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調 I.受容体 概念 1.受容体 とは 薬物 drugが 生体 に対 してある特有 の薬理作用 pharmacO10gical ac 示す には,そ の組織中に存在す るある特定 の部位 に結合す る必要がある。 この ような 生体側 にあ らか じめ存在 し,薬物が結合 して生体 反応の引 き金 を引 くための部位 般 に薬物の 作用ャ点site of actionと う. 薬物の作用′点の中で もある特殊 な 条件を満たす ものは薬物受容体 drug receptorと 呼|ゴ れ る. 歴史的には受容体 と う概念はP Ehlichの 化学療法における側鎖説には じま る。彼は細胞にはある特殊な側鎖が存在 し,抗原ある いは毒素はこれに結合する こ とによ り作用 を発揮す る と考 えた。E h l i c h は このことを端的に 結合 なければ 作用なしCθ θ紹 ″θ%讐 %が '物 」 とい ことばでいい あ らわ して い る。 またLangleyは 骨格筋における ニヨ チンとクラ レの結抗 作 用等 を検 討 し, 生体 には薬物が作用する特殊な部位が存在すると考え,これを受容物質 receptive substanceと 呼んだ。 しか しなが ら,薬物受容体の概念 を薬理学に取 り入れ,薬物の作用 を定量的に 解析することを試みたのはA J Ciarkで あ る。 Clarkは 摘出カ エルの心臓の運動を抑制する濃度のアセチルコ リン を用 いた場 合,アセチルコ リンは心筋細胞表面の 1/6000し かおおわな い こ とを示 した. この ことはアセチルコ リンが反応 を引 き起 こす際 に結合す る部位 は細8包 表面上のごく わずか な特別 な音B 分で あるこ とを量的 に示 した もの と え る。 この よ うに薬物 が

YCU 横浜市立大学pharmac/06kougi/...Created Date 9/25/2006 4:31:28 PM

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  • 払調総

    I.受 容体の概念

    1.受 容体 とは

    薬物 drugが生体に対してある特有の薬理作用 pharmacO10gical actionを示す

    には,そ の組織中に存在するある特定の部位に結合する必要がある。このような

    生体側にあらかじめ存在し,薬 物が結合して生体反応の引き金を引くための部位

    を一般に薬物の作用ャ点site of actionという.薬 物の作用′点の中でもある特殊な

    条件を満たすものは薬物受容体 drug receptorと呼|ゴれる.

    歴史的には受容体 という概念はP Ehlichの 化学療法における側鎖説にはじま

    る。彼は細胞にはある特殊な側鎖が存在 し,抗 原あるいは毒素はこれに結合する

    ことにより作用を発揮すると考えた。Ehlichはこのことを端的に 「結合なければ

    作用なしCθっθ紹 ″θ%讐 妨 %が '物 筋」 ということばでいいあらわしている。

    また Langleyは骨格筋におけるニヨチンとクラーレの結抗作用等を検討 し,生 体

    には薬物が作用す る特殊 な部位が存在すると考え,こ れを受容物質 receptive

    substanceと呼んだ。

    しかしながら,薬 物受容体の概念を薬理学に取 り入れ,薬 物の作用を定量的に

    解析することを試みたのは A J Ciarkで ある。

    Clarkは摘出カエルの心臓の運動を抑制する濃度のアセチルコリンを用いた場

    合,ア セチルコリンは心筋細胞表面の 1/6000しかおおわないことを示 した.こ の

    ことはアセチルコリンが反応を引き起こす際に結合する部位は細8包表面上のごく

    わずかな特別な音B分であることを量的に示 したものといえる。このように薬物が

  • 払師総

    結合す る と考 えられ る特別 な部位 を Clarkは 受容体 と呼び,さ らに薬物 と受容体

    との結合 は質量作用の法則 law Of mass actionに従 うと考 えた。すなわち,

    A tt R=AR (1)

    柵=K D 0

    ここでA,R,ARは 薬物,受 容体,薬 物受容体複合体を,[A]・ [R],[AR]

    はそれぞれの濃度を,KDは 結合の解離定数 dissociation constantを示 している。

    Clarkの 考え方はその後多くの研究者たちによって引き継がれ,薬 理学者の注

    目を引 くに至った。このように薬物 と受容体 との相互作用の仕方を定量的に解析

    しようとfる 試みを受容体理論 receptor theoryとV うヽ。

    2.構 造 活性相 関 と 受容体

    図 1-la~ fは ムスカリン様アセチルコリン受容体に作用する種々の薬物の構

    造式を示 したものである。いずれの薬物 もアセチルコリン(a)ときわめて似通った

    構造を持っていることが明らかである。一方ノルエピネフリンやヒスタミンのよ

    うな異なった構造を持つ ものはムスカリン様受容体には作用しない。このように

    受容体に作用する薬物群においては,一 般に薬物の持つ薬理活性 とその化学構造

    との間には強い相関が認められることが多い。このような薬物の持つ構造 と薬理

    活性 との間の関係を構造活性相関 structure activity relationshipといい,構 造

    活性相関が認められる薬物群の作用は特異的 specificであるという.

    Ing(1949)は ムスカリン受容体に作用する種々の薬物の構造活性相関について

    検討 し, 5原 子則 five atom chain ruleと呼ばれる仮説を提出した。多くのムス

    カリン様作用薬は トリメチルアンモニウム基に水素原子を除いて 5つ の原子の長

    さの基が結合 しているときに最 も効力が強 くなる。図 1-1の 各種化合物 もみなそ

    のような構造をとっている。若子の例外を除いて多くのムスカリン様作用薬は 5

    原子則に適合する。

    一方,Waser(1961)は ムスカリンおよびムスカリン誘導体の構造活性相関に

    ついて検討 し,ム スカリン受容体には 3つ の結合部位が存在 している可能性を述

    べている。すなわち,① トリメチルアンモニウム基がイオン結合する陰イオン性

  • 受容体の概念

    O||

    CHざ/C\

    0/CH2\ cH〆

    + / C H 3Nく

    :督:アセチルコリン

    カルバョール

    L(十 )―ムスカリン

    ♀ 十/ H3H 2 N / C\ 0 / C H 2\ c H / Nて

    :言:

    十/CH3

    cH/CH2\ cH2/CH2\ cH2 Nマ:言 :

    ベンテル トリメテル

    アンモニウム

    HO、 、、、cH _ c H 2

    (d) / ` 十/CH3cH/CH\ o CH` CH2′

    Nく

    :岳:

    O~CH2

    (°) CH3/C告\0/とH、cHゴ/対(::i

    (f)

    CH一 cH

    〃 ` 十 / H 3

    C H / C``O/ C\ C H / N K :岳

    :

    L(十)―|′3‐ジオキソランー2‐メテル‐4 イヽルメテル トリメテル

    アンモニウム

    (2‐メテルディルバセン)

    5 - メテルフルメチ ド

    ( 5 ‐メテルフル トレ トニウム)

    (:iそ:言: プロパンテリンPH\CH3CH3

    図 1-la~ g ム スカリン受容体に作用する薬物の構造

  • 部位 an10nic site,②ァンモニウム基から38Åほど離れたエーテル酸素と水素結合する部位,お よび ③ 5番 目の原子に相当する末端メチル基とvan der

    Waals結合する部位である.

    ボ曾f抵轡椿,皆雪告冴曾予十:景極[尋 景夢号をこ言,3ふ F旨丘せよ子FI音3景 造

    合する正電荷部位 catiOnic site,Belleau and PuranenはCが 結合する求核部位llucleophillic siteを想定している。

    いずれにせよこれらの仮設から,受 容体上には薬物分子の形と相補的なcom‐

    plementary構造を持つ部位が存在し,こ の部位にうまく適合 fitするような薬物のみが生理作用を発現しうると考えられる。このような考え方を鍵 と鍵穴説 lock

    and key theOryという。この場合,鍵 が受容体作用薬,鍵 穴が受容体上の結合

    部位 receptor dteにたとえられている。一方,後 で述べる競合的結抗薬は図 1-

    1の (g)に示したプロパンテリンのように疎水性の嵩ばった基 bulky.grOupを持っており, これが主として④ accessory siteと呼ばれる通常活性薬の結合には与らない部位に疎水結合を介して強く結合するため,生 理反応を引き起こすような

    適切な結合をすることができず, またアセチルコリンの結合を妨げると考えられ

    る.図 1-2は アセチルコリンと競合的措抗薬であるプロパンテリンが受容体 と結

    合している様子を仮想的に描いたものである。

    以上のような議論から現在受容体の存在が想定されるのは次のような諸条件を満たした時であると考えられる。すなわち,① きわめて低濃度で,② 特定の組織に対してのみ ③ 特有の薬理活性を示す一群の薬物があり,④ それらの化学構造と活性の間には強い相関関係が認められ, また ⑤ これらの薬物の作用に対して競合的に結抗する薬物の存在が知 られているような場合である。すなわち一

    般に神経伝達物質,オ ータコイ ド,ホ ルモンなどの作用′点が受容体であると考え

    られる。

    これらの受容体のうち,一 般にステロイ ドホルモンの受容体は細胞内に存在 し,その他の受容体は細胞膜表面上に存在 していると考えられている。本章において

    受容体に関する基本的な事柄について概説 し,以 下の章では細胞膜に存在する受

    容体の中で代表的なものを取 りあげて解説する。

    払調

  • 活性楽とpD2,内 活性

    ヂ ノダ

    ● 0

    口 0

    o N

    図 1 - 2 ア セチルコリン( a )とプ ロパ ンテ サン( b )のム スカ リン受容体 に

    対する結合を仮想的に描いた図

    Arions A J & 1ヽlranda R I)i Recent Ad、allces Ⅲl Recel)tor chcnlistぃ Edited b)( i u a r t i e r i F e t a 1 1 5 E I s e i r e r i ヽo r t h H ( 1 l a l l d B l ) n l c d i c a l P I c s s i 1 9 予9 1

