価の平均 1~ 1.5~ 2.5~

評 定 1 2 3

算出した平均点を当てはめるとこの児童の評定は2と総括される。

単元(題材等) また、単元(題材等)ごとに観点別学習状況の評価の総括を行い、学

ごとの総括 期末にこれらの結果を集計して評価・評定を出す方法も考えられる。

この場合、各単元ごとに決定した評価を点数化して合計を出し、観点

数で割りその平均点から評価・評定を導き出すことができる。

単元1 単元2 単元3 単元4 合計 平均 評価

関 意 態 B A B B 9点 2.25 B

思 ・ 判 B B A B 9点 2.25 B

技 ・ 表 B B B A 9点 2.25 B

知 ・ 理 B A A B 10点 2.50 A

評定算出 総計(37点)÷総観点数(16)=2.31 2

なお、評価結果をどのように点数化するか、また、平均点のどこから

をAとするか、あるいは3とするかといった区切りなどについては、具

体的な評価方法なども踏まえて、各学校において十分に検討することが

必要である。

ウ 総括を行うための配慮事項

前述した方法により総括する場合、前提として次の条件が必要である。

評価結果の重 ① 単位時間における「具体の評価規準」の評価結果は、すべて同等の

み 重みをもっている。

評価の数 ② 観点別の単位時間における「具体の評価規準」の評価の数は、総括

する範囲において同一となっている。

①の条件を満たさない場合、例えば知識・理解に関する観点において、

○○という知識を習得したかどうかという評価より、○○が社会に与え

る影響を理解したという評価の結果を重視したいということであれば、

その評価の結果の配点を高くするなどの配慮が必要である。

また、②の条件を満たさない場合、例えば1学期の学習の中では、関

心・意欲・態度に関する評価は10あったが、技能・表現が8つしかな

かった場合、4つの観点の結果が同等に評定に影響するのではあれば、

少ない評価の結果の配点を高くする必要がある。

教科の特質に なお、教科によって、例えば技能に関する観点を重視するという考え

応じた検討 方ができるものもあれば、ある単元では知識・理解に関する観点を、別

の単元では表現に関する観点を重視し、1年間を見通せば、すべての観

点が同等になるという教科もある。そのため、教科の特質や単元の構成

などを踏まえて、評価の数を同一にするのか、それとも合計・平均の部

分で調整するのか、評価計画を作成する段階で検討しておくことも必要

である。

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[理論編]

(3) 「学習のまとまり」ごとの「総括的な評価規準」による評価方法

先の方法が、日々の授業における単位時間における「具体の評価規準」

の評価結果を集計するなどして総括するのに対し、この方法は、あらかじ

め総括した評価規準を設定しておき、それにより評価を行うというもので

ある。

総括的な評価 この「総括的な評価規準」(「単元等の評価規準」)は、単元(題材等)

規準 の「学習のまとまり」ごとの目標を設定した上で、その実現状況を把握す

るためのものとして観点別に設定することとなる。

なお、この方法をとっても学習活動ごとの「具体の評価規準」による評

価を行わないということではない。この評価規準に照らして、努力を要す

ると判断できる児童をおおむね満足できる状況に、おおむね満足できる状

況にある児童は十分満足できる状況を実現できるよう指導していくことが

大切である。

以下に具体的な方法を示す。

ア 観点別学習状況の評価の総括

単元(題材等) (ア) 単元(題材等)において指導すべき項目を整理し、そこで目指す最

の目標 終的な目標である「単元(題材等)の目標」を明確にする。

(イ) 「単元(題材等)の目標」がおおむね達成されたかどうかをみるた

単元(題材等) めに、観点別に「総括的な評価規準」(「単元(題材等)の評価規準」)