    II.活 性薬 とpD2,内 活性

    1. pD2

    受容体に結合 して組織反応を引き起こすような薬物は活性薬 agonistと呼ばれ

    る。活性薬に対する筋の反応を観察する場合には,た とえば図 1-3に 示 したよう

    なマグヌス Magnusの 装置を用いて測定する。器官槽 organ bathと呼ばれるガ

    ラス管に栄養液を入れ, これに摘出した組織をつるす,組 織の両瑞は糸でしば り,一方は固定棒に固定 し,他 方はヘーベルにつないでお く。この場合・栄養液の温

  • 回転 して い る

    ピンチコック

    ム納総

    記録紙をまきつけた

    キモグラフィオン モ ーターて

    矢印の向きにゆっくり

    組 織

    //95%025 % 0 0 2混合ガス

    器官槽

    図 1- 3 筋 の等張性収縮 を記録 す るマ グ ヌスの装 置の模 式図

    軌内の等張性収縮を測定する装置の模式図.筋肉が収縮する方向とそれに伴いヘーベル

    すll l l転する向きをえ印でホしている

    度は一定に保ち, また酸素を含んだガスを通気してお く.器 官槽内につるされた

    組織は糸を介 してテヨの原理を用いて作られたヘーベルにつながれているので,

    器官槽内に活性薬を添加することにより組織が収縮反応を起こすと糸が下方に引

    っぱられ,ヘ ーベルは図 1-3の 矢印のように支点を中心 として大きく回転する。

    キモグラフィオンは一定の速度で回転する筒状の器械であり, これに記録紙をま

    きつけておけばヘーベルにより収縮反応の時間経過を記録紙上に記録することが

    できる。このような筋の反応の測定は,筋 にヘーベルの重さに白来する一定の負

    荷 loadを与えているので,等 張性記録法 という。一方,筋 の長さを一定にしてお

    き筋が収縮 したときに発生する張力を測定する方法を,等 尺性記録法という。な

    お, ここでは筋の収縮反応の測定法について述べたが,活 性薬による受容体 を介

    した反応を測定する場合,腺 細胞ではホルモン,あ るいは酵素の分泌量の測定 と

    か,組 織中のある物質量の測定 とか,研 究の目的に応 じてさまざまな測定法が当

    然ありうる。

    さて,図 1-3で 器官槽内に活性薬を添加 してい くと,加 えられた活性薬の量に

  • 活性薬とpD2,内 活性

    応じて筋の反応は次第に大 きくなっていく.一 般にこのような関係を用量作用関

    係 dose response relationshipといい, これをグラフに表わしたものを用量作用

    曲線 dose response curveという。図 1-4は 用量作用曲線の実例であり,モ ル

    モット回腸純走筋におけるカルバコールによる等張性収縮反応の結果を示 してい

    る。Clarkの考え方に従えば,活 性英 (ここではカルバ ヨール)と受容体は質量作

    用の法則に従って結合 しその結果組織の反応が起こる訳であるから,

    A tt R=AR二 生 E (3)KA

    とかける.こ こで KAは 活性薬 Aと 受容体 Rの 結合の解離定数であり,Eは 生 じ

    た反応の大きさを示 してお り,々 は ARの 量 と反応 Eを 結びつける比例定数であ

    る。 し たがって,

    絆=K A

    また組織 における受容体量は活性薬が結合 して も一定である

    [Rt]=[R]十 [AR]

    (4),(5)より

    阿1 + 禅

    が導かれる.詳 細は巻末の付を参照.

    (6)の左辺は組織の金受容体量 [Rt]に対する活性薬 ―受容体複合体量 [AR]

    ( 4 )

    と考 えられ るか ら,

    ( 5 )

    阿一KA

    収縮

    100

    率 ( % )

    - 9 - 8 - 7 - 6 - 5

    o g〔カルバョール〕

    図 1 - 4 モ ルモ ッ ト回腸純走筋における

    カルバ コールの用量作用曲線

  • 害」合,す なわち受容体の 占有率 子 を示 してお り,有 辺 は これが Michadlis―

    Menten型 の直角双曲線型飽和結合 rectangular h)'perbolic saturable bindingで

    あることを意味 している.こ こで活性薬の濃度 :A]が解雑定数 KAと 同一の値を

    とるとき,[A]=KAを (6)に代入すれば,予 =05と なり,す なわち,KAは 全受容

    体の半分にAが 結合するときの Aの 濃度 となる。解離定数 KAが 小さいという

    ことは低い濃度で受容体に結合できるということを示 してお り, したがって KA

    が小さいほどその活性薬の受容体に対する親和性は大きいことになる,

    さて Clarkの考えたように[AR]が Eに 比例す るということを示したものが図

    1-5で ある。つまり受容体が活性薬により100%占 めら才Lた とき,組 織は最大反

    応 Emaxを 生 じ,た とえば受容体が 40%し か占められなかったときは最大反応

    の 40%の 大きさの反応しか起こさないと考えられる1図1-5a,bl,い いかえれ

    ( a )

    4 0 %の反応

    活性業

    占有率40%

    ( 0 )

    活性 薬

    競合的指抗薬

    50 100

    占有辛(%)

    図 1- 5 C l a r kの 受容体機構

    ai全 |モ谷||■40°01こたと業すキ吉合し,4 0 ' bう死はを生してtヽ

    i b i t t t存|よ二壬た某1岩 合と、10 0 P。つ't心、十なかち最tt i苫を三してゃヽる。 C i C l a r k ,■宝容体機構|こお|■るth有率

    〔モ宣■

    反応率(%)

  • 活性薬とpD2,内 活1牛

    ば組織の反応率は受容体 占有卒に一致する.こ の関係を図示 したものが図 1-5c

    である.

    薬理学の実験では,最 大反応の 50%を 与える活性薬の濃度 ED50が よく求めん

    れるが,こ れは図 1-5cで 示 したように占有率 と反応率が一致すると考えれば解

    離定数に等しいことがわかる。いいかえれば ED50は 薬理学的に求められた活性

    薬の解離定数 といえよう(p.23参照)。ED50と 同 じ概念を持つ ものとして pD2が

    ある.こ れはED50(た だしモル濃度で表わされたもの)の negative logarithm,

    -log10 ED50である。この表わし方は水素イオン濃度をpHで 表わすのと同じで

    ある.

    2.内 活性 Intrinsic activity

    すでに述べたように 1,3ジ オキソラン誘導体はアセチルヨリンやムスカリン

    と構造が似ているためムスカリン様アセチルコリン受容体に対して作用すること

    が知られている。Ariёnsは一連の 1,3ジ オキソラン誘導体を用い,そ の構造活

    性相関について検討した。図 1-6は これら1,3ジ オキソラン誘導体のラット空

    陽における用量作用曲線を示したものである。ここで各薬物によって得られる最

    大反応に注目すると,Rが 水素 (H), メチル (Me),エ チル (Et)の場合はいず

    れも同一の大きな最大反応が得られるが,Rを プロピル (Pr),ブチル (Bu)と漸

    1 0 8

    図 1 - 6

    1 0 , 1 0 - 6 1 0 5 1 0 4

    薬物のモル濃度

    ムスカリン受容体に作用する各種 1,

    ジオキソラン誘導体の構造活性相関

    反応率(%)ラ ッ ト空腸

  • 払嗣

    10 ヽ■

    よ 大きくしてぃ くと,そ れに伴い最大反応は低 下していき,さ らにヘ キンル

    Hex)に すると収縮作用は全 く認められなくなってしまう。図 1-6に は示 していなしウ ,ヾHexは アセチルコリンに対 して競合的括抗作用を示す。H,Me,Etの

    ような組織の最大反応を引き起こすことができるような活性薬は完全活性薬 full

    agonist, Pr, Buの ような最大反応カウトさな!舌1生薬は部分!舌4生薬 partial agonist

    と呼ばれるが,部 分活性薬の存在は Clarkの考えでは説明できない。Ariёnsは 各

    活1と薬の最大反応は全受容体がすべての薬物により占有された時に起 こるが,AR形 成後に発生する刺激がたとぇば Prの 場合,Hや Meの 半分の強さである

    と考えた。また Hexの 場合は受容体に結合するだけで全 く刺激を発生せず,他 の

    活性薬の受容体への結合を妨げるので競合的1吉抗薬 となると考えられる。これらのことを模式的に示 したものが図 1-7で ある.

    このようにAriёnsは 薬物受容体複合体が形成されたあとに生ずる刺激の大 き

    さは,活1生薬によって異なるとし,これをあらわすために内活性 intrinsic activitv

    という概念を導入した。通常最 も大 きい最大反応を与える薬物の内活性 を 1と す

    反応率(%)

    100

    50

    メテル誘導体

    (完全活性薬)プロピル誘導体(部分活性業)

    ヘキシル誘導体(競合的指抗業)

    図 1-7 Ariё nsの 受容体機構 を模 式的 に夫わ した図定全i岳性楽が長火戊1占をホ十状態 bi部 分高H:業が最大|てほをホ十状態.競合的特抗楽.

    反応率(%)

    対数 用 量対 数 用 量

    (刺激 は発 生 しな い )

  • 活性楽 とpD2'内 |十千門: 11

    る。そのように考えれば,反 応率は受容体 占有率 と内活性の積で与えられ, この

    関係 を図示 したものが図 1-8で ある.

    このように考えれば,完 全活性薬は内活性が 1で あるような活性薬,部 分活姓

    薬は内活性が 1未 満の活性薬 といえる.ま た競合的指抗薬の内活性は 0で あると

    考えることができる.図 1-6の 例では H,Me,Etは 内活性が 1の 完全活性薬,

    Pr,Buは それぞれ内活性が 05,005の 部分活性薬であるといえる.Hexは 内活

    性が 0で あり,競 合的措抗薬 となる.

    ところで Ariёnsの 考えでは,活 性薬 Aに よって生ずる反応の大 きさは内活性

    2Aと 解雛定数 KAの 2つ のパラメーターのみによって支配されていると考える

    ことができる。KAは ED50に 等しいと考えると,さ まざまな1直の内活性 と解離定

    数をとることにより,そ れに応 じて用量作用曲線は図 1-9の ように変化する。つ

    まり活性薬の解雛定数は用量作用曲線の横軸方向の位置を,内 活性は縦軸方向の

    大きさを決定するもの といえよう。

    このようにAriёnsは 活性薬の効力 potencyを受容体に対する結合の強さ (解

    雑定数で表わされる)と 受容体 との結合に引き続いて起こる刺激を発生させる力

    (内活性で表わされる)と に分離 し,そ れらは互いに独立 したものであると考え

    た.一 方,競 合的措抗薬の内活性は 0で あるので,競 合的措抗薬の効力は受容体

    との結合の親和性だけで決められることになる。

    反応率 (%)

    100―L完 全活性葉|(内 活性 =|)

    部分 活 性 薬

    | ( 内 活 性= 0 5 )

    ル稲輪50

    占有率( % )

    Attёnsの受容体機構における占有率―

    反応直線

    図 1-8

  • 総12

    ED 50 E D50 ED 50 対 数用量

    E D とo < E D 5 0 < E D 5 0

    図 1 - 9 活性薬の内活性 と親和性 を独立に変化

    させた場合,用量作用曲線がどのように

    変化するかを示した図.ED50が 小さい

    ほど薬物の親和性が大きい.