の評価規準 を設定する。さらに、「十分満足できる状況」も明確にしておく。

(ウ) 単元(題材等)の学習の終了時において、「単元(題材等)の評価

規準」に照らして、観点別に評価し、その結果を「単元(題材等)の

評価」とする。

イ 評定への総括

(ア) 単元(題材等)ごとに評定を出す場合は、「単元(題材等)の評価」

単元(題材等) をもとに、各観点別の「単元(題材等)の評価規準」が、どのように

の評定 「単元(題材等)の目標」に影響しているかを考慮して総括する。

例えば、4つの観点がすべて同等に「単元(題材等)の目標」にか

かわっている場合、

AAAA、AAAB、AAAC、AABB 3

AABC、ABBB、AACC、ABBC2

BBBB、ABCC、BBBC

ACCC、BBCC、BCCC、CCCC 1

とするなどの方法が考えられる。

なお、一つの観点でも「C」となっている場合、総括しても「十分

満足できる状況」とは判断できない、つまり「AAAC」は「3」と

はならないという考え方もできる。各教科における各観点の扱い等に

配慮し、適切な総括方法をとる必要がある。

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[理論編]

学期末・学年 (イ) 学期末・学年末における評価及び評定への総括は、各単元(題材等)

末における総 の評価及び評定を総括することになる。その際、すべての単元(題材

括 等)の結果を同等に扱うのではなく、指導時間等に配慮しながら総括

するなどの配慮が必要である。

指導時間 関心・意欲・態度 思 考 ・ 判 断 技 能 ・ 表 現 知 識 ・ 理 解

単元1 5 A B B B

単元2 5 A B A B

単元3 12 A B B C

学期末 22 A B B C

例えば、1学期に上の表のような指導時間で単元を学習した場合、

単元3を単元1や2の結果の2倍以上重視するなどの方法が考えられ

る。この場合、学期末の知識・理解の評価はCとなる。

また、学期末の評定は、学期末の評価結果をもとに(ア)と同様に考

えれば2となる。

ウ 総括を行うための配慮事項

前述した総括方法は、各観点の評価結果はすべて同等に評定に影響す

ることを前提としている。

教科によっては、例えば技能に関する観点を重視するという考え方が

できるものもあれば、ある単元では知識・理解に関する観点を別の単元

では表現に関する観点を重視し、1年間を見通せば、すべての観点が同

等になるという考え方もある。

一方、観点別の「単位時間における具体の評価規準」の評価の数は総

括する範囲において同一とは限らない。このような状況の中で、特定の

観点の結果が重視されることのないようにするためには、数が少ない観

点の評価規準の結果を重く扱い、偏りがでないようにするなどの配慮が

必要となる。

さらに、その重みのつけ方も、数が少ない観点の評価規準の結果をす

べて同等に重く扱う場合もあれば、例えば、知識・理解に関する観点に

おいて、○○という知識を習得したかどうかという評価より、○○が社

会に与える影響を理解したという評価の結果を重く扱うといった場合も

考えられる。教科の特質や単元の構成などを踏まえ、評価計画を作成す

る段階で十分検討しておくことが必要である。

6章 総合的な学習の時間の評価

(1) 基本的な考え方

総合的な学習の時間については、各学校において学習活動を定め、学校

児 童 の よ い や児童の実態に応じた特色ある教育活動が展開される。このような趣旨か

点、意欲や態 ら、学習の状況や成果などについて、児童のよい点、学習に対する意欲や

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[理論編]