    III.競合的捨抗薬 とpA2

    1.PA2の 概 念

    競合的措抗薬を生体に与えても反応は何 も起こらないが,受 容体には結合する

    ので,こ のものが存在するとき活性薬の受容体への結合は妨げられる。 しかしな

    がら活性薬の濃度を十分に高めると,競 合的括抗業は活性薬により受容体から追

    い出され,活 性薬によって得 られる最大反応の大きさには変化が認められない。

    したがって活性薬の用量作用曲線は競合的措抗薬により高濃度側へ平行移動

    parallel shiftする。これを式で示 したものが (7)である。式の誘導は巻末の付を

    参照.

    Y =

    [ A ]

    KA(7)

    1+器十培競合的措抗薬の効力をあらわす子旨標として pA2を用いる,pA2とは

    「活性薬単独

    の用量作用曲線を2倍だけ高用量側に平行移動させるのに必要な競合的措抗薬の

    モル濃度のnegative logarithmJで定義される値である。ところである薬物によ

  • 競合的結抗薬 とpA2, 13

    っ、【J舌性馨2里 離 風出侵が子行移動|とか らと立F2て→.、その基惣!ま必ず′しヽ競

    合的措抗薬とはいえない,用 いた競合的結抗薬の濃度と活性薬の用量作用曲線の

    平行移動の程度は次の式で示されるように一定の関係に従ったものである. F

    端 判十絆 0ここである一定の大 きさの反応 を活性薬 A単 独で得た場合のAの 濃度 を

    [A]0,濃 度 [B]の 競合的措抗存在下において得た場合のAの 濃度を [A]と し

    ている。K里は光合的拾抗案と受容体よの結合の解推定数である.

    [A]/[A]0は競合的措抗薬によって活性薬の用量作用曲線が何倍平行移動する

    かを示した値であり,用 量比 dose ratioとも呼ばれる。たとえば競合的結抗薬の

    処理により活性薬の用量作用曲線が 10倍高濃度側へ平行移動した場合,用量比は

    10であるという。

    さて先に述べた定義によりpA2は 活性薬の用量比を2と するような競合的指

    抗薬のモル濃度の negative logarithmであるから,そ のような競合的措抗薬の濃

    度を [B ] 2とすれば,

    pA2=~10g[B]2

    -方 ,(8)に用量比 [A]/[A ] 0 = 2に代入すると

    2 = 1 +磐

    すなわち,

    [B]2=KB

    両辺の負対数 をとって

    一log[B]2=-logKB

    は9に は0を 代入すれば,

    pA2=~10gKB

    したが って p A 2は 競合的措抗薬 と受容体 との結合の解雑定数 の

    l o g a r i t h mを薬理学的に求めたものであるといえる.

    ( 1 0 )

    ( 1 1 )

    negative

  • 総14

    2. SchildフPロ

    ッ ト

    pA2は競合的措抗薬と受容体 との結合の解離定数のnegative logartthmとな

    るから,概 念的には活性薬の pD2と 同一のものである (p.9参 照).し かしなが

    らpA2を 求める場合には競合的括抗薬はそれ自身で生理反応を引き起こさない

    ため,活 性薬との競合的措抗作用から間接的に求める必要がある。pA2を求める

    方法としてはSchndの方法がある。すなわち,(8)より

    批-1=器

    両辺の対数 をとって

    畦(掛 →10g□司帥用量ナし[A]/[A]0を DRと し, また

    -logKB=pA2で あることから,

    10g(DR-1)=log[B]十 pA2 位 〕

    t〕より縦軸にlog(DR-1),横 軸にlog[B]を とった時,横 軸切片がpA2を

    与える.こ のような仕方のプロットをSchildのプロットという。車 ズ里立_工,

    の直線の傾詩 |々IF41ジ 合い,た生生犯量作用曲線が平行移勲生示して主主旦_!土

    Aの 競合的結抗薬であると生と,|ない。いいかえればある受容体に作用する活性

    薬の用量作用曲線を何倍平行移動させるかは,競 合的指抗薬固有の定数である

    pA2とその時用いた濃度 [B]だ けから式はかで厳密に決定されている.し たがつ

    て用量作用曲線を描 くのに用いた活性薬の種類,動 物種と,臓 器差などによって

    変化は認められない,図 1-10は ウサギ大動脈の'9せん状標本を用いて,フ ェニ

    レフリンの α―作用に対するフェン トラ ミンの読合的措抗作用の結果 をSchildプ

    ロットしたものである。

  • 余剰受容体の発見と非可逆的桔抗楽 15

    - 8 - 7 - 6 - 5

    o g〔フェントラミン〕

    図 1-1 0 ウ サギ大動脈 らせん状標本 を用い

    て得 られた ノルエピネフ リンの α―作用に対す るフェン トラ ミンの

    読 合的持抗作用の結 果 の Sch i l d

    プロッ ト

    IV.余 剰受容体の発見 と非可逆的措抗薬

    1.非 可逆 的措抗 薬

    ダイベナ ミンや SY 28,フ ェノキシベンザ ミン (図1-11)な どはβ ハロエチ

    ルア ミン類 β―haloethylaminesと呼ばれ,戦 争で用いられた毒ガスであるナイト

    ロジェン・マスター ドnttrOgen mastardの類似物質である.こ れらは水溶液中で

    ′ヽロゲン ・イオンを脱雑 して,反 応性 に富むアジリデ ィニウム ・イオンaZri―

    dinium lonとなり,受 容体などの生体分子 と結合する.こ れらの薬物が結合 した

    受容体はもはや活性薬 と有効な相互作用ができなくなり,そ の結果受容体の遮断

    が起こる。これらの薬物 と受容体 との結合は共有結合を介したものであるので,

    組織の洗浄によっては容易にとり除 くことができず, したがってこれらの業物は

    チト可逆白旬手吉抗薬 irreversible antagonistとB子ば″しる。 夕ヾイベtミ ン, フ ェノキシ

    ベンザ ミンなどは 2受 容体に対 して選択的に作用するとされているが,濃 度を増

  • O

    じ④\/OH CHrcけCR、

    ャ/♀H2

    駆〉…中

    CH2~CH2~CJ

    CH2~CH2~Cl

    図 1 - 1 1 非 可逆 的措抗薬 で あ る β ⌒ ロエ チ ルア ミン類 の構造

    マニ′キンベン十 ミンと7・ロピ,ベ ンブ | !レヨ |ン マ スター ドて|まその活性体て

    あるアブ |千アニ'と、 ィ ォン勾構造も示してある

    受容体のアルキル化

    ム円袷16

    CH3/

    ∈yO一CH2-Rr αぃざ上2~αN一 CP

    /

    ③ 的キシベンザ ミンフェノ

    ④汁CH2、_cH2 CH2 0

    ④浮CHダダイベナミン

    フェノキシベンザ ミンの

    アジリディニウムイオン

    azヤdnum on

    SY‐28

    ヘメ(c。_cH2上cH2/ざ\とH2)ド(|gヽ 偏~→ 手行管?化

    O

    ♀H2~CH《:i号

  • 余剰受容体の発見と非可逆的措抗楽 17

    す とセロ トニン受容体, ヒスタミン受容体, さらにはムスカリン受容体に対 して

    も非可逆的措抗作用を示すようになり,特 異性はあまりない。 しかしムスカリン

    受容体に特異的なもの としてプロピルベンジリルコリン ・マスター ドpropylbe呼

    zylylcholine mastard, オピオイ ド受容体に特異的なものとして,β―クロルナル

    トレキサ ミンβ chlornaltrexamineなどが報告 されつつある.

    2.余 剰受容体

    非可逆的措抗薬は受容体 と共有結合を形成して活性な受容体量を減少させるこ

    とにより非可逆的な措抗を示すので,そ の結抗様式は図 1-12bに 示すように

    pD2(親和性)に は変化を与えず,内 活性 (最大反応)を減少させるような性格の

    ものであると予想される。この点,活性薬の内活性には影響を与えず,pD2の低下

    をもたらす競合的措抗薬とは対照的なものといえよう。

    しかしながら,ラ ットツト腸において 105Mダ ィベナ ミンを10分ないし20分

    反応率(%) D

     

    ンナ

    ヽ/  べ M

    彫悔‐叶

    反  10   3

    1 0 - 6 1 0 5

    アレコリン( M )

    105 104 M

    ピロカル ピン( M )

    図 1-12

    tlま10~SNI

    している`

    ‐、arl Rosstlm

    S t a c e 、 R S

    ダイベナ ミン処理後のラ ント空揚における完全活性薬で

    あるアレコリン(a)と部分活性薬であるピロカルピン(b)

    の用量作用曲線

    夕やイベ■ミンの処理時間を示し, 0は末tL理対照標本での結果を示

    J M iln Recent advances in Pharmac。10g),IVi卜cd RObsOn、JM&eds 99~133 Churchill Londoni 19681

    ダイベナ ミ

    05 M

  • 間与えておいて十分に洗浄したのち,完 全活性薬であるアレヨリンの用量作用曲

    線を求めると,平 行移動のみがあらわれる (図1-12a)。 期待されるような最大

    反応の低下はダイベナ ミンの処理時間を30分 以上にしてはじめて観察されるよ

    うになる。一方,部 分活性薬であるピロカルピンの用量作用曲線はダイベナ ミン

    処理によって直ちに最大反応が低下 し, このとき高濃度側への移動はほとんど認

    められない(図1-12b)。図 1-12aで 見'っれる現象を説明するために Nickerson

    は余剰受容体 spare receptor,receptor reserveという概念を導入した。Nicker‐

    sonの考え方を以下に説明してみよう。

    図 1-13に 示 したように,組 織の最大反応は全受容体の一部 (図では 1/4)が活

    性薬により占有されただけで得られるとする.曲 線は受容体への活性薬の結合を

    示し,大 線はあらわれる組織の反応を示 している。なお, この図では理解 しやす

    いように通常の用量作用曲線 とは異なり,横 軸の濃度は対数値ではなくそのまま

    の値で示している。まず活性薬単独の場合を示す ① であらわされた用量結合曲

    線と用量作用曲線を見てみよう.活 性薬の濃度を増すにつれて受容体に活性薬が

    結合していき,そ れと一致して組織の反応は大きくなっていく.こ こで全受容体

    の 1/4に 活性薬が結合してしまうと,そ れ以上活性薬の濃度を増していっても,

    完全活性薬の濃度

    図 1-13 余 剰受容体 を持つ完全 活性 薬の濃

    度 ・反応卒 曲線 と濃度 占有卒 曲線

    の関係

    この場合の完全活性業は全受容体量の 25%を 占有

    した時に最大反応を引き起こし,lltりの 75°。の受容体

    |ま余剰受容体として考え',れている 本 文参照.