度、進歩の状 態度、進歩の状況などを踏まえて評価することが大切である。したがって、

況を踏まえた テストの成績によって数値的に評価することは適当ではない。

評価 また、この時間は、横断的・総合的な課題などについて、体験的な学習

・問題解決的な学習を取り入れ、各教科等で身に付けた知識や技能を相互

に関連付け、総合的に働かせることをねらいとしており、それを通じて、

自ら学び自ら考える力や学び方、ものの考え方などの確かな育成に資する

観点別学習状 よう、各教科の学習の評価と同様、「観点別学習状況の評価」を基本とす

況の評価 ることが必要である。

この時間の学習活動の展開に当たっては、学習指導要領に示された二つ

目標、内容に のねらいなどを踏まえ、各学校において具体的な目標、内容を定めて指導

基づいた観点 を行うことが必要である。そして、その目標、内容に基づき、観点を定め

の設定 て評価を行うことが必要である。

(2) 評価計画作成の手順

指導計画の作成と併せて、評価をどのように実施していくか計画してお

くことが必要である。

そのため、以下の手順で進めていくことが考えられる。

① 総合的な学習の時間の目標・内容の決定

② 総合的な学習の時間の目標・内容に基づいた評価の観点の設定

③ 単元の指導計画の各段階における評価方法の位置付け

① 総合的な学習の時間の目標・内容の決定

年間指導計画における目標・内容を決定する際には、学習指導要領

総則第3の2に示された総合的な学習の時間のねらいに即するととも

に、児童の実態、学校全体のこの時間の目標などに基づき決定してい

くことが大切である。

② 総合的な学習の時間の目標・内容等に基づいた評価の観点の設定

年間指導計画における目標から、分析し、評価の観点を設定してい

く。目標によっては、複数の観点が設定されることもあるであろう。

なお、評価の観点を設定する際には、目標に加えて、年間を通した学

習内容、学習活動を加味して検討することが大切である。

また、設定した観点に沿って、あらかじめ、年間、学期、単元の学

習内容や学習活動のまとまりごとに、目標に照らして、育ってほしい

児童の具体的な姿をイメージしたものとしての「評価規準」を設定し

た上で、指導と評価を行うことが重要である。

③ 単元の指導計画の各段階における評価方法の位置付け

指導計画における学習活動のまとまりごとに、学習活動の特質に応

じた効果的な評価方法を位置付けておくことが必要である。

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[理論編]

(3) 評価の観点の設定

評価の観点の設定は、各学校において定めた総合的な学習の時間の指導

の目標や内容に基づいて行うことになるが、教育課程審議会答申において

は、以下の観点例が示されている。

「ねらい」を ① 学習指導要領のねらいを踏まえた観点例

踏まえる ○「課題設定の能力」 ○「問題解決の能力」 ○「学び方、ものの

考え方」 ○「学習への主体的、創造的な態度」 ○「自己の生き方」

教科との関連 ② 教科との関連を明確にした観点例

○「学習活動への関心・意欲・態度」 ○「総合的な思考・判断」

○「学習活動にかかわる技能・表現」 ○「知識を応用し総合する力」

目標・内容に ③ 各学校の目標、内容に基づいた観点例

基づく ○「コミュニケーション能力」 ○「情報活用能力」

これらを参考にして、各学校において適切な評価の観点を設定していく

ことが必要である。

評価の観点の 〈評価の観点の設定例〉

設定例

A校の「総合的な学習の時間」の目標

○ 子どもが、①学習や生活のなかに自分で課題を見付けだし、自ら考

え、判断・活動しながら問題をよりよく解決し、②人やものにかかわ

ろうとする力を身に付け、③よりよく生きようとすることのできる資

質や能力を育成する。

「①学習や生活のなかに自分で課題を見付けだし、自ら考え、判断・活動

しながら問題をよりよく解決し」

子どもたちの学習や身近な生活の場面から、自分なりの課題を見いだし、

単元全体を通して問題解決の学習活動を展開していくことから、「問題解

決能力」の観点を設定する。

「②人やものにかかわろうとする力を身に付け」

様々な人々とのふれあいや交流活動、自然等へのかかわりを通して、心

の温かさや優しさ、自然の素晴らしさなどを体得させ、自己を取り巻く環

境に積極的にかかわろうとし、よりよい関係を築く力をはぐくんでいくこ

とから、「コミュニケーションの力」の観点を設定する。

「③よりよく生きようとする」

様々な地域の人々や自然、歴史等に触れる学習活動を通して、これまで

の自分の生活・生き方を振り返ったりするなどして、自己を見つめ、より

よく生きようとする実践意欲や態度の育成を目指すことから、「生き方の

探究心」の観点を設定する。

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[理論編]