    率          茄r叫寸‐叫‐oL

    鋳‐=「‐‐‐‐‐■「――

    射―――叶

    細線に示 したよi十二i

    織の反応は最大代t

    と, 期イ寺されるよ 二

    (曲線 ②,③ l.ャ モ

    ので組織の最大'〔どと

    すなわちED50カ !|〔:

    行移動に当たり、 十

    と始めて最大反は~[

    ナ ミン処理 30分 |ザ、1

    このように最大十(1

    存在する受容体はなi

    に余剰受容体 といす。

    る.

    Stephensonも ヽ1ご!

    アルキル ト|)メチ :~

    性薬は受容体の一言,こ

    発生すると考えた.

    StephensOnは キ午ャ

    S = e Y

    と定義 し,

    E議=fト

    の関係があるとした

    拡張 したものであ r、

    応 との関係 を示 した i

    StephensOnの考 i

    は efficacyが /1さヽ

    性薬は受容体 と角■t

    ように一部の受容lti

    生する。ゆえに余手 モ

    は受容体 との複合|よと

  • 余剰受容体の発見上非可逆的粘抗薬 19

    細線に示したように受容体には活性薬が結合していくが,大 線で示したように組

    織の反応は最大反応のレベルで止まってしまう.こ こでダィベ十 ミンを処理する

    と,期 待されるように受容体の親和性には変化がなく,受 容体量が減少してくる

    (曲線 ②,③)。しかしこの場合には,まだ受容体の元の曇のr4以 上残っているので組織の最大反応に達することはできるが,50%反 応を与える活性薬の濃度,

    すなわちED50が 大 きくなって くる。これが図 1-12aで 示された見かけ上の平

    行移動に当た り,ダ イベナ ミンの作用を大 きくして受容体の量を 1/4以下にする

    と始めて最大反応の低下が見られるようになる (曲線0,図 1-12aではダイベ

    ナ ミン処理 30分以上).

    このように最大反応を得るには全受容体の 一部で十分であるので,そ れ以上に

    存在する受容体は余分 (余乗1)な もの といえる.ゆ えにこのような受容体 を一般

    に余剰受容体 という.図 1-13の lylでは,受 容体量の 75%が 余剰受容体に相当す

    る。

    StephensOnも NickersOnとは独立に同様な結論 を示唆 している。彼は種々の

    アルキル トリメチルアンモニウム誘導体の構造活性相関について検討 し,完 全活

    性薬は受容体の一部を占有 しただけで組織の最大反応を与えるのに十分な刺激が

    発生すると考えた。

    StephensOnは ネ折しく末い教Sを

    S = e Y

    と定義 し,

    議 ギ0た だし

    の関係があるとした。ここでeは eff i c a c yと呼ばれるものでAriёnsの内活性を

    拡張したものであり,fは 受容体より直接発生する刺激と最終反応である組織反

    応との関係を示したものである。

    Ste p h e n s O nの考え方では完全活性薬はeff i c a c yの大きい活性薬,部 分活性薬はefficacyが/1、さい,舌″1生薬であるとV うヽことができる。 efficacyが 大きV 完ヽ全,舌

    性薬は受容体 との複合体形成によって発生する刺激が大きいので,図 1-14aの

    ように一部の受容体 と相互作用するだけで最大反応に達するのに十分な刺激が発

    生する。ゆえに余剰受容体が存在するとした.一方,efficacyが小さい部分活性薬は受容体 との複合体形成後発生する刺激が小さいので,図 1-14dの ように全受

    凱=1のとき熱 =oぉ

  • (a)Stephensonの 受容体機構

    反応率(%)

    (d)

    反応率(%)

    総20

    ( 0 )

    反応率(% )

    非可逆的

    指抗薬

    対数用量

    非可 逆 的

    指抗 薬

    ▼ 数用量刺 激

    ( 0 )

    100

    非可逆的 50

    培抗薬▼ 0

    非可逆的

    指抗薬

    対数用量 対数用量 対数用量

    部 分 活 性 薬

    図 1- 1 4 S t e p h e n s o nの 受容 体lT r構

    a l完 全活性楽の用量作用曲線山 と完全活性某が最大反十どをと二とたときのセ容体|も有の様了

    |口を模式的に示している b . C i J F■丁逆的若抗楽て処理 L〔 、 た →合の模式1珂.d , C , f i

    部分i岳性某の場合をa, b , cに それそ″と対応させて描いた凹

    容体 と相互作用しても組織の最大反応を得るのに十分な量の刺激が発生 しない。

    lDえに部分活性薬においては余剰受容体は存在 しないことになる.

    このようなStephensonの考え方に基づいて図 1-12に 示 したダイベナ ミンに

    よるアレコリンとピロカルピンの抑制態度の違いを説明してみよう。完全活性薬

    であるアレコリンを用いた場合には受容体量に余剰があるため, ダイベナ ミンで

    受容体量を減少させていつても,ダ イベナ ミンが余剰な部分を述断している間は

    アレコリンは組織の最大反応を得るのに十分な刺激を発生させ ることができる.

    図 1-14bは ダイベナ ミンでちょうどアレコリンの余剰受容体 をすべて遮断 した

    状態を示 している。ここである大きさの反応を得るのに必要なアレコリンー受容体

    刺激 対 数用皇

    完全活性栗

    反応率(%)

  • i舌性薬の真の解離定数 とrelative efficacy 21

    複合体の量をもたらすためには,ア レコリンをより高濃度必要 とするので用量作

    用曲線は見かけ上平行移動を示 している。この見かけ上の平行移動に関する詳細

    な議論はすでに図 1-13に おいて説明したのでここでは くり返さない。図 1-14F

    のように受容体量をさらに減少させてしまうと, もはやアレコリンは組織の最大

    反応を得るのに十分な量の刺激を発生できず, よって最大反応の低 下を伴 う。こ

    のように Nickersonの考えは Stephensonの受容体機構の完全活性薬の場合に

    相当する。

    さて一方,部 分活性薬であるピロカルピンは刺激を発生する力が弱いので, も

    ともと余剰受容体 を持っていない (図1-14d)。 したがってダイベナ ミンで受容

    体量を減少させ ると直ちに最大反応は低下することになる (図1-14e,f).

    ところで図 1-14に おいて完全活性薬は左側の受容体に結合して,残 った右側

    の受容体 を余剰受容体 としている。また非可逆的結抗薬はあたかも右側から結合

    してい くように描かれている.し か しこれらは図を見やす くするためにそのよう

    にしたのであって,受 容体に活性薬や非可逆的措抗薬が結合する際に優先順位が

    存在するのではない。また普段利用されない余乗」受容体 というものが固定 して存

    在することを意味 しているのでもない。StephensOnの考え方によれば,あ くまで

    も受容体群は均質であって,活 性薬はそれらの受容体 と任意に結合 し,最 大反応

    に達 したときたまたま活性薬 と結合 していない受容体群 を余剰受容体 と呼ぶので

    ある。

    V.活 性薬の真の解離定数 とrelative efficacy

    .Ariёnsお よび Stephensonの受容体機構における問題点

    Ariёnsは 活性薬の効力 を pD2(親 和力)と 内活性 (刺激 を発生 させ る力)で 表

    現 した。

    しかしAriёnsの受容体機構においては占有率 と反応率は正比例すると考えて

    いるのでED50が 活性薬の解離定数 KDと なるハ 前節に述べたように余剰受容

    体が存在すると考えれば,ED50は 必ずしもKDを あらわさないことになる.余 剰

    受容体が存在 しない部分活性薬においてはこの問題 も回避できるように思われる

  • が,StephensOnが指摘 したように占有卒 と反応率が複雑な関数 fに支配され単純

    な比例関係にないとすれば,こ の場合 もED50を 以って KDと することはできな

    一方,活 性薬が活性作用を示す源である刺激の発生力は,Ariёnsに よって内活

    性で示された。 しかしこの議論においても内活性は最終反応である最大反応の大

    きさの比で示されているため,余 剰受容体が存在する場合,あ るいは刺激と反応

    率が単純に比例 しない場合は必ずしも刺激の発生力を正確にあらわしてはいない

    この点 StephensOnの 考えた efficacy,eは 受容体から直接発生する刺激 Sを

    引き起こす力として定義されているので優れているといえる。 しかしながらeは

    占有率 という半手 と刺激 Sと いう景を結びつけるものであり,そ の値 自体は全受

    容体に,あ る活性薬が結合 した時に発生する最大刺激量を意味する。 したがって

    異なる組織の間で比較 した場合,受 容体量が異なるとeも その分だけ変化 してし

    まうため活性薬 と受容体 との間の相互作用を特徴づける普遍的な指標とはなり得

    ない。

    そこで Furchgottは 実験的に求めることはで きないが 1つ 1つ の受容体か ら

    発生する刺激を引き起 こす力 として新 しくintrinsic efncacy,cを 定義 した.c

    の値 自体は 1個 の活性薬 ―受容体複合体から発生する刺激量に相当する。 したが

    EA,冊aX//Emax=f(Smax)(=nthnsic act vty)

    l i刺激Sm a x ( = e )

    / ―

    S s s s s s ( = c )

    活性薬A

    図 1-15 StephensOnの efficacy(e)と Furch‐

    gottの intrinsic efficacy(crら 比較

    Smaxは 全受容体に活性薬Aが 結合した時に得られる最

    大刺激量。sは 1個の受容体からAに よって発生する刺激.

  • 活性実の真の解離定数 とrelative efficacy 23

    って活性薬によって発生する刺激の量 Sと 活性薬 ―受容体複合体の量 [AR]の 関

    係は,

    S=c[AR] (lD′

    であらわされる。またeと cの 関係は,eの値が全受容体に活性薬が結合したとき

    に発生する最大刺激量を,cの 値は 1個の受容体に活性薬が結合したときに発生

    する刺激量を意味しているから,明 らかに

    e=c[Rt]

    ここで [Rt]は 組織における全受容体量である。

    eを 用いて StephensOnは占有率 と反応率の関係を

    監=fにD

    としてあらわしたが, これは c を 用いるとQ O より直ちに,

    [ R t ]マ)

    となる.

    2.活 性薬の真の解離定数 の求め方

    Furchgottは非可逆的措抗薬を用いて真の解離定数を求める方法を報告 してい

    るので以下に具体例をあげて紹介する。

    図 1-16aの ○はモルモット回腸縦走筋におけるカルバコールの用量作用曲線

    である。この時カルバコールの pD2は 7.43,すなわちED50は 37× 108Mで ぁ

    った。回腸維走筋を3× 105Mの 濃度のダイベナ ミンで 30分間処理した後,組織

    を十分に洗浄して90分後に求めたカルバコールの用量作用曲線が●である。対照

    の用量作用曲線と比べ最大反応が低下し,か つ高濃度側へ移動していることがわ

    かる。次に同一反応率を与えるカルバコールの濃度をダイベナ ミン未処理および

    処理後の用量作用曲線より求め,そ の逆数をそれぞれ縦軸と横軸にプロットする。

    図 1-16bは そのようにして得られたFurchgottの両逆数プロットdouble reci‐

    procal plotである。カルバコールの解離定数は図 1-16bの プロットの傾きおよ

    び縦軸切片より,(傾 き-1)/(維 軸切片)と して求められる。この例では5.3×

    ll1 6Mでぁった。なお, 1/(傾 き)はダイベナ ミンによって近断されないで残っ

    EA

    一Em

  • 総24

    ( a )

    - 8 - 7 - 6 - 5

    1 o g〔カルバコール〕 〔A〕(X105)

    図 1-16 活 性薬 の解雑定数 の求 め方

    aiカ ルバコーツレの用量作用曲線をダイベ十 ミン末lL丁■にコおよび処理イ々 に〕のモルモ ,卜回i号ヤせ

    に筋標本で求めたもの ダ イベ十 ミン処理は3X105M″ )漫度で 30分問行い,そ の後末反応の夕`

    イベ■ ミンを除くために90分間十分に洗l■した`「|の千夕の線は任意に送′した司一にはを示す時の

    カルバヨールの濃度を求めていることを示す。 biaの 結果を「urchgottダ)向1堂数プロ ットした

    もの。

    た活性な受容体量の割合を示す もので q値 とも呼ばれるものであり,こ の例では

    00 2 3で あった。またeは

    (式は9の 求め方の詳細は巻末の付を参照)

    で与えられることが知 られてお り,上 の値 を代入すると,e=144と なる,

    Furchgottの誘導は,受 容体の占有率 と反応率が単純に比例しないという場合

    においても適用しうるという点で優れている。つまり, 占有率 と反応卒 との関係

    fは未知のままであるけれども,同一の反応を起 こす場合の刺激は共に等 しいは

    ずであると考えたことであり, このように同一反応を比較することによりfの寄

    与を事実上消去してしまう考え方を帰無仮説 null hypothesるという.逆 にいえ

    ば,現 在占有率 と反応率の関係を正確に求めることができない以上,あ る処理を

    施す前と後での反応の比較は帰無仮説を用いないと不可能であるともいえよう。

    なおIII節で触れた競合的措抗薬のpA2の求め方もはっきりとは述べなかったが,

    帰無仮説の考えに基づいて求められているものである。

    十ED5〇

    一K A〓

    S

    126× OT

  • lf性業の真の解離定数 とrelative efficacy 25

    3.占 有率―反応 曲線 と聞値

    FurchgOttの方法を用いて求められたKAの 値か'9受容体 占有率 ―反応曲線

    occupancy―response curveを 手苗く ことがて,きる。

    設=f(e・‐) oo

    であるか ら,椛 軸 に反応率 EA / E m ,横 軸 に マ をとり具体的 な マ のll hは,

    [ A ]卜指 0

    を利用して求める。図 1- 1 7は このようにして求められたウサキ毛様体平滑筋の

    余剰受容体

    カルバコール

    アレヨリン

    ノトレモ リン

    図 1-1 7 ウ サギ毛様体平消筋ムスカ リン受容体

    におけるカルバ コール (●Lア レコリン

    tl, ,オキツ トレモ リン(E)の占有卒―反応

    曲線.Ci a r kの 占有千―反応曲線 (図1-

    5 )お よび Ariёnsの 占有卒―反応曲線

    (図1-8 )と 比較せ よ.

    ピロカザレピン 十 1 1よ十とキ風撒|二よ ,て ,Rめら,とたrela‐tive efflcac)を用いて描かれたもの ピ ロカルピンによる刺激は小さいため戊はの間1とを越え'ラれす, この組織においては競合的精ft業としてはた',(.

    I K o n l l ( ) F &′I a` k a、a n a g i l i J a p a i l J P h a r n l a c o】3 8 9 F、1 9 8 5

    (ぺ)冊壇ば

  • ム調総26

    ムスカリン受容体に対する各種活性薬の占有率 一反応曲線である。完全活性薬で

    あるカルバコールは全受容体の約 20%を 占有することにより最大の 50%反 応を

    生 じ,90°。を占有 した時最大反応を生 じる.戦 りの 10%は 余剰受容体である。 →

    方,部 分活性薬であるアレコリンやオキツトレモリンは全受容体を占有しても最

    大の 40~20%し か反応を生 じない。 またこれらの薬物は 30~40°。の受容体 を占

    有してはじめて反応を起こしはじめるが, これは発生する刺激が小さい時は反応

    の関値を越えることができないことによるもの と考えられる.同 様な関値の存在

    は競合的措抗薬を用いた解析からも示唆されている.

    A.親 和性に関係するパラメーター表 1-1

    ある活性薬がある組織において50%反 応を示す時のi裟度.相 対値.

    完全活性薬 Aと 受容体 との結合の解離定数.固 有lla.

    競合的措抗薬 Bと 受容体 との結合の解離定数.固 有値.

    部分活性柔 Pと 受容体 との結合の解難定数.|ユ有値.

    ED5oの negative logarithm. 十目対1直.

    活性薬の用量比を2とするような或合的措抗薬のi裏度の n e g a t i v e l o g

    a r i t h m .理論的には - l o g K Bに手しいので回イ丁値 となる。

    ED5o

    KA

    KB

    Kp

    pD2

    pA2

    B.刺 激を引き起こす力に関するパラメーター

    内活性 あ る活性薬がある組織において示す最大戊はの大きさを表わす。相対値.

    e あ る活性案がある組織において中け淳々をづき起二十力.相 対値.

    c あ る活性業が 1個の受容体に結合して刺11宝をけき起こす力.固 有値であ

    るが実験的に求められない.

    er あ る受容体にお|十る1舌性楽間の eの 比.刺 まの1日成■を仮定すれば cの

    比にも等しいので固有値 となる。

    VI.受 容体の分類

    1.受 容体理論 と 受容体 の異 同

    受容体理論においては受容体に作用する薬物と受容体 と

    和性を示す解離定数 と刺激を引き起こす力であるintrindc

    の相互作用様式は親

    e f f i c a c y によって必

  • 受容体の分類

    要かつ十分に記述することができる.こ の 2つ の値は問題 としている受容体 と薬

    物 との関係において固有のものであり,用 いた組織の差などに依存しない「定数J

    である。このことを利用すれば薬物の解雑定数 とrelative efficacyの値を比較す

    ることにより,受 容体の異同を論ずることができよう。従来受容体の分類は主と

    して,

    (1)種 々の活性薬の効力順位.

    (2)競 合的指抗薬の pA2値 の比較.

    により行われてきた力ヽ こ れらの議論は上で述べたような理論的背景に基づいて

    いるものである。

    近年,β 一受容休 (→βl,あ ),2~受 容体 (→21,22)な ど従来 1つ であると考

    えられてきた受容体がさらに細分化 subclassificationされる傾向にある.し たが

    って以下に受容体理論の立場から見た受容体の分類法について概説する。

    2.活 性 薬 の効 力順 位 に よる受容体 の分 類

    一連の活性薬の効力順位を種々の組織で求め,そ の効力順位を比較することよ

    り各組織における受容体の異同を判定する方法である。たとえば Ahiquistは6種

    の交感神経作用薬の効力順位 を各種臓器で求め,そ の効力順位のパターンが大き

    く2種 に分かれることから,ア ドレナ リン作動性受容体 を 2-受容体 とβ―受容体

    の 2つ のタイプ type(型 )に 分類 した。2-受容体,β―受容体はさらに各種の 2~

    作用薬あるいはβ―作用薬の効力順位 を比較することにより,そ れぞれ 21,22と

    ゑ,れ のサブタイプ subtypeに細分類されている。この方法は (2)で述べる選択的

    な競合的賠抗薬の存在を必要 としないので,そ のような選択的措抗薬が手に入ら

    ない時でも (まだ開発されていないなどの理由で)検 討できる利′点がある。

    しかしながら活性薬の効力は解離定数 とintrinsic efficacy両方に依存してい

    るので,順 位 を求める際に何を効力の指標にするかが問題 となる。たとえば図 1-

    18a,bは それぞれラット肛門尾骨筋 とラット輸精管におけるノルエピネフ リン

    およびオキシメタゾンの用量作用曲線を示 したものであるが,一 見オキシメタゾ

    リンとノルエピネフリンの効力は両組織で全 く逆転 しているように見える.し か

    しこの現象は,両 組織の α―受容体は同一であるが,

    (1)輸 精管よりも肛門尾骨筋の方が受容体量が多い.

  • 総28

    ノルエピネフ リンは親和性は低いが,

    オキシメタゾ サンは親和 | とは高いが、

    (a)ラ ッ ト肛門尾骨続反応率(%)

    100

    50

    intrinsic efFicacy力十末き↓ヽ.

    intrinsic efficacyは/卜さい.