《総合的な学習の時間の目標》 《評価の観点》

○ 子どもが、学習や生活のなかに自分で ① 問題解決能力

課題を見付けだし、自ら考え、判断・活 ② コミュニケーションの力

動しながら問題をよりよく解決し、人や ③ 生き方の探究心

ものにかかわろうとする力を身に付け、

よりよく生きようとすることのできる資 ↓

質や能力を育成する。

《単元の目標・評価規準の設定》

(4) 評価方法の工夫

総合的な学習の時間においては、児童自らが課題を見つけ、課題を設定

し、その課題の解決に向けての学習活動を展開していくことになる。この

ような学習活動を展開する中で、児童自らが設定した課題や学習計画、追

追究の過程の 究の過程を振り返り、評価し、改善を図っていくことは、この時間のねら

振り返り いを実現する上でも極めて重要な役割を果たすものである。

また、どのような課題に取り組んだとしても、児童が学習活動を通して、

探究したこと、感じたこと、学んだことを振り返り、その課題について今

生き方の探究 後どのようにかかわっていくべきか考えることが大切であり、活動全体を

の評価 振り返り、生き方を探るための評価を工夫する必要がある。

評価を行うに当たっては、まず、活動の特質に応じた適切な評価の方法

を工夫することが大切である。評価の方法としては、例えば、製作物(ワ

ークシート、ノート、作文、絵、レポート等)、発表・話し合いの様子、

多面的・総合 活動の状況の観察、児童の自己評価・相互評価の活用などの多様な評価情

的な評価 報を活用して、多面的・総合的に評価することが重要である。

特に、総合的な学習の時間の評価の特徴として、児童自身が自分の取り

自己評価の重 組んだ一連の過程を振り返り評価することが重視されることから、児童が

視 設定した課題や学習計画、追究の過程を振り返り、自分なりに改善を図っ

ていく自己評価を積極的に取り入れ工夫していくことが大切となる。また、

自己評価の中で、発達段階に応じて自己の生き方を探る評価を適宜取り入

れていくことが望まれる。

ポートフォリ この時間の評価においては、特に、多様な評価情報の収集活動そのもの

オ評価 を、教師が支援しながら児童の日常活動の一環として進めることが大切で

あり、このような視点に立った評価方法としてポートフォリオ評価がある。

「ポートフォリオ」とは「紙ばさみ」という意味であり、あらゆる情報を

いわば個人の学習履歴として収めていこうとするものである。教師の支援

を受けながらも、基本的には自らの力で自己の学習履歴を跡づける情報を

収集・管理し、自己に対しても他者に対しても、そのように形作られたポ

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[理論編]