    (b)ラ ッ ト輸精管

    0

    図 1-18

    9 8 7 6 5 7 6 5 4 3

    -og〔活性薬〕一og〔活性菜〕

    ラ ト 号モ門宅信‐杭 lalとラ ト :前1青名■biにあ|十る ノゥェ

    ピネ7 1 ン ●| とすキシメタゾ | ン十: | の用量作用曲線Kせnna k i n T P I B r 千 P h a r n l a c ( | 卜1 1 3 4 1い1

    卜BI可尾骨筋

    (a)対RR (b)フェノキシベンザ ミン

    (3X OSM)

    0分処理

    1 0 )フェノキシベンザ ミン(0「 l v l )

    0分処理

    8 7 6 5

    -og〔活性薬〕

    8 7 6 5

    -og〔活性薬〕

    8 7 6 5 4

    -og〔活性業〕

    図 1-1 9 ラ ,卜,I F l屯骨新十二お|十る ノけェ ピネ71ン 1●|とオキシメタ /`・|ン 十=十の用量作用曲線 を対照標本 十aL 3 X 1 0 S Mフ ェノキンベ ンギ ミン 10分 処理標本 lblおよび 10 F M 1 0分処理標本 十CIて求めた もの

    K c n n t i k h l T P i B r i P h a i n l a c。1 さ1 1 3 1 1 9さ4

  • 受容体の分類 29

    と考えても十分に説明 しうる。実際ラット月工門尾骨筋をフェノキシベ ンザ ミンで

    処理 して受容体量を減少させると図 1-19cの ようにな り, これは図 1-18bの

    ラット輸精管における用量作用曲線のパターンと全 く 一致する。 したがって効カ

    順位 を比較する場合は,vヽずれの組織においても完全活性薬となるような薬物を

    多種類用い,そ の ED50を 効力の指標 として検討する場合が多い。

    3.競 合 的指抗 薬 の PA2値 に基 づい た受容体 の分 類

    本法は競合的措抗薬の pA2値 を比較することにより,受 容体の異同,あ るいは

    楽物の受容体選択性を検討するものである,活 性薬 とは異なって競合的括抗薬の

    効力は親和性のみで決まるから,効 力順位の比較の時に問題 となるefficacyの寄

    与がな く,よ り信頼性に富みかつ定量的な議論ができる。この考えに基づいた

    Demichelら (1981)の実験を以下に示 して説明にかえよう.

    Demichelらはラット輸精管の前シナプス 2-受 容体 と後シナプス 2受 容体に

    おける各種ラウオルフィア ・アルカロイ ドの pA2を 求めた。 クロニジンは輸精管

    の交感神経末端に存在する前シナプスα―受容体に作用 して ノルエピネフ リンの

    放出を阻害 し,神 経の電気刺激によって得られる単収縮を抑制する.ア ルカロイ

    ヨヒンビン

    ラウバシン

    コリナンテン

    105各 培抗葉の濃度

    (M )

    1 - 2 0 ラ ッ ト輸精管前シナプ スの 2受 容体におけるクロニブンとヨヒンビン (□),ラウバシン (●),コリナ

    ンチン (■)との読合的培抗 を Sch i l d p l ( ) tした もの,

    輸精菅の電気刺激は持続時間 2 m s e cで 30 Vの

    短形淀 を坂度 0 1 H zの 条件で流すことによ り行

    った.

    De r l l i c l l e l P c t a l t B r J p h a r i n a c 7 4 F 4 3 , 1 9 8 1 1

  • 総30

    表 1 - 2 S c h i l d p l o t より求められた3種のラウオルフィア・アルカロイドの

    pA2とイ頃き

    前シナプスα受容体*

    用いた活″性薬 ク ロニジ)

    後シナプスα 受容体ⅢⅢ

    用いた活性薬 ノ ルエピネフ リン

    pA2 傾 き pA2 1頃き

    ラウバ シン

    ヨヒンビン

    コリ十ンチン

    6 0 2± 0 0 7

    8 2 6± 0 0 8

    4 9 9± 0 0 7

    1 0 2 ±0 0 6

    0 9 8 ±0 0 7

    1 04:上0 06

    6 7 6± 0 0 2

    6 6 2± 0 0 5

    6 6 4± 0 0 4

    1 0 1 9 ±0 0 1

    0 95±0 02

    0 9 6± 0 0 2

    ャ!刺激条件は持続時間2 m s e c ,電圧30 V ,頻度0 1 H z

    r 4 1 1加えたノルエピネフ |ンが神経末端内にとりこまれるのを防 くため, 3 X 1 0 5 Mコ ヵィン

    を処理している。IDemichelⅢ P et al t BI J PhaHllac 74、 7411 7431 1981+

    ドはこのクロニジンの作用に対 して搭抗 し,そ の結果のSchlldプロットが図 1-

    20で ある。表 1-2の 左側には図 1-20よ り求めた 3種 のアルカロイ ドの pA2と

    直線の傾 きをまとめている。傾 きがいずれも1と 有意差がないことよりこれらの

    化合物は前シナプスα―受容体に対する競合的措抗薬であり,さ らに pA2値 の大

    きさよリヨヒンビンの効力が最 も強いことが読み とれる。一方,輸 精管平滑筋上

    には後シナプス 2-受容体が存在 し, ノルエピネフリンはこれに作用して筋を収

    縮させ る。 こ のノルエピネフリンの作用に対 してもアルカロイド群は競合的措抗

    薬 として作用するが(表1-3右 側),ヨ ヒンビンの pA2は 前シナプスα―受容体に

    おいて求められた値より有意に小さい。 したがってラット輸精管の前シナブス作

    受容体 と後シナプス 2-受 容体は異なる受容体であり,さ らにヨヒンビンは前シ

    ナプス α―受容体に対 して選択的な競合的措抗薬であるといえる。前シナプ ス2-

    受容体 と後シナプスα―受容体が異なることはラウバシンとコリナンチンを用い

    た結果からも支持 される。pA2値 の比較よりこれらのアルカロイドはむしろ後シ

    ナプス α―受容体に対 して選択的であるといえる.こ のことはヨリナンチンにお

    いて特に顕著である。

    ところで Schildプロットの傾 きが 1と ならない場合は pA2を 求めることがで

    きないので注意を要する。このような場合,措 抗薬は競合的ではないのである。

    しかし種々の実験上の要因により見かけ上 Schildプロットの傾 きが 1と ならな

    い場合がある。考えられる可能性 としては,

    (1)傾 き

  • 受容体結合実験 31

    の寄与が無視できないとき.

    ② 組織に2種以上の異なる受容体が存在し,用 いた活性薬,競合的措抗

    薬いずれ もがそれらに対 して選択性を示す時. ″

    (2)傾 き>1と なる場合

    低濃度の競合的措抗薬で処理する際に処理時間が短すぎた場合.

    などがあげられる。詳細については文献 7)を 参照されたい.

    なお部分活性薬の解離定数 を求めたり,活性薬間の efncacy(relative efficacy)

    を比較 したりすることは受容体研究ではよく行 う。これについては巻末の付を参

    照のこと.

    VII。受容体結合実験

    1.結 合実験 とは

    受容体理論はもともとClarkが 「組織には薬物が特異的に結合する受容体 とい

    うものが存在し,そ の結合は質量作用の法則に従っている」と想定したことに端

    を発しており,あ くまでも薬物による反応を説明するためのモデルを提供するも

    のにすぎない。受容体が本当に存在するのか,存 在するとすれば薬物は受容体に

    どのようにして結合し,そ の後どのような生理学的 ・生化学的過程を介して最終

    反応である組織反応に追なっていくのかという′点については受容体理論では説明

    できず,全 く別の面からのアプローチを必要 とする。

    近年受容体を介した反応を物質レベルの立場から解明しようとする試みが盛ん

    になされるようになってきた。その詳細は他の章に譲 りここではそれらの解析の

    中においても基礎 となる結合実験 binding assayについて述べる.原 理的には結

    合実験とは放射性同位元素 radiOisotopeで標識 labelした薬物を用いて,組 織よ

    り得'9れた単一細胞,ホ モジネー トあるいは膜分画 (ステロイドホルモンなどの

    受容体は細胞質中にある)に 含まれる受容体への結合のしかたを検討するもので

    ある.受 容体に結合するものとしては活性薬,競 合的桔抗薬などがあげられるが,

    結合実験においてはこれらを総称してリガンドligandと呼ぶことが多い。またリ

    ガンドが実際に結合する部位は,受 容体分子のうちの一部の個所と考えられるの

  • 32 総

    でこクDよ うな音Bイ立は窄煎こ壕とイ事音トイ立receptor siteと 口子|ゴオしることカドある。

    2.結 合実験 の実際

    放射性 リガンドの結合実験の方法にはいろいろなものがあるが,↓ ずヽれの場合

    においても肝腎なことは受容体に結合しているリガンドを受容体以外の部分に結

    合しているリガンドと溶液中に含まれる近離のリガンドから分離して定畳するこ

    とである (図1-21)。なお受容体に対する結合は特異的結合 specinc binding,

    (試験管内に加えた リガン ド)=(4寺異的に結合 した リガン ド)十(ヲF特異的に

    結合 した リガン ド)十(溶液中に遊離 している

    リガン ド)

    試験管

    遊離の ヽリガンド i 特

    異的結合

    非特異的結合

    涙過

    :式米半に結 合 した リガ ン ドは'戸紙上 に

    とらえられる

    吸51装置

    リガン ド

    受容体 を含んだ試料 (単一細胞,

    ホモジネー ト,膜 分画など)

    デ過された

    遊離の

    リガン ド

    図 1-21 実 際の結合矢監の手順を模式的に示 したもの

  • 受容体結合実験 33

    受容体以外の部分への結合は非特異的結合 nOnspecific binding,両者を合わせた

    ものは全結合 total bindingと呼ばれる。結合 リガン ドと遊離 リガン ドとの分離は

    通常ガラス線維炉紙 glass fiber niterを用いた急速吸引炉過 rapid vacullFll

    filtration(図1-21),あ るいは遠心 centrifugatiOnなどによって行われる。

    図 1-21の ように炉紙上にとらえられた リガン ドtrapped ligandsは全結合を

    示す ものであるので, これから特異的結合を求めなければならない。ここで受容

    体 と放射性 リガン ドとの結合はきわめて高親和性のものと考えられるが, このよ

    うな特異的結合部位においては,放 射性 リガン ドと同時に大量の非放射性 リガン

    ドを加えて結合実験を行 うと,放 射性 リガン ドの結合は非放射性 リガン ドによっ

    て完全に追い出されてしまうことになる。一方,非 特異的結合部位 とリガン ドと

    の結合がきわめて低親和性のものであるならば,非 放射性 リガン ドを加えても非

    特異的結合部位の量には十分余裕があるので,放 射性 リガン ドが追しヽ出されるよ

    うなことはない.し たがって特異的結合は,放 射性 リガン ド単独で加えた時に得

    られる結合 (全結合)か ら大量の非放射性 リガン ドを同時に加えた時に求められ

    る結合 (非特異的結合)を 差 し引いた値 として求められる.

    このように“特異的

    "結合は主 として結合の親和性の差に基づいて求められる

    ( a )

    放射性 リガン ド

    |V V9

    ( b )

    ●●●●●●

    放 射性 リガ ン ド

    十O O O O O O O O O o o o o OO O O O O O O O O o O O O O

    大 量 の 非 放 射 性 リガ ン ド

    V y ∨

    V

    V

    V

    ヲ14寺異的 /′/

    結合部位

    特異的結合部位//

    (受容体)

    図 1- 2 2 特 異的結合 と非特 異的結合 を模 式的 に示 した図al放 射性 リガンドel単独で受容体標識を行ったもの.b i大 量の非放射性がントに〕を同時に加えて受容体標識を行ったもの_

    V V

    ∨ ∨

    9 ∨

  • 総34

    ものであるので,直 ちに“受容体

    "への結合を意味 しているものとはいえない。

    無論生体試料中にリガン ドに対 してきわめて高親和性に結合するものがやたらに

    存在するとは考えに くいが, しかし全 く皆無であるといい切ることもできないで

    あろう。 したがって実験的に求められた特異的結合が受容体への結合を示 してい

    るかどうかを調べるためには以下に掲げるような諸条件を満たしているかどうか

    検討することが望 ましい。

    (1)飽 和性 1 非 特異的結合から分離できること.

    (2)親 和性 t 薬 物の薬理学的有効濃度 と一致する親和性を持つこと.

    (3)構 造特異性 : 問 題 としている受容体に作用する薬物のみが結合 し,そ

    れ以外の薬物の結合はきわめて弱いものであること.

    ω 結 合の可逆性 : 生 理的な時間経過に対応する速度で結合・解雑するこ

    (5)立体特異性 t 薬 理学的反応において立体特異性が認め'9れる薬物にお

    いては,そ れと一致する立体特異性を結合実験においても示す

    こと.

    (6)組 織選択性 : 問 題 としている受容体が多く存在すると考えられる組織

    においては結合が多く認められること,

    特に(1)~(3)は必ず検討すが き項目である。

    3. Scatchardニ プロッ ト

    遊離したリガンドLの 濃度をF,受 容体に結合したリガンドの量をBと する

    と,(6)と同じようにして

    B=Bmax

    1+蒙者ここでKDは 結合の解離定数,Bmaxは 試料中に存在する全受容体量を示してい

    る。縦軸にB,横 軸にFを とり20を プロットすると図 1-26aに 示すような

    F=一 KD,B=Bmaxを 漸近線とするような直角双曲線が描ける。このような曲線

    は等温結合曲線 binding isothermと呼ばれる。図 1-26bは その具体例を掲げた

    ものであり,ラ ット膵腺房細胞におけるムスカリン受容体に対する [3H]_N―メ

    一KD

  • 受容体結合実験 35

    チルスコポラミン ([3H]_NMS)の 結合を示したものである。特異的結合は [3H]一NMS単 独による全結合から 105Mァ トロピン存在下で得 られる非特異的結合

    を差 し引いたものとして示されている。この [3H]_NMSの 結合曲線はODで 予想

    される直角双曲線の形に一致 してお り,腺 房細胞上に [3H]_NMSが 1:1の 割

    合で質量作用の法買どに従って結合するような部位が確かに存在 していることを示

    している。一方非特異的結合は [3H]_NMSの 濃度に関して直線的 となる。

    ところで実験値がばらついたときなどは,直 角双曲線を描 くことは容易ではな

    い。また本当に直角双曲線上にあてはまるかどうか判定できないこともある。

    Scatchardは,00を 変形して Oので示される式を得た。CDよ り,

    0 5 10

    〔3H〕NMS(nM)

    00 50 1oo 150

    B

    ( f m o / m g富自質)

    図 1- 2 3 結 合実験 にお け る濃度―結合 曲線

    ai式 6〕で予想される濃度 ―結合曲線.b iラ ット聴腺房細他ムスカリン受容体をN[ 3 H ]メ チれスコボラミンで標識した時に得')れる濃度 ―結合曲線。Ct

    bの特異的結合″)S c a t c h a r d p 1 0 t .

    IDehaye、」P i J Blol Chem,259t294~ 300,19841

    (賦

    的E

    ヽ一OE

  • 36 結 論

    B = B m a、

    1■品分母 をは らって

    KD・ B t t F B = F B m a x

    両辺をK Dで 割れば

    書=―

    品I B B mぶ1 側

    が得 られる。この式より椛軸を B I F ,横 軸 Bを と' )フeロ

    ントすれば,傾 き- 1 /

    K D ,横 軸切片が B m a xであるような直線が得られる。このようなプロ ットをS c a t‐

    chardフ°ロ ントという。 Scatchardフ

    °ロ ットが直線になるということは, CDが も

    ともと例 より誘導されたことを考えてもわかるように, リガン ドと結合部位が

    111の 割合で質量作用の法貝Uに従って結合 していることを意味 している,図 1-

    23cは 図 1-23bの [3H:_NMSの 特異的結合をScatchardプロットしたもので

    ある.こ の直線の傾 きと横軸切片より,KDは 0 9nM,Bma、は 140 fmo1/mg曇白

    質であることが計算される。Scatchardプロ ィトは数学的にいくぶん洗棟された

    ものなので,直 観的に理解 しに くいものであるが‐本質的には濃度結合曲線であ

    り用量作用曲線に対応するものであることを念頭に入れておけばよいであろう.

    肝腎なことは傾 きが親和性を,横 軸切片が最大結合量を示 していることを忘れな

    いことである.

    4.Hillプ ロッ ト

    図 1-23cに はScatchardプロットが直線 となる|す」を示したが,必 ずしもすべ

    ての結合実験でそのようなplotが得られる訳ではない。無論実験上の不備からそ

    のような結果が得られることも有り得るが,本 質的にScatchardプロットが直線

    とならない場合もある.す なわち今までの議論 と異なり受容体間に相互作用が存

    在する場合であり,このような場合 Scatchardプロットは図 1-24a,bの ように

    曲線となる。これはリガンドが受容体に結合するにつれ,残 りのリガンドが結合

    していない受容体の親和性が変化する場合である。受容体の親和性が増していく

    場合は受容体間に正の協同性 pos■ive cooperativityが存在する場合であり,逆

    に負の協同性 negative coOperativityが認められる場合には親和性が低下する。

    F一KD

  • 受容体結合実験 3ア

    L●●

    \、ャ

    受容体構造の変化

    図 1-24 al上 に凸となるScatchardプロット.正 の協同

    性が認め '〕れる場合,こ のようなplotが得 られ

    る. b!下 に凸となるScatchardプロット.こ の

    原因として, 1)受 容体間に負の協同性が認めら

    れる, 2)具 なる親和性を持つ 2つ 以上の受容体

    が存在する。などが考えられる。

    ( b )

    R

    図 1-25 完 全な正の協同性 を示す 2つ の結合部位を

    持つ受容体へ リガン ドが結合する様 了を模

    式的に示 した図

    正の協同性が認められる場合 Scatchardプロットは上に凸の曲線 となり (図1-

    24a),負 の協同性が認められる場合は下に凸の曲線 となる。

    今簡単のために 1個 の受容体 Rに 2つ の結合部位が存在 し,2つ の部位の間に

    正の協同性が認められる場合を考えてみる。図 1-25の (a)の状態では リガン ドL

    と結合部位への結合は弱いものであるが,Vヽったん片方へ結合 してしまうと受容

    体の構造が変化 して残 りの結合部位 亡Lの 結合の親和性が非常に大きくなる ((り

    の状態)。いいかえれば Lと Rの 結合は全か無かの法則 iaw Of all or noneに従

    い,受 容体の存在状態は Lが 全 く結合 していないもの (R)か, 2個 同時に結合 し

    たもの (RL2)しかありえないことになる。このような全か無か型の協同性を完全

    な協同性 といい, これを式にあらわせば,

    R + 2 L t t R L 2

  • 総38

    となる。一般に完全な協同性を示す n個 の結合部位が存在する場合,等 温結合式

    は .

    Fn

    B Kn

    BmaX l十景ニ

    で与えられ,H i l lはこれを変形 して

    b g ( 議 ) = n m g F 引 昭 Ю

    を得た。Oりより,縦 軸にlog(B/Bmax一B),横 軸にlog Fをプロットし, そのよ

    うにして得られた直線の傾 きnHは完全な協同性を示す場合,結 合部位の数 nに

    等しい。nHは Hill定数 Hill cOefncientとも呼ばれる。横軸切片は半飽和濃度 K

    の対数値を与える。 このようなプロットは Hlllプロットと呼ばれる。

    なお協同性が不完全な場合はnHは nよ りJ さヽくなる。 したがって結合部位の

    数 nは 大きいが協同性が不完全であるためにnHが nよ りずっと小さい値をとる

    こともあり,nHは 必ずしも結合様式を正確に記述する値ではないことに注意すべ

    きである。 '

    またnHが 1よ り小さい値をとる場合は負の協同性の存在により説明されるが,

    それ以外にリガンドに対して異なる親和性を持つ受容休が 2種類以上共存する場

    合も見かけ上 nHは 1ょ り小さい値をとるので注意が必要である。 ど ちらのメカ

    ニズムによるものであるかを決めるには解雑速度定数を求める必要がある。解離

    速度定数の求め方については巻末の付を参照.