ートフォリオを基に学習履歴について語り、さらには自身の学習を進めて

いく。このような活動を通して、「自ら学び自ら考える力」の基礎となる

「自己評価能力」の育成が期待できる。

個人内評価の また、学習過程に即して、「個人内評価」の考え方に立ち、児童なりの

重視 よい点、学習に対する意欲や態度、進歩の状況などを的確に見取り、児童

の探究活動の深化や活動への意欲化を図るようにしていくことが大切であ

る。

7章 評価に関する留意事項

(1) 個人内評価の重視

2章で述べたように、これからの評価では、目標に準拠した評価である

絶対評価や児童一人一人のよい点や可能性、進歩の状況をとらえる個人内

評価を重視することが示された。

新学習指導要領においては、課題を発見する能力や自ら学び自ら考える

力、よりよく問題を解決する能力などの育成が重要である。また、児童生

徒の興味・関心、進路、習熟の程度などに応じ、選択学習の幅の拡大や個

に応じた指導の充実を図り、個性を生かす教育を一層推進することが求め

られている。こうした点からも、各学校において個人内評価の充実を図る

ことが重要である。

個人内評価 個人内評価は、児童の諸特性の個人差を他人との比較によらず個人とし

てその特徴をとらえることが重要である。つまり、個人の長所、得意なと

ころなどの個性の特質やよさを見いだし、これを伸長、育成しようとする

評価である。

個人内部の基 いわゆる絶対評価が、学習指導要領に示された目標及び内容という個人

準 外部に基準がおかれているのに対して、個人内評価は、児童一人一人の個

性や特性という個人内部に基準がおかれることになる。したがって、個人

内評価を充実させるためには、児童一人一人の個性や特性の理解がなけれ

ばならない。評価目標を設定するにおいては、こうした個人の能力・適正

等の可能性を考えこれらが生かせるよう広い範囲にわたり多面的に設定す

ることが重要である。その際、特に、知的側面に偏らず技能・表現、情意、

行動、道徳面などの期待しうる可能性や進歩の状況を想定して設定する必

要がある。

なお、評価に当たっては、絶対評価の中に、個人内評価が混同しないよ

う留意する必要がある。つまり、個人内に進歩の状況が見られたとしても、

それが学習指導要領の目標の達成につながっているかは別である。絶対評

価は、あくまでも学習指導要領に示された目標に準拠した評価であり、指

総合所見及び 導要録においては観点別学習状況の評価・評定として示されるのに対し

指導上参考と て、個人内評価は、総合所見及び指導上参考となる諸事項の欄に記載され

なる諸事項 る。

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[理論編]

(2) 自己評価の活用

教育課程審議会答申によれば、「自己評価については、自ら学ぶ意欲な

どを見る上で有効であるばかりでなく、児童生徒が自分自身を評価する力

や他人からの評価を受け止める力を身に付け、自己の能力や適正などを自

分で確認し、将来を探求できるようにするためにも大切である。」と示し

ている。

新学習指導要領においては、基礎・基本の確実な定着と自ら学び自ら考

えるなどの[生きる力]の育成を目指している。この[生きる力]の育成

においては、自らの力でよりよく問題解決を図ろうとする「自己学習能力」

と、自らの学習や生活の在り方を振り返り、次の課題を見いだしていく「自

己評価能力」を児童に身に付けさせることが重要である。

自己評価能力 自己評価能力の育成に当たっては、授業を主とする様々な教育活動にお

の育成 いて児童自身による自己評価が適切に実施される機会がなければならな

い。

自己評価 自己評価とは、自分自身を振り返り自己を対象化することであり、こう

した振り返りによって、授業で十分わからなかった点や意欲的に取り組め

なかった自らの姿を明らかにし、この反省を生かしてよりよい学習の方法

や取組の姿勢、学校生活の在り方等について考え直し、望ましい自己の在

り方について考えることが重要である。つまり、自己評価とは、自分の認

識の仕方や学習の仕方について学習し、自分を統制する能力を育成するこ

とである。

自己評価の対 自己評価の対象には次のようなものが考えられる。

象 ① 授業や活動への参加状況

授業や様々な活動への参加意欲や工夫の状況、達成感や満足感など

をチェックする。

② 向上・成長の状況

授業や様々な活動に対して、自分がどの程度向上・成長したのかチ

ェックする。評価項目を作成するに当たっては、授業や活動の目標を

基準に項目を設定することが重要である。

③ 学習に対する習慣や態度

学校における授業だけではなく、家庭における学習の習慣や態度に

ついてもチェックする。予習や復習の実施状況、授業の準備の状況、

学習への集中力・持続力などが対象となる。

④ 対人関係の在り方

学習活動を支える人間関係をチェックする。グループ内における友

人関係や教師、親との関係などが対象となる。

⑤ 自分自身の全体的な在り方

自分の現状に対する満足感、自分の学習に対する展望、自分自身に

対する誇りなど自分の全体的な在り方についてチェックする。

なお、自己評価能力を育成していくためには、他者による評価と組み合

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[理論編]

わせて自己評価を実施していく必要がある。自分自身の評価に対して、他

の児童や教師、親などの評価がフィードバックされることで自分自身を適

切にとらえることができるようになってくる。また、自己評価能力は1度

や2度経験して身に付くものではない。長期的に何度も経験することで、

徐々に身に付いてくるものである。

したがって、各学校においては、教育活動の様々な機会をとらえて、意

図的・計画的・継続的に自己評価を実施することが重要である。