    5.置 換 曲線

    前節までの記述はすべて放射性 リガンドと受容体 との結合様式についての解析

    に関するものであった。しかしながらこのような方法だと検討したい薬物をすべ

    て標識しなければならず,そ のようなことは実際上は不可能である。したがって,

    受容部位における放射性 リガンドとの競合的結合反応を利用して,非 放射性 リガ

    ンドの結合の親和性を問接的に求めることが広 く行われている。具体的には一定

    量の放射性 リガンドと種々の濃度の非放射性 リガンドを混和して結合実験を行い,

    このようにして求めた放射性 リガンドの特異的結合を維軸に,用 いた非放射性 り

    ガンドの濃度を横軸にとる。このようなグラフを置換曲線 dもplacement curveと

    ”L

  • 受容体結合実験 39

    (ぺ)組把g蝋空の基子Tし

    オキツ トレモリン

    レピチ ミド

    カル/ コヽール

    / ムスカリン

    カルバコール

    ムスカリン

    ビロカルビン

    ア トロピン

    デキセチ ミド

    オキソ トレモ リン/

    ピロカルピン

    デキセチ ミド

    ア ト回ピン

    ―l o g〔リガンド〕

    図 1-26 ラ ント惟腺房細胞における [3H]_N―メチルス

    コポラミン ([3H]NMS)結 合の置換曲線“)と

    そのpseudo Hill plot(b)

    いい,ラ ット解腺房細胞ムスカリン受容体における実例を図 1-26aに 示す。縦軸

    は 109M[3H]_N― メチルスコポラ ミン単独による結合量を 100%と したもので

    あり,横軸は非放射性 リガン ドの濃度を示 している。NMSや デキセ ミチ ドのよう

    な効力の強い競合的措抗薬は 10~10~108Mと ぃぅ低濃度で [3H]_NMS結 合を

    阻害している。置換薬の置換効力すなわちみかけの親和性は通常放射性 リガンド

    の結合を50%減 少させる濃度すなわちIC50であらわされる。たとえば図 1-26a

    の例で NMSの IC50は 109Mと なる。

    しかしIC50は解離定数のような置換薬固有の定数ではない。なぜなら図 1-26

    aで は [3H]_NMSと 置換薬の受容体における競合を見ているので,同 じ置換薬

    を用いても [3H]_NMSの 濃度を増せば置換薬の IC50は大きくなり, また [3H]

  • ム帥総40

    一N M Sの 濃度 を減 らせばそれに応 じて I C 5 0は小 さい値 になる. C h e n g a n d

    P r u s o f fの式は置換薬の I C 5 0から解離定数 K Iを求めるものであり, 9 9で 示され

    るものである。

    推 働

    [Lネ]は用いた放射性 リガン ドの濃度,KD章は SCatchardプ ロットより求めた放射

    性 リガン ドの解雑定数である。なお Cheng and Prusoffの 式を用いて IC50から

    求められた置換薬の解離定数は KDで はなくKIと 呼ばれることが多い。

    置換曲線の Scatchard解析,Hill解析 もしばしば行われる。放射性 リガン ドだけ

    を使用 した本来のものと区別するために,これらのプロットは pseudo Scatchard

    plot,pseudo Hill plotとも呼ばれる。図 1-26aの 置換実験の結果をpseudo Hill

    解析 したものが図 1-26bで ある。pseudo Hlll plotでは置換曲線は直線であら

    わされ,ま た IC50は縦軸 0を 横切る置換薬の濃度で示される。また直線の傾 きは

    椀 Hlll定 数 pseudo Hlll coefficientあ るいは slope factOrと も『子|ゴれ, 協同性

    あるいは異なる親和性 をもつ受容体の共存を示唆するものである.図 1-26bよ

    りNMSの IC50は 109Mと なり,また slope factorは108で あった.Cheng and

    Prusoffの 式 を 用 V てヽ IC50よ り求 め た NMSの PKI値 は 930(KI=5×

    1010M)で あり, これは同細胞のムスカリン性作用であるア ミラーゼ分泌に対す

    る措抗作用から求めた pA2値 9`13と ほぼ一致 している。

    なおムスカリン様の反応を示さないクラーレ,ヘ キサメ トニウム,セ クレチン,

    グルカゴン, インシュ リンなどは [3H]_NMS結 合を阻害 しなかった。

    一方,完 全活性薬であるカルバヨールのア ミラーゼ分泌に対するpD2値 は 6と

    なり,非 可逆的措抗薬プロピルベンジリルコリン・マスター ド (図1-11)で 処理

    しFurchgottの方法で求めた pKAは 約 5と なる。結合実験より求めたカルバ コ

    ールの IC50は 7.5×105Mと なるが,slope factorが 066と なるので,Cheng

    and Prusoffの式を適用できない。そこで 2結 合部位 を仮定 したモデルに従って

    コンピューター解析 を行 うと,KDが 35× 108Mの 高親和性結合部位 と65×

    105Mの 低親和性結合部位が共存 し,そ の存在比は 16!84で あることがわかっ

    た。この結果からDehayeら は,活性薬の低親和性結合部位が実際に生理反応に関

    係するもので1まないか と推論 している。

  • 受容体結合実験 41

    最後の推論の当否は別 として,Dehayeら の実験結果から

    ① ム スカリン受容体に対する競合的措抗薬である [3H]_NMSの 飽和性結合

    がラット陣腺房細抱において示されたこと。 F

    ② 各 種ムスカリン様競合的措抗薬は薬理反応から求められた親和性 (pA2)と

    一致した結合親和性 (pKl)を示したこと.

    ③ ム スカリン受容体活性薬,競 合的結抗薬のみが [3H]_NMS結 合を特異的

    に阻害したこと.

    ④ 競 合的結抗薬であるベンゼチ ミドは左旋性のもの (デキセチミド)が 右旋

    性(レベチ ミド)のものよりはるかに効力が強いが,同様な立体特異性は

    [3H]_NMS結 合阻害実験においても認められたこと.

    などが明らかとされている。なおここでは触れなかったが,Dehayeら は結合の可

    逆性についても検討しており,[3H]NMS結 合は希釈により半減期約 20分で指

    数関数的に減少することが示されている.

    ところで,活 性薬の場合は一般に置換実験より求めたIC50はED50よ りはるか

    に大きい値をとることが多い。このことは受容体理論で想定された余剰受容体の

    存在を示しているものかもしれない。

    また活性薬の slope factorは1以下になることが多い。多くの場合異なる親和

    性を持つ結合部位が数種類存在することによると説明されているが,こ のことは

    生理反応の引き金を引くという活性薬の性格を考えれば興味深いものであると思

    われる.

    6。 slope factorが 1以 下 となる場合 の置換 曲線 の解釈

    図 1-26の [3H]_NMS結 合に対するカルバコールの置換曲線のように,放 射

    性 リガンドの結合は単一の結合部位を示しているにもかかわらず,あ る種の非放

    射性 リガンドが異なる結合部位の存在を示唆する例はしばしば観察される。この

    原因として考えられるいくつかの可能性を以下に示そう。

    1)放 射性 リガンドが異なる受容体を非選択的に標識 しており,非 放射性 リガ

    ンドがそれらの受容体を区別 して認識 している場合

    代表的な例としては2つのサブタイプの受容体が共存する場合があげられる。

  • 総42

    (帥室求き

    ―ヽ口ヽ▲トミトロ生コ小〔手〕

    (帥国ぺぎ

    ―ヽロト▲トミトロとコ小〔吾〕

    ムラット肺,20%高親和(βl)80%低親和(&)

    ロラット赤血球膜,100%低規和(向)

    7 6 5 4 3-og〔アテノロール〕(M)

    ・ラット肺,80%高 親和(向)

    20%低 親和(βl)

    。ラット赤血球膜,loO%高 親和(晟)

    7 6-log〔C 8′ 55〕(lv4)

    図 1-27 ラ ット肺 (▲, ■)

    0)に おけるアテノ

    551による[3H]ジヒ

    の置換曲線

    およびラ ント赤血球 (コ,ロール (a)ぉょび IC1 118,

    ドロアルプレノロール結合

    図 1-27は ラット肺 とラット赤血球より調製した膜分画を用いて行ったβ―受容

    体の結合実験の結果である。ゑ および&一受容体に対して非選択的な放射性 リガ

    ンドである[3H]_ジヒドロアルプレノロールで受容体を標識すると,図 には示し

    ていないが,単一の直線で示されるScatchardプロットを与え,あたかも1種類の受

    容体のみが存在しているように見える.しかしながらβl選択的措抗薬であるアテ

    ノロール,およびれ 選択的措抗薬であるIC1 118,551を用いて置換曲線を求めて

    みると図 1-27の 自印で示したようにラット赤血球における置換曲線は共に急峻

    なものであるが,IC1 118,551の方がアテノロールよりも高親和性 となっている.

    一方黒印で示したようにラット肺においては置換曲線の傾きは共になだらかであ

  • 受容体結合実験 43

    り,こ れはアテノロールを用いた場合は低濃度で置換される部分が,IC1 118,551

    を用いた場合は高濃度で置換される部分において特に著 しい。また両曲線は逆対

    称であるように見える。コンピューターを用いた解析によると,[3H]_ジ ヒ鴫ロ

    アルプレノロールで標識される受容体の 80%が IC1 118,551に対 して高親和性

    であり,残 りの 20%が アテノロールに対 して高親和性であることが示された。

    以上の結果より,ラ ット赤血球膜のβ―受容体はすべてれ 型,ラ ット肺の β

    ―受

    容体は 80%が 機 型,残 りの 20%が n型 であると考えられる.

    この夕」でもわかるように,非 放射性 リガン ドが異なる部位を区別 して認識 して

    いる場合は,い ずれの リガン ドを用いても各部位の存在比は一定 となる。

    2)サ イクリック ・モデル cyclic ttodel

    受容体が 2種 類の互いに移 りうる遷移状態 interconvertible transition stateが

    存在するという考え方は電気生理学的手法を用いて Katz and Thesleff(1957)

    により提出された。

    L tt Rそ主L tt R′

    研 t4

    LR ギ LR′

    これはニヨチン受容体の脱感作機構を説明するのによいモデルであり,サ イク

    リック ・モデル cyclic modelとも呼ばれる。非放射性 リガンドが 2つ の状態 R,

    R′を識別 して結合する時,結 合が平衡に達する前の時点においてのみ置換曲線の

    slope factorは1以 下 となり, さらにこの とき求められる高親和性結合部位の量

    はみかけ上 50%以 下にとどまる点が他のモデルと異なる。さらに時間が経過 して

    結合が平衡に達するとslope factorは1と なり単一結合部位 と区別できなくなる。

    3)2価 受容体モデル bivalent model

    lつ の受容体上に 2つ の結合部位が存在 し一方に非放射性 リガン ドが結合する

    と他方への結合親和性が低下する際 も置換曲線の slope factorは1以 下 となる。

    しかしながらこのモデルにおいては高親和性結合部位 と低親和性結合部位の量